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JP7321453B2 - レーザー式ガス濃度計 - Google Patents

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JP7321453B2 JP2019195098A JP2019195098A JP7321453B2 JP 7321453 B2 JP7321453 B2 JP 7321453B2 JP 2019195098 A JP2019195098 A JP 2019195098A JP 2019195098 A JP2019195098 A JP 2019195098A JP 7321453 B2 JP7321453 B2 JP 7321453B2
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Description

本発明は、特定波長のレーザー光を、ガス置換されて密封された包装容器又は包装袋或いはこれらに類する包装体類に透過させて、当該包装体類の透過前後で変化する特定波長の吸収スペクトルに基づいて前記包装体類の内部に残留している特定ガスのガス濃度を測定するようにしたレーザー式ガス濃度計に関するものである。
従来、包装工程において、被包装物の保存期間又は賞味期間を縮めるおそれのある特定の酸化原因ガスを含んだ包装袋内の空気を除去して、不活性ガス、たとえば窒素、二酸化炭素等にガス置換してから密封するガス置換包装が行われている。これによって、包装袋内部の酸化原因ガスは除去され、被包装物、特に食品は、長期の保存期間、賞味期間を確保することができる。
そして、ガス置換包装後の検査工程において、酸化原因ガス、特に酸素の濃度が既定値以下であるかどうか検査が行われている。
しかしながら、現在主流である酸素濃度の測定方法は、サンプルとして任意に選択した包装袋に注射針を刺し、包装袋内から吸引した少量のガスの組成を検査する抜き取り検査である。当該抜き取り検査では、注射痕が形成された包装袋は廃棄しなければならない。また、検査精度を上げるためにサンプル数を増やすと検査時間が長くなり、増加する廃棄量によって経済的、時間的損失が増大する不都合があった。
これに対し、本願出願人は、包装袋を損傷することなく内部の特定ガスの濃度を測定可能なガス濃度測定装置を開発した。
特開2010-107197に開示されている包装袋のガス濃度測定装置1は、図7に示すように、発信器を有するレーザー発生部2と、当該レーザー発生部2に連接し、レーザー光が射出される主ヘッド3、並びに受信器を有するレーザー受光部4と、当該レーザ受光部4に連接し、レーザー光が入射される副ヘッド5とからなる。相対的に接近及び離隔自在に設けられた主ヘッド3と副ヘッド5は、、一対のグリップ6,6に把持された検査対象の包装袋Bを挟んで、主ヘッド3に対して副ヘッド5が正対するように配置されている。これによって、主ヘッド3から副ヘッド5へ最短距離でレーザー光が包装袋を透過することができ、包装袋内に残留している酸素等の特定ガスの濃度を測定する際に、包装袋の全数について当該包装袋を一切損傷することなく迅速に測定することができるようになった。
特開2010-107197号公報
しかしながら、上記のガス濃度測定装置1は、包装袋Bに対してレーザー光を透過させるとき、包装袋Bに主ヘッド3と副ヘッド5を吸着させたり、レーザー式ガス濃度計を構成するレーザー発生部及びレーザー受光部の内部を窒素ガスでガスパージして酸素ガスを除去してから測定し、酸素ガスのガス濃度を測定するとき、包装袋Bの周囲の大気の影響を極力抑えるようにしている。このように、測定対象の包装袋ごとに吸着工程を設けた場合、包装袋を測定するための時間が長くなるため、包装機の生産性が低下するおそれがある。また、レーザー式ガス濃度計でガスパージ機構を設けると、計器の構造が複雑になるため、包装機上の限られたスペースに設置することが困難となるおそれがある。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、大気雰囲気下であってもガス濃度を測定可能にすると共に、構成をシンプルにして、省スペース化を可能にしたレーザー式ガス濃度計を提供することである。
請求項1に記載のレーザー式ガス濃度計は、特定波長のレーザー光を、ガス置換されて密封された包装容器又は包装袋或いはこれらに類する包装体類に透過させて、前記包装体類の透過前後で変化する特定波長の吸収スペクトルに基づいて前記包装体類の内部に残留している特定ガスのガス濃度を測定するようにしたレーザー式ガス濃度計であって、
当該レーザー式ガス濃度計は、
前記レーザー光を射出するレーザー発生部と、
前記レーザー光を受光するレーザー受光部と、
前記レーザー発生部から前記包装体類までの入射光路、前記レーザー光が前記包装体類を透過して減衰する減衰光路、及び前記包装体類から前記レーザー受光部までの透過光路からなる前記レーザー光の総光路を有する測定部と、
前記レーザー発生部における前記レーザー光の入射強度、及び前記レーザー受光部における前記レーザー光の透過光強度から求められる前記包装体類を透過したレーザー光の透過率に基づいて、前記減衰光路上で前記包装体類内部の前記特定ガスに吸収された前記特定波長の減衰吸光度を測定して、当該減衰吸光度に基づいて前記包装体類内部の前記特定ガスの濃度を算出する計測部とを有し、
当該計測部が、前記総光路上で前記レーザー光が前記特定ガスに吸収された前記特定波長の総吸光度から
前記入射光路上で前記レーザー光が前記特定ガスに吸収された前記特定波長の入射吸光度と、
前記透過光路上で前記レーザー光が前記特定ガスに吸収された前記特定波長の透過吸光度とを除外して、
前記減衰光路上における前記特定波長の前記減衰吸光度を計測し、
当該減衰吸光度と前記減衰光路の光路長に基づいて、前記包装体類内部の前記特定ガスの濃度を算出するようにして、
前記入射吸光度と前記透過吸光度が、大気雰囲気下で所定の外乱によって変化するとき、
前記レーザー光を前記測定部へ複数回射出して、前記総光路上における前記特定ガスの総平均吸光度を求め、
当該総平均吸光度と複数回の測定回数、及び測定された実測値のバラツキに基づいて、前記入射吸光度と前記透過吸光度を補正する標準偏差及び補正吸光度を定めて、
前記包装体類内部の前記減衰光路上における前記特定波長の前記減衰吸光度を計測するとき、
前記補正吸光度で補正された前記入射吸光度と前記透過吸光度を適用するようにしたことを特徴とする。
請求項2に記載のレーザー式ガス濃度計は、請求項1に記載の発明において、前記減衰光路の光路長が所定の長さで一定であることを特徴とする。
請求項3に記載のレーザー式ガス濃度計は、請求項1に記載の発明において、前記入射光路と前記透過光路が大気雰囲気下であることを特徴とする。
請求項4に記載のレーザー式ガス濃度計は、前記減衰光路の光路長が、前記入射光路又は前記透過光路の光路長よりも長いことを特徴とする。
請求項に記載のレーザー式ガス濃度計は、請求項に記載の発明において、前記外乱が、前記大気雰囲気の気温又は気圧、或いは前記入射光路又は前記透過光路の光路長の変化によるものであることを特徴とする。
本発明に係るレーザー式ガス濃度計によれば、レーザー発生部から射出したレーザー光の入射光強度と、測定対象の包装体を透過してレーザー受光部へ入射されたレーザー光の透過光強度を測定して、入射光に対する透過光の透過率を測定するようにした。当該透過率に基づいて、レーザー発生部とレーザー受光部間で吸収されたレーザー光の総吸光度を求めることができるので、当該総吸光度からレーザー発生部から包装体までの入射光が特定ガスに吸収された入射吸光度と、包装体からレーザー受光部までの透過光が特定ガスに吸収された透過光吸光度を引くと、包装体内で特定ガスに吸収された減衰吸光度を求めることができる。この減衰吸光度と、包装体内部の光路長に基づいて包装体内部のガス濃度を測定するようにした。
これによって、包装体内部以外、すなわちレーザー光の入射光または透過光が特定ガスに吸収されるような場合であっても、ガス濃度を測定することができる。
また、入射光に係る入射吸光度と透過光に係る透過吸光度を含めた総吸光度を測定して、当該総吸光度から包装体内部に係る減衰吸光度を求めるようにしたので、入射光又は透過光が特定ガスに吸収された場合であっても、包装体内部の特定ガスのガス濃度を測定することができる。そのため、入射光又は透過光の光路上をガスパージして特定ガスを除去する必要が無くなるので、レーザー式ガス濃度計の構成をシンプルにすることができ、たとえば、包装機上に設置するとき、省スペース化を図ることができる。
さらに、レーザー光を複数回射出して総光路上における総平均吸光度を求めて、当該総平均吸光度から補正吸光度を求めるようにした。当該補正吸光度を入射吸光度又は透過吸光度に適用することによって、外乱によって測定値が乱れた場合であっても、所定の範囲内に収めることができ、包装体内部の特定ガスのガス濃度を測定することができる。
第1実施例に係るレーザー式ガス濃度計の構成の概略を示すブロック図である。 第1実施例に係るレーザー式ガス濃度計に関する第1実験の結果を示すグラフ図である。 第1実施例に係るレーザー式ガス濃度計に関する第2実験の結果を示すグラフ図である。 第1実施例に係るレーザー式ガス濃度計に関する第3実験の結果を示すグラフ図である。 従来のガス濃度測定装置の構成の概略を示す平面図である。
本実施例に係るレーザー式ガス濃度計について、添付した図面にしたがって説明する。図1は、本実施例に係るレーザー式ガス濃度計の構成の概略を示すブロック図である。
レーザー式ガス濃度計10は、レーザー光を射出するレーザー発生部11と、レーザー光を受光するレーザー受光部12と、レーザー発生部11とレーザー受光部12間に設置され、測定対象の特定ガスをガス濃度を測定可能な測定部13とからなる。
レーザー発生部11は、図1に示すように、レーザー光源14と、当該光源14から射出するレーザー光の波長を特定の波長に設定し、所定の光強度に調整する制御部15とを有している。
レーザー光源14は、波長が可変可能なダイオードからなる半導体レーザー素子を備え、近赤外領域のレーザー光を出力可能に形成されている。本実施例に係る半導体レーザー素子は、DFB(Distributed Feed Back:分布帰還形)レーザーと呼ばれる高出力の半導体レーザー素子である。
制御部15は、半導体レーザー素子から出力されるレーザー光の波長を測定対象の特定ガス固有の特定波長に調整して、レーザー光が所定の入射光強度で射出されるように増幅する制御を行うように形成されている。また制御部15は、計測部17に対して、射出する入射光強度に係る入射光信号を出力するように形成されている。
ここで、本実施例に係るレーザー式ガス濃度計が測定する特定ガスは、酸素ガス(O)である。当該酸素ガス固有の吸収波長帯は760nm帯であり、当該吸収波長帯に含まれる複数の吸収線のうち、一の吸収線に係る特定波長がレーザー光の出力波長として選択される。
レーザー受光部12は、図2に示すように、測定部13を透過して減衰したレーザー光を受光する受光センサ16と、当該受光センサ16からの受光信号に基づいて、ガス濃度を計測する計測部17とを有している。
受光センサ16は、測定部13を透過したレーザー光の透過光強度を電気的な透過光信号に変換する素子、たとえば、フォトダイオードからなる。これによって、測定部13を透過して減衰したレーザー光の透過光強度を電気的に処理することができる。
計測部17は、透過光強度に係る透過光信号と、レーザー発生部11の制御部15から出力されたレーザー光の入射光強度に係る入射光信号に基づいて透過率を計算し、当該透過率に基づいてレーザー光の特定ガスによる吸光度を求め、当該吸光度に基づいて包装袋内の特定ガスのガス濃度を計測するように形成されている。
測定部13は、図1に示すように、測定対象に対してレーザー光を透過可能に構成されている。
ここで、測定対象は、包装袋又は包装容器或いはこれらに類する包装体類50であって、たとえば、ポリ袋、パウチのような包装袋、又は瓶、プラスチックケース等のような包装容器のように、各種包装に供されるものである。本実施例において、これら包装体類50に係るレーザー光の透過率は、0.00001%以上、100%未満と想定されている。すなわち、本実施例に係るレーザー式ガス濃度計は、包装体類50が着色されている場合であってもレーザー光が透過するようであれば有効である。
測定部13におけるレーザー光に係る光路は、図1に示すように、レーザー発生部11からレーザー受光部12までの光路を総光路20とし、当該総光路20は、レーザー発生部11から包装体類50まで入射光に係る入射光路21、包装体類50内部でレーザー光が特定ガスに吸収されて減衰する減衰光路22、包装体類50からレーザー受光部12まで透過光に係る透過光路23からなる。
上記の構成を有するレーザー式ガス濃度計10は、波長可変半導体レーザー吸収分光法によって特定ガスを分析するものである。
波長可変半導体レーザー吸収分光法(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy:TDLAS)とは、半導体レーザー素子から出力されたレーザー光に係る所定の入射光強度と、測定対象となる特定ガス含んだ気体を封じたセルを透過して、当該特定ガスに吸収された透過後のレーザー光に係る透過光強度とから透過率を求めて、透過率に基づくレーザー光の吸光度からガス濃度を測定する方法である。
特定ガスを含めて気体はそれぞれ固有の吸収波長帯を有し、当該吸収波長帯にはより強く光を吸収する波長に係る吸収線が複数本含まれていることが知られている。TDLASは、出力するレーザー光の近赤外領域の波長を、測定対象となる特定ガスの複数本の吸収線のうち、一本の吸収線に係る特定波長に合致するように変調し、増幅するように構成されている。そして、セルの透過前後で変化する特定波長の吸収スペクトルに基づいてレーザー光の吸光度を求めてガス濃度を測定している。
波長可変半導体レーザー吸収分光法(TDLAS)は、ランバート・ベールの法則に基づいてガス濃度を測定するものである。ランバート・ベールの法則とは、入射光強度をI、包装袋Bを透過した透過光強度をI、入射光に対する透過光の透過率をTとして、光路長をL、ガス濃度をCとすると,特定波長の吸収スペクトルで射出されたレーザー光の吸光度Aとの間に、数式1が成立する関係である。ここでεは測定対象となる所定のガスがレーザー光を吸収する固有の吸収係数である。
Figure 0007321453000001
ここで、レーザー発生部11とレーザー受光部12間に設けた測定部13について、図1に示すように、総光路20に係る総光路長をLとし、総光路20で吸収されたガス濃度をCとすると、数式1のように、入射光強度Iと、透過光強度Iから、総光路20上で特定波長の吸収スペクトルで射出されたレーザー光の総吸光度Aが定まり、総光路上で吸収されたガス濃度Cを求めることができる。
そして、総光路長Lは、入射光路長L、包装体類内部の減衰光路長L、透過光路長Lの和であって、総吸光度Aは、入射光路21で吸光された入射吸光度A、包装体類内部の減衰光路22で吸光された減衰吸光度A、透過光路23で吸光された透過吸光度Atの和である。
したがって、入射光路21上の特定ガスのガス濃度をC、透過光路23上の特定ガスのガス濃度をCとすると、減衰光路22上、すなわち包装体類50内部のガス濃度をCは、数式2で求めることができる。
Figure 0007321453000002
数式2の(2)式によれば、入射光路長Lと透過光路長Lに対して、包装体類50内部の減衰光路長Lを相対的に長くした場合、入射光路長Lと透過光路長Lにおけるガス濃度の影響を小さくすることができる。
したがって、たとえば、レーザー発生部11とレーザー受光部12を接離自在に構成して、測定対象の包装体類50の長さ、すなわち減衰光路長Lに対して入射光路長Lと透過光路長Lが相対的に極めて短くなるように調整可能にすれば良い。これによって、包装体類50内部の特定ガスのガス濃度Caの測定精度を向上させることができる。
また、測定部13全体を窒素ガス(N)でガスパージして特定ガスを除去するような構成の場合、或いは測定部13が大気雰囲気下にある場合、入射光路21上のガス濃度Cと透過光路23上のガス濃度Cは、同一値か或いは互いに近似した値であるとみなすことができるから、透過光路23上のガス濃度をCと置いて、入射光路21上のガス濃度Cでまとめることができる。
これによって、ガスパージされた環境だけではなく、大気雰囲気下であっても包装体類50内部のガス濃度Caを計測することができる。
さらに、入射光路長Lと透過光路長Lが減衰光路長Lに対して相対的に無視できるほど短い場合であって、入射光路21上のガス濃度Cと透過光路23上のガス濃度Cが総光路20上のガス濃度Cと同一値又は近似することができる場合、包装体類50内部のガス濃度Cは、総光路長Lに対する減衰光路長Lの比で求めることができる。
このとき、減衰光路Lが一定、すなわち、包装体類50の大きさが一定であって、包装体類50内部の減衰光路22が一定であることが好ましい。これによって、包装体類内部のガス濃度Cを安定して求めることができる。
ここで、特定ガスを含む大気は、気圧、気温によって単位当たりの密度が時々刻々と変化している。すなわち、単位当たりの大気中に含まれる特定ガスの原子、又は分子の数もまた、それに応じて時々刻々と変化しているので、TDLASによって、特定ガスの複数本の吸収線のうち、一本の吸収線に係る特定波長に合致するレーザー光を射出した場合、当該レーザー光を吸収する原子又は分子の単位当たりの数が気圧又は気温で変化するため、それに基づいて測定されるガス濃度は安定しなくなるおそれがある。
また、包装体類50が所定の包装袋であるような場合には、当該包装袋に密封されている不活性ガスの量や内圧に応じて、包装袋の厚さ、すなわち、減衰光路長Lが変化し、これに伴って、総光路長Lに対する入射光路長Lと透過光路長Lもまた変化する。
上記のような時々刻々と変化する気圧、気温といったレーザー式ガス濃度計10の周辺環境の変化、或いは、包装体類50の厚みや長さによって変化する減衰光路長Lに基づいて変化する入射光路長L又は透過光路長L長さといった外乱によって、包装体類50内部のガス濃度Cは容易に変化してしまうおそれがある。
そこで、本実施例に係るレーザー式ガス濃度計10は、測定時間を所定の長さに定め、当該測定時間内で複数回レーザー光を総光路20上へ射出することによって、複数の実測値を得るように構成されている。
複数の実測値に基づいて、レーザー発生部11から総光路20上に射出されたレーザー光が包装体類50を含む測定部13を透過してレーザー受光部12で受光されたときの総吸光度Aについて、その平均である総平均吸光度Aavを求めることができる。そして、総平均吸光度Aavと測定回数、測定した実測値のバラツキから、標準偏差と、補正吸光度Aを得ることができる。
さらに、標準偏差に基づく補正吸光度Aを総吸光度Aの実測値に対して適用することによって、実測値を補正した計測値を所定の範囲内に収めることができる。ここで、補正吸光度Aは、総光路20上全ての吸光度に影響を及ぼすものであるから、総吸光度Aに対する補正吸光度Aの補正率を求めて、当該補正率を入射光路21上の入射吸光度A、及び透過光路23上の透過吸光度Aに対して適用することによって、包装体類50内部のガス濃度Cの測定精度を向上させることができる。
また、所定の測定時間内で複数回実測することによって、上記の補正吸光度Aavを得ると共に、総吸光度Aに対する補正吸光度Aavの補正率を、ガス濃度測定時に実測値に対してフィードバックすることによって、計測値を所定の範囲内に含まれた所定の値へ収束させることができ、より一層測定精度を向上させることができる。
上記の構成を有するレーザー式ガス濃度計10の効果を検証する複数の実験を行った。当該各実験の実験結果について添付した図面にしたがって説明する。図2は第1実験例の結果を示すグラフ、図3は第2実験例の結果を示すグラフ、図4は第3実験例の結果を示すグラフである。
まず、第1実験について、図2にしたがって説明する。
第1実験は、測定部13上の減衰光路22に係る減衰光路長Lを17mmに設定したものである。ここで、上記したように、入射光路長Lと透過光路長Lは、減衰光路長Lに対して相対的に十分短くなるように、すなわち、レーザー発生部11と包装体類50、又は包装体類50とレーザー受光部12の距離が、包装体類50の長さよりも短くなるように設置した。これによって、入射光路長Lと透過光路長Lは、本第1実験では無視するものとする。
そして、測定時間は300msに設定し、当該測定時間内で1000回、測定部13上にレーザー光を照射した。
図2は、測定部13に包装体類50を設置していない場合の測定結果を示すグラフである。すなわち、総光路長Lと減衰光路長Lが一致しているとみなせる場合の測定結果である。このとき、酸素ガスのガス濃度に係る測定値の標準偏差は、0.05%であった。
また、測定部13に減衰光路長Laを十分に確保できる透明なポリエチレン製の包装袋を設置して、同様の実験を行ったところ、酸素ガスのガス濃度に係る測定値の標準偏差は、0.08%を示し、包装体類50を設置していないときと比べて測定値のバラツキが大きくなった。これは、レーザー光が包装体類50へ入射するとき、及び当該レーザー光が包装体類50を透過するとき、測定部13の雰囲気と包装体類50との境界面上で、レーザー光の反射或いは散乱が発生したためと考えられる。
次に、第2実験について、図3にしたがって説明する。
第2実験は、第1実験の減衰光路長Lの長さを17mmとしたこと対して、減衰光路長Lを38mmとした点が相違する。また、第1実験と同様に、上記したように、入射光路長Lと透過光路長Lは、減衰光路長Lに対して相対的に十分短くなるように、すなわち、レーザー発生部11と包装体類50、又は包装体類50とレーザー受光部12の距離が、包装体類50の長さよりも短くなるように設置した。これによって、入射光路長Lと透過光路長Lは、本第2実験では無視するものとする。
そして、第1実験と同様に、測定時間を300msに設定し、当該測定時間内で1000回、測定部13上にレーザー光を照射した。
図3は、測定部13に包装体類50を設置した場合の測定結果を示すグラフである。ここで、包装体類50は、第1実験において補助的に行った実験で使用した包装袋であって、減衰光路長Lを十分に確保できる透明なポリエチレン製の包装袋とする。
このとき、酸素ガスのガス濃度に係る測定値の標準偏差は、0.031%であった。第1実験に係る図3と比べて、測定値が所定の範囲内に収まっていることが明らかである。
また、測定部13に包装体類50を設置せずに同様の実験を行ったところ、酸素ガスのガス濃度に係る測定値の標準偏差は、0.028%を示した。
すなわち、総光路20を長くすると共に、包装体類50内部の減衰光路22もまた長くすることによって、測定値のバラツキを抑えることができ、測定精度を向上させることができるということを確認することが出来た。
さらに、第3実験について、図4にしたがって説明する。
第3実験は、第2実験と同様に、減衰光路長Lを38mmに設定している。そして、第2実験と同様に、入射光路長Lと透過光路長Lは、減衰光路長Lに対して相対的に十分短くなるように、すなわち、レーザー発生部11と包装体類50、又は包装体類50とレーザー受光部12の距離が、包装体類50の長さよりも短くなるように設置した。これによって、入射光路長Lと透過光路長Lは、本第3実験では無視するものとする。
第3実験では、既に包装体類50内部の酸素ガスのガス濃度を所定の低酸素濃度に調整した包装袋を5個用意した。それらのガス濃度は、包装袋B1が0.3%、包装袋B2が0.25%、包装袋B3が0.5%、包装袋B4が0.2%、包装袋B5が0.35%となるように調整されている。
そして、測定部13に対し、各包装袋の位置を変えてそれぞれ20回測定することを5回繰り返した。したがって、測定回数は各包装袋ごとに100回となっている。図4に示すグラフは、包装袋B1~包装袋B5について、測定した結果を示すものである。
それぞれ異なる低酸素濃度に調整された包装袋を変え、当該包装袋の位置を変えて測定した総測定回数500回の標準偏差は0.04%であった。
また、図4のグラフから明らかなように、酸素ガスのガス濃度を0.5%に調整した包装袋B3を第3実験で検出することが出来ていることを確認することができた。
ここで、本願出願人は、本実施例に係るレーザー式ガス濃度計10を組み込んだガス濃度測定装置において、包装体類50内部に封じた酸素ガスのガス濃度を検査したとき、包装体類50内に満たされている不活性ガスのガス濃度に対して、酸素ガスのガス濃度が0.2%以下の場合が正常値となるように設定している。そして、当該酸素ガスのガス濃度が0.2%~0.5%の場合を許容範囲とし、ガス濃度が0.5%以上の場合には不良品と判定して、0.5%以上の酸素ガスが封入されている包装体類50を排除するように設定している。また、品質保証の観点から、ガス濃度の測定値の標準偏差は、0.033%以内に収めることを目標としている。
図4から明らかなように、ガス濃度が0.5%である包装袋Bを検出することができていることから、本実施例に係るレーザー式ガス濃度計10は、大気雰囲気下であってもガス濃度を測定することができる。
しかしながら、求める標準偏差に対して、第3実験では十分な標準偏差を得ることが出来ていない。
したがって、目標とする標準偏差0.033%以内に納めるためには、たとえば、総光路長Lと減衰光路長Lを延ばして検知感度を向上させると共に、減衰光路長Lに対してさらに入射光路長L及び透過光路長Lを相対的に短く納めるように包装体類50を保持する装置を設けた場合、さらに標準偏差に係る値を改善することができるものと思われる。
本実施例に係るレーザー式ガス濃度計10によれば、レーザー発生部11とレーザー受光部12の間の測定部13が大気雰囲気下にあっても、測定部13に配置した包装体類50内部の特定ガスのガス濃度を測定できるようにした。これによって、ガスパージに係る装置を省くことができるので、本実施例に係るレーザー式ガス濃度計10を用いるガス濃度測定装置の構成を簡略化することができ、さらに、これによって、包装機上に限られたスペースへ容易に取り付けることができる。
10…レーザー式ガス濃度計、
11…レーザー発生部、12…レーザー受光部、13…測定部、
14…レーザー光源、15…制御部、16…受光センサ、17…計測部、
20…総光路、21…入射光路、22…減衰光路、23…透過光路、
50…包装体類、
1…従来のガス濃度測定装置、2…従来のレーザー発生部、3…主ヘッド、4…従来のレーザー受光部、5…副ヘッド、6…グリップ、
B…包装袋。

Claims (5)

  1. 特定波長のレーザー光を、ガス置換されて密封された包装容器又は包装袋或いはこれらに類する包装体類に透過させて、前記包装体類の透過前後で変化する特定波長の吸収スペクトルに基づいて前記包装体類の内部に残留している特定ガスのガス濃度を測定するようにしたレーザー式ガス濃度計であって、
    当該レーザー式ガス濃度計は、
    前記レーザー光を射出するレーザー発生部と、
    前記レーザー光を受光するレーザー受光部と、
    前記レーザー発生部から前記包装体類までの入射光路、前記レーザー光が前記包装体類を透過して減衰する減衰光路、及び前記包装体類から前記レーザー受光部までの透過光路からなる前記レーザー光の総光路を有する測定部と、
    前記レーザー発生部における前記レーザー光の入射強度、及び前記レーザー受光部における前記レーザー光の透過光強度から求められる前記包装体類を透過したレーザー光の透過率に基づいて、前記減衰光路上で前記包装体類内部の前記特定ガスに吸収された前記特定波長の減衰吸光度を測定して、当該減衰吸光度に基づいて前記包装体類内部の前記特定ガスの濃度を算出する計測部とを有し、
    当該計測部が、前記総光路上で前記レーザー光が前記特定ガスに吸収された前記特定波長の総吸光度から
    前記入射光路上で前記レーザー光が前記特定ガスに吸収された前記特定波長の入射吸光度と、
    前記透過光路上で前記レーザー光が前記特定ガスに吸収された前記特定波長の透過吸光度とを除外して、
    前記減衰光路上における前記特定波長の前記減衰吸光度を計測し、
    当該減衰吸光度と前記減衰光路の光路長に基づいて、前記包装体類内部の前記特定ガスの濃度を算出するようにして、
    前記入射吸光度と前記透過吸光度が、大気雰囲気下で所定の外乱によって変化するとき、
    前記レーザー光を前記測定部へ複数回射出して、前記総光路上における前記特定ガスの総平均吸光度を求め、
    当該総平均吸光度と複数回の測定回数、及び測定された実測値のバラツキに基づいて、前記入射吸光度と前記透過吸光度を補正する標準偏差及び補正吸光度を定めて、
    前記包装体類内部の前記減衰光路上における前記特定波長の前記減衰吸光度を計測するとき、
    前記補正吸光度で補正された前記入射吸光度と前記透過吸光度を適用するようにしたことを特徴とするレーザー式ガス濃度計。
  2. 前記減衰光路の光路長が所定の長さで一定であることを特徴とする請求項1に記載のレーザー式ガス濃度計。
  3. 前記入射光路と前記透過光路が大気雰囲気下であることを特徴とする請求項1に記載のレーザー式ガス濃度計。
  4. 前記減衰光路の光路長が、前記入射光路又は前記透過光路の光路長よりも長いことを特徴とする請求項1に記載のレーザー式ガス濃度計。
  5. 前記外乱が、前記大気雰囲気の気温又は気圧、或いは前記入射光路又は前記透過光路の光路長の変化によるものであることを特徴とする請求項に記載のレーザー式ガス濃度計。
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