JP7445116B2 - 厚鋼板 - Google Patents
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Description
また、特許文献2では、レーザー切断性を向上させるためには、デスケーリングの回数や圧延終了温度を規定することで、スケールの表面粗さが小さく、外観は黒色を呈する、鋼板を製造すること、が教示されている。なお、特許文献2では、デスケーリングを1回以上実施すればスケール厚さは粉砕されない程度に薄くなり良好なスケール性状が得られると教示しているが、具体的なスケール厚さは開示されていない。
結局のところ、特許文献1~2のいずれにおいても、スケール組織の具体的な構造及びそれが鋼板に対するスケールの密着性に及ぼす影響については必ずしも十分な検討がなされておらず、それゆえ当該特許文献1~2に記載の鋼板では、そのレーザー切断性について依然として改善の余地があった。
(1)0.10質量%以上でCの含有質量%以上のSiを含有する地金と、前記地金の表面に厚さ20~60μmのスケールとを有し、
前記スケールは、前記地金と隣り合ってFe-Si酸化物層を含み、前記Fe-Si酸化物層の平均厚さが1.0μm以上であり、前記Fe-Si酸化物層中のSiの質量%の平均が1.0%以上であることを特徴とする、厚鋼板。
(2)6mm以上35mm以下の厚さを有することを特徴とする、上記(1)に記載の厚鋼板。
(3)レーザー切断用であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の厚鋼板。
本発明の熱間圧延厚鋼板は、0.10質量%以上でCの含有質量%以上のSiを含有する地金と、前記地金の表面に平均厚さ20~60μmのスケールとを有し、
前記スケールは、前記地金と隣り合ってFe-Si酸化物層を含み、前記Fe-Si酸化物層の平均厚さが1.0μm以上であり、前記Fe-Si酸化物層中のSiの質量%の平均が1.0%以上であることを特徴とすることを特徴としている。
スケールの(地金への)密着力は、前述のように、地金と隣り合って形成されるFe-Si酸化物によって実現され、地金中のSi含有量が多いほど密着力は高まる。一方、スケールを剥離しようとする力は、地金中に含まれるCがCOまたはCO2ガスとなり、地金から抜けるときのガス圧力に起因する。そのため、地金中のC量が多い場合や、加工温度が高い場合に、ガス圧力が増加し、スケールを剥離しようとする力が大きくなる。
このように発生するガス圧力に対して、スケールの密着力が上回っていれば、スケールの剥離は発生しない。すなわち、地金中のC含有量を減少させ、かつSi含有量を増加することが重要となる。
本発明によれば、地金としては、一般にレーザー切断等の用途において使用される任意の化学組成を有する地金であってよく、特に限定されない。しかしながら、レーザー切断が鋼構造物の製造において多用されている点を考慮すると、本発明における地金は、より汎用的な化学組成を有する地金、例えば、質量%で、C:0.05~0.20%、Si:0.10~0.60%、Mn:0.5~2.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、N:0.01%以下を基本成分として含み、残部がFeおよび不純物で構成されるものであってよい。ここで、不純物とは、厚鋼板を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明の厚鋼板に対して意図的に添加した成分でないものを意味する。
本発明では、地金の化学組成は上記の範囲であることに加えて、Si含有量は、0.10質量%以上、望ましくは0.20%以上0.60質量%以下とし、かつ、Cの含有量以上、望ましくはCの含有量の1.5倍以上、より望ましくは2.0倍以上とする。
Si含有量を0.10質量%以上とするのは、Si含有量が0.10質量%未満では、所望の厚みのFe-Si酸化物層が得られず、十分なスケールの密着力が得られないからである。
また、Si含有量をCの含有量以上とするのは、鋼板中のC量が多い場合や、レーザー切断や圧延により地金(鋼板)の温度が高くなった場合に、スケール/地金界面でのCOやCO2ガス圧力が上昇し、スケールの剥離が発生しやすくなるからである。このガス圧力に対抗してスケールを強固に密着させ、スケール剥離を抑止するため、鋼板中のC含有量以上にSiを含有させる。
本発明によれば、上記地金の表面に形成されるスケールの平均厚さは20~60μmである。ここで、スケールの厚さとは、Fe酸化物とFe-Si酸化物の合計の厚さを指す。レーザー切断においては、スケールはレーザー切断の際の地金発熱を安定させ、安定した切断を実現する役割を果たすため、20μm以上の厚さが必要である。スケールが厚くなるとスケールは剥離しやすくなるが、本発明においては特定のFe-Si酸化物層が顕著に生成していることによって、20μm以上の厚いスケールであっても高い密着性を担保できる。ただし、スケール厚が60μmを超えると、本発明に係る特定のFe-Si酸化物層があったとしても、十分な密着性を担保できずに剥離しやすいスケールとなり、良好なレーザー切断性を得られないことがある。したがって、本発明において必要なスケールの平均厚さの範囲を20~60μm、好ましくは30~60μm、より好ましくは40~60μm、さらに好ましくは50~60μmとする。
本発明によれば、スケールは、地金と隣り合ってFe-Si酸化物層を含み、当該Fe-Si酸化物層の平均厚さが1.0μm以上であり、当該Fe-Si酸化物層中のSiの質量%の平均が1.0%以上である。
本発明の厚鋼板は、レーザー切断が適用可能な任意の厚さを有することができ、特に限定されないが、一般的には6mm以上35mm以下の厚さを有し、好ましくは16mm以上25mm以下の厚さを有する。
本発明の厚鋼板は、上記のとおり、スケールの密着性が高くそれゆえレーザー切断性に優れるため、造船、建築、産業機械、橋梁等の鋼構造物に使用される厚鋼板であって、レーザー切断が利用可能な厚鋼板として有用である。
次に、本発明の厚鋼板の好ましい製造方法について説明する。以下の説明は、本発明の厚鋼板を製造するための特徴的な方法の例示を意図するものであって、本発明の厚鋼板を以下に説明するような製造方法によって製造されるものに限定することを意図するものではない。
厚鋼板は、およそ1000~1200℃で加熱した後、熱間圧延によって製造される。圧延工程では、加熱されたスラブが1台または2台の圧延機によって所定の厚さまで繰り返し圧延される。
スケールは、熱間圧延された厚鋼板が大気中で酸化されることで鋼板表面上に形成され、地金表面と隣り合って形成されるFe-Si酸化物層を含む。十分な量(厚さ)のスケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層を形成するために、最終圧延温度は、850~1000℃の範囲、望ましくは900℃~1000℃の範囲、より望ましくは950℃~1000℃の範囲とする。圧延終了温度が850℃未満となるとスケール成長が十分でなく、また1000℃を超えることは材質の観点から適さない。最終圧延温度とは、最終パス時に圧延機近傍に設置された放射温度計によって計測される鋼板温度を指す。
また、スケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層の量(厚さ)は、熱間圧延時間や圧延回数に応じて変化する。一般に、高温である時間が長いほど、鋼板表面の酸化は進行し、スケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層の量(厚さ)は大きくなる。例えば、熱間圧延の時間は、60~200秒程度であってもよい。熱間圧延の時間が短すぎると、スケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層が十分に形成されないおそれがあり、長すぎると、過剰にスケールが形成され、剥離しやすくなる。
さらに、スケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層の量(厚さ)は、熱間圧延回数(パス回数)に応じて変化する。圧延回数(パス回数)が増えると、圧延により鋼板が薄くなるように、スケールも薄くなる。一方で、圧延回数が増えると、地金からスケールへのSiの拡散が進行し、Fe-Si酸化物層の生成、成長に資すると考えられる。例えば、熱延のパス回数をおよそ15~20回としてもよい。パス回数が少ないと、十分なFe-Si酸化物層を得られないことがあり、多すぎると十分な量(厚さ)のスケールが得られないおそれがある。
圧延工程において、地金の表面にはスケールが生成する。厚いスケールを含むスラブをそのまま圧延するとスケールの押し込みによる表面疵や反りなどの形状不良が生じる恐れがある。そのため、一般には、スラブが圧延機に噛みこまれる直前で高圧水を噴射して、スケールを除去(デスケーリング)してから圧延を行なう。高圧水は、一般に吐出圧10~15MPaで噴射されるが、本発明において特に限定しない。
本発明では、十分な量(厚さ)のスケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層を得るために、高圧水デスケーリングを適用しない圧延パスを設けてもよい。デスケーリングを適用しない圧延パス回数が多いほど、スケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層は成長すると考えられ、例えば10パス以上の圧延でデスケーリングを行なわないことにしてもよい。また、最終製品(熱間圧延厚鋼板)に十分な量(厚さ)のスケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層を存在させるためには、圧延工程に含まれる複数の圧延パスのうち後半の圧延パス、例えば最終パスや最終パスを含めた複数回のパスで、デスケーリングを適用しないことが好ましい。このように、デスケーリングを実施しない圧延を適用することによって、圧延終了後にFe酸化物層と地金の間で本発明にかかる顕著なFe-Si酸化物層を形成させ、高いスケール密着性を有する熱間圧延厚鋼板を製造できる。
0%:◎
0%超~5%以下:○
5%超~20%以下:△
20%超:×
レーザー出力:4500W
周波数:500Hz
デューティ:75%
アシストガス圧力:0.027MPa
切断速度:750mm/分
0個/m以下: ◎
1個/m超~10個/m以下: ○
10個/m超~20個/m以下:△
20個/m超: ×
条件GではSiの添加量が十分でない(0.10質量%未満)ためにFe-Si酸化物層にSiが濃化されなかった(1.0質量%未満)。そのため、スケールの密着性が十分でなく、レーザー切断性は良好ではなかった(△)。
条件Hおよび条件Iでは十分にスケールおよびFe-Si酸化物層が形成されなかった。これらによって、条件HおよびIでは表面性状、レーザー切断性ともに優れなかった。
2 地金
3 Fe-Si酸化物
4 Fe酸化物
5 スケール
Claims (3)
- 0.10質量%以上でCの含有質量%以上のSiを含有する地金と、前記地金の表面に厚さ20~60μmの酸化スケールとを有し、
前記酸化スケールは、前記地金と隣り合ってFe-Si酸化物層を含み、前記Fe-Si酸化物層の平均厚さが1.0μm以上であり、前記Fe-Si酸化物層中のSiの質量%の平均が1.0%以上であることを特徴とする、厚鋼板。 - 6mm以上35mm以下の厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の厚鋼板。
- レーザー切断用であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の厚鋼板。
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