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JP7450976B2 - 血液透析用a剤及び血液透析用剤 - Google Patents

血液透析用a剤及び血液透析用剤 Download PDF

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Description

本発明は、優れた貯蔵安定性を備え血液透析用A剤、及び当該血液透析用A剤を含む血液透析用剤に関する。
現在、血液透析用剤としては、重炭酸透析用剤が主に用いられており、塩化ナトリウムを含む多数の電解質成分及びブドウ糖を含む血液透析用A剤と、重炭酸ナトリウムを含む血液透析用B剤を合わせた2剤タイプのものが一般的な血液透析用剤として市販されている。従来、血液透析用A剤は、電解質成分を濃縮液形態で含む液状タイプと、電解質成分を固体状で含む固体状タイプがあったが、液状タイプでは、輸送コスト、病院等での保管スペース、病院内での作業性、使用後の容器の廃棄等の点で問題視されており、近年では、固体状の血液透析用A剤が国内では主流となっている。
一般的な2剤タイプの重炭酸透析用剤における血液透析用A剤には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、pH調節剤、及びブドウ糖が含まれている。これらの成分の内、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムは吸湿性が高いという欠点があり、血液透析用A剤の貯蔵安定性を低下させる要因になっている。従来、血液透析用A剤の貯蔵安定性を高めるために、配合する塩化カルシウム及び塩化マグネシウムは、水に溶解して乾燥させることにより潮解性や吸湿性を抑制したり、加温により自身が保有する結晶水に溶解させたりすることにより潮解性や吸湿性をなくすという製造上の工夫がなされている。しかしながら、これらの手法でも、依然として、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムが有する吸湿性の低減効果が十分とはいえないのが現状である。
また、血液透析用剤に含まれる塩化カルシウム及び塩化マグネシウムの吸湿による固化が生じてしまうと、透析液調製のために水を添加した際に凝集して溶解性不良を起こしたりすることもある。この場合の溶解性不良とは、透析液調製のために、血液透析用剤を溶解する際に生じる溶け残りを指し、溶解速度が遅い血液透析用剤ではその溶解性不良のリスクが増す。血液透析液調製時に血液透析用剤の溶け残りが発生すると、調製される透析液中の各電解質濃度が予め設定された濃度とならず、濃度異常を生じる。この濃度異常の発生している透析液を用いて透析を行うと、体内の電解質が正常な範囲内に是正されず、場合によっては重篤な電解質濃度異常を引き起こす可能性がある。これを防止するために、血液透析用剤の溶解装置や透析装置には安全装置が備え付けられているが、そもそも安全装置を作動させること自体が望ましくない。そのため、溶解性不良を起こさないためには、溶解性の良い(溶解速度の良好な)製剤を使用することが重要であり、既存の溶解装置に設定されている溶解所要時間内に、使用する血液透析用剤全量が確実に溶解するように設計されていることが必要である。透析施設で広く使用されている溶解装置として、例えば、全自動溶解装置DAD-50NX-ST(日機装株式会社製)があり、当該溶解装置では、溶解所要時間が約4分に設定されている。また、A剤溶解装置AHI-502(東亜ディーケーケー株式会社製)も溶解装置として広く普及しており、当該溶解装置では、装置内に溜められた所定量の水に、血液透析用剤を少しずつ添加し、透析液が定められた電導度に達すると自動的に添加を停止するシステムを採用しており、溶解所要時間は約9分に設定されている。この溶解装置に、溶解性が不良な(溶解速度の遅い)血液透析用剤が使用された場合、透析液が所定の電導度に達し血液透析用剤の添加が停止した後に、溶け残った血液透析用剤が遅れて溶解するために濃度異常が発生してしまう。このように、一般的に臨床で使用されている溶解装置においては、用いられる血液透析用剤の溶解性が悪い場合には、得られる血液透析液の品質、並びに調製効率に大きな影響を及ぼすことが懸念される。
近年、血液透析用剤の貯蔵安定性を高め得る新たな技術が幾つか報告されている。例えば、特許文献1には、塩化ナトリウムを含まず、酢酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、及び塩化カリウムを含み、3~200000nmの細孔直径における積算細孔容積に対する2000~200000nmの細孔直径における積算細孔容積の比が50%以下であるA剤用造粒物を含む血液透析用剤は、優れた貯蔵安定性及び溶解性を有することが記載されている。また、特許文献2には、塩化マグネシウム及び塩化カリウムの一方のみを実質的に含み、且つ塩化カルシウムを含む造粒物である第1画分と、酢酸及び酢酸塩を含む第2画分とを含む固体状の血液透析用A剤は、優れた保存安定性を有していることが記載されている。
特許文献1及び2に記載の製剤技術によれば、優れた貯蔵安定性を備えさせることができるが、更なる品質の向上、製剤技術の多様化等に対応するために、これらとは異なる製剤技術によって、血液透析用A剤に優れた貯蔵安定性を備えさせ得る技術の開発が望まれている。
特開2016-209485号公報 国際公開第2018/079022号
本発明の目的は、優れた貯蔵安定性を有する血液透析用A剤、及び当該血液透析用A剤を含む血液透析用剤を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、塩化マグネシウムを含む核粒子の表面が塩化カルシウムを含むコーティング層で被覆されているコーティング粒子を血液透析用A剤に配合することによって、血液透析用A剤の貯蔵による固化を抑制し、優れた貯蔵安定性を備えさせ得ることを見出した。更に、前記コーティング粒子とブドウ糖を含む血液透析用A剤は、貯蔵によるブドウ糖の分解を抑制できることも見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 塩化カルシウムを含むコーティング層を有するコーティング粒子を含む固体状の血液透析用A剤であり、
前記コーティング粒子の核粒子として、少なくとも塩化マグネシウムを含む、
固体状の血液透析用A剤。
項2. 前記コーティング層が、塩化マグネシウムを実質的に含まない、項1に記載の血液透析用A剤。
項3. 前記コーティング粒子の核粒子として更に第1の塩化ナトリウムを含む、項1又は2に記載の血液透析用A剤。
項4. 前記コーティング層が、更に第1の塩化カリウムを含む、項1~3のいずれかに記載の血液透析用A剤。
項5. 前記コーティング層が、更に第1のクエン酸及び/又はその塩を含む、項1~4のいずれか記載の血液透析用A剤。
項6. 更に第2の塩化ナトリウムを含む、項1~5のいずれかに記載の血液透析用A剤。
項7. 更に第2の塩化カリウムを含む、項1~6のいずれかに記載の血液透析用A剤。
項8. 更に酢酸及び酢酸塩を含む、項1~7のいずれかに記載の血液透析用A剤。
項9. 更に第2のクエン酸及び/又はその塩を含む、項1~8のいずれかに記載の血液透析用A剤。
項10. 更にブドウ糖を含む、項1~9のいずれかに記載の血液透析用A剤。
項11. 項1~10のいずれかに記載の血液透析用A剤と、重炭酸ナトリウムを含む血液透析用B剤とを含む、重炭酸型の血液透析用剤。
項12. 以下の第1工程及び第2工程を含む、固体状の血液透析用A剤の製造方法:
塩化マグネシウムに対して、塩化カルシウムを溶解させたコーティング層形成用水溶液を噴霧することによりコーティング粒子を得る第1工程、及び
前記第1工程で得られたコーティング粒子を配合して、固体状の血液透析用A剤を製造する第2工程。
項13. 前記第1工程が、(1)塩化マグネシウムに対して、塩化カルシウムを溶解させたコーティング層形成用水溶液、及び塩化カリウムを溶解させたコーティング層形成用水溶液を任意の順で噴霧することにより、コーティング粒子を得る工程、又は(2)塩化マグネシウムに対して、塩化カルシウム及び塩化カリウムを溶解させたコーティング層形成用水溶液を噴霧することによりコーティング粒子を得る工程である、項12に記載の製造方法。
項14. 前記第1工程が、(1)塩化マグネシウムに対して、塩化カルシウムを溶解させたコーティング層形成用水溶液、及びクエン酸及び/又はその塩を溶解させたコーティング層形成用水溶液を任意の順で噴霧することにより、コーティング粒子を得る工程、又は(2)塩化マグネシウムに対して、塩化カルシウムとクエン酸及び/又はその塩とを溶解させたコーティング層形成用水溶液を噴霧することによりコーティング粒子を得る工程である、項12に記載の製造方法。
本発明の血液透析用A剤では、貯蔵により固化が生じるのを抑制することができ、優れた貯蔵安定性を備えている。また、本発明の血液透析用A剤では、貯蔵による固化が抑制されているので、血液透析液を調製する際に、迅速に溶解することで溶け残りを防ぐと同時に、透析液濃度異常のリスクを低減することができ、安全な透析液を安定的且つ効率的に調製することが可能となる。また、本発明の血液透析用A剤がブドウ糖を含む場合には、貯蔵によるブドウ糖の分解を抑制することもできる。更に、本発明の血液透析用A剤は、含量均一性(即ち、製剤中の成分量が均一であること)の点でも優れているので、透析液の調製の度に透析液中の成分濃度が変動するのを抑制することができる。
1.血液透析用A剤
本発明の血液透析用A剤は、塩化カルシウムを含むコーティング層を有するコーティング粒子を含み、前記コーティング粒子の核粒子として、少なくとも塩化マグネシウムを含むことを特徴とする。本発明の血液透析用A剤では、吸湿性のある塩化マグネシウム(核粒子)を同じく吸湿性のある塩化カルシウム(コーティング層)で被覆したコーティング粒子を含むことにより、コーティング粒子の核粒子側の塩化マグネシウムの吸湿性を抑制することで、優れた貯蔵安定性が達成されるものと考えられる。以下、本発明の血液透析用A剤について詳述する。
なお、本明細書において、「コーティング粒子」と表記する場合、塩化カルシウムを含むコーティング層を有するコーティング粒子を指す。
[コーティング粒子]
・コーティング層
本発明の血液透析用A剤で使用されるコーティング粒子は、後述する核粒子の表面に、塩化カルシウムを含むコーティング層が形成されている。
本発明において、コーティング層とは、核粒子に対して、コーティング層を形成する成分が溶解された水溶液を噴霧乾燥することにより形成された層(噴霧コーティング層)である。即ち、湿式造粒や乾式造粒等によって、核粒子の表面の一部に他の粒子が形状を維持したまま付着した状態(凝集造粒物の状態)になっている造粒物は、コーティング層を有しておらず、コーティング粒子には該当しない。
コーティング粒子において、コーティング層を形成する塩化カルシウムは、血液透析液においてカルシウムイオン及び塩化物イオンの供給源となる成分である。コーティング粒子において、コーティング層の形成に使用される塩化カルシウムは、水和物又は無水物のいずれの状態であってもよい。
コーティング粒子において、コーティング層に含まれる塩化カルシウムの含有量としては、調製される透析液の総カルシウムイオン濃度、及び総塩化物イオンを勘案して適宜設定すればよい。具体的には、コーティング層に含まれる塩化カルシウムの含有量は、調製される血液透析液における総カルシウムイオン濃度が1.5~4.5mEq/L;好ましくは2.5~3.5mEq/Lとなるように設定すればよい。例えば、コーティング粒子の無水物換算量100重量部当たり、コーティング層に含まれる塩化カルシウムの無水物換算量で10~95重量部、好ましくは15~85重量部が挙げられる。本発明において、「コーティング粒子の無水物換算量」とは、コーティング粒子に含まれる成分が水和物である場合には、当該水和物の結晶水(水和物中の水分子)の重量を除いて、コーティング粒子に含まれる全成分を無水物の重量に換算して求められる値である。また、「塩化カルシウムの無水物換算量」とは、塩化カルシウムが水和物の形態の場合には、結晶水(水和物中の水分子)の重量を除いて、無水物の重量に換算して求められる値である。
コーティング粒子において、コーティング層には、本発明の効果を妨げない範囲で、塩化カルシウム以外に、必要に応じて、ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グルコン酸イオン、コハク酸イオン、リンゴ酸イオン等の供給源となる他の有機酸塩及び/又は無機塩;有機酸;ブドウ糖等の血液透析液の構成成分が含まれていてもよい。
コーティング粒子において、コーティング層全体において塩化カルシウムが占める比率については、特に制限されないが、コーティング層の無水物換算量の総量100重量部当たり、塩化カルシウムが無水物換算量で15重量部以上、好ましくは25重量部以上、より好ましくは50重量部以上、更に好ましくは65重量部以上が挙げられる。本発明において、「コーティング層の無水物換算量」とは、コーティング層に含まれる成分が水和物である場合には、当該水和物の結晶水(水和物中の水分子)の重量を除いて、コーティング層に含まれる全成分を無水物の重量に換算して求められる値である。
コーティング粒子の好ましい一実施形態として、コーティング層として塩化カルシウムのみを含むものが挙げられる。
また、コーティング粒子の他の好ましい一実施形態として、コーティング層として塩化マグネシウムを実質的に含まないものが挙げられる。本発明において、「コーティング層として塩化マグネシウムを実質的に含まない」とは、製造工程において不可避的に混入又は副生する場合を除いて、コーティング層中に塩化マグネシウムが含まれていないことを指す。
また、コーティング粒子の更に別の好ましい一実施形態として、コーティング層として塩化カルシウム及び第1の塩化カリウムを含むものが挙げられる。塩化カリウムは、血液透析液においてカリウムイオン及び塩化物イオンの供給源となる成分である。本発明では、コーティング粒子に含まれ得る塩化カリウムと、コーティング粒子とは別に配合され得る塩化カリウムとを区別するために、便宜上、前者の塩化カリウムを「第1の塩化カリウム」と表記し、後者の塩化カリウムを「第2の塩化カリウム」と表記することもある。
コーティング粒子において、コーティング層に塩化カルシウム及び第1の塩化カリウムを含む場合、コーティング層中でのこれらの比率については、調製される透析液の総カルシウムイオン濃度、総カリウムイオン濃度、及び総塩化物イオンを勘案して適宜設定すればよいが、例えば、塩化カルシウムの無水物換算量100重量部当たり、第1の塩化カリウムが15~300重量部、好ましくは30~150重量部が挙げられる。
また、コーティング粒子の更に別の好ましい一実施形態として、コーティング層として塩化カルシウムと、第1のクエン酸及び/又はその塩とを含むものが挙げられる。本発明では、コーティング粒子に含まれ得るクエン酸及び/又はその塩と、コーティング粒子とは別に配合され得るクエン酸及び/又はその塩とを区別するために、便宜上、前者のクエン酸及び/又はその塩を「第1のクエン酸及び/又はその塩」と表記し、後者のクエン酸及び/又はその塩を「第2のクエン酸及び/又はその塩」と表記することもある。
クエン酸の塩は、血液透析液の成分として許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等のクエン酸アルカリ金属塩;クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム等のクエン酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。これらのクエン酸の塩の中でも、長年の使用実績による安全性、コストの観点から、好ましくはクエン酸アルカリ金属塩、より好ましくはクエン酸ナトリウム、更に好ましくはクエン酸三ナトリウムが挙げられる。また、これらのクエン酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
コーティング粒子において、コーティング層に塩化カルシウムと第1のクエン酸及び/又はその塩とを含む場合、コーティング層中でのこれらの比率については、調製される透析液の総カルシウムイオン濃度、総クエン酸イオン濃度、総塩化物イオン、pH等を勘案して適宜設定すればよい。具体的には、コーティング層に含まれる第1のクエン酸及び/又はその塩の含有量は、後述する第2のクエン酸及び/又はその塩の有無や含有量を勘案して、調製される血液透析液における総クエン酸イオン濃度が0.1~18mEq/L、好ましくは0.5~3.5mEq/L、より好ましくは1~3.3mEq/Lとなるように適宜設定すればよい。例えば、コーティング層に含まれる塩化カルシウムの無水物換算量100重量部当たり、第1のクエン酸及び/又はその塩が1~100重量部、好ましくは10~80重量部、より好ましくは20~50重量部が挙げられる。
また、コーティング粒子において、コーティング層は単層構造又は多層構造のいずれであってもよい。
コーティング層が単層構造である場合には、塩化カルシウムと、必要に応じて含まれる他の成分(例えば、第1の塩化カリウム、第1のクエン酸及び/又はその塩等)とを含む混合物で単層のコーティング層を形成すればよい。
また、コーティング層が多層構造の場合には、コーティング層を形成する成分を2以上に分割して、複数のコーティング層を積層させればよい。コーティング層が多層構造である場合、コーティング層の層数としては、例えば、2~4層、好ましくは2又は3層、より好ましくは2層が挙げられる。また、例えば、コーティング層に塩化カルシウム及び第1の塩化カリウムを含み、コーティング層を2層構造にする場合には、核粒子の表面に対して、塩化カルシウムを含む第1コーティング層、及び第1の塩化カリウムを含む第2コーティング層を任意の順で被覆させればよい。また、例えば、コーティング層に塩化カルシウムとクエン酸及び/又はその塩とを含み、コーティング層を2層構造にする場合には、核粒子の表面に対して、塩化カルシウムを含む第1コーティング層、及びクエン酸及び/又はその塩を含む第2コーティング層を任意の順で被覆させればよい。
・核粒子
コーティング粒子は、核粒子として少なくとも塩化マグネシウムを含む。塩化マグネシウムは、水和物又は無水物のいずれの状態であってもよい。コーティング粒子に含まれる塩化マグネシウムは、血液透析液においてマグネシウムイオン及び塩化物イオンの供給源となる成分である。
コーティング粒子において、核粒子として含まれる塩化マグネシウムの含有量としては、特に制限されないが、例えば、コーティング粒子の無水物換算量100重量部当たり、核粒子として含まれる塩化マグネシウムの無水物換算量で2~50重量部、好ましくは5~40重量部、より好ましくは5~35重量部、更に好ましくは10~35重量部が挙げられる。本発明において、「塩化マグネシウムの無水物換算量」とは、塩化マグネシウムが水和物の形態の場合には、結晶水(水和物中の水分子)の重量を除いて、無水物の重量に換算して求められる値である。
また、コーティング粒子において、核粒子を形成する塩化マグネシウムと、コーティング層を形成する塩化カルシウムとの比率については、調製される透析液の総マグネシウムイオン濃度、総カルシウムイオン濃度、及び総塩化物イオンを勘案して適宜設定すればよい。具体的には、塩化マグネシウムと塩化カルシウムとの比率については、調製される血液透析液において、総マグネシウムイオン濃度が0.5~2.0mEq/L且つ総カルシウムイオン濃度が1.5~4.5mEq/L;好ましくは総マグネシウムイオン濃度が0.75~1.5mEq/L、且つ総カルシウムイオン濃度が2.5~3.5mEq/Lとなるように設定すればよい。例えば、核粒子を形成する塩化マグネシウムの無水物換算量100重量部当たり、コーティング層を形成する塩化カルシウムが無水物換算量で50~1000重量部、好ましくは100~800重量部、より好ましくは150~500重量部、更に好ましくは190~330重量部が挙げられる。
また、コーティング粒子において、核粒子は、本発明の効果を妨げない範囲で、塩化マグネシウム以外に、必要に応じて、ナトリウムイオン、塩化物イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グルコン酸イオン、コハク酸イオン、リンゴ酸イオン等の供給源となる他の有機酸塩及び/又は無機塩;有機酸;ブドウ糖等の血液透析液の構成成分が含まれていてもよい。核粒子として塩化マグネシウム以外の成分を含む場合、コーティング粒子は、塩化マグネシウムと他の成分が凝集した粒子を核粒子とするコーティング粒子;塩化マグネシウムを核粒子とするコーティング粒子と他の成分を核粒子とするコーティング粒子との混合物;又は、塩化マグネシウムと他の成分が凝集した粒子を核粒子とするコーティング粒子と、塩化マグネシウムを核粒子とするコーティング粒子と、他の成分を核粒子とするコーティング粒子との混合物であり得る。
コーティング粒子において、核粒子における塩化マグネシウムが占める比率については、特に制限されないが、核粒子の無水物換算量の総量100重量部当たり、塩化マグネシウムが無水物換算量で3重量部以上、好ましくは5重量部以上、より好ましくは7重量部以上が挙げられる。本発明において、「核粒子の無水物換算量」とは、塩化マグネシウムを含むコーティング層を有する全コーティング粒子における核粒子の総量の無水物換算量であり、核粒子に含まれる成分が水和物である場合には、当該水和物の結晶水(水和物中の水分子)の重量を除いて、核粒子に含まれる全成分を無水物の重量に換算して求められる値である。
コーティング粒子の好ましい一実施形態として、核粒子として塩化マグネシウムのみを含むものが挙げられる。
また、コーティング粒子の他の好ましい一実施形態として、核粒子として塩化マグネシウム及び第1の塩化ナトリウムを含むことが挙げられる。塩化ナトリウムは、血液透析液においてナトリウムイオン及び塩化物イオンの供給源となる成分である。本発明では、コーティング粒子に含まれ得る塩化ナトリウムと、コーティング粒子とは別に配合され得る塩化ナトリウムとを区別するために、便宜上、前者の塩化ナトリウムを「第1の塩化ナトリウム」と表記し、後者の塩化ナトリウムを「第2の塩化ナトリウム」と表記することもある。
核粒子として塩化マグネシウム及び第1の塩化ナトリウムが含まれる場合、コーティング粒子は、塩化マグネシウムと第1の塩化ナトリウムが凝集した粒子を核粒子とするコーティング粒子;塩化マグネシウムを核粒子とするコーティング粒子と第1の塩化ナトリウムを核粒子とするコーティング粒子との混合物;又は、塩化マグネシウムと第1の塩化ナトリウムが凝集した粒子を核粒子とするコーティング粒子と、塩化マグネシウムを核粒子とするコーティング粒子と、第1の塩化ナトリウムを核粒子とするコーティング粒子との混合物であり得る。
コーティング粒子において、核粒子として塩化マグネシウム及び第1の塩化ナトリウムを含む場合、これらの比率については、調製される透析液の総マグネシウムイオン濃度、総ナトリウムイオン濃度、及び総塩化物イオン濃度等を勘案して適宜設定すればよいが、例えば、核粒子として含まれる塩化マグネシウムの無水物換算量100重量部当たり、核粒子として含まれる第1の塩化ナトリウムが1~3500重量部、好ましくは50~3000重量部、より好ましくは100~2700重量部、更に好ましくは300~1350重量部が挙げられる。
また、コーティング粒子において、核粒子とコーティング層との比率については、核粒子及びコーティング層を構成する成分が、調製される透析液で所望のイオン濃度になるように適宜設定すればよい。具体的には、核粒子とコーティング層との比率は、調製される血液透析液において、総カルシウムイオン濃度が1.5~4.5mEq/L、且つ総カリウムイオン濃度が0.5~3mEq/L;好ましくは総カルシウムイオン濃度が2.5~3.5mEq/L且つ総カリウムイオン濃度が、1.5~2.5mEq/Lとなるように設定すればよい。例えば、核粒子の無水物換算量100重量部当たり、コーティング層の無水物換算量が10~1300重量部、好ましくは15~500重量部が挙げられる。より具体的には、核粒子として塩化マグネシウムのみを含む場合であれば、核粒子の無水物換算量100重量部当たり、コーティング層が無水物換算量で50~1300重量部、好ましくは100~500重量部、より好ましくは150~500重量部が挙げられる。また、核粒子として塩化マグネシウムと第1の塩化ナトリウムを含む場合であれば、核粒子の無水物換算量100重量部当たり、コーティング層が無水物換算量で10~100重量部、好ましくは15~70重量部が挙げられる。
・コーティング粒子の含有量
本発明の血液透析用A剤における前記コーティング粒子の含有量については、コーティング粒子に含まれる塩化マグネシウム及び塩化カルシウムの量等を勘案して、調製される血液透析液において必要とされる総マグネシウムイオン濃度及び総カルシウムイオン濃度を満たすように適宜設定すればよい。具体的には、本発明の血液透析用A剤における前記コーティング粒子の含有量は、調製される血液透析液において、総マグネシウムイオン濃度が0.5~2.0mEq/L且つ総カルシウムイオン濃度が1.5~4.5mEq/L;好ましくは総マグネシウムイオン濃度が0.75~1.5mEq/L、且つ総カルシウムイオン濃度が2.5~3.5mEq/Lとなるように設定すればよい。
より具体的には、本発明の血液透析用A剤における前記コーティング粒子の含有量として、血液透析用A剤に含まれる電解質成分の無水物換算量の総量100重量部当たり、前記コーティング粒子の無水物換算量で1~20重量部、好ましくは2~15重量部が挙げられる。本発明において、「血液透析用A剤に含まれる電解質成分の無水物換算量」とは、血液透析用A剤に含まれる電解質成分が水和物である場合には、当該水和物の結晶水(水和物中の水分子)の重量を除いて、血液透析用A剤に含まれる全電解質成分を無水物の重量に換算して求められる値である。また、血液透析用A剤に含まれる電解質成分には、血液透析用A剤中の有機酸塩、無機酸塩、有機酸、及び無機酸が含まれる。
・コーティング粒子の製造方法
前記コーティング粒子は、塩化マグネシウムを含む核粒子に対して、塩化カルシウムを溶解させたコーティング層形成用水溶液を噴霧しながら乾燥、又は噴霧した後に乾燥することによって製造される。コーティング層を多層構造にする場合であれば、コーティング層の各層に応じた2種以上のコーティング層形成用水溶液を準備し、塩化マグネシウムを含む核粒子に対して、2種以上のコーティング層形成用水溶液を段階的に噴霧しながら乾燥、又は噴霧した後に乾燥すればよい。
コーティング層形成用水溶液中の塩化カルシウムの濃度については、製造装置の種類やスケール等に応じて適宜設定すればよいが、形成されるコーティング層にムラが生じるのを抑制するという観点から、塩化カルシウムの無水物換算量で40~70重量%、好ましくは50~70重量%が挙げられる。
また、コーティング層に第1の塩化カリウムを含有させる場合、コーティング層形成用水溶液に塩化カリウムを含有させればよい。コーティング層形成用水溶液中の第1の塩化カリウムの濃度については、製造装置の種類やスケール等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、塩化カリウムが20~60重量%、好ましくは30~60重量%が挙げられる。
また、コーティング層に第1のクエン酸及び/又はその塩を含有させる場合、コーティング層形成用水溶液にクエン酸及び/又はその塩を含有させればよい。コーティング層形成用水溶液中の第1のクエン酸及び/又はその塩の濃度については、製造装置の種類やスケール等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、クエン酸及び/又はその塩が30~55重量%、好ましくは40~55重量%が挙げられる。
核粒子に対して噴霧するコーティング層形成用水溶液の量については、コーティング層形成用水溶液中の塩化カルシウムの濃度、製造するコーティング粒子の核粒子とコーティング層との比率等に応じて適宜設定すればよい。
また、核粒子に対してコーティング層形成用水溶液を噴霧する際の温度条件については、特に制限されないが、例えば、15~150℃、好ましくは60~140℃、より好ましくは100~130℃が挙げられる。
核粒子に対してコーティング層形成用水溶液を噴霧するには、例えば、転動流動造粒コーティング装置等の流動造粒コーティング装置を使用すればよい。
また、核粒子として、塩化マグネシウム以外の成分(第1の塩化ナトリウム等)を含ませる場合には、塩化マグネシウムと他の成分に対してコーティング層形成用水溶液を噴霧すればよい。また、例えば、加熱混合等によって、塩化マグネシウムの少なくとも一部と他の成分の少なくとも一部とを凝集させた後に、コーティング層形成用水溶液を噴霧してもよい。
[塩化ナトリウム]
本発明の血液透析用A剤は、前記コーティング粒子とは別に、塩化ナトリウム(第2の塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。
本発明の血液透析用A剤の一実施態様では、第2の塩化ナトリウムは、表面に塩化マグネシウム、塩化カルシウム、及び塩化カリウムの少なくとも1つが付着又はコーティングされていない状態であることが挙げられる。
本発明の血液透析用A剤に第2の塩化ナトリウムを含有させる場合、その含有量については、前記コーティング粒子に必要に応じて含まれる第1の塩化ナトリウムの量、その他のナトリウム塩の含有量等を勘案して、調製される血液透析液において必要とされる総ナトリウムイオン濃度を満たすように適宜設定すればよい。具体的には、本発明の血液透析用A剤における塩化ナトリウムの含有量は、調製される血液透析液の総ナトリウムイオン濃度が90~120mEq/L、好ましくは100~110mEq/Lとなるように設定すればよい。
例えば、血液透析用A剤に含まれる電解質成分の無水物換算量の総量100重量部当たり、第2の塩化ナトリウムが総量で、40~95重量部、好ましくは55~90重量部が挙げられる。
[塩化カリウム]
本発明の血液透析用A剤において、前記コーティング粒子に第1の塩化カリウムが含まれていない場合、又は前記コーティング粒子に含まれる第1の塩化カリウムでは調製される血液透析液において必要とされるカリウムイオン濃度を満たすことができない場合には、前記コーティング粒子とは別に、更に塩化カリウム(第2の塩化カリウム)が含まれていることが好ましい。
本発明の血液透析用A剤の一実施態様では、第2の塩化カリウムは、表面に塩化マグネシウム、塩化カルシウム、及び塩化ナトリウムの少なくとも1つが付着又はコーティングされていない状態であることが挙げられる。
本発明の血液透析用A剤に第2の塩化カリウムを含有させる場合、その含有量については、前記コーティング粒子に必要に応じて含まれる第1の塩化カリウムの量、その他のカリウム塩の含有量等を勘案して、調製される血液透析液において必要とされる総カリウムイオン濃度を満たすように適宜設定すればよい。具体的には、本発明の血液透析用A剤における塩化カリウムの含有量は、調製される血液透析液における総カリウムイオン濃度が0.5~3mEq/L、1.5~2.5mEq/Lとなるように設定すればよい。
例えば、血液透析用A剤に含まれる電解質成分の無水物換算量の総量100重量部当たり、第2の塩化カリウムが、0.1~4重量部、好ましくは0.5~3重量部が挙げられる。
[酢酸及び酢酸塩]
本発明の血液透析用A剤は、前記コーティング粒子以外に、酢酸及び酢酸塩を含んでいてもよい。
酢酸は氷酢酸であってもよい。また、酢酸塩は、血液透析液の成分として許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸アルカリ金属塩;酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等の酢酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。これらの酢酸塩は無水酢酸塩であってもよい。これらの酢酸塩の中でも、長年の使用実績による安全性、コストの観点から、好ましくは酢酸アルカリ金属塩、更に好ましくは酢酸ナトリウムが挙げられる。また、これらの酢酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、酢酸及び酢酸塩は、混合物の状態で使用することが好ましい。
また、酢酸及び酢酸塩の少なくとも一部が、二酢酸アルカリ金属塩の形態であってもよい。二酢酸アルカリ金属塩を使用することによって、貯蔵安定性の更なる向上、酢酸臭の低減、ブドウ糖を共存させた際のブドウ糖の分解抑制を図ることが可能になる。二酢酸アルカリ金属塩とは、酢酸アルカリ金属塩1モルと酢酸1モルが複合化した複合体(MH(C2322;Mはアルカリ金属原子を示す)であり、二酢酸アルカリ金属塩1モルからは、酢酸塩(酢酸アルカリ金属塩)1モルと酢酸1モルが供給されることになる。本発明で使用される二酢酸アルカリ金属塩としては、具体的には、二酢酸ナトリウム、二酢酸カリウム等が挙げられる。これらの二酢酸アルカリ金属塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。二酢酸アルカリ金属塩の中でも、好ましくは二酢酸ナトリウムが挙げられる。
また、酢酸及び酢酸塩の少なくとも一部が、高次酢酸塩化合物の形態であってもよい。高次酢酸塩化合物とは、酢酸(一次化合物)と酢酸塩(一次化合物)が互いに結合して生成された化合物である。
また、本発明の血液透析用A剤に含有される酢酸及び酢酸塩のモル比については、特に制限されず、血液透析液に付与すべきpHの範囲等に基づいて適宜設定すればよいが、血液透析用A剤に含まれる酢酸:血液透析用A剤に含まれる酢酸塩のモル比が、1:0.5~10、好ましくは1:0.5~6.0、より好ましくは1:0.5~3.0、更に好ましくは1:0.7~2.0を満たすように設定されていることが望ましい。ここで、酢酸及び酢酸塩として二酢酸アルカリ金属塩を含む場合には、二酢酸アルカリ金属塩1モルに由来する酢酸及び酢酸塩は、酢酸1モルと酢酸塩1モルとして前記モル比は算出される。また、酢酸及び酢酸塩として高次酢酸塩化合物を含む場合には、当該高次酢酸塩化合物における酢酸:酢酸塩のモル比が1:Xであれば、当該高次酢酸塩化合物1モルに由来する酢酸及び酢酸塩は、酢酸1モル、酢酸塩Xモルとして前記モル比は算出される。
本発明の血液透析用A剤において、酢酸及び酢酸塩を含有させる場合、その含有量については、調製される血液透析液において必要とされる総酢酸イオン濃度及びpHを満たすように適宜設定すればよい。具体的には、本発明の血液透析用A剤に酢酸及び酢酸塩を含有させる場合、その含有量は、調製される血液透析液における総酢酸イオン濃度が0.5~12mEq/L、好ましくは1.5~10mEq/L、より好ましくは2~10mEq/L、更に好ましくは10mEq/L、8mEq/L、6mEq/L、又は4.2mEq/L等となるように適宜設定すればよい。
例えば、血液透析用A剤に含まれる電解質成分の無水物換算量の総量100重量部当たり、酢酸及び酢酸塩の無水物換算量の総量で、0.1~25重量部、好ましくは0.3~20重量部、より好ましくは4~12重量部が挙げられる。本発明において、「酢酸及び酢酸塩の無水物換算量」とは、酢酸塩が水和物である場合には、当該水和物の結晶水(水和物中の水分子)の重量を除いて、酢酸及び酢酸塩の合計量を無水物の重量に換算して求められる値である。
[クエン酸及び/又はその塩]
本発明の血液透析用A剤において、前記コーティング粒子に第1のクエン酸及び/又はその塩が含まれていない場合、又は前記コーティング粒子に含まれる第1のクエン酸及び/又はその塩では所望のクエン酸イオン濃度を満たすことができない場合には、前記コーティング粒子とは別に、更にクエン酸及び/又はその塩(第2のクエン酸及び/又はその塩)が含まれていることが好ましい。
クエン酸の塩は、血液透析液の成分として許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等のクエン酸アルカリ金属塩;クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム等のクエン酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。これらのクエン酸の塩の中でも、長年の使用実績による安全性、コストの観点から、好ましくはクエン酸アルカリ金属塩、更に好ましくはクエン酸ナトリウムが挙げられる。また、これらのクエン酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の血液透析用A剤に第2のクエン酸及び/又はその塩を含有させる場合、その含有量については、第1のクエン酸及び/又はその塩の有無やその含有量等を勘案し、調製される血液透析液において必要とされる総クエン酸イオン濃度及びpHを満たすように適宜設定すればよい。具体的には、本発明の血液透析用A剤に第2のクエン酸及び/又はその塩を含有させる場合、その含有量は、調製される血液透析液における総クエン酸イオン濃度が0.1~18mEq/L、好ましくは0.5~3.5mEq/L、より好ましくは1~3.3mEq/Lとなるように適宜設定すればよい。
より具体的には、血液透析用A剤に含まれる電解質成分の無水物換算量の総量100重量部当たり、第2のクエン酸及び/又はその塩の無水物換算量の総量で、0.5~50重量部、好ましくは1~15重量部、より好ましくは2~5重量部が挙げられる。本発明において、「クエン酸及び/又はその塩の無水物換算量」とは、クエン酸の塩が水和物である場合には、当該水和物の結晶水(水和物中の水分子)の重量を除いて、クエン酸及びその塩の合計量を無水物の重量に換算して求められる値である。
[塩化カルシウム及び塩化マグネシウム]
本発明の血液透析用A剤において、前記コーティング粒子に含まれる塩化カルシウムでは調製される血液透析液において必要とされる総カルシウムイオン濃度を満たすことができない場合には、前記コーティング粒子とは別に、更に塩化カルシウムを含有させることができる。また、本発明の血液透析用A剤において、前記コーティング粒子に含まれる塩化マグネシウムでは調製される血液透析液において必要とされる総マグネシウムイオン濃度を満たすことができない場合には、前記コーティング粒子とは別に、更に塩化マグネシウムを含有させることができる。但し、前記コーティング粒子以外で、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムの少なくとも一方が含まれる場合には、血液透析用A剤の貯蔵安定性や溶解性が低下する傾向が生じ得るので、血液透析用A剤で必要とされる塩化カルシウム及び塩化マグネシウムは、全て前記コーティング粒子に含まれていることが好ましい。
[ブドウ糖]
本発明の血液透析用A剤は、患者の血糖値の維持の目的で、ブドウ糖を含んでいてもよい。本発明の血液透析用A剤がブドウ糖を含む場合には、貯蔵によるブドウ糖の分解を抑制することも可能になる。
本発明の血液透析用A剤にブドウ糖を含有させる場合、その含有量については、調製される血液透析液において必要とされるブドウ糖濃度を満たすように適宜設定すればよい。具体的には、本発明の血液透析用A剤におけるブドウ糖の含有量は、調製される血液透析液におけるブドウ糖濃度が0.1~2.5g/L、好ましくは1.0~2.0g/Lとなるように適宜設定すればよい。
例えば、血液透析用A剤に含まれる電解質成分の無水物換算量の総量100重量部当たり、ブドウ糖が0.5~60重量部、好ましくは10~25重量部が挙げられる。
[その他の成分]
本発明の血液透析用A剤には、前述する成分以外に、必要に応じて、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グルコン酸イオン、コハク酸イオン、リンゴ酸イオン等の供給源となる他の有機酸塩が含まれていてもよい。
カルシウムイオンの供給源となる化合物としては、例えば、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム等の有機酸のカルシウム塩が挙げられる。これらの有機酸のカルシウム塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
マグネシウムイオンの供給源となる化合物としては、例えば、乳酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム等のマグネシウムの有機酸塩が挙げられる。これらのマグネシウムの有機酸塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ナトリウムイオンの供給源となる化合物としては、例えば、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム等のナトリウムの有機酸塩が挙げられる。これらのナトリウムの有機酸塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
カリウムイオンの供給源となる化合物としては、例えば、乳酸カリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、リンゴ酸カリウム等のカリウムの有機酸塩が挙げられる。これらのカリウムの有機酸塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの有機酸塩については、最終的に調製される透析液に含有させるべき各種イオンの種類に応じて適宜選択すればよい。また、本発明の血液透析用A剤において、これらの有機酸塩の含有量については、調製される透析液に備えさせる各イオン濃度に応じて適宜設定される。具体的には、本発明の血液透析用A剤において必要に応じて含まれる前記有機酸塩の含有量は、最終的に調製される血液透析液が下記表1に示す各イオン濃度を満たすよう、適宜設定すればよい。
Figure 0007450976000001
本発明の血液透析用A剤には、必要に応じて、前記以外のpH調節剤を含んでいてもよい。本発明の血液透析用A剤に使用可能なpH調節剤としては、血液透析液の成分として許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、塩酸、乳酸、グルコン酸等の液状の酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、グルコノデルタラクトン等の固形状の酸、及びこれらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム塩等が挙げられる。これらのpH調節剤の中でも、有機酸が好適に使用される。pH調節剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
[pH特性]
本発明の血液透析用A剤は、血液透析液を調製した際に、pHが6~8、好ましくは7.1~7.6となるように設定されていればよい。
[形態]
本発明の血液透析用A剤は、前記コーティング粒子と、前記コーティング粒子とは別に含まれる成分が所定量混合された状態の固体製剤である。本発明の血液透析用A剤において、前記コーティング粒子以外の各成分は、粉末又は造粒物のいずれであってもよく、また粉末と造粒物が混在した状態であってもよい。
[製造方法]
本発明の血液透析用A剤は、前記コーティング粒子と、前記コーティング粒子とは別に含まれる各成分を所定量混合することにより製造される。
2.血液透析用剤
本発明の血液透析用A剤は、重炭酸ナトリウムを含む血液透析用B剤と組み合わせて、血液透析用剤(以下、本発明の血液透析用剤と表記する)として提供される。
前記血液透析用B剤は、輸送や保管の観点から固形状であることが望ましい。固形状の血液透析用B剤の形状としては、具体的には粉末剤、顆粒剤等が挙げられる。前記血液透析用B剤の使用量は、調製される血液透析液中の重炭酸イオンが20~40mEq/L、好ましくは25~35mEq/Lとなるように適宜設定すればよい。
本発明の血液透析用A剤にブドウ糖が含まれていない場合、又は前記血液透析用A剤に含まれるブドウ糖では調製される血液透析液において必要とされるブドウ糖濃度を満たすことができない場合には、前記血液透析用B剤には、必要に応じてブドウ糖が含まれていてもよい。前記血液透析用B剤にブドウ糖を含有させる場合、ブドウ糖の含有量は、最終的に調製される血液透析液におけるブドウ糖濃度が0.1~2.5g/L、好ましくは1.0~1.5g/Lとなるように適宜設定すればよい。但し、前記血液透析用B剤は、重炭酸ナトリウム以外の電解質成分が含まれていないことが望ましく、含有成分が実質的に重炭酸ナトリウムからなるものが好適である。
また、本発明の血液透析用A剤にブドウ糖が含まれていない場合、又は本発明の血液透析用A剤に含まれるブドウ糖では調製される血液透析液において必要とされるブドウ糖濃度を満たすことができない場合には、本発明の血液透析用A剤を血液透析用A-1剤として、更にブドウ糖からなる血液透析用A-2剤を組み合わせて提供してもよい。即ち、本発明の血液透析用A剤(ブドウ糖含有又は非含有の双方の場合を含む)は、前記血液透析用B剤と組み合わせて2剤タイプの血液透析用剤として提供したり、前記血液透析用A-2剤と前記血液透析用B剤とを組み合わせて3剤タイプの血液透析用剤として提供したりすることができる。
本発明の血液透析用剤において、前記血液透析用A-2剤を設ける場合、当該血液透析用A-2剤におけるブドウ糖の含有量は、最終的に調製される血液透析液におけるブドウ糖濃度が0.1~2.5g/L、好ましくは1.0~1.5g/Lとなるように適宜設定すればよい。
本発明の血液透析用剤は、重炭酸血液透析液を調製するために使用される。具体的には、本発明の血液透析用剤に含まれる各剤を所定量の水(好ましくは精製水)に溶解し希釈させることによって、重炭酸血液透析液が調製される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
試験例1:酢酸を含む血液透析用剤の製造及び評価
1.血液透析用剤の製造
[実施例1]
塩化カルシウム二水和物1060.5gを精製水381.8gに溶かし、コーティング層形成用水溶液を調製した。転動流動造粒コーティング装置(製造元:パウレック株式会社、型番:MP-01)に塩化マグネシウム六水和物534.0gを入れ、回転数250rpm、風温130℃で運転を開始した。5分後に回転数を50rpmに変更し、20分乾燥させた後、運転条件を回転数480rpm、風温130℃に変更し、前記コーティング層形成用水溶液の全量を塩化マグネシウムにスプレー噴霧し、コーティング層を形成した。スプレー噴霧後、前記条件(回転数480rpm、風温130℃)で5分間乾燥を行い、コーティング粒子を得た。得られたコーティング粒子は、塩化マグネシウムを核粒子として含み、塩化カルシウムがコーティング層として該核粒子の表面を被覆している構造になっている。
得られたコーティング粒子を表2の「コーティング粒子採取量(g)」の欄に記載の量を採取し、水で溶解して全量を500mLとし、濃縮液を得た。濃縮液について、精製水で希釈後、液体イオンクロマトグラフィーにてマグネシウムイオンの含量測定を行い、その結果を採取量中の塩化マグネシウム(無水物)定量値とした。採取量中の塩化マグネシウム(無水物)理論量(配合量から算出される値)と採取量中の塩化マグネシウム(無水物)定量値の比から、固体状の血液透析用A剤へのコーティング粒子の配合量(86.9g)を決定した。そして、前記コーティング粒子86.9gと、酢酸:酢酸ナトリウムのモル比が1:1.1である酢酸及び酢酸ナトリウムの混合物105.2g、塩化ナトリウム2178.0g、及び塩化カリウム52.2gをポリ袋に入れて混合し、固体状の血液透析用A剤を得た。
[実施例2]
塩化カルシウム二水和物1060.5gを精製水381.8gに溶かし、コーティング層形成用水溶液を調製した。転動流動造粒コーティング装置(製造元:パウレック株式会社、型番:MP-01)に第1の塩化ナトリウム980.1gを入れ、回転数250rpm、風温130℃で運転を開始した。次いで塩化マグネシウム六水和物534.0gを入れ、5分後に回転数を50rpmに変更し、25分乾燥させた。その後、回転数480rpm、風温130℃で運転を開始し、前記コーティング層形成用水溶液の全量を塩化マグネシウム及び塩化ナトリウムにスプレー噴霧し、コーティング層を形成した。スプレー噴霧後、前記条件(回転数480rpm、風温130℃)で5分間乾燥を行い、コーティング粒子を得た。得られたコーティング粒子は、核粒子として塩化マグネシウムと塩化ナトリウムが相互に付着した凝集粒子、塩化マグネシウム粒子、及び塩化カルシウム粒子が混在しており、これらの核粒子の表面を塩化カルシウムがコーティング層として核粒子の表面を被覆している構造になっている。
得られたコーティング粒子を表2の「コーティング粒子採取量(g)」の欄に記載の量を採取し、水で溶解して全量を500mLとし、濃縮液を得た。濃縮液について、精製水で希釈後、液体イオンクロマトグラフィーにてマグネシウムイオンの含量測定を行い、その結果を採取量中の塩化マグネシウム(無水物)定量値とした。採取量中の塩化マグネシウム(無水物)理論量(配合量から算出される値)と採取量中の塩化マグネシウム(無水物)定量値の比から、固体状の血液透析用A剤へのコーティング粒子の配合量(161.3g)を決定した。そして、前記コーティング粒子161.3gと、酢酸:酢酸ナトリウムのモル比が1:1.1である酢酸及び酢酸ナトリウムの混合物105.2g、第2の塩化ナトリウム2112.7g、及び塩化カリウム52.2gをポリ袋に入れて混合し、固体状の血液透析用A剤を得た。
[実施例3]
塩化カルシウム二水和物530.3gを精製水190.9gに溶かしたコーティング層形成用水溶液を使用し、第1の塩化ナトリウムの配合量を816.8g、塩化マグネシウム六水和物の配合量を267.0gに変更したこと以外は、実施例2と同条件で、コーティング粒子を得た。そして、コーティング粒子の配合量を223.3g、及び第2の塩化ナトリウムの配合量を2069.1gに変更したこと以外は、実施例2と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。なお、血液透析用A剤に含まれるコーティング粒子は、核粒子として塩化マグネシウムと塩化ナトリウムが相互に付着した凝集粒子、塩化マグネシウム粒子、及び塩化カルシウム粒子が混在しており、これらの核粒子の表面を塩化カルシウムがコーティング層として核粒子の表面を被覆している構造になっている。
[実施例4]
塩化カルシウム二水和物353.5gを精製水127.3gに溶かしたコーティング層形成用水溶液を使用し、第1の塩化ナトリウムの配合量を1089.0g、塩化マグネシウム六水和物の配合量を178.0gに変更したこと以外は、実施例2と同条件で、コーティング粒子を得た。そして、コーティング粒子の配合量を320.1g、及び第2の塩化ナトリウムの配合量を1960.2gに変更したこと以外は、実施例2と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。なお、血液透析用A剤に含まれるコーティング粒子は、核粒子として塩化マグネシウムと塩化ナトリウムが相互に付着した凝集粒子、塩化マグネシウム粒子、及び塩化カルシウム粒子が混在しており、これらの核粒子の表面を塩化カルシウムがコーティング層として核粒子の表面を被覆している構造になっている。
[実施例5]
塩化カルシウム二水和物964.5gを精製水347.2gに溶かしたコーティング層形成用水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同条件で、コーティング粒子を得た。そして、コーティング粒子の配合量を79.0gに変更したこと以外は、実施例1と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。なお、血液透析用A剤に含まれるコーティング粒子は、塩化マグネシウムを核粒子として含み、塩化カルシウムがコーティング層として該核粒子の表面を被覆している構造になっている。
[実施例6]
塩化カルシウム二水和物900.2gを精製水324.1gに溶かしたコーティング層形成用水溶液を使用し、塩化マグネシウム六水和物の配合量を747.6gに変更したこと以外は、実施例1と同条件で、コーティング粒子を得た。そして、コーティング粒子の配合量を85.7gに変更したこと以外は、実施例1と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。血液透析用A剤に含まれるコーティング粒子は、塩化マグネシウムを核粒子として含み、塩化カルシウムがコーティング層として該核粒子の表面を被覆している構造になっている。
[実施例7]
塩化カルシウム二水和物1260.0gを精製水453.6gに溶かしたコーティング層形成用水溶液を使用し、塩化マグネシウム六水和物の配合量を498.4gに変更したこと以外は、実施例1と同条件で、コーティング粒子を得た。そして、コーティング粒子の配合量を90.7gに変更したこと以外は、実施例1と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。血液透析用A剤に含まれるコーティング粒子は、塩化マグネシウムを核粒子として含み、塩化カルシウムがコーティング層として該核粒子の表面を被覆している構造になっている。
[実施例8]
塩化カルシウム二水和物1350.0gを精製水486.0gに溶かしたコーティング層形成用水溶液を使用し、塩化マグネシウム六水和物の配合量を801.0gに変更したこと以外は、実施例1と同条件で、コーティング粒子を得た。そして、コーティング粒子の配合量を109.6gに変更したこと以外は、実施例1と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。血液透析用A剤に含まれるコーティング粒子は、塩化マグネシウムを核粒子として含み、塩化カルシウムがコーティング層として該核粒子の表面を被覆している構造になっている。
[比較例1]
塩化マグネシウム六水和物21.4g及び塩化カルシウム二水和物42.4gを精製水32.0gに溶かし、コーティング層形成用水溶液を調製した。転動流動造粒コーティング装置(製造元:パウレック株式会社、型番:MP-01)に塩化ナトリウムを1306.8g入れ、回転数480rpm、風温130℃で運転を開始し、前記コーティング層形成用水溶液の全量を塩化ナトリウムにスプレー噴霧し、表面コーティングを行い、コーティング層を形成した。スプレー噴霧後,前記条件(回転数480rpm、風温130℃)で排気温度が110℃になるまで乾燥を行い、コーティング粒子を得た。得られたコーティング粒子は、塩化ナトリウムを核粒子として含み、塩化マグネシウム及び塩化カルシウムがコーティング層として該核粒子の表面を被覆している構造になっている。
得られたコーティング粒子を114.2g採取し、水で溶解して全量を500mLとし、濃縮液を得た。濃縮液について、精製水で希釈後、液体イオンクロマトグラフィーにてナトリウムイオンの含量測定を行い、その結果を塩化ナトリウム定量値とした。塩化ナトリウム定量値は109.45gであった。塩化ナトリウム理論量(配合量から算出される値)108.90gと塩化ナトリウム定量値109.45gの比から、固体状の血液透析用A剤へのコーティング粒子の配合量(1136.4g)を決定した。そして、前記コーティング粒子1136.4g、酢酸:酢酸ナトリウムのモル比が1:1.1である酢酸及び酢酸ナトリウムの混合物52.6g、及び塩化カリウム26.1gをポリ袋に入れて混合し、固体状の血液透析用A剤を得た。
[比較例2]
塩化ナトリウム2178.0g、塩化マグネシウム六水和物35.6g、塩化カルシウム二水和物70.7g、塩化カリウム52.2g、並びに、酢酸:酢酸ナトリウムのモル比が1:1.1である酢酸及び酢酸ナトリウムの混合物105.2gをポリ袋に入れて混合し、固体状の血液透析用A剤を得た。
[血液透析用A剤に配合するコーティング粒子量の補正]
実際のコーティング粒子中の塩化マグネシウム及び塩化カルシウムは、全てが元々の水和物の形態を保ったままコーティング粒子中に存在しているわけではなく、結晶水(水和物中の水分子)の一部が乾燥されて減少しているため、得られるコーティング粒子の一部を採取してA剤に配合する際には、採取されたコーティング粒子中の成分理論量(配合量から算出される値)と実際の定量値(g)に乖離が生じ得る。そのため、前述する血液透析用A剤の製造では、透析液を調製した際にイオン濃度が目的の値となるように理論量(g)と定量値(g)の比を用い、血液透析用A剤に配合するコーティング粒子量を補正した。なお、表2の「採取量中の理論塩化マグネシウム(無水物換算)量(g)」は、コーティング粒子中の塩化マグネシウム及び塩化カルシウムのそれぞれが塩化マグネシウム六水和物、塩化カルシウム二水和物の形態で含まれているコーティング粒子と仮定して算出した値である。
Figure 0007450976000002
2.血液透析用A剤の評価
2-1.評価方法
[粒度測定]
目開き4000μm及び1700μmの篩を使用し、血液透析用A剤10gをロボットシフター(製造元:株式会社セイシン企業、型番:RPS-105)を用いて、音波強度20、音波周波数51Hz、分級時間2分、スイープ時間0.3分、パルス間隔1秒の条件で実施し、血液透析用A剤の粒度測定を行った。血液透析用A剤10gに対する目開き4000μmの篩上に残った血液透析用A剤の重量の割合を重量比(%:4000μm ON)として求めた。また、血液透析用A剤10gに対する目開き4000μmの篩上に残った血液透析用A剤の重量の割合と1700μmの篩上に残った血液透析用A剤の重量の割合の合計値を重量比(%:1700μm ON)として求めた。
[固化率(曝露保存後)]
ヨウ化カリウム119.3gと精製水100mLを混ぜ、飽和ヨウ化カリウム水溶液を調製し、直径9cmのシャーレに入れた。飽和ヨウ化カリウム水溶液が入ったシャーレをデシケータの底に入れ、デシケータの蓋をし、密閉して25℃の環境下で8時間以上待機した。なお、飽和ヨウ化カリウム水溶液と大気の蒸気圧が平衡状態の場合、大気の湿度は69%RHとなる。次いで、予め重量を量ったアルミ容器に試料(血液透析用A剤)10gを精密に量りとり、試料を載せた直径5cmのアルミ容器(アルミ容器は蓋をしていない状態)をデシケータ内に入れてデシケータの蓋をして密閉し、密閉開始から6時間後にデシケータ内からアルミ容器ごと試料を取り出し、目開き1700μmの篩に載せて篩分けを行った。篩分けは、ロボットシフター(製造元:株式会社セイシン企業、型番:RPS-105)を用いて、音波強度20、音波周波数51Hz、分級時間2分、スイープ時間0.3分、パルス間隔1秒の条件で実施した。篩分け後に血液透析用A剤10gに対する篩上に残った血液透析用A剤の重量比(%)から、保存前に行った前記粒度測定の重量比(%:1700μm ON)を差し引いた値を固化率(%)として算出した。
[固化率(包装保存後)]
血液透析用A剤1000gをポリエチレン袋(厚み0.06mm、縦250mm、横250mm)に包装後、約9kgの重りを載せた状態で40℃、75%RHの環境下で7日間保存した。保存後の血液透析用A剤全量を、自然落下にて目開き4000μmの篩に通過させ、篩上に残った固化物と篩の通過分をそれぞれ計量した。その合計(篩上に残った固化物と篩の通過分)に対する篩上に残った固化物の重量比(%)から、保存前に行った前記粒度測定の重量比(%:4000μm ON)を差し引いた値を固化率(%)として算出した。
2-2.評価結果
実施例1~8及び比較例1の各血液透析用A剤について、コーティング粒子中の塩化マグネシウムに対するコーティング粒子中の塩化カルシウムの比率、コーティング粒子中の塩化マグネシウムに対するコーティング粒子中の塩化ナトリウム(第1の塩化ナリウム)の比率、並びに血液透析用A剤中の全塩化ナトリウム(第1の塩化ナトリウムと第2の塩化ナトリウムの合計量)に対するコーティング粒子中の塩化ナトリウム(第1の塩化ナトリウム)の比率の理論値(配合量から算出される値)を表3に示す。また、実施例1~8及び比較例1~2の血液透析用A剤を表4の「350Lに溶解させるA剤量(g)」の欄に記載の量を水で溶解して全量350Lとして透析液を調整した場合のナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、及び酢酸の理論濃度(配合量から算出される値)を表4に示す。
Figure 0007450976000003
Figure 0007450976000004
また、各血液透析用A剤の粒度、曝露保存後の固化率、及び包装保存後の固化率を評価した結果について表5に示す。
塩化マグネシウムを核粒子として含み、塩化カルシウムがコーティング層として該核粒子の表面を被覆しているコーティング粒子を含有する血液透析用A剤(実施例1及び5~8)は、固化率が低く、優れた貯蔵安定性を有していた。また、塩化マグネシウム及び塩化ナトリウムを核粒子として含み、塩化カルシウムがコーティング層として該核粒子の表面を被覆しているコーティング粒子を含有する血液透析用A剤(実施例2~4)でも、実施例1及び5~8と同様に、固化率が低く、更に優れた貯蔵安定性を有していた。これに対して、塩化ナトリウムを核粒子として、その表面に塩化カルシウム及び塩化マグネシウムがコーティング層として被覆しているコーティング粒子を含む血液透析A用剤(比較例1)では、固化率が高く、貯蔵安定性が悪かった。また、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムが単に混合された状態で含まれる血液透析用剤(比較例2)でも、固化率が高く、更に貯蔵安定性が悪い結果であった。以上の結果から、塩化マグネシウムを含む核粒子の表面が塩化カルシウムを含むコーティング層で被覆されているコーティング粒子を含有する血液透析用A剤は、優れた貯蔵安定性を有することが確認された。また、実施例1~8の血液透析用A剤は、固化率が低いため、透析液調整のために水を添加し、血液透析液を溶解する際の溶解性不良が起こり難いと考えられる。
Figure 0007450976000005
試験例2:酢酸及びブドウ糖を含む血液透析用剤の製造及び評価
1.血液透析用剤の製造
[実施例9]
固体状の血液透析用A剤を得る際に、ポリ袋にブドウ糖525.0gを追加して混合したこと以外は、実施例1と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。
[実施例10]
固体状の血液透析用A剤を得る際に、ポリ袋にブドウ糖525.0gを追加して混合したこと以外、実施例5と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。
[実施例11]
固体状の血液透析用A剤を得る際に、ポリ袋にブドウ糖525.0gを追加して混合したこと以外、実施例6と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。
[実施例12]
固体状の血液透析用A剤を得る際に、ポリ袋にブドウ糖525.0gを追加して混合したこと以外、実施例7と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。
[実施例13]
固体状の血液透析用A剤を得る際に、ポリ袋にブドウ糖525.0gを追加して混合したこと以外、実施例8と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。
[比較例3]
比較例1と同様の方法で新たにコーティング粒子を作製した。そして、比較例1と同様の方法で固体状の血液透析用A剤へのコーティング粒子の配合量(1130.3g)を決定し、前記コーティング粒子1130.3gと、酢酸:酢酸ナトリウムのモル比が1:1.1である酢酸及び酢酸ナトリウムの混合物52.6g、塩化カリウム26.1g、及びブドウ糖262.5gをポリ袋に入れて混合し、固体状の血液透析用A剤を得た。表6に、固体状の血液透析用A剤へのコーティング粒子の配合量の決定の根拠とした塩化マグネシウムの理論量(g)と定量値(g)を示す。
Figure 0007450976000006
[比較例4]
固体状の血液透析用A剤を得る際に、ポリ袋にブドウ糖525.0gを追加して混合したこと以外、比較例2と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。
2.血液透析用A剤の評価
2-1.評価方法
[粒度測定、固化率(曝露保存後)、及び固化率(包装保存後)]
前記試験例1と同条件で、粒度測定、6時間曝露保存後の固化率、及び7日間包装保存後の固化率を測定した。
[5-HMF]
製造直後の血液透析用A剤を表7の「分量(g)」欄に記載の量を採取し、水に溶かして全量を500mLとした。この液を分光光度計(製造元:株式会社島津製作所、型番:V-660)を用いて、対照液を水、検出波長284nm、固定波長法の設定条件で吸光度を測定し、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)量を求めた(保存開始時)。また、7日間包装保存後の固化率の測定後に、篩上に残った固化物全量と篩の通過分全量を一つのポリ袋に入れて1分間混合した後に、前記と同条件で吸光度を測定し、5-HMF量を求めた(7日間包装保存後)。なお5-HMFは、ブドウ糖の分解物である。
Figure 0007450976000007
2-2.評価結果
実施例9~13及び比較例3の血液透析用A剤について、コーティング粒子中の塩化マグネシウムに対するコーティング粒子中の塩化カルシウムの比率、コーティング粒子中の塩化マグネシウムに対するコーティング粒子中の塩化ナトリウム(第1の塩化ナリウム)の比率、並びに血液透析用A剤中の全塩化ナトリウム(第1の塩化ナトリウムと第2の塩化ナトリウムの合計量)に対するコーティング粒子中の塩化ナトリウム(第1の塩化ナトリウム)の比率の理論値(配合量から算出される値)を表8に示す。また、各血液透析用A剤を表8の「350Lに溶解させるA剤量(g)」の欄に記載の量を水で溶解して全量350Lとして透析液を調整した場合のナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、酢酸、及びブドウ糖の理論濃度(配合量から算出される値)を表9に示す。
Figure 0007450976000008
Figure 0007450976000009
また、各血液透析用A剤の粒度、曝露保存後の固化率、包装保存後の固化率、及び5-HMFを評価した結果について表10に示す。
塩化マグネシウムを核粒子として含み、塩化カルシウムがコーティング層として該核粒子の表面を被覆しているコーティング粒子を含有する血液透析用A剤(実施例9~13)は、固化率が低く、更に5-HMFの増加幅も小さく、ブドウ糖の分解が十分に抑制されていた。これに対して、塩化ナトリウムを核粒子として、その表面に塩化カルシウム及び塩化マグネシウムがコーティング層として被覆しているコーティング粒子を含む血液透析A用剤(比較例3)では、固化率及び5-HMFの増加幅が大きく、貯蔵安定性が悪かった。また、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムが単に混合された状態で含まれる血液透析用剤(比較例4)でも、固化率及び5-HMFの増加幅が大きく、更に貯蔵安定性が悪い結果であった。以上の結果からも、塩化マグネシウムを含む核粒子の表面が塩化カルシウムを含むコーティング層で被覆されているコーティング粒子を含有する血液透析用A剤は、優れた貯蔵安定性を有することが確認された。また、実施例9~13の血液透析用A剤は、固化率が低いため、透析液調整のために水を添加し、血液透析用剤を溶解する際の溶解性不良が起こり難いと考えられる。
Figure 0007450976000010
試験例3:クエン酸及びブドウ糖を含む血液透析用剤の製造及び評価
1.血液透析用剤の製造
[実施例14]
実施例1で得られたコーティング粒子86.9g、塩化ナトリウム2178.0g、クエン酸56.0g、塩化カリウム52.2g及びブドウ糖525.0gをポリ袋に入れて混合し、固体状の血液透析用A剤を得た。
[実施例15]
塩化カルシウム二水和物919.1gを精製水330.9gに溶かし、第1のコーティング層形成用水溶液を調製した。これとは別に、クエン酸三ナトリウム195.7gを精製水234.8gに溶かし、第2コーティング層形成用水溶液を調製した。転動流動造粒コーティング装置(製造元:パウレック株式会社、型番:MP-01)に塩化マグネシウム六水和物462.8gを入れ、回転数250rpm、風温130℃で運転を開始した。5分後に回転数を50rpmに変更し、20分乾燥させた後、運転条件を回転数480rpm、風温130℃に変更し、前記第1コーティング層形成用水溶液の全量を塩化マグネシウムにスプレー噴霧した。次いで、回転数を750rpmに変更して10分乾燥させた後、前記第2コーティング層形成用水溶液の全量をスプレー噴霧し、コーティング層を形成した。スプレー噴霧後、回転数750rpm、風温130℃で10分間乾燥を行い、コーティング粒子を得た。得られたコーティング粒子の殆どは、塩化マグネシウムを核粒子として含み、塩化カルシウムが第1コーティング層として該核粒子の表面を被覆し、該第1コーティング層の表面に第1のクエン酸三ナトリウムを含む第2コーティング層が形成された構造であると類推される。
前記実施例1に示す手法で、塩化マグネシウムの理論量(g)と定量値(g)から、固体状の血液透析用A剤へのコーティング粒子の配合量(90.2g)を決定した。そして、前記コーティング粒子90.2gと、第2のクエン酸56.0g、塩化ナトリウム2178.0g、塩化カリウム52.2g及びブドウ糖525.0gをポリ袋に入れて混合し、固体状の血液透析用A剤を得た。
[実施例16]
クエン酸三ナトリウム313.2gを精製水375.8gに溶かした第2コーティング層形成用水溶液を使用したこと、及び第1コーティング層形成用水溶液の噴霧終了後の乾燥時間を12分にしたこと以外は、実施例15と同条件で、コーティング粒子を作製した。そして、コーティング粒子の配合量を100.8gに変更したこと以外は、実施例15と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。なお、血液透析用A剤に含まれるコーティング粒子は、実施例15と同じ構造と類推される。
[実施例17]
固体状の血液透析用A剤を得る際に、ポリ袋に第2のクエン酸三ナトリウム15.1gを追加して混合したこと以外は、実施例14と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。
[実施例18]
固体状の血液透析用A剤を得る際に、ポリ袋に第2のクエン酸三ナトリウム24.1gを追加して混合したこと以外、実施例14と同条件で、固体状の血液透析用A剤を得た。
[比較例5]
比較例1と同様の方法で新たにコーティング粒子を作製した。そして、比較例1と同様の方法で固体状の血液透析用A剤へのコーティング粒子の配合量(1134.6g)を決定し、前記コーティング粒子1134.6gと、クエン酸28.0g、塩化カリウム26.1g、及びブドウ糖262.5gをポリ袋に入れて混合し、固体状の血液透析用A剤を得た。
[比較例6]
塩化ナトリウム2178.0g、塩化マグネシウム六水和物35.6g、塩化カルシウム二水和物70.7g、塩化カリウム52.2g、クエン酸56.0g、並びに、ブドウ糖525.0gをポリ袋に入れて混合し、固体状の血液透析用A剤を得た。
[血液透析用A剤に配合するコーティング粒子量の補正]
表11に、実施例15~16及び比較例6において、固体状の血液透析用A剤へのコーティング粒子の配合量の決定の根拠とした塩化マグネシウムの理論量(g)と定量値(g)を示す。
Figure 0007450976000011
2.血液透析用A剤の評価
2-1.評価方法
前記試験例1と同条件で、粒度測定、6時間曝露保存後の固化率、及び7日間包装保存後の固化率を測定した。また、前記試験例2と同条件で、保存開始と7日間包装保存後の5-HMF量を測定した。なお、5-HMF量の測定において、血液透析用A剤の採取量(500mL中に溶解させた血液透析用A剤の量)は表12に記載の通りである。
Figure 0007450976000012
2-2.評価結果
実施例14~18及び比較例5の血液透析用A剤について、コーティング粒子中の塩化マグネシウムに対するコーティング粒子中の塩化カルシウムの比率、コーティング粒子中の塩化マグネシウムに対するコーティング粒子中の塩化ナトリウム(第1の塩化ナリウム)の比率、並びに血液透析用A剤中の全塩化ナトリウム(第1の塩化ナトリウムと第2の塩化ナトリウムの合計量)に対するコーティング粒子中の塩化ナトリウム(第1の塩化ナトリウム)の比率の理論値(配合量から算出される値)を表13に示す。また、各血液透析用A剤を表14の「350Lに溶解させるA剤量(g)」の欄に記載の量を水で溶解して全量350Lとして透析液を調整した場合のナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、クエン酸、及びブドウ糖の理論濃度(配合量から算出される値)を表14に示す。
Figure 0007450976000013
Figure 0007450976000014
また、各血液透析用A剤の粒度、曝露保存後の固化率、包装保存後の固化率及び5-HMFを評価した結果について表15に示す。
クエン酸を含む血液透析用A剤であっても、塩化マグネシウムを核粒子として含み、塩化カルシウムがコーティング層として該核粒子の表面を被覆しているコーティング粒子を含有する場合(実施例14~18)では、固化率が低く、保存による5-HMFの生成を抑制できており、優れた貯蔵安定性を有していた。なお、実施例14は、実施例15~18と比べると5-HMFの増加幅が大きくなっていたが、この要因は、塩基性成分であるクエン酸三ナトリウムを含んでいないことによるものと考えられる。実施例14は、クエン酸三ナトリウムを含まない比較例5及び6に比べて、5-HMFの増加幅が小さく、ブドウ糖の分解抑制効果が高いことが分かる。以上の結果から、クエン酸を含む血液透析用A剤であっても、塩化マグネシウムを含む核粒子の表面が塩化カルシウムを含むコーティング層で被覆されているコーティング粒子を含有する場合には、優れた貯蔵安定性を有することが確認された。また、実施例14~18の血液透析用A剤は、固化率が低いため、透析液調整のために水を添加し、血液透析用剤を溶解する際の溶解性不良が起こり難いと考えられる。
Figure 0007450976000015
試験例4:血液透析用剤の製造及び含量均一性の評価
1.血液透析用剤の製造
[実施例19]
塩化カルシウム二水和物1003.4gを精製水361.2gに溶かし、コーティング層形成用水溶液を調製した。転動流動造粒コーティング装置(製造元:パウレック株式会社、型番:MP-01)に塩化マグネシウム六水和物640.4gを入れ、回転数50rpm、風温50℃で運転を開始した。3分後に風温80℃に変更して3分間乾燥した。次いで風温110℃で3分間乾燥した後に風温130℃で4分間乾燥した。乾燥後、運転条件を回転数480rpm、風温130℃の条件で、前記コーティング層形成用水溶液の全量を塩化マグネシウムにスプレー噴霧し、コーティング層を形成した。スプレー噴霧後、前記条件(回転数480rpm、風温130℃)で5分間乾燥を行い、コーティング粒子を得た。得られたコーティング粒子は、塩化マグネシウムを核粒子として含み、塩化カルシウムがコーティング層として該核粒子の表面を被覆している構造になっている。
前記実施例1に示す手法で、塩化マグネシウムの理論量(g)と定量値(g)から、固体状の血液透析用A剤へのコーティング粒子の配合量(81.1g)を決定した。そして、前記コーティング粒子81.1g、塩化ナトリウム2178.0g、塩化カリウム52.2g,酢酸:酢酸ナトリウムのモル比が1:1.1である酢酸及び酢酸ナトリウムの混合物105.2g、及びブドウ糖525.0gをV型混合機(製造元:株式会社入江商会、型番:VK-5)に入れて15分間混合し、固体状の血液透析用A剤を得た。
[実施例20]
実施例16と同様の方法で新たにコーティング粒子を作製した。前記実施例1に示す手法で、塩化マグネシウムの理論量(g)と定量値(g)から、固体状の血液透析用A剤へのコーティング粒子の配合量(100.8g)を決定した。そして、前記コーティング粒子100.8g、塩化ナトリウム2178.0g、塩化カリウム52.2g、クエン酸56.0g、及びブドウ糖525.0gをV型混合機(製造元:株式会社入江商会、型番:VK-5)に入れて15分間混合し、固体状の血液透析用A剤を得た。
[実施例21]
実施例1と同様の方法で新たにコーティング粒子を作製した。前記実施例1に示す手法で、塩化マグネシウムの理論量(g)と定量値(g)から、固体状の血液透析用A剤へのコーティング粒子の配合量(77.4g)を決定した。そして、前記コーティング粒子77.4g、塩化ナトリウム2178.0g、塩化カリウム52.2g、クエン酸三ナトリウム24.1g、クエン酸56.0g、及びブドウ糖525.0gをV型混合機(製造元:株式会社入江商会、型番:VK-5)に入れて15分間混合し、固体状の血液透析用A剤を得た。
[血液透析用A剤に配合するコーティング粒子量の補正]
表16に、実施例19~21において、固体状の血液透析用A剤へのコーティング粒子の配合量の決定の根拠とした塩化マグネシウムの理論量(g)と定量値(g)を示す。
Figure 0007450976000016
2.血液透析用A剤の含量均一性の評価
2-1.評価方法
血液透析用A剤から表17の「1回で溶解させた分量(g)」の欄に記載の量り採り、水に溶かして全量を2000mLとして、各成分が表18に記載の理論濃度(配合量から算出される値)となる血液透析用A剤の濃縮液を調製した。この濃縮液の製造操作を3回ずつ行い、3つの濃縮液(n1~n3)を準備した。各濃縮液について液体イオンクロマトグラフィー測定により、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、酢酸イオン、クエン酸及びブドウ糖の濃度の測定を行った。各濃縮液における各成分の理論濃度を100とし、各濃縮液で測定された各成分の濃度の割合(%)を算出した。
Figure 0007450976000017
2-2.評価結果
実施例19~21の血液透析用A剤について、コーティング粒子中の塩化マグネシウムに対するコーティング粒子中の塩化カルシウムの比率の理論値(配合量から算出される値)を表18に示す。また、実施例19~21の血液透析用A剤を表19の「350Lに溶解させるA剤量(g)」の欄に記載の量を水で溶解して全量350Lとして透析液を調整した場合のナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの理論濃度(配合量から算出される値)を表19に示す。
Figure 0007450976000018
Figure 0007450976000019
また、実施例19~21の血液透析用A剤の含量均一性の結果を表20及び21に示す。いずれの血液透析用A剤でも、3回作製した濃縮液の成分の濃度が一定しており、含量均一性の点でも優れていることが確認された。
Figure 0007450976000020
Figure 0007450976000021

Claims (14)

  1. 塩化カルシウムを含むコーティング層を有するコーティング粒子を含む固体状の血液透析用A剤であり、
    前記コーティング粒子の核粒子として、少なくとも塩化マグネシウムを含む、
    固体状の血液透析用A剤。
  2. 前記コーティング層が、塩化マグネシウムを実質的に含まない、請求項1に記載の血液透析用A剤。
  3. 前記コーティング粒子の核粒子として更に第1の塩化ナトリウムを含む、請求項1又は2に記載の血液透析用A剤。
  4. 前記コーティング層が、更に第1の塩化カリウムを含む、請求項1又は2に記載の血液透析用A剤。
  5. 前記コーティング層が、更に第1のクエン酸及び/又はその塩を含む、請求項1又は2に記載の血液透析用A剤。
  6. 更に、前記コーティング粒子とは別に、第2の塩化ナトリウムを含む、請求項1又は2に記載の血液透析用A剤。
  7. 更に、前記コーティング粒子とは別に、第2の塩化カリウムを含む、請求項1又は2に記載の血液透析用A剤。
  8. 更に酢酸及び酢酸塩を含む、請求項1又は2に記載の血液透析用A剤。
  9. 更に、前記コーティング粒子とは別に、第2のクエン酸及び/又はその塩を含む、請求項1又は2に記載の血液透析用A剤。
  10. 更にブドウ糖を含む、請求項1又は2に記載の血液透析用A剤。
  11. 請求項1又は2に記載の血液透析用A剤と、重炭酸ナトリウムを含む血液透析用B剤とを含む、重炭酸型の血液透析用剤。
  12. 以下の第1工程及び第2工程を含む、固体状の血液透析用A剤の製造方法:
    塩化マグネシウムに対して、塩化カルシウムを溶解させたコーティング層形成用水溶液を噴霧することによりコーティング粒子を得る第1工程、及び
    前記第1工程で得られたコーティング粒子を配合して、固体状の血液透析用A剤を製造する第2工程。
  13. 前記第1工程が、(1)塩化マグネシウムに対して、塩化カルシウムを溶解させたコーティング層形成用水溶液、及び塩化カリウムを溶解させたコーティング層形成用水溶液を任意の順で噴霧することにより、コーティング粒子を得る工程、又は(2)塩化マグネシウムに対して、塩化カルシウム及び塩化カリウムを溶解させたコーティング層形成用水溶液を噴霧することによりコーティング粒子を得る工程である、請求項12に記載の製造方法。
  14. 前記第1工程が、(1)塩化マグネシウムに対して、塩化カルシウムを溶解させたコーティング層形成用水溶液、及びクエン酸及び/又はその塩を溶解させたコーティング層形成用水溶液を任意の順で噴霧することにより、コーティング粒子を得る工程、又は(2)塩化マグネシウムに対して、塩化カルシウムとクエン酸及び/又はその塩とを溶解させたコーティング層形成用水溶液を噴霧することによりコーティング粒子を得る工程である、請求項12に記載の製造方法。
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