JP7334763B2 - 窒化アルミニウム-窒化ホウ素複合凝集粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
これらの中で、h-BNは、黒鉛と同じ層状構造を有し、合成が比較的容易でかつ熱伝導性、固体潤滑性、化学的安定性、耐熱性に優れるという特徴を備えていることから、電気・電子材料分野で多く利用されている。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
が凝集してなる窒化アルミニウム-窒化ホウ素複合凝集粒子。
(2)前記窒化ホウ素一次粒子がカードハウス構造を形成している(1)に記載の複合凝集粒子。
(3)少なくとも、ホウ素、炭素、窒素、及び酸素からなる成分を含有する(1)又は(2)に記載の複合凝集粒子。
(4)窒化アルミニウム一次粒子及び窒化ホウ素一次粒子が凝集してなる窒化アルミニウム-窒化ホウ素複合凝集粒子の製造法であって、酸化アルミニウムの還元窒化ステップ、を含む製造法。
(5)前記還元窒化ステップは、カーボンブラック存在下、非酸化性ガス又は還元性ガス雰囲気下にて行われる、(4)に記載の製造法。
請求項1から3のいずれか1項に記載の複合凝集粒子と、樹脂よりなる複合材組成物。(6)(1)から(3)に記載の複合凝集粒子の何れかと、樹脂よりなる複合材組成物。(7)(6)に記載の複合材組成物を成形してなるシート又は基板。
(8)放熱用部材である、(7)に記載のシート又は基板。
[AlN-BN複合凝集粒子]
本発明のAlN-BN複合凝集粒子は、AlN一次粒子及びBN一次粒子が凝集して形成されたものであり、本願発明の効果を損なわない範囲で、上記AlN一次粒子または上記BN一次粒子以外の成分を含有してもよい。AlN一次粒子またはBN一次粒子以外の成分としては、後記の[BN凝集粒子の製造方法]で述べる、スラリーに添加してもよいバインダー、界面活性剤、溶媒に由来する成分を挙げることができる。
る。ここで「球状」とは、アスペクト比(長径と短径の比)が1以上2以下、好ましくは1以上1.5以下であることをさす。本発明のAlN-BN複合凝集粒子のアスペクト比は、SEMで撮影された画像から200個以上の粒子を任意に選択し、それぞれの長径と短径の比を求めて平均値を算出することにより決定する。
・一次粒子の大きさ
AlN-BN複合凝集粒子を構成するBN一次粒子の長軸は通常0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは、0.5μm以上、更に好ましくは0.7μm以上、特に好ましくは1.0μm以上である。また通常10μm以下、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下である。尚、上記長軸とはSEM測定により得られたBN凝集粒子1粒を拡大し、1粒のBN凝集粒子を構成しているBN一次粒子について、画像上で観察できるBN一次粒子の最大長を平均した値である。
AlN-BN複合凝集粒子を構成するAlN一次粒子の長軸は通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは、1.0μm以上、更に好ましくは2.0μm以上、特に好ましくは3.0μm以上である。また通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。尚、上記長軸とはSEM測定により得られたAlN-BN複合凝集粒子1粒を拡大し、1粒のAlN-BN複合凝集粒子を構成しているAlN一次粒子について、画像上で観察できるAlN一次粒子の最大長を平均した値である。
BN一次粒子の結晶構造は、特に限定されないが、合成の容易さと熱伝導性の点で六方晶系のh-BNを主成分として含むものが好ましい。また、バインダーとしてBN以外の無機成分が含まれる場合、熱処理の過程でそれらが結晶化するが、BNが主成分として含まれていればよい。なお、上記BN一次粒子の結晶構造は、XRD測定により確認することができる。
AlN-BN複合凝集粒子の平均粒子径(D50)は、通常1.0μm以上であり、好ましくは5.0μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上であり、特に好ましくは30μm以上、最も好ましくは40μm以上であり、50μm以上であっても好ましく、60μm以上であっても好ましい。また、通常200μm以下、好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。大きすぎると成形体とした際に表面の平滑性が悪くなる、AlN-BN複合凝集粒子間の間隙が多くなる等により、熱伝導性が向上しない傾向がある。小さすぎると成形体とした際にAlN-BN複合凝集粒子間の接触抵抗が大きくなる、AlN-BN複合凝集粒子自体の熱伝導性が低くなる等の傾向がある。
AlN-BN複合凝集粒子中のAlNとBNとの組成比は特段限定されないが、AlN:BN比(質量比)は通常3:97~85:15であり、好ましくは10:90~80:20であり、更に好ましくは20:80~55:45である。上記範囲内とすることで、BN一次粒子によるカードハウス構造が形成され、好ましい。
{スラリーの調製}
<原料BN粉末>
・原料BN粉末の種類
本発明で用いる原料BN粉末としては、市販のh-BN、市販のαおよびβ-BN、ホウ素化合物とアンモニアの還元窒化法により作製されたBN、ホウ素化合物とメラミンなどの含窒素化合物から合成されたBNなど何れも制限なく使用できるが、特にh-BNが本発明の効果をより発揮する点で好ましく用いられる。
本発明で用いる原料BN粉末の形態としては、XRD測定により得られるピークの半値幅が広く、結晶性が低い粉末状のBN粒子が好適である。結晶性の目安として、XRD測定から得られる(002)面のピーク半値幅が、2θの角度で、通常0.4°以上、好ましくは0.45°以上、より好ましくは0.5°以上である。また、通常2.0°以下、好ましくは1.5°以下、更に好ましくは1°以下である。上記上限より大きいと、結晶子が十分大きくならず、大きくするためには長時間を要するため、生産性が悪くなる傾向がある。上記下限未満だと、結晶性が高すぎて、十分な結晶成長が見込めず、また、スラリー作製時の分散安定性が悪くなる傾向がある。
BN結晶成長の観点からは、原料BN粉末中に酸素原子がある程度存在することが好ましく、本発明では、原料BN粉末中の全酸素濃度は、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上である。また、通常、20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。上記上限より大きいと、熱処理後も酸素が残存しやすくなるため、熱伝導性の改善効果が小さくなる傾向がある。上記下限未満だと、結晶性が高すぎて、結晶成長が見込めず、XRD測定から確認できるピーク強度比が所望の範囲から外れる傾向がある。
なお、原料BN粉末の全酸素濃度は、不活性ガス融解-赤外線吸収法により、株式会社堀場製作所製の酸素・窒素分析計を用いて測定することができる。
・原料Al2O3粉末の種類
本発明で用いる原料Al2O3粉末としては、市販のα、γ、δおよびθ-Al2O3、アモルファスAl2O3など何れも制限なく使用できる。
原料Al2O3粉末の粒子径は特段限定されないが、通常0.005μm~10μmであり、好ましくは0.01μm~5μmであり、更に好ましくは0.1μm~1μmである。上記範囲内とすることで、原料BN粉末と原料Al2O3粉末がスラリー中で分離しにくくなり、かつ、スラリーが高粘度化しすぎなくなる。
・カーボンブラックの種類
本発明で用いるカーボンブラック粉末としては、市販のカーボンブラックなど何れも制限なく使用できる。
カーボンブラックは、ファーネス法、チャンネル法などのカーボンブラック、アセチレンブラックなどを使用することができる。これらカーボンブラックの粒径は、任意であるが、0.01~20μmのものが好ましい。カーボンブラックの代替として、黒鉛、高温でカーボン源となり得るカーボン前駆体を使用する事も出来る。カーボン前駆体としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フランフェノール樹脂等の合成樹脂縮合物やピッチ、タール等の炭化水素化合物、セルロース、ショ糖、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンなどの有機化合物が挙げられる。特に、フェノール樹脂、セルロース、ポリフェニレンなど金属不純物などが少ないものが好ましい。
Al2O3-BNスラリーの調製に用いる媒体としては特に制限はなく、水及び/又は各種の有機溶媒を用いることができるが、噴霧乾燥の容易さ、装置の簡素化などの観点から、水を用いることが好ましく、純水がより好ましい。
Al2O3-BNスラリーは、原料Al2O3粉末および原料BN粉末を効果的に粒子状に造粒するために、バインダーを含んでもよい。バインダーは、一次粒子同士を強固に結びつけ、造粒粒子を安定化するために作用する。
Al2O3-BNスラリーに用いるバインダーとしては、一次粒子同士の接着性を高めることができるものであればよいが、本発明においては、造粒粒子は粒子化後に加熱処理されるため、この加熱処理工程における高温条件に対する耐熱性を有するものが好ましい。
スラリー調製方法は、原料Al2O3粉末および原料BN粉末、更に必要により、媒体、バインダー、界面活性剤が均一に分散し、所望の粘度範囲に調製されていれば特に限定されないが、原料BN粉末、原料Al2O3粉末及び媒体、更に必要により、バインダー、界面活性剤を用いる場合、好ましくは以下のように調製する。
添加の順番は特に制限はないが、大量の原料Al2O3粉末および原料BN粉末をスラリー化する場合、だまなどの凝集物ができやすくなるため、水に界面活性剤とバインダーを加えた水溶液を作製した後、所定量の原料Al2O3粉末および原料BN粉末を少量ずつ添加し、これを家庭用ハンドミキサーを用いて撹拌してスラリー化しても良い。
原料Al2O3粉末および原料BN粉末の含有比は特段限定されないが、原料Al2O3粉末:原料BN粉末比(質量比)は通常1:99~90:10であり、好ましくは2:98~85:15であり、更に好ましくは13:87~60:40である。上記範囲内とすることで、BN一次粒子によるカードハウス構造が形成され、好ましい。
Al2O3-BN複合スラリーから造粒粒子を得るには、スプレードライ法、転動法、流動層法、そして撹拌法などの一般的な造粒方法を用いることができ、この中でもスプレードライ法が好ましい。
スプレードライ法では、原料となるスラリーの濃度、装置に導入する単位時間当たりの送液量と送液したスラリーを噴霧する際の圧空圧力及び圧空量により、所望の大きさの造粒粒子を製造することが可能であって、球状の造粒粒子を得ることも可能である。
上記のAl2O3-BN複合造粒粒子を更に酸化雰囲気下で加熱処理することで、Al2O3-BN複合仮加熱処理粒子を製造することができる。
ここで、酸化雰囲気とは、酸素ガスなどを含む酸化性ガス雰囲気のことである。ここで用いる酸性ガスの種類によりAl2O3-BN複合造粒粒子中の有機成分の燃焼による除去加減が異なってくる。
仮加熱処理温度は通常500℃以上、900℃以下であるが、好ましくは700℃以上であり、また好ましくは800℃以下である。仮加熱処理温度が低すぎると、有機成分の燃焼による除去が不十分となり、後述する加熱処理工程に於いて窒素および炭素を含有する有毒ガスが発生する恐れがある。仮加熱処理温度が高すぎると、BNが酸化されてしまうおそれがある。
上記のAl2O3-BN複合仮加熱処理粒子を更に非酸化性ガス雰囲気下に加熱処理することで、Al2O3-BN複合熱処理粒子を製造することができる。
ここで、非酸化性ガス雰囲気とは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、アンモニアガス、水素ガス、メタンガス、プロパンガス、一酸化炭素ガスなどの雰囲気のことである。ここで用いる雰囲気ガスの種類によりAl2O3粒子またはBN粒子の結晶化速度が異なるものとなり、結晶化を短時間で行うためには特に窒素ガス、もしくは窒素ガスと他のガスを併用した混合ガスが好適に用いられる。
加熱処理温度は通常1500℃以上、2000℃以下であるが、好ましくは1600℃以上であり、また好ましくは1900℃以下である。加熱処理温度が低すぎると、BNの平均結晶子の成長が不十分となり、BN凝集粒子および成形体の熱伝導率が小さくなる場合がある。加熱処理温度が高すぎると、Al2O3またはBNの分解などが生じてしまうおそれがある。
上記のAl2O3-BN複合熱処理粒子を還元窒化処理することで、AlN-BN複合凝集粒子を製造することができる。
ここで、還元窒化処理とは、Al2O3-BN複合熱処理粒子とカーボンブラックとの混合物を非酸化性ガス雰囲気下もしくは還元性ガス雰囲気下にて加熱処理することである。
ここで、非酸化性ガス雰囲気とは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、アンモニアガス、水素ガス、メタンガス、プロパンガス、一酸化炭素ガスなどの雰囲気のことである。また、ここで、還元性ガス雰囲気下とは、アンモニアガス、水素ガス、一酸化炭素ガスなどを含む雰囲気のことである。
加熱処理温度は通常1000℃以上、2000℃以下であるが、好ましくは1600℃以上であり、また好ましくは1900℃以下である。加熱処理温度が低すぎると、還元窒化が不十分となり、AlN-BN複合凝集粒子および成形体の熱伝導率が小さくなる場合がある。加熱処理温度が高すぎると、Al2O3、AlN、またはBNの分解などが生じてしまうおそれがある。
還元窒化処理においてカーボンブラックの含有量は特段限定されないが、Al2O3-BN複合熱処理粒子中のAl2O3100質量部に対し通常30質量部以上、好ましくは35質量部以上であり、また通常75質量部以下、好ましくは55質量部以下である。
上記のAlN-BN複合凝集粒子を更に酸化雰囲気下で加熱処理することで、高純度AlN-BN複合凝集粒子を製造することができる。
ここで、酸化雰囲気とは、酸素ガスなどを含む酸化性ガス雰囲気のことである。ここで用いる酸性ガスの種類によりAlN-BN複合凝集粒子に残留する余剰カーボンブラックの燃焼による除去加減が異なってくる。
カーボンブラック除去処理温度は通常500℃以上、900℃以下であるが、好ましくは700℃以上であり、また好ましくは800℃以下である。カーボンブラック除去処理温度が低すぎると、カーボンブラックの燃焼による除去が不十分となり、AlN-BN複合凝集粒子の絶縁性が低下する恐れがある。カーボンブラック除去処理温度が高すぎると
、BNが酸化されてしまうおそれがある。
窒化アルミニウム一次粒子及び窒化ホウ素一次粒子が凝集してなる窒化アルミニウム-窒化ホウ素複合凝集粒子の製造法であって、酸化アルミニウムの還元窒化ステップ、を含む製造法である。
上記還元窒化ステップは、カーボンブラック存在下、非酸化性ガス又は還元性ガス雰囲気下にて行われることが好ましい。
本発明の別の実施形態は、上記AlN-BN複合凝集粒子をマトリクスに配合させてなる、複合材組成物である。
用いるマトリクスは熱伝導性が高いことが好ましく、マトリクスの熱伝導率は0.2W/mK以上であることが好ましく、特に0.22W/mK以上であることが好ましい。
なお、マトリクスの熱伝導率の測定方法は以下の装置を用いて、熱拡散率、比重、及び比熱を測定し、この3つの測定値を乗じることで熱伝導率を求める。
(1)熱拡散率:アイフェイズ社製 「アイフェイズ・モバイル 1u」
(2)比重:メトラー・トレド社製 「天秤 XS-204」(固体比重測定キット使用)
(3)比熱:セイコーインスツル社製 「DSC320/6200」
熱硬化性樹脂、熱硬化性樹脂としては、例えばWO2013/081061に例示されたものを用いることができる。このうち、熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、特にエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
エポキシ樹脂としては、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。中でも、耐熱性がより一層高められることから、フルオレン骨格及び/又はビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂が特に好ましく、とりわけビルフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格及びビフェニル骨格のうちの少なくとも1つ以上の骨格を有するフェノキシ樹脂であることが好ましい。
また、複合材組成物中の(高純度)AlN-BN複合凝集粒子の含有量は、通常30wt%以上、好ましくは40wt%以上、より好ましくは50wt%以上であり、通常99
wt%以下、好ましくは98wt%以下、より好ましくは95wt%以下である。
有機溶剤の具体例としては、WO2013/081061に例示されたものを用いることができる。
有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。
硬化剤とは、エポキシ樹脂のエポキシ基等などの、マトリクスの架橋基間の架橋反応に寄与する物質を示す。
エポキシ樹脂においては、必要に応じて、エポキシ樹脂用の硬化剤、硬化促進剤が共に用いられる。
硬化剤としては例えば、酸無水物系硬化剤やアミン系硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤としては、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、及びベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物が挙げられる。アミン系硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、m-フェニレンジアミン等の芳香族ポリアミン及びジシアンジアミド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらは、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
添加剤の具体例については、WO2013/081061に例示されたものを用いることができ、添加量についてもWO2013/081061に記載の範囲とすることができる。
軸又は二軸混練機等の一般的な混練装置などを用いて混合することが好ましい。
複合材組成物の各配合成分の混合順序も、反応や沈殿物が発生するなど特段の問題がない限り任意であり、組成物の構成成分のうち、何れか2成分又は3成分以上を予め混合し、その後に残りの成分を混合してもよいし、一度に全部を混合してもよい。
この成形体を成形する方法は、樹脂組成物の成形に一般に用いられる方法を用いることができる。
ここでいう基板とは、シートの片面ないしは両面に対して、金属ないしはセラミックスからなる板を貼り合せたものをいう。
例えば、放熱シート用塗布液を所望の形状で、例えば、型へ充てんした状態で硬化させることによって成形することができる。このような成形体の製造法としては、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、及び圧縮成形法を用いることができる。
また、複合材組成物がエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂組成物を含む場合、成形体の成形、すなわち硬化は、それぞれの組成に応じた硬化温度条件で行うことができる。
本実施形態に係る複合材組成物を成形したシート・基板は、含有される複合凝集粒子が熱伝導性に優れることから高い放熱性を有し、パワーデバイス用途の放熱シート及び放熱基板などの放熱用部材として好適に用いられる。
本発明における特性は以下に記載の方法にて測定した。
・平均粒子径(D50):
平均粒子径は、HORIBA社製「LA-300」を用いてD50(μm)を測定した。
・XRDパターン
XRD測定は、PANalytical社製X線回折装置「X‘Pert Pro MPD」を用いた。なお、X線源はCuKαである。
・粒子形状
粒子形状観察は、SEM(Zeiss Ultra55)を用いた。
・元素分析
元素分析は、BRUKER AXS社製エネルギー分散型X線分析(SEM-EDX)装置「QUANTAX 200」を用いた。
・成形体の厚み方向熱伝導率
成形体の厚み方向の熱拡散率を株式会社アイフェイズ製の熱拡散率測定装置「ai―Phase Mobile 1u」を用いて測定し、以下により求めた。
成形体の厚み方向熱伝導率=成形体の厚み方向の熱拡散率×成形体の比重×成形体の比熱
BNのみからなる凝集粒子が複合材組成物に与える熱伝導率を評価し、AlN-BN複合凝集粒子との比較対象とした。
<凝集粒子の作製>
[スラリーの調製]
バインダー(多木化学(株)製「タキセラムM160L」、固形分濃度21質量%)を容器に秤取り、そこへ原料h-BN粉末(酸素濃度7.5質量%)を秤取った。バインダー量は、原料h-BN粉末量の1.15倍とした。各物質の配合量は表1に示す。これをハンドミキサーで均一になるまで撹拌した。
スラリーからの造粒は、藤崎電機株式会社製マイクロミストスプレードライヤ(MDL-050M)Laboを用いて実施し、球状の造粒粒子を得た。造粒粒子のD50は表1に示す。
上記造粒粒子を、大気下で700℃まで700℃/時で昇温し、700℃到達後そのまま2時間保持し、その後室温まで冷却することで、仮熱処理粒子を得た。
上記仮熱処理粒子を、室温で真空引きをした後、窒素ガスを導入して復圧し、そのまま窒素ガスを0.5L/minで導入しながら1600℃まで230℃/時で昇温し、1600℃到達後、そのまま窒素ガスを導入しながら24時間保持した。その後、室温まで冷却し、カードハウス構造を有する球状の熱処理粒子を得た。
[熱処理粒子の組成]
熱処理粒子のXRDパターンは図1の様になった。ピークはh-BN(丸印)、そしてAl5BO9(無印)に帰属された。Al5BO9のピーク強度は弱いため、その含有率は極小さいと考えられる。また、このAl5BO9は、バインダー由来のアルミ酸化物とh-BN中のホウ素酸化物の反応によって形成されたと考えられる。
(原料AlN粉末量)×100/(原料AlN粉末量+原料BN粉末量)で定義した熱処理粒子中のAlN量、(原料BN粉末量)×100/(原料AlN粉末量+原料BN粉末量)で定義した熱処理粒子中のBN量は、表1の様になった。
[熱処理粒子の構造]
熱処理粒子のSEM像は図2の様になった。板状のh-BN一次粒子によるカードハウス構造の形成が確認された。
[複合材組成物の作製]
(原料)
得られた熱処理粒子、ダイソー社製エポキシ樹脂「LX-01」、BYK社製分散剤「BYK-2155」、そして、四国化成社製硬化剤「C11Z-CN」を用いた。
(複合材組成物の調製)
得られた熱処理粒子、エポキシ樹脂、分散剤を蓋付容器に秤取り、自公転攪拌機(シンキー社製、ARV-310))を用いて混合した。次いで、そこに硬化剤を秤取り、自公転攪拌機を用いて混合した。分散材量は還元窒化粒子量の0.02倍とし、硬化剤量はエポキシ樹脂量の0.06倍とした。各物質の配合量は表2に示す。得られた混合物を、離形処理を施したガラス板に、シリコーンゴム製の500μmギャップと共に挟み込み、1
60℃で4時間加熱硬化させて熱伝導率評価用の複合材組成物を得た。
上記複合材組成物について、厚み方向の熱伝導率を測定した。測定結果は表2の様になった。また、凝集粒子の含有率に対して熱伝導率をプロットすると図3の様になった。
AlNのみからなる凝集粒子が複合材組成物に与える熱伝導率を評価し、AlN-BN複合凝集粒子との比較対象とした。
<凝集粒子の作製>
原料h-BN粉末を原料AlN粉末(東洋アルミニウム(株)製トーヤルナイトJC)に変えた以外は、比較例1と同様に行った。
[熱処理粒子の組成]
熱処理粒子のXRDパターンは図1の様になった。ピークはAlN(星印)、そしてCaAl12O19に帰属された。CaAl12O19のピーク強度は弱いため、その含有率は極小さいと考えられる。また、このCaAl12O19は、バインダー中に微量不純物として含まれるカルシウム化合物とAlNの反応によって形成されたと考えられる。
[熱処理粒子の構造]
熱処理粒子のSEM像は図4の様になった。粒状のAlN一次粒子が確認された。
比較例1と同様に行った。
比較例1と同様に行った。測定結果は表2の様になった。また、凝集粒子の含有率に対して熱伝導率をプロットすると図3の様になった。すなわち、AlNのみからなる凝集粒子が複合材組成物に与える熱伝導率は、BNのみからなる凝集粒子と同等であることが確認された。
AlN-BN複合凝集粒子が複合材組成物に与える熱伝導率を評価し、AlN一次粒子とBN一次粒子を複合凝集粒子化することが熱伝導率に与える効果を確認した。
<凝集粒子の作製>
[スラリーの調製]
バインダー(多木化学(株)製「タキセラムM160L」、固形分濃度21質量%)を容器に秤取り、そこへ原料Al2O3粉末(住友化学(株)製「スミコランダムAA03」)および原料h-BN粉末(酸素濃度7.5質量%、一次粒子径0.05μm)を秤取った。バインダー量は、原料Al2O3粉末および原料h-BN粉末の合計量の1.15倍とした。各物質の配合量は表3に示す。これをハンドミキサーで均一になるまで撹拌した。
スラリーからの造粒は、藤崎電機株式会社製マイクロミストスプレードライヤ(MDL-050M)Laboを用いて実施し、球状の造粒粒子を得た。造粒粒子のD50は表3に示す。
上記造粒粒子を、大気下で700℃まで700℃/時で昇温し、700℃到達後そのまま2時間保持し、その後室温まで冷却することで、仮熱処理粒子を得た。
上記仮熱処理粒子を、室温で真空引きをした後、窒素ガスを導入して復圧し、そのまま窒素ガスを0.5L/minで導入しながら1600℃まで230℃/時で昇温し、1600℃到達後、そのまま窒素ガスを導入しながら24時間保持した。その後、室温まで冷却し、カードハウス構造を有する球状の熱処理粒子を得た。
上記熱処理粒子およびカーボンブラックを容器に所定量計量し、蓋をした。各物質の配合量は表3に示す。これを手で5分間振って混合し、カーボンブラック混合物を得た。カーボンブラック混合物を、室温で真空引きをした後、窒素ガスを導入して復圧し、そのまま窒素ガスを0.5L/minで導入しながら1600℃まで230℃/時で昇温し、1600℃到達後、そのまま窒素ガスを導入しながら24時間保持した。その後、室温まで冷却した。この粒子を、大気下で700℃まで700℃/時で昇温し、700℃到達後、そのまま5時間保持した。その後、室温まで冷却し、球状の還元窒化粒子を得た。
上記還元窒化粒子を、大気下で700℃まで700℃/時で昇温し、700℃到達後そのまま5時間保持し、その後室温まで冷却することで、高純度還元窒化粒子を得た。
[熱処理粒子の組成]
熱処理粒子のXRDパターンは図4の様になった。ピークはAl2O3(三角印)、h-BN(丸印)、そしてAl5BO9(無印)に帰属された。Al5BO9のピーク強度は弱いため、Al5BO9含有率は小さいと考えられる。また、このAl5BO9は、バインダー由来のアルミ酸化物とh-BN中のホウ素酸化物の反応によって形成されたと考えられる。
(原料Al2O3粉末量)×100/(原料Al2O3粉末量+原料BN粉末量)で定義した熱処理粒子中のAl2O3量、(原料BN粉末量)×100/(原料Al2O3粉末量+原料BN粉末量)で定義した熱処理粒子中のBN量は、表3の様になった。
熱処理粒子のSEM像は図5の様になった。粒状のAl2O3一次粒子および、板状のh-BN一次粒子によるカードハウス構造が確認された。なお、図5から、h-BN一次粒子の長軸の長さは、実施例1が1.29μm程度、実施例2が0.72μm程度、実施例3が0.65μ程度であった。
高純度還元窒化粒子のXRDパターンは図6の様になった。ピークはAlN(星印)およびh-BN(丸印)に帰属された。また、熱処理粒子と高純度還元窒化粒子のXRDパターンを重ねてプロットすると、図7の様になった(前者:細線、後者:太線)。h-BNピーク形状は両者で全く同じであった。従って、熱処理粒子に見られたものと全く同じ板状および結晶性を持ったh-BN一次粒子が、還元窒化粒子に於いても存在すると考えられる。原料Al2O3粉末全量の窒化によって得られるAlNの重量をαとすると、α×100/(α+原料BN粉末量)で定義した還元窒化粒子中のAlN量、そして、原料BN粉末量×100/(α+原料BN粉末量)で定義した還元窒化粒子中のBN量は表3の様になった。
高純度還元窒化粒子のSEM像及は図8の様になった。粒子表面がアモルファス質に覆われている事が判った。また、原料Al2O3粉末を大明化学工業(株)製TM-DAに変えた以外は、実施例2と全く同様に作製した高純度還元窒化粒子のSEM-EDX分析結果は図9の様になった。また、SEM像中の矢印部分に於いて、EDX点分析を行った。このアモルファス質はホウ素、炭素、窒素、そして酸素からなることが判った。
[複合材組成物の作製]
(原料)
得られた高純度還元窒化粒子、ダイソー社製エポキシ樹脂「LX-01」、BYK社製分散剤「BYK-2155」、そして、四国化成社製硬化剤「C11Z-CN」を用いた。
(複合材組成物の調製)
得られた高純度還元窒化粒子、エポキシ樹脂、分散剤を蓋付容器に秤取り、自公転攪拌機(シンキー社製、ARV-310))を用いて混合した。次いで、そこに硬化剤を秤取り、自公転攪拌機を用いて混合した。分散材量は高純度還元窒化粒子量の0.02倍とし
、硬化剤量はエポキシ樹脂量の0.06倍とした。各物質の配合量は表4に示す。得られた混合物を、離形処理を施したガラス板に、シリコーンゴム製の300μmギャップと共に挟み込み、160℃で4時間加熱硬化させて熱伝導率評価用の複合材組成物を得た。
上記複合材組成物について、厚み方向の熱伝導率を測定した。測定結果は表4の様になった。また、凝集粒子の含有率に対して熱伝導率をプロットすると図3の様になった。図3を見ると、実施例1、2、そして、3の熱伝導率は、比較例1または2の熱伝導率よりも高いことが判る。即ち、AlN一次粒子とh-BN一次粒子を複合化し、AlN-BN複合凝集粒子とする事は、凝集粒子が複合材組成物に与える熱伝導率を大きく増大させることが示された。
原料Al2O3粉末の代わりに原料AlN粉末を用いてAlN-BN複合凝集粒子を作製し、それを用いた複合材組成物の熱伝導率を評価し、原料Al2O3粉末を用いた場合との比較対象とした。
[スラリーの調製]
バインダー(多木化学(株)製「タキセラムM160L」、固形分濃度21質量%)を容器に秤取り、そこへ原料h-BN粉末(酸素濃度7.5質量%)および原料AlN粉末(東洋アルミニウム(株)製「トーヤルナイトJC」)を秤取った。バインダー量は、原料h-BN粉末および原料AlN粉末の合計量の1.15倍とした。各物質の配合量は表5
に示す。これをハンドミキサーで均一になるまで撹拌した。
スラリーからの造粒は、藤崎電機株式会社製マイクロミストスプレードライヤ(MDL-050M)Laboを用いて実施し、球状の造粒粒子を得た。
上記造粒粒子を、大気下で700℃まで700℃/時で昇温し、700℃到達後そのまま2時間保持し、その後室温まで冷却することで、仮熱処理粒子を得た。
上記仮熱処理粒子を、室温で真空引きをした後、窒素ガスを導入して復圧し、そのまま窒素ガスを0.5L/minで導入しながら1600℃まで230℃/時で昇温し、1600℃到達後、そのまま窒素ガスを導入しながら24時間保持した。その後、室温まで冷却し、粒状構造を有する球状の熱処理粒子を得た。
[熱処理粒子の組成]
熱処理粒子のXRDパターンは図10の様になった。ピークはh-BN(丸印)、AlN(星印)、そしてCaAl12O19(無印)に帰属された。CaAl12O19のピーク強度は弱いため、その含有率は極小さいと考えられる。また、このCaAl12O19は、バインダー中に微量不純物として含まれるカルシウム化合物とAlNの反応によって形成されたと考えられる。h-BNピークの半値幅は実施例1、2、そして3の場合よりも大きく、板状のh-BN一次粒子が十分に成長しなかったことが示唆される。
熱処理粒子のSEM像は図11の様になった。h-BN一次粒子の長軸は50nm程度であり、板状のh-BN一次粒子が十分に成長しなかった(0.1μm未満である)ことが判る。
[複合材組成物の作製]
(原料)
得られた熱処理粒子、ダイソー社製エポキシ樹脂「LX-01」、BYK社製分散剤「BYK-2155」、そして、四国化成社製硬化剤「C11Z-CN」を用いた。
(複合材組成物の調製)
得られた熱処理粒子、エポキシ樹脂、分散剤を蓋付容器に秤取り、自公転攪拌機(シンキー社製、ARV-310))を用いて混合した。次いで、そこに硬化剤を秤取り、自公転攪拌機を用いて混合した。分散材量は還元窒化粒子量の0.02倍とし、硬化剤量はエポキシ樹脂量の0.06倍とした。各物質の配合量は表6に示す。得られた混合物を、離形処理を施したガラス板に、シリコーンゴム製の500μmギャップと共に挟み込み、160℃で4時間加熱硬化させて熱伝導率評価用の複合材組成物を得た。
上記複合材組成物について、厚み方向の熱伝導率を測定した。測定結果は表6の様になった。また、凝集粒子の含有率に対して熱伝導率をプロットすると図12の様になった。比較のために、比較例1および2の結果も併せてプロットする。すると、比較例3の凝集粒子が複合体組成物に与える熱伝導率は、比較例1および2の場合と同程度もしくはそれ以下であることが判る。以上の様に、熱処理段階でAlNが存在すると、h-BN一次粒子の板状成長が阻害されることが判った。また、この様な凝集粒子が複合材組成物に与え
る熱伝導率は低いことが示された。
Al2O3の熱伝導はAlNと同じく等方的であるが、その大きさはAlNよりもはるかに小さい(通常、熱伝導率として40W/mK程度。)。Al2O3-BN複合凝集粒子を用いた複合材組成物の熱伝導率を評価しAlN-BN複合凝集粒子との比較対象とした。
<凝集粒子の作製>
凝集粒子として、実施例2に於いて得た熱処理粒子を用いた。
<凝集粒子の評価>
実施例2の熱処理粒子と同様である。
比較例3と同様に行った。
比較例3と同様に行った。測定結果は表6の様になった。また、凝集粒子の含有率に対して熱伝導率をプロットすると図12の様になった。比較のために、比較例1および2の結果も併せてプロットする。すると、比較例4の凝集粒子が複合体組成物に与える熱伝導率は、比較例1および2の場合と同程度もしくはそれ以下であることが判る。即ち、熱伝導異方性の無い物質であっても、その熱伝導率が小さければ、h-BN一次粒子と複合化してBN複合凝集粒子としても、凝集粒子が複合材組成物に与える熱伝導率は低いことが示された。
Claims (5)
- 窒化アルミニウム一次粒子及び粒子の長軸が0.1μm以上5μm以下の窒化ホウ素一次粒子が凝集してなり、
窒化アルミニウム-窒化ホウ素複合凝集粒子中の窒化アルミニウムと窒化ホウ素の質量比が3:97~85:15であり、
前記窒化ホウ素一次粒子がカードハウス構造を形成している、窒化アルミニウム-窒化ホウ素複合凝集粒子。 - 少なくともホウ素、炭素、窒素、及び酸素からなる成分を含有する請求項1に記載の複合凝集粒子。
- 請求項1又は2に記載の複合凝集粒子と、樹脂を含む複合材組成物。
- 請求項3に記載の複合材組成物を成形してなるシート又は基板。
- 放熱用部材である、請求項4に記載のシート又は基板。
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