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JP7328167B2 - 固体蓄電装置及びその製造方法 - Google Patents

固体蓄電装置及びその製造方法 Download PDF

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JP7328167B2
JP7328167B2 JP2020044224A JP2020044224A JP7328167B2 JP 7328167 B2 JP7328167 B2 JP 7328167B2 JP 2020044224 A JP2020044224 A JP 2020044224A JP 2020044224 A JP2020044224 A JP 2020044224A JP 7328167 B2 JP7328167 B2 JP 7328167B2
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Description

本発明は、固体蓄電装置及びその製造方法に関する。
正極系と負極系を接続する界面に固体電解質を配し、充放電時における正極系と負極系のイオンの授受をこの固体電解質を介して行うようにした固体蓄電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、全固体電池積層体の側面を樹脂層で被覆する形態の固体蓄電装置おいて、全固体電池積層体と樹脂層との接着性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2における提案では、正極集電体層及び負極集電体層のうちの少なくとも一層の少なくとも一方の面に、隣接する他層と重なる部分としての積層部と当該他層よりも延び出た延出部とを設けている。延出部の表面粗さを粗くして全固体電池積層体と樹脂層との接着性を確保している。
特許第6363244号公報 特開2019-192610号公報
特許文献1の固体蓄電装置では、正極系又は負極系の何れか一方の系が他方の系を包囲するようなセル構造を採る場合には、充放電時における熱サイクルにより、固体蓄電装置における封止部材が被着部である金属集電体や固体電解質から剥離する虞がある。このような剥離が発生すると、各系ごとに隔離されるべき電解質や活物質が他の系に混入してしまうといった現象を来す。この現象が生じると、固体蓄電装置の製造に係る歩留まりの悪化や品質の低下を招来することになる。
一方、特許文献2における固体電池装置では、全固体電池積層体と樹脂層との接着性を確保するために、他層と重なる部分としての積層部から他層よりも延び出た延出部を設けてその表面粗さを粗くしている。しかしながら、延出部の表面粗さを、樹脂層との接着性を確保するに十分な程度の粗さとすることは製造上の困難を伴う。また、比較的薄手の延出部で樹脂層の歪に抗するには限界がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされものであり、簡単な構成で、樹脂層による全固体電池積層体の密閉性を十分に確保することが可能な固体蓄電装置及びその製造方法を提供すること目的とする。
(1)対面する2つの固体電解質層(例えば、後述する固体電解質層20,20)間に正極活物質層(例えば、後述する正極活物質層31)が配され前記正極活物質層に正極集電体層(例えば、後述する正極集電体層32)が接して配された正極系(例えば、後述する正極系30)と、負極活物質層(例えば、後述する負極活物質層11)が配され前記負極活物質層に負極集電体層(例えば、後述する負極集電体層12)が接して配された負極系(例えば、後述する負極系10)とが交互に積層され、積層方向の投影形状が概略方形を成す固体電池積層体(例えば、後述する固体電池積層体1)を有し、
前記正極系及び前記負極系それぞれは、方形の外周の各辺に沿って延びた4つの密閉部材(例えば、後述する4つの密閉部材13、14、15、16)で囲んで内部を密閉する密閉枠(例えば、後述する密閉枠17)が設けられ、
前記密閉枠は、前記外周に沿う3辺の密閉部材(例えば、後述する3辺の密閉部材13、14、15)が連なった三方密閉部材(例えば、後述する三方密閉部材18)と前記三方密閉部材の開放側を閉止するように配される閉止密閉部材(例えば、後述する閉止密閉部材19)とを有し、
前記三方密閉部材と前記閉止密閉部材との両者の少なくとも一方には、前記両者の接触部に段差部(例えば、後述する段差部153)が形成されている、
固体蓄電装置。
(2)前記段差部は、前記三方密閉部材と前記閉止密閉部材との両者の少なくとも一方に形成された相互に直交する接触面である切欠き部(例えば、後述する切欠き部152)と段差部(例えば、後述する段差部153)とにより構成された少なくとも1段の段状部を成す、(1)の固体蓄電装置。
(3)前記段差部を有する密閉部材は前記固体電池積層体の負極側に配置されている、(1)又は(2)に記載の固体蓄電装置。
(4)前記三方密閉部材と前記閉止密閉部材との少なくとも何れか一の密閉部材には、前記密閉枠の一部を構成する密閉部材本体部から前記固体電池積層体の積層方向に延長されてシート状部材が設けられている、請求項(1)から(3)の何れかに記載の固体蓄電装置。
(5)前記三方密閉部材と前記閉止密閉部材とは、両者の接触部が接触状態で熱溶着により接着可能に構成されている、(1)から(4)の何れかに記載の固体蓄電装置。
(6)正極系と負極系の少なくとも一方に、液状の電解質(電解液)が密閉されている、(1)から(5)の何れかに記載の固体蓄電装置。
(7)所定の移動体に適合するように構成されている、請求項(1)から(6)の何れかに記載の固体蓄電装置。
(8)請求項(1)から(7)の何れかに記載の固体蓄電装置を、前記三方密閉部材と前記閉止密閉部材とを熱溶着により結合させて製造する固体蓄電装置の製造方法。
(1)の固体蓄電装置では、三方密閉部材と閉止密閉部材との両者の少なくとも一方には、両者の接触部に段差部が形成されている。この段差部で三方密閉部材と閉止密閉部材とが接合されることにより、接合部分での接触面積が十分に確保されるため密閉枠内の密閉性が向上する。
(2)の固体蓄電装置では、段差部は、三方密閉部材と閉止密閉部材との両者の少なくとも一方に形成された相互に直交する接触面である切欠き部と段差部とにより構成されるため、この段差部で三方密閉部材と閉止密閉部材とが面的に密着して接合されることにより密閉部材の接合部における密閉性が向上する。
(3)の固体蓄電装置では、特に密閉性に関する性能が要求される固体電池積層体の負極側において、段差部によって十分な密閉性が確保される。
(4)の固体蓄電装置では、固体電池積層体の積層方向に延長されて設けられているシート状部材を密閉枠の内側に曲げて上面に沿わせて張り付けるように用いることにより、密閉枠内の密閉性が向上する。
(5)の固体蓄電装置では、三方密閉部材と閉止密閉部材とが接触状態で熱溶着により接着され密閉枠内の密閉性が向上する。
(6)正極または負極の一方に電解質を一体化することで、重ね合わせだけで固体蓄電池を製造することが可能となるため、製造が容易になる。
(7)の固体蓄電装置では、振動に対する耐力が求められる移動体に適用しても、十分な耐久性が得られる。
(8)の固体蓄電装置の製造方法では、三方密閉部材と閉止密閉部材とを熱溶着により結合されるため、密閉枠内の密閉性が向上する。
本発明の実施形態としての固体蓄電装置における固体電池積層体の概念的構成を示す斜視図である。 図1Aの固体蓄電装置を図示のY方向視した側面図である。 本発明の実施形態としての固体蓄電装置を構成する負極系の一例を示す平面図である。 図2の部分拡大図である。 本発明の実施形態としての固体蓄電装置を構成する負極系の他の例を示す平面図である。 図4の部分拡大図である。 本発明の実施形態としての固体蓄電装置の密閉枠を構成する三方密閉部材と閉止密閉部材との接合部まわりの構成の一例を示す分解模式図である。 本発明の一実施形態としての固体蓄電装置の密閉枠を構成する三方密閉部材と閉止密閉部材との接合部まわりの構成の他の例を示す模式図である。 図6の密閉部材におけるシート状部材を固体電解質層の側面に熱溶着する様子を示す図である。 本発明の実施形態としての固体蓄電装置を構成する負極系の製造過程の一つの段階を示す概念図である。 本発明の実施形態としての固体蓄電装置を構成する固体電池積層体の製造過程の一つの段階を示す概念図である。 本発明の実施形態に対する比較例としての固体蓄電装置を構成する負極系の一例を示す平面図である。 図11の部分拡大図である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態としての固体蓄電装置における固体電池積層体の概念的構成を示す斜視図である。図1では、後述する何れも概略平盤状の負極系及び正極系の主面方向をX―Y平面方向とし、積層方向をZ方向と想定している。
図1Bは、図1Aの固体蓄電装置を図示のY方向視した側面図である。
図1A及び図1Bの固体電池積層体1について、図9及び図10を併せ参照して説明する。
図9は、固体電池積層体1の構成要素である負極系10の製造過程の一つの段階を示す概念図である。
図10は、固体蓄電装置を構成する固体電池積層体1の製造過程の一つの段階を示す概念図である。
負極系10は、対面する2つの固体電解質層20,20間に負極活物質層11および電解質(電解液)が挿入されて構成される。負極活物質層11に負極集電体層12が沿うように接して配される。同様に、正極系30は、対面する2つの固体電解質層20,20間に正極活物質層31および電解質(電解液)が挿入されて構成される。正極活物質層31に正極集電体層32が沿うように接して配される。図10に示されるように、負極系10と正極系30とが交互に複数積層されて(換言すれば、正極系30と負極系10とが交互に複数積層されて)、図1の固体電池積層体1が構成される。固体電池積層体1は、負極系10と正極系30との積層における積層方向(図1におけるZ方向)での投影形状が概略方形を成す。
図2は、上述の固体電池積層体1の負極系10の一例を示す平面図である。負極系10は、方形の外周の各辺に沿って延びた4つの密閉部材13、14、15、16で囲んで内部を密閉する密閉枠17が設けられる。密閉枠17は、外周に沿う3辺の密閉部材13、14、15が連なった三方密閉部材18と、三方密閉部材18の開放側を閉止するように配される閉止密閉部材19とを有して構成される。密閉部材13、14、15、16は、PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの耐薬品性に優れ、接着性、密閉性に優れた材料により構成される。
閉止密閉部材19は、密閉枠17における一つの密閉部材16である。図2の平面視では、負極活物質層11が密閉枠17によって囲まれた形を呈している。また、密閉部材16(閉止密閉部材19)から外部に向けて負極集電体層12が延び出た形を呈している。
正極系30についても、方形の外周の各辺に沿って延びた4つの密閉部材で囲んで内部を密閉する密閉枠が設けられる点は、負極系10と同様である。また、密閉枠は、外周に沿う3辺の密閉部材が連なった三方密閉部材と、三方密閉部材の開放側を閉止するように配される閉止密閉部材とを有して構成される点も、負極系10と同様である。このため、正極系30における密閉枠を有する構成を表す図については、図2及び、本実施形態との比較例である図11及び図12を適宜援用する。なお、図10の通り、正極系30では正極集電層22の導出方向が負極系10における負極集電体層12導出方向とは逆方向になる。
本発明の固体蓄電装置では、正極系30と負極系10は、少なくとも一方が密閉されていればよいが、双方が密閉されていると、より好ましい。
上述の密閉枠17は、図1にて想定したX―Y平面への投影形状、即ち、上述の積層方向への投影形状で見ると、三方密閉部材18は概略U字状或いはC字状を呈し、この形状の開放側が閉止密閉部材19で閉止される。また、三方密閉部材18を構成する各密閉部材13,14,15、及び閉止密閉部材19のX―Y平面への投影形状、即ち、上述の積層方向への投影形状は、何れも、概ね方形である。
本実施形態では、この閉止を確実にするために、三方密閉部材18と閉止密閉部材19との両者の少なくとも一方には、両者の接触部に段差部が形成されている。この段差部は、図2及びその部分拡大図である図3に一つの具体例が示されている。
図2及び図3の例では、三方密閉部材18のうち並行する密閉部材13及び15の各端部(図では左端部)に段差部が形成されている。図3には、密閉部材15の左端部151近傍が部分拡大図として示されている。密閉部材15の左端部151近傍における閉止密閉部材19の端部(図では下端部191)の角部192との接触部位に、密閉部材15の厚み方向に一定の深さで切り欠かれた切欠き部152が形成されている。密閉部材15には、切欠き部152によって閉止密閉部材19との接触部に段差部153が形成されている。
このように段差部153を形成する切欠き部152に、閉止密閉部材19の下端部191の角部192が隙間なく嵌るようにして、密閉部材15と閉止密閉部材19とが密に接合される。切欠き部152は、密閉部材15の長手方向に沿う寸法(切欠き幅)が閉止密閉部材19の厚み寸法より小さい。このため、図示のように、閉止密閉部材19の長手方向外側縁(図では左側縁193)は、密閉部材15の左端部151に揃わず外側(図では左側)に位置する。
三方密閉部材18の密閉部材13についても、密閉部材15におけると同様に、密閉部材13の左端部131近傍に切欠き部132が形成されている。切欠き部132によって閉止密閉部材19との接触部に段差部133が形成されている。このように段差部133を形成する切欠き部132に閉止密閉部材19の上端部194の角部195が隙間なく嵌るようにして、密閉部材13と閉止密閉部材19とが密に接合される。
密閉部材15の左端部151側に形成された切欠き部152と段差部153とは相互に直交する矩形の面を成している。図2及び図3における密閉部材15と閉止密閉部材19との接合部では、このように相互に直交する矩形の面を成す密閉部材15側の接合面(切欠き部152と段差部153)が閉止密閉部材19側の対応面に接触した状態で、当該接触した両者の部材が熱溶着によって接着される。このため、段差のないフラットな面どうしを接触させた場合よりも接触面積が大きくなって、より広い範囲に強固な熱溶着部が形成されるため密閉性に優れる。
また、密閉部材13の左端部131側に形成された切欠き部132と段差部133とは相互に直交する矩形の面を成している。従って、密閉部材15と閉止密閉部材19との接合部におけると同様に、相互に直交する矩形の面を成す密閉部材13側の接合面(切欠き部132と段差部133)が閉止密閉部材19側の対応面に接触した状態で、当該接触した両者の部材が熱溶着によって接着される。このため、段差のないフラットな面どうしを接触させた場合よりも接触面積が大きくなって、より広い範囲に強固な熱溶着部が形成されるため密閉性に優れる。
図4及び図5には、三方密閉部材と閉止密閉部材との両者の接触部に形成された段差部の他の例が示されている。
図4及び図5の例では、三方密閉部材18のうち並行する密閉部材13及び15の各端部(図では各左端部131,151)には段差部が形成されず、閉止密閉部材19の端部に段差部が形成されている。図5には、閉止密閉部材19の下端部191近傍が部分拡大図として示されている。
閉止密閉部材19の下端部191近傍における密閉部材15の端部(図では左端部151)の角部154との接触部位に、閉止密閉部材19の厚み方向に一定の深さで切り欠かれた切欠き部196が形成されている。閉止密閉部材19には、切欠き部196によって密閉部材15との接触部に段差部197が形成されている。このように段差部197を形成する切欠き部196に、密閉部材15の左端部151の角部154が隙間なく嵌るようにして、閉止密閉部材19と密閉部材15とが密に接合される。
切欠き部196は、閉止密閉部材19の長手方向に沿う寸法(深さ)が密閉部材15の厚み寸法より小さい。このため、図示のように、密閉部材15の長手方向外側縁(図では下端縁155)は、閉止密閉部材19の下端部191に揃わず外側(図では下側)に位置する。
閉止密閉部材19の上端部194側についても、下端部191側におけると同様に、閉止密閉部材19の上端部194に切欠き部198が形成されている。切欠き部198によって密閉部材13との接触部に段差部199が形成されている。このように段差部199を形成する切欠き部198に密閉部材13の左端部131の角部134が隙間なく嵌るようにして、閉止密閉部材19と密閉部材13とが密に接合される。
閉止密閉部材19の下端部191側に形成された切欠き部196と段差部197とは相互に直交する矩形の面を成している。図4及び図5における閉止密閉部材19と密閉部材15との接合部では、このように相互に直交する矩形の面を成す閉止密閉部材19側の接合面(切欠き部196と段差部197)が密閉部材15側の対応面に接触した状態で、当該接触した両者の部材が熱溶着によって接着される。このため、段差のないフラットな面どうしを接触させた場合よりも接触面積が大きくなって、より広い範囲に強固な熱溶着部が形成されるため密閉性に優れる。
また、閉止密閉部材19の上端部194側に形成された切欠き部198と段差部199とは相互に直交する矩形の面を成している。従って、密閉部材15と閉止密閉部材19との接合部におけると同様に、相互に直交する矩形の面を成す閉止密閉部材19側の接合面(切欠き部198と段差部199)が密閉部材13側の対応面に接触した状態で、当該接触した両者の部材が熱溶着によって接着される。このため、段差のないフラットな面どうしを接触させた場合よりも接触面積が大きくなって、より広い範囲に強固な熱溶着部が形成されるため密閉性に優れる。
本発明の固体蓄電装置では、上述のような4つの密閉部材13、14、15、16のうちの少なくとも1つの密閉部材は、密閉枠17をなす密閉部材本体部の上端外縁側から上方に延び出たシート状部材を有する形態をとり得る。図6には、そのようなシート状部材を有する密閉部材の一例が示されている。
図6は、本発明の実施形態としての固体蓄電装置の密閉枠17の構成の一例を示す分解模式図である。図6には、密閉枠17を構成する三方密閉部材18(そのうちの密閉部材15)と閉止密閉部材19との接合部まわりの構成の一例が模式的に描かれている。密閉部材15は密閉枠17をなす構成要素である密閉部材本体部150の上端外縁側から上方に延び出たシート状部材150aと密閉部材本体部150の下端外縁側から下方に延び出たシート状部材150bを有する。ここに、上方とは、固体電池積層体1の積層方向で上方の意であり、下方とは、固体電池積層体1の積層方向で下方の意である。密閉部材15における密閉部材本体部150とシート状部材150aと150bとはPP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)により構成され、一体的につながっている。シート状部材150aと150bは自重で密閉枠17の内方に撓う程度の薄さである。観点を転ずれば、本発明の実施形態としての固体蓄電装置では、シート状部材150aと150bは固体電池積層体1の負極側に配置される。
上記シート状部材150aは、閉止密閉部材19の上端外縁側に備わっていてもよいし、シート状部材150bは、閉止密閉部材19の下端外縁側に備わっていてもよい。
上記シート状部材150aおよび150bの上方方向および下方方向の長さは、固体電解質層20の厚みと密閉部材の短手方向の幅を足し合せた長さより短いことが好ましく、固体電解質層20の厚みより短いとより好ましい。
図6の例における密閉部材15と閉止密閉部材19との接合部は、密閉部材15側と閉止密閉部材19側との双方に形成された切欠き部(段差部)同士が接合される形態をなしている。即ち、密閉部材15側には、図3の例におけるような形状の切欠き部152aによる段差部153aが形成されている。閉止密閉部材19側にも、図3の例におけるような形状の切欠き部196aによる段差部197aが形成されている。図6における上述の接合部では、密閉部材15側と閉止密閉部材19側との双方に各1段設けられた段差部153a及び197aが相手方の切欠き部196a及び152aに当接する形で当該接合部での接合が行われる。
密閉部材15側に形成された切欠き部152aと段差部153aとは相互に直交する矩形の面を成している。また、閉止密閉部材19側に形成された切欠き部196aと段差部197aとは相互に直交する矩形の面を成している。図6における上述の接合部では、このように相互に直交する矩形の面を成す密閉部材15側の接合面(切欠き部152aと段差部153)と閉止密閉部材19側の接合面(切欠き部196aと段差部197a)とが接触した状態で、当該接触した両者の部材が熱溶着によって接着される。このため、段差のないフラットな面どうしを接触させた場合よりも接触面積が大きくなって、より広い範囲に強固な熱溶着部が形成されるため密閉性に優れる。
図7は、三方密閉部材の一つの密閉部材と閉止密閉部材との接合部まわりの構成の他の例を示す模式図である。図6の例における密閉部材15と閉止密閉部材19との双方の接合部では、双方に各1段設けられた段差部153a及び197aが相手方の切欠き部196a及び152aに当接する形で当該接合部での接合が行われた。これに対し、図7の接合部では、閉止密閉部材19側に2段の段差部197b、197cが形成されている。段差部197bは切欠き部196bに対する段差として形成され、段差部197cは切欠き部196cに対する段差として形成されている。閉止密閉部材19側の2段の段差部197b、197cと接合される破線図示の密閉部材15側の段差部153aは図6の例における1段の段差部である。
閉止密閉部材19側に形成された2段の段差部197b、197cは、何れも、対応する切欠き部196b、196cとは相互に直交する矩形の面を成している。このため、図2から図4を参照して説明した接合部におけると同様に、段差のないフラットな面どうしを接触させた場合よりも接触面積が大きくなって、より広い範囲に強固な熱溶着部が形成されるため密閉性に優れる。
上記密閉枠17を構成する三方密閉部材18、および閉止密閉部材19は、部材の上面および下面で固体電解質層20と熱溶着により接着される。ここで、上面とは、固体電池積層体1の積層方向で上方の面であり、下面とは、固体電池積層体1の積層方向で下方の面である。
図2から図7における接合部では、三方密閉部材の一つの密閉部材と閉止密閉部材とが熱溶着による接合構造を有する。このため、振動等に対する耐力が高く、この接合構造を有する固体電池積層体1でなる固体蓄電装置は、電気自動車等の移動体における電気エネルギー源として用いるに良く適合する。
図8は、図6の密閉部材15におけるシート状部材150a及び150bを固体電解質層20の側面に熱溶着する様子を示す図である。シート状部材150aはPP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)により構成される薄手のシート状体であり、上方に配置される固体電解質層20の側面に熱溶着により接着させることが可能である。
シート状部材150bはPP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)により構成される薄手のシート状体であり、下方に配置される固体電解質層20の側面に熱溶着により接着させることが可能である。
図9及び図10については、図1にこれらの図を併せ参照して固体電池積層体1について説明した。既述の説明では、便宜上、負極系10の下に正極系30が積層されて、このように、負極系10と正極系30とが交互に複数積層される趣旨にて説明した。しかしながら、上述の説明は、負極と正極との積層順を規定する趣旨ではない。正極系30の下に負極系10が積層されて、この形態での交互の積層体が複数積層され得る。また、正極を固体電解質で挟んで封止したものを負極と積層してもよい。また、負極と固体電解質と、固体電解質と負極を、上述の順に重ねて封止したものを積層することもできる。なお、積層体の最下面と最上面の構造は中間で積層される周期構造とは異なるプロセスが適用される。
次に、本発明の実施形態の固体蓄電装置の作用効果について比較例の固体蓄電装置との対比において説明する。
図11は、本発明の実施形態に対する比較例としての固体蓄電装置を構成する負極系の一例を示す平面図である。また、図12は、図11の部分拡大図である。図11及び図12において、図2及び図3との対応部には同一の符号を附している。
図11及び図12において、閉止密閉部材19の下端部191及び上端部194はそれぞれフラットな面をなしている。閉止密閉部材19の下端部191のフラットな面が、密閉部材15の左端部151近傍側面のフラットな面に当接する。同様に、閉止密閉部材19の上端部194のフラットな面が、密閉部材13の左端部131近傍側面のフラットな面に当接する。これら当接した箇所で閉止密閉部材19と密閉部材15、及び、密閉部材13とが接合される。接合面はフラットなものであるため、接合される両部材の接触面積が図2及び図3におけるように、切欠き部152,132によって段差部153,133が形成されたものに比し少ない。換言すれば、図2及び図3の実施形態では、接合面における段差部153,133によって接触面積が増大し、比較例に比し、十分な密閉能力が確保される。この点は、本発明の実施形態である図2から図7における何れの接合部についても同様である。
本実施形態の固体蓄電装置によれば、以下の効果を奏する。
(1)の固体蓄電装置では、三方密閉部材18と閉止密閉部材19との両者の少なくとも一方には、両者の接触部に段差部153が形成されている。この段差部153で三方密閉部材18と閉止密閉部材19とが接合されることにより、接合部分での接触面積が十分に確保されるため密閉枠内の密閉性が向上する。
(2)の固体蓄電装置では、段差部153は、三方密閉部材18と閉止密閉部材19との両者の少なくとも一方に形成された相互に直交する接触面である切欠き部152と段差部153とにより構成されるため、この段差部153で三方密閉部材18と閉止密閉部材19とが面的に密着して接合されることにより密閉部材の接合部における密閉性が向上する。
(3)の固体蓄電装置では、特に密閉性に関する性能が要求される固体電池積層体1の負極側において、段差部153によって十分な密閉性が確保される。
(4)の固体蓄電装置では、固体電池積層体1の積層方向に延長されて設けられているシート状部材を150aおよび150bを固体電解質層20の上面に沿わせ、シート状部材150bを固体電解質層20の下面に沿わせて張り付けるように用いることにより、負極系内の密閉性が向上する。
(5)の固体蓄電装置では、三方密閉部材18と閉止密閉部材19と固体電解質層20が接触状態で熱溶着により接着され負極系内の密閉性が向上する。
(6)の固体蓄電装置では、正極または負極の一方に電解質を一体化することで、重ね合わせだけで固体蓄電池を製造することが可能となるため、製造が容易になる。
(7)の固体蓄電装置では、振動に対する耐力が求められる移動体に適用しても、十分な耐久性が得られる。
(8)の固体蓄電装置の製造方法では、三方密閉部材18と閉止密閉部材19とを熱溶着により結合しているため、密閉枠17内の密閉性が向上する。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。例えば、上述の例では、シート状部材150aを密閉枠17の構成要素となるその密閉部材本体部150の上端外縁側から上方に延び出すような形態で設けたが、密閉部材15(密閉部材本体部150)と同じ材料であるPPやPEのシート状体をシート状部材150aが配置される部位に配して熱溶着するようにしてもよい。
1…固体電池積層体
10…負極系
11…負極活物質層
12…負極集電体層
13、14、15、16…密閉部材
17…密閉枠
18…三方密閉部材
19…閉止密閉部材
20…固体電解質層
30…正極系
31…正極活物質層
32…正極集電体層
150…密閉部材本体部
150a…シート状部材
152…切欠き部
153…段差部

Claims (8)

  1. 対面する2つの固体電解質層間に正極活物質層が配され前記正極活物質層に正極集電体層が接して配された正極系と、負極活物質層が配され前記負極活物質層に負極集電体層が接して配された負極系とが交互に積層され、積層方向の投影形状が概略方形を成す固体電池積層体を有し、
    前記正極系及び前記負極系それぞれは、方形の外周の各辺に沿って延びた4つの密閉部材で囲んで内部を密閉する密閉枠が設けられ、
    前記密閉枠は、前記外周に沿う3辺の密閉部材が連なった三方密閉部材と前記三方密閉部材の開放側を閉止するように配される閉止密閉部材とを有し、
    前記三方密閉部材と前記閉止密閉部材との両者の少なくとも一方には、前記両者の接触部に段差部が形成されている、
    固体蓄電装置。
  2. 前記段差部は、前記三方密閉部材と前記閉止密閉部材との両者の少なくとも一方に形成された相互に直交する接触面である切欠き部と段差部とにより構成された少なくとも1段の段状部を成す、請求項1に記載の固体蓄電装置。
  3. 前記段差部を有する密閉部材は前記固体電池積層体の負極側に配置されている、請求項1又は2に記載の固体蓄電装置。
  4. 前記三方密閉部材と前記閉止密閉部材との少なくとも何れか一の密閉部材には、前記密閉枠の一部を構成する密閉部材本体部から前記固体電池積層体の積層方向に延長されてシート状部材が設けられている、請求項1から3の何れか一項に記載の固体蓄電装置。
  5. 前記三方密閉部材と前記閉止密閉部材とは、両者の接触部が接触状態で熱溶着により接着可能に構成されている、請求項1から4の何れか一項に記載の固体蓄電装置。
  6. 前記正極系と前記負極系の少なくとも一方に、電解液が密閉されている、請求項1から5の何れか一項に記載の固体蓄電装置。
  7. 所定の移動体に適合するように構成されている、請求項1から5の何れか一項に記載の固体蓄電装置。
  8. 請求項1から7の何れか一項に記載の固体蓄電装置を、前記三方密閉部材と前記閉止密閉部材とを熱溶着により結合させて製造する固体蓄電装置の製造方法。


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