まず、この発明の一の実施形態による義歯の製造方法について説明する。
図1は、この発明の一の実施形態による義歯の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。この例では、フローチャートに示される各工程(ステップS1ないしステップS6)は、歯科技工士等により実行されるものとする。
図2は、上記の義歯の製造方法に用いられる義歯の製造装置1の構成の一例を示すブロック図である。義歯の製造装置1は、コンピュータ11およびミリングマシン12を備えている。義歯の製造装置1は、一体の機器として構成することもできるし、複数の機器に分散して構成することもできる。
コンピュータ11は、たとえば、キーボード、タッチパネルなどの入力装置13、LCD(液晶ディスプレイ)などの表示装置14、CPU(中央演算ユニット)などの演算装置15、メインメモリ、補助記憶装置などの記憶装置16を備えている。
コンピュータ11には、たとえば、CAD/CAMシステム(ソフトウェア)が搭載されている。CAD/CAMシステムは、とくに限定されるものではないが、たとえば、歯科補綴に特化されたものが好ましい。
歯科技工士等の操作者は、表示装置14を見ながら、入力装置13から指示を入力することで、三次元形状データに所望の加工を施したり、切削加工のためのNC(数値制御)データを生成させてミリングマシン12に送信したりすることができる。
ミリングマシン12は、たとえば、多軸制御(たとえば5軸制御)のミリングバー(切削工具)17を備えており、コンピュータ11から受信したNCデータにしたがって、被削材10に対する三次元切削加工を行うよう構成されている。ミリングマシン12も、とくに限定されるものではないが、たとえば、歯科補綴に特化されたものが好ましい。
なお、図1に示す各ステップは、必ずしもこの順に実行される必要はない。たとえば、ステップS2を、ステップS3またはステップS4の後に実行するよう構成することもできる。また、義歯の製造装置1の構成等によっては、複数のステップを同時に実行するよう構成することもできる。
この実施形態において用いられる義歯の三次元形状データは、調整済みの治療用義歯に基づいて得られたものであるとする。調整済みの治療用義歯に基づいて、その三次元形状データを得る方法は、とくに限定されるものではないが、たとえば、3D(三次元)スキャナー(図示せず)を用いて、直接または間接的に、調整済みの治療用義歯の立体形状を測定することにより得られる。
図3は、調整済みの治療用義歯(総義歯)の上顎の形状を数値化した義歯の仮想的な立体モデルの底面図である。この義歯の仮想的な立体モデルが、義歯の三次元形状データVDとして、コンピュータ11の記憶装置16に記憶されている。
図4Aは、被削材10としての義歯床材料である義歯床用ブランク18の一例を示す斜視図である。義歯床用ブランク18は、切削加工、とくにミリングマシンを用いて義歯床を切り出すための素材として用いられる歯科補綴用の義歯床材料である。義歯床用ブランク18の材質はとくに限定されるものではないが、合成樹脂製のものであれば、たとえば、歯肉色のPMMA(Poly Methyl Methacrylate)製のものを用いることができる。その形状もとくに限定されるものではないが、たとえば、肉厚略円板状のものを用いることができる。
図4Bは、被削材10としての人工歯材料である人工歯用ブランク19の一例を示す斜視図である。人工歯用ブランク19は、切削加工、とくにミリングマシンを用いて人工歯を切り出すための素材として用いられる歯科補綴用の人工歯材料である。人工歯用ブランク19の材質はとくに限定されるものではなく、たとえば、合成樹脂製のものやセラミックス製のものを用いることができるが、合成樹脂製のものであれば、たとえば、PMMA(Poly Methyl Methacrylate)製のものを用いることができる。この例では、PMMA製のものを用いている。その形状もとくに限定されるものではないが、たとえば、肉厚略円板状のものを用いることができる。人工歯用ブランク19の詳細な構成については、後述する。
図5は、図1に示すステップS2において形成される義歯床中間体2の底面図である。
図6Aは、図5に示すVIA-VIA線に沿う切断部(臼歯部に対応する部分)の端面図である。図6Bは、図5に示すVIB-VIB線に沿う切断部(前歯部に対応する部分)の端面図である。
図7Aは、図1に示すステップS3において形成される、臼歯部を構成する人工歯に対応する人工歯中間体4の断面図である。図7Bは、ステップS3において形成される、前歯部を構成する人工歯に対応する人工歯中間体3の断面図である。
図8Aは、図7Bに示すVIIIA-VIIIA線に沿う切断部の端面図である。図8Bは、図7Bに示すVIIIBから見た矢視図である。
図9Aは、図1に示すステップS4を構成する結合補助材形成工程において形成される結合補助材5の底面図ある。図9Bは、結合補助材5を平面に展開したと仮定した場合の概念図である。
図10Aは、ステップS4において形成される人工歯中間体連結体6の底面図である。人工歯中間体連結体6は、個別に形成された複数の人工歯中間体3を、義歯の三次元形状データにしたがって相互に連結したものである。図10Bは、図10Aに示すXB-XB線に沿う切断部の端面図である。
図11は、図1に示すステップS5において形成される義歯中間体7の底面図である。
図12Aは、図11に示すXIIA-XIIA線に沿う切断部(臼歯部に対応する部分)の端面図である。図12Bは、図11に示すXIIB-XIIB線に沿う切断部(前歯部に対応する部分)の端面図である。
図13Aは、図1に示すステップS6において形成される義歯8の底面図である。図13Bは、義歯8の部分正面図である。
図1に戻って、コンピュータ11の記憶装置16に記憶されている義歯の三次元形状データVD(図3参照)に基づいて、まず、三次元形状データ加工工程(図1のステップS1)が実行される。三次元形状データ加工工程においては、与えられた義歯の三次元形状データVDに基づいて、後の各工程で用いる各種の三次元形状データが、たとえばCADの手法を用いて、コンピュータ11内に構築され、記憶される。
すなわち、このステップS1において、義歯床中間体形成工程(ステップS2)で用いる義歯床中間体2(図5ないし図6B参照)の三次元形状データ、人工歯中間体形成工程(ステップS3)で用いる個別に形成される人工歯中間体3(図7Bないし図8B参照)の三次元形状データ、および、まとめて形成される人工歯中間体4(図7A参照)の三次元形状データ、人工歯中間体連結工程(ステップS4)で用いる結合補助材5(図9Aないし図9B参照)の三次元形状データ等が構築され、記憶される。
ステップS1において、たとえば、まず、CADソフトを用いて、図3に示す義歯の三次元形状データVDを、義歯床の部分と人工歯の部分とに分割する分割面を設定し、この分割面に沿って分割する。
分割された義歯床の部分のうち、分割面は原寸のままにしておき、他の部分は、原則として、原寸に仕上げ代を追加した寸法になるよう加工する。この分割面が、人工歯との接続部21となる。このようにして、図5ないし図6Bに示す義歯床中間体2の三次元形状データを構築することができる。
図5ないし図6Bにおいて、義歯床中間体2のうち、原形(義歯の三次元形状データVDと同一の形状)を示す原形面22を一点鎖線で表し、ステップS2における切削加工の際の輪郭を示す一次切削面23(接続部21を含む。)を実線で表している。原形面22と一次切削面23とで挟まれた部分が、仕上げ代24となる。
義歯床中間体2の仕上げ代24の寸法はとくに限定されるものではないが、後の工程における加工誤差、たとえば義歯中間体形成工程(ステップS5)において人工歯中間体3、4と義歯床中間体4とを接合する際の接合誤差など、を吸収できる程度の寸法であることが好ましい。この例では、義歯床中間体2の仕上げ代24を、当該義歯床の平均的な厚みの20パーセント程度としている。
一方、分割された人工歯の部分については、分割面は原寸のままにしておき、他の部分は、原則として、原寸に仕上げ代を追加した寸法になるよう加工する。この分割面が、義歯床との接続部31、41となる。このようにして、図7Aないし図8Bに示す人工歯中間体3、4の三次元形状データを構築することができる。
図7Aにおいて、臼歯部を構成する人工歯に対応する人工歯中間体4のうち、原形(義歯の三次元形状データVDと同一の形状)を示す原形面42を一点鎖線で表し、ステップS3における切削加工の際の輪郭を示す一次切削面43(接続部41を含む。)を実線で表している。原形面42と一次切削面43とで挟まれた部分が、仕上げ代44となる。
図7Bないし図8Bにおいて、前歯部を構成する人工歯中間体3のうち、原形(義歯の三次元形状データVDと同一の形状)を示す原形面32を一点鎖線で表し、ステップS3における切削加工の際の輪郭を示す一次切削面33(接続部31および後述する隣接面35を含む。)を実線で表している。原形面32と一次切削面33とで挟まれた部分が、仕上げ代34となる。
人工歯中間体3、4の仕上げ代34、44の寸法はとくに限定されるものではないが、後の工程における加工誤差、たとえば義歯中間体形成工程(ステップS5)において人工歯中間体3、4と義歯床中間体2とを接合する際の接合誤差など、を吸収できる程度の寸法であることが好ましい。この例では、人工歯中間体3、4の仕上げ代34、44を、当該人工歯の平均的な厚みの20パーセント程度としている。
図6Aないし図7Bに示すように、義歯床中間体2の接続部21は、人工歯中間体3、4との接合時に、人工歯中間体3、4を安定的に受容して保持することができるよう凹状に形成されており、人工歯中間体3、4の接続部31、41は、義歯床中間体2に安定的に受容され保持されることができるよう、義歯床中間体2の接続部21を略反転した形状(凸状)に形成されている。
なお、この実施形態においては、前歯部を構成する人工歯(すなわち、中切歯、側切歯および犬歯)に対応する6本の人工歯中間体3は、一本ずつ個別に形成し、臼歯部を構成する人工歯(すなわち、小臼歯および大臼歯)に対応する8本の人工歯中間体4は、左右4本ずつを、それぞれ1ブロックにまとめて形成するよう構成している。
図5に示すように、義歯床中間体2の接続部21のうち、6本の人工歯中間体3に対応する部分は1本分ずつ個別に形成され、8本の人工歯中間体4に対応する部分は左右4本分ずつを、それぞれ1グループにまとめて形成するよう構成している。
1本ずつ個別に形成する人工歯中間体3については、上述の義歯床との接続部31のほか、隣接歯と接する隣接面35(図8A、図8B参照)も原寸のままにしてある。さらに、上述の仕上げ代34の一部を結合部36として形成するよう構成している。
まとめて形成する人工歯中間体4については、上述の義歯床との接続部41のほか、解放された隣接面45(すなわち、この例では、第一小臼歯に対応する人工歯中間体の近心面。図11参照)も原寸のままにしてある。
個別に形成された6本の人工歯中間体3の結合部36を間接的に相互に結合するための結合補助材5(図9Aないし図9B参照)の三次元形状データが、義歯の三次元形状データVDに基づいて形成される。
歯列に対する結合補助材5の位置はとくに限定されるものではないが、たとえば、歯列の内側面(この例では、口蓋側面)に沿って配置するよう構成することができる。結合補助材5の形状もとくに限定されるものではないが、この例では、平面に展開したと仮定した時に略円弧形の帯状になるよう構成している。
結合補助材5には、6本の人工歯中間体3の結合部36にそれぞれ結合するための6個の結合補助部56が設けられている。結合補助材5の各結合補助部56に、対応する結合部36をそれぞれ結合することで、個別に形成された6本の人工歯中間体3が、義歯の三次元形状データVDにしたがって相互に連結されるよう構成されている。
結合補助部56に、対応する結合部36を結合させた状態で両者が相互に回転しないよう、結合補助部56と結合部36の形状が決定される。この例では、結合補助部56を略楕円穴状に形成するとともに、結合部36を、これに隙間なく嵌合する略楕円柱状に形成している。このようにして、図9Aないし図9Bに示す結合補助材5の三次元形状データを構築することができる。
図9Aないし図9Bにおいて、ステップS4における切削加工の際の輪郭を示す一次切削面53(結合補助部56を含む。)を実線で表している。
図1に戻って、ステップS1に続いて、義歯床中間体形成工程(ステップS2)が実行される。
義歯床中間体形成工程においては、ステップS1において構築された義歯床中間体2の三次元形状データに基づいて、そのNCデータが、コンピュータ11において、たとえば、CAMの手法を用いて生成され、ミリングマシン12に送信される。
ミリングマシン12には、被削材10である義歯床用ブランク18が装着されている。ミリングマシン12において、受信したNCデータにしたがって、義歯床用ブランク18を切削加工することで、図5ないし図6Bに示すように、一次切削面23を輪郭面とする義歯床中間体2が形成される。
なお、このようにして形成された義歯床中間体2は、この時点では、義歯床用ブランク18から切り離されていない。
ステップS2に続いて、人工歯中間体形成工程(ステップS3)が実行される。
人工歯中間体形成工程においては、ステップS1において構築された人工歯中間体3、4の三次元形状データに基づいて、そのNCデータが、コンピュータ11において、たとえば、CAMの手法を用いて生成され、ミリングマシン12に送信される。
ミリングマシン12には、被削材10である人工歯用ブランク19が装着されている。ミリングマシン12において、受信したNCデータにしたがって、人工歯用ブランク19を切削加工することで、図7Aないし図8Bに示すように、一次切削面33、43をそれぞれ輪郭面とする人工歯中間体3、4が形成される。
上記切削加工のあと、人工歯中間体3は一本ずつ、人工歯中間体4は、左右それぞれ4本ずつまとめて、いずれも人工歯用ブランク19から切り離される。
なお、図8Aないし図8Bに示す人工歯中間体3の隣接面35、図11に示す人工歯中間体4の解放された隣接面45は、人工歯中間体形成工程における切削後に研磨されることが好ましい。義歯形成工程(ステップS6)で研磨することが困難となるからである。この研磨作業の一部または全体は、何らかの方法で自動化してもよいし、人の手作業で行うようにしてもよい。
ステップS3に続いて、人工歯中間体連結工程(ステップS4)が実行される。
この実施形態においては、人工歯中間体連結工程において、まず、結合補助材形成工程が実行される。
結合補助材形成工程においては、ステップS1において構築された結合補助材5の三次元形状データに基づいて、そのNCデータが、コンピュータ11において、たとえば、CAMの手法を用いて生成され、ミリングマシン12に送信される。
ミリングマシン12には、被削材10が装着されている。ミリングマシン12において、受信したNCデータにしたがって、被削材10を切削加工することで、図9Aないし図9Bに示すように、一次切削面53を輪郭面とする結合補助材5が形成される。
結合補助材形成工程において用いられる被削材10は、とくに限定されるものではないが、たとえば、被削材10として人工歯用ブランク19を用いるよう構成することができる。このように構成すれば、人工歯中間体形成工程(ステップS3)と同一工程において、同一の人工歯用ブランク19を用いて、結合補助材形成工程を実行することができるため、義歯の製造のための経費、時間を節減することができる。
もちろん、結合補助材形成工程において用いられる被削材10として義歯床用ブランク18を用いるよう構成することもできる。この場合、義歯床中間体形成工程(ステップS2)と同一工程において、同一の義歯床用ブランク18を用いて、結合補助材形成工程を実行することができるため、やはり、義歯の製造のための経費、時間を節減することができる。
上記結合補助材形成工程における切削加工のあと、結合補助材5は、被削材10(たとえば、人工歯用ブランク19または義歯床用ブランク18)から切り離される。
上述のステップS2ないしステップS4における各切削加工の際、義歯床中間体2の接続部21、人工歯中間体3の接続部31、隣接面35、人工歯中間体4の接続部41、解放された隣接面45、人工歯中間体3の結合部36、および、結合補助材5の結合補助部56(以下、「接続部21等」ということがある。)については、各部材における接続部21等以外の一次切削面23、33、43、53(以下、「他の一次切削面23等」ということがある。)と区別することなく、同様の切削条件下で切削を行うよう構成してもよいが、接続部21等の全部または一部については、たとえば、他の一次切削面23等より表面のうねりや粗さが小さくなるよう、他の一次切削面23等と異なる切削条件下で切削を行うよう構成することもできる。
さて、人工歯中間体連結工程(ステップS4)においては、続いて、図10Aないし図10Bに示す人工歯中間体連結体6が形成される。人工歯中間体連結体6は、上記結合補助材形成工程において形成された結合補助材5の各結合補助部56に、対応する6本の人工歯中間体3の結合部36がそれぞれはめ込まれて固定されることにより形成される。結合補助部56に結合部36を固定する方法はとくに限定されるものではないが、たとえば、結合補助部56と結合部36との嵌めあいをきつめにしたり、接着剤を用いたり、これらを併用したりすることができる。
結合補助部56に結合部36をはめ込んで固定する工程の一部または全体は、何らかの方法で自動化してもよいし、人の手作業で行うようにしてもよい。
ステップS4に続いて、義歯中間体形成工程(ステップS5)が実行される。
義歯中間体形成工程においては、図11ないし図12Bに示す義歯中間体7が形成される。義歯中間体7は、ステップS4において形成された、合計6本の人工歯中間体3を相互に連結したものからなる人工歯中間体連結体6、および、ステップS3において左右それぞれ4本ずつまとめて形成された2ブロック合計8本の人工歯中間体4を、義歯床用ブランク18から切り離されていない義歯床中間体2に接合することにより形成される。
接合の方法はとくに限定されるものではないが、たとえば、接着剤を用いて、人工歯中間体3、4の接合部31、41と義歯床中間体2の接合部21とを接合するよう構成することができる。
なお、このようにして形成された義歯中間体7は、この時点では、義歯床用ブランク18から切り離されていない。
義歯中間体形成工程の一部または全体は、何らかの方法で自動化してもよいし、人の手作業で行うようにしてもよい。
ステップS5に続いて、義歯形成工程(ステップS6)が実行される。
義歯形成工程においては、コンピュータ11の記憶装置16に記憶されている義歯の三次元形状データVD(図3参照)に基づいて、そのNCデータが、コンピュータ11において、たとえば、CAMの手法を用いて生成され、ミリングマシン12に送信される。
ミリングマシン12には、ステップS5において形成された義歯中間体7を備えた義歯床用ブランク18が装着されている。ミリングマシン12において、受信したNCデータにしたがって、義歯床用ブランク18に切削加工を施すことで、図13Aないし図13Bに示すように、図11ないし図12Bに示す義歯中間体7の各原形面22、32、42を輪郭面とする義歯8が形成される。
上記切削加工のあと、義歯8は義歯床用ブランク18から切り離されて研磨される。その後、必要に応じて口腔内試適・調整等が行われ、義歯8が完成する。
このように、この実施形態においては、前歯部を構成する6本の人工歯については、6本まとめて形成するのではなく、1本ずつ個別に形成し、その後、相互に連結するよう構成している。1本ずつ形成する際、義歯の三次元形状データVDに基づいて、隣接面35を原寸で仕上げるよう構成している。
つまり、1本ずつ原寸で仕上げられた隣接面35どうしを接触させることで、図13Bに示すように、隣接歯相互の接触点や鼓形空隙の状況を正確に再現することができる。この結果、自然な、審美性にすぐれた義歯8を実現することが可能となる。
さて、この実施形態においては、義歯8を構成する任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成するよう構成している。人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成する方法はとくに限定されるものではないが、たとえば、図4Bに示す人工歯用ブランク19を用いることで実現することができる。
人工歯用ブランク19は、透明層191およびこれに接して形成された歯色層192を備えた積層体として構成されている。透明層191は透明性の高い材料により構成され、歯色層192は歯の色彩を表す材料により構成されている。歯色層192は、単色であってもよいが、製造される人工歯の切縁部から歯頚部に向けて、すなわち、透明層191に接する部分から透明層191から遠ざかる方向に向けて、色味が漸次濃くなるよう構成されていることが好ましい。
人工歯用ブランク19における透明層191の位置は、とくに限定されるものではないが、たとえば、最上層に配置されることが好ましい。透明層191の厚さはとくに限定されるものではないが、人工歯の先端部分の高さ、および、当該先端部分を形成する際の加工誤差を吸収するために必要な高さを確保できる寸法であればよい。
透明層191の厚さは、好ましくは1mm以上8mm未満、より好ましくは1mm以上4mm未満、さらに好ましくは1mm以上2mm未満、とくに好ましくは1mm以上1.8mm未満である。
透明層191が1mm未満だと、人工歯の先端部分の高さ、および、当該先端部分を形成する際の加工誤差を吸収することが困難となる恐れがあり、8mm以上だと、人工歯用ブランク19において使用されない無駄な部分が必要以上に多くなるおそれがあるからである。
透明層191は、目視にて透明と判断できる程度以上のものであればよく、その透明性はとくに限定されるものではないが、透明層191の透明性を、たとえばL*a*b*表色系においてΔL*で表現した場合、ΔL*>13程度が好ましい。
ΔL*>13程度であれば目視にて透明と判断できるため、形成された人工歯も、より天然歯に近い印象を与えることが期待できるからである。より好ましくはΔL*>25、さらに好ましくはΔL*≧26、とくに好ましくはΔL*≧28である。
なお、透明層191の透明性ΔL*は、色差計(たとえば、分光測色計)を用いて、白背景と黒背景の色度を測定し、そのL*、a*、b*の値を元に次の式(1)で算出することができる。
ΔL*=Lw*-Lb*・・・・・(1)
式(1)において、Lw*は透明層191の白背景での色度の値を、Lb*は透明層191の黒背景での色度の値を、それぞれ表す。なお、白背景としては標準白色板を、黒背景としては標準黒色板を、それぞれ使用することができる。
また、透明層191とこれに隣接する歯色層192との透明性の違いは、とくに限定されるものではないが、透明層191と歯色層192との透明性差を、たとえばL*a*b*表色系においてΔΔL*で表現した場合、ΔΔL*>1程度であればとくに問題ない。
ただし、透明層191とこれに隣接する歯色層192との透明性の違いが、目視にて覚知できる程度であれば、形成された人工歯も、より天然歯に近い印象を与えることが期待できると考えるなら、好ましくはΔΔL*>5、より好ましくはΔΔL*≧10、さらに好ましくはΔΔL*>15、とくに好ましくはΔΔL*≧20となる。
なお、透明層191と歯色層192との透明性差ΔΔL*は、色差計(たとえば、分光測色計)を用いて測定し、そのL*、a*、b*の値を元に次の式(2)で算出することができる。
ΔΔL*=(Lw*1-Lb*1)-(Lw*2-Lb*2)・・・・・(2)
式(2)において、Lw*1は透明層191の、Lw*2は歯色層192の、いずれも白背景での色度の値を表す。また、Lb*1は透明層191の、Lb*2は歯色層192の、いずれも黒背景での色度の値を表す。なお、白背景としては標準白色板を、黒背景としては標準黒色板を、それぞれ使用することができる。
図14Aは、人工歯用ブランク19の適部の断面図であって、人工歯用ブランク19を用いて、前歯部を構成する任意の人工歯91の先端部分を透明性の高い材料により形成する方法を説明するための概念図である。図14Bは、人工歯用ブランク19の適部の断面図であって、人工歯用ブランク19を用いて、臼歯部を構成する任意の人工歯93の先端部分を透明性の高い材料により形成する方法を説明するための概念図である。
図14Aに示すように、上述の人工歯中間体形成工程(ステップS3)において、人工歯用ブランク19から、人工歯91(たとえば、中切歯および/または側切歯)に対応する人工歯中間体を切り出す際、人工歯91の先端部分が透明層191により構成されるよう、当該人工歯中間体の切り出し位置を設定している。
先端部分を透明性の高い材料により形成したくない人工歯92(たとえば、犬歯)に対応する人工歯中間体を切り出す際は、人工歯92全体が歯色層192内に収まるよう、当該人工歯中間体の切り出し位置を設定すればよい。
なお、図14Aにおいては、説明の便宜上、人工歯中間体は図示せず、当該人工歯中間体に対応する人工歯を図示している。図14Bないし図16Cにおいても同様である。
図14Bに示すように、ステップS3において、人工歯用ブランク19から、人工歯93(たとえば、大臼歯)に対応する人工歯中間体を切り出したい場合は、人工歯93の湾曲または傾斜した先端部分が透明層191により構成されるよう、当該人工歯中間体を傾けた状態で切り出し位置を設定すればよい。
この人工歯用ブランク19は、次のように把握することもできる。すなわち、人工歯用ブランク19は、切削加工により人工歯を切り出して形成するための素材として用いられる人工歯材料であって、透明層191と歯色層192とを備えている。透明層191は、透明性の高い材料により構成され、人工歯の先端部分を形成するために用いられる。歯色層192は、透明層191に接して設けられ、歯の色彩を表す材料により構成され、人工歯の先端部分以外の部分を形成するために用いられる。透明層191の透明性ΔL*が25を超えるよう構成されている。透明層191とこれに隣接する歯色層192との透明性差ΔΔL*が5を超えるよう構成されている。
図15A、図15Bは、義歯8を構成する任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成する他の方法について説明するための図面である。この方法は、人工歯用ブランクが透明層を備えていない場合にも実行することができる。
この方法においては、まず、図15Aに示すように、義歯形成工程(ステップS6)の実行前、たとえば、人工歯中間体形成工程(ステップS3)において、任意の人工歯94に対応する人工歯中間体を形成する際、義歯の三次元形状データVDに基づいて、当該任意の人工歯94の先端部分941を含む当該人工歯中間体の先端部分をあらかじめ除去した形状で形成する。
つぎに、人工歯中間体形成工程(ステップS3)の実行後、義歯形成工程(ステップS6)の実行前に、除去されている人工歯中間体の先端部分を、義歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、透明性の高い材料をつぎ足すことで形成する。
その後実行される義歯形成工程(ステップS6)において、先端部分が透明性の高い材料により形成された人工歯中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、図15Bに示すように、任意の人工歯94の先端部分を透明性の高い材料942により形成した義歯を形成することができる。
図16A、図16B、図16Cは、義歯8を構成する任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成するさらに他の方法について説明するための図面である。この方法も、人工歯用ブランクが透明層を備えていない場合にも実行することができる。
この方法においては、たとえば、図16Aに示すように、まず、人工歯中間体形成工程(ステップS3)において、任意の人工歯95に対応する人工歯中間体を、通常どおり形成しておく。
つぎに、人工歯中間体形成工程(ステップS3)の実行後に、図16Bに示すように、人工歯95の先端部分951を含む当該人工歯中間体の先端部分を切除する。
つぎに、切除した人工歯中間体の先端部分を、義歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、透明性の高い材料に置き換えて再形成する。
その後実行される義歯形成工程(ステップS6)において、先端部分が透明性の高い材料により再形成された人工歯中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、図16Cに示すように、任意の人工歯95の先端部分を透明性の高い材料952により形成した義歯を形成することができる。
義歯8を構成する任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成する方法は、図15A、図15Bに示す方法や図16A、図16B、図16Cに示す方法に限定されるものではない。
たとえば、義歯形成工程(ステップS6)の実行後、形成された義歯8を構成する任意の人工歯の先端部分を切除し、つぎに、切除した人工歯の先端部分を、塗布等により、透明性の高い材料に置き換えて再形成するよう構成することもできる。
さらに、義歯8を構成する任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成するさらに他の方法であって、人工歯用ブランクが透明層を備えていない場合にも実行することが可能な方法の例を、図18A、図18B、図19A、図19Bを用いて説明する。
この方法は、人工歯中間体形成工程(ステップS3)に先立ち、透明層を備えていない人工歯材料のうち任意の人工歯の先端部分に対応する部分を予め透明性の高い材料に置き換える透明材料置換工程を備えている。
透明材料置換工程は、人工歯材料に、透明性の高い材料を充填するための凹部である充填用凹部を形成する凹部形成工程と、形成された充填用凹部に透明性の高い材料を充填する透明材料充填工程とを備えている。
この方法においては、図18Aに示すように、被削材10としての人工歯材料として、上述の人工歯用ブランク19(図4B参照)に替えて、人工歯用ブランク119を用いている。人工歯用ブランク119は、歯色の材料により構成された人工歯材料であって、上述の歯色層192に対応する歯色層1192を備えている。人工歯用ブランク119は、上述の透明層191を備えていない点を除き、人工歯用ブランク19と略同一の構成である。
まず、凹部形成工程において、図18Bに示すように、人工歯用ブランク119の適部、たとえば上面193に、充填用凹部194が形成される。充填用凹部194は、図19Aに示すように、義歯の三次元形状データVDに基づいて構築された当該任意の人工歯96の三次元形状データ(図中一点鎖線で示す)に基づいて、当該任意の人工歯96の先端部分961に対応する部分に形成される。この例では、充填用凹部194は、その一部(底部)に人工歯96の先端部分961を含むよう形成されている。
凹部形成工程の詳細は、とくに限定されるものではないが、たとえば、つぎの手順で実行される。すなわち、三次元形状データ加工工程(ステップS1)において、義歯の三次元形状データVDに基づいて人工歯96の三次元形状データが構築されるとともに、人工歯96の三次元形状データに基づいて充填用凹部194の位置、形状に関するデータが構築される。ミリングマシン12には、人工歯用ブランク119が装着されている。ミリングマシン12において、受信したNCデータにしたがって、人工歯用ブランク119に切削加工を施すことで、充填用凹部194が形成される。
なお、凹部形成工程実行の際にミリングマシン12に装着された人工歯用ブランク119は、あとの人工歯中間体形成工程(ステップS3)が終了するまで、脱着しないのが好ましい。2つの切削工程における位置ずれを防止するためである。
凹部形成工程の後、透明材料充填工程において、図19Aに示すように、充填用凹部194に透明性の高い材料195が充填される。透明材料充填工程の一部または全体は、何らかの方法で自動化してもよいし、人の手作業で行うようにしてもよい。
その後、上述のように、人工歯中間体形成工程(ステップS3)ないし義歯形成工程(ステップS6)を通常どおり実行することで、図19Bに示すように、任意の人工歯96の先端部分961を透明性の高い材料195により形成した義歯を形成することができる。
なお、図19Bに示すように、人工歯96は、臼歯部を構成する人工歯であって、咬合関係に融通性を持たせる等の機能を重視して、非解剖学的人工歯または準解剖学的人工歯(以下、「非解剖学的人工歯等」という)として構成した場合の例である。非解剖学的人工歯等の咬合面は平坦または平坦に近いため、歯溝の深い天然歯の咬合面と大きく異なることから、外観上の不満が問題となっている。
このような場合に、透明材料置換工程を備えた本方法を適用すれば、非解剖学的人工歯等の咬合面である先端部分961を透明性の高い材料195により形成し、透明な咬合面である先端部分961を通してその奥に、歯色の材料で形成された天然歯の咬合面を模した形状が見えるよう構成することが可能となる。このように構成することで、非解剖学的人工歯等の機能を維持しつつ、天然歯の外観を呈することができるため、機能性および審美性をともに満足する人工歯を実現することができる。
このように、透明性の高い材料195により形成すべき任意の人工歯の先端部分961の表面962の形状(たとえば、上記の非解剖学的人工歯等の咬合面の形状)と、裏面963(歯色の材料に接する面)の形状(たとえば、上記の天然歯の咬合面を模した形状)が異なる場合であっても、本方法を適用すれば、容易に実現することができる。
図18Aないし図19Bでは、臼歯部を構成する一本の人工歯(人工歯中間体)を例に、透明材料置換工程を備えた義歯の製造方法について説明したが、透明材料置換工程を備えた義歯の製造方法は、これに限定されるものではなく、臼歯部、前歯部の別を問わず、また、人工歯の本数を問わず適用することができる。もちろん、個別に形成される人工歯(人工歯中間体)および2本以上まとめたブロックとして形成される複数の人工歯(人工歯中間体)のいずれにも適用することができる。
なお、上述の、任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成する種々の方法(人工歯用ブランクが透明層を備えていない場合にも実行することができる種々の方法)における、任意の人工歯の先端部分を構成する透明性の高い材料は、とくに限定されるものではないが、たとえば、透明層191および歯色層192を備えた人工歯用ブランク19を用いて形成される人工歯91または人工歯93(図14Aまたは図14B参照)におけるそれと同様のものとすることができる。
つぎに、この発明の他の実施形態による義歯の製造方法について、図17Aないし図17Cに基づいて説明する。
図17Aは、当該他の実施形態による義歯の製造方法において形成される人工歯中間体103の適部の切断部端面図であって、図8Aに対応する図面である。図17Bは、図17Aに示すXVIIBから見た矢視図であって図8Bに対応する図面である。図17Cは、複数の人工歯中間体103を連結してなる人工歯中間体連結体106の一部を示す、適部の切断部端面図である。
前述の実施形態においては、図7Bないし図10Bに示すように、個別に形成された複数の人工歯中間体3を相互に連結するために、人工歯中間体3に設ける結合部36を、たとえば凸状(この例では略楕円の柱状)の突起としておき、複数の結合部36にそれぞれ結合するための複数の結合補助部56を備えた結合補助材5を形成し、結合補助材5の各結合補助部56に、対応する結合部36をそれぞれ結合するよう構成している。すなわち、個別に形成された複数の人工歯中間体3を、結合補助材5を介して、間接的に連結して人工歯中間体連結体6を形成するよう構成している。
一方、この実施形態(図17Aないし図17Cに示す実施形態)においては、個別に形成された複数の人工歯中間体103を、上記の結合補助材5のような別部材を介することなく、直接的に連結して人工歯中間体連結体106を形成するよう構成している。したがって、この実施形態の人工歯中間体連結工程(ステップS4参照)には、前述の実施形態において実行されたような結合補助材形成工程は含まれない。
図17A、図17Bに示すように、人工歯中間体103における仕上げ代134の一部を、いずれも結合部である第1結合部136および第2結合部137として形成するよう構成している。
人工歯中間体103における第1結合部136および第2結合部137の位置は、とくに限定されるものではないが、たとえば、人工歯中間体103の内側面(この例では、口蓋側面)に沿って配置するよう構成することができる。
図17Cに示すように、人工歯中間体103の第2結合部137には、隣接する人工歯中間体103の第1結合部136に結合するための結合補助部138が設けられている。第2結合部137の結合補助部138に、隣接する人工歯中間体103の第1結合部136を結合することで、個別に形成された2本の隣接する人工歯中間体103が、義歯の三次元形状データVDにしたがって相互に連結されるよう構成されている。
このようにして、個別に形成された複数の人工歯中間体103を、義歯の三次元形状データVDにしたがって相互に連結することで、人工歯中間体連結体106を形成するよう構成している。
なお、人工歯中間体連結体106を構成する複数の人工歯中間体103のうち、両端に配置される2個の人工歯中間体103については、第1結合部136および第2結合部137のうち不要なものを省略することができる。
人工歯中間体103の第2結合部137の形状は、とくに限定されるものではないが、適部に結合補助部138を形成することができるよう、たとえば、略帯状に構成することができる。
人工歯中間体103の第2結合部137の結合補助部138に、隣接する人工歯中間体103の第1結合部136を結合させた状態で両者が相互に回転しないよう、第2結合部137の結合補助部138と、隣接する人工歯中間体103の第1結合部136の形状が決定される。この例では、第2結合部137の結合補助部138を略楕円穴状に形成するとともに、隣接する人工歯中間体103の第1結合部136を、これに隙間なく嵌合する凸状の突起、すなわち、略楕円柱状に形成している。
第2結合部137の結合補助部138に、隣接する人工歯中間体103の第1結合部136はめ込んで固定する方法は、とくに限定されるものではないが、たとえば、対応する結合補助部138と第1結合部136との嵌めあいをきつめにしたり、接着剤を用いたり、これらを併用したりすることができる。
結合補助部138に、対応する第1結合部136をはめ込んで固定する工程の一部または全体は、何らかの方法で自動化してもよいし、人の手作業で行うようにしてもよい。
この実施形態による義歯の製造方法における、その余の構成やバリエーションは、この実施形態による義歯の製造方法に適用不能なものを除き、前述の実施形態による義歯の製造方法におけるものと同様である。
なお、上述の各実施形態においては、人工歯中間体連結工程において、個別に形成された複数の人工歯中間体の結合部を直接的にまたは間接的に相互に結合することで、個別に形成された複数の人工歯中間体のみを、義歯の三次元形状データにしたがって相互に連結するよう構成しているが、この発明はこれに限定されるものではない。
個別に形成しない人工歯中間体がある場合は、2本以上まとめて形成された当該人工歯中間体の1または2以上のブロックにも結合部を設けておき、個別に形成された複数の人工歯中間体の結合部および2本以上まとめて形成された人工歯中間体の1または2以上のブロックの結合部を、直接的にまたは間接的に相互に結合するよう構成することができる。
このように構成することで、個別に形成された複数の人工歯中間体のみならず、2本以上まとめて形成された人工歯中間体の1または2以上のブロックも併せて、義歯の三次元形状データにしたがって相互に連結することができる。このため、義歯の三次元形状データによって与えられた隣接歯相互の位置関係を、さらに正確に再現することが可能となる。
また、上述の各実施形態においては、主として、個別に形成する人工歯中間体に対応する人工歯が、前歯部を構成する全ての人工歯である場合を例に説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。
個別に形成する人工歯中間体に対応する人工歯が、前歯部および/または臼歯部を構成する人工歯の一部または全部である場合にも、この発明を適用することができる。当然ながら、個別に形成する人工歯中間体に対応する人工歯が、前歯部および臼歯部を構成する人工歯の全部である場合には、個別に形成しない人工歯中間体は存在しないことになる。
つぎに、この発明のさらに他の実施形態による義歯の製造方法について、図20Aないし図25Bに基づいて説明する。この実施形態は、さらに、義歯を構成する任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成する場合の一例である。
このうち、図20Aないし図21Bに示す方法は、任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分のうち義歯床に係る部分、すなわち、義歯床の外観的境界部分を、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い材料(以下、「薄色等材料」という。)により構成する方法である。
図20Aは、義歯床用ブランク18の適部に、充填用凹部184が形成された状態を示す斜視図である。図20Bは、図20Aに示す義歯床用ブランク18の適部の断面図である。図21Aは、義歯床の外観的境界部分981を薄色等材料185により形成した義歯床98の正面図である。図21Bは、図21Aに示すXXIB-XXIB線に沿う切断部の拡大端面図である。
この方法は、義歯床中間体形成工程(ステップS2)に先立ち、義歯床材料における義歯床の外観的境界部分に対応する部分を、予め、薄色等材料に置き換える義歯床境界部材料置換工程を備えている。
義歯床境界部材料置換工程は、義歯床材料に、薄色等材料を充填するための凹部である充填用凹部を形成する凹部形成工程と、形成された充填用凹部に薄色等材料を充填する薄色等材料充填工程とを備えている。
この方法においては、被削材10としての義歯床材料として、上述の義歯床用ブランク18(図4A参照)と同様の構成のものを用いている。以下、この方法に用いる義歯床用ブランクも、義歯床用ブランク18と呼び、同じ部位には同じ符号を付して説明する。義歯床用ブランク18は、略単一の歯肉色の材料により構成された歯肉色層182を備えている。
まず、凹部形成工程において、図20Aに示すように、義歯床用ブランク18の適部、たとえば上面183に、充填用凹部184が形成される。充填用凹部184は、図20Bに示すように、義歯の三次元形状データVDに基づいて構築された義歯床98の三次元形状データ(図中一点鎖線で示す)に基づいて、義歯床98の外観的境界部分981に対応する部分に形成される。この例では、充填用凹部184は、その一部(底部)に義歯床98の外観的境界部分981を含むよう形成されている。
凹部形成工程の詳細は、とくに限定されるものではないが、たとえば、つぎの手順で実行される。すなわち、三次元形状データ加工工程(ステップS1)において、義歯の三次元形状データVDに基づいて義歯床98の三次元形状データが構築されるとともに、義歯床98の三次元形状データに基づいて充填用凹部184の位置、形状に関するデータが構築される。ミリングマシン12には、義歯床用ブランク18が装着されている。ミリングマシン12において、受信したNCデータにしたがって、義歯床用ブランク18に切削加工を施すことで、充填用凹部184が形成される。
なお、凹部形成工程実行の際にミリングマシン12に装着された義歯床用ブランク18は、少なくともあとの義歯床中間体形成工程(ステップS2)が終了するまで、脱着しないのが好ましい。2つの切削工程における位置ずれを防止するためである。
凹部形成工程の後、薄色等材料充填工程において、図20Bに示すように、充填用凹部184に薄色等材料185が充填される。薄色等材料充填工程の一部または全体は、何らかの方法で自動化してもよいし、人の手作業で行うようにしてもよい。
その後、上述のように、義歯床中間体形成工程(ステップS2)ないし義歯形成工程(ステップS6)を通常どおり実行することで、図21Aないし図21Bに示すような、義歯床の外観的境界部分981を薄色等材料185により形成した義歯床98を有する義歯を形成することができる。
図20Aないし図21Bでは、全ての人工歯に対応する義歯床の外観的境界部分について義歯床境界部材料置換工程を実施する場合を例に説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。一部の人工歯(たとえば、前歯部を構成する人工歯)に対応する義歯床の外観的境界部分のみについて、義歯床境界部材料置換工程を備えた義歯の製造方法を適用するよう構成することもできる。
なお、義歯床の外観的境界部分を薄色等材料により構成する方法は、上述の義歯床境界部材料置換工程を備えた方法(図20Aないし図21B参照)に限定されるものではない。
たとえば、上述の人工歯94の先端部分を透明性の高い材料942により形成する方法(図15Aないし図15B参照)と同様の方法を、義歯床の外観的境界部分を薄色等材料により構成する方法に適用することができる。
たとえば、義歯床中間体形成工程(ステップS2)において、義歯床中間体を形成する際、義歯の三次元形状データに基づいて、義歯床の外観的境界部分を含む義歯床中間体の部分をあらかじめ除去した形状で形成し、義歯床中間体形成工程(ステップS2)の実行後、義歯形成工程(ステップS6)の実行前に、除去されている義歯床中間体の前記部分を、義歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い材料をつぎ足すことで形成し、その後実行される義歯形成工程(ステップS6)において、義歯床中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、義歯床の外観的境界部分を薄色等材料により構成することが可能となり、ひいては、任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成することが可能となる。
また、上述の人工歯95の先端部分を透明性の高い材料952により形成する方法(図16Aないし図16C参照)と同様の方法を、義歯床の外観的境界部分を薄色等材料により構成する方法に適用することができる。
たとえば、義歯床中間体形成工程(ステップS2)において、義歯床中間体を、通常どおりの形状で形成し、義歯床中間体形成工程(ステップS2)の実行後、義歯形成工程(ステップS6)の実行前に、義歯床の外観的境界部分を含む義歯床中間体の部分を切除し、切除した義歯床中間体の前記部分を、義歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い材料に置き換えて再形成し、その後実行される義歯形成工程(ステップS6)において、義歯床中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、義歯床の外観的境界部分を薄色等材料により構成することが可能となり、ひいては、任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成することが可能となる。
つぎに、図22Aないし図23に示す方法は、任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分のうち人工歯に係る部分、すなわち、人工歯の外観的境界部分を薄色等材料により構成する方法である。
図22Aは、人工歯用ブランク119の適部に、充填用凹部197が形成された状態を示す斜視図である。図22Bは、図22Aに示す人工歯用ブランク119の適部の断面図である。図23Aは、人工歯の外観的境界部分971を薄色等材料198により形成した人工歯97の正面図である。図23Bは、図23Aに示すXXIIIB-XXIIIB線に沿う切断部の端面図である。
この方法は、人工歯中間体形成工程(ステップS3)に先立ち、人工歯材料における任意の人工歯の外観的境界部分に対応する部分を、予め、薄色等材料に置き換える人工歯境界部材料置換工程を備えている。
人工歯境界部材料置換工程は、人工歯材料に、薄色等材料を充填するための凹部である充填用凹部を形成する凹部形成工程と、形成された充填用凹部に薄色等材料を充填する薄色等材料充填工程とを備えている。
この方法においては、被削材10としての人工歯材料として、上述の人工歯用ブランク119(図18A参照)と同様の構成のものを用いている。以下、この方法に用いる人工歯用ブランクも、人工歯用ブランク119と呼び、同じ部位には同じ符号を付して説明する。
まず、凹部形成工程において、図22Aに示すように、人工歯用ブランク119の適部、たとえば下面196に、充填用凹部197が形成される。充填用凹部197は、図22Bに示すように、義歯の三次元形状データVDに基づいて構築された当該任意の人工歯97の三次元形状データ(図中一点鎖線で示す)に基づいて、当該任意の人工歯97の外観的境界部分971に対応する部分に形成される。この例では、充填用凹部197は、その一部(側部または底部)に人工歯97の外観的境界部分971を含むよう形成されている。
凹部形成工程の詳細は、とくに限定されるものではないが、たとえば、つぎの手順で実行される。すなわち、三次元形状データ加工工程(ステップS1)において、義歯の三次元形状データVDに基づいて人工歯97の三次元形状データが構築されるとともに、人工歯96の三次元形状データに基づいて充填用凹部197の位置、形状に関するデータが構築される。ミリングマシン12には、人工歯用ブランク119が装着されている。ミリングマシン12において、受信したNCデータにしたがって、人工歯用ブランク119に切削加工を施すことで、充填用凹部197が形成される。
なお、凹部形成工程実行の際にミリングマシン12に装着された人工歯用ブランク119は、あとの人工歯中間体形成工程(ステップS3)が終了するまで、脱着しないのが好ましい。2つの切削工程における位置ずれを防止するためである。
凹部形成工程の後、薄色等材料充填工程において、図22Bに示すように、充填用凹部197に薄色等材料198が充填される。薄色等材料充填工程の一部または全体は、何らかの方法で自動化してもよいし、人の手作業で行うようにしてもよい。
その後、上述のように、人工歯中間体形成工程(ステップS3)ないし義歯形成工程(ステップS6)を通常どおり実行することで、図23Aないし図23Bに示すような、人工歯の外観的境界部分971を薄色等材料198により形成した人工歯97を有する義歯を形成することができる。
図22Aないし図23Bでは、前歯部を構成する一本の人工歯(人工歯中間体)を例に、人工歯境界部材料置換工程を備えた義歯の製造方法について説明したが、人工歯境界部材料置換工程を備えた義歯の製造方法は、これに限定されるものではなく、前歯部、臼歯部の別を問わず、また、人工歯の本数を問わず適用することができる。もちろん、個別に形成される人工歯(人工歯中間体)および2本以上まとめたブロックとして形成される複数の人工歯(人工歯中間体)のいずれにも適用することができる。
なお、人工歯の外観的境界部分を薄色等材料により構成する方法は、上述の人工歯境界部材料置換工程を備えた方法(図22Aないし図23B参照)に限定されるものではない。
たとえば、上述の人工歯94の先端部分を透明性の高い材料942により形成する方法(図15Aないし図15B参照)と同様の方法を、人工歯の外観的境界部分を薄色等材料により構成する方法に適用することができる。
たとえば、人工歯中間体形成工程(ステップS3)において、任意の人工歯に対応する人工歯中間体を形成する際、義歯の三次元形状データに基づいて、当該任意の人工歯の外観的境界部分を含む当該人工歯中間体の部分をあらかじめ除去した形状で形成し、人工歯中間体形成工程(ステップS3)の実行後、義歯形成工程(ステップS6)の実行前に、除去されている人工歯中間体の前記部分を、義歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い材料をつぎ足すことで形成し、その後実行される義歯形成工程(ステップS6)において、人工歯中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、任意の人工歯の外観的境界部分を薄色等材料により構成することが可能となり、ひいては、任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成することが可能となる。
また、上述の人工歯95の先端部分を透明性の高い材料952により形成する方法(図16Aないし図16C参照)と同様の方法を、人工歯の外観的境界部分を薄色等材料により構成する方法に適用することができる。
たとえば、人工歯中間体形成工程(ステップS3)において、任意の人工歯に対応する人工歯中間体を、通常どおりの形状で形成し、人工歯中間体形成工程(ステップS3)の実行後、義歯形成工程(ステップS6)の実行前に、当該任意の人工歯の外観的境界部分を含む当該人工歯中間体の部分を切除し、切除した人工歯中間体の前記部分を、義歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い材料に置き換えて再形成し、その後実行される義歯形成工程(ステップS6)において、人工歯中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、任意の人工歯の外観的境界部分を薄色等材料により構成することが可能となり、ひいては、任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成することが可能となる。
つぎに、図24に、義歯を構成する任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成する、さらに別の方法を示す。
図24は、人工歯101と義歯床100との境界部分に形成された接着剤による外観的境界部分99を示す適部の断面図である。
この方法では、たとえば、義歯中間体形成工程(ステップS5)において、義歯床100の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い接着剤を用いて任意の人工歯101に対応する人工歯中間体と義歯床中間体とを接合するよう構成している。人工歯101と義歯床100との接合部分から漏出した余剰の接着剤が固化したものが、義歯形成工程(ステップS6)の実行後も、人工歯101と義歯床100との境界部分に一部残される。これを残留固化接着剤という。
人工歯101と義歯床100との外観的境界部分のうち、上記の残留固化接着剤により構成される部分を、接着剤による外観的境界部分99という。このように、接着剤を薄色等材料により構成することで、接着剤による外観的境界部分99も薄色等材料により構成されることとなり、ひいては、任意の人工歯101と義歯床100との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となる。
図25Aは、上述の種々の方法により、義歯を構成する任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるように形成された義歯の一例を示す正面図である。図25Bは、図25Aに示すXXVB-XXVB線に沿う切断部の拡大端面図である。
図25Aないし図25Bに示す義歯108は、義歯床の外観的境界部分981を薄色等材料185により形成した義歯床98、および人工歯の外観的境界部分971を薄色等材料198により形成した人工歯97を備え、さらに義歯床98と人工歯97との境界部分に、薄色等材料により形成された接着剤による外観的境界部分99を備えている。
上述の薄色等材料は、とくに限定されるものではなく、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い材料であればよい。また、義歯床の外観的境界部分981、人工歯の外観的境界部分971および接着剤による外観的境界部分99における薄色等材料の色合いは全て同一であってもよいし、部分により異なっていてもよい。
たとえば、義歯床の外観的境界部分981の薄色等材料は、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色(たとえば、義歯床の付着歯肉に対応する部分より白色がかった歯肉色)とし、人工歯の外観的境界部分971の薄色等材料は、義歯床の付着歯肉に対応する部分より透明性の高い材料(たとえば、図4Bに示す人工歯用ブランク19の透明層191と同程度の透明性を備えた材料)とすることができる。接着剤による外観的境界部分99における薄色等材料は、義歯床の外観的境界部分981の薄色等材料と同様の色合いであってもよいし、人工歯の外観的境界部分971の薄色等材料と同様の色合いであってもよいし、義歯床の外観的境界部分981の薄色等材料と人工歯の外観的境界部分971の薄色等材料との間の色合いであってもよい。
図25Aないし図25Bに示す義歯108の例では、義歯床の外観的境界部分981、人工歯の外観的境界部分971および接着剤による外観的境界部分99の3つの部分全てを、何らかの薄色等材料により形成し、もって、義歯を構成する任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成しているが、この発明はこれに限定されるものではない。
義歯床の外観的境界部分981、人工歯の外観的境界部分971および接着剤による外観的境界部分99のうち任意の1つまたは2つの部分のみを薄色等材料により形成し、もって、義歯を構成する任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成することもできる。
なお、上述の各実施形態においては、義歯の製造方法に用いられる義歯の三次元形状データが、調整済みの治療用義歯に基づいて得られたものである場合を例に説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。
義歯の三次元形状データが、たとえば、調整済みの治療用義歯以外の義歯に基づいて得られたものである場合や、患者の口腔内形状を直接または間接的にデータ化した口腔内形状の三次元形状データに基づいて得られたものである場合にも、この発明を適用することができる。
また、上述の各実施形態においては、上顎の総義歯を製造する場合を例に説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。下顎の総義歯を製造する場合や、総義歯(全部床義歯)以外の有床義歯(部分床義歯)を製造する場合にも、この発明を適用することができる。
さて、上述の各実施形態においては、義歯を構成する任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成する発明を開示する際、少なくとも個別に形成された人工歯中間体については、その仕上げ代の一部を結合部として形成するとともに、義歯の三次元形状データに基づいて結合部を直接的にまたは間接的に相互に結合する人工歯中間体連結工程が実行されることを前提として説明したが、義歯を構成する任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成する発明は、これに限定されるものではなく、係る前提の有無にかかわらず適用することができる。
この場合、この発明は、たとえば、以下の発明A1ないし発明A10として把握することができる。発明A1ないし発明A10は、概ね、上述の各実施形態に記載された発明から、人工歯中間体相互の連結に関する要素、たとえば、結合部や人工歯中間体連結工程に関する要素等を捨象した発明として把握することができる。
また、この発明を、人工歯の製造方法として把握すれば、以下の発明B1ないし発明B11として表現することができる。この場合、発明B1ないし発明B11は、概ね、発明A1ないし発明A10から、さらに義歯床に関連する要素、たとえば義歯床中間体形成工程、義歯中間体形成工程に関する要素を捨象するとともに、義歯を人工歯と読み替えた発明として把握することができる。この場合における人工歯の3次元形状データは、人工歯や天然歯から直接または間接的に得たデータであってもよいし、CAD上で生成した架空のデータであってもよい。さらに、義歯の3次元形状データから、人工歯の部分を抽出したデータであってもよい。
[発明A1]
義歯の三次元形状データに基づいて義歯を製造する義歯の製造方法であって、
前記義歯を構成する1または2以上の任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成するよう構成され、
義歯の三次元形状データに基づいて義歯床材料から義歯床中間体を形成する工程であって、少なくとも人工歯との接続部は原寸で、原寸で形成しない部分は原寸に仕上げ代を追加した寸法で義歯床中間体を形成する義歯床中間体形成工程と、
義歯の三次元形状データに基づいて人工歯材料から1または2以上の人工歯中間体を形成する工程であって、人工歯中間体のうち個別に形成する人工歯中間体がある場合は当該個別に形成する人工歯中間体については、少なくとも義歯床との接続部は原寸で、少なくとも前記任意の人工歯の先端部分は原寸に仕上げ代を追加した寸法で、1本ずつ個別に形成し、個別に形成しない人工歯中間体がある場合は当該個別に形成しない人工歯中間体については、少なくとも義歯床との接続部は原寸で、少なくとも前記任意の人工歯の先端部分は原寸に仕上げ代を追加した寸法で、2本以上まとめた1以上のブロックとして形成する人工歯中間体形成工程と、
すべての人工歯中間体と義歯床中間体とを接合して義歯中間体を形成する義歯中間体形成工程と、
義歯の三次元形状データにしたがって義歯中間体を切削して義歯を形成する義歯形成工程と、
を備えたこと、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明A2]
発明A1の義歯の製造方法において、
前記人工歯材料を、少なくとも1つの層が透明性の高い材料により構成された透明層を有する積層体から構成し、
前記人工歯材料から人工歯中間体を形成する際、前記任意の人工歯の先端部分が前記透明層により構成されるよう、前記人工歯材料における各人工歯中間体の切り出し位置をそれぞれ設定すること、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明A3]
発明A1の義歯の製造方法において、
前記人工歯中間体形成工程において、前記任意の人工歯に対応する人工歯中間体を形成する際、義歯の三次元形状データに基づいて、当該任意の人工歯の先端部分を含む当該人工歯中間体の先端部分をあらかじめ除去した形状で形成し、
前記人工歯中間体形成工程の実行後、前記義歯形成工程の実行前に、除去されている人工歯中間体の先端部分を、義歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、透明性の高い材料をつぎ足すことで形成し、
その後実行される前記義歯形成工程において、先端部分が透明性の高い材料により形成された人工歯中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、前記任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成した義歯を形成するよう構成したこと、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明A4]
発明A1の義歯の製造方法において、
前記人工歯中間体形成工程において、前記任意の人工歯に対応する人工歯中間体を、通常どおりの形状で形成し、
前記人工歯中間体形成工程の実行後、前記義歯形成工程の実行前に、当該任意の人工歯の先端部分を含む当該人工歯中間体の先端部分を切除し、切除した人工歯中間体の先端部分を、義歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、透明性の高い材料に置き換えて再形成し、
その後実行される前記義歯形成工程において、先端部分が透明性の高い材料により再形成された人工歯中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、前記任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成した義歯を形成するよう構成したこと、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明A5]
発明A1の義歯の製造方法において、
前記人工歯材料として、歯色の材料により構成された歯色層からなる人工歯材料を用い、
前記人工歯中間体形成工程に先立ち、前記人工歯材料における前記任意の人工歯の先端部分に対応する部分を予め透明性の高い材料に置き換える透明材料置換工程をさらに備え、
その後実行される前記義歯形成工程において、先端部分が透明性の高い材料により形成された人工歯中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、前記任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成した義歯を形成するよう構成したこと、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明A6]
発明A1ないし発明A5のいずれかの義歯の製造方法において、
先端部分が透明性の高い材料により形成される前記任意の人工歯は、前歯部を構成する人工歯であること、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明A7]
発明A1ないし発明A6のいずれかの義歯の製造方法において、
先端部分が透明性の高い材料により形成される前記任意の人工歯は、臼歯部を構成する人工歯であること、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明A8]
発明A1ないし発明A7のいずれかの義歯の製造方法において、
前記義歯の三次元形状データは、調整済みの義歯に基づいて得られたものであること、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明A9]
発明A1ないし発明A8のいずれかの義歯の製造方法により製造されたことを特徴とする義歯。
[発明A10]
発明A2の義歯の製造方法に用いることを特徴とする人工歯材料。
[発明B1]
人工歯の三次元形状データに基づいて人工歯を製造する人工歯の製造方法であって、
1または2以上の任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成するよう構成され、
人工歯の三次元形状データに基づいて人工歯材料から1または2以上の人工歯中間体を形成する工程であって、個別に形成する人工歯中間体がある場合は当該個別に形成する人工歯中間体については、少なくとも前記任意の人工歯の先端部分を原寸に仕上げ代を追加した寸法で、1本ずつ個別に形成し、個別に形成しない人工歯中間体がある場合は当該個別に形成しない人工歯中間体については、少なくとも前記任意の人工歯の先端部分を原寸に仕上げ代を追加した寸法で、2本以上まとめた1以上のブロックとして形成する人工歯中間体形成工程と、
人工歯の三次元形状データにしたがって人工歯中間体を切削して人工歯を形成する人工歯形成工程と、
を備えたこと、
を特徴とする人工歯の製造方法。
[発明B2]
発明B1の人工歯の製造方法において、
前記人工歯材料を、少なくとも1つの層が透明性の高い材料により構成された透明層を有する積層体から構成し、
前記人工歯材料から人工歯中間体を形成する際、前記任意の人工歯の先端部分が前記透明層により構成されるよう、前記人工歯材料における各人工歯中間体の切り出し位置をそれぞれ設定すること、
を特徴とする人工歯の製造方法。
[発明B3]
発明B1の人工歯の製造方法において、
前記人工歯中間体形成工程において、前記任意の人工歯に対応する人工歯中間体を形成する際、人工歯の三次元形状データに基づいて、当該任意の人工歯の先端部分を含む当該人工歯中間体の先端部分をあらかじめ除去した形状で形成し、
前記人工歯中間体形成工程の実行後、前記人工歯形成工程の実行前に、除去されている人工歯中間体の先端部分を、人工歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、透明性の高い材料をつぎ足すことで形成し、
その後実行される前記人工歯形成工程において、先端部分が透明性の高い材料により形成された人工歯中間体を、人工歯の三次元形状データにしたがって切削することで、前記任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成した人工歯を形成するよう構成したこと、
を特徴とする人工歯の製造方法。
[発明B4]
発明B1の人工歯の製造方法において、
前記人工歯中間体形成工程において、前記任意の人工歯に対応する人工歯中間体を、通常どおりの形状で形成し、
前記人工歯中間体形成工程の実行後、前記人工歯形成工程の実行前に、当該任意の人工歯の先端部分を含む当該人工歯中間体の先端部分を切除し、切除した人工歯中間体の先端部分を、人工歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、透明性の高い材料に置き換えて再形成し、
その後実行される前記人工歯形成工程において、先端部分が透明性の高い材料により再形成された人工歯中間体を、人工歯の三次元形状データにしたがって切削することで、前記任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成した人工歯を形成するよう構成したこと、
を特徴とする人工歯の製造方法。
[発明B5]
発明B1の人工歯の製造方法において、
前記人工歯材料として、歯色の材料により構成された歯色層からなる人工歯材料を用い、
前記人工歯中間体形成工程に先立ち、前記人工歯材料における前記任意の人工歯の先端部分に対応する部分を予め透明性の高い材料に置き換える透明材料置換工程をさらに備え、
その後実行される前記人工歯形成工程において、先端部分が透明性の高い材料により形成された人工歯中間体を、人工歯の三次元形状データにしたがって切削することで、前記任意の人工歯の先端部分を透明性の高い材料により形成した人工歯を形成するよう構成したこと、
を特徴とする人工歯の製造方法。
[発明B6]
発明B1ないし発明B5のいずれかの人工歯の製造方法において、
先端部分が透明性の高い材料により形成される前記任意の人工歯は、前歯部を構成する人工歯であること、
を特徴とする人工歯の製造方法。
[発明B7]
発明B1ないし発明B6のいずれかの人工歯の製造方法において、
先端部分が透明性の高い材料により形成される前記任意の人工歯は、臼歯部を構成する人工歯であること、
を特徴とする人工歯の製造方法。
[発明B8]
発明B1ないし発明B7のいずれかの人工歯の製造方法において、
前記人工歯の三次元形状データは、調整済みの義歯を構成する人工歯に基づいて得られたものであること、
を特徴とする人工歯の製造方法。
[発明B9]
発明B1ないし発明B8のいずれかの人工歯の製造方法により製造されたことを特徴とする人工歯。
[発明B10]
発明B2の人工歯の製造方法に用いることを特徴とする人工歯材料。
[発明B11]
発明B9の人工歯を用いたことを特徴とする義歯。
なお、発明A2、A3、A4、A5およびB2、B3、B4、B5による製造方法の適用範囲は、いずれも、とくに限定されるものではないが、たとえば、人工歯材料が、透明層と、これに接する歯色層(歯の色彩を表す材料により構成された層)とを備えた積層体により構成され、透明層と歯色層が略平面で接しているような場合にあっては、人工歯中間体形成工程において、先端部分を透明性の高い材料により形成すべき任意の人工歯の先端部分の切り出し位置を、略同一平面上に配置することができる場合に、発明A2またはB2による製造方法を適用することができる。
すなわち、先端部分を透明性の高い材料により形成すべき任意の人工歯が、個別に形成される人工歯中間体に対応する人工歯である場合や、2本以上まとめたブロックとして形成される複数の人工歯中間体に対応する人工歯のうち、先端部分の高さ(人工歯の高さ方向における先端部分の位置の意。以下同様)が略同一である人工歯については、一般に、発明A2またはB2による製造方法を適用することができる。
しかし、このような場合であっても、人工歯の先端部分が、高さ方向に変化する曲線または曲面により構成されている場合には、発明A3、A4、A5またはB3、B4、B5による製造方法を適用することで、透明性の高い材料により形成された先端部分を、元の先端部分の形状を忠実に再現した形状とすることが可能となるため、より好ましい。
また、先端部分を透明性の高い材料により形成すべき任意の人工歯が、2本以上まとめたブロックとして形成される複数の人工歯中間体に対応する人工歯のうち、先端部分の高さが異なる人工歯である場合や、先端部分の傾斜角度が他と異なる人工歯である場合にも、発明A3、A4、A5またはB3、B4、B5による製造方法を適用することが、より好ましい。
より具体的には、たとえば、前歯部を構成する人工歯に対応する人工歯中間体6本をまとめて1ブロックとして形成する場合において、このうち中切歯および側切歯に対応する4本の人工歯の先端部分(切端)を透明性の高い材料により形成したいが、これら4本のうち1本以上の人工歯の先端部分の高さが他と異なるような場合や、1本以上の人工歯の先端部分の形状が高さ方向に変化する曲線により構成されているような場合には、発明A3、A4、A5またはB3、B4、B5による製造方法を適用することが、より好ましい。
また、たとえば、臼歯部を構成する人工歯に対応する人工歯中間体4本をまとめて1ブロックとして形成する場合において、4本の人工歯の先端部分(咬合面)を透明性の高い材料により形成したいが、これら4本のうち1本以上の人工歯の先端部分の高さが他と異なるような場合や、1本以上の人工歯の先端部分の形状が曲面により構成されていたり、他と異なる傾斜角度で構成されていたりする場合には、発明A3、A4、A5またはB3、B4、B5による製造方法を適用することが、より好ましい。
また、上述のように、透明性の高い材料により形成すべき任意の人工歯の先端部分の表面の形状(たとえば、上述の非解剖学的人工歯等の咬合面の形状)と、裏面(歯色の材料に接する面)の形状(たとえば、上記の天然歯の咬合面を模した形状)が異なる場合であっても、発明A3、A4、A5またはB3、B4、B5による製造方法を適用すれば、容易に実現することができる。
もちろん、人工歯を製造するにあたり、必要であれば、発明A2、A3、A4、A5のうち、いずれか2つ以上の発明を組み合わせて実施したり、発明B2、B3、B4、B5のうち、いずれか2つ以上の発明を組み合わせて実施したりすることも可能である。
そして、上記発明A1ないしA10の場合と同様に、義歯を構成する任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成された発明についても、上述の実施形態に記載された発明(図20Aないし図25B参照)から、人工歯中間体相互の連結に関する要素、たとえば、結合部や人工歯中間体連結工程に関する要素等を捨象した、以下の発明C1ないしC9として把握することができる。
[発明C1]
義歯の三次元形状データに基づいて義歯を製造する義歯の製造方法であって、
義歯の三次元形状データに基づいて義歯床材料から義歯床中間体を形成する工程であって、少なくとも人工歯との接続部は原寸で、原寸で形成しない部分は原寸に仕上げ代を追加した寸法で義歯床中間体を形成する義歯床中間体形成工程と、
義歯の三次元形状データに基づいて人工歯材料から1または2以上の人工歯中間体を形成する工程であって、人工歯中間体のうち個別に形成する人工歯中間体がある場合は当該個別に形成する人工歯中間体については、少なくとも義歯床との接続部は原寸で、原寸で形成しない部分は原寸に仕上げ代を追加した寸法で、1本ずつ個別に形成し、個別に形成しない人工歯中間体がある場合は当該個別に形成しない人工歯中間体については、少なくとも義歯床との接続部は原寸で、原寸で形成しない部分は原寸に仕上げ代を追加した寸法で、2本以上まとめた1以上のブロックとして形成する人工歯中間体形成工程と、
すべての人工歯中間体と義歯床中間体とを接合して義歯中間体を形成する義歯中間体形成工程と、
義歯の三次元形状データにしたがって義歯中間体を切削して義歯を形成する義歯形成工程と、
を備え、
前記義歯を構成する任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成したこと、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明C2]
発明C1の義歯の製造方法において、
前記義歯中間体形成工程において、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い接着剤を用いて前記任意の人工歯に対応する人工歯中間体と義歯床中間体とを接合することで、前記任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成したこと、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明C3]
発明C1ないし発明C2のいずれかの義歯の製造方法において、
前記義歯床中間体形成工程において、義歯床中間体を形成する際、義歯の三次元形状データに基づいて、義歯床の外観的境界部分を含む当該義歯床中間体の部分をあらかじめ除去した形状で形成し、
前記義歯床中間体形成工程の実行後、前記義歯形成工程の実行前に、除去されている義歯床中間体の前記部分を、義歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い材料をつぎ足すことで形成し、
その後実行される前記義歯形成工程において、前記義歯床中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、前記任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成したこと、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明C4]
発明C1ないし発明C2のいずれかの義歯の製造方法において、
前記義歯床中間体形成工程において、前記義歯床中間体を、通常どおりの形状で形成し、
前記義歯床中間体形成工程の実行後、前記義歯形成工程の実行前に、義歯床の外観的境界部分を含む当該義歯床中間体の部分を切除し、切除した義歯床中間体の前記部分を、義歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い材料に置き換えて再形成し、
その後実行される前記義歯形成工程において、前記義歯床中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、前記任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成したこと、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明C5]
発明C1ないし発明C2のいずれかの義歯の製造方法において、
前記義歯床材料として、歯肉色の材料により構成された歯肉色層からなる義歯床材料を用い、
前記義歯床中間体形成工程に先立ち、前記義歯床材料における義歯床の外観的境界部分に対応する部分を予め義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い材料に置き換える義歯床境界部材料置換工程をさらに備え、
その後実行される前記義歯形成工程において、前記義歯床中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、前記任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成したこと、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明C6]
発明C1ないし発明C5のいずれかの義歯の製造方法において、
前記人工歯中間体形成工程において、前記任意の人工歯に対応する人工歯中間体を形成する際、義歯の三次元形状データに基づいて、当該任意の人工歯の外観的境界部分を含む当該人工歯中間体の部分をあらかじめ除去した形状で形成し、
前記人工歯中間体形成工程の実行後、前記義歯形成工程の実行前に、除去されている人工歯中間体の前記部分を、義歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い材料をつぎ足すことで形成し、
その後実行される前記義歯形成工程において、前記人工歯中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、前記任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成したこと、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明C7]
発明C1ないし発明C5のいずれかの義歯の製造方法において、
前記人工歯中間体形成工程において、前記任意の人工歯に対応する人工歯中間体を、通常どおりの形状で形成し、
前記人工歯中間体形成工程の実行後、前記義歯形成工程の実行前に、当該任意の人工歯の外観的境界部分を含む当該人工歯中間体の部分を切除し、切除した人工歯中間体の前記部分を、義歯の三次元形状データに基づいて、塗布等により、義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い材料に置き換えて再形成し、
その後実行される前記義歯形成工程において、前記人工歯中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、前記任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成したこと、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明C8]
発明C1ないし発明C5のいずれかの義歯の製造方法において、
前記人工歯材料として、歯色の材料により構成された歯色層からなる人工歯材料を用い、
前記人工歯中間体形成工程に先立ち、前記人工歯材料における前記任意の人工歯の外観的境界部分に対応する部分を予め義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色または透明性の高い材料に置き換える人工歯境界部材料置換工程をさらに備え、
その後実行される前記義歯形成工程において、前記人工歯中間体を含む義歯中間体を、義歯の三次元形状データにしたがって切削することで、前記任意の人工歯と義歯床との外観的境界部分が義歯床の付着歯肉に対応する部分より薄い色となるよう構成したこと、
を特徴とする義歯の製造方法。
[発明C9]
発明C1ないし発明C8のいずれかの義歯の製造方法により製造されたことを特徴とする義歯。
なお、本明細書に記載された種々の実施形態、バリエーションその他の記載事項は、その性質上発明A1ないしA10、発明B1ないしB11および発明C1ないしC9(以下、「発明A1等」という。)に適用不能なものを除き、発明A1等にも適用される。逆に、発明A1等に関する種々の記載事項は、その性質上本願の特許請求の範囲に記載された発明または本明細書に記載された他の発明に適用不能なものを除き、本願の特許請求の範囲に記載された発明または本明細書に記載された他の発明にも適用される。
上記においては、本発明を好ましい実施形態として説明したが、各用語は、限定のために用いたのではなく、説明のために用いたものであって、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、添付のクレームの範囲において、変更することができるものである。また、上記においては、本発明のいくつかの典型的な実施形態についてのみ詳細に記述したが、当業者であれば、本発明の新規な教示および利点を逸脱することなしに上記典型的な実施形態において多くの変更が可能であることを、容易に認識するであろう。したがって、そのような変更はすべて、本発明の範囲に含まれるものである。