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JP7498391B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤ内表面にシーラント層を備えたセルフシールタイプの空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤにおいて、トレッド部におけるインナーライナー層のタイヤ径方向内側にシーラント層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような空気入りタイヤでは、釘等の異物がトレッド部に突き刺さった際に、その貫通孔にシーラント層を構成するシーラント材が流入することにより、空気圧の減少を抑制し、走行を維持することが可能になる。
上述したセルフシールタイプの空気入りタイヤにおいて、シーラント材の粘度が低いと、シーラント材が貫通孔内に流入し易くなるという点でシール性の向上が見込めるが、走行中に加わる熱や遠心力の影響によりシーラント材がタイヤセンター側に向かって流動し、その結果、貫通孔がタイヤセンター領域から外れると、シーラント材が不足して、シール性が充分に得られない虞がある。一方、シーラント材の粘度が高いと、前述のシーラント材の流動は防止できるが、シーラント材が貫通孔内に流入しにくくなり、シール性が低下する虞がある。そのため、タイヤ内表面にシーラント層を設けるにあたっては、走行に伴うシーラント材の流動の抑制と、良好なシール性の確保とをバランスよく両立することが求められている。
特開2006‐152110号公報
本発明の目的は、タイヤ内表面にシーラント層を備えた空気入りタイヤであって、シーラント層による良好なシール性を発揮しながら、走行中にシーラントが流動することを防止することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ外径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架されたカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された少なくとも1層のベルト層を含む補強層とを有し、少なくとも前記トレッド部の内表面に粘着性シーラント材からなるシーラント層が設けられた空気入りタイヤにおいて、タイヤ赤道位置における前記トレッド部の厚さT1および前記シーラント層の厚さS1が0.15<S1/T1<0.35の関係を満たし、且つ、前記ベルト層の端部位置における前記トレッド部の厚さT2および前記シーラント層の厚さS2が0.20<S2/T2<0.40の関係を満たし、更に、前記補強層の外周側に配置されたトレッドゴムについて、タイヤ赤道位置における前記トレッドゴムの厚さをT3、前記ベルト層の端部位置における前記トレッドゴムの厚さをT4としたとき、前記トレッドゴムの厚さT3および前記シーラント層の厚さS1が0.20<S1/T3<0.40の関係を満たし、且つ、前記トレッドゴムの厚さT4および前記シーラント層の厚さS2が0.25<S2/T4<0.45の関係を満たし、前記厚さT1,T2,T3,T4がT1>T2且つT3>T4という関係を有し、前記シーラント層の幅Wsが前記ベルト層の幅Wb以上であり、且つ、正規内圧を充填して平面上に垂直に載置したときに前記ベルト層の端部位置において測定されたタイヤ外表面と前記平面との垂直方向距離について、無負荷時の前記垂直方向距離L1と正規荷重を負荷した時の前記垂直方向距離L2との差L1-L2が15mm以内であることを特徴とする。
本発明の空気入りタイヤは、上述のようにシーラント層を備えることでシール性を発揮するが、その際に、各部(タイヤ赤道位置およびベルト層の端部位置)においてシーラント層の厚さがトレッド部の厚さに対して適度な範囲に設定されているので、シール性を損ねることなく、走行中のシーラントの流動を抑制することが可能になる。即ち、トレッド部の厚さはタイヤの変形しやすさに影響を及ぼし、タイヤが変形しやすいほど走行中にシーラントの流動が生じやすくなるので、トレッド部の厚さとシーラント層の厚さの比率を適度な範囲に設定することで、走行中の流動を抑制することが可能になる。
本発明においては、補強層の外周側に配置されたトレッドゴムについて、タイヤ赤道位置におけるトレッドゴムの厚さをT3、ベルト層の端部位置におけるトレッドゴムの厚さをT4としたとき、トレッドゴムの厚さT3およびシーラント層の厚さS1が0.20<S1/T3<0.40の関係を満たし、且つ、トレッドゴムの厚さT4およびシーラント層の厚さS2が0.25<S2/T4<0.45の関係を満たす。これにより、トレッド部(トレッドゴム)の厚さとシーラント層の厚さの比率がより適切な範囲に設定されるので、シール性を維持しながら走行中の流動を抑制するには有利になる。
本発明においては、トレッドゴムの厚さT4とトレッドゴムの60℃における損失正接tanδ(60℃)とがT4×tanδ(60℃)≦5の関係を満たすことが好ましい。このような設定にすることでトレッド部の発熱を抑制することができ、それに伴ってトレッド部に接触するシーラント層の発熱も抑制できるのでシーラントの流動を抑制するには有利になる。
本発明においては、シーラント層の幅Wsがベルト層の幅Wb以上であり、且つ、正規内圧を充填して平面上に垂直に載置したときにベルト層の端部位置において測定されたタイヤ外表面と平面との垂直方向距離について、無負荷時の前記垂直方向距離L1と正規荷重を負荷した時の垂直方向距離L2との差L1-L2が15mm以内である。これにより、ベルト層の端部位置におけるタイヤの変形量を小さく抑えることができ、タイヤの変形に起因するシーラントの流動を抑制することが可能になる。
本発明においては、粘着性シーラント材が架橋されていることが好ましい。このように、シーラント層を予め架橋された粘着性シーラント材で構成することで、シーラント層(シーラント材)をタイヤ内表面に圧着する際の、シーラント材のタイヤ幅方向およびタイヤ周方向の変形を防止することができる。
また、本発明において、上述の垂直方向距離L1,L2を測定する際には、タイヤを正規リムにリム組みして上述の内圧を充填する。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車用である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
本発明の空気入りタイヤの一例を示す子午線断面図である。 本発明の空気入りタイヤのベルト層の端部位置の近傍を拡大して示す説明図である。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の空気入りタイヤ(セルフシールタイプの空気入りタイヤ)は、例えば図1に示すように、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示す。尚、図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。また、子午線断面図における他のタイヤ構成部材についても、特に断りがない限り、タイヤ周方向に延在して環状を成している。
図1の例において、左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。カーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5およびビードフィラー6の廻りに車両内側から外側に折り返されている。ビードフィラー6はビードコア5の外周側に配置され、カーカス層の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図1では2層)のベルト層7が埋設されている。これら複数層のベルト層7のうち、ベルト幅が最も小さい層を最小ベルト層7a、ベルト幅が最も大きい層を最大ベルト層7bという。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。トレッド部1におけるベルト層7の外周側にはベルト補強層8が設けられている。図示の例では、ベルト層7の全幅を覆うフルカバー層とフルカバー層の更に外周側に配置されてベルト層7の端部のみを覆うエッジカバー層の2層のベルト補強層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含み、この有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°~5°に設定されている。
トレッド部1において、上述のタイヤ構成部材(カーカス層4、ベルト層7、ベルトカバー層8)の外周側にはトレッドゴム層R1が配置される。トレッドゴム層R1は、物性の異なる2種類のゴム層(キャップトレッド層およびアンダートレッド層)がタイヤ径方向に積層した構造を有していてもよい。サイドウォール部2におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはサイドゴム層R2が配置され、ビード部3におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはリムクッションゴム層R3が配置されている。
タイヤ内面にはカーカス層4に沿ってインナーライナー層9が設けられている。このインナーライナー層9は、タイヤ内に充填された空気がタイヤ外に透過することを防ぐための層である。インナーライナー層9は、例えば、空気透過防止性能を有するブチルゴムを主体とするゴム組成物で構成される。或いは、熱可塑性樹脂をマトリクスとする樹脂層で構成することもできる。樹脂層の場合、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマー成分を分散させたものであってもよい。
本発明は、このような空気入りタイヤの内表面に設けられる後述のシーラント層10とトレッド部1の厚さに関するものである。そのため、本発明の空気入りタイヤは、後述のシーラント層10を備えていれば、後述のトレッド部1の厚さに関する特徴を除いた基本構造は上述の構造に限定されない。尚、シーラント層10とは、上述の基本構造を有する空気入りタイヤの内表面に貼付されるものであり、例えば釘等の異物がトレッド部1に突き刺さった際に、その貫通孔にシーラント層10を構成するシーラント材が流入し、貫通孔を封止することにより、空気圧の減少を抑制し、走行を維持することを可能にするものである。
図1に示すように、トレッド部1におけるインナーライナー層9のタイヤ径方向内側には、シーラント層10が設けられている。このシーラント層10は、走行時に釘等の異物が刺さる可能性がある領域、即ち、トレッド部1の接地領域に対応するタイヤ内面に設けられる。好ましくは、シーラント層10の幅Wsは、ベルト層7の幅Wb(最も幅の広いベルト層(図示の例の場合、最大ベルト層7b)の幅)以上であるとよい。また、最も幅の広いベルト層(図示の例の場合最大ベルト層7b)の幅方向端部を通るカーカスラインの法線からのシーラント層10の突き出し量wは好ましくは20mm以内であるとよい。
図1に示すように、タイヤ赤道CLの位置におけるトレッド部1の厚さをT1、タイヤ赤道CLの位置におけるシーラント層10の厚さをS1、ベルト層7の端部位置におけるトレッド部1の厚さをT2、ベルト層7の端部位置におけるシーラント層10の厚さをS2とすると、本発明では、厚さT1,S1が0.15<S1/T1<0.35の関係を満たし、且つ、厚さT2,S2が0.20<S2/T2<0.40の関係を満たしている。このように各部(タイヤ赤道CLの位置およびベルト層7の端部位置)においてシーラント層10の厚さをトレッド部1の厚さに対して適度な範囲に設定することで、シール性を損ねることなく、走行中のシーラントの流動を抑制することが可能になる。即ち、トレッド部1の厚さはタイヤの変形しやすさに影響を及ぼし、タイヤが変形しやすいほど走行中にシーラントの流動が生じやすくなるので、トレッド部1の厚さとシーラント層10の厚さの比率を適度な範囲に設定することで、走行中の流動を抑制することが可能になる。
このとき、比S1/T1が0.15以下であると、シーラント層10が薄すぎるため、シール性を十分に確保することが難しくなる。比S1/T1が0.35以上であると、シーラント層10が厚すぎるため、シーラント層10の重量(シーラント材の使用量)が増加して流動が生じやすくなることや、ユニフォミティが低下することが懸念される。比S2/T2が0.20以下であると、シーラント層10が薄すぎるため、シール性を十分に確保することが難しくなる。比S2/T2が0.40以上であると、シーラント層10が厚すぎるため、シーラント層10の重量(シーラント材の使用量)が増加して流動が生じやすくなることや、ユニフォミティが低下することが懸念される。
更に、図1に示すように、トレッドゴム層R1に関して、タイヤ赤道CLの位置におけるトレッドゴム層R1の厚さをT3、ベルト層7の端部位置におけるトレッドゴム層R1の厚さをT4とすると、前述のシーラント層10の厚さS1,S2は厚さT3,T4に対して、0.20<S1/T3<0.40、且つ、0.25<S2/T4<0.45の関係を満たすことが好ましい。これにより、トレッド部1(トレッドゴム層R1)の厚さとシーラント層10の厚さの比率がより適切な範囲に設定されるので、シール性を維持しながら走行中の流動を抑制するには有利になる。
このとき、比S1/T3が0.20以下であると、シーラント層10が薄すぎるため、シール性を十分に確保することが難しくなる。比S1/T3が0.40以上であると、シーラント層10が厚すぎるため、シーラント層10の重量(シーラント材の使用量)が増加して流動が生じやすくなることや、ユニフォミティが低下することが懸念される。比S2/T4が0.25以下であると、シーラント層10が薄すぎるため、シール性を十分に確保することが難しくなる。比S2/T4が0.45以上であると、シーラント層10が厚すぎるため、シーラント層10の重量(シーラント材の使用量)が増加して流動が生じやすくなることや、ユニフォミティが低下することが懸念される。
尚、本発明において、厚さT1,T2,T3,T4,S1,S2はいずれも、カーカスライン(子午線断面におけるカーカス層4の外周側の表面の輪郭線)の法線に沿って測定する。具体的には、厚さT1,T3,S1はそれぞれ、カーカスラインとタイヤ赤道CLの交点を通るカーカスラインの法線(基本的にタイヤ赤道CLと一致)に沿って測定されるトレッド部1、トレッドゴム層R1、シーラント層10の厚さである。厚さT2,T4,S2はそれぞれ、最も幅の広いベルト層7の端部(最大ベルト層7bの端部)を通るカーカスラインの法線に沿って測定されるトレッド部1、トレッドゴム層R1、シーラント層10の厚さである。
本発明では、シーラント層10の厚さとトレッド部1(トレッドゴム層R1)の比率が上述の関係にあれば、シーラント層10の厚さは特に限定されないが、一般的な空気入りタイヤにおいては、シーラント層10の厚さは、例えば0.5mm~5.0mmに設定することができる。この程度の厚さを有することで、シール性を良好に確保しながら、走行時のシーラントの流動を抑制することができる。また、シーラント層10をタイヤ内面に貼付する際の加工性も良好になる。シーラント層10の厚さが0.5mm未満であると充分なシール性を確保することが難しくなる。シーラント層10の厚さが5.0mmを超えるとタイヤ重量が増加して転がり抵抗が悪化する。尚、シーラント層10の厚さとは平均厚さである。
一般的な空気入りタイヤのトレッド部1では、タイヤ赤道CLからタイヤ幅方向外側に向かって厚さが漸減する傾向がある。即ち、厚さT1,T2,T3,T4は、T1>T2、T3>T4という関係を有することが多い。そこで、このトレッド部1(トレッドゴム層R1)の幅方向の厚さの変化を考慮して、上述の比S1/T1,S2/T2,S1/T3,S2/T4の関係を設定するにあたって、シーラント層10の厚さはタイヤ幅方向全域にわたって均一にしながら、上述の範囲を満たすようにすることが好ましい。このようにシーラント層10の厚さを均一にすることで、タイヤ幅方向の全域において、優れたシール性を発揮することができる。その一方で、シーラント層10の厚さが均一であっても、上述の比S1/T1,S2/T2,S1/T3,S2/T4の関係を満たすことができるので、シーラントの流動も効果的に抑制することができる。
トレッドゴム層R1を構成するゴム(以下、トレッドゴムという)の物性は特に限定されないが、トレッドゴムの60℃における損失正接tanδ(60℃)とトレッドゴム層R1の厚さT4との積T4×tanδ(60℃)が、T4×tanδ(60℃)≦5の関係を満たすようにすることが好ましい。このような設定にすることでトレッド部1の発熱を抑制することができ、それに伴ってトレッド部1に接触するシーラント層10の発熱も抑制できるのでシーラントの流動を抑制するには有利になる。この積T4×tanδ(60℃)が5を超えると、トレッド部1の発熱性が悪化して上述の効果が見込めなくなる。尚、「tanδ」は、JIS K6394に準拠して、粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度60℃、伸長変形歪率10%±2%、振動数20Hzの条件で測定した値である。
シーラント層10を備えたタイヤでは、走行時のタイヤの変形が小さいほど、シーラント層10への影響が少なく、シーラントの流動も抑制される。特に、シーラント層10の端部近傍でタイヤの変形が小さいことが好ましい。本発明では前述のように、シーラント層10の端部はベルト層7の端部位置を超えた位置に配置され、好ましくは突き出し量wが20mm以下であるので、ベルト層7の端部位置におけるタイヤの変形を抑制することが、シーラントの流動を抑制するには有効である。そこで、図2に示すように、正規内圧を充填して平面上に垂直に載置したときにベルト層7の端部位置において測定されるタイヤ外表面と平面との垂直方向距離を以下のように設定することが好ましい。即ち、無負荷時のタイヤ(図中の実線)における垂直方向距離をL1とし、正規荷重を負荷した時のタイヤ(図中の破線)における垂直方向距離L2としたとき、これらの差L1-L2が15mm以内であることが好ましい。このように垂直距離L1,L2を規定することで、ベルト層7の端部位置におけるタイヤの変形量を小さく抑えることができ、タイヤの変形に起因するシーラントの流動を抑制することが可能になる。このとき、差L1-L2が15mmを超えると、ベルト層7の端部位置における変形が大きくなって歪が増加するので、シーラントが流動しやすくなる虞がある。
シーラント層10は、加硫済みの空気入りタイヤの内面に後から貼り付けることで形成することができる。例えば、シート状に成型されたシーラント材をタイヤ内表面の全周に亘って貼付したり、紐状または帯状に成型されたシーラント材をタイヤ内表面に螺旋状に貼付することでシーラント層10を形成することができる。その際、シーラント材は架橋されているものを用いることが好ましい。このように予め架橋されたシーラント材を用いると、シーラント層10(シーラント材)をタイヤ内表面に圧着する際の、シーラント材のタイヤ幅方向およびタイヤ周方向の変形を防止することができる。
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
タイヤサイズ235/40R18で、図1に示す基本構造を有し、トレッド部の内表面にシーラント層を有する空気入りタイヤにおいて、タイヤ赤道位置におけるトレッド部の厚さT1に対するシーラント層の厚さS1の比S1/T1、ベルト層の端部位置におけるトレッド部の厚さT2に対するシーラント層の厚さS2の比S2/T2、タイヤ赤道位置におけるトレッドゴムの厚さT3に対するシーラント層の厚さS1の比S1/T3、ベルト層の端部位置におけるトレッドゴムの厚さT4に対するシーラント層の厚さS2の比S2/T4、トレッドゴムの厚さT4とトレッドゴムの60℃における損失正接tanδ(60℃)との積T4×tanδ(60℃)、ベルト層の端部位置における無負荷時の垂直方向距離L1と正規荷重を負荷した時の垂直方向距離L2との差L1-L2を表1に記載のように設定した比較例1~8、実施例1~6のタイヤを製作した。
尚、すべての例において厚さT1,T2,T3,T4,S1,S2は、カーカスライン(子午線断面におけるカーカス層の外周側の表面の輪郭線)の法線に沿って測定した。トレッドゴムの60℃における損失正接tanδ(60℃)は、JIS K6394に準拠して、粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度60℃、伸長変形歪率10%±2%、振動数20Hzの条件で測定した値である。垂直方向距離L1,L2は、正規内圧を充填して平面上に垂直に載置したときにベルト層の端部位置において各荷重条件で測定したタイヤ外表面と平面との垂直方向の距離である。
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、シール性、ユニフォミティ、走行時の流動性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
シール性
各試験タイヤをリムサイズ18×8.5Jのホイールに組み付けて試験車両に装着し、初期空気圧250kPa、荷重8.5kN、温度23℃(室温)の条件で、直径4.0mmの釘をトレッド部に打ち込んだ後に、その釘を抜いた状態で1時間タイヤを静置した後の空気圧を測定した。評価結果は、以下の4段階で示した。尚、評価結果が「○」或いは「◎」であれば十分なシール性を発揮しており、「◎」の場合に特に優れたシール性を発揮したことを意味する。
◎:静置後の空気圧が240kPa以上かつ250kPa以下
○:静置後の空気圧が230kPa以上かつ240kPa未満
△:静置後の空気圧が200kPa以上かつ230kPa未満
×:静置後の空気圧が200kPa未満
ユニフォミティ
各試験タイヤをリムサイズ18×8.5Jのホイールに組み付けて、空気圧200kPaとして、ユニフォミティ測定試験装置によりラジアル・フォース・バリエーション(RFV)を計測した。但し、測定条件はJASO規格に準拠した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として表1の「ユニフォミティ」の欄に記載した。尚、指数値が「90」以上であれば良好なユニフォミティが維持できたことを意味する。
シーラントの流動性
試験タイヤをリムサイズ18×8.5Jのホイールに組み付けてドラム試験機に装着し、空気圧220kPa、荷重8.5kN、走行速度80km/hの条件で1時間走行し、走行後のシーラントの流動状態を調べた。評価結果は、走行前にシーラント層の表面に5mm方眼罫20×40マスの線を引き、走行後に形状が歪んだマスの個数を数えて、シーラントの流動が全く認められない場合(歪んだマスの個数が0個)を「○」で示し、歪んだマスの個数が全体の1/4未満である場合を「△」で示し、歪んだマスの個数が全体の1/4以上である場合を「×」で示した。
Figure 0007498391000001
表1から明らかなように、実施例1~6の空気入りタイヤは、シール性とユニフォミティを良好に確保しながら、走行時の流動を抑制し、これら性能をバランスよく両立した。一方、比較例1~3は比S1/T1および比S2/T2が小さすぎるため十分なシール性を確保できなかった。また、比S1/T1および比S2/T2が大きすぎる比較例4は、十分なユニフォミティを確保できなかった。更に、比S1/T1または比S2/T2のいずれか一方のみが過大または過小である比較例5~8についてもシール性やユニフォミティを良好に確保することができなかった。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
9 インナーライナー層
10 シーラント層
R1 トレッドゴム層
R2 サイドゴム層
R3 リムクッションゴム層
CL タイヤ赤道

Claims (2)

  1. タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ外径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架されたカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された少なくとも1層のベルト層を含む補強層とを有し、少なくとも前記トレッド部の内表面に粘着性シーラント材からなるシーラント層が設けられた空気入りタイヤにおいて、
    タイヤ赤道位置における前記トレッド部の厚さT1および前記シーラント層の厚さS1が0.15<S1/T1<0.35の関係を満たし、且つ、前記ベルト層の端部位置における前記トレッド部の厚さT2および前記シーラント層の厚さS2が0.20<S2/T2<0.40の関係を満たし、
    更に、前記補強層の外周側に配置されたトレッドゴムについて、タイヤ赤道位置における前記トレッドゴムの厚さをT3、前記ベルト層の端部位置における前記トレッドゴムの厚さをT4としたとき、前記トレッドゴムの厚さT3および前記シーラント層の厚さS1が0.20<S1/T3<0.40の関係を満たし、且つ、前記トレッドゴムの厚さT4および前記シーラント層の厚さS2が0.25<S2/T4<0.45の関係を満たし、
    前記厚さT1,T2,T3,T4がT1>T2且つT3>T4という関係を有し、
    前記シーラント層の幅Wsが前記ベルト層の幅Wb以上であり、且つ、正規内圧を充填して平面上に垂直に載置したときに前記ベルト層の端部位置において測定されたタイヤ外表面と前記平面との垂直方向距離について、無負荷時の前記垂直方向距離L1と正規荷重を負荷した時の前記垂直方向距離L2との差L1-L2が15mm以内であることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記粘着性シーラント材が架橋されていることを特徴とする請求項に記載の空気入りタイヤ。
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