〔1.インクジェット記録装置の構成〕
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンター100の概略の構成を示す説明図である。プリンター100は、用紙収容部である給紙カセット2を備えている。給紙カセット2は、プリンター本体1の内部下方に配置されている。給紙カセット2の内部には、記録媒体の一例である用紙Pが収容されている。
給紙カセット2の用紙搬送方向下流側、すなわち図1における給紙カセット2の右側の上方には給紙装置3が配置されている。この給紙装置3により、用紙Pは図1において給紙カセット2の右上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。
プリンター100は、その内部に第1用紙搬送路4aを備えている。第1用紙搬送路4aは、給紙カセット2に対してその給紙方向である右上方に位置する。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aにより、プリンター本体1の側面に沿って垂直上方に搬送される。
用紙搬送方向において第1用紙搬送路4aの下流端には、レジストローラー対13が設けられている。さらに、レジストローラー対13の用紙搬送方向下流側直近には、第1搬送ユニット5および記録部9が配置されている。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aを通ってレジストローラー対13に到達する。レジストローラー対13は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、記録部9が実行するインク吐出動作とのタイミングを計り、第1搬送ユニット5に向かって用紙Pを送り出す。
第1搬送ユニット5に送り出された用紙Pは、第1搬送ベルト8(図2参照)によって記録部9(特に後述する記録ヘッド17a~17c)との対向位置に搬送される。記録部9から用紙Pにインクが吐出されることにより、用紙P上に画像が記録される。このとき、記録部9におけるインクの吐出は、プリンター100の内部の制御部110によって制御される。制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成される。
用紙搬送方向において、第1搬送ユニット5の下流側(図1の左側)には、第2搬送ユニット12が配置されている。記録部9によって画像が記録された用紙Pは、第2搬送ユニット12へ送られる。用紙Pの表面に吐出されたインクは、第2搬送ユニット12を通過する間に乾燥される。
用紙搬送方向において、第2搬送ユニット12の下流側であってプリンター本体1の左側面近傍には、デカーラー部14が設けられている。第2搬送ユニット12によってインクが乾燥された用紙Pは、デカーラー部14へ送られて、用紙Pに生じたカールが矯正される。
用紙搬送方向において、デカーラー部14の下流側(図1の上方)には、第2用紙搬送路4bが設けられている。デカーラー部14を通過した用紙Pは、両面記録を行わない場合、第2用紙搬送路4bを通り、プリンター100の左側面外部に設けられた用紙排出トレイ15に排出される。
プリンター本体1の上部であって記録部9および第2搬送ユニット12の上方には、両面記録を行うための反転搬送路16が設けられている。両面記録を行う場合、用紙Pの一方の面(第1面)への記録が終了して第2搬送ユニット12およびデカーラー部14を通過した用紙Pは、第2用紙搬送路4bを通って反転搬送路16へ送られる。
反転搬送路16へ送られた用紙Pは、続いて用紙Pの他方の面(第2面)への記録のために搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは、プリンター本体1の上部を通過して右側に向かって送られ、レジストローラー対13を経て第2面を上向きにした状態で再び第1搬送ユニット5へ送られる。第1搬送ユニット5では、記録部9との対向位置に用紙Pが搬送され、記録部9からのインク吐出によって第2面に画像が記録される。両面記録後の用紙Pは、第2搬送ユニット12、デカーラー部14、第2用紙搬送路4bを順に介して用紙排出トレイ15に排出される。
また、第2搬送ユニット12の下方には、メンテナンスユニット19およびキャップユニット20が配置されている。メンテナンスユニット19は、パージを実行する際に記録部9の下方に水平移動し、記録ヘッドのインク吐出口から押出されたインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。なお、パージとは、インク吐出口内の増粘インク、異物、気泡を排出するために、記録ヘッドのインク吐出口からインクを強制的に押し出す動作を言う。キャップユニット20は、記録ヘッドのインク吐出面をキャッピングする際に記録部9の下方に水平移動し、さらに上方に移動して記録ヘッドの下面に装着される。
図2は、記録部9の平面図である。記録部9は、ヘッドハウジング10と、ラインヘッド11Y、11M、11C、11Kとを備えている。ラインヘッド11Y~11Kは、駆動ローラー6a、従動ローラー6bおよび他のローラー7を含む複数のローラーに張架された無端状の第1搬送ベルト8の搬送面に対して、所定の間隔(例えば1mm)が形成される高さでヘッドハウジング10に保持される。
ラインヘッド11Y~11Kは、複数(ここでは3個)の記録ヘッド17a~17cをそれぞれ有している。記録ヘッド17a~17cは、用紙搬送方向(矢印A方向)と直交する用紙幅方向(矢印BB’方向)に沿って千鳥状に配列されている。記録ヘッド17a~17cは、複数のインク吐出口18(ノズル)を有している。各インク吐出口18は、記録ヘッドの幅方向、つまり、用紙幅方向(矢印BB’方向)に等間隔で並んで配置されている。ラインヘッド11Y~11Kからは、記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18を介して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインクが、第1搬送ベルト8で搬送される用紙Pに向かってそれぞれ吐出される。
図3は、給紙カセット2から第1搬送ユニット5を介して第2搬送ユニット12に至る用紙Pの搬送経路の周辺の構成を模式的に示している。また、図4は、プリンター100の主要部のハードウェア構成を示すブロック図である。プリンター100は、上記の構成に加えて、レジストセンサー21と、第1用紙センサー22と、第2用紙センサー23と、ベルトセンサー24および25と、をさらに備えている。
レジストセンサー21は、用紙カセット2から給紙装置3によって搬送され、レジストローラー対13に送られる用紙Pを検知する。制御部110は、レジストセンサー21での検知結果に基づき、レジストローラー対13の回転開始タイミングを制御することができる。例えば、制御部110は、レジストセンサー21での検知結果に基づき、レジストローラー対13によるスキュー(斜行)補正後の用紙Pの第1搬送ベルト8への供給タイミングを制御することができる。
第1用紙センサー22は、レジストローラー対13から第1搬送ベルト8に送られる用紙Pの幅方向の位置を検知するラインセンサーである。制御部110は、第1用紙センサー22での検知結果に基づき、ラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17a~17cの各インク吐出口18のうち、用紙Pの幅に対応するインク吐出口18からインクを吐出させて用紙Pに画像を記録することができる。
第2用紙センサー23は、第1搬送ベルト8で搬送される用紙Pの搬送方向の位置を検知するセンサーである。第2用紙センサー23は、用紙搬送方向において記録部9の上流側で第1用紙センサー22の下流側に位置している。制御部110は、第2用紙センサー23での検知結果に基づき、第1搬送ベルト8によってラインヘッド11Y~11K(記録ヘッド17a~17c)と対向する位置に到達する用紙Pに対するインクの吐出タイミングを制御することができる。
ベルトセンサー24および25は、第1搬送ベルト8に設けられた、後述する複数の開口部群82(図10参照)の位置を検知する。つまり、ベルトセンサー24および25は、第1搬送ベルト8の走行による開口部群82の少なくともいずれかの通過を検知する検知センサーである。ベルトセンサー24は、用紙搬送方向(第1搬送ベルト8の走行方向)において記録部9の下流側に位置している。ベルトセンサー25は、第1搬送ベルト8を張架する従動ローラー6bと他のローラー7との間に位置している。従動ローラー6bは、記録部9に対して第1搬送ベルト8の走行方向の上流側に位置している。なお、ベルトセンサー24は、第2用紙センサー23と同等の機能を兼ね備えている。制御部110は、ベルトセンサー24または25での検知結果に基づき、第1搬送ベルト8に対して所定のタイミングで用紙Pを供給するように、レジストローラー対13を制御することができる。
また、用紙の位置を複数のセンサー(第2用紙センサー23、ベルトセンサー24)で検知し、第1搬送ベルト8の開口部群82の位置を複数のセンサー(ベルトセンサー24および25)で検知することにより、検知した位置の誤差修正や異常の検知も可能となる。
上述した第1用紙センサー22、第2用紙センサー23、ベルトセンサー24および25は、透過型または反射型の光学センサー、CISセンサー(Contact Image Sensor、密着型イメージセンサー)で構成されてもよい。また、第1搬送ベルト8の幅方向の端部に、開口部群82の位置に対応するマークを形成しておき、ベルトセンサー24および25が上記マークを検知することにより、開口部群82の位置を検知してもよい。
その他、プリンター100は、第1搬送ベルト8の蛇行を検知する蛇行検知センサーを備え、その検知結果に基づいて第1搬送ベルト8の蛇行を修正する構成であってもよい。
また、プリンター100は、操作パネル27と、記憶部28と、通信部29と、をさらに備えている。操作パネル27は、ユーザーによる各種の設定入力を受け付けるための操作部である。例えば、ユーザーは、操作パネル27を操作して、給紙カセット2にセットする用紙Pのサイズ、つまり、第1搬送ベルト8によって搬送する用紙Pのサイズの情報を入力することができる。記憶部28は、制御部110の動作プログラムを記憶するとともに、各種の情報を記憶するメモリであり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを含んで構成されている。操作パネル27によって設定された情報(例えば用紙Pのサイズの情報)は、記憶部28に記憶される。通信部29は、外部(例えばパーソナルコンピュータ(PC))との間で情報を送受信するための通信インターフェースである。例えば、ユーザーがPCを操作し、プリンター100に対して画像データとともに印刷コマンドを送信すると、上記の画像データおよび印刷コマンドが通信部29を介してプリンター100に入力される。プリンター100では、制御部110が上記画像データに基づいて記録ヘッド17a~17cを制御してインクを吐出させることにより、用紙Pに画像を記録することができる。
また、図3に示すように、プリンター100は、第1搬送ベルト8の内周面側に、インク受け部31Y、31M、31C、31Kを有している。インク受け部31Y~31Kは、フラッシングを記録ヘッド17a~17cに実行させたときに、記録ヘッド17a~17cから吐出されて第1搬送ベルト8の後述する開口部群82の開口部80(図10参照)を通過したインクを受けて回収する。したがって、インク受け部31Y~31Kは、ラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17a~17cと、第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。なお、インク受け部31Y~31Kで回収されたインクは、例えば廃インクタンクに送られて廃棄される。
ここで、フラッシングとは、インクの乾燥によるインク吐出口18の目詰まりを低減または予防する目的で、用紙Pへの画像形成(画像記録)に寄与するタイミングとは異なるタイミングでインクを吐出することを言う。記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングの実行は、制御部110によって制御される。
上述した第2搬送ユニット12は、第2搬送ベルト12aと、乾燥器12bとを有して構成されている。第2搬送ベルト12aは、2つの駆動ローラー12cおよび従動ローラー12dによって張架されている。第1搬送ユニット5によって搬送され、記録部9によるインク吐出によって画像が記録された用紙Pは、第2搬送ベルト12aによって搬送され、搬送中に乾燥器12bによって乾燥されて上述したデカーラー部14に搬送される。
図5は、用紙Pの搬送経路の周辺の他の構成を模式的に示している。同図に示すように、本実施形態のプリンター100では、インク受け部31Y~31Kで回収したインクを、送液機構30によってラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17a~17cに送液してもよい。このような送液機構30は、例えばポンプおよび送液管を含んで構成される。この場合、インク受け部31Y~31Kで回収したインクを、画像記録用のインクとして再利用(有効利用)することができる。なお、送液機構30は、回収したインクを一時的に貯留するタンクをさらに含み、ポンプおよびタンクを介して記録ヘッド17a~17cにインクを送液してもよい。
〔2.第1搬送ユニットの詳細〕
(2-1.第1搬送ユニットの一構成例)
本実施形態では、第1搬送ユニット5において用紙Pを搬送する方式として、負圧吸引方式を採用している。負圧吸引方式とは、用紙Pを負圧吸引によって第1搬送ベルト8に吸着させて搬送する方式である。
ここで、ラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17a~17cと、第1搬送ベルト8を介して対向する位置にインク受け部31Y~31Kが設けられていることは上述の通りである。負圧吸引の際に、インク受け部31Y~31Kが設けられた領域の吸引力が強いと、フラッシング時に記録ヘッド17a~17cから吐出されたインクが、第1搬送ベルト8の開口部80を勢いよく通過し、インク受け部31Y~31Kに既に収容されたインクの液面に衝突して周囲にインクを飛散させるミストが生じる場合がある。ミストが生じると、飛散したインクが第1搬送ベルト8の内周面に付着して内周面を汚す。その結果、第1搬送ベルト8を張架するローラーの表面が汚れ、第1搬送ベルト8の搬送ムラ(例えば蛇行やスリップ)が生じるおそれがある。
そこで、本実施形態では、図6に示すように、インク受け部31Y~31Kが設けられている領域、つまり、ラインヘッド11Y~11Kと第1搬送ベルト8を介して対向する領域の吸引力を、その用紙搬送方向の上流側および下流側の領域よりも弱くすることにより、ミストによる上記の不都合を低減するようにしている。具体的には、以下の構成により、吸引力の異なる領域を生成している。
なお、以下では、便宜的に、ラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17a~17cとインク受け部31Y~31Kとが対向する区間(用紙Pの搬送区間)を、対向区間E1と称する。また、対向区間E1に対して用紙Pの搬送方向の上流側または下流側の区間(用紙Pの搬送区間)を、非対向区間E2と称する。
図7は、第1搬送ユニット5の一構成例を模式的に示す説明図である。第1搬送ユニット5は、負圧発生部50を有している。負圧発生部50は、第1搬送ベルト8の吸引孔8aを介して用紙Pを吸引するための負圧を発生する。この負圧発生部50は、吸引部材53と、第1吸引室51a~51eと、第2吸引室52a~52dと、を有して構成される。
吸引部材53は、負圧を発生させるファンまたはコンプレッサーで構成されている(駆動機構(例えばモーター)を含む)。第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dは、第1搬送ベルト8の内周面側にそれぞれ位置しており、第1搬送ベルト8のベルト幅方向に長尺状で形成されているとともに、第1搬送ベルト8との対向側が開口している。第1吸引室51a~51eは、吸引部材53によって発生する負圧により、非対向区間E2を搬送される用紙Pを吸引する。第2吸引室52a~52dは、対向区間E1を搬送される用紙Pを吸引する。なお、図7では、便宜的に、インク受け部31Y~31Kの図示を省略している。
第1吸引室51a~51eは、用紙搬送方向(A方向)の下流側から上流側に向かってこの順で設けられている。第2吸引室52aは、第1吸引室51aと第1吸引室51bとの間で、ラインヘッド11Yと第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。第2吸引室52bは、第1吸引室51bと第1吸引室51cとの間で、ラインヘッド11Mと第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。第2吸引室52cは、第1吸引室51cと第1吸引室51dとの間で、ラインヘッド11Cと第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。第2吸引室52dは、第1吸引室51dと第1吸引室51eとの間で、ラインヘッド11Kと第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。上述したインク受け部31Y~31Kは、上記の第2吸引室52a~52dにそれぞれ配置されている。
第1吸引室51aおよび第2吸引室52aの内部は、共通の吸引部材53によって吸引される。また、第1吸引室51bおよび第2吸引室52bの内部は、共通の吸引部材53によって吸引される。同様に、第1吸引室51cおよび第2吸引室52cの内部は、共通の吸引部材53によって吸引され、第1吸引室51dおよび第2吸引室52dの内部は、共通の吸引部材53によって吸引される。第1吸引室51eは単独で、吸引部材53によって吸引される。
また、第1吸引室51a~51eは、低流路抵抗部54をそれぞれ有しており、第2吸引室52a~52dは、高流路抵抗部55をそれぞれ有している。低流路抵抗部54では、吸着部材53の負圧によって発生する吸引風の流路抵抗が相対的に低く、高流路抵抗部55では、上記吸引風の流路抵抗が相対的に高い。このような低流路抵抗部54および高流路抵抗部55は、例えば内部の気孔径および密度の異なるフィルターで構成される。例えば、低流路抵抗部54を構成するフィルターは、高流路抵抗部55を構成するフィルターに比べて目が粗く構成される。
なお、低流路抵抗部54および高流路抵抗部55は、負圧によって発生する吸引風の通路となる管で構成され、低流路抵抗部54では管の断面積を相対的に大きくし、高流路抵抗部55では管の断面積を相対的に小さくすることにより、流路抵抗の相対的に低い低流路抵抗部54および流路抵抗の相対的に高い高流路抵抗部55がそれぞれ構成されていてもよい。
このような構成において、各吸引部材53を駆動して負圧が発生すると、第1吸引室51a~51eの内部が低流路抵抗部54を介して吸引され、第2吸引室52a~52dの内部が高流路抵抗部55を介して吸引される。これにより、第1搬送ベルト8に設けられた吸引孔8aまたは開口部群82を介して空気が吸引され、用紙Pが第1搬送ベルト8に吸着しながら搬送される。
ここで、低流路抵抗部54は、高流路抵抗部55に比べて相対的に吸引風の流路抵抗が低いため、各吸引部材53を同じ駆動力で駆動した場合、第1吸引室51a~51eの内部は相対的に強い吸引力で吸引され、第2吸引室52a~52dの内部は相対的に弱い吸引力で吸引される。このため、対向区間E1よりも非対向区間E2のほうが、上記負圧によって発生する吸引力が強くなる。
つまり、対向区間E1では、相対的に、非対向区間E2よりも吸引力が弱くなる。これにより、フラッシングを行うときに、対向区間E1では、記録ヘッド17a~17cから吐出されたインクが、第1搬送ベルト8の開口部群82の開口部80を勢いよく通過することが抑制される。したがって、上記インクがインク受け部31Y~31Kに既に収容されたインクの液面に衝突して周囲にインク滴を飛散させるミストの発生を抑制することができる。その結果、上記ミストによって第1搬送ベルト8の内周面が汚れることを抑制することができ、上記汚れに起因して第1搬送ベルト8の搬送ムラが生じることを抑制することができる。
また、第1吸引室51a~51eは低流路抵抗部54を有しており、第2吸引室52a~52dは高流路抵抗部55を有している。この構成では、第1吸引室51a~51eよりも第2吸引室52a~52dのほうが、流れる吸引風の量が少なくなる。これにより、非対向区間E2よりも対向区間E1のほうが、吸引力が弱くなる。したがって、フラッシング時のミストの発生およびそれに起因する第1搬送ベルト8の搬送ムラを確実に抑制することができる。
図8は、第1搬送ユニット5の上述したインク受け部31Y~31Kを拡大して示している。インク受け部31Y~31Kに対して第1搬送ベルト8側(記録ヘッド17a~17c側)には、フィルター56を配置してもよい。フィルター56は、例えばPVA(ポリビニルアルコール)フィルターで構成されており、吸水性を有している。フィルター56は、インク受け部31Y~31Kに対して交換可能に、つまり取り替え可能に配置される。
このようなフィルター56を配置することにより、フィルター56は、フラッシングのときに記録ヘッド17a~17cから吐出されたインクを通過させるとともに、インク受け部31Y~31Kの液面にインクが衝突して外部に飛散するインク滴を吸収する。したがって、フラッシング時に吐出されるインクを、フィルター56を介してインク受け部31Y~31Kで回収しつつ、フラッシング時のインクがインク受け部31Y~31Kの液面で衝突して外部に飛散しようとするインク滴をフィルター56で吸収して、ミストの発生を確実に抑制することができる。
また、フィルター56が交換可能に配置されることにより、インク滴の吸収によってフィルター56の目詰まりが生じてフラッシングのときのインクの通過を妨げたり、長期使用によってミストの吸収機能が低下した場合でも、フィルター56の交換によってそれらを解消することができる。
(2-2.第1搬送ユニットの他の構成例)
図9は、第1搬送ユニット5の他の構成例を模式的に示す説明図である。図9の第1搬送ユニット5は、図7で示した第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dに同じフィルター54を配置し、第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dのそれぞれを別々の吸引部材53で吸引するように構成したものである。このような構成では、第2吸引室52a~52dの内部を吸引する各吸引部材53の駆動力を切り替えることにより、第2吸引室52a~52dの吸引力を、強吸引と弱吸引とで切り替える。なお、各吸引部材53の駆動は、例えば制御部110によって制御される。
例えば、第1搬送ベルト8によって搬送される用紙Pへのインク吐出時(画像記録時)には、第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dを吸引する全ての吸引部材53を第1の駆動力で駆動する。一方、フラッシング時には、第1吸引室51a~51eを吸引する各吸引部材53を第1の駆動力で駆動しつつ、第2吸引室52a~52dを吸引する各吸引部材53を第1の駆動力よりも低い第2の駆動力で駆動する。これにより、画像記録時には、第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dを強吸引で吸引して用紙Pを搬送しつつ、フラッシング時には、第2吸引室52a~52dのみを弱吸引にすることができる。
ここで、第1吸引室51a~51eを強吸引で吸引するときの単位時間あたりの吸引量を第1吸引量とし、第1吸引室51a~51eを第1吸引量で吸引する吸引部材53を、第1吸引部材53aとする。また、第2吸引室52a~52dを弱吸引で吸引するときの単位時間あたりの吸引量を第2吸引量(ただし第1吸引量よりも少ない)とし、第2吸引室52a~52dを第1吸引量または第2吸引量で吸引する吸引部材53を、第2吸引部材53bとする。
図9の構成では、第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dに同じフィルター54を配置しているため、負圧によって発生する吸引風の流路抵抗は、第1吸引室51a~51eと第2吸引室52a~52dとで同じである。第1吸引室51a~51eと第2吸引室52a~52dとを別々の吸引部材(第1吸引部材53a、第2吸引部材53b)で吸引する構成では、第2吸引部材53bによる吸引量を第1吸引量と第2吸引量とで切り替えることにより、フラッシング時には、第1吸引室51a~51eよりも第2吸引室52a~52dのほうが、流れる吸引風の量が少なくなり、非対向区間E2よりも対向区間E1のほうが、吸引力が弱くなる。したがって、フラッシング時に、ミストの発生およびそれに起因する第1搬送ベルト8の搬送ムラを抑制することができる。
特に、制御部110は、第2吸引部材53bの駆動を制御して、第2吸引部材53bの吸引量を選択的に切り替える、つまり、記録ヘッド17a~17cによってフラッシングを行うときには、制御部110は、第2吸引部材53bを第2の駆動力で駆動して、第2吸引部材53bの吸引量を、第1吸引量から第2吸引量に切り替える。一方、記録ヘッド17a~17cから用紙Pにインクを吐出させるときには、制御部110は、第2吸引部材53bを第1の駆動力で駆動して、第2吸引部材53bの吸引量を、第2吸引量から第1吸引量に切り替える。これにより、フラッシングのときには、第2吸引室52a~52dを流れる吸引風の量を第1吸引室51a~51eよりも少なくして、非対向区間E2よりも対向区間E1で吸引力を弱くし、ミストの発生を抑制して第1搬送ベルト8の搬送ムラを抑制することができる。一方、通常の印字を行う場合には、非対向区間E2と対向区間E1とで同等の吸引力を確保して、用紙Pを第1搬送ベルト8によって安定して搬送することができる。
〔3.第1搬送ベルトの詳細〕
(3-1.第1搬送ベルトの一構成例)
次に、第1搬送ユニット5の第1搬送ベルト8の詳細について説明する。図10は、第1搬送ベルト8の一構成例を示す平面図である。本実施形態では、上述したように、負圧吸引方式で用紙Pを搬送するようにしている。このため、同図に示すように、第1搬送ベルト8には、吸引部材53の負圧吸引によって発生する吸引風を通過させる吸引孔8aが無数に設けられている。
また、第1搬送ベルト8には、開口部群82も設けられている。開口部群82は、フラッシングのときに記録ヘッド17a~17cの各ノズル(インク吐出口18)から吐出されるインクを通過させる開口部80の集合である。開口部80の開口面積は、上記の吸引孔8aの開口面積よりも大きい。第1搬送ベルト8は、開口部群82を用紙Pの搬送方向(A方向)に1周期で複数有しており、本実施形態は6個有している。なお、各開口部群82を互いに区別するときは、6個の開口部群82を、A方向の下流側から、開口部群82A~82Fと称する。上記の吸引孔8aは、A方向において隣り合う開口部群82と開口部群82との間に位置している。すなわち、第1搬送ベルト8において、開口部群82と重複する領域には、吸引孔8aは形成されていない。
開口部群82は、第1搬送ベルト8の1周期において、A方向に不定期に位置する。つまり、A方向において、隣り合う開口部群82と開口部群82との間隔は一定ではなく、変化している(上記間隔は少なくとも2種類存在する)。このとき、A方向に隣り合う2つの開口部群82の最大間隔(例えば図10の開口部群82Aと開口部群82Bとの間隔)は、印字可能な最小サイズ(例えばA4サイズ(横置き))の用紙Pが第1搬送ベルト8上に載置されたときの上記用紙PのA方向の長さよりも長い。
上記の開口部群82は、開口部列81を有している。開口部列81は、A方向と直交するベルト幅方向(用紙幅方向、BB’方向)に複数の開口部80を並べて構成されている。1つの開口部群82は、開口部列81をA方向に複数有しており、本実施形態では、開口部列81を2列有している。なお、2列の開口部列81を互いに区別するときは、一方を開口部列81aとし、他方を開口部列81bとする。
1つの開口部群82において、いずれかの開口部列81(例えば開口部列81a)の開口部80は、他の開口部列81(例えば開口部列81b)の開口部80とBB’方向にずれて位置し、かつ、A方向に見て他の開口部列81(例えば開口部列81b)の開口部80の一部と重畳するように位置する。また、各開口部列81において、複数の開口部80は、BB’方向に等間隔で位置する。
上記のように複数の開口部列81をA方向に並べて1つの開口部群82を形成していることにより、開口部群82のBB’方向の幅は、記録ヘッド17a~17cのBB’方向の幅よりも大きくなっている。したがって、開口部群82は、記録ヘッド17a~17cのBB’方向のインク吐出領域を全てカバーしており、フラッシング時に記録ヘッド17a~17cの全てのインク吐出口18から吐出されるインクは、開口部群82のいずれかの開口部80を通過する。
(3-2.フラッシングのときに用いる開口部群のパターンについて)
本実施形態では、上記の第1搬送ベルト8を用いて用紙Pを搬送しながら、外部(例えばPC)から送信される画像データに基づいて、制御部110が記録ヘッド17a~17cを駆動することにより、用紙P上に画像を記録する。その際に、搬送される用紙Pと用紙Pとの間で記録ヘッド17a~17cにフラッシング(紙間フラッシング)を実行させることにより、インク吐出口18の目詰まりを低減または予防するようにしている。
ここで、本実施形態では、制御部110は、第1搬送ベルト8の1周期において、フラッシングのときに用いる複数の開口部群82のA方向のパターン(組み合わせ)を、用いる用紙Pのサイズに応じて決定する。なお、用いる用紙Pのサイズは、制御部110が、記憶部28に記憶された情報(操作パネル27によって入力された用紙Pのサイズ情報)に基づいて認識することができる。
図11~図14は、用紙Pごとの上記パターンの一例をそれぞれ示している。例えば、用いる用紙PがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合、制御部110は、図11で示す開口部群82のパターンを選択する。つまり、制御部110は、図10で示した6つの開口部群82の中から、フラッシングに用いる開口部群82として、開口部群82A、82C、82Fを選択する。用いる用紙PがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合、制御部110は、図12で示すように、6つの開口部群82の中から、フラッシングに用いる開口部群82として、開口部群82A、82Dを選択する。用いる用紙PがA3サイズ、B4サイズまたはリーガルサイズ(いずれも縦置き)である場合、制御部110は、図13で示すように、6つの開口部群82の中から、フラッシングに用いる開口部群82として、開口部群82A、82B、82Eを選択する。用いる用紙Pが13インチ×19.2インチのサイズである場合、制御部110は、図14で示すように、6つの開口部群82の中から、フラッシングに用いる開口部群82として、開口部群82A、82Dを選択する。なお、各図面では、上記パターンに属する開口部群82の開口部80を、便宜的に黒塗りで示す。
そして、制御部110は、第1搬送ベルト8の走行により、決定したパターンで位置する開口部群82が記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで、記録ヘッド17a~17cにフラッシングを実行させる。ここで、第1搬送ベルト8の走行速度(用紙搬送速度)、開口部群82A~82Eの間隔、第1搬送ベルト8に対する記録ヘッド17a~17cの位置は、全て既知である。このため、第1搬送ベルト8の走行によって基準となる開口部群82(例えば開口部群82A)が通過したことをベルトセンサー24または25が検知すると、その検知時点から何秒後に開口部群82A~82Eが記録ヘッド17a~17cとの対向位置を通過するかがわかる。したがって、制御部110は、ベルトセンサー24または25での検知結果に基づき、上記で決定したパターンで位置する開口部群82が記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで、記録ヘッド17a~17cにフラッシングを実行させることができる。
このとき、制御部110は、ベルトセンサー24または25での検知結果に基づき、用紙Pのサイズに応じて決まるクラスごとに、第1搬送ベルト8の各周期において同じ開口部群82をインクが通過するように、記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングを制御する。
例えば、用いる用紙PがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合(第1のクラス)、制御部110は、第1搬送ベルト8の各周期で、図11で示す同じ開口部群82A、82C、82Fをインクが通過するように、記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングを制御する。用いる用紙PがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合(第2のクラス)、制御部110は、第1搬送ベルト8の各周期で、図12で示す同じ開口部群82A、82Dをインクが通過するように、記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングを制御する。用いる用紙PがA3サイズ、B4サイズまたはリーガルサイズ(いずれも縦置き)である場合(第3のクラス)、制御部110は、第1搬送ベルト8の各周期で、図13で示す同じ開口部群82A、82B、82Eをインクが通過するように、記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングを制御する。用いる用紙Pが13インチ×19.2インチのサイズである場合(第4のクラス)、制御部110は、第1搬送ベルト8の各周期で、図14で示す同じ開口部群82A、82Dをインクが通過するように、記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングを制御する。
また、制御部110は、決定したパターンで位置する開口部群82とはA方向にずれるように用紙Pの第1搬送ベルト8への供給を制御する。つまり、制御部110は、第1搬送ベルト8上で、上記パターンでA方向に並ぶ複数の開口部群82の間に、記録媒体供給部としてのレジストローラー対13によって用紙Pを供給させる。
例えば、用いる用紙PがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合、制御部110は、図11で示すように、第1搬送ベルト8上で、開口部群82Aと開口部群82Cとの間に2枚の用紙Pが配置され、開口部群82Cと開口部群82Fとの間に2枚の用紙Pが配置され、開口部群82Fと開口部群82Aとの間に1枚の用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して所定の供給タイミングで用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。このとき、制御部110は、第1搬送ベルト8上で、上記パターンで位置する開口部群82A、82C、82FからA方向(上流側、下流側の両方向を含む)に所定距離以上離れた位置に各用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。なお、上記所定距離は、ここでは一例として10mmとしている。
ここで、レジストローラー対13による用紙Pの供給タイミングは、制御部110がベルトセンサー24または25での検知結果に基づいて決定することができる。例えば、第1搬送ベルト8の走行によって基準となる開口部群82(例えば開口部群82A)が通過したことをベルトセンサー24または25が検知すると、制御部110はその検知時点から何秒後にレジストローラー対13によって用紙Pを第1搬送ベルト8に供給すれば、図11で示した各位置に用紙Pを配置できるかを判断することができる。したがって、制御部は、ベルトセンサー24または25での検知結果に基づいて用紙Pの供給タイミングを決定し、決定した供給タイミングで用紙Pが供給されるようにレジストローラー対13を制御する。これにより、第1搬送ベルト8上で図11で示した各位置に、およそ等間隔で用紙Pを配置することができる。図11の例では、第1搬送ベルト8の1周期で用紙Pを5枚搬送することができ、用紙Pの1分あたりの印字枚数(生産性)として、150ipm(images per minute)を実現することができる。
また、図11で示すように、A4サイズ(横置き)の用紙Pを第1搬送ベルト8に供給する場合、第1搬送ベルト8の開口部群82Fと開口部群82Aとの間には、用紙Pが1枚だけ供給される。この場合、制御部110は、開口部群82Fと開口部群82Aとの間の中間位置8mに、用紙PのA方向の中心Poが位置するように、ベルトセンサー24または25の検知結果に基づいてレジストローラー対13を制御し、レジストローラー対13から第1搬送ベルト8に用紙Pを供給させる。
一方、用いる用紙PがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合、制御部110は、図12で示すように、第1搬送ベルト8上で、開口部群82Aと開口部群82Dとの間に2枚の用紙Pが配置され、開口部群82Dと開口部群82Aとの間に2枚の用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して所定の供給タイミングで用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。図12の例では、第1搬送ベルト8の1周期で用紙Pを4枚搬送することができ、120ipmの生産性を実現することができる。
用いる用紙PがA3サイズ、B4サイズまたはリーガルサイズ(いずれも縦置き)である場合、制御部110は、図13で示すように、第1搬送ベルト8上で、開口部群82Aと開口部群82Bとの間に1枚の用紙Pが配置され、開口部群82Bと開口部群82Eとの間に1枚の用紙Pが配置され、開口部群82Eと開口部群82Aとの間に1枚の用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して所定の供給タイミングで用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。図13の例では、第1搬送ベルト8の1周期で用紙Pを3枚搬送することができ、90ipmの生産性を実現することができる。なお、制御部110は、決定したパターンに含まれる隣り合う2つの開口部群82の中間位置に、1枚の用紙PのA方向の中心が位置するように、ベルトセンサー24または25の検知結果に基づいてレジストローラー対13を制御し、第1搬送ベルト8に用紙Pを供給させることが望ましい。
用いる用紙Pが13インチ×19.2インチのサイズである場合、制御部110は、図14で示すように、第1搬送ベルト8上で、開口部群82Aと開口部群82Dとの間に1枚の用紙Pが配置され、開口部群82Dと開口部群82Aとの間に1枚の用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して所定の供給タイミングで用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。図14の例では、第1搬送ベルト8の1周期で用紙Pを2枚搬送することができ、60ipmの生産性を実現することができる。
以上のように、制御部110は、用いる用紙Pのサイズに応じて、フラッシングのときに用いる複数の開口部群82のA方向のパターン(組み合わせ)を決定する。これにより、どのサイズの用紙Pを用いる場合でも、上記パターンで並ぶ開口部群82と重ならないようにできるだけ多くの用紙Pを第1搬送ベルト8上に配置することができる。したがって、どのサイズの用紙Pを用いる場合でも、生産性の低下(印字枚数の低下)を回避することができる。
また、第1搬送ベルト8の1周期の間では、上記パターンで位置する複数の開口部群82を用いて複数回フラッシングを行うことができる。したがって、どのサイズの用紙Pを用いる場合でも、フラッシング不足およびそれによるノズル(インク吐出口18)の目詰まりを低減することができる。特に、制御部110は、第1搬送ベルト8の走行によって上記パターンで位置する開口部群82が記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで記録ヘッド17にフラッシングを実行させる。これにより、第1搬送ベルト8の1周期の間に複数回のフラッシングを確実に行ってフラッシング不足を解消することができる。
また、フラッシング不足を解消するために、従来のように用紙Pの搬送速度を低下させる必要がないため、この点でも生産性向上に寄与することができる。また、用紙Pの搬送速度を変化させる必要はないため、用紙Pの複雑な搬送制御(第1搬送ベルト8の複雑な駆動制御)も不要となる。
また、本実施形態では、記憶部28が、操作パネル27によって予め入力された用紙Pのサイズの情報、つまり、第1搬送ベルト8が搬送する用紙Pのサイズの情報を記憶している。そして、制御部110は、記憶部28に記憶された情報に基づいて、用いる用紙Pのサイズを認識し、認識した上記サイズに応じて、開口部群82の上記パターンを決定する。例えば、プリンター100が、用いる用紙Pのサイズを検知するセンサーを有し、制御部110が上記センサーで検知したサイズに応じて、開口部群82のパターンを決定することもできるが、この場合は、用紙Pのサイズを検知する専用のセンサーが必要となる。本実施形態では、制御部110が、記憶部28に記憶された情報に基づいて用紙Pのサイズを認識して上記パターンを決定するため、用紙Pのサイズを検知する専用のセンサーを別途設けることなく上記パターンを決定して、本実施形態の効果を得ることができる。
また、制御部110は、第1搬送ベルト8上で、上記パターンで並ぶ複数の開口部群82の間に、レジストローラー対13から用紙Pを供給させる。これにより、フラッシングのときに記録ヘッド17a~17cから吐出されたインクが開口部群82の開口部80に付着して上記開口部80が汚れたとしても、用紙Pは汚れた上記開口部80に重なって搬送されない。これにより、上記開口部80のインク汚れに起因して用紙Pが汚れる事態を低減することができる。
また、第1搬送ベルト8上で、用紙Pは、開口部群82からA方向に所定距離以上離れて位置する。これにより、例えばフラッシングのときに記録ヘッド17a~17cから吐出されたインクが、開口部群82に向かう経路から何らかの理由で(例えば用紙Pの負圧吸引の影響で)A方向に逸れて進行し、上記インクが開口部群82の開口部80の周辺に衝突して周囲に飛散しても(しぶきが発生しても)、飛散したインクが用紙Pに届きにくくなる。したがって、フラッシングのときのインクのしぶきに起因して用紙Pが汚れる事態を低減することができる。なお、上記所定距離は、インクの粘度、用紙Pの吸引力(上述した吸引部材53の駆動力)、第1搬送ベルト8の走行速度(用紙Pの搬送速度)などに応じて適宜設定されればよく、上記の10mmには限定されない。
また、本実施形態では、制御部110は、ベルトセンサー24または25の検知結果に基づいて、第1搬送ベルト8上で複数の開口部群82の間の上記位置(開口部群82からA方向に所定距離以上離れた位置)に用紙Pを供給するタイミングを決定し、決定したタイミングでレジストローラー対13から第1搬送ベルト8に用紙Pを供給させる。これにより、レジストローラー対13によって第1搬送ベルト8の開口部群82と開口部群82との間の上記位置に用紙Pを確実に供給して上述の効果を確実に得ることができる。
また、本実施形態では、上述したように、制御部110は、ベルトセンサー24または25での検知結果に基づき、用紙Pのサイズに応じて決まるクラスごとに、第1搬送ベルト8の各周期において同じ開口部群82をインクが通過するように、記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングを制御する。この場合、第1搬送ベルト8の各周期において、他の開口部群82がフラッシングのときのインクで汚れることがない。したがって、どのクラスの用紙Pについても、第1搬送ベルト8の各周期で、他の開口部群82と重なるように搬送しても汚れる心配がなく、そのような用紙Pの搬送が可能となる。つまり、どのクラスの用紙Pについても、各周期においてフラッシングのときのインクが通過する開口部群82を避けて配置して、用紙Pを汚すことなく搬送することが可能となる。
また、本実施形態では、図11で示したように、A方向に隣り合う開口部群82Fと開口部群82Aとの間に、レジストローラー対13から1枚の用紙Pを供給する場合、制御部110は、第1搬送ベルト8の隣り合う2つの開口部群82Fおよび82Aの中間位置8mに用紙PのA方向の中心Poが位置するように、ベルトセンサー24または25の検知結果に基づいてレジストローラー対13を制御して、レジストローラー対13から第1搬送ベルト8に用紙Pを供給させている。
この場合、第1搬送ベルト8上で、用紙Pの先端(A方向下流側の端部)および後端(A方向の上流側の端部)が両方とも、用紙Pに対して下流側に位置する開口部群82Fおよび上流側に位置する開口部群82Aから等距離だけ離れる。これにより、フラッシングのときに記録ヘッド17a~17cから吐出され、一方の開口部群82Fまたは他方の開口部群82Aに向かう経路から逸れて進行したインクが開口部80の周囲に衝突して飛散しても、飛散したインクが用紙Pの先端および後端に到達しにくくなる。したがって、インクのしぶきに起因して用紙Pが汚れる事態を確実に低減することができる。
また、本実施形態では、制御部110は、図11~図14に示すように、レジストローラー対13から第1搬送ベルト8に用紙Pを一定の間隔で供給させている。この場合、レジストローラー対13から第1搬送ベルト8への用紙Pの供給を一定のタイミングで制御すればよいため、用紙Pの供給制御(レジストローラー対13の制御)が容易となる。
また、本実施形態では、第1搬送ベルト8は、上述した開口部80に加えて、吸引孔8aをさらに有している。そして、第1搬送ベルト8において、開口部80の大きさ(開口面積)は、吸引孔8aの大きさ(開口面積)よりも大きい。例えば吸引孔8aが大きいと、フラッシング時に記録ヘッド17a~17cから吐出されるインクが、開口部80に向かう方向から吸引孔8a側に逸れて開口部80の周辺に衝突し、しぶきが発生することが懸念される。吸引孔8aが開口部80よりも相対的に小さいことにより、上記のしぶきの発生をさらに低減して、しぶきによる用紙Pの汚れをさらに低減することが可能となる。
また、第1搬送ベルト8の開口部群82は、第1搬送ベルトの1周期において、A方向に不定期に位置する。この場合、複数の用紙Pのサイズに対応可能な必要最小限の開口部群82をA方向に並べた第1搬送ベルト8を用いて、上述した本実施形態の効果を得ることができる。また、開口部群82の数を必要最小限に抑えることにより、第1搬送ベルト8の強度も確保しやすい。
また、図11で示したように、A4サイズ(横置き)とレターサイズ(横置き)とは同じクラス(第1のクラス)に属する。そして、このクラスでは、フラッシングに用いる開口部群82は、開口部群82A、82C、82Fの一定パターンである。また、図12で示したように、A4サイズ(縦置き)とレターサイズ(縦置き)とは同じクラス(第2のクラス)に属する。そして、このクラスでは、フラッシングに用いる開口部群82は、開口部群82A、82Dの一定パターンである。また、図13で示したように、A3サイズ、B4サイズまたはリーガルサイズ(いずれも縦置き)とは同じクラス(第3のクラス)に属する。そして、このクラスでは、フラッシングに用いる開口部群82は、開口部群82A、82B、82Eの一定パターンである。さらに、図14で示したように、13インチ×19.2インチのサイズは単独で1クラス(第4のクラス)を構成する。そして、このクラスでは、フラッシングに用いる開口部群82は、開口部群82A、82Dの一定パターンである。
このように、フラッシングのときに用いる開口部群82のパターンは、用紙Pのサイズに応じて決まるクラスごとに一定のパターンである。この場合、制御部110は、フラッシングのときに、クラスごとに、開口部群82のパターンと対応するパターンで記録ヘッド17a~17cにおけるインクの吐出制御を行えばよいため、その吐出制御が容易となる。
また、フラッシングのときに用いる開口部群82のパターンは、図11と図12、図12と図13、図13と図14とで互いに異なっている。一方、上記パターンは、図12と図14とでは同じである。このことから、上記パターンは、用紙Pのサイズに応じて決まる少なくとも2つのクラス間で異なっていると言える。このようなパターンの設定により、どの用紙Pのサイズ(クラス)に対しても、適切なパターンの開口部群82を用いて、生産性を低下させずにフラッシングを実行することができる。
また、第1搬送ベルト8において、開口部群82は、開口部列81をA方向に複数有している。そして、いずれかの開口部列81(例えば開口部れる81a)の開口部80は、他の開口部列81(例えば開口部列81b)の開口部80とベルト幅方向にずれて位置し、かつA方向に見て他の開口部列81の開口部80の一部と重畳するように位置する。この場合、記録ヘッド17a~17cの幅方向のどの位置のノズル(インク吐出口18)についても、ノズルからインクを吐出して、第1搬送ベルト8においてベルト幅方向のいずれかの位置にある開口部80を通過させてフラッシングを行うことができる。したがって、幅方向の全ての位置のノズルについて、ノズルの目詰まりを低減または予防することができる。
また、第1搬送ベルト8において、開口部列81の複数の開口部80は、ベルト幅方向に等間隔で位置する。この構成では、複数の開口部列81をベルト幅方向にずらして位置させることで、A方向に見て隣り合う開口部列81の開口部80の一部を重畳させることが容易となる。したがって、そのような構成の第1搬送ベルト8を製造することが容易となる。
また、本実施形態では、第1搬送ベルト8は、1周期において、A方向に開口部群82を6か所有している。この場合、用紙Pのサイズに応じて分類される4クラスについて、生産性を低下させることのない開口部群82のA方向のパターンを生成することができる。なお、第1搬送ベルト8は、1周期において、A方向に開口部群82を7か所以上有していてもよい。この場合、用紙Pのサイズに応じて分類される5以上のクラスについて、生産性を低下させることのない開口部群82のA方向のパターンを生成することが可能である。
(3-3.第1搬送ベルトの他の構成例)
図15は、第1搬送ベルト8の他の構成例を示す平面図である。第1搬送ベルト8は、上述した開口部群82が、第1搬送ベルト8の搬送方向、つまりA方向に等間隔で位置する構成であってもよい。このとき、A方向に隣り合う2つの開口部群82は、印字可能な最小サイズの用紙Pが第1搬送ベルト8上に載置されたときの用紙PのA方向の長さよりも短い間隔で位置する。また、図15の構成では、開口部群82を構成する開口部80が、図10の構成における吸引孔8aを兼ねている。なお、開口部群82が複数の開口部列81を有している点、1つの開口部列81がBB’方向に等間隔で並ぶ複数の開口部80を有している点は、図10等で示した第1搬送ベルト8と同じである。
図15で示す第1搬送ベルト8を用いた場合でも、制御部110は、図10で示す第1搬送ベルト8を用いた場合と同様に、用いる用紙Pのサイズに応じて、フラッシングのときに用いる複数の開口部群82のA方向のパターンを決定する。例えば、用いる用紙PがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合、制御部110は、図16で示す開口部群82のパターンを選択する。用いる用紙PがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合、制御部110は、図17で示す開口部群82のパターンを選択する。用いる用紙PがA3サイズ、B4サイズまたはリーガルサイズ(いずれも縦置き)である場合、制御部110は、図18で示す開口部群82のパターンを選択する。用いる用紙Pが13インチ×19.2インチのサイズである場合、制御部110は、図19で示す開口部群82のパターンを選択する。なお、図16~図19では、便宜的に、図10の開口部群82A~82Fと対応する位置にある開口部群82を、開口部群82A~82Fとして示している。
そして、制御部110は、第1搬送ベルト8の走行により、決定したパターンで位置する開口部群82が記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで、記録ヘッド17a~17cにフラッシングを実行させる。
また、制御部110は、第1搬送ベルト8上で、図16~図19で示す位置に(上記パターンでA方向に並ぶ複数の開口部群82の間に)、レジストローラー対13によって用紙Pを供給させる。このとき、制御部110は、第1搬送ベルト8上で、上記パターンで位置する開口部群82からA方向(上流側、下流側の両方向を含む)に所定距離以上離れた位置に各用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。
以上のように、図15に示す第1搬送ベルト8を用いた場合でも、制御部110は、図10で示した第1搬送ベルト8を用いた場合と同様の制御(フラッシング制御、用紙Pの供給制御)を行うことにより、どのサイズの用紙Pを用いる場合でも、生産性の低下を回避しつつ、フラッシング不足によるノズルの目詰まりを低減することができるなど、上記と同様の効果を得ることができる。
特に、開口部群82が第1搬送ベルト8のA方向に等間隔で位置する構成は、第1搬送ベルト8に対してA方向に一定間隔で孔をあけることによって容易に実現できる。したがって、第1搬送ベルト8の製造が容易となり、その製造コストを低減することができる。
また、第1搬送ベルト8の開口部80が図10で示した吸引孔8aの機能を兼ねる構成では、開口部80の開口面積=吸引孔8aの開口面積であり、第1搬送ベルト8に形成する孔のサイズは1種類のみで済む。この点でも、サイズの異なる2種類の孔を形成する図10の構成に比べて、第1搬送ベルト8の製造が容易である。
なお、負圧吸引方式で用紙Pを第1搬送ベルト9で搬送する構成において、生産性の低下を回避しつつ、フラッシング不足によるノズルの目詰まりを低減する等の効果を得る上では、第1搬送ベルト8は図10の構成であっても図15の構成であってもよい。したがって、図10および図15の構成をまとめると、第1搬送ベルト8において、開口部80の大きさは吸引孔8aの大きさ以上であればよいと言える。
なお、図15の構成の第1搬送ベルト8では、フラッシング用の開口部80がベルト全面にわたって無数に形成されているため、第1搬送ベルト8において用紙PをA方向に詰めて搬送し、用紙Pと重ならない位置の開口部80を用いてフラッシングを行うことで、生産性を格段に向上させることができる。しかし、そのように用紙Pを搬送すると、第1搬送ベルト8の各周期で、フラッシングのときのインクの通過によって汚れた開口部80と、搬送する用紙Pとが重なりやすくなり、用紙Pが汚れやすくなる。
図15の第1搬送ベルト8を用いた構成であっても、上述のように、用紙Pのサイズに応じてフラッシングのときに用いる開口部群82のパターンを決定し、決定したパターンで位置する開口部群82を用いてフラッシングを行うことにより、各周期において同じ開口部群82を用いてフラッシングを行うとともに、フラッシングのときに用いる開口部群82とはずれた位置に用紙Pを配置して搬送することができる。これにより、生産性を確保しながら、複数の周期にわたって用紙Pを搬送して印字する場合の用紙Pの汚れを低減することができる。この点で、図15の構成の第1搬送ベルト8を用いた場合でも、本実施形態で説明したフラッシング制御および用紙Pの供給制御は有効である。
なお、図15で示した第1搬送ベルト8で用紙Pを搬送する場合、フラッシング時に用いる開口部群82のパターンは、図10で示した第1搬送ベルト8を用いた場合のパターンとは異なるパターンであってもよい。例えば、図16~図19で示した位置で搬送される用紙Pと用紙Pとの間に位置する開口部群に対してフラッシングを行うようにしてもよい。
以上では、インクジェット記録装置として、4色のインクを用いてカラーの画像を記録するカラープリンターを用いた例について説明したが、ブラックのインクを用いてモノクロの画像を記録するモノクロプリンターを用いた場合でも、本実施形態で述べた制御を適用することは可能である。