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JP7443567B2 - キャピラリアレイ電気泳動装置 - Google Patents

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JP7443567B2 JP2022569651A JP2022569651A JP7443567B2 JP 7443567 B2 JP7443567 B2 JP 7443567B2 JP 2022569651 A JP2022569651 A JP 2022569651A JP 2022569651 A JP2022569651 A JP 2022569651A JP 7443567 B2 JP7443567 B2 JP 7443567B2
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Description

本開示は、キャピラリアレイ電気泳動装置に関する。
複数本の、石英ガラス製のキャピラリに、電解質溶液、あるいは高分子ゲルやポリマを含む電解質溶液等の電気泳動分離媒体を充填し、並列に電気泳動分析を行うキャピラリアレイ電気泳動装置が広く用いられている。従来の1本のキャピラリを用いるキャピラリ電気泳動装置と比較して、キャピラリアレイ電気泳動装置は分析スループットを向上することができるだけでなく、サンプルあたりの分析コストを低減することが可能である。最も広く用いられているキャピラリアレイ電気泳動装置は、Thermo Fisher Scientific社から販売されている3500シリーズジェネティックアナライザ、および3730シリーズジェネティックアナライザである。3500シリーズジェネティックアナライザでは8本または24本のキャピラリの並列電気泳動分析が可能であり、3730シリーズジェネティックアナライザでは48本または96本のキャピラリの並列電気泳動分析が可能である。いずれの場合も、複数本のキャピラリのレーザ照射部(キャピラリアレイにおいてレーザが照射される部分)が、ポリイミド被覆が除去された状態で同一平面上に配列されている。この同一平面を配列平面、複数のキャピラリの配列をキャピラリアレイと呼ぶ。キャピラリアレイがN本のキャピラリで構成されるとき、各キャピラリに1~Nのキャピラリ番号を端から配列順に付ける。電気泳動の最中に、レーザビームを配列平面の側方より導入することで、複数本のキャピラリが同時に照射され、これによって誘起される各キャピラリから発光蛍光が分光され、同時に検出される。レーザビームを配列平面の側方より入射して複数本のキャピラリを同時照射する方法はマルチフォーカス法と呼ばれ、特許文献1に詳しく説明されている。マルチフォーカス法では、各キャピラリを凸レンズとして作用させ、レーザビームを配列平面に沿って繰り返し集光させ、キャピラリアレイ中を進行させることによって、複数本のキャピラリの同時照射を可能としている。これにより、キャピラリ本数と同じ数のサンプルのDNAシーケンス、あるいはDNAフラグメント解析を並列に行うことができる。特許文献1に記されているように、複数本のキャピラリのレーザ照射部において、キャピラリの外半径をR(外径は2R)、内半径をr(内径は2r)、キャピラリの素材の屈折率をn2とし、キャピラリの外部の媒体の屈折率をn1、キャピラリの内部の媒体(分離媒体)の屈折率をn3、レーザビームの入射位置と配列平面の距離をx(≦r)とし、x=r/2とするとき、レーザビームが1本のキャピラリを透過する際の屈折角は、式(1)で表される。
Figure 0007443567000001
各キャピラリは、Δθ>0のとき凹レンズ、Δθ<0のとき凸レンズとして作用する。Δθ<0となる条件にすることによって、マルチフォーカスが機能し、複数のキャピラリのレーザビームによる同時照射が可能となる。逆に、Δθ>0となる条件にすると、マルチフォーカスは機能せず、レーザビームが配列平面から発散するため、複数のキャピラリのレーザビームによる同時照射が不可能となる。一般に、キャピラリの素材は石英ガラスであり、n2=1.46で固定である。式(1)より、各キャピラリの凸レンズ作用を強める(凹レンズ作用を弱める)ためには、n1は小さい程、n3は大きい程、良いことが分かる。逆に、n1は大きい程、n3は小さい程、各キャピラリの凹レンズ作用が強まる。
マルチフォーカスが機能する場合においても、キャピラリ外部の媒体とキャピラリの界面、およびキャピラリ内部の媒体とキャピラリの界面におけるレーザビームの反射ロスによって、レーザビームがキャピラリアレイ中を進行するのに従ってその強度が減衰し、得られる蛍光強度もそれに応じて減衰する。蛍光強度がキャピラリ間で大きく異なると、複数のサンプルを同等条件で分析することができなくなるため不都合である(尚、後述の実施形態では信号強度の代表として蛍光強度を取り扱うが、蛍光強度以外の信号強度、例えば散乱強度や吸光度であっても良い。)。そこで、3500シリーズジェネティックアナライザ、および3730シリーズジェネティックアナライザにおいては、1個のレーザ光源から発振されたレーザビームを2本に分割し、2本のレーザビームを配列平面の両側方から入射させ、それぞれについてマルチフォーカスが機能するようになされている。このようにすることによって、配列平面の一方から入射されたレーザビームの強度と、配列平面の他方から入射されたレーザビームの強度の合計が均一化されるようにされている。レーザビームを配列平面の一側方からのみ入射させる構成を片側照射、レーザビームを配列平面の両側方から入射させる構成を両側照射と呼ぶ。片側照射でも、両側照射でも、マルチフォーカスが機能するか、機能しないかは共通である。キャピラリアレイがN本のキャピラリで構成されるとき、片側照射の場合は、レーザビームを入射する側の端のキャピラリのキャピラリ番号を1、レーザビームが出射する側の端のキャピラリのキャピラリ番号をNとする。両側照射の場合は、どちらか一方の端のキャピラリのキャピラリ番号を1、反対側の端のキャピラリのキャピラリ番号をNとする。
3500シリーズジェネティックアナライザ、および3730シリーズジェネティックアナライザで行われるDNAシーケンス、あるいはDNAフラグメント解析では、サンプルに含まれるDNA断片が1本鎖状態で電気泳動分離されるようにするため、分離媒体に変性剤であるウレアが高濃度に含まれるポリマ溶液が用いられる。実際、3500シリーズジェネティックアナライザ、および3730シリーズジェネティックアナライザ用に販売されている分離媒体であるPOP-4、POP-6、およびPOP-7にはいずれも8 Mのウレアが含まれている。水の屈折率が1.33であるのに対して、8 Mのウレアが含まれる上記のポリマ溶液の屈折率はn3=1.41に上昇している。これは、各キャピラリの凸レンズ作用を強めることになり、マルチフォーカスに有利な条件になっている。
特許文献1に基づく構成により、3500シリーズジェネティックアナライザでは、外径2R=323 μm、内径2r=50 μmの複数本のキャピラリのレーザ照射部が空気中に配置されている。つまり、n1=1.00である。このとき、上記式(1)より、Δθ=-1.3°となり、各キャピラリが凸レンズ作用を有することが分かる。このため、マルチフォーカスが機能して、8本または24本のキャピラリのレーザビームによる同時照射が可能となっている。しかしながら、当該構成では、キャピラリ外部の空気層と、キャピラリ(石英ガラス)の界面におけるレーザビームの反射ロスが大きいため、同時照射可能なキャピラリ本数が24本程度までになっている。
そこで、特許文献2に示されている構成によって、同時照射可能なキャピラリ本数を増大させたのが次の3730シリーズジェネティックアナライザである。3730シリーズジェネティックアナライザでは、外径2R=126 μm、内径2r=50 μmの複数本のキャピラリのレーザ照射部が屈折率n1=1.29のフッ素溶液中に配置されている。このとき、上記式(1)より、Δθ=-0.69°となり、各キャピラリが凸レンズ作用を有し、マルチフォーカスが機能することが分かる。さらに、キャピラリ外部のフッ素溶液層と、キャピラリ(石英ガラス)の界面におけるレーザビームの反射ロスが低減されるため、同時照射可能なキャピラリ本数が増大する。このため、48本または96本のキャピラリのレーザビームによる同時照射が可能となっている。
非特許文献1に示される構成は、同時照射可能なキャピラリ本数をさらに増大させるものである。当該構成では、外径2R=126 μm、内径2r=50 μmの複数本のキャピラリのレーザ照射部が屈折率n1=1.46のマッチング溶液中に配置されている。また、配列する複数のキャピラリの内、一端から奇数番目のキャピラリを分析用(以降、分析キャピラリ)とし、偶数番目のキャピラリをロッドレンズ(以降、レンズキャピラリ)として用いる。つまり、分析キャピラリとレンズキャピラリが交互に配列されている。分析キャピラリの内部の媒体(分離媒体)の屈折率をn3=1.41、レンズキャピラリの内部の媒体の屈折率をn4=1.53とする。キャピラリの素材はいずれも石英ガラスでn2=1.46である。また、キャピラリ外部のマッチング溶液層と、キャピラリ(石英ガラス)の界面におけるレーザビームの反射ロスがゼロになるため、同時照射可能なキャピラリ本数がさらに増大する。さらに、非特許文献1では、P.2874からP.2875に亘って、レーザビームによって同時照射可能な最大のキャピラリ本数の定義が記されている。片側照射で入射強度を100%とする場合に、レーザビームの強度が50%に減衰するまでのキャピラリ本数を2倍した本数が、同時照射可能な最大のキャピラリ本数としている。このキャピラリ本数を有するキャピラリアレイを両側照射した場合に、各キャピラリの照射強度が均一化されると期待されるためである。この定義に従うと、特許文献2の構成における最大キャピラリ本数は150本、非特許文献1の構成における最大キャピラリ本数は550本になるとしている。
特許第3654290号公報 特許第5039156号公報 特許第6113549号公報
Electrophoresis 2006, 27, 2869-2879
以上の公知技術ではすべて、分離媒体に高濃度のウレアが含まれており、屈折率はn3=1.41である。一方、1本のキャピラリを用いるキャピラリ電気泳動装置では、分離媒体に高濃度のウレアが含まれているとは限らず、様々な種類の分離媒体が用いられている。例えば、DNA断片を2本鎖状態で電気泳動分離させるための分離媒体にはウレアは含まれておらず、その屈折率は水と同じn3=1.33である。つまり、一般に、キャピラリ電気泳動で用いられる分離媒体の屈折率は1.33≦n3≦1.41の様々な値となり得る。近年、そのような様々な種類の分離媒体を用いた電気泳動分析を高スループット化、あるいは低コスト化するために、そのような様々な種類の分離媒体をキャピラリアレイ電気泳動装置で用いられるようにすることが求められている。
しかしながら、上述の公知技術のいずれの構成においても、n3=1.33とすると、各キャピラリの凸レンズ作用は失われ、凹レンズ作用が強くなり、マルチフォーカスが機能しない。すなわち、複数のキャピラリを用いた並列な電気泳動分析は不可能になる。具体的には、次の通りである。
特許文献1に基づく3500シリーズジェネティックアナライザにおいて、n3=1.33とすると、式(1)より、Δθ=+1.3°となり、各キャピラリが凹レンズ作用を有することが分かる。このため、マルチフォーカスが機能せず、8本または24本のキャピラリのレーザビームによる同時照射が不可能となっている。
特許文献2に基づく3730シリーズジェネティックアナライザにおいて、n3=1.33とすると、式(1)より、Δθ=+2.9°となり、各キャピラリが凹レンズ作用を有することが分かる。このため、マルチフォーカスが機能せず、48本または96本のキャピラリのレーザビームによる同時照射が不可能となっている。
非特許文献1に基づく構成において、n3=1.33とすると、式(1)より、分析キャピラリ1本の屈折角はΔθA=+6.6°である一方、レンズキャピラリ1本の屈折角はΔθB=-3.0°となる。このとき、ΔθA+ΔθB=+3.6°となるため、分析キャピラリ1本とレンズキャピラリ1本の1組で凹レンズ作用を示し、マルチフォーカスが機能しない。非特許文献1のP.2875において、n3=1.33の場合にも非特許文献1の構成が有利に働く旨の記載がある。しかしながら、上述の非特許文献1における最大キャピラリ本数の定義に従うと、非特許文献1の図11より、n3=1.33の場合の最大キャピラリ本数は8本程度に過ぎない。したがって、n3=1.33の場合には非特許文献1の構成は機能しない。
一方、特許文献3では、キャピラリアレイ電気泳動装置おいて、実測された各キャピラリの蛍光強度(以降、実測蛍光強度)に、予め計算機上に記録されている各キャピラリの補正係数を乗じて得られる各キャピラリの蛍光強度(以降、補正蛍光強度)を求めることによって、見かけ上の蛍光強度を均一化する補正方法が開示されている。N本のキャピラリアレイのキャピラリ番号nを端から順番にn=1、2、…、Nとして、キャピラリ番号nの実測蛍光強度をI(n)、キャリブレーション時のI(n)をI0(n)、I(n)が最大となるキャピラリ番号をmとすると、キャピラリ番号nの補正係数をk(n)は、式(2)によって求められる。
Figure 0007443567000002
また、キャピラリ番号nの補正蛍光強度J(n)は、式(3)によって求められる。
Figure 0007443567000003
ここで、キャリブレーションとは、実サンプルの分析を行う前に、一定濃度の標準サンプルを全キャピラリで分析する工程のことである。以上の補正方法によって、キャピラリアレイ内の各キャピラリで、ばらついていた実測蛍光強度が、均一な補正蛍光強度に変換される。式(2)のk(n)は、各キャピラリの蛍光強度が、最大の蛍光強度と等しくなるように設定されている。ただし、この補正方法は、k(n)が安定していることが前提となる。例えば、複数回のキャリブレーションを繰り返したときに、取得されるk(n)が大きく変化しないことが必要である。
本開示は、このような状況に鑑み、キャピラリアレイ電気泳動装置において1.33≦n3≦1.41の範囲の任意の屈折率を有する種々の分離媒体(もちろん、1.33≦n3≦1.41の範囲外の屈折率の分離媒体にも対応可能)を用いても電気泳動分析を可能にする技術を提案する。
上記課題を解決するために、本開示は、例えば、レーザビームを出射するレーザ光源と、Nを2以上の整数として、レーザビームが一括照射されるN本のキャピラリのレーザ照射部が同一の配列平面上に概ね配列されて構成されるキャピラリアレイと、N本のキャピラリからの発光を一括計測する光学系と、光学系で実測された光強度に所定の処理を加えて出力する計算機と、を備え、レーザ照射部におけるN本のキャピラリの、外半径をR、内半径をr、外部の媒体の屈折率をn1、素材の屈折率をn2、および内部の媒体の屈折率をn3とし、レーザ照射部におけるN本のキャピラリのそれぞれに、配列の一端から配列順にキャピラリ番号n=1、2、…、Nを付与し、キャピラリ番号nのレーザ照射光強度をnの関数で表したL(n)の凸の度合を示す2次導関数の1≦n≦Nにおける平均値をAとし、レーザ照射部におけるN本のキャピラリの内部に等濃度の発光物質が存在するときの、計算機によるキャピラリ番号nの出力光強度をnの関数で表したH(n)の凸の度合を示す2次導関数の1≦n≦Nにおける平均値をB、とするとき、少なくとも、屈折率n3<1.36の分離媒体を用いたキャピラリ電気泳動の分析モードを有し、|A|>|B|である、キャピラリアレイ電気泳動装置を提案する。
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではないことを理解する必要がある。
本開示の技術によれば、キャピラリアレイ電気泳動装置において、1.33≦n3≦1.41の範囲の任意の屈折率を有する種々の分離媒体を用いた電気泳動分析を実施することが可能になる。特に、水の屈折率1.33と同じか、あるいはそれに近い低屈折率を有する分離媒体を用いたキャピラリ電気泳動分析が可能になる。これにより、分析スループットの向上、およびサンプルあたりの分析コストの低減が可能なキャピラリアレイ電気泳動装置のアプリケーションの幅を大幅に拡大することが可能となる。
キャピラリアレイ電気泳動装置の構成例を示す図である。 キャピラリアレイ電気泳動装置の光学系の構成例を示す図である。 センサと計算機の連携を示す構成例を示す図である。 特許文献1に基づくキャピラリアレイの構成とレーザビーム光線追跡結果を示す図である。 特許文献1に基づくキャピラリアレイの発光蛍光強度分布と実測蛍光強度分布を示す図である。 本開示のキャピラリアレイの構成とレーザビーム光線追跡結果を示す図である。 本開示のキャピラリアレイの発光蛍光強度分布と実測蛍光強度分布を示す図である。 キャピラリアレイの配列誤差ΔZの定義を説明するための図である。 キャピラリアレイの配列誤差ΔZと発光蛍光強度分布の関係(n3=1.41)を示す図である。 キャピラリアレイの配列誤差ΔZと発光蛍光強度分布の関係(n3=1.33)を示す図である。 キャピラリアレイ電気泳動装置における種々の蛍光強度分布の関係を示す図である。 キャピラリアレイの配列誤差ΔZと出力蛍光強度分布の関係(n3=1.41、補正基準:n3=1.41、 ΔZ=0 μm)を示す図である。 キャピラリアレイの配列誤差ΔZと出力蛍光強度分布の関係(n3=1.33、補正基準:n3=1.33、 ΔZ=0 μm)を示す図である。 キャピラリアレイの配列誤差ΔZと出力蛍光強度分布の関係(n3=1.41、補正基準:n3=1.41、 ΔZ=6 μm)を示す図である。 キャピラリアレイの配列誤差ΔZと出力蛍光強度分布の関係(n3=1.33、補正基準:n3=1.33、 ΔZ=6 μm)を示す図である。 キャピラリアレイの配列誤差ΔZと出力蛍光強度分布の関係(n3=1.33、補正基準:n3=1.41、 ΔZ=0 μm)を示す図である。 種々のキャピラリ内部屈折率n3についてのキャピラリアレイの発光蛍光強度分布、出力蛍光強度分布、および出力蛍光強度分布の2次係数の関係を示す図である。 種々の補正基準とキャピラリ内部屈折率n3についてのキャピラリアレイの出力蛍光強度分布を示す図である。 キャピラリアレイの配列誤差ΔZと相対蛍光強度と変動係数の関係(n3=1.41)を示す図である。 キャピラリアレイの配列誤差ΔZとデジタル補正した相対蛍光強度と変動係数の関係(n3=1.41)を示す図である。 キャピラリアレイの配列誤差ΔZと相対蛍光強度と変動係数の関係(n3=1.33)を示す図である。 キャピラリアレイの配列誤差ΔZとデジタル補正した相対蛍光強度と変動係数の関係(n3=1.33)を示す図である。 本開示のキャピラリアレイ(その2)の構成とレーザビーム光線追跡結果を示す図である。 キャピラリアレイ(その2)の発光蛍光強度分布、実測蛍光強度分布、および出力蛍光強度分布(n3=1.41)を示す図である。 キャピラリアレイ(その2)の光学系補正係数分布とデジタル補正係数分布(n3=1.41)を示す図である。 キャピラリアレイ(その2)の発光蛍光強度分布、実測蛍光強度分布、および出力蛍光強度分布(n3=1.33)を示す図である。 キャピラリアレイ(その2)の光学系補正係数分布とデジタル補正係数分布(n3=1.33)を示す図である。 デュアルポリマブロック式キャピラリアレイ電気泳動装置でポリマAを充填するモードの構成例を示す図である。 デュアルポリマブロック式キャピラリアレイ電気泳動装置でポリマBを充填するモードの構成例を示す図である。 デュアルポリマブロック式キャピラリアレイ電気泳動装置の変形例を示す図である。
本開示の技術は、複数のキャピラリを用いた電気泳動の最中に、複数のキャピラリにレーザビームを同時に照射し、各キャピラリからの発光蛍光を同時に検出することによって、複数のサンプルを同時に分析するキャピラリアレイ電気泳動装置に関する。
(A)本開示の技術の概要
本開示は、主に、水の屈折率1.33と同等か、あるいは屈折率が1.36未満の低屈折率を有する分離媒体を用いることができるようにする技術を提案する。このような低屈折率の分離媒体を用いた場合、いずれの公知例(特許文献1から3、および非特許文献)に開示の技術を用いてもマルチフォーカスが機能せず、複数のキャピラリのレーザビームによる同時照射が困難である。
また、本開示は、上記のような低屈折率の分離媒体だけでなく、高屈折率の分離媒体、典型的には、屈折率が1.36以上、1.42以下の分離媒体を用いてもキャピラリ電気泳動分析をできるようにする技術も提案する。同時照射可能な最大のキャピラリ本数は多いほど良く、8本以上、状況によって24本以上とすることもできる。同一キャピラリアレイ内の複数のキャピラリそれぞれの照射強度および蛍光強度の内、最低の照射強度および蛍光強度は大きいほど良い。レーザ光源から発振したレーザビームの全強度が1本のキャピラリの内部に照射された場合に期待される蛍光強度を1とする場合、蛍光強度の最小値MIN(Minimum)が、MIN≧0.2であれば実用的な感度が得られることが経験的に分かっている。また、同一キャピラリアレイ内の複数のキャピラリの間の照射強度および蛍光強度のばらつきは小さいほど良い。照射強度および蛍光強度の変動係数CV(Coefficient of Variation)が、CV≦15%、望ましくはCV≦10%であれば、異なるサンプルを同等条件で分析可能となることが経験的に分かっている。
キャピラリアレイにおける各キャピラリについて、キャピラリ外径が2R=126 μm、キャピラリ内径が2r=50 μm、キャピラリ外部が空気でn1=1.00、キャピラリ素材が石英ガラスでn2=1.46、キャピラリ内部が分離媒体でn3=1.33とするとき、式(1)より、Δθ=-3.2°となるため、各キャピラリが凸レンズ作用を示し、マルチフォーカスが機能することが分かった。上記の、特許文献1に基づく3500シリーズジェネティックアナライザにおいて、n3=1.33とする場合との違いは、キャピラリの外径2Rを323 μmから126 μmに低減したことである。これによって各キャピラリの凹レンズ作用が凸レンズ作用に変換されている。さらに検討すると、キャピラリの外径2Rが220 μm以下であれば、Δθ<0となり、凸レンズが作用することが分かった。キャピラリ内径が2r=50 μmの場合に限定せずに一般化すると、R/r≦4.4のとき、Δθ<0となり、凸レンズが作用することが分かった。n3=1.33の低屈折率分離媒体は特許文献1では検討されていない。すなわち、これは、本開示の技術によって初めて見出された条件である。
キャピラリ外径が2R=126 μm、キャピラリ内径が2r=50 μmの場合、キャピラリ内部の分離媒体がn3=1.34および1.35の低屈折率であるとき、式(1)より、Δθ=-3.5°および-3.8°となり、やはり各キャピラリが凸レンズ作用を示し、マルチフォーカスが機能することが分かった。さらに検討すると、キャピラリの外径2Rが240 μm以下および264 μm以下であれば、Δθ<0となり、凸レンズが作用することが分かった。一般化すると、R/r≦4.8および5.3のとき、Δθ<0となり、凸レンズが作用することが分かった。このような低屈折率分離媒体は特許文献1では検討されていない。すなわち、これは、本開示の技術によって初めて見出された条件である。
上記の凸レンズ作用を有する条件において実験を行ったところ、マルチフォーカスが機能し、複数のキャピラリのレーザビームによる同時照射を実現でき、実用性能であるMIN≧0.2およびCV≦15%は満足された。しかしながら、CV≦10%が満足されないことが明らかになった。蛍光強度の変動係数は、片側照射よりも両側照射の場合の方が低く抑えられるが、CV≦10%になることはなく、場合によってはCV≦15%も満足されないことがあった。そこで、CVを低減するために、特許文献3に代表される公知の補正方法を適用したが、キャピラリアレイ内の各キャピラリの蛍光強度のランダムなばらつきによる影響によって、各キャピラリの蛍光強度の均一化が機能しない場合や、逆に、各キャピラリの蛍光強度のばらつきの程度が増大してしまったりする場合があることが判明した。
両側照射の場合、各キャピラリのキャピラリ番号に対する蛍光強度の変化をグラフで表した蛍光強度分布は、キャピラリ番号の増大に伴って凸凹しながら、キャピラリアレイの中央付近(キャピラリアレイがN本のキャピラリで構成され、Nが偶数のときはキャピラリ番号がN/2またはN/2+1付近、Nが奇数のときはキャピラリ番号が(N+1)/2付近)を中心として全体的に下に凸の形状であった(図9および図10を参照)。一般に、前者の凸凹の程度が大きいほど、そして、後者の下に凸の程度が大きいほど変動係数CVは増大する。しかしながら、蛍光強度分布において、分布の凸凹と全体的な下に凸の形状は互いに混じり合って観察されるため、それらを区別することは出来ず、それらの程度を導出することは困難である。一方、光線追跡シミュレーションを用いた検討によって、蛍光強度分布の凸凹の程度はキャピラリアレイの配列誤差ΔZが大きいほど増大するのに対し、蛍光強度分布の全体的な下に凸の形状の程度はn3が小さいほど増大することが判明した。ここで、本明細書では、配列誤差ΔZを次のように定義する。まず、配列平面と垂直方向にZ軸を設定し、Z=0 μmに配列平面が位置しているとする。また、レーザ照射部における複数のキャピラリの中心軸の各Z座標の中央値がゼロになるようにする。そして、配列平面から最も離れたキャピラリの中心軸のZ座標の絶対値をΔZとする。このとき、各キャピラリの中心軸の各Z座標は、±ΔZの範囲内で分散している。上記のCV≦15%が満足されない場合とは、ΔZが大きい場合に発生することが分かった。もちろん、前者の凸凹の程度を増大させる要因には、キャピラリアレイの配列誤差ΔZだけではなく、その他の様々な実験誤差も含まれる。
以上の複雑な状況を踏まえて、本開示は、蛍光強度分布における凸凹を許容しながら、分布全体として下に凸の形状の程度を低減または解消させる補正を各キャピラリの蛍光強度に施すことによって、最も効率良くCVを低減させる技術を提案する。蛍光強度の凸凹を許容するのは、個々のキャピラリアレイについてΔZを求めることが困難であり、加えて、仮にΔZが分かっても具体的な凸凹の形状は種々の要因によってランダムに変化するためである。これは、上述の公知の補正方法(特許文献3)が機能しない理由と同じ理由である。また、蛍光強度分布全体としての下に凸の形状の程度がn3によって変化することが本開示によって明らかになったため、本開示は、n3に応じて補正係数をダイナミックに変化させる技術についても提案する。このような補正方法は,特許文献3を始めとする公知の補正方法では開示されていない。以下、本開示の各実施形態について詳細に説明する。尚、以下では各実施形態を別々に説明するが、各実施形態に示す技術は排他的なものではなく、適宜相互に組み合わせることができるものである。
(B)第1の実施形態
<キャピラリアレイ電気泳動装置の構成例>
図1は、キャピラリアレイ電気泳動装置の構成例を示す図である。本キャピラリアレイ電気泳動装置では、従来のキャピラリアレイ電気泳動装置で行われているDNAシーケンスや1本鎖DNAフラグメント解析に加えて、2本鎖DNAフラグメント解析を実施する。本実施形態では、24本のキャピラリを用い(ただし、図1では4本のキャピラリのみを示している)、まず、各キャピラリで異なるサンプルのDNAシーケンスを実施し、次に、各キャピラリで異なるサンプルの2本鎖DNAフラグメント解析を実施した。DNAシーケンスのサンプルには、4種類の塩基に対応した4種類の蛍光体で標識された、種々の長さの1本鎖DNA断片が含まれる。また、DNAシーケンスを行う際に各キャピラリに充填する電気泳動分離媒体は、変性剤として8 Mのウレアが含まれたポリマ溶液であり、その屈折率はn3=1.41である。一方、2本鎖DNAフラグメント解析のサンプルには、2種類の蛍光体で標識された、種々の長さの2本鎖DNA断片が含まれる。片方の蛍光体で標識された2本鎖DNA断片はPCR産物であり、もう片方の蛍光体で標識された2本鎖DNA断片はサイズマーカーである。2本鎖DNAフラグメント解析を行う際に各キャピラリに充填する電気泳動分離媒体は、変性剤であるウレアが含まれていないポリマ溶液であり、その屈折率はn3=1.33である。以下の(i)~(vi)の工程によって、1回の分析セッションを実行した。
(i)まず、24本のキャピラリ1の試料注入端2を陰極側緩衝液6に浸し、試料溶出端3をポリマブロック9を介して陽極側緩衝液7に接続した。ここで、24個の試料溶出端3はひとつに束ねられ、ポリマブロック9との接続を容易にしている。
(ii)次に、ポリマブロック9のバルブ10を閉じ、ポリマブロック9に接続されたシリンジ11のピストンを押し下げることにより内部のポリマ溶液に加圧し、ポリマ溶液を各キャピラリ1の内部に、試料溶出端3から試料注入端2に向かって充填した。
(iii)続いて、バルブ10を開け、各キャピラリ1に試料注入端2から異なるサンプルを電界注入した後、陰極4と陽極5の間に電源8により高電圧を印加することにより、キャピラリ電気泳動を開始した。複数種類の蛍光体で標識されたDNA断片は、試料注入端2から試料溶出端3に向かって電気泳動された。
(iv)並行して、各キャピラリ1の、試料注入端2から一定距離電気泳動された位置をレーザ照射部14とし、レーザ光源12から発振されたレーザビーム13をレーザ照射部14にマルチフォーカス法によって一括照射した。ここで、レーザ照射部14近傍の各キャピラリ1の被覆を予め除去し、レーザ照射部14近傍の各キャピラリ1を配列平面上に配列し、レーザビーム13を、集光してから、上記の配列平面の側方より、配列平面に沿って入射した。図1では簡単のため、レーザビーム13の片側照射を行っているように描かれているが、実際には、レーザビーム13を2分割して両側照射を行った。
(v)そして、複数種類の蛍光体で標識されたDNA断片が、各キャピラリ1の内部を電気泳動され、レーザ照射部14を通過する際にレーザビーム13の照射によって標識蛍光体が励起され、蛍光を発光した。つまり、24個の発光点(レーザ照射部)から複数種類の蛍光体が蛍光発光し、電気泳動に伴い、それぞれの蛍光強度が時々刻々と変化した。
(vi)最後に、各発光点から発光される蛍光を多色検出し、得られた時系列データを解析することによって、各キャピラリに注入されたサンプルの分析を行った。
以上の(i)~(vi)の工程は、DNAシーケンスを行う場合と、2本鎖DNAフラグメント解析を行う場合で共通であるが、ポリマ溶液および緩衝溶液は適宜変更する。また、(i)~(vi)の工程からなる分析セッションは複数回、繰り返すことができる。例えば、1回目の分析セッションではサンプル1~24を分析し、2回目の分析セッションではサンプル25~48を分析し、…、とすることによって、多数の異なるサンプルを分析することができる。この際、同じポリマ溶液および緩衝溶液を用いて、DNAシーケンスを繰り返しても良いし、途中で2本鎖DNAフラグメント解析に切り替えても良い。任意の分析セッションにおいて、任意のアプリケーションを選択できる。
<蛍光検出を行う光学系の構成例>
図2は、キャピラリアレイ電気泳動装置の蛍光検出を行う光学系の構成例の断面を示す図である。本光学系は、図1のレーザ照射部14の奥側に位置している。図1と同様に、図2では4本のキャピラリアレイの片側照射が描かれているが、実際には24本キャピラリアレイの両側照射である。
レーザビーム13のマルチフォーカスによる照射により、配列平面上に配列する各キャピラリ1を同時照射した。各キャピラリ1のレーザ照射部14はそれぞれ蛍光の発光点20となる。各発光点20からの発光蛍光21を、一括して、集光レンズ15によってコリメートし、レーザカットフィルタ16でレーザ光を遮断し、透過型回折格子17を透過させることで各キャピラリの中心軸方向に波長分散させ、結像レンズ18でセンサ19上に結像点22をそれぞれ結像させた。センサ19は、CCDやCMOS等のエリアセンサ、あるいはフォトダイオードアレイ等、複数の結像点22を同時計測できるものであれば良い。各結像点22は実際には図2の奥行方向に波長分散されているが、図2では各結像点22の単一波長部分が模式的に描かれている。
このような光学系では、発光点20が光学系の光軸23から離れるに従って,その発光点20からの発光の集光効率が低下する。これは、図2に示されている通り、光軸23から離れた発光点20からの発光蛍光21の集光角度が、光学系のケラレ効果によって、小さくなるためである。従って、各発光点20から等強度の蛍光が発光されたとしても、発光点20が光軸23から離れるに従って、対応する結像点22の蛍光強度が低くなる。どの程度のケラレ効果が存在するか,すなわち,ケラレ効果に基づいた光学系補正係数は光学系によって決まり、計算または実験によって調べることが可能である。ケラレ効果に基づいた光学系補正係数によって、各発光点20における蛍光強度から各結像点22における蛍光強度を計算することができる。
<データ解析および装置制御のためのシステム構成例>
図3は、センサと計算機の連携を示す構成例である。光学系はキャピラリアレイ電気泳動装置の一部であり、センサは光学系の一部である。計算機はキャピラリアレイ電気泳動装置と接続されている。計算機は、データ解析だけでなく、キャピラリアレイ電気泳動装置の制御も行う。入力部であるタッチパネル、キーボード、マウス等を通じて、データ解析の条件設定やキャピラリアレイ電気泳動装置制御の条件設定を行う。センサから出力される信号の時系列生データが順次メモリに格納される。また、HDDの内部にあるデータベースに格納されている解析パラメータ情報がメモリに格納される。CPUは、メモリに格納された解析パラメータ情報を用いて、メモリに格納された時系列生データを解析し、時系列解析データを導出し、順次メモリに格納すると同時に、表示部であるモニタに表示する。また、ネットワークインターフェースNIFを通じて解析結果をネットワーク上の情報と照合することができる。
<従来のキャピラリアレイの構成例>
図4上段は、特許文献1に基づく3500シリーズジェネティックアナライザのキャピラリアレイの構成断面図である。外径2R=323 μm、内径2r=50 μmの24本のキャピラリのレーザ照射部が間隔370 μmで同一平面上に配列している。配列誤差はゼロである(ΔZ=0 μm)。キャピラリ外部は空気でn1=1.00、キャピラリ素材は石英ガラスでn2=1.46である。図4中段は、上記条件下で、キャピラリ内部が高屈折率分離媒体でn3=1.41の場合に、φ50 μmのレーザビームを左側から片側照射した際のレーザビーム光線追跡結果を示す。明らかにマルチフォーカスが機能しており、24本すべてのキャピラリの内部を効率良く照射できている。これは、式(1)によりΔθ=-1.3°となり、各キャピラリが凸レンズ作用を示すことに対応している。これに対して、図4下段は、上記条件下で、キャピラリ内部が低屈折率分離媒体でn3=1.33の場合の同様のレーザビーム光線追跡結果を示す。明らかにマルチフォーカスが機能せず、レーザビームがキャピラリアレイから発散しており、キャピラリアレイ全体を効率良く照射できていない。これは、式(1)によりΔθ=+1.3°となり、各キャピラリが凹レンズ作用を示すことに対応している。
<従来(図4)のキャピラリアレイ構成による相対蛍光強度分布>
図5上段は、図4中段および下段に示される片側照射の結果を両側照射の場合に焼き直した場合についての、各キャピラリの相対蛍光強度を示す図である。キャピラリ番号は、図4の一番左側のキャピラリを1とし、右側に向かって順番に付けた番号である。相対蛍光強度は、各キャピラリのレーザ照射部に一定濃度の蛍光体が存在すると仮定し、レーザビーム反射ロスを加味した各キャピラリの照射強度から計算される蛍光強度である。レーザ光源から発振したレーザビームの全強度が1本のキャピラリの内部に照射された場合に期待される蛍光強度を1としている。両側照射の計算では、レーザビームの全強度の半分がキャピラリアレイの両側から照射されるとした。n3=1.41の場合、24本のキャピラリについて相対蛍光強度の最小値がMIN=0.42、変動係数(=相対蛍光強度の標準偏差/相対蛍光強度の平均値)がCV=11%が得られ、実用性能であるMIN≧0.2およびCV≦15%を満たすことが分かる。しかしながら、より望ましい条件であるCV≦10%は満たされていない。キャピラリ番号に対する相対蛍光強度が下に凸の分布になっているのは、マルチフォーカスが機能しているにも関わらず、レーザビームがキャピラリアレイ内を進行するのに伴って、反射ロスによってレーザビームの強度が減衰するためである。これに対して、n3=1.33の場合、MIN=0.068、およびCV=74%が得られ、いずれの実用性能も満たさないことが分かる。
ここで、マルチフォーカスが機能している場合,かつ配列誤差がゼロの場合について,キャピラリアレイの相対蛍光強度分布をより簡易的な方法で導出する。この方法は本開示で初めてなされるものである。反射ロスを考慮したレーザビームの透過率を近似評価するため、屈折率が異なる2種類の媒体の界面に入射するレーザビームの入射角を0°と仮定する。屈折率n1の媒体と屈折率n2の媒体の界面に入射角0°で光が入射するときの反射率はref={(n1-n2)/(n1+n2)}^2であり、透過率はtra=1-refである。これより、レーザビームがキャピラリ1本を透過する際の透過率Tは、下記式(4)で近似的に求められる。
Figure 0007443567000004
図4中段に示す,特許文献1に基づく3500シリーズジェネティックアナライザの条件では、n1=1.00,n2=1.46,n3=1.41であるため,式(4)によってT=93%と計算される。実際には、入射角が0°ではないレーザビームの成分が含まれ、それらの透過率は式(4)の値よりも若干小さな値になる。したがって、式(4)は理想的な透過率を示す。片側照射の場合、キャピラリ番号n=1のキャピラリに入射されるレーザ照射強度を1とすると、キャピラリ番号nのキャピラリのレーザ照射強度L(n)は、下記式(5)で表される。
Figure 0007443567000005
つまり、上記の3500シリーズジェネティックアナライザで、キャピラリ本数がN=24のとき、キャピラリアレイの中のキャピラリを1本通過する毎にレーザ照射強度が93%に減衰し、n=24のキャピラリのレーザ照射強度は0.19に低下する。一方、両側照射の場合、キャピラリ番号n=1およびn=Nのキャピラリに入射されるレーザ照射強度をそれぞれ0.5とすると、キャピラリ番号nのキャピラリのレーザ照射強度L(n)は、下記式(6)で表される。
Figure 0007443567000006
片側照射の場合と異なり、配列平面の両側から入射されたレーザビームの強度の減衰が相殺されるため、各キャピラリのレーザ照射強度の均一性が向上するとともに、最低のレーザ照射強度が増大される。ただし、キャピラリアレイの両端に配置されるキャピラリ(n=1およびn=N)のレーザ照射強度が最も高く、キャピラリアレイの中央に配置されるキャピラリ(Nが奇数の場合はn=(N+1)/2、Nが偶数の場合はn=N/2およびn=N/2+1)のレーザ照射強度が最も低くなる。すなわち、図5上段のn3=1.41の場合の相対蛍光強度分布に示されている通り,横軸n、縦軸L(n)でグラフ化すると下の凸の分布になる。上記の3500シリーズジェネティックアナライザの条件で、キャピラリ本数がN=24のとき、式(6)によれば,キャピラリアレイの両端に配置されるキャピラリ(n=1およびn=24)のレーザ照射強度が0.60、キャピラリアレイの中央に配置されるキャピラリ(n=12およびn=13)のレーザ照射強度が0.44になり(MIN=0.44)、実用性能のMIN≧0.2が満たされる。また、24本のキャピラリのレーザ照射強度の変動係数が11%となり(CV=11%)、実用性能のCV≦20%、およびCV≦15%が満たされる。以上の結果は,上述した図5上段のn3=1.41の場合の結果であるMIN=0.42、およびCV=11%とほぼ一致している。すなわち,マルチフォーカスが機能している場合,かつ配列誤差がゼロの場合については,以上の簡易的な方法によっても,レーザ照射強度分布L(n)を求めることができる。
図5下段は、図4上段の結果に対して、3500シリーズジェネティックアナライザの光学系のケラレ効果を加味した、すなわち,ケラレ効果に基づいた光学系補正係数を乗じることによって得られる,各キャピラリの光学系補正相対蛍光強度を示す。n3=1.41の場合、キャピラリ番号に対して、相対蛍光強度の下に凸の分布と光学系補正の分布が相殺し、光学系補正相対蛍光強度は平坦な分布になっている。その結果、蛍光強度の最小値MIN=0.42は変化しないが、変動係数がCV=0.76%に大幅に減少した。また、実用性能であるMIN≧0.2およびCV≦15%、さらにはCV≦10%が満たされている。これに対して、n3=1.33の場合、MIN=0.066、およびCV=61%とあまり変化せず、実用性能が満たされないことに変わりがない。
<本実施形態によるキャピラリアレイの構成例>
図6上段は、本実施形態に基づくキャピラリアレイの構成断面図である。外径2R=126 μm、内径2r=50 μmの24本のキャピラリのレーザ照射部が間隔155 μmで同一平面上に配列している。配列誤差はゼロである(ΔZ=0 μm)。キャピラリ外部は空気でn1=1.00、キャピラリ素材は石英ガラスでn2=1.46である。図6中段は、上記条件下で、キャピラリ内部が高屈折率分離媒体でn3=1.41の場合に、φ50 μmのレーザビームを左側から片側照射した際のレーザビーム光線追跡結果を示す。明らかにマルチフォーカスが機能しており、24本すべてのキャピラリの内部を効率良く照射できている。これは、式(1)によりΔθ=-5.8°となり、各キャピラリが凸レンズ作用を示すことに対応している。
これに対して、図6下段は、上記条件下で、キャピラリ内部が低屈折率分離媒体でn3=1.33の場合の同様のレーザビーム光線追跡結果を示す。この場合も、明らかにマルチフォーカスが機能しており、24本すべてのキャピラリの内部を効率良く照射できている。これは、式(1)によりΔθ=-3.2°となり、各キャピラリが凸レンズ作用を示すことに対応している。このように、高屈折率分離媒体(n3≧1.36)でも、低屈折率分離媒体(n3<1.36)でも、各キャピラリが凸レンズ作用を示し、マルチフォーカスが機能することは、いずれの公知例でも実現できなかったことであり、本開示の技術によって初めて実現されることである。すなわち、本実施形態のキャピラリアレイ電気泳動装置では、n3<1.36の分析モードとn3≧1.36の分析モードの何れのモードにおいてもマルチフォーカスが機能する。なお、各分析モードでは、それぞれの目的に応じて電気泳動分析の条件を適宜変更することが有効である。変更が可能な電気泳動分析の条件として、キャピラリの制御温度、電気泳動時の電界強度、試料注入時の電界強度と試料注入時間、レーザ照射強度、センサの露光時間等々がある。例えば、ある分析モードではキャピラリを30℃に温度調節し、別の分析モードではキャピラリを60℃に温度調節する等、各分析モードでキャピラリの制御温度を変化させることが有効である。
<本実施形態(図6)のキャピラリアレイ構成による相対蛍光強度分布>
図7上段は、図6中段および下段に示される片側照射の結果を両側照射の場合に焼き直した場合についての、各キャピラリの相対蛍光強度を示す。n3=1.41の場合、24本のキャピラリについて相対蛍光強度の最小値がMIN=0.42、変動係数がCV=11%が得られ、実用性能であるMIN≧0.2およびCV≦15%を満たすことが分かる。しかしながら、図5上段と同様に、より望ましい条件であるCV≦10%は満たされていない。一方、n3=1.33の場合は、図5上段とは異なり、MIN=0.40、およびCV=12%となり、実用性能を満たすことが分かる。ただし,この場合もCV≦10%は満たされていない。
図7下段は、図7上段の結果に対して、3500シリーズジェネティックアナライザの光学系のケラレ効果を加味した、すなわち,ケラレ効果に基づいた光学系補正係数を乗じることによって得られる,各キャピラリの光学系補正相対蛍光強度を示す。ここで用いられている光学系補正は図5で用いられているものと同じである。光学系補正の結果、n3=1.41の場合はMIN=0.42、CV=9.0%となり、n3=1.33の場合はMIN=0.40、およびCV=10%となり、実用性能であるMIN≧0.2およびCV≦15%、さらにはCV≦10%が満たさるようになっている。
図7によれば、図5の場合と異なり、光学系補正の有無で相対蛍光強度があまり変化していない。これは、図4のキャピラリアレイの全幅が間隔370 μm×(24本-1本)=8.5 mmであるのに対して、図6のキャピラリアレイの全幅が間隔155 μm×(24本-1本)=3.6 mmと狭いため、つまり、各キャピラリの光軸からの距離が短いため、光学系のケラレ効果が小さいためである。この結果、図4に示す3500シリーズジェネティックアナライザのキャピラリアレイでn3=1.41とする場合は光学系のケラレ効果による光学系補正によってCV=11%がCV=0.76%に大幅に低減されるのに対して、図6に示す本開示のキャピラリアレイでn3=1.41とする場合は光学系のケラレ効果による光学系補正によってCV=11%がCV=9%にしか低減されないのである。同様に、本開示のキャピラリアレイでn3=1.33とする場合も、光学系のケラレ効果による光学系補正によってCV=12%がCV=10%にしか低減されないのである。
しかしながら、本実施形態の構成は、n3=1.41を含めて、n3≧1.33の任意の屈折率を有する分離媒体を用いた場合に、各キャピラリが凸レンズ作用を示し、マルチフォーカスが機能することが明らかになった。また、本構成の変形例として、R/r≦4.4の任意のキャピラリ、例えば、内径2r=50 μmを固定した場合、外径2R≦220 μmの任意のキャピラリを用いた場合にも、n3≧1.33の条件下で各キャピラリが凸レンズ作用を示すため、マルチフォーカスを機能させることが可能である。
(C)第2の実施形態
第1の実施形態では、キャピラリアレイの配列誤差がゼロ(ΔZ=0 μm)の場合についての検討結果を示した。しかし、現実にはΔZ=0 μmとなることはない。そこで、本実施形態では配列誤差とマルチフォーカス性能および各キャピラリの相対蛍光強度の関係を系統的に検討する。これらの検討は、本開示の技術によって初めてなされるものである。
<キャピラリアレイの配列誤差の定義>
図8は、配列誤差ΔZの定義を示す図である。図8上段は、配列誤差がゼロの場合(ΔZ=0 μm)の24本のキャピラリアレイの断面図を示す。この構成は図6上段と同じである。一番左のキャピラリ(キャピラリ番号1のキャピラリ)の中心軸の位置を原点として、配列平面に沿ってX軸を設定し、配列平面と垂直方向にZ軸を設定する。また、Y軸を一番左のキャピラリの中心軸に沿って設定する。各キャピラリの中心軸はX軸上にあり、Z座標はゼロである。これに対して図8下段は、配列誤差が存在する場合(ΔZ≠0 μm)の同断面図を示す。各キャピラリの中心軸のX座標は図8上段の場合と同じであるが、Z座標がX軸(Z=0 μm)を中心に上下にランダムにばらついている。ここで、ΔZを各Z座標の絶対値の最大値とする。つまり、X軸から最も離れたキャピラリの中心軸とX軸の距離をΔZとする。このとき、各キャピラリの中心軸の各Z座標は、±ΔZの範囲内でランダムに分散している。ΔZは配列誤差の大きさを定量的に示す指標である。
<キャピラリアレイの配列誤差がある場合の相対蛍光強度>
図9は、図6上段に示す24本のキャピラリアレイでn3=1.41とする構成を基準として、(a) ΔZ=0 μm、(b) ΔZ=3 μm、(c) ΔZ=6 μm、(d) ΔZ=9 μm、(e) ΔZ=12 μmとした場合の、両側照射によって得られる各キャピラリの相対蛍光強度を示す図である。ΔZ=0 μmについては、1組の、ΔZ=0 μm以外のΔZについてはそれぞれ10組のランダムな配列のキャピラリアレイについて相対蛍光強度を求めた結果が重ね表示されている。図9(a)(ΔZ=0 μm)は、図7上段のn3=1.41と同じ結果を示している。図9(f)は、ΔZ=0 μmについては1組の各キャピラリの相対蛍光強度を、ΔZ=0 μm以外のΔZについては上記10組の各キャピラリの相対蛍光強度の平均を重ねて示している。ΔZが増大するに従って、相対蛍光強度の平均値および最小値が低下するとともに、相対蛍光強度のばらつきが大きくなることが分かる。ΔZ=0 μm、3 μm、6 μm、9 μm、および12 μmの相対蛍光強度の最小値はそれぞれ、MIN=0.42、0.40、0.33、0.22、および0.066であった。また、ΔZ=0 μm、3 μm、6 μm、9 μm、および12 μmの相対蛍光強度の変動係数はそれぞれ、CV=11%、11%、12%、17%、および28%であった。ここで、ΔZ=0 μmについては1組の各キャピラリの相対蛍光強度の、ΔZ=0 μm以外のΔZについては上記10組の各キャピラリの相対蛍光強度の最小値および変動係数を示した。以上のn3=1.41の結果に対して、3500シリーズジェネティックアナライザの光学系のケラレ効果を加味した場合の、ΔZ=0 μm、3 μm、6 μm、9 μm、および12 μmの相対蛍光強度の変動係数はそれぞれ、CV=9%、9%、10%、14%、および23%であった。つまり、光学系のケラレ効果を加味しても、ΔZ≧9 μmの条件下では実用性能であるCV≦10%が満たされないことが分かる。
図10は、図6上段に示す24本のキャピラリアレイでn3=1.33とする構成を基準として、(a) ΔZ=0 μm、(b) ΔZ=3 μm、(c) ΔZ=6 μm、(d) ΔZ=9 μm、(e) ΔZ=12 μmとした場合の、両側照射によって得られる各キャピラリの相対蛍光強度を示す図である。ΔZ=0 μmについては、1組の、ΔZ=0 μm以外のΔZについてはそれぞれ10組のランダムな配列のキャピラリアレイについて相対蛍光強度を求めた結果が重ね表示されている。図10(a)(ΔZ=0 μm)は、図7上段のn3=1.33と同じ結果を示している。図10(f)は、ΔZ=0 μmについては1組の各キャピラリの相対蛍光強度を、ΔZ=0 μm以外のΔZについては上記10組の各キャピラリの相対蛍光強度の平均を重ねて示している。ΔZが増大するに従って、相対蛍光強度の平均値および最小値が低下するとともに、相対蛍光強度のばらつきが大きくなることが分かる。ΔZ=0 μm、3 μm、6 μm、9 μm、および12 μmの相対蛍光強度の最小値はそれぞれ、MIN=0.40、0.39、0.30、0.25、および0.058であった。また、ΔZ=0 μm、3 μm、6 μm、9 μm、および12 μmの相対蛍光強度の変動係数はそれぞれ、CV=12%、12%、14%、16%、および28%であった。ここで、ΔZ=0 μmについては1組の各キャピラリの相対蛍光強度の、ΔZ=0 μm以外のΔZについては上記10組の各キャピラリの相対蛍光強度の最小値および変動係数を示した。以上のn3=1.33の結果に対して、3500シリーズジェネティックアナライザの光学系のケラレ効果を加味した場合の、ΔZ=0 μm、3 μm、6 μm、9 μm、および12 μmの相対蛍光強度の変動係数はそれぞれ、CV=10%、10%、12%、14%、および24%であった。つまり、光学系のケラレ効果を加味しても、ΔZ≧6 μmの条件下では実用性能であるCV≦10%が満たされないことが分かる。
図9および図10に示される、キャピラリ番号に対する相対蛍光強度の分布は、いずれも下に凸の形状である。また、ΔZが増大するのに伴って、下に凸の程度が増大している。一方で、ΔZが増大するのに伴って、キャピラリ番号に対する相対蛍光強度が凸凹に変動する程度も増大している。
以上の図9および図10の結果は、第1の実施形態の結果と同様に、光学系のケラレ効果に基づく光学系補正による相対蛍光強度の変動係数の低減効果が不十分であり、配列誤差ΔZが増大するとその状況が一層顕著になり、実用性能を満足できなくなることを示している。そこで、本実施形態は、光学系のケラレ効果に基づく光学系補正に加えて、あるいは光学系のケラレ効果に基づく光学系補正の代わりに、計算機によるデジタル補正を相対蛍光強度に適用することによって、配列誤差ΔZを考慮した相対蛍光強度の変動係数を低減し、実用性能であるCV≦10%を満足できるようにすることを提案する。
<電気泳動分析するために実用的な出力蛍光強度分布を得るプロセス>
図11は、電気泳動分析するために実用的な出力蛍光強度分布を得るプロセスを示す図である。具体的には、図11は、キャピラリアレイを構成する各キャピラリのレーザ照射部に存在する、任意の種類の蛍光体の濃度から出発して、計算機によって出力される当該キャピラリの当該蛍光体の蛍光強度に至るまでの工程を示している。尚、図11では、本実施形態に即して蛍光体および蛍光の表現を用いているが、本実施形態は蛍光体および蛍光に限定して適用されるものではない。したがって、図11の蛍光体および蛍光を,発光体および発光,散乱体および散乱光,あるいは吸収体および吸光度に置き換えることができる。
以下、図11を詳細に説明する。尚、N本のキャピラリから構成されるキャピラリアレイの各キャピラリのキャピラリ番号を端から順番にn=1、2、…、およびNとする。図11に登場するnの関数C(n)、L(n)、I(n)、J(n)、M(n)、K(n)、およびH(n)はいずれも任意の時刻および任意の種類の蛍光体について成立する。つまり、これらの関数は時刻および蛍光体の種類についての関数でもあるが(ただし,時刻および蛍光体の種類による変化が小さな関数も含まれる)、図11では単純化するためにnだけの関数として表記してある。また、これらの関数の値は、nについての相対値、すなわちnに対する関数値の分布に意味があり、絶対値に意味はない。したがって、相対値から絶対値を導出するための係数は省略してある。さらに、任意の関数のnに対する関数値の分布が略一定、あるいは十分に平坦である場合は、当該関数および関数値をnによらずに1で置き換えることができる。したがって、図11を踏まえた検討においては、実用性能のMIN≧0.2は考慮せず、CV≦15%およびCV≦10%を検討対象とする。
(i)発光蛍光強度分布
発光蛍光強度分布は、キャピラリアレイから得られる発光蛍光の強度分布である。キャピラリnのレーザ照射部における蛍光体の濃度をC(n)とし、nに対するC(n)を蛍光体濃度分布と呼ぶ。C(n)は、ある時間でのキャピラリ番号nにおける蛍光体の濃度を示しており、時間の経過とともに変化する関数である。一方、キャピラリnのレーザビームの照射強度をL(n)とし、nに対するL(n)をレーザ照射強度分布と呼ぶ。L(n)は、ある時間でのキャピラリ番号nにおけるレーザ照射強度を示す関数である。このとき、キャピラリnの発光点から出射される発光蛍光強度は、I(n)=L(n)×C(n)と表すことができ、nに対するI(n)を発光蛍光強度分布と呼ぶ。繰り返しであるが、上記式の右辺に通常は掛け合わされる係数は省略されている。以上の、C(n)、L(n)、およびI(n)は、キャピラリアレイおよび各キャピラリの内部の事象を示している。
(ii)実測蛍光強度分布
実測蛍光強度分布は、センサで実際に検出される(実測の)蛍光強度分布であり、キャピラリアレイからの発光蛍光が所定の光学系を通過してセンサで検出される蛍光の強度の分布を示している(つまり、光学系により補正された蛍光を実測して得られる蛍光強度分布である)。図2で説明した光学系のケラレ効果に基づく、キャピラリnの光学系補正係数をJ(n)とし、nに対するJ(n)を光学系補正係数分布と呼ぶ。いかなる構成の光学系であってもそこを通過した光を物理的に変化させるが、光学系補正係数は、光学系の中で起こっている物理現象を数学的に(数値として)表すものである。一般に、光学系の光軸に近いキャピラリと比較して、光軸から離れたキャピラリの光学系補正係数が小さくなる。このとき、キャピラリnの発光点が光学系によってセンサ上に形成される結像点の蛍光強度、すなわちセンサによる実測蛍光強度は、M(n)=J(n)×I(n)であり、nに対するM(n)を実測蛍光強度分布と呼ぶ。以上の、J(n)、M(n)は、光学系の内部の事象を示している。光学系補正係数は、キャピラリ番号nの関数であると同時に、図8に示すX軸の座標xの関数でもある。図8に示す通りに、n=1のキャピラリの中心軸のX座標をx=0とし、キャピラリの配列間隔をpとするとき、x=(n-1)×pによって、nとxを変換できる。
(iii)出力蛍光強度分布
出力蛍光強度分布は、実測蛍光強度分布に、本実施形態による所定のデジタル補正処理を適用して得られる蛍光強度分布である。センサが出力する実測蛍光強度に対して計算機上で施す、キャピラリnのデジタル補正係数をK(n)とし、nに対するK(n)をデジタル補正係数分布と呼ぶ。このとき、計算機がデジタル補正を踏まえて出力するキャピラリnの出力蛍光強度は、H(n)=K(n)×M(n)であり、nに対するH(n)を出力蛍光強度分布と呼ぶ。
図11を踏まえて、図5、図7、図9、および図10を改めて説明する。図5上段、図7上段、図9、および図10は、蛍光体濃度分布が一定、つまりC(n)=1の場合の、発光蛍光強度分布I(n)=L(n)を示している。これに対して、図5下段、および図7下段は、発光蛍光強度分布に光学系補正を施した実測蛍光強度分布M(n)=J(n)×L(n)を示している。ここで用いられたJ(n)は、3500シリーズジェネティックアナライザの光学系について実験によって導出された光学系補正係数分布である。また、ここではデジタル補正は施されおらず、K(n)=1であるため、図5下段、および図7下段は、出力蛍光強度分布H(n)=J(n)×L(n)を示しているとも言える。
図11を踏まえて、図9および図10に示される発光蛍光強度分布I(n)=L(n)の変動係数を低減するためのデジタル補正を検討する。既に述べた通り、本構成における光学系補正は十分に小さいため、本検討ではJ(n)=1とする。J(n)=1と見なせない場合は、以下で導出したK(n)をK(n)/J(n)で置き換えれば良い。図9および図10ではC(n)=1であるため、H(n)=K(n)×L(n)となる。つまり出力蛍光強度分布H(n)が平坦に近づくようなK(n)を検討する。レーザ照射強度分布L(n)が非常に安定であれば、K(n)=1/L(n)とすることによってH(n)=1となるため、相対蛍光強度の変動係数は低減される。例えば、予めキャリブレーション実験でI(n)=L(n)を求め置き、その逆数をK(n)として、続く実験で得られた相対蛍光強度に適用すれば良い。これは特許文献3と同じデジタル補正方法である。しかしながら、図9および図10に示されている通り、実際にはI(n)=L(n)は全く安定していない。図9および図10に示される相対蛍光強度のばらつきは、キャピラリ内部の媒体の屈折率n3、キャピラリアレイの配列誤差ΔZが主要因であるが、これらに限らず、環境の温度や湿度の変化、あるいは振動や荷重等による装置の構成部品の僅かな変形等によっても発生し、しかもランダムに変化することが知られている。デジタル補正を行うためにはひとつの基準が必要である。特許文献3では、キャリブレーション時に取得した蛍光強度分布が基準になっている。図9および図10には、合計で92本の発光蛍光強度分布の曲線が示されているが、これらの内のどの発光蛍光強度分布を基準に選べば良いかが不明である。不適切な発光蛍光強度分布を基準に選択すると、デジタル補正によって出力蛍光強度分布の変動係数が増大し、デジタル補正が逆効果になることもある。
<蛍光強度分布に対するデジタル補正の例>
以上を踏まえて、本実施形態では、補正方法として、図9(a)および図10(a)のΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布を基準とするデジタル補正について説明する。ただし、図9のn3=1.41の場合と、図10のn3=1.33の場合とでデジタル補正係数分布を変更する。より一般化すると、n3の値によってデジタル補正係数分布を変更する。これは、n3が小さくなるのに伴って、発光蛍光強度分布の下に凸の程度が増大していることが見出されたためである。一方で、ΔZが大きくなるのに伴って、発光蛍光強度分布の下に凸の程度が増大していること、およびキャピラリ番号に対する相対蛍光強度が凸凹に変化する程度が増大していることは許容する。
図12(a)~(f)はそれぞれ、n3=1.41の場合について、図9(a)~(f)に示される各発光蛍光強度分布I(n)=L(n)に対して、図9(a)に示されるΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布を基準とするデジタル補正を施した出力蛍光強度分布H(n)=K(n)×L(n)を示す。ここで用いたデジタル補正係数分布K(n)は、図9(a)のΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布をL0(n)とするとき、K(n)=1/L0(n)である。このため、当然ながら、図12(a)の出力蛍光強度分布はH(n)=1になっている。一方で、上記と同一のデジタル補正係数分布K(n)を用いているにも拘らず、図12(b)~(e)の出力蛍光強度分布も、図9(b)~(e)の発光蛍光強度分布と比較すると、平坦化されている。その結果、ΔZ=0 μm、3 μm、6 μm、9 μm、および12 μmのそれぞれについて、図9の相対蛍光強度の変動係数がCV=11%、11%、12%、17%、および28%であったのに対して、図12のデジタル補正相対蛍光強度の変動係数がCV=0%、0.4%、3%、8%、および19%に大幅に低減されている。したがって、本デジタル補正によって、ΔZ≦9 μmの任意のキャピラリアレイについて実用性能のCV≦10%が満足される。
図13(a)~(f)はそれぞれ、n3=1.33の場合について、図10(a)~(f)に示される各発光蛍光強度分布I(n)=L(n)に対して、図10(a)に示されるΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布を基準とするデジタル補正を施した出力蛍光強度分布H(n)=K(n)×L(n)を示す。ここで用いたデジタル補正係数分布K(n)は、図10(a)のΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布をL0(n)とするとき、K(n)=1/L0(n)である。このL0(n)は、上記の図9(a)のΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布とは異なることは、本開示の技術の重要な特徴である。このため、当然ながら、図13(a)の出力蛍光強度分布はH(n)=1になっている。一方で、上記と同一のデジタル補正係数分布K(n)を用いているにも関わらず、図13(b)~(e)の出力蛍光強度分布も、図10(b)~(e)の発光蛍光強度分布と比較すると、平坦化されている。その結果、ΔZ=0 μm、3 μm、6 μm、9 μm、および12 μmのそれぞれについて、図10の相対蛍光強度の変動係数がCV=12%、12%、14%、16%、および28%であったのに対して、図13のデジタル補正相対蛍光強度の変動係数がCV=0%、0.5%、3%、6%、および18%に大幅に低減されている。したがって、本デジタル補正によって、ΔZ≦9 μmの任意のキャピラリアレイについて実用性能のCV≦10%が満足される。
以上の図9(a)のΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布をL0(n),および図10(a)のΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布をL0(n)は,上述の式(4)および式(6)を用いて簡易的に求めることも可能である。ここで,図9(a)の場合,n1=1.00,n2=1.46,n3=1.41,N=24とすれば良く,図10(a)の場合,n1=1.00,n2=1.46,n3=1.33,N=24とすれば良い。このようにして,デジタル補正係数分布K(n)=1/L0(n)を求めることは,本開示で初めてなされることである。
本実施形態では、光学系補正係数分布がJ(n)=1であると仮定し、出力蛍光強度分布H(n)の変動係数が低減される最適なデジタル補正係数分布K(n)を導出している。上述の通り、J(n)=1と見なせない場合は、上記で導出したK(n)をK(n)/J(n)で置き換えれば良い。つまり、デジタル補正および光学系補正、すなわちK(n)×J(n)によって、所望のn3におけるΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布I(n)が最も平坦化されるようにすれば良い。したがって、K(n)ではなく、J(n)をn3に応じて変更することも有効である。
以上では、図6上段および図8に示す24本のキャピラリアレイをレーザビームで両側照射する構成について検討したが、これ以外の構成でも同様の効果を得ることができる。
(D)第3の実施形態
第2の実施形態では、出力蛍光強度分布を平坦化するには、同じn3についてのΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布を基準とするデジタル補正を発光蛍光強度分布に施すことが最適であることを示した。しかしながら、本開示の技術は、ΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布に限らず、それ以外を基準とする場合にも効果を発揮する。そこで、本実施形態では、一例として、ΔZ=6 μmの平均発光蛍光強度分布を基準とするデジタル補正を行うことについて説明する。本実施形態では、第2の実施形態と同様に、図6上段および図8に示す24本のキャピラリアレイをレーザビームで両側照射する構成について検討するが、これ以外の構成でも構わない。
<蛍光強度分布に対するデジタル補正の例:ΔZ=6 μmの平均発光蛍光強度分布を基準とする場合>
図14(a)~(f)はそれぞれ、n3=1.41の場合について、図9(a)~(f)に示される各発光蛍光強度分布I(n)=L(n)に対して、図9(f)に示されるΔZ=6 μmの平均発光蛍光強度分布を基準とするデジタル補正を施した出力蛍光強度分布H(n)=K(n)×L(n)を示す。ここで用いたデジタル補正係数分布K(n)は、図9(f)のΔZ=6 μmの平均発光蛍光強度分布をL0(n)とするとき、K(n)=1/L0(n)である。このため、当然ながら、図14(f)のΔZ=6 μmの平均出力蛍光強度分布はH(n)=1になっている。
一方で、上記と同一のデジタル補正係数分布K(n)を用いているにも関わらず、図14(a)~(e)の出力蛍光強度分布も、図9(a)~(e)の発光蛍光強度分布と比較すると、平坦化されている。その結果、ΔZ=0 μm、3 μm、6 μm、9 μm、および12 μmのそれぞれについて、図9の相対蛍光強度の変動係数がCV=11%、11%、12%、17%、および28%であったのに対して、図14のデジタル補正相対蛍光強度の変動係数がCV=1%、1%、3%、7%、および18%に大幅に低減されている。
したがって、本デジタル補正によって、ΔZ≦9 μmの任意のキャピラリアレイについて実用性能のCV≦10%が満足される。第2の実施形態のΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布を基準とする場合と比較すると、ΔZ=0 μm~3 μmのCVが増大している。以上より、相対蛍光強度の変動係数を低減する観点で、総合的にはΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布を基準とする場合の方が優れているが、ΔZ=6 μmの平均発光蛍光強度分布を基準とする場合も効果的である。
図15(a)~(f)はそれぞれ、n3=1.33の場合について、図10(a)~(f)に示される各発光蛍光強度分布I(n)=L(n)に対して、図10(f)に示されるΔZ=6 μmの平均発光蛍光強度分布を基準とするデジタル補正を施した出力蛍光強度分布H(n)=K(n)×L(n)を示す。ここで用いたデジタル補正係数分布K(n)は、図10(f)のΔZ=6 μmの平均発光蛍光強度分布をL0(n)とするとき、K(n)=1/L0(n)である。第2の実施形態と同様に、このL0(n)は、上記の図9(f)のΔZ=6 μmの平均発光蛍光強度分布とは異なることは、本開示の技術の重要な特徴の1つである。このため、当然ながら、図15(f)のΔZ=6 μmの平均出力蛍光強度分布はH(n)=1になっている。
一方で、上記と同一のデジタル補正係数分布K(n)を用いているにも関わらず、図15(a)~(e)の出力蛍光強度分布も、図10(a)~(e)の発光蛍光強度分布と比較すると、平坦化されている。その結果、ΔZ=0 μm、3 μm、6 μm、9 μm、および12 μmのそれぞれについて、図10の相対蛍光強度の変動係数がCV=12%、12%、14%、16%、および28%であったのに対して、図15のデジタル補正相対蛍光強度の変動係数がCV=2%、2%、2%、5%、および16%に大幅に低減されている。
したがって、本デジタル補正によって、ΔZ≦9 μmの任意のキャピラリアレイについて実用性能のCV≦10%が満足される。第2の実施形態のΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布を基準とする場合と比較すると、ΔZ=0 μm~3 μmのCVが増大している。以上より、相対蛍光強度の変動係数を低減する観点で、総合的にはΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布を基準とする場合の方が優れているが、ΔZ=6 μmの平均発光蛍光強度分布を基準とする場合も効果的である。
<蛍光強度分布に対するデジタル補正の例:ΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布を基準とする場合>
続いて、異なるn3についてのΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布を基準とするデジタル補正を検討する。図16(a)~(f)はそれぞれ、n3=1.33の場合について、図10(a)~(f)に示される各発光蛍光強度分布I(n)=L(n)に対して、図9(a)に示されるn3=1.41の場合のΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布を基準とするデジタル補正を施した出力蛍光強度分布H(n)=K(n)×L(n)を示す。ここで用いたデジタル補正係数分布K(n)は、図9(a)のΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布をL0(n)とするとき、K(n)=1/L0(n)である。既に述べている通り、このL0(n)は、図10(a)のΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布とは異なり、これは本開示の技術において重要な特徴の1つである。このため、図13(a)の結果と異なり、図16(a)の出力蛍光強度分布はH(n)=1になっておらず、やや下に凸の形状になっている。
同様に、図16(a)~(f)のすべての出力蛍光強度分布も下に凸の形状になっているが、図10(a)~(f)の発光蛍光強度分布と比較すると、いずれもが平坦化されている。その結果、ΔZ=0 μm、3 μm、6 μm、9 μm、および12 μmのそれぞれについて、図10の相対蛍光強度の変動係数がCV=12%、12%、14%、16%、および28%であったのに対して、図16のデジタル補正相対蛍光強度の変動係数がCV=1%、1%、4%、7%、および19%に大幅に低減されている。
したがって、本デジタル補正によって、ΔZ≦9 μmの任意のキャピラリアレイについて実用性能のCV≦10%が満足される。しかしながら、図13のn3=1.33の場合のΔZ=0 μmの発光蛍光強度分布を基準とするデジタル補正と比較すると、全体的に変動係数が増大している。以上より、相対蛍光強度の変動係数を低減する観点で、総合的には同じn3の発光蛍光強度分布を基準とする場合の方が優れているが、異なるn3の平均発光蛍光強度分布を基準とする場合も効果的である。
(E)第4の実施形態
本実施形態では、第3の実施形態の検討をさらに深め、種々のn3について、デジタル補正の基準とデジタル補正の結果の関係を詳細に検討する。第2の実施形態と同様に、図6上段および図8に示す24本のキャピラリアレイをレーザビームで両側照射する構成について検討するが、これ以外の構成でも構わない。
<ΔZ=0 μmのときの各屈折率に対応する相対蛍光強度のデジタル補正係数の例>
図17(a)は、キャピラリアレイの配列誤差がΔZ=0 μmの場合について、キャピラリ内部の媒体の屈折率n3を1.30から1.42まで0.01刻みで変化させた際の13種類の、キャピラリ番号に対する相対蛍光強度の変化を示す図である。すなわち、図17(a)は、図11においてC(n)=1とした場合の発光蛍光強度分布I(n)=L(n)を示している。図17(a)において、発光蛍光強度分布I(n)=L(n)は、n3の小数第二位の数値が偶数の場合は実線、奇数の場合は点線で示されている。この内のn3=1.41およびn3=1.33の発光蛍光強度分布はそれぞれ、図9(a)および図10(a)に示される発光蛍光強度分布と同じである。ただし、図17(a)では縦軸のスケールが拡大されている。n3が小さくなるのに従って、発光蛍光強度分布L(n)の下に凸の度合い、すなわち下に凸の曲線の曲率が単調に大きくなっていることが分かる。図17(b)は、図17(a)のn3=1.30、1.33、1.36、1.39、および1.42のL(n)をそれぞれ基準とする5種類の、キャピラリ番号に対するデジタル補正係数を示す図である。すなわち、図17(b)は、図11のデジタル補正係数分布K(n)を示している。本実施形態においても、図11の光学補正係数分布はJ(n)=1であると仮定している。それぞれのK(n)は対応するL(n)の逆数であり、K(n)=1/L(n)である。
図17(a)の各発光蛍光強度分布I(n)=L(n)は,上述の式(4)および式(6)を用いて簡易的に求めることも可能である。ここで,n1=1.00,n2=1.46,n3=1.30~1.42,N=24とすれば良い。このようにして,デジタル補正係数分布K(n)=1/L(n)を求めることは,本開示で初めてなされることである。
<デジタル補正後の出力蛍光強度分布H(n)の例>
図18(a)は、図17(a)に示される13種類の発光蛍光強度分布I(n)=L(n)に対して、図17(b)に示されるn3=1.30のデジタル補正係数分布K(n)によるデジタル補正を施した出力蛍光強度分布H(n)=K(n)×L(n)を示す図である。同様に、図18(b)、図18(c)、図18(d)、および図18(e)はそれぞれ、図17(a)に示される13種類の発光蛍光強度分布I(n)=L(n)に対して、図17(b)に示されるn3=1.33、1.36、1.39、および1.42のデジタル補正係数分布K(n)によるデジタル補正を施した出力蛍光強度分布H(n)=K(n)×L(n)を示す図である。図18に示されるすべての出力蛍光強度分布H(n)は、図17(a)に示される発光蛍光強度分布L(n)と比較して平坦化されている。ただし、デジタル補正の基準のn3と、デジタル補正の対象のn3が一致するときに、出力蛍光強度分布H(n)が最も平坦化されている。デジタル補正の基準におけるn3をn3(補正基準)、デジタル補正の対象におけるn3をn3(補正対象)と記すことにすると、n3(補正基準)=n3(補正対象)の場合は、出力蛍光強度分布はH(n)=1となり、n3(補正基準)<n3(補正対象)の場合は、出力蛍光強度分布H(n)は上に凸の曲線となり、n3(補正基準)>n3(補正対象)の場合は、出力蛍光強度分布H(n)は下に凸の曲線となることが分かる。また、n3(補正基準)とn3(補正対象)の差が大きいほど、上に凸または下に凸の程度が大きくなっている。例えば、図18(a)に示すように、n3=1.30についてH(n)=1にするデジタル補正を実行するとき、それぞれの屈折率のH(n)に対して同じ補正を実行するときの相対蛍光強度を示している。n3=1.30のときのH(n)は平坦になるが、その他の屈折率の場合には、値が1.30との差が大きくなればなるほど補正が適切に行われないことになる。図18(a)からも分かるように、n3=1.42の場合には過剰に補正されてしまう。
<デジタル補正前後の各出力蛍光強度分布H(n)を2次関数で近似した場合の2次係数の変化>
出力蛍光強度分布H(n)の上に凸の程度および下に凸の程度は、各出力蛍光強度分布H(n)を2次関数で近似した場合の2次係数で表現できる。本実施形態では、出力蛍光強度分布を2次関数で近似するが、他の関数、あるいはその他の方法によって、H(n)の上に凸の程度および下に凸の程度を表現しても構わない。
図17(c)は、キャピラリ内部の媒体の屈折率n3に対する、図17(a)のデジタル補正前の発光蛍光強度分布I(n)と、図18の各補正基準によるデジタル補正後の出力蛍光強度分布H(n)のそれぞれを2次関数で近似した場合の2次係数の変化を示す図である。縦軸に示す2次係数がゼロのとき、出力蛍光強度分布は、H(n)=1となり、完全に平坦になる。これに対して、2次係数がゼロより大きくなるに従って、出力蛍光強度分布H(n)の下に凸の程度が大きくなる。一方で、2次係数がゼロより小さくなるに従って、出力蛍光強度分布H(n)の上に凸の程度が大きくなる。補正前の2次係数は、n3とともに徐々に減少している。これは、図17(a)において、n3の上昇にともなって発光蛍光強度分布L(n)の下に凸の度合いが弱くなっていることに対応している。補正後の2次係数はいずれも、補正前の2次係数よりも、小さな値を示している。また、補正後の2次係数の絶対値はいずれも、補正前の2次係数の絶対値よりも、小さな値を示している。これらは、いずれのデジタル補正も発光蛍光強度分布を平坦化する効果を発揮していることを示している。
図17(c)において、補正後のn3=1.30(補正基準)、n3=1.33(補正基準)、n3=1.36(補正基準)、n3=1.39(補正基準)、およびn3=1.42(補正基準)で示される5種類の曲線はそれぞれ、図18(a)、図18(b)、図18(c)、図18(d)、および図18(e)に対応している。5種類の補正基準による出力蛍光強度分布の2次係数の変化のいずれにおいても、n3(補正基準)=n3(補正対象)のときに2次係数はゼロになり、n3(補正基準)<n3(補正対象)のときに2次係数は負になり、n3(補正基準)>n3(補正対象)のとき2次係数は正になっている。ここで、図17(c)の横軸がn3(補正対象)を示している。また、n3(補正基準)とn3(補正対象)の差が大きくなるほど、2次係数の絶対値が大きくなっている。以上は、上記の図18に示される上に凸および下に凸の程度の変化と対応している。
以上より、デジタル補正を実施する際には、n3(補正基準)=n3(補正対象)とするのが最も効果的である。あるいは、n3(補正基準)とn3(補正対象)の差をできるだけ小さくすることが最も効果的である。n3(補正基準)<n3(補正対象)となる場合は、デジタル補正が過剰となり、出力蛍光強度分布が上に凸の曲線になる。また、n3(補正基準)n3(補正対象)となる場合は、デジタル補正が不足となり、出力蛍光強度分布は下に凸の曲線になる。ただし、これらの場合も、補正前の発光蛍光強度分布の下に凸の曲線と比較すると平坦化されているため、効果的である。複数種類の異なるn3を有する分離媒体を異なるタイミングで用いる場合、それぞれのタイミングで、使用するn3に合わせたデジタル補正を行うことが有効である。つまり、使用するn3に合わせて補正基準およびデジタル補正係数分布を変更するのである。以上が本実施形態によるデジタル補正の特徴である。
以上は、キャピラリアレイの配列誤差がΔZ=0 μmの場合について検討しているが、ΔZ≠0 μmの場合についても、同様の手段によって同様の効果が得られる。例えば、ΔZ=6 μmを共通条件にすれば、図17(c)と同様の結果が得られる。つまり、各補正基準はΔZ=6 μmの条件下で取得され、補正対象となる発光蛍光強度分布もΔZ=6 μmの条件下で取得されていれば良い。一方、各補正基準のΔZと、補正対象となる発光蛍光強度分布のΔZが異なる場合は多少の変形が生じる。図17(c)において、ΔZ=0 μmにおけるn3=1.33(補正基準)を、ΔZ=6 μmにおけるn3=1.33(補正基準)に置き換えると、対応する曲線が左下方向にシフトする。つまり、横軸のn3(補正対象)が1.33のとき、ΔZ=0 μmにおけるn3=1.33(補正基準)によるデジタル補正を実施すると縦軸の2次係数がゼロになるが、ΔZ=6 μmにおけるn3=1.33(補正基準)によるデジタル補正を実施すると縦軸の2次係数が負になる。このような曲線のシフトは発生するものの、全体的な傾向は同様である。どのような基準によるデジタル補正を行った場合でも、横軸のn3(補正対象)を大きな値にした場合、例えばn3=1.42とした場合は縦軸の2次係数は負になる一方、横軸のn3(補正対象)を小さな値にした場合、例えばn3=1.30とした場合は縦軸の2次係数は正になる。
(F)第5の実施形態
第5の実施形態では、種々のΔZのキャピラリアレイについて、デジタル補正の効果を評価するとともに、実用性能であるMIN≧0.2、およびCV≦15%あるいはCV≦10%を満たすΔZを明らかにする。本実施形態においても、図6上段および図8に示す24本のキャピラリアレイをレーザビームで両側照射する構成について検討するが、これ以外の構成でも構わない。
<光学補正およびデジタル補正を施した結果>
(i)屈折率n3=1.41の場合
図19は、n3=1.41の場合について、ΔZ=0.0、1.5、3.0、4.5、6.0、7.5、9.0、10.5、12.0、13.5、および15.0 μmと変化させた際の、両側照射によって得られる各キャピラリの相対蛍光強度を上段に、その変動係数を下段に示す図である。図19の上下段それぞれの右側は、左側の拡大図である。ΔZ=0.0 μmについては1組のキャピラリアレイ、ΔZ≠0.0 μmの各ΔZについてはそれぞれ100組のランダムな配列で構成されるキャピラリアレイを用いている。図19上段のグラフを作成する際には、ΔZ=0.0 μmについて24個の相対蛍光強度データを用い、ΔZ≠0.0 μmの各ΔZについては24個×100組=2400個の相対蛍光強度データを用いている。そして、当該グラフにおいて、黒丸プロットは平均値、エラーバーは±標準偏差、黒三角プロットは最大値、黒四角プロットは最小値を示している。図19(a)から分かるように、ΔZの増加に伴い、平均値、最大値、最小値のいずれもが低下し、標準偏差が増大している。
図19下段のグラフを作成する際には、ΔZ=0.0 μmについて1組の相対蛍光強度の変動係数を用い、ΔZ≠0.0 μmの各ΔZについては100組の相対蛍光強度の変動係数を用いている。そして、当該グラフにおいて、黒丸プロットは平均値、エラーバーは±標準偏差、黒三角プロットは最大値、黒四角プロットは最小値を示している。図19(c)から分かるように、ΔZの増加に伴い、平均値、最大値、最小値のいずれもが増加し、標準偏差が増大している。
図19上段の相対蛍光強度の最小値をMINとすると、実用性能であるMIN≧0.2を満たすためには、ΔZ≦7.2 μmであれば良いことが分かる。一方、図19下段の相対蛍光強度の平均値+標準偏差をCVとすると、実用性能であるCV≦15%を満たすためにはΔZ≦6.4 μmであれば良いことが分かる。一方で、CV≦10%を満たすことはできない。
図20は、図19に示される1001種類のキャピラリアレイの発光蛍光強度分布I(n)=L(n)のすべてに対して、光学系補正およびデジタル補正を施した結果を示す図である。光学系補正係数分布J(n)は、3500シリーズジェネティックアナライザの光学系補正係数分布を実測したものである。J(n)は、キャピラリアレイの中央、すなわち、n=12とn=13の中間で最大値1となり、中央から離れるに従って減少する。このため、発光蛍光強度分布I(n)と実測蛍光強度分布M(n)の絶対値を相互に比較することができる。
一方、デジタル補正の基準を、図7上段のΔZ=0 μm、n3=1.41の発光蛍光強度分布I(n)=L(n)に上記の光学系補正を施した、図7下段のΔZ=0 μm、n3=1.41の実測蛍光強度分布M(n)=J(n)×L(n)とする。このとき、デジタル補正係数分布は、第2および第3の実施形態と同様に、K(n)=1/M(n)としても良いが、本実施形態では、K(n)=α×[{n-(N+1)/2}×p]^2+1とする。ここで、αは係数でα=-0.074、Nはキャピラリの総本数でN=24、pはキャピラリの配列間隔でp=0.155 mmである。K(n)は、キャピラリアレイの中央、すなわち、n=12とn=13の中間で最大値1となり、中央から離れるに従って減少する。このため、実測蛍光強度分布M(n)と出力蛍光強度分布H(n)の絶対値を相互に比較することができる。このとき、このデジタル補正係数分布K(n)を図7下段のn3=1.41の実測蛍光強度分布M(n)に適用すると、出力蛍光強度分布H(n)=K(n)×M(n)は最も平坦化される。図7上段の発光蛍光強度分布の変動係数がCV=11%である。これに対して、図7下段の実測蛍光強度分布の変動係数がCV=9%である。さらにデジタル補正を適用した出力蛍光強度分布の変動係数がCV=0.6%に低減される。
図20は、以上の光学系補正およびデジタル補正をΔZ=0 μmの場合に限らず、すべてのΔZの発光蛍光強度分布に適用した結果を示している。図20上段を図19上段と比較すると、相対蛍光強度分布の最小値は変化しないが、最大値と平均値が減少し、最大値と最小値の差、および標準偏差が減少していることが分かる。一方、図20下段を図19下段と比較すると、ΔZ=0 μmだけでなく、すべてのΔZについて変動係数が大幅に低減されていることが分かる。図20上段の相対蛍光強度の最小値をMINとすると、実用性能であるMIN≧0.2を満たす条件はΔZ≦7.2 μmであり、図19上段の結果と同じである。一方、図20下段の相対蛍光強度の平均値+標準偏差をCVとすると、実用性能であるCV≦15%を満たすためにはΔZ≦9.0 μmであれば良いことが分かる。一方で、CV≦10%を満たすためにはΔZ≦7.8 μmであれば良いことが分かる。
以上のΔZの許容範囲は、図19と比較して大幅に拡大している。すなわち、本開示によるデジタル補正によって、実用性能を満たすΔZの許容範囲が大幅に拡大することが分かる。
(ii)屈折率n3=1.33の場合
図21は、n3=1.33の場合について、ΔZ=0.0、1.5、3.0、4.5、6.0、7.5、9.0、10.5、12.0、13.5、および15.0 μmと変化させた際の、両側照射によって得られる各キャピラリの相対蛍光強度を上段に、その変動係数を下段に示す。図21の上下段それぞれの右側は、左側の拡大図である。ΔZ=0.0 μmについては1組のキャピラリアレイ、ΔZ≠0.0 μmの各ΔZについてはそれぞれ100組のランダムな配列で構成されるキャピラリアレイを用いている。図21上段のグラフを作成する際、ΔZ=0.0 μmについては24個の相対蛍光強度データを用い、ΔZ≠0.0 μmの各ΔZについては24個×100組=2400個の相対蛍光強度データを用いている。当該グラフにおいて、黒丸プロットは平均値、エラーバーは±標準偏差、黒三角プロットは最大値、黒四角プロットは最小値を示している。図21(a)から分かるように、ΔZの増加に伴い、平均値、最大値、最小値のいずれもが低下し、標準偏差が増大している。
図21下段のグラフを作成する際、ΔZ=0.0 μmについては1組の相対蛍光強度の変動係数を用い、ΔZ≠0.0 μmの各ΔZについては100組の相対蛍光強度の変動係数を用いている。当該グラフにおいて、黒丸プロットは平均値、エラーバーは±標準偏差、黒三角プロットは最大値、黒四角プロットは最小値を示している。図21(c)から分かるように、ΔZの増加に伴い、平均値、最大値、最小値のいずれもが増加し、標準偏差が増大している。図21上段の相対蛍光強度の最小値をMINとすると、実用性能であるMIN≧0.2を満たすためには、ΔZ≦7.9 μmであれば良いことが分かる。
一方、図21下段の相対蛍光強度の平均値+標準偏差をCVとすると、実用性能であるCV≦15%を満たすためにはΔZ≦5.7 μmであれば良いことが分かる。ただし、CV≦10%を満たすことはできない。
図22は、図21に示される1001種類のキャピラリアレイの発光蛍光強度分布I(n)=L(n)のすべてに対して、光学系補正およびデジタル補正を施した結果を示す図である。光学系補正係数分布J(n)は、3500シリーズジェネティックアナライザの光学系補正係数分布を実測したものであり、図20で用いられたものと同じである。J(n)は、キャピラリアレイの中央、すなわち、n=12とn=13の中間で最大値1となり、中央から離れるに従って減少する。このため、発光蛍光強度分布I(n)と実測蛍光強度分布M(n)の絶対値を相互に比較することができる。
一方、デジタル補正の基準を、図7上段のΔZ=0 μm、n3=1.33の発光蛍光強度分布I(n)=L(n)に上記の光学系補正を施した、図7下段のΔZ=0 μm、n3=1.33の実測蛍光強度分布M(n)=J(n)×L(n)とする。デジタル補正係数分布は、第2および第3の実施形態と同様に、K(n)=1/M(n)としても良いが、本実施形態では、K(n)=α×[{n-(N+1)/2}×p]^2+1とする。ここで、αは係数でα=-0.081、Nはキャピラリの総本数でN=24、pはキャピラリの配列間隔でp=0.155 mmである。つまり、図20で適用されているデジタル補正との違いは、αが-0.074から-0.081に変化していることだけである。この違いは、n3が1.41から1.33に変化していることに対応している。K(n)は、キャピラリアレイの中央、すなわち、n=12とn=13の中間で最大値1となり、中央から離れるに従って減少する。このため、実測蛍光強度分布M(n)と出力蛍光強度分布H(n)の絶対値を相互に比較することができる。このとき、このデジタル補正係数分布K(n)を図7下段のn3=1.33の実測蛍光強度分布M(n)に適用すると、出力蛍光強度分布H(n)=K(n)×M(n)は最も平坦化される。図7上段の発光蛍光強度分布の変動係数がCV=12%であるのに対して、図7下段の実測蛍光強度分布の変動係数がCV=10%である。さらにデジタル補正を適用した出力蛍光強度分布の変動係数はCV=0.8%に低減される。
図22は、以上の光学系補正およびデジタル補正をΔZ=0 μmの場合に限らず、すべてのΔZの発光蛍光強度分布に適用した結果を示している。図22上段を図21上段と比較すると、相対蛍光強度分布の最小値は変化しないが、最大値と平均値が減少し、最大値と最小値の差、および標準偏差が減少している。一方、図22下段を図21下段と比較すると、ΔZ=0 μmだけでなく、すべてのΔZについて変動係数が大幅に低減されている。図22上段の相対蛍光強度の最小値をMINとすると、実用性能であるMIN≧0.2を満たす条件はΔZ≦7.9 μmであり、図21上段の結果と同じである。一方、図22下段の相対蛍光強度の平均値+標準偏差をCVとすると、実用性能であるCV≦15%を満たすためにはΔZ≦10.1 μmであれば良いことが分かる。一方で、CV≦10%を満たすためにはΔZ≦8.5 μmであれば良いことが分かる。以上のΔZの許容範囲は、図21と比較して大幅に拡大している。すなわち、本開示によるデジタル補正によって、実用性能を満たすΔZの許容範囲が大幅に拡大することが分かる。
(G)第6の実施形態
上述の非特許文献1では、分析キャピラリの内部の媒体(分離媒体)の屈折率をn3=1.41、レンズキャピラリの内部の媒体の屈折率をn4=1.53としている。キャピラリの素材はいずれも石英ガラスでn2=1.46である。このとき、上述の式(1)より、分析キャピラリ1本の屈折角はΔθA=+2.4°である一方、レンズキャピラリ1本の屈折角はΔθB=-3.0°となる。このとき、ΔθA+ΔθB=-0.61°となるため、分析キャピラリ1本とレンズキャピラリ1本の1組で凸レンズ作用を示し、マルチフォーカスが機能する。このように、ΔθA+ΔθBによってマルチフォーカスの機能の有無を評価する方法は本開示の技術で初めて見出されたものである。
<分析キャピラリとレンズキャピラリとが交互に配列されているキャピラリアレイ構成例>
図23上段は、より多数のキャピラリの同時照射を可能とする本開示のキャピラリアレイの構成例を示している。外径2R=126 μm、内径2r=50 μmの192本のキャピラリのレーザ照射部が間隔155 μmで同一平面上に配列している。配列誤差はゼロである(ΔZ=0 μm)。キャピラリ外部は低屈折率溶液でn1=1.25、キャピラリ素材は石英ガラスでn2=1.46である。上記の低屈折率溶液として、例えば、3M社のフロリナートを利用できる。キャピラリアレイの左側から奇数本目の96本のキャピラリを分析キャピラリとし、内部の媒体の屈折率をn3とする。また、各分析キャピラリに左側から順番にキャピラリ番号1~96を付与する。一方、キャピラリアレイの左側から偶数本目の96本のキャピラリをレンズキャピラリとし、内部の媒体の屈折率をn4=1.46する。各レンズキャピラリにはキャピラリ番号を付与しない。
図23中段は、上記条件下で、n3=1.41の場合に、φ50 μmのレーザビームを左側から片側照射した際のレーザビーム光線追跡結果を示す。このときマルチフォーカスが機能しており、192本すべてのキャピラリの内部を効率良く照射できている。上記式(1)より、分析キャピラリ1本の屈折角はΔθA=-1.4°であり、レンズキャピラリ1本の屈折角はΔθB=-3.3°となる。このとき、ΔθA+ΔθB=-4.7°となるため、分析キャピラリ1本とレンズキャピラリ1本の1組で凸レンズ作用を示し、マルチフォーカスが機能するのである。
図23下段は、上記条件下で、n3=1.33の場合に、φ50 μmのレーザビームを左側から片側照射した際のレーザビーム光線追跡結果を示している。このときマルチフォーカスが機能しており、192本すべてのキャピラリの内部を効率良く照射できている。上記式(1)より、分析キャピラリ1本の屈折角はΔθA=+2.0°であり、レンズキャピラリ1本の屈折角はΔθB=-3.3°となる。このとき、ΔθA+ΔθB=-1.3°となるため、分析キャピラリ1本とレンズキャピラリ1本の1組で凸レンズ作用を示し、マルチフォーカスが機能するのである。
<n3=1.41の場合の相対蛍光強度、光学系補正相対蛍光強度、およびデジタル補正&光学系補正相対蛍光強度の例>
図24(a)は、図23中段に示される片側照射の結果を両側照射の場合に焼き直した場合についての、n3=1.41の場合の、キャピラリ番号1~96の分析キャピラリの相対蛍光強度である発光蛍光強度分布I(n)=L(n)を示す。レンズキャピラリの相対蛍光強度は示していない。96本の分析キャピラリについて相対蛍光強度の最小値がMIN=0.30、変動係数がCV=20%が得られ、実用性能であるMIN≧0.2を満たすが、CV≦15%およびCV≦10%を満たさないことが分かる。
図25(a)は、本実施形態で用いる3730シリーズジェネティックアナライザの光学系のケラレ効果を加味したの光学系補正係数分布J(n)を示す。尚、3730シリーズジェネティックアナライザの光学系は、3500シリーズジェネティックアナライザの光学系と異なり、それぞれのケラレ効果が異なる。図25(a)に示す光学系補正係数分布は、J(x)=a+(b-a)×exp{-1×x^2/(2×c^2)}において、a=-0.25635、b=1、c=11.736815とした場合である。ここで、x={n-(N+1)/2}×pによって、キャピラリ番号nと空間座標xが関連付けられている。Nは分析キャピラリの総本数でN=96、pは分析キャピラリの配列間隔でp=0.155 mm×2=0.310 mmである。xは、図8に示すX軸に沿った空間座標であるが、図8と異なり、X軸の原点がキャピラリアレイの中央、つまりn=48とn=49の中間に配置される。図25(a)に示されている通り、J(n)は、キャピラリアレイの中央で最大値1となり、中央から離れるに従って減少する。このため、発光蛍光強度分布L(n)と実測蛍光強度分布M(n)の絶対値を相互に比較することができる。
図24(b)は、図25(a)のJ(n)と、図24(a)のL(n)を掛け合わせて得られる実測蛍光強度分布M(n)=J(n)×L(n)を示す。図24(b)の実測蛍光強度分布は、図7下段の実測蛍光強度分布と異なり、上に凸の曲線になっている。これは、キャピラリアレイの全幅が広いために、光学系補正が大きいためである。図24(b)の実測蛍光強度分布おける相対蛍光強度の最小値はMIN=0.17、変動係数がCV=14%である。したがって、実用性能であるMIN≧0.2が満たされなくなる一方で、CV≦15%は満たされるが、CV≦10%が満たされていない。
図25(b)は、図24(b)の実測蛍光強度分布の変動係数を低減するためのデジタル補正係数分布K(n)を示す。このデジタル補正係数分布は、図17(b)のデジタル補正係数分布と異なり、下に凸の曲線である。これは、図24(b)の上に凸の実測蛍光強度分布を平坦化するためである。図25(b)に示すデジタル補正係数分布は、K(x)=1/[a+(b-a)×exp{-1×x^2/(2×c^2)}]において、a=-0.25635、b=1、c=16.8とした場合である。ここで、x={n-(N+1)/2}×pによって、キャピラリ番号nと空間座標xが関連付けられている。Nは分析キャピラリの総本数でN=96、pは分析キャピラリの配列間隔でp=0.155 mm×2=0.310 mmである。xは、図8に示すX軸に沿った空間座標であるが、図8と異なり、X軸の原点がキャピラリアレイの中央、つまりn=48とn=49の中間に配置される。図25(b)に示されている通り、K(n)は、キャピラリアレイの両端、つまりn=1およびn=96で最大値1となり、中央に近づくに従って減少する。このため、実測蛍光強度分布M(n)と出力蛍光強度分布H(n)の絶対値を相互に比較することができる。
図24(c)は、図25(b)のデジタル補正係数分布K(n)と、図24(b)の実測蛍光強度分布M(n)を掛け合わせて得られる出力蛍光強度分布H(n)=K(n)×M(n)を示す。図24(b)の実測蛍光強度分布M(n)と比較して、図24(c)の出力蛍光強度分布H(n)が平坦化されていることが分かる。図24(c)の出力蛍光強度分布おける相対蛍光強度の最小値はMIN=0.17、変動係数がCV=2%である。したがって、実用性能であるMIN≧0.2が満たされなくなる一方で、CV≦15%およびCV≦10%の両方が満たされている。本実施形態では、レーザ出力強度を50%増強することによって、実効的にMIN=0.26とし、実用性能のMIN≧0.2が満たされるようにする。以上より、すべての実用性能が満足される。
図26(a)は、図23下段に示される片側照射の結果を両側照射の場合に焼き直した場合についての、n3=1.33の場合の、キャピラリ番号1~96の分析キャピラリの相対蛍光強度である発光蛍光強度分布I(n)=L(n)を示す。レンズキャピラリの相対蛍光強度は示していない。96本の分析キャピラリについて相対蛍光強度の最小値がMIN=0.23、変動係数がCV=27%が得られ、実用性能であるMIN≧0.2を満たすが、CV≦15%およびCV≦10%を満たさないことが分かる。
<n3=1.33の場合の相対蛍光強度、光学系補正相対蛍光強度、およびデジタル補正&光学系補正相対蛍光強度の例>
図27(a)は、本実施形態で用いる3730シリーズジェネティックアナライザの光学系のケラレ効果を加味したの光学系補正係数分布J(n)を示し、図25(a)に示すJ(n)と同一である。図26(b)は、図27(a)のJ(n)と、図26(a)のL(n)を掛け合わせて得られる実測蛍光強度分布M(n)=J(n)×L(n)を示す。図26(b)の実測蛍光強度分布は、図24(b)と同様に上に凸の曲線になっているが、図24(b)と比較して平坦化されている。図26(b)の実測蛍光強度分布おける相対蛍光強度の最小値はMIN=0.17、変動係数がCV=9%である。したがって、実用性能であるMIN≧0.2が満たされなくなる一方で、CV≦15%およびCV≦10%の両方が満たされている。
図27(b)は、図26(b)の実測蛍光強度分布の変動係数をさらに低減するためのデジタル補正係数分布K(n)を示す。このデジタル補正係数分布は、図25(b)と同様に下に凸の曲線であり、K(x)=1/[a+(b-a)×exp{-1×x^2/(2×c^2)}]において、a=-0.25635、b=1、c=21.8とした場合である。ここで、x={n-(N+1)/2}×pによって、キャピラリ番号nと空間座標xが関連付けられている。図25(b)のK(n)との違いは、上記cの値のみである。
図26(c)は、図27(b)のデジタル補正係数分布K(n)と、図26(b)の実測蛍光強度分布M(n)を掛け合わせて得られる出力蛍光強度分布H(n)=K(n)×M(n)を示す。図26(b)の実測蛍光強度分布M(n)と比較して、図26(c)の出力蛍光強度分布H(n)が一層平坦化されていることが分かる。図26(c)の出力蛍光強度分布おける相対蛍光強度の最小値はMIN=0.17、変動係数がCV=3%である。したがって、実用性能であるMIN≧0.2が満たされなくなる一方で、CV≦15%およびCV≦10%の両方が満たされている。本実施形態では、レーザ出力強度を50%増強することによって、実効的にMIN=0.26とし、実用性能のMIN≧0.2が満たされるようにする。以上より、すべての実用性能が満足される。
(H)第7の実施形態
第7の実施形態は、改良されたキャピラリアレイ電気泳動装置の構成例について開示する。
<キャピラリアレイ電気泳動装置の構成例>
図28および図29は、2種類の分離媒体であるAポリマ溶液25とBポリマ溶液28を装置上で切り替え可能なキャピラリアレイ電気泳動装置の構成例を示す図である。本実施形態のキャピラリアレイ電気泳動装置の構成を適用することにより、同一のキャピラリアレイを用いながら、キャピラリアレイを装置から着脱せずに、複数種類のポリマ溶液による電気泳動分析が可能となる。
図28は、Aポリマ溶液25をキャピラリ1に充填するとともに、Aポリマ溶液25を用いてキャピラリ電気泳動を実施するAモードを示している。図29は、Bポリマ溶液28をキャピラリ1に充填するとともに、Bポリマ溶液28を用いてキャピラリ電気泳動を実施するBモードを示している。第1の実施形態に示す、(1)~(6)の工程からなる分析セッションを繰り返す際に、各分析セッションにおいてAモードとBモードの任意のモードを選択することができる。例えば、Aモードの分析セッションを複数回繰り返した後にBモードの分析セッションを複数回繰り返しても良いし、Aモードの分析セッションとBモードの分析セッションを交互に繰り返しても良い。これらの設定は、図3に示す、計算機の入力部で行うことができ、表示部で確認することができる。1.33≦n3<1.36の屈折率を有する分離媒体を低屈折率分離媒体、1.36≦n3≦1.42の屈折率を有する分離媒体を高屈折率分離媒体とする。Aポリマ溶液25とBポリマ溶液28はそれぞれ、高屈折率分離媒体または低屈折率分離媒体のいずれであっても良いが、本実施形態では、Aポリマ溶液25が高屈折率分離媒体、Bポリマ溶液28が低屈折率分離媒体とする。図28および図29は、大半の部分が図1と共通であり、各図において共通の符号で示される対象は同じ構造による同じ機能を有している。以下では、図1と異なる部分を中心に説明する。キャピラリの本数については、第1の実施形態における24本に限定せず、任意とする。レーザ照射部14において、分析キャピラリとレンズキャピラリが交互に配列されていても良い(図23と同様の配列)。この場合,以降で単にキャピラリと表現する対象は,分析キャピラリを表しているものとする。
尚,本開示では,単一の分析モードにおいて,単一のキャピラリアレイを構成するすべてのキャピラリの内部が同一の屈折率を有する同一の分離媒体で満たされることが想定されている。しかしながら,単一の分析モードにおいて,単一のキャピラリアレイを構成する異なるキャピラリの内部が異なる屈折率を有する異なる分離媒体で満たされても構わない。そのような場合においても,本開示の構成によって,単一のキャピラリアレイを構成するすべてのキャピラリのレーザビームによる効率的な同時照射が可能である。
図28および図29に示すキャピラリ電気泳動装置では、図1のポリマブロック9の代わりに、デュアルポリマブロック30が用いられる。レーザ照射部14において、分析キャピラリとレンズキャピラリを交互配列する場合、レンズキャピラリはデュアルポリマブロック30に接続せずに、分析キャピラリの試料溶出端3だけを束ねてデュアルポリマブロック30に接続する。デュアルポリマブロック30には、Aポリマ溶液25を内包するAシリンジ24と、Bポリマ溶液28を内包するBシリンジ27が接続されている。Aシリンジ24の内部のAポリマ溶液25は、Aバルブ26が開、かつ陽極槽バルブ31が開のとき、デュアルポリマブロック30の内部の流路により、陽極側緩衝液7と接続する。同様に、Bシリンジ27の内部のBポリマ溶液28は、Bバルブ29が開、かつ陽極槽バルブ31が開のとき、デュアルポリマブロック30の内部の流路により、陽極側緩衝液7と接続する。流路を洗浄する際に用いられる洗浄フロー33は、洗浄バルブ32が開、かつ陽極槽バルブ31が開のとき、デュアルポリマブロック30の内部の流路により、陽極側緩衝液7と接続する。また、試料溶出端3は、Aバルブ26と陽極槽バルブ31の間の流路、Bバルブ29と陽極槽バルブ31の間の流路、および洗浄バルブ32と陽極槽バルブ31の間の流路に接続している。
<分析セッションにおけるAモードおよびBモードの動作、およびそれらの切り替え動作>
[1]Aモードについて
まず、Aモードについて説明する。図28に示すように、Aバルブ26と陽極槽バルブ31の間の流路がAポリマ溶液25で満たされている状態、つまり、試料溶出端3がAポリマ溶液25と接触している状態とする。このとき、Aバルブ26を開、Bバルブ29を閉、陽極槽バルブ31を閉、かつ洗浄バルブ32を閉とし、Aシリンジ24のピストンを押し下げることにより、デュアルポリマブロック30の内部のAポリマ溶液25に加圧し、Aポリマ溶液25を各キャピラリ1の内部に、試料溶出端3から試料注入端2に向かって充填する。Aポリマ溶液25の充填後、陽極槽バルブ31を開とし、各キャピラリ1に試料注入端2からそれぞれ異なるサンプルを注入した後、陰極4と陽極5の間に電源8により高電圧を印加することにより、キャピラリ電気泳動を実施する。この際、Aバルブ26を閉としても良い。
[2.1]AモードからBモードへの切り替えについて
次に、AモードからBモードに切り替える方法を説明する。所望の電気泳動分析を実施するためには、デュアルポリマブロック30の内部で、試料溶出端3が接触するポリマ溶液が、Aポリマ溶液25とBポリマ溶液28が混在したものであったり、Aポリマ溶液25またはBポリマ溶液28が薄まったものであったり、あるいはポリマ溶液に気泡が混入したものであったりしないことが必要である。そこで、次の工程によってAモードからBモードへの切り替えを行う。Aバルブ26を閉、Bバルブ29を開、陽極槽バルブ31を開、かつ洗浄バルブ32を閉とし、Bシリンジ27のピストンを押し下げることにより、Bバルブ29と陽極側緩衝液7の間の流路に存在するAポリマ溶液25を陽極側緩衝液7の中に排出しながら、図29に示すように、Bバルブ29と陽極側緩衝液7の間の流路をBポリマ溶液28で置き換える。上記の置き換えが完了した段階で、Bシリンジ27のピストンの押し下げを止める。この工程において、Bシリンジ27がBポリマ溶液28を押し出す量(体積)を、Bバルブ29と陽極側緩衝液7の間の流路の内部体積よりも多くすることにより、試料溶出端3が接触するポリマ溶液を純粋なBポリマ溶液28とする。また、陽極側緩衝液7の中に排出されるAポリマ溶液25の量は、陽極側緩衝液7の量と比較して少ないため、陽極側緩衝液7の中に排出されるAポリマ溶液25が電気泳動に悪影響を与えることはない。もちろん、Aポリマ溶液25を、陽極側緩衝液7の中ではなく、廃液槽に排出させても良い。
[2.2]AモードからBモードへのより効率的な切り替えについて
その次に、より効率的にAモードからBモードに切り替える方法を説明する。(1) Aバルブ26を閉、Bバルブ29を閉、陽極槽バルブ31を開、かつ洗浄バルブ32を開とし、洗浄フロー33により純水をデュアルポリマブロック30に注入することにより、洗浄バルブ32と陽極側緩衝液7の間の流路に存在するAポリマ溶液25を廃液槽に排出しながら、洗浄バルブ32と陽極側緩衝液7の間の流路を純水で置き換える。この工程では、陽極側緩衝液槽を廃液槽にあらかじめ置き換えておく。洗浄フロー33が純水を注入する量(体積)を、洗浄バルブ32と陽極側緩衝液7の間の流路の内部体積よりも多くすることにより、同流路に残留するAポリマ溶液25をゼロに近づける。(2) 続いて、Aバルブ26を閉、Bバルブ29を閉、陽極槽バルブ31を開、かつ洗浄バルブ32を開としたまま、洗浄フロー33により空気をデュアルポリマブロック30に注入することにより、洗浄バルブ32と陽極側緩衝液7の間の流路に存在する純水を廃液槽に排出しながら、洗浄バルブ32と陽極側緩衝液7の間の流路を空気で置き換える。これにより、最終的にBポリマ溶液28が薄まることを回避できる。(3) この後、Aバルブ26を閉、Bバルブ29を開、陽極槽バルブ31を開、かつ洗浄バルブ32を閉とし、Bシリンジ27のピストンを押し下げることにより、Bバルブ29と陽極側緩衝液7の間の流路に存在する空気を廃液槽に排出しながら、Bバルブ29と陽極側緩衝液7の間の流路をBポリマ溶液28で置き換える。最後に、図29に示すように、廃液槽を陽極側緩衝液槽に置き換えれば、Bモードへの移行が完了する。以上の方法によれば、AモードからBモードに切り替える際に消費するBポリマ溶液28の量を削減できる効果も得られる。上記の洗浄フロー33による純水の注入および空気の注入の内、一方を省略することも可能である。
[3]Bモードについて
続いて、Bモードを説明する。図29に示すように、Bバルブ29と陽極槽バルブ31の間の流路がBポリマ溶液28で満たされている状態、つまり、試料溶出端3がBポリマ溶液28と接触している状態とする。このとき、Aバルブ26を閉、Bバルブ29を開、陽極槽バルブ31を閉、かつ洗浄バルブ32を閉とし、Bシリンジ27のピストンを押し下げることにより、デュアルポリマブロック30の内部のBポリマ溶液28に加圧し、Bポリマ溶液28を各キャピラリ1の内部に、試料溶出端3から試料注入端2に向かって充填する。Bポリマ溶液28の充填後、陽極槽バルブ31を開とし、各キャピラリ1に試料注入端2からそれぞれ異なるサンプルを注入した後、陰極4と陽極5の間に電源8により高電圧を印加することにより、キャピラリ電気泳動を実施する。この際、Bバルブ29を閉としても良い。
[4]BモードからAモードへの切り替えについて
最後に、BモードからAモードに切り替える方法を説明する。(1) Aバルブ26を閉、Bバルブ29を閉、陽極槽バルブ31を開、かつ洗浄バルブ32を開とし、洗浄フロー33により純水をデュアルポリマブロック30に注入することにより、洗浄バルブ32と陽極側緩衝液7の間の流路に存在するBポリマ溶液28を廃液槽に排出しながら、洗浄バルブ32と陽極側緩衝液7の間の流路を純水で置き換える。この工程では、陽極側緩衝液槽を廃液槽にあらかじめ置き換えておく。洗浄フロー33が純水を注入する量(体積)を、洗浄バルブ32と陽極側緩衝液7の間の流路の内部体積よりも多くすることにより、同流路に残留するBポリマ溶液28をゼロに近づける。(2) 続いて、Aバルブ26を閉、Bバルブ29を閉、陽極槽バルブ31を開、かつ洗浄バルブ32を開としたまま、洗浄フロー33により空気をデュアルポリマブロック30に注入することにより、洗浄バルブ32と陽極側緩衝液7の間の流路に存在する純水を廃液槽に排出しながら、洗浄バルブ32と陽極側緩衝液7の間の流路を空気で置き換える。これにより、最終的にAポリマ溶液25が薄まることを回避できる。(3) この後、Aバルブ26を開、Bバルブ29を閉、陽極槽バルブ31を閉、かつ洗浄バルブ32を開とし、Aシリンジ24のピストンを押し下げることにより、Aバルブ26と洗浄バルブ32の間の流路に存在する空気を外部に排出しながら、Aバルブ26と洗浄バルブ32の間の流路をAポリマ溶液25で置き換える。(4) 続いて、Aバルブ26を開、Bバルブ29を閉、陽極槽バルブ31を開、かつ洗浄バルブ32を閉とし、Aシリンジ24のピストンを押し下げることにより、Aバルブ26と陽極側緩衝液7の間の流路に存在する空気を廃液槽に排出しながら、Aバルブ26と陽極側緩衝液7の間の流路をAポリマ溶液25で置き換える。最後に、図28に示すように、廃液槽を陽極側緩衝液槽に置き換えれば、Aモードへの移行が完了する。以上の方法によれば、BモードからAモードに切り替える際に消費するAポリマ溶液25の量を削減できる効果も得られる。上記の洗浄フロー33による純水の注入および空気の注入の内、一方を省略することも可能である。
<デュアルポリマブロック30の構造>
以上の説明したAモードとBモードの切り替えを、効率的に、あるいは確実に実施するためには、デュアルポリマブロック30が次のような特徴的な構造を有することが効果的である。
特徴的な構造1は、Aポリマ溶液25に対する加圧機構であるAシリンジ24に最も近接する開閉機構であるAバルブ26と、陽極側緩衝液7に最も近接する開閉機構である陽極槽バルブ31の間の流路に、キャピラリ1の試料溶出端3が接続していることである。
特徴な構造2は、Bポリマ溶液28に対する加圧機構であるBシリンジ27に最も近接する開閉機構であるBバルブ29と、陽極側緩衝液7に最も近接する開閉機構である陽極槽バルブ31の間の流路に、キャピラリ1の試料溶出端3が接続していることである。
特徴な構造3は、洗浄フロー33の注入口に最も近接する開閉機構である洗浄バルブ32と、陽極側緩衝液7に最も近接する開閉機構である陽極槽バルブ31の間の流路に、キャピラリ1の試料溶出端3が接続していることである。
特徴的な構造4は、洗浄フロー33の注入口に最も近接する開閉機構である洗浄バルブ32と、陽極側緩衝液7に最も近接する開閉機構である陽極槽バルブ31の間の流路に、Aポリマ溶液25に対する加圧機構であるAシリンジ24に最も近接する開閉機構であるAバルブ26、およびBポリマ溶液28に対する加圧機構であるBシリンジ27に最も近接する開閉機構であるBバルブ29が接続していることである。
(I)第8の実施形態
第8の実施形態は、改良されたキャピラリアレイ電気泳動装置の別の構成例について開示する。
<キャピラリアレイ電気泳動装置の構成例>
図30は、図28および図29に示した、2種類の分離媒体であるAポリマ溶液25とBポリマ溶液28を装置上で切り替え可能なキャピラリアレイ電気泳動装置の別の構成例(変形例)を示す図である。この構成を採用することにより、同一のキャピラリアレイを用いながら、キャピラリアレイを装置から着脱せずに、複数種類のポリマ溶液による電気泳動分析が可能となる。
図30に示すキャピラリアレイ電気泳動装置では、シリンジ11とポリマブロック9との間にロータリーバルブ35が挿入され、配管で接続されている。ロータリーバルブ35は、Aポリマ溶液25を内包する容器、Bポリマ溶液28を内包する容器、純水34を内包する容器とも接続されている。ロータリーバルブ35は、シリンジ11の内部、Aポリマ溶液25、Bポリマ溶液28、純水34、空気、およびポリマブロック9の内部の内、任意の二つを接続することができる。
<分析セッションにおけるAモードおよびBモードの動作、およびそれらの切り替え動作>
[1]Aモードについて
まず、Aモードについて説明する。図30に示すように、ロータリーバルブ35とバルブ10の間の流路がAポリマ溶液25で満たされている状態、つまり、試料溶出端3がAポリマ溶液25と接触している状態とする。このとき、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部のAポリマ溶液25とポリマブロック9の内部のAポリマ溶液25を接続させ、かつバルブ10を閉とし、シリンジ11のピストンを押し下げることにより、ポリマブロック9の内部のAポリマ溶液25に加圧し、Aポリマ溶液25を各キャピラリ1の内部に、試料溶出端3から試料注入端2に向かって充填する。Aポリマ溶液25の充填後、バルブ10を開とし、各キャピラリ1に試料注入端2からそれぞれ異なるサンプルを注入した後、陰極4と陽極5の間に電源8により高電圧を印加することにより、キャピラリ電気泳動を実施する。
[2]AモードからBモードへの切り替えについて
次に、AモードからBモードに切り替える方法を説明する。所望の電気泳動分析を実施するためには、ポリマブロック9の内部で、試料溶出端3が接触するポリマ溶液が、Aポリマ溶液25とBポリマ溶液28が混在したものであったり、Aポリマ溶液25またはBポリマ溶液28が薄まったものであったり、あるいはポリマ溶液に気泡が混入したものであったりしないことが必要である。そこで、次の工程によってAモードからBモードへの切り替えを行う。(1) ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部のAポリマ溶液25とポリマブロック9の内部のAポリマ溶液25を接続させ、かつバルブ10を開とし、シリンジ11のピストンを一番下まで押し下げることにより、シリンジ11から内部のAポリマ溶液25を全量排出する。排出された量と同量のAポリマ溶液25はポリマブロック9から廃液槽に排出される。このとき、シリンジ11の先端部からポリマブロック9の陽極側緩衝液7との境界までの流路はAポリマ溶液25で満たされた状態である。(2) 続いて、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部と純水34を接続させ、かつバルブ10を閉とし、シリンジ11のピストンを一番上まで押し上げることにより、シリンジ11の内部に純水34を満たす。(3) そして、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部の純水34とポリマブロック9の内部のAポリマ溶液25を接続させ、かつバルブ10を開とし、シリンジ11のピストンを一番下まで押し下げることにより、シリンジ11から内部の純水34を全量排出する。排出された量と同量のAポリマ溶液25および純水34はポリマブロック9から廃液槽に排出される。このとき、シリンジ11の先端部からポリマブロック9の陽極側緩衝液7との境界までの流路は純水34で満たされた状態である。必要に応じて、(2)と(3)の工程を繰り返して、Aポリマ溶液25が流路に残留しないようにする。(4) さらに続いて、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部と外気を接続させ、かつバルブ10を閉とし、シリンジ11のピストンを一番上まで押し上げることにより、シリンジ11の内部に空気を満たす。(5) そして、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部の空気とポリマブロック9の内部の純水34を接続させ、かつバルブ10を開とし、シリンジ11のピストンを一番下まで押し下げることにより、シリンジ11から内部の空気を全量排出する。排出された量と同量の純水34および空気はポリマブロック9から廃液槽に排出される。このとき、シリンジ11の先端部からポリマブロック9の陽極側緩衝液7との境界までの流路は空気で満たされた状態である。必要に応じて、(4)と(5)の工程を繰り返して、流路に液体が残留しないようにする。(6) 今度は、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部とBポリマ溶液28を接続させ、かつバルブ10を閉とし、シリンジ11のピストンを一番上まで押し上げることにより、シリンジ11の内部にBポリマ溶液28を満たす。(7) 最後に、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部のBポリマ溶液28とポリマブロック9の内部の空気を接続させ、かつバルブ10を開とし、シリンジ11のピストンを押し下げることにより、ポリマブロック内部の空気の全量がポリマブロック9から廃液槽に排出される。シリンジ11の先端部からポリマブロック9の陽極側緩衝液7との境界までの流路がBポリマ溶液28で満たされた段階で、シリンジ11のピストンの下降を停止し、Bモードへの移行が完了する。
[3]Bモードについて
続いて、Bモードについて説明する。ロータリーバルブ35とバルブ10の間の流路がBポリマ溶液28で満たされている状態、つまり、試料溶出端3がBポリマ溶液28と接触している状態とする。このとき、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部のBポリマ溶液28とポリマブロック9の内部のBポリマ溶液28を接続させ、かつバルブ10を閉とし、シリンジ11のピストンを押し下げることにより、ポリマブロック9の内部のBポリマ溶液28に加圧し、Bポリマ溶液28を各キャピラリ1の内部に、試料溶出端3から試料注入端2に向かって充填する。Bポリマ溶液28の充填後、バルブ10を開とし、各キャピラリ1に試料注入端2からそれぞれ異なるサンプルを注入した後、陰極4と陽極5の間に電源8により高電圧を印加することにより、キャピラリ電気泳動を実施する。
[4]BモードからAモードへの切り替えについて
最後に、BモードからAモードに切り替える方法を説明する。(1) ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部のBポリマ溶液28とポリマブロック9の内部のBポリマ溶液28を接続させ、かつバルブ10を開とし、シリンジ11のピストンを一番下まで押し下げることにより、シリンジ11から内部のBポリマ溶液28を全量排出する。排出された量と同量のBポリマ溶液28はポリマブロック9から廃液槽に排出される。このとき、シリンジ11の先端部からポリマブロック9の陽極側緩衝液7との境界までの流路はBポリマ溶液28で満たされた状態である。(2) 続いて、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部と純水34を接続させ、かつバルブ10を閉とし、シリンジ11のピストンを一番上まで押し上げることにより、シリンジ11の内部に純水34を満たす。(3) そして、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部の純水34とポリマブロック9の内部のBポリマ溶液28を接続させ、かつバルブ10を開とし、シリンジ11のピストンを一番下まで押し下げることにより、シリンジ11から内部の純水34を全量排出する。排出された量と同量のBポリマ溶液28および純水34はポリマブロック9から廃液槽に排出される。このとき、シリンジ11の先端部からポリマブロック9の陽極側緩衝液7との境界までの流路は純水34で満たされた状態である。必要に応じて、(2)と(3)の工程を繰り返して、Bポリマ溶液28が流路に残留しないようにする。(4) さらに続いて、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部と外気を接続させ、かつバルブ10を閉とし、シリンジ11のピストンを一番上まで押し上げることにより、シリンジ11の内部に空気を満たす。(5) そして、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部の空気とポリマブロック9の内部の純水34を接続させ、かつバルブ10を開とし、シリンジ11のピストンを一番下まで押し下げることにより、シリンジ11から内部の空気を全量排出する。排出された量と同量の純水34および空気はポリマブロック9から廃液槽に排出される。このとき、シリンジ11の先端部からポリマブロック9の陽極側緩衝液7との境界までの流路は空気で満たされた状態である。必要に応じて、(4)と(5)の工程を繰り返して、流路に液体が残留しないようにする。(6) 今度は、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部とAポリマ溶液25を接続させ、かつバルブ10を閉とし、シリンジ11のピストンを一番上まで押し上げることにより、シリンジ11の内部にAポリマ溶液25を満たす。(7) 最後に、ロータリーバルブ35がシリンジ11の内部のAポリマ溶液25とポリマブロック9の内部の空気を接続させ、かつバルブ10を開とし、シリンジ11のピストンを押し下げることにより、ポリマブロック内部の空気の全量がポリマブロック9から廃液槽に排出される。シリンジ11の先端部からポリマブロック9の陽極側緩衝液7との境界までの流路がAポリマ溶液25で満たされた段階で、シリンジ11のピストンの下降を停止し、Aモードへの移行が完了する。
以上の説明の通り、AモードとBモードの切り替えを、効率的に、あるいは確実に実施するためには、装置が次のような特徴的な構造を有することが効果的である。第8の実施形態におけるロータリーバルブ35は、第7の実施形態におけるAバルブ26、Bバルブ29、および洗浄バルブ32の役割を兼ねている。また、第8の実施形態におけるシリンジ11は、第7の実施形態におけるAシリンジ24、Bシリンジ27、および洗浄フローの役割を兼ねている。さらに、第8の実施形態におけるバルブ10は、第7の実施形態における陽極槽バルブ31と同じ役割である。そのように考えれば、第7の実施形態で述べた特徴的な構造1~4が第8の実施形態でも成り立つと言える。あるいは、次のように第8の実施形態に特化した表現も可能である。特徴的な構造は、Aポリマ溶液25、Bポリマ溶液28、純水34、または空気のいずれかに対する加圧機構であるシリンジ11に最も近接する開閉機構であるロータリーバルブ35と、陽極側緩衝液7に最も近接する開閉機構である陽極槽バルブ10の間の流路に、キャピラリ1の試料溶出端3が接続している点にある。
(J)まとめ
(i)発光蛍光強度分布に対する最適な補正係数は、分離媒体の屈折率n3によって異なってくる。これを前提としたとき、屈折率n3が規定されていない場合(不明な場合)、どのような補正係数を用いれば良いか不明であり、最適な補正係数を用いない場合にはそのこと自体が誤差の要因となり得る。そもそも分離媒体の屈折率n3は温度など環境条件によっても変化する。このような条件下でどのような補正を掛ければよいのかは必ずしも明らかではない。そこで、本開示の技術では、キャピラリアレイ内の分離媒体の屈折率n3と相対蛍光強度分布を2次関数で近似した場合の2次係数との関係(図17(c))を導入する。図17(a)に示すように補正前の相対蛍光強度分布はすべて下に凸形状となり、図17(c)に示すように2次係数は正である。これに対する補正は,どの屈折率n3を基準とするかによって補正が適切であるかどうかが変わってくる。例えば、屈折率n3=1.36を基準にデジタル補正を行うと、屈折率n3=1.36の分離媒体の場合には,補正後の相対蛍光強度分布は平坦となり,2次係数がゼロとなる。これに対して,1.36より大きい屈折率の分離媒体の場合には,補正後の相対蛍光強度分布が上に凸の形状となり、2次係数が負となる。これは,補正が過剰であることを示す。また、1.36より小さい屈折率の分離媒体の場合には,補正後の相対蛍光強度分布が下に凸となり,2次係数が正となる。これは,補正が不足であることを示す。しかし、補正が過剰あるいは不足の場合であっても,補正前の相対蛍光強度分布と比較すると平坦化されているため、補正の効果は期待できる(補正は有効)と考えられる。つまり、本開示の技術の特徴の1つは、使用する分離媒体の屈折率n3に合せて補正基準およびデジタル補正係数分布を変更する点にある。
本開示では、レーザ照射部14におけるN本のキャピラリ(キャピラリ配列の一端から配列順にキャピラリ番号n=1、2、…、N)のキャピラリ番号nのレーザ照射光強度をnの関数で表したレーザ照射強度分布L(n)の凸の度合を示す2次導関数の1≦n≦Nにおける平均値をA(キャピラリの位置によって当該2次導関数が多少ばらつくため平均値を用いる)とする。Aは、所定条件下においては一意に定まる値である。また、レーザ照射部14におけるN本のキャピラリ内部に等濃度の発光物質が存在するときのキャピラリ番号nの出力光強度をnの関数で表した出力蛍光強度分布H(n)の凸の度合を示す2次導関数の1≦n≦Nにおける平均値をBとする。このとき、少なくとも、屈折率n3<1.36の分離媒体を用いたキャピラリ電気泳動の分析モードを有し、|A|>|B|が成立するようにキャピラリ電気泳動装置が構成されている。つまり、|A|>|B|であれば、n3<1.36となる屈折率を有する分離媒体を用いる場合には、下に凸の相対蛍光強度分布が平坦に近づき、有効な補正が実現できるのである。
(ii)より具体的に、|A|>|B|は、光学系による光学補正、あるいは計算機演算によるデジタル補正の少なくとも一方を実行することにより実現できる。光学系の構成を特に工夫しなくてもデジタル補正によって|A|>|B|を実現することはできるが、光学系の構成を変更し、かつ計算機演算によるデジタル補正を実行してもよい。また、光学系の構成を変更するだけで|A|>|B|を実現してもよい。
例えば、キャピラリ数が24本であって、比較的高い屈折率の分離媒体をもちい用いる場合、図5に示すように、実際の光学系の補正係数J(n)を適用しただけで相対蛍光強度分布が平坦になっている。このようなケース(分離媒体の屈折率が高い場合)であればデジタル補正は必要ないことが分かる。これに対して、比較的細いキャピラリ(図6参照)を用いると、屈折率の高低に関係なく、光学系による補正を加えてもそれ程の補正効果は期待できない。細いキャピラリを用いているため、各キャピラリが光学系の中心軸に寄っており、光学的な補正が有効とならないからである。例えば、光学系による補正によって相対蛍光強度分布が少し平坦にはなるが完全にはならない場合がある。このような場合、デジタル補正を追加することでさらに平坦性が改善する(図11参照)。つまり、光学系による補正では足りない部分をデジタル補正で補填し、光学補正とデジタル補正とを合せることにより、全体として平坦にする。簡易な方法としては、例えば、デジタル補正係数を最適化して屈折率に応じて相対蛍光強度分布が平坦になるようにすることが考えられる。一方、場合によっては、デジタル補正をせずに、光学系を人為的に変更(光学系の少なくとも一部の構成を変更)して光学系を最適化することによって平坦な相対蛍光強度分布を実現することもある。
以上のように、本開示の技術では、光学系の少なくとも一部の構成を変更して平坦な相対蛍光強度分布を実現してもよいし、デジタル補正のみでそれを実現してもよい。さらに、それら両方を用いてそれを実現してもよい。
なお、光学系の補正係数分布の具体的制御方法は、例えば、米国特許7477381B公報や上記特許文献3(特許6113549号公報)に示されている。前者には、図24に示すようなキャッツアイ型のlight blocking aperture 112を光学系に挿入することによって、各キャピラリからの発光を均等効率で受光することが示されている。また、後者には、可変濃度フィルタ(位置によって光の透過率を変化させたフィルタ)を光学系に挿入することによって、各キャピラリからの発光を均等受光することが示されている。両文献とも受光効率を均一化することを示しているが、これは一例であり必ずしも均一にする必要はない。ここで示したかったことは、それぞれのデバイスの設計を変化させることによって光学系の補正係数分布を制御することができるということである。
(iii)本開示では、分析に用いる分離媒体の屈折率n3の値(複数)に対応して、予め決められたデジタル補正の係数がメモリに格納されている。計算機は、メモリから補正係数を読み込み(テーブルを切り替える)、これを適用することにより適切に実測蛍光強度分布M(n)を補正することが可能となる。通常はキャリブレーションを行って補正するが、補正できる場合とできない場合があるので、補正係数を読み込んで使用することは有効である。
(iv)本開示の技術の特徴の1つは、想定される屈折率n3よりも大きいあるいは小さい分離媒体をキャピラリに導入すると上記Bの値(出力光強度をnの関数で表したH(n)の凸の度合を示す2次導関数の1≦n≦Nにおける平均値)が変化するという点にある。例えば、屈折率n3=1.36を基準に相対蛍光強度分布が補正されているとき、図17(c)(縦軸の値参照)から屈折率n3=1.36ではB≒0となる。この場合に敢えて屈折率n3=1.36よりも高い屈折率や低い屈折率の分離媒体をキャピラリに導入すると、相対蛍光強度分布の上に凸の程度や下に凸の程度が変化する。このような観点は、本開示の技術によって初めて見出されたものである。
(v)また、本開示の技術の特徴の1つは、分離媒体の屈折率n3を順次増加させた場合、キャピラリ番号nの出力光強度をnの関数で表した出力蛍光強度分布H(n)の2次導関数の平均値Bが必ず正から負に変化する点にもある。この点も従来技術にはあり得ない特徴である。このとき、非常に屈折率n3が高い分離媒体(例えば、屈折率n3=1.42)をキャピラリに導入すると、上記Bの値が負になり(相対蛍光強度分布が上に凸)、非常に屈折率n3が低い分離媒体(例えば、屈折率n3=1.30)をキャピラリに導入すると、上記Bの値が正となる(相対蛍光強度分布が下に凸)。
(vi)さらに、本開示の技術の特徴の1つは、予め屈折率n3が決まった複数の分離媒体を用いる点にもある。現行製品は、複数種類の分離媒体を用いることができるが、屈折率n3はいずれの分離媒体も1.41である。これに対して、本開示の技術では、n3=1.41だけでなく、n3=1.33やn3=1.36などの分離媒体(複数の屈折率の分離媒体)も分析に用いることができる。このような観点は、本開示の技術によって初めて見出されたものである。
1 キャピラリ
2 試料注入端
3 試料溶出端
4 陰極
5 陽極
6 陰極側緩衝液
7 陽極側緩衝液
8 電源
9 ポリマブロック
10 バルブ
11 シリンジ
12 レーザ光源
13 レーザビーム
14 レーザ照射部
15 集光レンズ
16 レーザカットフィルタ
17 透過型回折格子
18 結像レンズ
19 センサ
20 発光点
21 蛍光
22 結像点
23 光軸
24 Aシリンジ
25 Aポリマ溶液
26 Aバルブ
27 Bシリンジ
28 Bポリマ溶液
29 Bバルブ
30 デュアルポリマブロック
31 陽極槽バルブ
32 洗浄バルブ
33 洗浄フロー
34 純水
35 ロータリーバルブ

Claims (15)

  1. レーザビームを出射するレーザ光源と、
    Nを2以上の整数として、前記レーザビームが一括照射されるN本のキャピラリのレーザ照射部が同一の配列平面上に概ね配列されて構成されるキャピラリアレイと、
    前記N本のキャピラリからの発光を一括計測する光学系と、
    前記光学系で実測された光強度に所定の処理を加えて出力する計算機と、を備え、
    前記レーザ照射部における前記N本のキャピラリの、外半径をR、内半径をr、外部の媒体の屈折率をn、素材の屈折率をn、および内部の媒体の屈折率をnとし、
    前記レーザ照射部における前記N本のキャピラリのそれぞれに、配列の一端から配列順にキャピラリ番号n=1、2、…、Nを付与し、
    前記キャピラリ番号nのレーザ照射光強度をnの関数で表したL(n)の凸の度合を示す2次導関数の1≦n≦Nにおける平均値をAとし、
    前記レーザ照射部における前記N本のキャピラリ内部に等濃度の発光物質が存在するときの、前記計算機による前記キャピラリ番号nの出力光強度をnの関数で表したH(n)の凸の度合を示す2次導関数の1≦n≦Nにおける平均値をB、とするとき、
    少なくとも、屈折率n<1.36の分離媒体を用いたキャピラリ電気泳動の分析モードを有し、|A|>|B|である、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  2. 請求項1において、
    前記光学系のケラレ効果による光学系補正、あるいは前記計算機の処理によるデジタル補正の少なくとも一方によって前記|A|>|B|が実現される、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  3. 請求項2において、
    前記計算機は、前記デジタル補正のための補正係数を予め格納するメモリから当該補正係数を読み込み、前記デジタル補正を実行する、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  4. 請求項1において、
    前記N本のキャピラリのそれぞれに充填されている分離媒体の屈折率n3_actualが、前記計算機が前記所定の処理を実行する上で認識している屈折率n3_assumeよりも大きくなるに従って前記H(n)の2次導関数の平均値Bが小さくなり、前記屈折率n3_actualが前記屈折率n3_assume よりも小さくなるに従って前記平均値Bが大きくなる、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  5. 請求項2において、
    前記H(n)の2次導関数の平均値の絶対値|B|を低減させるように、前記N本のキャピラリのそれぞれに充填されている分離媒体の屈折率nに応じて、前記光学系の構成の少なくとも一部が変更され、前記光学系補正の補正係数が変えられる、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  6. 請求項2において、
    前記H(n)の2次導関数の平均値の絶対値|B|を低減させるように、前記N本のキャピラリのそれぞれに充填されている分離媒体の屈折率nに応じて、前記計算機によるデジタル補正の補正係数が変えられる、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  7. レーザビームを出射するレーザ光源と、
    Nを2以上の整数として、前記レーザビームが一括照射されるN本のキャピラリのレーザ照射部が同一の配列平面上に概ね配列されて構成されるキャピラリアレイと、
    前記N本のキャピラリからの発光を一括計測する光学系と、
    前記光学系で実測された光強度データに対して所定の処理を実行する計算機と、を備え、
    前記レーザ照射部における前記N本のキャピラリの、外半径をR、内半径をr、外部の媒体の屈折率をn、素材の屈折率をn、および内部の媒体の屈折率をnとし、
    前記レーザ照射部における前記N本のキャピラリのそれぞれに、配列の一端から配列順にキャピラリ番号n=1、2、…、Nを付与し、
    前記計算機による前記キャピラリ番号nの出力光強度をH(n)とし、
    前記レーザ照射部における前記N本のキャピラリ内部に等濃度の発光物質が存在するときのH(n)をnの関数で近似するとき、
    前記計算機は、前記所定の処理によって、前記関数H(n)の2次導関数の1≦n≦Nにおける平均値の符号を、前記屈折率nの増加に伴って正から負に変化させる、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  8. 請求項7において、
    前記計算機は、前記H(n)の2次導関数の平均値の符号を、1.30≦n≦1.42の範囲内で変化させる、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  9. 請求項7において、
    前記計算機は、前記屈折率n=1.42のとき、前記H(n)の2次導関数の平均値の符号を負にする、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  10. 請求項7において、
    前記計算機は、前記屈折率n=1.30のとき、前記H(n)の2次導関数の平均値の符号を正にする、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  11. レーザビームを出射するレーザ光源と、
    Nを2以上の整数として、前記レーザビームが一括照射されるN本のキャピラリのレーザ照射部が同一の配列平面上に概ね配列されて構成されるキャピラリアレイと、
    前記N本のキャピラリからの発光を一括計測する光学系と、
    前記光学系で実測された光強度を出力する計算機と、を備え、
    前記レーザ照射部における前記N本のキャピラリの、外半径をR、内半径をr、外部の媒体の屈折率をn、素材の屈折率をn、および内部の媒体の屈折率をnとし、
    前記レーザ照射部における前記N本のキャピラリのそれぞれに、配列の一端から配列順にキャピラリ番号n=1、2、…、Nを付与するとき、
    前記キャピラリアレイに導入される分離媒体は、1.33≦n≦1.41の異なる屈折率を有する複数種類の分離媒体から選択されている、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  12. 請求項11において、
    前記複数種類の分離媒体は、n<1.36の屈折率を有する分離媒体を含む、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  13. 請求項11において、
    前記計算機は、前記複数種類の分離媒体の中から、使用する分離媒体を選択するためのユーザインタフェース画面を表示画面上に表示する、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  14. 請求項13において、
    前記計算機による前記キャピラリ番号nの出力光強度をH(n)とするとき、
    前記N本のキャピラリのそれぞれに充填されている分離媒体の屈折率nを固定した状態で、前記計算機で選択する分離媒体の種類を変化させると、前記H(n)が変化する、キャピラリアレイ電気泳動装置。
  15. 請求項13において、
    前記計算機による前記キャピラリ番号nの出力光強度をH(n)とし、
    H(n)をnの2次関数で近似した際の2次係数をαとするとき、
    前記N本のキャピラリのそれぞれに充填されている分離媒体の屈折率nよりも、前記計算機で選択されている分離媒体の屈折率nが大のとき、前記2次係数αは正となり、
    前記N本のキャピラリのそれぞれに充填されている分離媒体の屈折率nよりも、前記計算機で選択されている分離媒体の屈折率nが小のとき、前記2次係数αは負となる、キャピラリアレイ電気泳動装置。
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