以下、実施形態を説明する。なお、以下の説明において、「一定」には、「略一定」が含まれてよい。「定格出力」は、「最大出力」と置換されてもよい。「一時的に」とは、「一定時間以上」を意味してもよい。
<燃料電池発電システムの構成例>
図1は、燃料電池発電システムの第1構成例を示す図である。図1に示す燃料電池発電システム400は、FC(燃料電池)によって発電された電力を、給電対象である不図示の外部装置に供給するシステムである。一方、図2は、燃料電池発電システムの第2構成例を示す図である。図2に示す燃料電池発電システム401は、並列に接続された複数のFC(燃料電池)によって発電された電力を、給電対象である不図示の外部装置に供給するシステムである。
燃料電池発電システム400(図1)は、燃料電池発電システム401(図2)における複数の発電装置の台数が1台の場合と捉えることができる。したがって、以下の説明では、特に断りのない限り、燃料電池発電システム401について説明し、燃料電池発電システム400の説明については、燃料電池発電システム401について説明の内容を援用することで省略又は簡略する。
また、燃料電池発電システム400(図1)では、制御装置は、第1制御装置411と第2制御装置421に分離されている。しかし、制御装置は、第1制御装置411の機能と第2制御装置421の機能を両方有する一つの制御装置で構成されてもよい。
また、図1及び図2において、第1制御装置411は、複数の制御装置に分離されてもよく、第2制御装置421も、複数の制御装置に分離されてもよい。
図2において、燃料電池発電システム401は、複数(この例では、4台)の発電装置451,452,453,454と、補機システム301と、第1制御装置411と、を備える。発電装置451,452,453,454を、以下、発電装置451等ともいう。
補機システム301は、発電装置451等の稼働を補助する周辺システムである。補機システム301は、例えば、制御用電源、燃料系統、給気系統、排気系統、パージ系統および冷却器などを含む。制御用電源は、第1制御装置411に電力を供給する。燃料系統は、発電装置451等に水素又は水素リッチなガスを供給する。給気系統は、発電装置451等に空気を供給する。排気系統は、発電装置451等からの排ガスを排出する。パージ系統は、燃料系統に窒素等の不活性ガスを供給する。冷却器は、発電装置451等を冷却する。補機システム301は、蓄電装置14を含んでもよい。蓄電装置14は、出力線17に給電可能に接続される補助電源の一例である。出力線17は、発電装置451等の各発電出力端子に共通に接続される電力線である。
発電装置451等は、それぞれ、燃料電池によって発電し、発生させた電力を出力する。発電装置451等は、出力線17に並列に接続されている。並列に接続される複数の発電装置の台数は、4台に限られず、2台、3台または4台以上でもよい。
発電装置451等は、互いに同じ構成を有する。発電装置451は、燃料電池441、補機431および第2制御装置421を有する。発電装置452は、燃料電池442、補機432および第2制御装置422を有する。発電装置453は、燃料電池443、補機433および第2制御装置423を有する。発電装置454は、燃料電池444、補機434および第2制御装置424を有する。
複数の燃料電池441,442,443,444(以下、燃料電池441等ともいう)は、共通の出力線17に給電可能に接続されている。燃料電池441等は、水素などの燃料の化学エネルギーを電気化学的に電気エネルギーに変換する装置である。燃料電池441等は、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC)であるが、これに限られず、リン酸型などの他の形式の燃料電池でもよい。
燃料電池441等には、それらの出力端子の電圧を検出するための電圧センサと、それらの出力端子からの出力電流を検出するための電流センサが取り付けられている。第1制御装置411は、燃料電池441等から出力される各電圧の検出値を電圧センサにより取得し、燃料電池441等から出力される各電流の検出値を電流センサにより取得する。第1制御装置411は、各電圧の検出値と各電流の検出値を用いて、燃料電池441等の各出力電力p1,p2,p3,p4を検出する。
燃料電池441等(発電装置451等)の発電により生成された発電電力は、出力線17を介して、不図示の外部装置に供給される。
補機431は、燃料電池441等のうち自身に対応する燃料電池441の発電動作を補助する装置である。補機432,433,434も、補機431と同様に、燃料電池441等のうち自身に対応する燃料電池の発電動作を補助する装置である。
補機431は、例えば、空気を圧縮して燃料電池441に供給する空気コンプレッサ、熱交換器と燃料電池441との間で冷却液を循環させるウォーターポンプなどを含む。補機431は、後述の第1冷却系統36を含んでもよい。補機432,433,434についても同様である。
第1制御装置411は、発電装置451等及び補機システム301の各運転動作を制御する上位コントローラである。第1制御装置411は、発電装置451等の動作内容を指示する指令a(指令a1,a2,a3,a4)を個別に生成し、発電装置451等の各々に送信する。
第1制御装置411は、例えば、出力線17に出力すべき電力として燃料電池発電システム401に要求される電力(要求出力電力)に応じて、発電装置451等の各出力電力P1,P2,P3,P4の指令値(出力設定値)を決定する。第1制御装置411は、各出力電力P1,P2,P3,P4の出力設定値を指示する指令a(指令a1,a2,a3,a4)を、発電装置451等の各々に送信する。
第2制御装置421は、発電装置451の動作内容を指示する指令a1に従って補機431を操作することで燃料電池441の発電を制御する下位コントローラである。第2制御装置421と同様に、第2制御装置422,423,424は、それぞれ、自身に対応する指令a(指令a2,a3,a4)に従って、自身に対応する補機を操作することで、自身に対応する燃料電池の運転を制御する下位コントローラである。
例えば、第2制御装置421は、発電装置451の出力電力P1が指令a1で指示された出力設定値となるように、補機431を操作することで燃料電池441の発電を制御する。第2制御装置422は、発電装置452の出力電力P2が指令a2で指示された出力設定値となるように、補機432を操作することで燃料電池442の発電を制御する。第2制御装置423は、発電装置453の出力電力P3が指令a3で指示された出力設定値となるように、補機433を操作することで燃料電池443の発電を制御する。第2制御装置424は、発電装置454の出力電力P4が指令a4で指示された出力設定値となるように、補機434を操作することで燃料電池444の発電を制御する。
より詳しくは、出力線17に接続されるPCS等の後述の電力変換装置11は、第1制御装置411又は複数の第2制御装置421等の各々から出力される負荷指令に従って、出力線17に流す負荷電流を制御する。第2制御装置421は、発電装置451の出力電流に応じた空気量及び水素量が燃料電池441に供給されるように補機431を操作することで、発電装置451の出力電力P1が指令a1で指示された出力設定値となるように燃料電池441の発電を制御する。第2制御装置422は、発電装置452の出力電流に応じた空気量及び水素量が燃料電池442に供給されるように補機432を操作することで、発電装置452の出力電力P2が指令a2で指示された出力設定値となるように燃料電池442の発電を制御する。第2制御装置423は、発電装置453の出力電流に応じた空気量及び水素量が燃料電池443に供給されるように補機433を操作することで、発電装置453の出力電力P3が指令a3で指示された出力設定値となるように燃料電池443の発電を制御する。第2制御装置424は、発電装置454の出力電流に応じた空気量及び水素量が燃料電池444に供給されるように補機434を操作することで、発電装置454の出力電力P4が指令a4で指示された出力設定値となるように燃料電池444の発電を制御する。
燃料電池441の出力電力p1の一部は、補機431の一部又は全部の動作電力として使用され、その余剰電力が、発電装置451の出力電力P1として出力される。出力電力p2,p3,p4についても同様である。
第1制御装置411は、出力線17から外部への供給電力を略一定の所定値に維持する制御を行う。例えば、第1制御装置411は、出力線17から出力される供給電力Pa(=Po-Pb)が一定の目標値(要求出力電力)に維持されるように、燃料電池441等(発電装置451等)の発電を制御する。Poは、発電装置451等の各発電出力端子と蓄電装置14との間における電力である。Poは、発電装置451等の各出力電力P1,P2,P3,P4の和に等しい(Po=P1+P2+P3+P4)。Pbは、蓄電装置14と出力線17との間でやり取りされる電力である。
第1制御装置411は、出力線17から外部への供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように、燃料電池441等の各出力電力p1,p2,p3,p4を変化(より詳しくは、増減)させる制御(電池出力変動制御)を行う場合がある。供給電力Pa又は出力電力Poは、電圧センサ及び電流センサにより検出可能である。
第1制御装置411は、電池出力変動制御を行う場合、出力線17から外部への供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように燃料電池の出力電力を変化させる指令a(指令a1,a2,a3,a4)を個別に生成し、発電装置451等の各々に送信する。
第2制御装置421は、供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように生成された指令a1に従って補機431を操作することで、燃料電池441の出力電力p1を変化させる。第2制御装置422は、供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように生成された指令a2に従って、補機432を操作することで燃料電池442の出力電力p2を変化させる。第2制御装置423は、供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように生成された指令a3に従って、補機433を操作することで燃料電池443の出力電力p3を変化させる。第2制御装置424は、供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように生成された指令a4に従って、補機434を操作することで燃料電池444の出力電力p4を変化させる。
より詳しくは、第2制御装置421は、発電装置451の出力電流に応じた空気量及び水素量が燃料電池441に供給されるように補機431を操作することで、発電装置451の出力電力P1が指令a1で指示された出力設定値となるように燃料電池441の出力電力p1を変化させる。第2制御装置422は、発電装置452の出力電流に応じた空気量及び水素量が燃料電池442に供給されるように補機432を操作することで、発電装置452の出力電力P2が指令a2で指示された出力設定値となるように燃料電池442の出力電力p2を変化させる。第2制御装置423は、発電装置453の出力電流に応じた空気量及び水素量が燃料電池443に供給されるように補機433を操作することで、発電装置453の出力電力P3が指令a3で指示された出力設定値となるように燃料電池443の出力電力p3を変化させる。第2制御装置424は、発電装置454の出力電流に応じた空気量及び水素量が燃料電池444に供給されるように補機434を操作することで、発電装置454の出力電力P4が指令a4で指示された出力設定値となるように燃料電池444の出力電力p4を変化させる。
第1制御装置411が上記のような電池出力変動制御を行うことで、出力線17から外部への供給電力Paが略一定値に維持された状態で、燃料電池441等の各出力電力p1,p2,p3,p4が増減する。これにより、出力線17から外部への一定の電力供給が確保された状態で、燃料電池441等のセル面内の湿度分布の偏りは、各出力電力p1,p2,p3,p4が常に一定に制御される場合に比べて、減少する。セル面内の湿度分布の偏りが減少することで、有効反応面積の低下による電流密度の上昇が抑制されるので、電流密度の上昇による電解質膜の劣化が抑制される。したがって、供給電力Paが略一定値に維持されるように各出力電力p1,p2,p3,p4を増減させる電池出力変動制御が第1制御装置411により行われることで、略一定の電力供給が確保され、燃料電池441等の劣化が抑制される。燃料電池441等の劣化の抑制は、燃料電池発電システム401の耐久性の向上に貢献する。
一般に、燃料電池を用いた発電システムは、運転停止や負荷変化、燃料電池以外の機器(補機)を制御するための制御装置を備える。燃料電池1台で出力できる電力には限りがあるため、燃料電池を用いたシステムで要求される出力を発電するためには、複数台の並列運転が求められる。また、要求される出力は、適用される製品等によって異なるので、燃料電池の数や補機の性能は、要求される出力に応じて変わる。そのため、一つの制御装置でシステム全体の制御を行う場合、「1台ごとの燃料電池の負荷変化・起動停止制御」、「全体の出力に合わせた演算と各補機への指令制御」などの多岐にわたるソフトウェアの内容が、適用される製品ごとに異なる。また、後述のリフレッシュ運転を行う場合は、「各燃料電池のリフレッシュ運転のスケジュール制御」などのソフトウェアの内容も、適用される製品ごとに異なる。このように、一つの制御装置でシステム全体の制御を行う場合、1つの制御装置で実装する内容に限界があるため、システム全体の保守性及び機能の拡張性が低下するおそれがある。
これに対し、本実施形態の燃料電池発電システム401では、第1制御装置411の役割は、第2制御装置421,422,423,424の役割と切り分けられている。第1制御装置411よりも順位が下位の第2制御装置421,422,423,424は、自身に割り当てられた燃料電池の発電を制御する。このため、第2制御装置の制御内容を設計段階等で予め決めることができる。したがって、燃料電池の台数が増えても、同じソフトウェアを複数の第2制御装置間で流用できるので、システム全体の保守性が向上する。一方、第1制御装置411では、燃料電池の台数と補機の性能に応じてソフトウェアを変更する場合がある。しかし、下位の第2制御装置が燃料電池の発電を制御するための補機を操作するので、第1制御装置のソフトウェアの変更範囲は、一つの制御装置でシステム全体の制御を行う場合に比べて少ないので、機能の拡張性が向上する。例えば図2に示すように、他の第2制御装置と同じソフトウェアを持つ第2制御装置を補機及び燃料電池と共に備える発電装置455,456を追加することで、燃料電池発電システム401への要求出力電力の増加に容易に対応できる。
燃料電池を用いた発電システムでは、安定した性能(発電効率低下の抑制)が求められる。燃料電池の性能は、電極触媒、電解質膜、アイオノマーの劣化により低下するので、これらの劣化を抑制することが求められる。燃料電池の性能低下のうち、電解質膜の可逆的な性能低下は、燃料電池が低負荷状態に一時的に遷移する後述のリフレッシュ運転で回復可能である。一方、電解質膜の薄膜化又は電極触媒の劣化による燃料電池の性能低下は、燃料電池の低負荷状態での電圧上昇によって引き起こされる。このように、燃料電池の性能低下を抑制するためには、燃料電池の低負荷状態を適切にコントロールすることが求められる。
本実施形態の燃料電池発電システム400では、第1制御装置411は、発電装置451の燃料電池441の低負荷状態を許可する条件を含む第1条件(以下、許可条件ともいう)が成立するか否かを判断する。第1制御装置411は、許可条件が成立する場合、補機431を操作することで燃料電池441の低負荷状態への遷移を許可し、許可条件が成立しない場合、燃料電池441の低負荷状態への遷移を禁止する。許可条件が成立すれば、燃料電池441を低負荷状態に遷移させることが可能となる。よって、第1制御装置411は、燃料電池441を一時的に低負荷状態に遷移させるリフレッシュ運転を行うことで、燃料電池441の性能低下は回復する。第1制御装置411は、他の燃料電池442等についても同様に許可条件の成否を判断し、許可条件が成立する燃料電池を一時的に低負荷状態に遷移させるリフレッシュ運転を行う。これにより、当該燃料電池の性能低下は回復する。
一方、第1制御装置411は、燃料電池441の負荷状態を異常な低負荷状態と判定する条件を含む第2条件(以下、異常条件ともいう)が成立するか否かを判断する。第1制御装置411は、異常条件が成立する場合、補機431等を操作することで燃料電池441の負荷状態を異常な低負荷状態から遷移させる。第1制御装置411は、異常条件が成立しない場合、燃料電池441の低負荷状態は異常でないと判断し、燃料電池441の低負荷状態を継続する。異常条件が成立すれば、燃料電池441が異常な低負荷状態のまま継続しないので、低負荷状態の継続による燃料電池441の性能低下が抑制される。第1制御装置411は、他の燃料電池442等についても同様に異常条件の成否を判断し、異常条件が成立する燃料電池の負荷状態を異常な低負荷状態から遷移させる。これにより、低負荷状態の継続による当該燃料電池の性能低下が抑制される。
このように、本実施形態の燃料電池発電システムによれば、燃料電池441等の低負荷状態が適切にコントロールされるので、燃料電池441等の性能低下は抑制される。
第1制御装置411は、燃料電池441等を一時的に低負荷状態に遷移させることで燃料電池441等の性能を回復させるときの低負荷状態と、燃料電池発電システムの異常又は操作ミスなどで引き起こされる異常な低負荷状態とを判別するロジックを有する。第1制御装置411は、燃料電池441の負荷状態等の運転状態を監視し、低負荷状態を許可するフラグ(許可フラグ)と異常な低負荷状態を判定するフラグ(異常フラグ)とを持つ制御ロジックで動作する。これにより、燃料電池441等を一時的に低負荷状態に遷移させるリフレッシュ運転への遷移の許否を判定するとともに、異常な低負荷状態を継続させないシステムが構築される。したがって、燃料電池441等を一時的に低負荷状態に遷移させるリフレッシュ運転が行われることで燃料電池441等の可逆的な性能低下は回復するとともに、異常な低負荷状態での運転継続による燃料電池441等の性能低下は抑制される。
第1制御装置411は、上記の許可条件が成立する場合、許可フラグをアサートし、上記の許可条件が不成立の場合、許可フラグをネゲートする。第1制御装置411は、上記の異常条件が成立する場合、異常フラグをアサートし、上記の異常条件が不成立の場合、異常フラグをネゲートする。
図3は、第1条件(許可条件)と第2条件(異常条件)を説明するためのタイミングチャートである。図3は、第1制御装置411が、第1高負荷運転、アイドリング運転及び第2高負荷運転の順に実行するリフレッシュ運転で燃料電池を動作させる場合を例示する。第1高負荷運転は、燃料電池の出力電力を所定の一定電力値よりも一時的に上昇させる運転である。アイドリング運転は、燃料電池の出力電力を一時的に低負荷状態にする運転である。第2高負荷運転は、燃料電池の出力電力を一定電力値よりも一時的に上昇させる運転である。
低負荷状態とは、燃料電池の出力電力又は発電装置の出力電力が零又は微小な状態をいう。例えば、低負荷状態を、燃料電池の定格出力(出力電力p1等の定格値)又は発電装置の定格出力(出力電力P1等の定格値)の0%以上20%以下のいずれかの出力状態、0%以上10%以下のいずれかの出力状態、または0%以上5%以下のいずれかの出力状態としてもよい。低負荷状態には、燃料電池又は発電装置の出力電力が零の無負荷状態が含まれてよい。各図面に記載された「無負荷」は、「低負荷」に置換されてよい。
第1制御装置411は、例えば、燃料電池441の第1高負荷運転を検出すると、燃料電池441の許可条件が成立したとして、燃料電池441の許可フラグをアサートする。燃料電池441の許可フラグがアサートのとき、第1制御装置411は、燃料電池441を低負荷状態に所定の低負荷時間Tnだけ一時的に遷移させるリフレッシュ運転を行う。第1制御装置411は、他の燃料電池442等の許可フラグについても同様に処理する。
一方、第1制御装置411は、所定の低負荷時間Tnよりも長い低負荷状態が燃料電池441について検出されると、燃料電池441の異常条件が成立したとして、燃料電池441の異常フラグをアサートする。燃料電池441の異常フラグがアサートのとき、第1制御装置411は、燃料電池441を異常な低負荷状態から遷移させるため、燃料電池441の発電を停止させる。第1制御装置411は、他の燃料電池442等の異常フラグについても同様に処理する。
このように、本実施形態の燃料電池発電システムによれば、リフレッシュ運転による低負荷状態が当該システムの異常等により継続しても、第1制御装置411は、異常な低負荷状態と判定し、異常な低負荷状態の継続を回避できる。
図4は、低負荷状態を許可するフラグ(許可フラグ)の種類を例示する表である。許可フラグは、燃料電池の負荷状態を低負荷状態に一時的に遷移させて当該燃料電池の特性を改善させるリフレッシュ運転の実施が指令されること(第1許可条件)が成立することでアサートされてもよい。許可フラグは、燃料電池を低負荷状態への遷移がユーザの手動で指示されること(第2許可条件)が成立することでアサートされてもよい。許可フラグは、燃料電池の一定範囲の出力電力が当該一定範囲よりも上昇すること(第3許可条件)が成立することでアサートされてもよい。許可フラグは、一定範囲の出力電力が所定時間以上継続すること(第4許可条件)が成立することでアサートされてもよい。複数の許可条件の成立によって、許可フラグがアサートされてもよい。
図5は、異常な低負荷状態を判定するフラグ(異常フラグ)の種類を例示する表である。異常フラグは、メイン条件が成立することでアサートされてもよいし、メイン条件とサブ条件が成立することでアサートされてもよい。
異常フラグは、燃料電池の低負荷状態がタイマで設定された所定時間以上継続すること(第1異常条件)が成立することでアサートされてもよい。または、異常フラグは、燃料電池の低負荷状態での出力電圧が所定の設定値以上に上昇すること(第2異常条件)が成立することでアサートされてもよい。異常フラグは、第1異常条件と第2異常条件が成立することでアサートされてもよい。
異常フラグは、第1異常条件と第2異常条件の少なくとも一方が成立し、且つ、燃料電池の発電効率が所定の低下幅を超えて低下する第1サブ条件が成立することで、アサートされてもよい。異常フラグは、第1異常条件と第2異常条件の少なくとも一方が成立し、且つ、蓄電装置14の電圧が所定の低下幅を超えて低下する第2サブ条件が成立することで、アサートされてもよい。異常フラグは、第1異常条件と第2異常条件の少なくとも一方が成立し、且つ、燃料電池発電システム(例えば、燃料電池またはその周辺温度)の温度、燃料電池に供給される空気の圧力もしくは燃料電池の冷却液の流量が所定の低下幅を超えて低下する第3サブ条件が成立することで、アサートされてもよい。
次に、燃料電池の負荷状態が異常な低負荷状態と判断された後の処理について説明する。
図6は、燃料電池の負荷状態が異常な低負荷状態と判断された後の複数の処理例を示す図である。第1制御装置411は、異常条件が成立し、燃料電池441等の負荷状態が異常な低負荷状態と判定した場合、以下のような制御処理を実行してもよい。
例えば、第1制御装置411は、複数の燃料電池のうち異常条件が成立する燃料電池の発電を停止させる(図6の<停止>参照)。燃料電池の発電が停止することで、燃料電池の負荷状態を異常な低負荷状態から遷移させることができる。これにより、低負荷状態の継続による燃料電池の性能低下が抑制される。
例えば、第1制御装置411は、出力線17から外部への供給電力Paが一定に維持されるように、異常条件が成立する燃料電池にかかる負荷を調整することで、当該燃料電池の出力電力を低負荷状態よりも上昇させる(図6の<出力調整A>参照)。燃料電池の出力電力が低負荷状態よりも上昇することで、異常条件が不成立になるとともに、燃料電池の負荷状態を異常な低負荷状態から遷移させることができる。これにより、低負荷状態の継続による燃料電池の性能低下が抑制される。第1制御装置411は、異常条件が成立する燃料電池にかかる負荷(例えば、出力線17に接続される機器の消費電力)を大きく調整することで、当該燃料電池の出力電力を低負荷状態よりも上昇させても、供給電力Paを一定に維持できる。第1制御装置411は、例えば、異常条件が成立する燃料電池の出力電力を、燃料電池または発電装置の定格出力の10%よりも高く15%よりも低い電力範囲に上昇させる。
例えば、第1制御装置411は、供給電力Paが一定に維持されるように、複数の燃料電池のうち異常条件が成立する燃料電池の出力電力を低負荷状態よりも上昇させ、複数の燃料電池のうち異常条件が成立しない燃料電池の出力電力を低下させる(図6の<出力調整B>参照)。燃料電池の出力電力が低負荷状態よりも上昇することで、異常条件が不成立になるとともに、燃料電池の負荷状態を異常な低負荷状態から遷移させることができる。これにより、低負荷状態の継続による燃料電池の性能低下が抑制される。第1制御装置411は、異常条件が成立しない燃料電池の出力電力を低下させることで、異常条件が成立する燃料電池の出力電力を低負荷状態よりも上昇させても、供給電力Paを一定に維持できる。第1制御装置411は、例えば、異常条件が成立する燃料電池の出力電力を、燃料電池または発電装置の定格出力の10%よりも高く15%よりも低い電力範囲に上昇させる。
図7は、異常な低負荷状態を判定するシーケンスの一例を示す図である。ステップS111において、第1制御装置411は、燃料電池441等の負荷状態を常時監視し、当該負荷状態が低負荷状態か否を監視する。第1制御装置411は、燃料電池441等の低負荷状態がステップS111において検出されると、上記の異常条件が成立するか否か(異常な低負荷状態か否か)を判定する(ステップS113)。第1制御装置411は、上記の異常条件がステップS113において成立する場合、複数の燃料電池のうち異常条件が成立する燃料電池の異常フラグをアサートする(ステップS115)。第1制御装置411は、異常フラグがアサートされた燃料電池の低負荷状態を解除する(ステップS117)。例えば、第1制御装置411は、上記のように、異常フラグがアサートされた燃料電池の発電を停止させる、または、異常フラグがアサートされた燃料電池の出力電力を上昇させることで、当該燃料電池を異常な低負荷状態から遷移させる。第1制御装置411は、ステップS117の処理により上記の異常条件が不成立になると、異常フラグをネゲートする(ステップS119)。
図8は、低負荷状態を許可するシーケンスの一例を示す図である。ステップS121において、第1制御装置411は、図7のシーケンスで制御される異常フラグがアサートか否かを判定する。第1制御装置411は、異常フラグがアサートでない場合(異常フラグがネゲートの場合)、制御状態をステップS122,S123,S124の状態に遷移させる。ステップS122,S123,S124において、第1制御装置411は、低負荷状態を許可するか否かを判定する。第1制御装置411は、上記のような特定の許可条件が成立する場合に限り、低負荷状態を許可する。第1制御装置411は、特定の許可条件が成立する場合、許可フラグをアサートする(ステップS125)。これにより、低負荷状態への遷移が可能となる。第1制御装置411は、所定の時間が継続するまで低負荷状態を維持し(ステップS126)、所定の時間が経過すると、許可フラグをネゲートする(ステップS127)。これにより、低負荷状態が禁止となるので、第1制御装置411は、燃料電池を低負荷状態から遷移させる。
図9は、燃料電池発電システム401において、第1制御装置411と第2制御装置421,422,423,424が各々実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS10において、第1制御装置411は、燃料電池発電システム401への要求出力電力に応じて、発電装置451等の各出力電力P1,P2,P3,P4の出力設定値を指示する指令a(指令a1,a2,a3,a4)の生成処理を実施する。ステップS20において、第1制御装置411は、ステップS10において生成された指令a(指令a1,a2,a3,a4)を発電装置451等の各々に送信する。
ステップS30において、第2制御装置421は、供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように生成された指令a1を受信する。第2制御装置422は、供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように生成された指令a2を受信する。第2制御装置423は、供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように生成された指令a3を受信する。第2制御装置424は、供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように生成された指令a4を受信する。
ステップS31において、第2制御装置421は、発電装置451の出力電力P1が指令a1により指定された出力設定値となるように、補機431を操作することで燃料電池441の発電を制御する。第2制御装置422は、発電装置452の出力電力P2が指令a2により指定された出力設定値となるように、補機432を操作することで燃料電池442の発電を制御する。第2制御装置423は、発電装置453の出力電力P3が指令a3により指定された出力設定値となるように、補機433を操作することで燃料電池443の発電を制御する。第2制御装置424は、発電装置454の出力電力P4が指令a4により指定された出力設定値となるように、補機434を操作することで燃料電池444の発電を制御する。
図10は、第1制御装置411が実行する指令生成処理(前述の図9のステップS10の処理)の一例を示すフローチャートである。
ステップS11において、第1制御装置411は、発電装置451等の各々の運転可否を判定する。第1制御装置411は、例えば、第2制御装置421,422,423,424のそれぞれから取得した情報等に基づいて、発電装置451等の各々の異常又はメンテナンス時期などの状態を検知する。第1制御装置411は、発電装置451等のうち、異常又はメンテナンス時期が検知された発電装置を運転不可と判定し、異常又はメンテナンス時期が検知されない発電装置を運転可と判定する。
ステップS12において、第1制御装置411は、運転可と判定された発電装置の台数(運転可能台数)で燃料電池発電システム401が発電可能な最大出力電力を演算するとともに、運転可と判定された各発電装置の出力電力の出力設定値を演算する。燃料電池発電システム401への要求出力電力は、最大出力電力以内であることが求められる。燃料電池発電システム401への要求出力電力が最大出力電力を超える場合、第1制御装置411は、エラーを通知する。
ステップS12において、例えば、第1制御装置411は、要求出力電力を運転可能台数で除した値を、発電装置451等の各出力電力P1,P2,P3,P4の出力設定値と設定する。あるいは、第1制御装置411は、所定の設定順位に基づいて、運転可能な一又は複数の発電装置の出力設定値を当該発電装置の定格電力と設定し、一台の発電装置の出力設定値を(要求出力電力-他の発電装置の出力設定値の和)と設定してもよい。各発電装置の出力電力の出力設定値を演算する方法は、これらに限られない。
ステップS13において、第1制御装置411は、ステップS12で演算された各発電装置の出力電力の出力設定値を指示する指令a(指令a1,a2,a3,a4)を生成する。各発電装置の第2制御装置は、これらの指令a1,a2,a3,a4に従って、各補機を操作することで燃料電池の発電を制御する。
このように、燃料電池発電システム401では、第1制御装置411の役割は、第2制御装置421,422,423,424の役割と切り分けられているので、保守性および拡張性が向上する。
<リフレッシュ運転>
燃料電池発電システム400,401において、複数の第2制御装置421等の各々は、供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように燃料電池の出力電力を変化させる指令a(指令a1,a2,a3,a4)を受信する。複数の第2制御装置421等の各々は、自身宛で受信した指令aに従って、補機を操作することで燃料電池の出力電力を変化させることによって、燃料電池の特性を改善させるリフレッシュ運転を間欠的に実施してもよい。これにより、供給電力Paが略一定値に維持された状態で、燃料電池の継続的な運転により低下した特性(例えば、出力電圧の特性)の改善が可能となる。
例えば、複数の第2制御装置421等の各々は、供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように燃料電池の出力電力を変化させる指令aに従って補機を操作する。複数の第2制御装置421等の各々は、このように補機を操作することで、燃料電池の出力電圧もしくは出力電力を一時的に低下させる、または燃料電池を一時的に停止する。これにより、供給電力Paが略一定値に維持された状態で、燃料電池の継続的な運転により低下した特性(例えば、出力電圧の特性)の改善が可能となる。
リフレッシュ運転とは、例えば、連続運転の結果、燃料電池のセル面内に生じる乾燥部を次の手順1~4で湿潤化させる運転である。乾燥部は、電池特性を低下させる原因となる。
手順1:燃料電池の出力電力を所定の一定電力値よりも一時的に上昇させる(第1高負荷運転)。第1高負荷運転により、燃料電池のセル面内の水分量を生成水により増加させることができる。
手順2:燃料電池の出力電力を一時的に零にする(アイドリング運転)。アイドリング運転により、一時的に出力電力を0kW(アイドリング状態)にすることで、生成水を燃料電池のセル面内で均一化させることができる。
手順3:燃料電池の出力電力を所定の一定電力値よりも一時的に上昇させる(第2高負荷運転)。アイドリング状態から第2高負荷運転に一時的に遷移させることで、燃料電池のセル面内水分量を増加させることができる。
手順4:燃料電池の出力電力を所定の一定電力値に戻す。
燃料電池発電システム401等は、リフレッシュ運転時に、第1高負荷運転とアイドリング運転と第2高負荷運転の実施による供給電力Paの変動を、併設する蓄電装置14等の補助電源を用いて補完してもよい。補助電源として蓄電池を用いる場合、蓄電池は、リフレッシュ運転時に入出力される電力Pbを吸収可能な蓄電容量を有する。
図11は、リフレッシュ運転時の制御処理の一例を示すフローチャートである。リフレッシュ運転時の処理装置は、燃料電池発電システム400,401のいずれにも適用可能である。以下の説明では、燃料電池発電システム401を例に挙げて説明する。第1制御装置411は、リフレッシュ運転を開始する場合、ステップS60及びステップS70の処理を行う。
ステップS70において、第1制御装置411は、冷却系統などの補機システム301の運転条件をリフレッシュ運転時の条件に設定する。リフレッシュ運転では、各燃料電池の出力電力を変動させるからである。
ステップS60において、第1制御装置411は、リフレッシュ運転機の設定処理を行う。リフレッシュ運転機の設定処理は、並列に接続された複数の発電装置の中からリフレッシュ運転を実施する発電装置を選択する処理を含む。
図12は、リフレッシュ運転機の設定処理の一例を示すフローチャートである。発電装置Xとは、並列に接続された複数の発電装置の中の一又は複数の発電装置を表す。第1制御装置411は、選択順位などの所定の選択条件に基づいて、並列に接続された複数の発電装置の中からリフレッシュ運転を実施する発電装置Xを選択する。
ステップS61において、第1制御装置411は、並列に接続された複数の発電装置のうち、リフレッシュ運転のインターバルカウントがカウントアップされた発電装置Xのリフレッシュ運転の実施フラグをオンに設定する。ステップS62において、第1制御装置411は、リフレッシュ運転が終了した発電装置Xのリフレッシュ運転のインターバルカウントを開始する(インターバルカウンタを初期化する)。これにより、発電装置Xのリフレッシュ運転が所定の時間間隔で実施される。
図11のステップS80において、第1制御装置411は、リフレッシュ運転のインターバルカウンタをインクリメントする。ステップS81において、第1制御装置411は、供給電力Paが一定の要求出力電力にリフレッシュ運転時に維持されるように燃料電池の出力電力を出力設定値に変化させる指令a(指令a1,a2,a3,a4)を個別に生成し、発電装置451等の各々に送信する。
ステップS90において、第2制御装置421等は、供給電力Paが一定の要求出力電力にリフレッシュ運転時に維持されるように生成された指令aを受信する。第2制御装置421等は、指令aに従ってリフレッシュ運転を実施する。
図13は、リフレッシュ運転処理の一例を示すフローチャートである。発電装置X内の第2制御装置は、第1制御装置411からの指令aに従ったタイミングで、ステップS91~98の処理を実施する。
発電装置X内の第2制御装置は、燃料電池の出力電力を所定の一定電力値pX4から上昇させて出力電力pX1に設定し(ステップS91)、タイマカウントの後に(ステップS92)、燃料電池の出力電力を減少させて出力電力pX2に設定する(ステップS93)。発電装置X内の第2制御装置は、タイマカウントの後に(ステップS94)、燃料電池の出力電力を出力電力pX2から上昇させて出力電力pX3に設定する(ステップS95)。発電装置X内の第2制御装置は、タイマカウントの後に(ステップS96)、燃料電池の出力電力を減少させて所定の一定電力値pX4に戻し(ステップS97)、タイマカウントの後に(ステップS98)、リフレッシュ運転処理を終了する。第1制御装置411は、リフレッシュ運転処理の終了を発電装置X内の第2制御装置から受信すると、発電装置Xのリフレッシュ運転の実施フラグをオフに設定する。
図15は、発電装置が4並列の場合のリフレッシュ運転の実施パターンの第1例を示す図である。図15は、リフレッシュ運転を実施する期間が複数の発電装置間で重ならない場合を示す。発電装置451は、リフレッシュ運転期間Tr1でリフレッシュ運転を実施し、その後、発電装置452は、リフレッシュ運転期間Tr2でリフレッシュ運転を実施する。
図15は、上記の手順1~4で出力電力を変化させるリフレッシュ運転を示している。例えばリフレッシュ運転期間Tr1,Tr2のそれぞれにおいて、第1高負荷運転では、出力電力は、45kWから60kWに一時的に上昇する。アイドリング運転では、出力電力は、60kWから0kWに一時的に減少する。第2高負荷運転では、出力電力は、0kWから60kWに一時的に上昇する。これらの運転がこの順に実行されてから、出力電力は、60kWから45kWに戻る。
複数の第2制御装置421等の各々は、供給電力Paが一定の要求出力電力に維持されるように燃料電池の出力電力を変化させる指令a(指令a1,a2,a3,a4)に従って、図15に示すように燃料電池の各出力電力を変化させる。これにより、図14に示すように、供給電力Paが略一定の180kWに維持される。よって、供給電力Paが略一定値に維持された状態で、燃料電池の継続的な運転により低下した特性の改善が可能となる。
<複数台の並列運転でリフレッシュ運転を実施する際の制約条件>
図16は、発電装置の並列台数と発電装置の出力電力との関係を例示する表である。上記のリフレッシュ運転を実施するにあたり、並列接続された複数の発電装置の台数をn、1台の発電装置の定格出力をAとする。nは2以上の整数である。図16は、定格出力が60kWの場合を例示する。
複数の発電装置のうち1台の発電装置の出力電力が零となるアイドリング運転中で得られる最大の供給電力Paは、A×(n-1)となる。例えば、A=60kW、n=5の場合、最大の供給電力Paは、240kWとなる。つまり、第1制御装置は、供給電力PaがA×(n-1)以下の一定の要求出力電力に維持されるように燃料電池の出力電力を変化させる指令aを生成すればよい。なお、このとき、1台の発電装置の平均出力電力Bは、A×(n-1)/nと表される。
並列の台数nを増やすにつれて、図16に示すように、1台の発電装置の平均出力電力Bは、増大する。一方、第1高負荷運転時の出力電力と平均出力電力Bとの出力差Cは、並列の台数nを増やすにつれて、減少する。出力差Cは、図15に示すように、1台の発電装置の第1高負荷運転時の出力電力値と所定の一定電力値との差に相当する。出力差Cが減少すると、十分なセル面内の生成水量の確保が難しくなる。これらを鑑みると、リフレッシュ運転を用いた一定出力運転においては、供給電力Paの増加の点では並列の台数nを増やし、出力差Cの確保の点では、並列の台数nを減らすという、相反する要求を満たすことが求められる。
図17は、リフレッシュ運転を用いる場合に適した並列台数範囲を例示するデータである。Aは、1台の発電装置の定格出力を表す。並列の台数nを増加させると、平均出力電力Bは増大し、出力差Cは減少する。第1閾値をD、第1閾値よりも小さい第2閾値をEとする。このとき、並列の台数nは、B/AがD以上かつC/AがE以上を満たす台数であれば、供給電力Paの増加と出力差Cの確保が両立する。図17において、例えば、D=0.7、E=0.1とする場合、台数nは、4以上10以下が好ましい。
<燃料電池発電システムの具体例>
図18は、燃料電池発電システムの具体的な構成例を示す図である。図18に示す燃料電池発電システム201は、並列に接続された複数のFC(燃料電池)プラットフォームによって発電された電力を、給電対象である外部装置12に供給するシステムである。燃料電池発電システム201の用途の具体例として、定置用の発電システム、港湾クレーンなどの荷役機械用の発電システム、船舶用の発電システムなどが挙げられる。その他には、鉄道用、建設機械用などもある。燃料電池発電システム201の用途は、これらの例に限られず、燃料電池発電システム201は、他のアプリケーションに適用されてもよい。
燃料電池発電システム201は、燃料電池発電装置101と補機システム301を備える。燃料電池発電システム201は、上記の燃料電池発電システム401の一具体例である。
補機システム301は、主機である燃料電池発電装置101に接続される複数の補機を含み、燃料電池発電装置101の稼働を補助する周辺システムである。図18は、複数の補機として、制御用電源32、パージ系統30、燃料系統18、給気系統19、出力線17、電力変換装置11、DC/DCコンバータ13、蓄電装置14、排気系統31及び冷却器15を例示する。複数の補機の一部又は全部は、燃料電池発電装置101に内蔵されてもよいし、ユニット化されてもよい。燃料電池発電装置101は、複数の補機の一部又は全部を、燃料電池発電装置101の内部に備えてもよいし、燃料電池発電装置101の外部に備えてもよい。
燃料電池発電装置101は、外部装置12に供給される電力を複数のFCプラットフォームによって発電する。燃料電池発電装置101は、ユニット化されてもよい。燃料電池発電装置101は、出力線17に並列に接続された複数のFCプラットフォーム(この例では、3つのFCプラットフォーム1,2,3)と、それらの複数のFCプラットフォームを制御する制御装置10とを備える。並列に接続される複数のFCプラットフォームの台数は、3台に限られず、2台でも、4台以上でもよい。
FCプラットフォーム1,2,3は、それぞれ、共通の出力線17に出力点16を経由して接続されるFCスタックを含む。FCスタックは、燃料電池の一例である。FCプラットフォーム1は、FCスタック21を含み、FCプラットフォーム2は、FCスタック22を含み、FCプラットフォーム3は、FCスタック23を含む。
FCプラットフォーム1等は、上記の発電装置451等の一例である。FCスタック21等は、上記の燃料電池441等の一例である。制御装置10は、上記の第1制御装置411等の一例である。
FCスタック21,22,23は、水素などの燃料の化学エネルギーを電気化学的に電気エネルギーに変換する装置である。FCスタック21,22,23は、燃料管を含む燃料系統18を介して供給される水素又は水素リッチなガスと、空気管を含む給気系統19を介して外部から供給される空気に含まれる酸素との電気化学反応によって発電する。FCスタック21,22,23(FCプラットフォーム1,2,3)の発電状態は、制御装置10によって制御される。FCスタック21,22,23の電気化学反応により発生した排ガスは、排気管を含む排気系統31を介して排出される。FCスタック21,22,23は、ラジエータなどの冷却器15から供給される冷却液(クーラント)により冷却される。
FCスタック21,22,23は、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC)であり、多数の単セルを積層したスタック構造を備える。単セルは、水素イオンを選択的に輸送するための高分子電解質膜の両側面を多孔質材料により形成された一対の電極によって挟まれた膜-電極アッセンブリ(MEA)と、このMEAを両側から挟み込む一対のセパレータとを有する。一対の電極のそれぞれは、例えば白金系の金属触媒(電極触媒)を担持するカーボン粉末を主成分とする触媒層と、通気性及び電子導電性を併せ持つガス拡散層とを有している。
FCスタック21,22,23には、それらの出力端子の電圧を検出するための電圧センサと、それらの出力端子からの出力電流を検出するための電流センサが取り付けられている。制御装置10は、FCスタック21,22,23から出力される各電圧の検出値を電圧センサにより取得し、FCスタック21,22,23から出力される各電流の検出値を電流センサにより取得する。制御装置10は、各電圧の検出値と各電流の検出値を用いて、FCスタック21,22,23の各出力電力p1,p2,p3を検出する。
燃料電池発電装置101内のFCスタック21,22,23(FCプラットフォーム1,2,3)の発電により生成された発電電力は、電力変換装置11を介して、外部装置12に供給される。
電力変換装置11は、入力される電力Paを、外部装置12に供給される電力Pcに変換する装置である。電力変換装置11は、例えば、FCスタック21,22,23の発電により得られた直流電力を交流電力に変換して外部装置12に供給するインバータである。インバータの具体例として、パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)、系統連系インバータなどが挙げられる。外部装置12がモータの場合、電力変換装置11は、モータを駆動するインバータでもよい。電力変換装置11は、FCスタック21,22,23の発電により得られた直流電力の電圧を、異なる電圧の直流電力に変換して外部装置12に供給するコンバータでもよい。
FCスタック21,22,23の発電により得られた直流電力は、出力線17にDC/DCコンバータ13を介して接続される蓄電装置14に充電されてもよい。蓄電装置14から放電された電力Pbは、電力変換装置11を介して外部装置12に供給される。外部装置12から電力変換装置11を介して入力(回生)された電力Pbが蓄電装置14に充電されてもよい。蓄電装置14の充電又は放電は、制御装置10からの駆動制御信号により動作するDC/DCコンバータ13により制御される。DC/DCコンバータ13は、無くてもよい。
蓄電装置14は、充放電可能な二次電池を含んでよい。蓄電装置14は、直列に接続された複数の蓄電池141,…,14nを含むものでもよい(nは、2以上の整数)。蓄電装置14(複数の蓄電池141,…,14n)の具体例として、リチウムイオンバッテリ、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタなどが挙げられる。
燃料系統18は、外部から供給される炭化水素系燃料を水素リッチなガスに改質する改質機器を含んでもよい。改質機器は、炭化水素系燃料の改質反応により生成される水素リッチガスを水素管に出力する。改質機器は、例えば、炭化水素系燃料に含まれる硫黄分を除去する脱硫器と、脱硫された炭化水素系燃料を改質反応させる改質器と、改質時に発生する一酸化炭素(CO)を除去するCO除去器とを含む。
炭化水素系燃料は、都市ガスに限られず、メタンガス、プロパンガス、下水汚泥等に由来する消化ガス、食品残渣等から発生するバイオガスなどを含んでもよい。
制御装置10は、FCプラットフォーム1,2,3の動作を制御するコントローラである。制御装置10は、例えば、制御用電源32から供給される電力(例えば、DC12ボルトの直流電力)により動作する。制御用電源32は、例えば、制御用電池である。
図18は、燃料電池発電装置101がFCプラットフォーム1,2,3に共通の制御用電源32を備える形態を例示する。FCプラットフォーム1,2,3の電源が制御用電源32に共通化されることで、複数の制御用電源を備える形態の場合に比べて、燃料電池発電システム201及び燃料電池発電装置101を小型化できる。
燃料電池発電装置101は、FCプラットフォーム1,2,3に個別の制御用電源32を備えてもよい。複数のFCプラットフォームの電源が個別に複数用意されることで、複数の制御用電源のうち一部の電源が故障又はメンテナンス等により使用不能な場合でも、残りの電源を用いて複数のFCプラットフォームの一部又は全部の動作を継続できる。
制御装置10の機能(制御装置10が行う処理)は、例えば、メモリに記憶されたプログラムによって、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが動作することにより実現される。制御装置10の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよい。
図19は、燃料電池発電装置101の構成例を詳細に示す図である。燃料電池発電装置101は、例えば、制御装置10及び複数のFCプラットフォーム1,2,3を備える。FCプラットフォーム1は、例えば、燃料管118、空気管119、空気フィルタ33、排気管131、第1冷却系統36、第2冷却系統90及びFCユニット51を備える。FCユニット51は、FCスタック21、昇圧コンバータ42、水素ポンプ43、空気コンプレッサ45、ウォーターポンプ44、空気入口遮断弁77及び排空気出口遮断弁78等を備える。昇圧コンバータ42、水素ポンプ43、空気コンプレッサ45、ウォーターポンプ44、空気入口遮断弁77及び排空気出口遮断弁78等は、制御装置10により制御される。FCプラットフォーム2,3は、FCプラットフォーム1と同じ構成及び機能を有し、FCプラットフォーム1と同様に、制御装置10により制御される。よって、FCプラットフォーム2,3の説明については、FCプラットフォーム1の説明を援用することで、省略する。
FCスタック21は、燃料極71と空気極72を有する。FCスタック21は、燃料極71に供給された水素又は水素リッチなガスと、空気極72に供給された空気に含まれる酸素との電気化学反応によって発電する。FCスタック21は、昇圧コンバータ42を介して、出力線17に接続されている。昇圧コンバータ42は、FCスタック21から出力された電圧を昇圧し、昇圧後の直流電力を出力点16を経由して出力線17に出力するDC/DCコンバータである。複数のFCプラットフォーム1,2,3における複数のFCスタック21,22,23の出力電力は、対応する昇圧コンバータ42を介して、共通の出力線17に出力される。
燃料管118は、複数のFCプラットフォーム1,2,3に共通に接続された燃料系統18から水素が供給される。燃料管118は、燃料極71に入口75を介して水素を供給する。
空気管119は、複数のFCプラットフォーム1,2,3に共通に接続された給気系統19から空気が供給される。空気管119は、FCスタック21の空気極72に入口73を介して空気を供給する。空気管119は必須ではなく、FCプラットフォーム1,2,3の開放部から空気フィルタ33が直接空気を吸い込んでもよい。
空気フィルタ33は、給気系統19及び空気管119を介して供給される空気に含まれる塵や燃料電池に悪影響を及ぼす不純物を取り除いて、空気コンプレッサ45に空気管120を介して供給する。空気フィルタは、エアクリーナーとも称される。
空気コンプレッサ45は、空気フィルタ33を通して供給された空気を圧縮し、FCスタック21の空気極72に供給する。空気コンプレッサ45により圧縮された酸素を含む空気は、FCスタック21の空気極72に入口73を介して供給される。空気入口遮断弁77は、空気コンプレッサ45から空気極72の入口73へ供給される空気の流れを遮断する。
排気管131は、複数のFCプラットフォーム1,2,3に共通に接続された排気系統31に、FCスタック21で発生する排ガスを排出する。排空気出口遮断弁78は、FCスタック21の空気極72の出口74から排気管131に排出されるオフガスの流れを遮断する。
第1冷却系統36は、FCスタック21を冷却水等の第1冷却液によって冷却する。第1冷却系統36は、冷熱源39との間で第1冷却液の熱交換を行って第1冷却液を冷却する第1中間熱交換器34を有する。ウォーターポンプ44は、第1冷却液を、第1中間熱交換器34とFCスタック21との間で循環させる。ウォーターポンプ44により循環された第1冷却液により、FCスタック21は冷却される。
第1中間熱交換器34は、FCスタック21を冷却する第1冷却液を異種の冷熱源39との間で熱交換可能な熱交換器である。異種の冷熱源39とは、利用する冷熱源39の種類を問わないことを意味する。第1中間熱交換器34は、利用する冷熱源39の種類を問わずに、任意の冷熱源39で第1冷却液を冷却できるので、上記のような様々な用途に適用可能な燃料電池発電装置101が実現される。
第1中間熱交換器34は、第1冷却系統36を循環する第1冷却液が通過する放熱部40と、冷熱源39との間で熱を移動させる熱媒が通過する受熱部41と、を有する。冷熱源39から供給される熱媒は、液体でも気体でもよい。第1中間熱交換器34において放熱部40から受熱部41へ放熱されることで、第1冷却液は、冷却される。第1中間熱交換器34の具体例として、プレート熱交換器などが挙げられるが、第1中間熱交換器34は、これに限られない。
複数のFCプラットフォーム1,2,3における複数の第1中間熱交換器34は、それぞれ、複数のFCプラットフォーム1,2,3に共通に接続される冷熱源39との間で熱交換してもよい。これにより、冷熱源39が複数のFCプラットフォーム1,2,3間で共通化されるので、燃料電池発電装置101を小型化できる。なお、冷熱源39は、複数のFCプラットフォーム1,2,3間で相違してもよい。
第2冷却系統90は、空気コンプレッサ45を冷却水等の第2冷却液によって冷却する。第2冷却系統90は、冷熱源94との間で第2冷却液の熱交換を行って第2冷却液を冷却する第2中間熱交換器92を有する。ポンプ91は、第2冷却液を、第2中間熱交換器92と空気コンプレッサ45との間で循環させる。ポンプ91により循環された第2冷却液により、空気コンプレッサ45は冷却される。
第2中間熱交換器92は、空気コンプレッサ45を冷却する第2冷却液を異種の冷熱源94との間で熱交換可能な熱交換器である。異種の冷熱源94とは、利用する冷熱源94の種類を問わないことを意味する。第2中間熱交換器92は、利用する冷熱源94の種類を問わずに、任意の冷熱源94で第2冷却液を冷却できるので、上記のような様々な用途に適用可能な燃料電池発電装置101が実現される。
第2中間熱交換器92は、第2冷却系統90を循環する第2冷却液が通過する放熱部95と、冷熱源94との間で熱を移動させる熱媒が通過する受熱部96と、を有する。冷熱源94から供給される熱媒は、液体でも気体でもよい。第2中間熱交換器92において放熱部95から受熱部96へ放熱されることで、第2冷却液は、冷却される。第2中間熱交換器92の具体例として、プレート熱交換器などが挙げられるが、第2中間熱交換器92は、これに限られない。
複数のFCプラットフォーム1,2,3における複数の第2中間熱交換器92は、それぞれ、複数のFCプラットフォーム1,2,3に共通に接続される冷熱源94との間で熱交換してもよい。これにより、冷熱源94が複数のFCプラットフォーム1,2,3間で共通化されるので、燃料電池発電装置101を小型化できる。なお、冷熱源94は、複数のFCプラットフォーム1,2,3間で相違してもよい。
冷却器15(図18)は、冷熱源39又は冷熱源94の一例である。冷熱源39又は冷熱源94は、例えば、空冷冷却器、開放式冷却塔、密閉式冷却塔、工場の冷却水、上水、河川水、海水、液化水素の気化熱、または圧縮水素が膨張した際の冷熱などである。
第1中間熱交換器34の受熱部41の素材は、例えば、金属イオンの溶出性が比較的低い低溶出性金属(例えば、高耐食のオーステナイト系ステンレス(SUS316L)など)である。受熱部41に接触する熱媒が海水などであると、受熱部41の素材によっては、金属イオンが受熱部41から溶出するおそれがある。受熱部41の素材が上記のような低溶出性金属であると、冷熱源39から供給される熱媒の制約が緩和されるので、冷熱源39の選択肢が増える。その結果、上記のような様々な用途に適用可能な燃料電池発電装置101が実現される。これは、第2中間熱交換器92の受熱部96の素材についても同様である。
また、第1中間熱交換器34の採用によって、第1冷却液が循環する経路をFCプラットフォームの外側の冷熱源39まで伸ばさなくても、第1冷却液を放熱できる。つまり、第1冷却液が循環する経路を短縮でき、燃料電池を冷却する高価な第1冷却液の使用量を削減できる。その結果、コスト低減が可能となる。同様に、第2中間熱交換器92の採用によっても、第2冷却液の使用量を削減でき、コスト低減が可能となる。
第2中間熱交換器92が第2冷却液の熱を放熱する冷熱源94は、第1中間熱交換器34が第1冷却液の熱を放熱する冷熱源39と同じでも異なってもよい。冷熱源94と冷熱源39が同じであれば、冷熱源が第1中間熱交換器34と第2中間熱交換器92との間で共通化されるので、燃料電池発電装置101を小型化できる。
第1冷却系統36は、第1冷却液からイオンを取り除くイオン交換器35を備えてもよい。第1冷却液からのイオンの取り除きによって、FCスタック21において入出力される第1冷却液の電気伝導度の上昇が抑制されるので、FCスタック21と第1冷却液との間の電気的な干渉が抑制される。
また、第1中間熱交換器34が採用されることで、第1冷却系統36側の第1冷却液から冷熱源39側の熱媒へのイオンの溶出が抑制されるので、イオン交換器35のメンテナンスの頻度が低減する。
第1冷却系統36は、第1冷却液の電気伝導度を測定するセンサ37を備えてもよい。センサ37を備えることで、第1冷却液の電気伝導度を管理できる。例えば、電気伝導度が上昇し始めたことがセンサ37により検知された場合、ユーザは、イオン交換器35をメンテナンスするタイミングを把握できる。また、電気伝導度を管理することで燃料電池の直流PN間(プラスとマイナス間)の絶縁性を保つことができる。センサ37又は制御装置10は、電気伝導度が第1閾値(例えば、1μS/cm)以上と測定された場合、ユーザが認知できるように、警報を発報してもよい。制御装置10は、電気伝導度が第1閾値よりも大きな第2閾値(例えば、5μS/cm)以上と測定された場合、第2閾値以上の電気伝導度が測定されたFCプラットフォームを停止させてもよい。
第1冷却系統36は、第1冷却液の温度変化に伴う膨張又は収縮を吸収する第1タンク38を備えてもよい。これにより、第1冷却液の温度変化に伴う膨張又は収縮が抑制される。
同様に、第2冷却系統90は、第2冷却液の温度変化に伴う膨張又は収縮を吸収する第2タンク93を備えてもよい。これにより、第2冷却液の温度変化に伴う膨張又は収縮が抑制される。
FCプラットフォーム1は、第1気液分離器79及び水素ポンプ43を備えてもよい。第1気液分離器79は、燃料極71の出口76から排出される第1混相流から水素ガスと排水を分離する。水素ポンプ43は、第1気液分離器79により分離された水素ガスを燃料極71の入口75へ循環させる。これにより、FCスタック21での発電により生成された余剰の水素ガスを、FCスタック21での発電に再利用できる。
FCプラットフォーム1は、混合器80を備えてもよい。排気管131は、第1気液分離器79により分離された排水と、当該排水に混入する水素と、空気極72の出口74から排出される排空気とを混合器80で合流させた第2混相流を排出する。これにより、排水と水素と排空気をまとめて排出できる。
FCプラットフォーム1は、第2混相流から水と気体を分離する第2気液分離器81を備えてもよい。これにより、排水と排ガスを分離して排出できる。排水又は排ガスは、回収器82により回収されてもよい。これにより、排水又は排ガスによる周辺の汚染が抑制される。
燃料電池発電装置101は、複数のFCプラットフォーム1,2,3における複数の燃料管118に窒素等の不活性ガスを個別に供給するパージ系統30を備えてもよい。パージ系統30は、複数の燃料管118を不活性ガスで個別にパージできるように、バルブで流路を切り替えてもよい。これにより、不活性ガスのパージによる特性劣化をFCスタック単位で管理できる。
FCスタック21の出力電力p1の一部は、FCユニット51内の空気コンプレッサ45等の補機の動作電力として使用され、その余剰電力が、FCユニット51の出力電力P1として出力される。FCスタック22の出力電力p2及びFCスタック23の出力電力p3についても同様である。
制御装置10は、出力線17から外部への供給電力を略一定の所定値に維持する制御を行う。例えば、制御装置10は、出力線17から電力変換装置11に向けて出力される供給電力Pa(=Po-Pb)が一定の目標値に維持されるように、FCスタック21,22,23(FCプラットフォーム1,2,3)の発電及びDC/DCコンバータ13の変換動作を制御する。Poは、出力点16における電力である。Poは、FCプラットフォーム1,2,3の各出力電力P1,P2,P3の和に等しい(Po=P1+P2+P3)。Pbは、蓄電装置14と出力線17との間でやり取りされる電力である。
制御装置10は、電力変換装置11から外部装置12に向けて出力される電力Pcが目標値に追従するように、FCスタック21,22,23の発電及び電力変換装置11の変換動作を制御してもよい。Pa又はPcは、出力線17から外部への供給電力の一例である。
制御装置10は、出力線17から外部への供給電力Paが略一定値に維持された状態で、FCスタック21,22,23の各出力電力p1,p2,p3を変化(より詳しくは、増減)させる制御(電池出力変動制御)を行ってもよい。供給電力Paは、電圧センサ及び電流センサにより検出可能である。
制御装置10は、例えば、FCプラットフォーム1の昇圧コンバータ42の動作電流(負荷電流)を増減することでFCスタック21の負荷を増減させ、出力電力p1を増減させる。同様に、制御装置10は、FCプラットフォーム2の昇圧コンバータ42の動作電流(負荷電流)を増減することでFCスタック22の負荷を増減させ、出力電力p2を増減させる。制御装置10は、FCプラットフォーム3の昇圧コンバータ42の動作電流(負荷電流)を増減することでFCスタック23の負荷を増減させ、出力電力p3を増減させる。
制御装置10が上記のような電池出力変動制御を行うことで、出力線17から外部への供給電力Paが略一定値に維持された状態で、複数のFCスタック21,22,23の各出力電力p1,p2,p3が増減する。これにより、出力線17から外部への一定の電力供給が確保された状態で、複数のFCスタック21,22,23のセル面内の湿度分布の偏りは、各出力電力p1,p2,p3が常に一定に制御される場合に比べて、減少する。セル面内の湿度分布の偏りが減少することで、有効反応面積の低下による電流密度の上昇が抑制されるので、電流密度の上昇による電解質膜の劣化が抑制される。したがって、供給電力Paが略一定値に維持された状態で各出力電力p1,p2,p3を増減させる電力変動制御が制御装置10により行われることで、略一定の電力供給が確保され、複数のFCスタック21,22,23の劣化が抑制される。複数のFCスタック21,22,23の劣化の抑制は、燃料電池発電装置101及び燃料電池発電システム201の耐久性の向上に貢献する。
燃料電池発電システム201又は燃料電池発電装置101は、複数のFCプラットフォームのそれぞれに対して設けられた複数の開閉器(この例では、開閉器61,62,63)を備えてもよい。開閉器61は、FCスタック21及び昇圧コンバータ42と、出力線17に接続される出力点16との間の電力経路の遮断と接続を切り替える遮断器である。開閉器62は、FCスタック22及び不図示の昇圧コンバータと、出力線17に接続される出力点16との間の電力経路の遮断と接続を切り替える遮断器である。開閉器63は、FCスタック23及び不図示の昇圧コンバータと、出力線17に接続される出力点16との間の電力経路の遮断と接続を切り替える遮断器である。
制御装置10は、複数のFCスタック21,22,23のうち、一部のFCスタックを他のFCスタックから開閉器61,62又は63により切り離してもよい。当該一部のFCスタックが切り離された状態で、制御装置10は、供給電力Paが略一定値に維持されるように、当該他のFCスタックの出力電力を制御してもよい。これにより、供給電力Paが略一定値に維持された状態で、当該一部のFCスタックの交換が容易になる。例えば、制御装置10は、FCスタック21が開閉器61によりFCスタック22,23から切り離された状態で、供給電力Paが略一定値に維持されるように、他のFCスタック22,23の出力電力を制御してもよい。開閉器61,62,63の開閉は、制御装置10によって自動で切り替えられるが、手動で切り替えられてもよい。
燃料電池発電装置101は、複数のFCプラットフォームのうち、一部のFCプラットフォームが動作中に残りのFCプラットフォームを運転停止して取り外せるように、配管を遮断する遮断弁、及び、配線を遮断する開閉器を備えてもよい。配管は、液体(冷却液、排水など)又は気体(空気、水素、排ガスなど)を伝達し、配線は、電力や信号を伝送する。配管を遮断する遮断弁として、空気入口遮断弁77及び排空気出口遮断弁78が例示される。配線を遮断する開閉器として、開閉器61,62,63が例示される。
燃料電池発電装置101は、複数のFCプラットフォームの地絡を個別に検出する機能を備えてもよい。例えば、制御装置10は、複数のFCプラットフォーム1,2,3のうち、対地間抵抗の低下もしくは地絡が検出されたFCプラットフォームを、開閉器61,62又は63により切り離してもよい。
蓄電装置14の出力電圧と出力点16での出力電圧とが略等しくなるように、直列に接続される複数の蓄電池141,…,14nの数が調整されてもよい。これにより、DC/DCコンバータ13を削除して燃料電池発電装置101を小型化できる。
FCプラットフォーム1,2,3の各々は、第2制御装置20を備える。第2制御装置20は、上記の第2制御装置421等に相当する。第2制御装置20は、リフレッシュ運転を実施していないとき、FCスタック21又は第1冷却液の温度の検出値に応じて第1冷却系統36を制御することで第1冷却液の流量を調整する(冷却液制御)。例えば、第2制御装置20は、第1冷却系統36に含まれる調節弁46とポンプ47の少なくとも一方を制御することで、第1冷却液の流量を調整する。調節弁46は、冷熱源39と第1中間熱交換器34との間で熱を移動させる熱媒の流量を調節する。ポンプ47は、冷熱源39と第1中間熱交換器34との間で当該熱媒を循環させる。
しかしながら、リフレッシュ運転では、上記の通り、供給電力Paが一定となるように、各FCプラットフォーム(各発電装置)の出力電力が急激に変動する。このため、燃料電池セルの温度上昇速度が大きくなるが、上記の冷却液制御では迅速な追従ができず、燃料電池セル温度の変動が大きくなり、セル寿命が短くなるおそれがある。
これを回避するために、リフレッシュ運転中の第1冷却系統36(例えば、調節弁46、ポンプ47など)を下記の(a)(b)(c)のいずれかで制御してもよい。
(a)第2制御装置20は、リフレッシュ運転を実施しているとき、リフレッシュ運転の開始前の第1冷却系統36(例えば、調節弁46の開度とポンプ47の回転数の少なくとも一方)の制御状態を保持する。
(b)第2制御装置20は、FCスタック、第1冷却液又は外気の温度検出値が基準値よりも高い場合、第1冷却系統36(例えば、調節弁46の開度とポンプ47の回転数の少なくとも一方)を制御することで、第1冷却液の温度を低下させるか流量を増加させるかの一方又は両方を行ってからリフレッシュ運転を開始する。FCスタック21、第1冷却液又は外気の温度の検出値は、温度センサ48により得られる。
リフレッシュ運転時に外気温度が低い(冷却能力が不足しない、冷却能力に余裕がある)ときは、制御方法(a)が好ましく、外気温度が高い(冷却能力が不足すると想定される)場合は、制御方法(b)が好ましい。例えば、第2制御装置20は、FCスタック、第1冷却液又は外気の温度検出値が基準値よりも低い場合、リフレッシュ運転の開始前の第1冷却系統36の制御状態を保持したままリフレッシュ運転を開始する。一方、第2制御装置20は、当該温度検出値が当該基準値よりも高い場合、第1冷却系統36を制御することで第1冷却液の温度を低下させてからリフレッシュ運転を開始する。
(c)第2制御装置20は、リフレッシュ運転を実施しているとき、予め決められた変化パターンに従ってFCスタックの出力電力を変化させるとともに、当該変化パターンに合わせて第1冷却系統36(例えば、調節弁46の開度とポンプ47の回転数の少なくとも一方)を制御することで第1冷却液の流量を調整する。制御方法(c)は、外気温度に関わらず選択可能である。制御方法(c)は、温度上昇に追従する方法だが、プログラム化したリフレッシュ運転時の出力と時間の情報を基にフィードフォワード制御を行う方法のため、燃料電池セル温度の変動を抑えることができる。
このように、本実施形態によれば、定置用発電機、港湾荷役機械(クレーンなど)用電源、船用電源、鉄道用電源、建設用重機、土木作業用重機などの分野において、水素発電による電源の脱炭素化の課題を解決できる。水素発電には、水素燃焼式と燃料電池式があるが、一般的に燃料電池式の方が高効率である。燃料電池を多用途に適用する際に、それぞれのシステム開発に時間と労力を要する。本実施形態によれば、様々な用途に共通して使用できる安価で高効率なプラットフォームの開発という課題を解決できる。より詳しくは、様々な用途(定置用、クレーン用、船舶用、鉄道用、建機用等)に適用するために、共通となる部分をFCプラットフォームとして構築することで、各用途のシステム開発リソース(設計、エンジニアリングなど)を低減できる。各用途共通のプラットフォームを使用することで、FCプラットフォームの量産効果が得られ、低価格化が実現する。
また、本実施形態によれば、2つの冷却系(第1冷却系統36及び第2冷却系統90)について、適用するシステムや設置場所などに応じて冷却系の個別エンジニアリングが不要となる。より詳しくは、2つの冷却系のうち一方又は両方の中間熱交換器をFCプラットフォーム内に設置することで冷却系の個別エンジニアリングが不要になる。
また、本実施形態によれば、FCプラットフォームの並列化により、拡張性向上及び高出力対応を実現できる。補機を組み込んだFCプラットフォームを構築することで、複数のFCプラットフォームを容易に並列化でき、拡張性向上及び高出力対応の実現が容易になる。
また、本実施形態によれば、複数のFCプラットフォームをそれぞれ独立に切り離すことができ、運搬などの取り扱いが容易になるので、例えば、メンテナンスが容易化される。例えば、システム故障時にはFCプラットフォームごとの交換によって、システムの停止期間が短縮し、システムの稼働率が向上する。システム故障時には現地で修復するのではなく、FCプラットフォームを工場に引き取り、工場で修復することで、現地修復にかかるコストが低減する。工場引き取り期間は代替えのFCプラットフォームを入れ替えることで、システムの稼働率が向上する。
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、窒素を供給するパージ系統30が水素を供給する燃料系統18に合流する箇所は、燃料系統18がFCスタック21,22,23に向けて分岐した後の系統であるが、分岐する前の系統でもよい。