以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
本明細書中、n+形、n形、n-形との表記がある場合、n+形、n形、n-形の順でn形の不純物濃度が低くなっていることを意味する。また、p+形、p形、p-形の表記がある場合、p+形、p形、p-形の順で、p形の不純物濃度が低くなっていることを意味する。
本明細書中、半導体領域の不純物濃度の分布及び絶対値は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)を用いて測定することが可能である。また、2つの半導体領域の不純物濃度の相対的な大小関係は、例えば、走査型静電容量顕微鏡法(Scanning Capacitance Microscopy:SCM)を用いて判定することが可能である。また、不純物濃度の分布及び絶対値は、例えば、拡がり抵抗測定法(Spreading Resistance Analysis:SRA)を用いて測定することが可能である。SCM及びSRAでは、半導体領域のキャリア濃度の相対的な大小関係や絶対値が求まる。不純物の活性化率を仮定することで、SCM及びSRAの測定結果から、2つの半導体領域の不純物濃度の間の相対的な大小関係、不純物濃度の分布、及び、不純物濃度の絶対値を求めることが可能である。
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面を有する半導体層と、半導体層の第1の面の側に設けられた第1のゲート電極を、有する第1のトランジスタと、半導体層の第2の面の側に設けられた第2のゲート電極を、有する第2のトランジスタと、を含むトランジスタ領域と、半導体層と、第2のゲート電極に電気的に接続され半導体層の第2の面の側に設けられた第3のゲート電極を有し、第2のトランジスタの閾値電圧の絶対値よりも小さい閾値電圧の絶対値を有する第3のトランジスタと、を含みトランジスタ領域に隣接する隣接領域と、を備える。
第1の実施形態の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT100である。また、RC-IGBT100は、半導体層の表面側及び裏面側にゲート電極を備える両面ゲート構造のIGBTである。以下、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明する。
図1は、第1の実施形態の半導体装置の模式平面図である。図1(a)はRC-IGBT100の半導体層の表面側から見た平面図である。図1(b)はRC-IGBT100の半導体層の裏面側から見た平面図である。図1は、RC-IGBT100のレイアウトを示す図である。
RC-IGBT100は、IGBT領域100a、ダイオード領域100b、及び境界領域100cを備える。また、RC-IGBT100は、第1の電極パッド101及び第2の電極パッド102を備える。IGBT領域100aは、トランジスタ領域の一例である。境界領域100cは、隣接領域の一例である。
IGBT領域100aとダイオード領域100bとの間に、境界領域100cが設けられる。境界領域100cは、IGBT領域100aに隣接する。境界領域100cは、IGBT領域100aのIGBTの動作と素子領域のダイオードの動作が干渉し、RC-IGBT100の特性劣化が生じることを抑制する。
第1の電極パッド101は、例えば、半導体層の表面側に設けられる。第2の電極パッド102は、例えば、半導体層の裏面側に設けられる。
図2は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図2は、図1(a)のAA’断面である。
第1の実施形態のRC-IGBT100は、半導体層10、上部電極12(第1の電極)、下部電極14(第2の電極)、第1のゲート絶縁膜21、第2のゲート絶縁膜22、第3のゲート絶縁膜23、ダミーゲート絶縁膜24、第1のゲート電極31、第2のゲート電極32、第3のゲート電極33、ダミーゲート電極34、表面層間絶縁層42、裏面層間絶縁層44、第1の電極パッド101、第2の電極パッド102を備える。
IGBT領域100aは、IGBTとして動作する。ダイオード領域100bは、還流ダイオードとして動作する。還流ダイオードは、例えば、Fast Recovery Diode(FRD)である。
IGBT領域100aは、第1のゲート電極31を有する第1のトランジスタと、第2のゲート電極32を有する第2のトランジスタを含む。境界領域100cは、第3のゲート電極33を有する第3のトランジスタを含む。
第1のトランジスタは、第1のゲート電極31に印加される電圧によって制御される。第2のトランジスタは、第2のゲート電極32に印加される電圧によって制御される。第3のトランジスタは、第3のゲート電極33に印加される電圧によって制御される。
第1のトランジスタは、半導体層10の第1の面P1側に設けられる。第1のトランジスタは、ゲート電極がトレンチの中に設けられたトレンチゲート構造を有する。第1のトランジスタは、IGBTである。
第2のトランジスタは、半導体層10の第2の面P2側に設けられる。第2のトランジスタは、プレーナゲート構造である。第2のトランジスタは、いわゆる裏面トランジスタである。第2のトランジスタは、電子をキャリアとするn形のMetal Oxide Field Effect Transistor(MOSFET)である。
第3のトランジスタは、半導体層10の第2の面P2側に設けられる。第3のトランジスタは、プレーナゲート構造である。第3のトランジスタは、いわゆる裏面トランジスタである。第3のトランジスタは、電子をキャリアとするn形のMOSFETである。
第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、及び第3のトランジスタは、構造上明確に他の構造と分離されているわけではない。例えば、図2中の破線Xで囲まれる領域が第1のトランジスタの一つのユニットに対応する。また、例えば、図2中の破線Yで囲まれる領域が第2のトランジスタの一つのユニットに対応する。また、例えば、図2中の破線Zで囲まれる領域が第3のトランジスタの一つのユニットに対応する。
半導体層10の中には、メインゲートトレンチ51(第1のトレンチ)、ダミーゲートトレンチ52、n形の第1のドレイン領域60(第6の半導体領域)、n形の第2のドレイン領域62(第7の半導体領域)、p形の第1のコレクタ領域64(第4の半導体領域)、p形の第2のコレクタ領域66(第5の半導体領域)、n形のバッファ領域68、n形のドリフト領域70(第1の半導体領域)、p形のベース領域72(第2の半導体領域)、n形のエミッタ領域74(第3の半導体領域)、n形のカソード領域76、及びp形のアノード領域78が設けられる。
上部電極12は、第1の電極の一例である。下部電極14は、第2の電極の一例である。メインゲートトレンチ51は、第1のトレンチの一例である。第1のドレイン領域60は、第6の半導体領域の一例である。第2のドレイン領域62は、第7の半導体領域の一例である。第1のコレクタ領域64は、第4の半導体領域の一例である。第2のコレクタ領域66は、第5の半導体領域の一例である。ドリフト領域70は、第1の半導体領域の一例である。ベース領域72は、第2の半導体領域の一例である。エミッタ領域74は、第3の半導体領域の一例である。
半導体層10は、第1の面P1と、第1の面P1に対向する第2の面P2とを有する。第1の面P1が半導体層10の表面、第2の面P2が半導体層10の裏面である。半導体層10は、例えば、単結晶シリコンである。半導体層10の膜厚は、例えば、40μm以上700μm以下である。
本明細書中、第1の面P1に平行な一方向を第1の方向と称する。また、第1の面P1に平行で第1の方向に直交する方向を第2の方向と称する。また、本明細書中、「深さ」とは、第1の面P1を基準とする第2の面P2に向かう方向の距離と定義する。
上部電極12は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。上部電極12の少なくとも一部は半導体層10の第1の面P1に接する。
上部電極12は、IGBT領域100aでは、第1のトランジスタのエミッタ電極として機能する。上部電極12は、ダイオード領域100bでは、ダイオードのアノード電極として機能する。上部電極12は、例えば、金属である。
上部電極12は、IGBT領域100aにおいて、エミッタ領域74に電気的に接続される。上部電極12は、IGBT領域100aにおいて、エミッタ領域74に接する。
上部電極12は、ダイオード領域100bにおいて、アノード領域78に電気的に接続される。上部電極12は、ダイオード領域100bにおいて、アノード領域78に接する。
上部電極12には、エミッタ電圧(Ve)が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。
下部電極14は、半導体層10の第2の面P2の側に設けられる。下部電極14の少なくとも一部は半導体層10の第2の面P2に接する。
下部電極14は、IGBT領域100aでは、第1のトランジスタのコレクタ電極として機能する。下部電極14は、ダイオード領域100bでは、ダイオードのカソード電極として機能する。下部電極14は、例えば、金属である。
下部電極14は、IGBT領域100aにおいて、第1のコレクタ領域64に電気的に接続される。下部電極14は、IGBT領域100aにおいて、第1のコレクタ領域64に接する。
下部電極14は、ダイオード領域100bにおいて、カソード領域76に電気的に接続される。下部電極14は、ダイオード領域100bにおいて、カソード領域76に接する。
下部電極14は、境界領域100cにおいて、第2のコレクタ領域66に電気的に接続される。下部電極14は、境界領域100cにおいて、第2のコレクタ領域66に接する。
下部電極14には、コレクタ電圧(Vc)が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
ドリフト領域70は、n形の半導体領域である。ドリフト領域70は、IGBT領域100a、ダイオード領域100b、及び境界領域100cに設けられる。
ドリフト領域70は、第1のトランジスタのオン状態の際にオン電流の経路となる。ドリフト領域70は、IGBTのオフ状態の際に空乏化し、IGBTの耐圧を維持する機能を有する。
ドリフト領域70は、ダイオードのオン状態の際にオン電流の経路となる。ドリフト領域70は、ダイオードのオフ状態の際に空乏化し、ダイオードの耐圧を維持する機能を有する。
ベース領域72は、p形の半導体領域である。ベース領域72は、IGBT領域100aと境界領域100cに設けられる。ベース領域72は、ドリフト領域70と第1の面P1との間に設けられる。なお、境界領域100cのベース領域72のp形不純物濃度は、IGBT領域100aのベース領域72のp形不純物濃度と同じであっても異なっていても構わない。また、境界領域100cのベース領域72のp形不純物濃度は、ダイオード領域100bのアノード領域78のp形不純物濃度と同じであっても異なっていても構わない。
ベース領域72の第1のゲート電極31と対向する領域には、第1のトランジスタのオン状態の際にn形反転層が形成される。ベース領域72は第1のトランジスタのチャネル領域として機能する。ベース領域72は、上部電極12に電気的に接続される。ベース領域72は、図示しない部分で、上部電極12と接する。
エミッタ領域74は、n形の半導体領域である。エミッタ領域74は、IGBT領域100aに設けられる。エミッタ領域74は、ダイオード領域100b及び境界領域100cには設けられない。
エミッタ領域74は、IGBT領域100aにおいて、ベース領域72と第1の面P1との間に設けられる。エミッタ領域74のn形不純物濃度は、ドリフト領域70のn形不純物濃度より高い。
エミッタ領域74は、上部電極12に電気的に接続される。エミッタ領域74は、上部電極12に接する。エミッタ領域74は、第1のトランジスタのオン状態の際に電子の供給源となる。
第1のコレクタ領域64は、p形の半導体領域である。第1のコレクタ領域64は、IGBT領域100aに設けられる。第1のコレクタ領域64は、ドリフト領域70と第2の面P2との間に設けられる。第1のコレクタ領域64は、第2の面P2に接する。
第1のコレクタ領域64は、下部電極14に電気的に接続される。第1のコレクタ領域64は、下部電極14に接する。第1のコレクタ領域64は、第1のトランジスタのオン状態の際に正孔の供給源となる。
第1のコレクタ領域64の一部は、第2のゲート電極32に対向する。第2のゲート電極32に対向する第1のコレクタ領域64には、第2のゲート電極32によって制御される第2のトランジスタのチャネルが形成される。
第2のコレクタ領域66は、p形の半導体領域である。第2のコレクタ領域66は、境界領域100cに設けられる。第2のコレクタ領域66は、ドリフト領域70と第2の面P2との間に設けられる。第2のコレクタ領域66は、第2の面P2に接する。
第2のコレクタ領域66は、下部電極14に電気的に接続される。第2のコレクタ領域66は、下部電極14に接する。第2のコレクタ領域66は、第1のトランジスタのオン状態の際に正孔の供給源となる。
第2のコレクタ領域66の一部は、第3のゲート電極33に対向する。第3のゲート電極33に対向する第2のコレクタ領域66には、第3のゲート電極33によって制御される第3のトランジスタのチャネルが形成される。
第3のゲート電極33に対向する部分の第2のコレクタ領域66のp形不純物濃度は、第2のゲート電極32に対向する部分の第1のコレクタ領域64のp形不純物濃度よりも低い。なお、IGBT領域100aと境界領域100cとを跨ぐコレクタ領域については、第1のコレクタ領域64と第2のコレクタ領域66のいずれのコレクタ領域であっても構わない。
第1のドレイン領域60は、n形の半導体領域である。第1のドレイン領域60は、IGBT領域100aに設けられる。第1のドレイン領域60は、第1のコレクタ領域64と第2の面P2との間に設けられる。第1のドレイン領域60は、第2の面P2に接する。
第1のドレイン領域60の一部は、第2のゲート電極32に対向する。第1のドレイン領域60の一部は、下部電極14に接する。
第1のドレイン領域60は、第2のトランジスタのドレインとして機能する。第1のドレイン領域60のn形不純物濃度は、ドリフト領域70のn形不純物濃度より高い。
第2のドレイン領域62は、n形の半導体領域である。第2のドレイン領域62は、境界領域100cに設けられる。第2のドレイン領域62は、第2のコレクタ領域66と第2の面P2との間に設けられる。第2のドレイン領域62は、第2の面P2に接する。
第2のドレイン領域62の一部は、第2のゲート電極32に対向する。第2のドレイン領域62の一部は、下部電極14に接する。
第2のドレイン領域62は、第3のトランジスタのドレインとして機能する。第2のドレイン領域62のn形不純物濃度は、ドリフト領域70のn形不純物濃度より高い。
バッファ領域68は、n形の半導体領域である。バッファ領域68は、IGBT領域100a、境界領域100c、及びダイオード領域100bに設けられる。
バッファ領域68は、ドリフト領域70と第1のコレクタ領域64との間に設けられる。バッファ領域68は、ドリフト領域70と第1のコレクタ領域64との間に設けられる。バッファ領域68は、ドリフト領域70とカソード領域76との間に設けられる。
バッファ領域68の一部は第2の面P2に接する。バッファ領域68の一部は、第2のゲート電極32に対向する。バッファ領域68の一部は、第3のゲート電極33に対向する。
バッファ領域68のn形不純物濃度は、ドリフト領域70のn形不純物濃度よりも高い。
バッファ領域68は、ドリフト領域70よりも低抵抗である。バッファ領域68を設けることで、第2のトランジスタ及び第3のトランジスタがオン状態となる時に、ドリフト領域70から第2のトランジスタ及び第3のトランジスタを経由した下部電極14への電子の排出が促進される。
また、バッファ領域68は、RC-IGBT100のオフ状態の際に、空乏層の伸びを抑制する機能も有する。なお、バッファ領域68を設けない構成とすることも可能である。
カソード領域76は、n形の半導体領域である。カソード領域76は、ダイオード領域100bに設けられる。カソード領域76は、バッファ領域68と第2の面P2との間に設けられる。
カソード領域76のn形不純物濃度は、バッファ領域68のn形不純物濃度よりも高い。
カソード領域76は、下部電極14に電気的に接続される。カソード領域76は、下部電極14に接する。
アノード領域78は、p形の半導体領域である。アノード領域78は、ダイオード領域100bに設けられる。アノード領域78は、ドリフト領域70と第1の面P1との間に設けられる。
アノード領域78は、上部電極12に電気的に接続される。アノード領域78は、上部電極12に接する。
メインゲートトレンチ51は、IGBT領域100aに設けられる。メインゲートトレンチ51は、半導体層10の第1の面P1の側に、ベース領域72に接して設けられる。
メインゲートトレンチ51は、半導体層10に設けられた溝である。メインゲートトレンチ51は、半導体層10の一部である。
メインゲートトレンチ51は、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延伸する。メインゲートトレンチ51は、ストライプ形状を有する。複数のメインゲートトレンチ51は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。
メインゲートトレンチ51は、ベース領域72を貫通し、ドリフト領域70に達する。
第1のゲート電極31は、IGBT領域100aに設けられる。第1のゲート電極31は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。第1のゲート電極31は、メインゲートトレンチ51の中に設けられる。
第1のゲート電極31は、例えば、半導体又は金属である。第1のゲート電極31は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンである。第1のゲート電極31は、第1の電極パッド101に電気的に接続される。
第1のゲート絶縁膜21は、第1のゲート電極31と半導体層10との間に設けられる。第1のゲート絶縁膜21は、第1のゲート電極31とドリフト領域70との間、第1のゲート電極31とベース領域72との間、及び、第1のゲート電極31とエミッタ領域74との間に設けられる。第1のゲート絶縁膜21は、ドリフト領域70、ベース領域72、及び、エミッタ領域74に接する。第1のゲート絶縁膜21は、例えば、酸化シリコンである。
ダミーゲートトレンチ52は、境界領域100c及びダイオード領域100bに設けられる。ダミーゲートトレンチ52は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。なお、境界領域100c又はダイオード領域100bにダミーゲートトレンチ52を設けない構成とすることも可能である。
ダミーゲートトレンチ52は、半導体層10に設けられた溝である。ダミーゲートトレンチ52は、半導体層10の一部である。
ダミーゲートトレンチ52は、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延伸する。ダミーゲートトレンチ52は、ストライプ形状を有する。複数のダミーゲートトレンチ52は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。
ダミーゲートトレンチ52は、ベース領域72を貫通し、ドリフト領域70に達する。ダミーゲートトレンチ52は、アノード領域78を貫通し、ドリフト領域70に達する。
ダミーゲート電極34は、ダミーゲートトレンチ52の中に設けられる。ダミーゲート電極34は、例えば、半導体又は金属である。ダミーゲート電極34は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンである。
ダミーゲート電極34は、例えば、上部電極12に電気的に接続される。なお、ダミーゲート電極34を特定の電位に固定しないフローティング状態とすることも可能である。
ダミーゲート絶縁膜24は、ダミーゲート電極34と半導体層10との間に設けられる。ダミーゲート絶縁膜24は、境界領域100cにおいて、ダミーゲート電極34とドリフト領域70との間、及びダミーゲート電極34とベース領域72との間に設けられる。ダミーゲート絶縁膜24は、ダイオード領域100bにおいて、ダミーゲート電極34とドリフト領域70との間、及びダミーゲート電極34とアノード領域78との間に設けられる。ダミーゲート絶縁膜24は、例えば、酸化シリコンである。
第2のゲート電極32は、IGBT領域100aに設けられる。第2のゲート電極32は、半導体層10の第2の面の側に設けられる。
第2のゲート電極32は、例えば、半導体又は金属である。第2のゲート電極32は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンである。第2のゲート電極32は、第2の電極パッド102に電気的に接続される。
第2のゲート絶縁膜22は、第2のゲート電極32と半導体層10との間に設けられる。第2のゲート絶縁膜22は、第2のゲート電極32と第1のコレクタ領域64との間、第2のゲート電極32と第1のドレイン領域60との間、及び第2のゲート電極32とバッファ領域68との間に設けられる。第2のゲート絶縁膜22は、第1のコレクタ領域64、第1のドレイン領域60、及びバッファ領域68に接する。第2のゲート絶縁膜22は、例えば、酸化シリコンである。
第3のゲート電極33は、境界領域100cに設けられる。第3のゲート電極33は、半導体層10の第2の面の側に設けられる。
第3のゲート電極33は、例えば、半導体又は金属である。第3のゲート電極33は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンである。第3のゲート電極33は、第2の電極パッド102に電気的に接続される。
第3のゲート絶縁膜23は、第3のゲート電極33と半導体層10との間に設けられる。第3のゲート絶縁膜23は、第3のゲート電極33と第2のコレクタ領域66との間、第3のゲート電極33と第2のドレイン領域62との間、及び第3のゲート電極33とバッファ領域68との間に設けられる。第3のゲート絶縁膜23は、第2のコレクタ領域66、第2のドレイン領域62、及びバッファ領域68に接する。第3のゲート絶縁膜23は、例えば、酸化シリコンである。
表面層間絶縁層42は、第1のゲート電極31と上部電極12との間に設けられる。表面層間絶縁層42は、第1のゲート電極31と上部電極12との間を電気的に分離する。表面層間絶縁層42は、例えば、酸化シリコンである。
裏面層間絶縁層44は、第2のゲート電極32と下部電極14との間に設けられる。裏面層間絶縁層44は、第2のゲート電極32と下部電極14との間を電気的に分離する。裏面層間絶縁層44は、第3のゲート電極33と下部電極14との間に設けられる。裏面層間絶縁層44は、第3のゲート電極33と下部電極14との間を電気的に分離する。裏面層間絶縁層44は、例えば、酸化シリコンである。
第1の電極パッド101は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。第1の電極パッド101は、第1のゲート電極31に電気的に接続される。第1の電極パッド101と第1のゲート電極31は、例えば、図示しない金属配線で接続される。第1の電極パッド101には、第1のゲート電圧(Vg1)が印加される。
第2の電極パッド102は、半導体層10の第2の面P2の側に設けられる。第2の電極パッド102は、第2のゲート電極32及び第3のゲート電極33に電気的に接続される。第2の電極パッド102と、第2のゲート電極32及び第3のゲート電極33は、例えば、図示しない金属配線で接続される。第2の電極パッド102には、第2のゲート電圧(Vg2)が印加される。
RC-IGBT100の第3のトランジスタの閾値電圧の絶対値は、第2のトランジスタの閾値電圧より低い。RC-IGBT100において、第2のトランジスタ及び第3のトランジスタはn形MOSFETである。したがって、第2のトランジスタの閾値電圧及び第3のトランジスタの閾値電圧は正の値である。よって、第3のトランジスタの閾値電圧は、第2のトランジスタの閾値電圧より低い。
第3のゲート電極33を有する第3のトランジスタの閾値電圧は、例えば、第2のゲート電極32を有する第2のトランジスタの閾値電圧の3分の2以下である。
第3のゲート電極33に対向する部分の第2のコレクタ領域66のp形不純物濃度は、第2のゲート電極32に対向する部分の第1のコレクタ領域64のp形不純物濃度よりも低い。第3のゲート電極33に対向する部分の第2のコレクタ領域66のp形不純物濃度が、第2のゲート電極32に対向する部分の第1のコレクタ領域64のp形不純物濃度よりも低いことで、第3のトランジスタの閾値電圧が第2のトランジスタの閾値電圧よりも低くなる。
次に、RC-IGBT100の駆動方法について説明する。
図3は、第1の実施形態の半導体装置の駆動方法の説明図である。図3は、第1の電極パッド101に印加される第1のゲート電圧(Vg1)と、第2の電極パッド102に印加される第2のゲート電圧(Vg2)のタイミングチャートである。
RC-IGBT100のオフ状態では、上部電極12には、エミッタ電圧(Ve)が印加される。例えば、時刻t0では、上部電極12には、エミッタ電圧(Ve)が印加される。エミッタ電圧(Ve)は、例えば、0Vである。
RC-IGBT100のオフ状態では、下部電極14には、コレクタ電圧(Vc)が印加される。コレクタ電圧(Vc)は、例えば、200V以上6500V以下である。下部電極14と上部電極12の間に印加されるコレクタ-エミッタ間電圧(Vce)は、例えば、200V以上6500V以下である。
なお、第1のゲート電圧(Vg1)はエミッタ電圧(Ve)を基準とする電圧である。また、第2のゲート電圧(Vg2)は、コレクタ電圧(Vc)を基準とする電圧である。
最初に、第1のトランジスタに印加される第1のゲート電圧(Vg1)の変化タイミングについて説明する。
例えば、時刻t0では、第1のゲート電圧(Vg1)として第1のターンオフ電圧(Voff1)が印加されている。第1のターンオフ電圧(Voff1)とは、第1のトランジスタがオン状態とならない閾値電圧以下の電圧である。
第1のターンオフ電圧(Voff1)は、例えば、0V又は負電圧である。図3には、第1のターンオフ電圧(Voff1)が0Vである場合を例示する。
時刻t1で、第1のゲート電圧(Vg1)として第1のターンオン電圧(Von1)が印加される。第1のターンオン電圧(Von1)は、第1のトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。図3には、第1のターンオン電圧(Von1)が15Vである場合を例示する。
第1のトランジスタに第1のターンオン電圧(Von1)が印加されることで、RC-IGBT100がオン状態になる。RC-IGBT100を時刻t1でターンオン動作させる。
第1のトランジスタに第1のターンオン電圧(Von1)を印加することにより、p形のベース領域72の第1のゲート絶縁膜21との界面近傍にn形反転層が形成される。n形反転層が形成されることにより、n形のエミッタ領域74から電子がn形反転層を通ってn形のドリフト領域70に注入される。
n形のドリフト領域70に注入された電子は、n形のバッファ領域68とp形の第1のコレクタ領域64との間、及び、n形のバッファ領域68とp形の第2のコレクタ領域66との間で形成されるpn接合を順バイアスする。電子は、下部電極14に到達するとともにp形の第1のコレクタ領域64及びp形の第2のコレクタ領域66から正孔の注入を引き起こす。したがって、RC-IGBT100がオン状態となる。
時刻t2で、第1のゲート電圧(Vg1)として第1のターンオフ電圧(Voff1)が印加される。第1のトランジスタに第1のターンオフ電圧(Voff1)が印加されることで、RC-IGBT100がオフ状態になる。時刻t1から時刻t2の間で、RC-IGBT100がオン状態にある。
次に、裏面トランジスタである第2のトランジスタ及び第3のトランジスタに印加される第2のゲート電圧(Vg2)の変化タイミングについて説明する。
例えば、時刻t0では、第2のゲート電圧(Vg2)として第2のターンオフ電圧(Voff2)が印加されている。第2のターンオフ電圧(Voff2)とは、第2のトランジスタ及び第3のトランジスタがオン状態とならない閾値電圧以下の電圧である。
第2のターンオフ電圧(Voff2)は、例えば、0V又は負電圧である。図3には、第2のターンオフ電圧(Voff2)が0Vである場合を例示する。
時刻t1以降の時刻txで、第2のゲート電圧(Vg2)として第2のターンオン電圧(Von2)が印加される。第2のターンオン電圧(Von2)は、第2のトランジスタ及び第3のトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。図3には、第2のターンオン電圧(Von2)が15Vである場合を例示する。
なお、時刻txは、時刻t2の前であっても、時刻t2の後であっても構わない。図3では、時刻txが時刻t2の前である場合を例示している。
第2のトランジスタに第2のターンオン電圧(Von2)を印加することにより、p形の第1のコレクタ領域64の第2のゲート絶縁膜22との界面近傍に、n形反転層が形成される。また、第3のトランジスタに第2のターンオン電圧(Von2)を印加することにより、p形の第2のコレクタ領域66の第3のゲート絶縁膜23との界面近傍に、n形反転層が形成される。
p形の第1のコレクタ領域64の第2のゲート絶縁膜22との界面近傍にn形反転層が形成されることにより、電子がIGBT領域100aのn形のバッファ領域68から、n形反転層、n形の第1のドレイン領域60を通って下部電極14へと排出される経路が形成される。
また、p形の第2のコレクタ領域66の第3のゲート絶縁膜23との界面近傍にn形反転層が形成されることにより、電子が境界領域100cのn形のバッファ領域68から、n形反転層、n形の第2のドレイン領域62を通って下部電極14へと排出される経路が形成される。
つまり、IGBT領域100a及び境界領域100cのn形のバッファ領域68と下部電極14とが短絡する状態、いわゆる、アノード・ショートが生じる。
アノード・ショートが生じることにより、電子がIGBT領域100aのn形のバッファ領域68からp形の第1のコレクタ領域64を通って下部電極14へ到達することが妨げられる。このため、p形の第1のコレクタ領域64からIGBT領域100aのドリフト領域70への正孔の注入が抑制される。
同様に、アノード・ショートが生じることにより、電子が境界領域100cのn形のバッファ領域68からp形の第2のコレクタ領域66を通って下部電極14へ到達することが妨げられる。このため、p形の第2のコレクタ領域66から境界領域100cのドリフト領域70への正孔の注入が抑制される。
なお、第1の実施形態のRC-IGBT100では、境界領域100cの第3のトランジスタの閾値電圧が、IGBT領域100aの第2のトランジスタの閾値電圧より低い。したがって、時刻txで、第2のゲート電極32と第3のゲート電極33とに同時に第2のターンオン電圧(Von2)を印加した場合、閾値電圧の低い第3のトランジスタが第2のトランジスタに先行してターンオン動作する。
したがって、境界領域100cのドリフト領域70への正孔の注入が、IGBT領域100aのドリフト領域70への正孔の注入に先行して抑制される。よって、境界領域100cのドリフト領域70の正孔の量が、IGBT領域100aのドリフト領域70の正孔の量よりも先行して減少する。
その後、時刻t3で、第2のゲート電圧(Vg2)として第2のターンオフ電圧(Voff2)を印加して、第2のトランジスタ及び第3のトランジスタをオフ状態にする。
次に、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
第1の実施形態のRC-IGBT100は、IGBT領域100aの半導体層10の裏面側に、裏面トランジスタとして第2のトランジスタを備える。RC-IGBT100のターンオフ動作の際に、第2のトランジスタをオン状態にすることで、IGBT領域100aのドリフト領域70への正孔の注入を抑制する。ドリフト領域70への正孔の注入を抑制することで、裏面トランジスタを備えない場合と比較して、ターンオフ損失が低減する。よって、RC-IGBT100の消費電力の低減が可能である。
また、第1の実施形態のRC-IGBT100は、IGBT領域100aとダイオード領域100bとの間に、第1のトランジスタ及びダイオードを含まない境界領域100cが設けられる。境界領域100cは、IGBT領域100aのIGBTの動作と素子領域のダイオードの動作が干渉し、RC-IGBT100の特性劣化が生じることを抑制する。例えば、ダイオードのリカバリ動作時にIGBT領域100aから注入されたキャリアの影響で、ダイオードのリカバリ損失が大きくなることを抑制する。
RC-IGBT100のオン状態では、上部電極12と、境界領域100cの下部電極14との間にもオン電流が流れる。このため、RC-IGBT100のオン状態では、境界領域100cのドリフト領域70にもキャリアが蓄積する。言い換えれば、RC-IGBT100がオン状態の際に、表面に第1のトランジスタの存在しない境界領域100cまでキャリアが広がった状態になる。
RC-IGBT100のターンオフ動作の際に、境界領域100cのドリフト領域70に蓄積されたキャリアを排出する必要がある。しかし、境界領域100cの表面側には、キャリアの排出経路が存在しない。このため、キャリアがIGBT領域100aの端部に集中して排出される。したがって、IGBT領域100aの端部に電流集中が生じる。よって、電流集中によるRC-IGBT100の破壊が生じるおそれがある。
第1の実施形態のRC-IGBT100は、境界領域100cの半導体層10の裏面側に、閾値電圧が低いために第2のトランジスタに先行して動作を開始する第3のトランジスタを備える。時刻txに第3のトランジスタをオン状態にすることで、境界領域100cのドリフト領域70への正孔の注入が、IGBT領域100aのドリフト領域70への正孔の注入に先行して抑制される。よって、境界領域100cのドリフト領域70の正孔の量が、IGBT領域100aのドリフト領域70の正孔の量よりも先行して減少する。
したがって、RC-IGBT100のターンオフ動作の際に、IGBT領域100aの端部に電流集中が生じることを抑制できる。よって、電流集中によるRC-IGBT100の破壊を抑制できる。
電流集中によるRC-IGBT100の破壊を抑制する観点から、第3のゲート電極33を有する第3のトランジスタの閾値電圧は、第2のゲート電極32を有する第2のトランジスタの閾値電圧の3分の2以下であることが好ましく、2分の1以下であることがより好ましい。
第1の実施形態の半導体装置の第1の変形例は、第3のゲート絶縁膜23の厚さが、第2のゲート絶縁膜22の厚さよりも薄い点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。第1の実施形態の半導体装置の第1の変形例においては、例えば、第3のゲート電極33に対向する部分の第2のコレクタ領域66のp形不純物濃度と、第2のゲート電極32に対向する部分の第1のコレクタ領域64のp形不純物濃度は等しい。
第1の実施形態の半導体装置の第1の変形例では、第3のゲート絶縁膜23の厚さが、第2のゲート絶縁膜22の厚さよりも薄いことにより、第3のトランジスタの閾値電圧が第2のトランジスタの閾値電圧よりも低くなる。
第1の実施形態の半導体装置の第2の変形例は、第3のトランジスタのチャネル長が、第2のトランジスタのチャネル長よりも短い点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。具体的には、例えば、境界領域100cの第2のドレイン領域62とバッファ領域68との間の第2の方向の距離を、IGBT領域100aの第1のドレイン領域60とバッファ領域68との間の第2の方向の距離よりも短くすることにより、第3のトランジスタのチャネル長を第2のトランジスタのチャネル長よりも短くする。第1の実施形態の半導体装置の第2の変形例においては、例えば、第3のゲート電極33に対向する部分の第2のコレクタ領域66のp形不純物濃度と、第2のゲート電極32に対向する部分の第1のコレクタ領域64のp形不純物濃度は等しい。
第1の実施形態の半導体装置の第2の変形例では、第3のトランジスタのチャネル長を第2のトランジスタのチャネル長よりも短くすることで、ショートチャネル効果により、第3のトランジスタの閾値電圧が第2のトランジスタの閾値電圧よりも低くなる。
以上、第1の実施形態及び変形例によれば、電流集中による破壊が抑制されたRC-IGBTが実現できる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面を有する半導体層と、半導体層の第1の面の側に設けられた第1のゲート電極を、有する第1のトランジスタと、半導体層の第2の面の側に設けられた第2のゲート電極を、有する第2のトランジスタと、を含むトランジスタ領域と、半導体層と、第2のゲート電極に電気的に接続され、所定の面積における占有割合が第2のゲート電極の所定の面積における占有割合よりも高く、半導体層の第2の面の側に設けられた第3のゲート電極を有する第3のトランジスタと、を含みトランジスタ領域に隣接する隣接領域と、を備える。
第2の実施形態の半導体装置は、第3のゲート電極の所定の面積における占有割合が、第2のゲート電極の所定の面積における占有割合よりも高い点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
第2の実施形態の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT200である。また、RC-IGBT200は、半導体層の表面側及び裏面側にゲート電極を備える両面ゲート構造のIGBTである。以下、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明する。
図4は、第2の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図4は、第1の実施形態の半導体装置の図2に対応する図である。
第2の実施形態のRC-IGBT200は、半導体層10、上部電極12(第1の電極)、下部電極14(第2の電極)、第1のゲート絶縁膜21、第2のゲート絶縁膜22、第3のゲート絶縁膜23、ダミーゲート絶縁膜24、第1のゲート電極31、第2のゲート電極32、第3のゲート電極33、ダミーゲート電極34、表面層間絶縁層42、裏面層間絶縁層44、第1の電極パッド101、及び第2の電極パッド102を備える。
半導体層10の中には、メインゲートトレンチ51(第1のトレンチ)、ダミーゲートトレンチ52、n形の第1のドレイン領域60(第6の半導体領域)、n形の第2のドレイン領域62(第7の半導体領域)、p形の第1のコレクタ領域64(第4の半導体領域)、p形の第2のコレクタ領域66(第5の半導体領域)、n形のバッファ領域68、n形のドリフト領域70(第1の半導体領域)、p形のベース領域72(第2の半導体領域)、n形のエミッタ領域74(第3の半導体領域)、n形のカソード領域76、及びp形のアノード領域78が設けられる。
RC-IGBT200は、境界領域100cの第3のゲート電極33の所定の面積における占有割合が、IGBT領域100aの第2のゲート電極32の上記所定の面積における占有割合よりも高い。言い換えれば、境界領域100cの第3のゲート電極33の密度が、IGBT領域100aの第2のゲート電極32よりも高い。すなわち、境界領域100cの第3のトランジスタの密度が、IGBT領域100aの第2のトランジスタの密度よりも高い。
RC-IGBT200では、隣り合う第3のゲート電極33の間の距離は、隣り合う第2のゲート電極32の間の距離よりも小さい。隣り合う第3のゲート電極33の間の距離を、隣り合う第2のゲート電極32の間の距離よりも小さくすることで、境界領域100cの第3のゲート電極33の所定の面積における占有割合が、IGBT領域100aの第2のゲート電極32の上記所定の面積における占有割合よりも高くなる。
所定の面積とは、第2の面P2上で境界領域100cを含み得る面積である。所定の面積は、例えば、50μm×50μmの面積である。
境界領域100cの第3のゲート電極33の所定の面積における占有割合は、例えば、IGBT領域100aの第2のゲート電極32の上記所定の面積における占有割合の1.5倍以上である。
RC-IGBT200においては、第3のトランジスタの閾値電圧と第2のトランジスタの閾値電圧は、例えば、同一である。RC-IGBT200においては、例えば、第3のゲート電極33に対向する部分の第2のコレクタ領域66のp形不純物濃度と、第2のゲート電極32に対向する部分の第1のコレクタ領域64のp形不純物濃度は等しい。
RC-IGBT200は、第1の実施形態の図3で示した駆動方法で駆動される。
時刻txで、第2のトランジスタ及び第3のトランジスタに第2のターンオン電圧(Von2)を印加することにより、第1の実施形態のRC-IGBT100と同様、アノード・ショートが生じる
アノード・ショートが生じることにより、電子がIGBT領域100aのn形のバッファ領域68からp形の第1のコレクタ領域64を通って下部電極14へ到達することが妨げられる。このため、p形の第1のコレクタ領域64からIGBT領域100aのドリフト領域70への正孔の注入が抑制される。
同様に、アノード・ショートが生じることにより、電子が境界領域100cのn形のバッファ領域68からp形の第2のコレクタ領域66を通って下部電極14へ到達することが妨げられる。このため、p形の第2のコレクタ領域66から境界領域100cのドリフト領域70への正孔の注入が抑制される。
第2の実施形態のRC-IGBT200では、境界領域100cの第3のトランジスタの密度が、IGBT領域100aの第2のトランジスタの密度よりも高い。したがって、時刻txで、第2のゲート電極32と第3のゲート電極33とに同時に第2のターンオン電圧(Von2)を印加した場合、境界領域100cのドリフト領域70への正孔の注入の減少量が、IGBT領域100aのドリフト領域70の正孔の注入の減少量よりも大きくなる。よって、境界領域100cのドリフト領域70の正孔の量が、IGBT領域100aのドリフト領域70の正孔の量よりも先行して減少する。
したがって、RC-IGBT200のターンオフ動作の際に、IGBT領域100aの端部に電流集中が生じることを抑制できる。よって、電流集中によるRC-IGBT200の破壊を抑制できる。
電流集中によるRC-IGBT200の破壊を抑制する観点から、境界領域100cの第3のゲート電極33の所定の面積における占有割合は、例えば、IGBT領域100aの第2のゲート電極32の上記所定の面積における占有割合の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。
以上、第2の実施形態によれば、電流集中による破壊が抑制されたRC-IGBTが実現できる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置は、半導体層は、第2の面の側に設けられた第2のトレンチと、第2の面の側に設けられた第3のトレンチと、を、更に含み、第2のゲート電極は、第2のトレンチの中に設けられ、第3のゲート電極は、第3のトレンチの中に設けられた点で、第2の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1又は第2の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
第3の実施形態の半導体装置は、IGBTと還流ダイオードを同一の半導体チップに形成したRC-IGBT300である。また、RC-IGBT300は、半導体層の表面側及び裏面側にゲート電極を備える両面ゲート構造のIGBTである。以下、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明する。
図5は、第3の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図5は、第1の実施形態の半導体装置の図2に対応する図である。
第3の実施形態のRC-IGBT300は、半導体層10、上部電極12(第1の電極)、下部電極14(第2の電極)、第1のゲート絶縁膜21、第2のゲート絶縁膜22、第3のゲート絶縁膜23、ダミーゲート絶縁膜24、第1のゲート電極31、第2のゲート電極32、第3のゲート電極33、ダミーゲート電極34、表面層間絶縁層42、裏面層間絶縁層44、第1の電極パッド101、及び第2の電極パッド102を備える。
半導体層10の中には、メインゲートトレンチ51(第1のトレンチ)、ダミーゲートトレンチ52、第1の裏面トレンチ53(第2のトレンチ)、第2の裏面トレンチ54(第3のトレンチ)、n形の第1のドレイン領域60(第6の半導体領域)、n形の第2のドレイン領域62(第7の半導体領域)、p形の第1のコレクタ領域64(第4の半導体領域)、p形の第2のコレクタ領域66(第5の半導体領域)、n形のバッファ領域68、n形のドリフト領域70(第1の半導体領域)、p形のベース領域72(第2の半導体領域)、n形のエミッタ領域74(第3の半導体領域)、n形のカソード領域76、及びp形のアノード領域78が設けられる。
メインゲートトレンチ51は、第1のトレンチの一例である。第1の裏面トレンチ53は、第2のトレンチの一例である。第2の裏面トレンチ54は、第3のトレンチの一例である。
第1のトランジスタは、半導体層10の第1の面P1側に設けられる。第1のトランジスタは、ゲート電極がトレンチの中に設けられたトレンチゲート構造を有する。第1のトランジスタは、IGBTである。
第2のトランジスタは、半導体層10の第2の面P2側に設けられる。第2のトランジスタは、トレンチゲート構造である。第2のトランジスタは、いわゆる裏面トランジスタである。第2のトランジスタは、電子をキャリアとするn形のMOSFETである。
第3のトランジスタは、半導体層10の第2の面P2側に設けられる。第3のトランジスタは、トレンチゲート構造である。第3のトランジスタは、いわゆる裏面トランジスタである。第3のトランジスタは、電子をキャリアとするn形のMOSFETである。
第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、及び第3のトランジスタは、構造上明確に他の構造と分離されているわけではない。例えば、図5中の破線Xで囲まれる領域が第1のトランジスタの一つのユニットに対応する。また、例えば、図5中の破線Yで囲まれる領域が第2のトランジスタの一つのユニットに対応する。また、例えば、図5中の破線Zで囲まれる領域が第3のトランジスタの一つのユニットに対応する。
RC-IGBT300は、境界領域100cの第3のゲート電極33の所定の面積における占有割合が、IGBT領域100aの第2のゲート電極32の上記所定の面積における占有割合よりも高い。すなわち、境界領域100cの第3のトランジスタの密度が、IGBT領域100aの第2のトランジスタの密度よりも高い。
RC-IGBT300では、隣り合う第3のゲート電極33の間の距離は、隣り合う第2のゲート電極32の間の距離よりも小さい。隣り合う第3のゲート電極33の間の距離を、隣り合う第2のゲート電極32の間の距離よりも小さくすることで、境界領域100cの第3のゲート電極33の所定の面積における占有割合が、IGBT領域100aの第2のゲート電極32の上記所定の面積における占有割合よりも高くなる。
RC-IGBT300は、第1の実施形態の図3で示した駆動方法で駆動される。
第3の実施形態のRC-IGBT300では、境界領域100cの第3のトランジスタの密度が、IGBT領域100aの第2のトランジスタの密度よりも高い。したがって、第2の実施形態のRC-IGBT200と同様、RC-IGBT300のターンオフ動作の際に、IGBT領域100aの端部に電流集中が生じることを抑制できる。よって、電流集中によるRC-IGBT300の破壊を抑制できる。
以上、第3の実施形態によれば、電流集中による破壊が抑制されたRC-IGBTが実現できる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態の半導体装置は、終端領域を備えた半導体装置である点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
第4の実施形態の半導体装置は、半導体層の表面側及び裏面側にゲート電極を備える両面ゲート構造のIGBT400である。以下、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明する。
図6は、第4の実施形態の半導体装置の模式平面図である。図6(a)はIGBT400の半導体層の表面側から見た平面図である。図6(b)はIGBT400の半導体層の裏面側から見た平面図である。図6は、IGBT400のレイアウトを示す図である
IGBT400は、IGBT領域400a及び終端領域400bを備える。終端領域400bは、IGBT領域400aを囲む。終端領域400bは、IGBT領域400aに隣接する。
また、IGBT400は、第1の電極パッド101及び第2の電極パッド102を備える。第1の電極パッド101は、例えば、半導体層の表面側に設けられる。第2の電極パッド102は、例えば、半導体層の裏面側に設けられる。
IGBT領域400aは、トランジスタ領域の一例である。終端領域400bは、隣接領域の一例である。
図7は、第4の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図7は、図6(a)のBB’断面である。
第4の実施形態のIGBT400は、半導体層10、上部電極12(第1の電極)、下部電極14(第2の電極)、第1のゲート絶縁膜21、第2のゲート絶縁膜22、第3のゲート絶縁膜23、第1のゲート電極31、第2のゲート電極32、第3のゲート電極33、表面層間絶縁層42、裏面層間絶縁層44、第1の電極パッド101、及び第2の電極パッド102を備える。
IGBT領域400aは、IGBTとして動作する。終端領域400bは、IGBT領域400aの端部の耐圧の低下を抑制する機能を有する。
IGBT領域400aは、第1のゲート電極31を有する第1のトランジスタと、第2のゲート電極32を有する第2のトランジスタを含む。終端領域400bは、第3のゲート電極33を有する第3のトランジスタを含む。
第1のトランジスタは、第1のゲート電極31に印加される電圧によって制御される。第2のトランジスタは、第2のゲート電極32に印加される電圧によって制御される。第3のトランジスタは、第3のゲート電極33に印加される電圧によって制御される。
第1のトランジスタは、半導体層10の第1の面P1側に設けられる。第1のトランジスタは、ゲート電極がトレンチの中に設けられたトレンチゲート構造を有する。第1のトランジスタは、IGBTである。
第2のトランジスタは、半導体層10の第2の面P2側に設けられる。第2のトランジスタは、プレーナゲート構造である。第2のトランジスタは、いわゆる裏面トランジスタである。第2のトランジスタは、電子をキャリアとするn形MOSFETである。
第3のトランジスタは、半導体層10の第2の面P2側に設けられる。第3のトランジスタは、プレーナゲート構造である。第3のトランジスタは、いわゆる裏面トランジスタである。第3のトランジスタは、電子をキャリアとするn形のMOSFETである。
第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、及び第3のトランジスタは、構造上明確に他の構造と分離されているわけではない。例えば、図7中の破線Xで囲まれる領域が第1のトランジスタの一つのユニットに対応する。また、例えば、図7中の破線Yで囲まれる領域が第2のトランジスタの一つのユニットに対応する。また、例えば、図7中の破線Zで囲まれる領域が第3のトランジスタの一つのユニットに対応する。
半導体層10の中には、メインゲートトレンチ51(第1のトレンチ)、n形の第1のドレイン領域60(第6の半導体領域)、n形の第2のドレイン領域62(第7の半導体領域)、p形の第1のコレクタ領域64(第4の半導体領域)、p形の第2のコレクタ領域66(第5の半導体領域)、n形のバッファ領域68、n形のドリフト領域70(第1の半導体領域)、p形のベース領域72(第2の半導体領域)、n形のエミッタ領域74(第3の半導体領域)、p形の中間領域80、及びp形のガードリング領域82が設けられる。
上部電極12は、第1の電極の一例である。下部電極14は、第2の電極の一例である。メインゲートトレンチ51は、第1のトレンチの一例である。第1のドレイン領域60は、第6の半導体領域の一例である。第2のドレイン領域62は、第7の半導体領域の一例である。第1のコレクタ領域64は、第4の半導体領域の一例である。第2のコレクタ領域66は、第5の半導体領域の一例である。ドリフト領域70は、第1の半導体領域の一例である。ベース領域72は、第2の半導体領域の一例である。エミッタ領域74は、第3の半導体領域の一例である。
半導体層10は、第1の面P1と、第1の面P1に対向する第2の面P2とを有する。
上部電極12は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。上部電極12は、第1のトランジスタのエミッタ電極として機能する。
上部電極12は、IGBT領域400aにおいて、エミッタ領域74に電気的に接続される。上部電極12には、エミッタ電圧(Ve)が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。
下部電極14は、半導体層10の第2の面P2の側に設けられる。下部電極14は、IGBT領域400aでは、第1のトランジスタのコレクタ電極として機能する。下部電極14は、IGBT領域400aにおいて、第1のコレクタ領域64に電気的に接続される。
下部電極14は、終端領域400bにおいて、第2のコレクタ領域66に電気的に接続される。下部電極14には、コレクタ電圧(Vc)が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
ドリフト領域70は、n形の半導体領域である。ドリフト領域70は、IGBT領域400a、及び終端領域400bに設けられる。
ベース領域72は、p形の半導体領域である。ベース領域72は、IGBT領域400aに設けられる。
エミッタ領域74は、n形の半導体領域である。エミッタ領域74は、IGBT領域400aに設けられる。エミッタ領域74は、終端領域400bには設けられない。
エミッタ領域74は、上部電極12に電気的に接続される。エミッタ領域74は、上部電極12に接する。
第1のコレクタ領域64は、p形の半導体領域である。第1のコレクタ領域64は、IGBT領域400aに設けられる。
第1のコレクタ領域64は、下部電極14に電気的に接続される。第1のコレクタ領域64は、下部電極14に接する。
第1のコレクタ領域64の一部は、第2のゲート電極32に対向する。第2のゲート電極32に対向する第1のコレクタ領域64には、第2のゲート電極32によって制御される第2のトランジスタのチャネルが形成される。
第2のコレクタ領域66は、p形の半導体領域である。第2のコレクタ領域66は、終端領域400bに設けられる。
第2のコレクタ領域66は、下部電極14に電気的に接続される。第2のコレクタ領域66は、下部電極14に接する。
第2のコレクタ領域66の一部は、第3のゲート電極33に対向する。第3のゲート電極33に対向する第2のコレクタ領域66には、第3のゲート電極33によって制御される第3のトランジスタのチャネルが形成される。
第3のゲート電極33に対向する部分の第2のコレクタ領域66のp形不純物濃度は、第2のゲート電極32に対向する部分の第1のコレクタ領域64のp形不純物濃度よりも低い。
第1のドレイン領域60は、n形の半導体領域である。第1のドレイン領域60は、IGBT領域400aに設けられる。
第2のドレイン領域62は、n形の半導体領域である。第2のドレイン領域62は、終端領域400bに設けられる。
バッファ領域68は、n形の半導体領域である。バッファ領域68は、IGBT領域400a及び終端領域400bに設けられる。
p形の中間領域80は、終端領域400bに設けられる。中間領域80は、ドリフト領域70と第1の面P1との間に設けられる。中間領域80は、IGBT領域400aを囲む。
p形のガードリング領域82は、終端領域400bに設けられる。ガードリング領域82は、ドリフト領域70と第1の面P1との間に設けられる。ガードリング領域82は、中間領域80を囲む。ガードリング領域82は、例えば、複数設けられる。
中間領域80及びガードリング領域82を設けることにより、終端領域400bの端部の電界強度が低下し、IGBT400がオフ状態の時の耐圧の低下が抑制される。
メインゲートトレンチ51は、IGBT領域400aに設けられる。
第1のゲート電極31は、IGBT領域400aに設けられる。第1のゲート電極31は、メインゲートトレンチ51の中に設けられる。第1のゲート電極31は、第1の電極パッド101に電気的に接続される。
第1のゲート絶縁膜21は、第1のゲート電極31と半導体層10との間に設けられる。
第2のゲート電極32は、IGBT領域400aに設けられる。第2のゲート電極32は、半導体層10の第2の面の側に設けられる。第2のゲート電極32は、第2の電極パッド102に電気的に接続される。
第2のゲート絶縁膜22は、第2のゲート電極32と半導体層10との間に設けられる。
第3のゲート電極33は、終端領域400bに設けられる。第3のゲート電極33は、半導体層10の第2の面の側に設けられる。第3のゲート電極33は、第2の電極パッド102に電気的に接続される。
第3のゲート絶縁膜23は、第3のゲート電極33と半導体層10との間に設けられる。
表面層間絶縁層42は、第1のゲート電極31と上部電極12との間に設けられる。
裏面層間絶縁層44は、第2のゲート電極32と下部電極14との間に設けられる。裏面層間絶縁層44は、第3のゲート電極33と下部電極14との間に設けられる。
第1の電極パッド101は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。第1の電極パッド101は、第1のゲート電極31に電気的に接続される。第1の電極パッド101と第1のゲート電極31は、例えば、図示しない金属配線で接続される。第1の電極パッド101には、第1のゲート電圧(Vg1)が印加される。
第2の電極パッド102は、半導体層10の第2の面P2の側に設けられる。第2の電極パッド102は、第2のゲート電極32及び第3のゲート電極33に電気的に接続される。第2の電極パッド102と、第2のゲート電極32及び第3のゲート電極33は、例えば、図示しない金属配線で接続される。第2の電極パッド102には、第2のゲート電圧(Vg2)が印加される。
IGBT400の第3のトランジスタの閾値電圧は、第2のトランジスタの閾値電圧より低い。第3のゲート電極33を有する第3のトランジスタの閾値電圧は、第2のゲート電極32を有する第2のトランジスタの閾値電圧より低い。第3のゲート電極33を有する第3のトランジスタの閾値電圧は、例えば、第2のゲート電極32を有する第2のトランジスタの閾値電圧の3分の2以下である。
第3のゲート電極33に対向する部分の第2のコレクタ領域66のp形不純物濃度は、第2のゲート電極32に対向する部分の第1のコレクタ領域64のp形不純物濃度よりも低い。第3のゲート電極33に対向する部分の第2のコレクタ領域66のp形不純物濃度が、第2のゲート電極32に対向する部分の第1のコレクタ領域64のp形不純物濃度よりも低くなることで、第3のトランジスタの閾値電圧が、第2のトランジスタの閾値電圧よりも低くなる。
次に、IGBT400の駆動方法について説明する。
IGBT400は、第1の実施形態の図3に示した駆動方法で駆動される。
時刻txで、第2のトランジスタ及び第3のトランジスタに第2のターンオン電圧(Von2)を印加することにより、第1の実施形態のRC-IGBT100と同様、アノード・ショートが生じる
アノード・ショートが生じることにより、電子がIGBT領域400aのn形のバッファ領域68からp形の第1のコレクタ領域64を通って下部電極14へ到達することが妨げられる。このため、p形の第1のコレクタ領域64からIGBT領域400aのドリフト領域70への正孔の注入が抑制される。
同様に、アノード・ショートが生じることにより、電子が終端領域400bのn形のバッファ領域68からp形の第2のコレクタ領域66を通って下部電極14へ到達することが妨げられる。このため、p形の第2のコレクタ領域66から終端領域400bのドリフト領域70への正孔の注入が抑制される。
第4の実施形態のIGBT400は、IGBT領域400aの半導体層10の裏面側に、裏面トランジスタとして第2のトランジスタを備える。IGBT400のターンオフ動作の際に、第2のトランジスタをオン状態にすることで、ターンオフ損失が低減する。よって、IGBT400の消費電力の低減が可能である。
また、第4の実施形態のIGBT400は、IGBT領域400aの周囲に、終端領域400bが設けられる。終端領域400bには、中間領域80及びガードリング領域82が設けられる。中間領域80及びガードリング領域82が設けられることにより、IGBT領域400aの端部の電界強度が低下し、IGBT400がオフ状態の時の耐圧の低下が抑制される。
IGBT400のオン状態では、上部電極12と、終端領域400bの下部電極14との間にもオン電流が流れる。このため、IGBT400のオン状態では、終端領域400bのドリフト領域70にもキャリアが蓄積する。言い換えれば、IGBT400がオン状態の際に、表面に第1のトランジスタの存在しない終端領域400bまでキャリアが広がった状態になる。
IGBT400のターンオフ動作の際に、終端領域400bのドリフト領域70に蓄積されたキャリアを排出する必要がある。しかし、終端領域400bの表面側には、キャリアの排出経路が存在しない。このため、キャリアがIGBT領域400aの端部に集中して排出される。したがって、IGBT領域400aの端部に電流集中が生じる。よって、電流集中によるIGBT400の破壊が生じるおそれがある。
第4の実施形態のIGBT400は、終端領域400bの半導体層10の裏面側に、閾値電圧が低いために第2のトランジスタに先行して動作を開始する第3のトランジスタを備える。時刻txに第3のトランジスタをオン状態にすることで、終端領域400bのドリフト領域70への正孔の注入が、IGBT領域400aのドリフト領域70への正孔の注入に先行して抑制される。よって、終端領域400bのドリフト領域70の正孔の量が、IGBT領域400aのドリフト領域70の正孔の量よりも先行して減少する。
したがって、IGBT400のターンオフ動作の際に、IGBT領域400aの端部に電流集中が生じることを抑制できる。よって、電流集中によるIGBT400の破壊を抑制できる。
電流集中によるIGBT400の破壊を抑制する観点から、第3のゲート電極33を有する第3のトランジスタの閾値電圧は、第2のゲート電極32を有する第2のトランジスタの閾値電圧の3分の2以下であることが好ましく、2分の1以下であることがより好ましい。
なお、第3のゲート絶縁膜23の厚さを、第2のゲート絶縁膜22の厚さよりも薄くすることにより、第3のトランジスタの閾値電圧を第2のトランジスタの閾値電圧よりも低くすることも可能である。
また、第3のトランジスタのチャネル長を第2のトランジスタのチャネル長よりも短くすることで、第3のトランジスタの閾値電圧を第2のトランジスタの閾値電圧よりも低くすることも可能である。
以上、第4の実施形態によれば、電流集中による破壊が抑制されたIGBTが実現できる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面を有する半導体層と、半導体層の第1の面の側に設けられた第1のゲート電極を、有する第1のトランジスタと、半導体層の第2の面の側に設けられた第2のゲート電極を、有する第2のトランジスタと、を含むトランジスタ領域と、半導体層と、第2のゲート電極に電気的に接続され、所定の面積における占有割合が第2のゲート電極の所定の面積における占有割合よりも高く、半導体層の第2の面の側に設けられた第3のゲート電極を有する第3のトランジスタと、を含みトランジスタ領域に隣接する隣接領域と、を備える。
第5の実施形態の半導体装置は、第3のゲート電極の所定の面積における占有割合が、第2のゲート電極の所定の面積における占有割合よりも高い点で、第4の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第4の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
第5の実施形態の半導体装置は、半導体層の表面側及び裏面側にゲート電極を備える両面ゲート構造のIGBT500である。以下、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明する。
IGBT500は、第4の実施形態のIGBT400と同様、IGBT領域400a及び終端領域400bを備える。終端領域400bは、IGBT領域400aを囲む。終端領域400bは、IGBT領域400aに隣接する。
図8は、第5の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図8は、第4の実施形態の半導体装置の図7に対応する図である。
第5の実施形態のIGBT500は、半導体層10、上部電極12(第1の電極)、下部電極14(第2の電極)、第1のゲート絶縁膜21、第2のゲート絶縁膜22、第3のゲート絶縁膜23、第1のゲート電極31、第2のゲート電極32、第3のゲート電極33、表面層間絶縁層42、裏面層間絶縁層44、第1の電極パッド101、及び第2の電極パッド102を備える。
半導体層10の中には、メインゲートトレンチ51(第1のトレンチ)、n形の第1のドレイン領域60(第6の半導体領域)、n形の第2のドレイン領域62(第7の半導体領域)、p形の第1のコレクタ領域64(第4の半導体領域)、p形の第2のコレクタ領域66(第5の半導体領域)、n形のバッファ領域68、n形のドリフト領域70(第1の半導体領域)、p形のベース領域72(第2の半導体領域)、n形のエミッタ領域74(第3の半導体領域)、p形の中間領域80、及びp形のガードリング領域82が設けられる。
IGBT500は、終端領域400bの第3のゲート電極33の所定の面積における占有割合が、IGBT領域400aの第2のゲート電極32の上記所定の面積における占有割合よりも高い。言い換えれば、終端領域400bの第3のゲート電極33の密度が、IGBT領域400aの第2のゲート電極32よりも高い。すなわち、終端領域400bの第3のトランジスタの密度が、IGBT領域400aの第2のトランジスタの密度よりも高い。
IGBT500では、隣り合う第3のゲート電極33の間の距離は、隣り合う第2のゲート電極32の間の距離よりも小さい。隣り合う第3のゲート電極33の間の距離を、隣り合う第2のゲート電極32の間の距離よりも小さくすることで、終端領域400bの第3のゲート電極33の所定の面積における占有割合が、IGBT領域400aの第2のゲート電極32の上記所定の面積における占有割合よりも高くなる。
所定の面積とは、第2の面P2上で終端領域400bを含み得る面積である。所定の面積は、例えば、50μm×50μmの面積である。
終端領域400bの第3のゲート電極33の所定の面積における占有割合は、例えば、IGBT領域400aの第2のゲート電極32の上記所定の面積における占有割合の1.5倍以上である。
IGBT500においては、第3のトランジスタの閾値電圧と第2のトランジスタの閾値電圧は、例えば、同一である。IGBT500においてあh、例えば、第3のゲート電極33に対向する部分の第2のコレクタ領域66のp形不純物濃度と、第2のゲート電極32に対向する部分の第1のコレクタ領域64のp形不純物濃度は等しい。
IGBT500は、第1の実施形態の図3で示した駆動方法で駆動される。
時刻txで、第2のトランジスタ及び第3のトランジスタに第2のターンオン電圧(Von2)を印加することにより、第4の実施形態のIGBT400と同様、アノード・ショートが生じる
アノード・ショートが生じることにより、電子がIGBT領域400aのn形のバッファ領域68からp形の第1のコレクタ領域64を通って下部電極14へ到達することが妨げられる。このため、p形の第1のコレクタ領域64からIGBT領域400aのドリフト領域70への正孔の注入が抑制される。
同様に、アノード・ショートが生じることにより、電子が終端領域400bのn形のバッファ領域68からp形の第2のコレクタ領域66を通って下部電極14へ到達することが妨げられる。このため、p形の第2のコレクタ領域66から終端領域400bのドリフト領域70への正孔の注入が抑制される。
第5の実施形態のIGBT500では、終端領域400bの第3のトランジスタの密度が、IGBT領域400aの第2のトランジスタの密度よりも高い。したがって、時刻txで、第2のゲート電極32と第3のゲート電極33とに同時に第2のターンオン電圧(Von2)を印加した場合、終端領域400bのドリフト領域70への正孔の注入の減少量が、IGBT領域400aのドリフト領域70の正孔の注入の減少量よりも大きくなる。よって、終端領域400bのドリフト領域70の正孔の量が、IGBT領域400aのドリフト領域70の正孔の量よりも先行して減少する。
したがって、IGBT500のターンオフ動作の際に、IGBT領域400aの端部に電流集中が生じることを抑制できる。よって、電流集中によるIGBT500の破壊を抑制できる。
電流集中によるIGBT500の破壊を抑制する観点から、終端領域400bの第3のゲート電極33の所定の面積における占有割合は、例えば、IGBT領域400aの第2のゲート電極32の上記所定の面積における占有割合の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。
以上、第5の実施形態によれば、電流集中による破壊が抑制されたIGBTが実現できる。
第1ないし第5の実施形態においては、半導体層が単結晶シリコンである場合を例に説明したが、半導体層は単結晶シリコンに限られることはない。例えば、単結晶炭化珪素など、その他の単結晶半導体であっても構わない。
第1ないし第5の実施形態においては、トレンチが平行に配置されているストライプ形状の場合を例に説明したが、トレンチが交差するメッシュ形状のトレンチ、又は、ドット形状のトレンチにも本発明を適用することは可能である。
第1ないし第5の実施形態においては、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明したが、第1導電形をp形、第2導電形をn形とすることも可能である。
第1ないし第5の実施形態においては、第1のトランジスタがトレンチゲート構造である場合を例に説明したが、第1のトランジスタがプレーナゲート構造であっても構わない。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。