[ポリシラン]
ポリシランは、接着剤および/または基材に(特に接着剤に)添加することにより、接着剤または基材中の樹脂などと相互作用するためか、非極性基材(例えば、ポリオレフィン系樹脂などの低い表面エネルギー(または表面自由エネルギー)を有する樹脂など)-極性基材(例えば、アルミニウムもしくはその合金またはそれらの酸化物などの無機材料など)間などの異種材料間の接着であっても、接着力を有効に向上できる。
ポリシランとしては、Si-Si結合を有する鎖状(直鎖状または分岐鎖状)、環状、網目状(またはネットワーク状)、および/またはこれらを2以上組み合わせた構造の化合物であってもよい。ポリシランを構成する構造単位(シラン単位)としては、下記式(1a)~(1d)で表される構造単位などが挙げられる(以下、単に、それぞれ、シラン単位(1a)~(1d)ともいう)。
(式中、R1~R6は、それぞれ独立して水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子または有機基を示す)。
前記式(1a)、(1b)および(1d)において、基(または側鎖)R1~R6で表されるハロゲン原子としては、塩素原子などが挙げられる。
基(または側鎖)R1~R6で表される有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基、これらの炭化水素基にエーテル結合[-O-]が結合した基などが挙げられる。
アルキル基(直鎖状または分岐鎖状アルキル基)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-14アルキル基などが挙げられ、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-10アルキル基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基である。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などのC2-14アルケニル基などが挙げられ、好ましくはC2-6アルケニル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基などのC5-14シクロアルキル基などが挙げられ、好ましくはC5-10シクロアルキル基が挙げられる。
シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのC5-14シクロアルケニル基などが挙げられ、好ましくはC5-10シクロアルケニル基などが挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのC6-20アリール基などが挙げられ、好ましくはC6-12アリール基である。アリール基は、アルキル基などの置換基を有していてもよい。置換基の個数は、特に限定されず、例えば、1または複数(例えば2~4個)であってもよく、複数の場合は、置換基の種類が同一または異なってもよい。このような置換基を有するアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、メチルナフチル基などのC1-6アルキルC6-12アリール基などが挙げられ、好ましくはモノないしトリC1-4アルキルC6-10アリール基、さらに好ましくはモノまたはジC1-4アルキルフェニル基である。
アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基などのC6-20アリール-C1-6アルキル基などが挙げられ、好ましくはC6-12アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
前記炭化水素基にエーテル結合[-O-]が結合した基としては、前記例示の炭化水素基に対応してエーテル結合が結合した基であればよく、例えば、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基などのC1-14アルコキシ基などが挙げられる。
シクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などのC5-14シクロアルキルオキシ基などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などのC6-20アリールオキシ基などが挙げられる。
アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、フェニルプロピルオキシ基などのC6-20アリール-C1-6アルキルオキシ基などが挙げられる。
これらの基R1~R6のうち、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などは末端、例えば、式(1d)で表される構造単位などに置換することが多い。通常、基R1~R6は有機基である場合が多く、好ましい基R1~R6としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基であり、有機溶媒に対する溶解性や、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン樹脂など)などの樹脂に対する分散性(または相溶性)に優れる点などから、さらに好ましくはアルキル基、アリール基である。
好ましいアルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基が挙げられ、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-3アルキル基であり、なかでもメチル基、エチル基などのC1-2アルキル基であり、メチル基が最も好ましい。
好ましいアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC1-4アルキルを有していてもよいC6-12アリール基であり、さらに好ましくはC1-3アルキルを有していてもよいC6-10アリール基であり、なかでも、C1-2アルキルを有していてもよいフェニル基であり、フェニル基が最も好ましい。
式(1a)において、R1およびR2は、アルキル基およびアリール基のいずれかを少なくとも含むのが好ましい。また、R1およびR2の種類は互いに同一または異なっていてもよく、異なっているのが好ましい。R1とR2との代表的な組み合わせは、例えば、アルキル基同士の組み合わせ、アリール基同士の組み合わせ、アルキル基とアリール基との組み合わせなどが挙げられる。
アルキル基同士の組み合わせとしては、例えば、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基同士の組み合わせなどが挙げられ、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-3アルキル基同士の組み合わせであり、さらに好ましくはメチル基またはエチル基同士の組み合わせ、特にメチル基同士の組み合わせが挙げられる。
アリール基同士の組み合わせとしては、例えば、C1-4アルキルを有していてもよいC6-12アリール基同士の組み合わせなどが挙げられ、好ましくはC1-2アルキルを有していてもよいフェニル基同士の組み合わせであり、さらに好ましくはフェニル基同士の組み合わせが挙げられる。
アルキル基とアリール基との組み合わせは、R1およびR2のうちいずれか一方がアルキル基であり、他方がアリール基であればよく、例えば、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基とC1-4アルキルを有していてもよいC6-12アリール基との組み合わせなどが挙げられ、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-3アルキル基とC1-2アルキルを有していてもよいフェニル基との組み合わせである。
これらのR1とR2との組み合わせを有するシラン単位(1a)は、単独でまたは2種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらのR1とR2との組み合わせのうち、アリール基同士の組み合わせ、またはアルキル基とアリール基との組み合わせが好ましく、有機溶媒に対する溶解性や、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン樹脂など)などの樹脂に対する分散性(または相溶性)に優れる点などから、アルキル基とアリール基との組み合わせが好ましく、さらに好ましくはメチル基またはエチル基とフェニル基またはモノもしくはジC1-2アルキルフェニル基との組み合わせであり、特にメチル基とフェニル基との組み合わせが好ましい。
また、式(1b)において、R3はアルキル基またはアリール基であることが多い。アルキル基またはアリール基の好ましい態様は、前記好ましいアルキル基および好ましいアリール基と同様である。これらのシラン単位(1b)は、単独でまたは2種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらのシラン単位(1b)うち、R3はアリール基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
なお、式(1d)において、R4~R6の種類は、互いに同一または異なっていてもよい。ポリシランの少なくとも一部の末端基は、アルキル基またはアリール基であってもよく、シラノール基(R4~R6がヒドロキシル基)であってもよい。末端基がシラノール基(ヒドロキシル基)であると、接着剤や被着体などに含まれ、かつシラノール基との官能基を有する樹脂成分との反応または結合により、機械的強度、接着強度(または剥離強度)などを向上できることがある。
通常、ポリシランは、式(1a)および(1b)で表される構造単位のうち少なくとも1種の構造単位を有する場合が多い。
ポリシラン全体に対するシラン単位(1a)およびシラン単位(1b)の合計割合は、10~100モル%の広い範囲から選択でき、例えば30モル%以上(例えば40~90モル%)、好ましくは50モル%以上(例えば60~85モル%)、より好ましくは70モル%以上(例えば75~80モル%)、さらに好ましくは90モル%以上であってもよく、通常、40~90モル%、好ましくは50~80モル%、さらに好ましくは55~75モル%、特に60~70モル%である。
シラン単位(1a)とシラン単位(1b)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=10/90~100/0の広い範囲から選択でき、例えば50/50~100/0(例えば55/45~90/10)、好ましくは60/40~100/0(例えば65/35~85/15)、さらに好ましくは70/30~100/0(例えば75/25~80/20)程度であってもよく、シラン単位(1)のみ(100/0)であってもよい。
ポリシラン全体に対するシラン単位(1b)の割合は、例えば0~20モル%(例えば1~10モル%、好ましくは2~5モル%)程度であってもよい。
ポリシラン全体に対するシラン単位(1c)の割合は、例えば0~20モル%(例えば1~10モル%、好ましくは2~5モル%)程度であってもよい。
ポリシラン全体に対するシラン単位(1d)の割合は、例えば0~40モル%(例えば1~20モル%、好ましくは5~10モル%)程度であってもよい。
ポリシランは、シラン単位のなかでも、式(1a)で表される構造単位を少なくとも含むのが好ましい。そのため、ポリシラン全体に対するシラン単位(1a)の割合は、例えば10~99モル%程度であってもよく、好ましくは30~95モル%、より好ましくは40~90モル%、さらに好ましくは50~80モル%、なかでも55~75モル%、特に60~70モル%である。
ポリシランが直鎖状ポリシランのような式(1a)および(1d)で表される構造単位を含む場合、シラン単位(1a)とシラン単位(1d)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=10/90~99/1程度であってもよく、好ましくは30/70~95/5、より好ましくは40/60~90/10、さらに好ましくは50/50~80/20、なかでも55/45~75/25、特に60/40~70/30である。
ポリシランの重合形態は、特に限定されず、単独重合体、または共重合体、例えば、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体などであってもよい。
代表的なポリシランとしては、例えば、シラン単位(1a)を少なくとも有する直鎖状または環状ポリシラン、シラン単位(1b)および/またはシラン単位(1c)を少なくとも有する分岐鎖状または網目状ポリシラン(例えば、網目状ポリシラン)などが挙げられる。
シラン単位(1a)を有する鎖状または環状ポリシランとしては、例えば、ポリジアルキルシラン、ポリアルキルアリールシラン、ポリジアリールシラン、ジアルキルシラン-アルキルアリールシラン共重合体、アルキルアリールシラン-ジアリールシラン共重合体、ジアルキルシラン-ジアリールシラン共重合体などが挙げられる。
ポリジアルキルシランとしては、例えば、ポリジメチルシラン、ポリメチルプロピルシラン、ポリメチルブチルシラン、ポリメチルペンチルシラン、ポリジブチルシラン、ポリジヘキシルシラン、ジメチルシラン-メチルへキシルシラン共重合体などのポリジC1-8アルキルシランなどが挙げられ、好ましくはポリジC1-4アルキルシラン、さらに好ましくはポリジC1-2アルキルシランである。
ポリアルキルアリールシランとしては、例えば、ポリメチルフェニルシラン、メチルフェニルシラン-フェニルヘキシルシラン共重合体などのポリ(C1-8アルキル-C6-12アリールシラン)などが挙げられ、好ましくはポリ(C1-4アルキル-C6-10アリールシラン)、さらに好ましくはポリ(C1-2アルキル-フェニルシラン)である。
ポリジアリールシランとしては、例えば、ポリジフェニルシランなどのポリジC6-12アリールシランが挙げられ、好ましくはポリジC6-10アリールシラン、さらに好ましくはポリジフェニルシランである。
ジアルキルシラン-アルキルアリールシラン共重合体としては、例えば、ジメチルシラン-メチルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン-ヘキシルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン-メチルナフチルシラン共重合体などのジC1-8アルキルシラン-(C1-8アルキル-C6-12アリールシラン)共重合体などが挙げられ、好ましくはジC1-4アルキルシラン-(C1-4アルキル-C6-10アリールシラン)共重合体、さらに好ましくはジC1-2アルキルシラン-(C1-2アルキル-フェニルシラン)共重合体である。
アルキルアリールシラン-ジアリールシラン共重合体としては、例えば、メチルフェニルシラン-ジフェニルシラン共重合体などの(C1-8アルキル-C6-12アリールシラン)-ジC6-12アリールシラン共重合体などが挙げられ、好ましくは(C1-4アルキル-C6-10アリールシラン)-ジC6-10アリールシラン共重合体、さらに好ましくは(C1-2アルキル-フェニルシラン)-ジフェニルシラン共重合体である。
ジアルキルシラン-ジアリールシラン共重合体としては、例えば、ジメチルシラン-ジフェニルシラン共重合体などのジC1-8アルキルシラン-ジC6-12アリールシラン共重合体などが挙げられ、好ましくはジC1-4アルキルシラン-ジC6-10アリールシラン共重合体、さらに好ましくはジC1-2アルキルシラン-ジフェニルシラン共重合体である。
シラン単位(2b)を有する分岐鎖状または網目状ポリシラン(例えば、網目状ポリシラン)としては、例えば、ポリアルキルシラン、ポリアリールシランなどが挙げられる。
ポリアルキルシランとしては、例えば、ポリメチルシラン、ポリプロピルシラン、ポリブチルシラン、ポリヘキシルシランなどのポリC1-8アルキルシランなどが挙げられ、好ましくはポリC1-4アルキルシラン、さらに好ましくはポリC1-2アルキルシランである。
ポリアリールシランとしては、例えば、ポリフェニルシランなどのポリC6-12アリールシランなどが挙げられ、好ましくはポリC6-10アリールシラン、さらに好ましくはポリフェニルシランである。
これらのポリシランは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのポリシランのうち、有機溶媒に対する溶解性や、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン樹脂など)などの樹脂に対する分散性(または相溶性)に優れる点などから、シラン単位(1a)を少なくとも有する直鎖状または環状ポリシランが好ましく、より好ましくはポリアルキルアリールシラン、ポリジアリールシランであり、さらに好ましくは直鎖状ポリアルキルアリールシラン、環状ポリジアリールシラン(例えば、デカフェニルシクロペンタシランなどの環状ポリジC6-10アリールシランなど)であり、なかでも直鎖状ポリ(C1-4アルキル-C6-10アリールシラン)などの直鎖状ポリアルキルアリールシランが好ましく、特に直鎖状ポリメチルフェニルシランなどの直鎖状ポリ(C1-2アルキル-フェニルシラン)である。
なお、ポリシランは、シロキサン結合(-Si-O-Si-)を有さないのが好ましいが、不可避的に微量のシロキサン結合を有する場合がある。
ポリシランの平均重合度は、ケイ素原子換算(すなわち、一分子当たりのケイ素原子の平均数)で、例えば500以下程度、具体的には2~250程度であってもよく、好ましくは3~100、より好ましくは3.5~50、さらに好ましくは4~20、なかでも4.5~10、特に5~7である。平均重合度が大きすぎると、溶媒に対する溶解性や、接着剤に含まれる樹脂成分および/または基材(被着材)への分散性(または相溶性)が低下するおそれがある。また、平均重合度が小さすぎると、接着性を改善できないおそれがある。
ポリシランの重量平均分子量Mwは、GPC(ポリスチレン換算)による測定方法において、例えば100以上、具体的には150~50000程度の範囲から選択でき、例えば200~30000(例えば250~20000)、好ましくは300~15000(例えば350~10000)、さらに好ましくは400~5000(例えば450~3000)である。通常、200~2000程度であってもよく、なかでも500~1500(例えば550~1000)、特に600~800(例えば650~750)が好ましい。
ポリシランの数平均分子量Mnは、GPC(ポリスチレン換算)による測定方法において、例えば30000以下程度であり、例えば100~10000、好ましくは300~3000、さらに好ましくは400~1000(特に500~700)である。
分散度Mw/Mnは、例えば1~5、好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2、特に1~1.5である。
重量平均分子量Mwや数平均分子量Mnが大きすぎると、溶媒に対する溶解性や、接着剤に含まれる樹脂成分などに対する分散性(または相溶性)が低下するおそれがある。なお、ポリシランの重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnおよび分散度Mw/Mnは、GPCにより標準ポリスチレン換算で測定できる。
ポリシランは、室温(例えば、20℃程度)で、液体状(または粘稠体状)であってもよく、固体状であってもよいが、溶媒に対する溶解性や、接着剤に含まれる樹脂成分などに対する分散性(または相溶性)の点から液体状(または粘稠体状)であるのが好ましい。
ポリシランは、市販品を用いてもよく、調製してもよい。調製する場合、前記式(1a)~(1d)で表される構造単位を有するハロシラン類を用いる調製方法などの慣用の方法であってもよく、例えば、マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「マグネシウム還元法」、WO98/29476号公報など)、アルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「キッピング法」、J.Am.Chem.Soc.,110,124(1988)、Macromolecules,23,3423(1990)など)、電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.897(1992)など)、金属触媒の存在下にヒドロシラン類を脱水素縮重合させる方法(特開平4-334551号公報など)、ビフェニルなどで架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23,4494(1990)など)、環状シラン類の開環重合による方法などにより得ることができる。
このようなポリシランは、単独でまたは2種以上組み合わせて、接着性改善剤(または密着性付与剤)として利用できる。接着性改善剤は、接着性(または密着性)が必要とされる用途である限り、添加する対象は特に制限されず、例えば、接着剤、基材または被着材[特に樹脂(例えば、後述する接着剤の樹脂成分の項に例示される硬化性樹脂、熱可塑性樹脂など)で形成された樹脂基材]、コーティング剤(塗膜または塗料)などに添加して接着性(または密着性)を改善してもよく、好ましくは接着剤に添加して接着性を改善してもよい。
ポリシランを添加する際の割合は、添加対象の固形分全体(接着剤やコーティング剤などに添加する場合、有効成分(溶剤を除いた成分)全体)に対して、例えば0.001~80質量%程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.01~50質量%、0.05~30質量%、0.1~15質量%、0.5~10質量%、1~9質量%、2~8質量%、3~7質量%、4~6質量%である。ポリシランの割合が少なすぎると、接着力を向上できないおそれがある。また、ポリシランの割合が多すぎても、接着力を向上できないおそれがある。本発明では、ポリシランの添加量が比較的少量であっても、接着性を有効に改善できる。そのため、ポリシラン添加前の材料物性を大きく低下させることなく、有効に保持できる。
ポリシランを添加した際の剥離強度(または接着強度)は、ポリシランを添加しなかった場合(例えば、ポリシランを添加することなく接着剤中の樹脂成分をポリシランと同じ量だけ追加した接着剤を用いた場合)に比べて、例えば1.3~10倍程度、好ましくは1.5~5倍、さらに好ましくは2~3.5倍に向上できる。なお、本明細書および特許請求の範囲において、剥離強度は、後述する実施例に記載の180°剥離試験により測定できる。
[接着剤]
本発明の接着性改善剤(ポリシラン)は、接着剤の接着力を向上するための添加剤として特に有効に利用できる。この理由は定かではないが、ポリシランは、離型性や防汚性(または撥水性)などの性質を示すにもかかわらず、意外なことに、接着剤中に含まれる樹脂成分(または接着成分)と組み合わせることにより、非極性基材-極性基材間などの異種材料間の接着に対しても、より一層高い接着性向上効果を発現するようである。そのため、接着剤はポリシランと樹脂成分とを少なくとも含んでいればよい。
(樹脂成分)
接着剤中に含まれる樹脂成分(または接着成分)は、接着剤および/または粘着剤として利用される慣用の樹脂であってもよく、硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂など)、アミノ樹脂(ユリア樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂など)、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂(またはエポキシ(メタ)アクリレート樹脂)、多官能(メタ)アクリレート系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂(ビスマレイミド系樹脂など)、シリコーン樹脂などであってもよいが、簡便にかつ高い接着力で有効に接着できる点から、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などの鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂など);スチレン系樹脂[ポリスチレン(PS){一般用ポリスチレン(GPPS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)など};スチレン系共重合体[スチレン-メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ゴム成分含有スチレン系樹脂またはゴムグラフトスチレン系共重合体{耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、AXS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル-(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)-スチレン共重合体(AES樹脂)など)、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)など}など]など];(メタ)アクリル樹脂[ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの(メタ)アクリル系単量体の単独または共重合体など];酢酸ビニル系樹脂[ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール(ポリビニルホルマール(PVF)、ポリビニルブチラール(PVB)など)など];塩化ビニル系樹脂[塩化ビニル樹脂(塩化ビニル単独重合体(PVC);塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル共重合体など)、塩化ビニリデン樹脂(塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体などの塩化ビニリデン共重合体など)など];フッ素樹脂[ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)など];ポリエステル樹脂[ポリアルキレンアリレート系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ1,4-シクロヘキシルジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステル(LCP)など];ポリカーボネート樹脂(PC)[ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などのビスフェノール型ポリカーボネート樹脂];ポリアミド樹脂(PA)[脂肪族ポリアミド樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66など)、芳香族ポリアミド樹脂またはアラミド樹脂(ポリm-フェニレンイソフタルアミド、ポリp-フェニレンテレフタルアミドなど)など];ポリアセタール樹脂(POM);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE);ポリエーテルケトン系樹脂[ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)など);フェノキシ樹脂;ポリケトン樹脂(脂肪族ポリケトン樹脂など);ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS);ポリスルホン系樹脂[ポリスルホン樹脂(PSF)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)など);セルロース誘導体[セルロースエステル(ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなど)、セルロースエーテル(エチルセルロースなど)など];熱可塑性ポリイミド樹脂(ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミドなど);ポリエーテルニトリル樹脂;熱可塑性エラストマー(TPE)[ポリスチレン系TPE、ポリオレフィン系TPE(TPO)、ポリジエン系TPE、塩素系TPE、フッ素系TPE、ポリウレタン系TPE(TPU)、ポリエステル系TPE(TPEE)、ポリアミド系TPE(TPA)など]などが挙げられる。
これらの樹脂(特に熱可塑性樹脂)は、単独でまたは2種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらの樹脂(特に熱可塑性樹脂)のうち、接着性の観点から、非晶性(または低結晶性)および/または溶媒可溶性の樹脂であるのが好ましく、非晶性(または低結晶性)であるのがさらに好ましい。具体的な樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、セルロース誘導体、熱可塑性エラストマー(TPE)が好ましく、非極性基材と極性基材との接着であってもより有効に接着力を向上できる点から、ポリオレフィン系樹脂がさらに好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、α-オレフィンを主要な重合成分とする鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン類を重合成分として含む環状オレフィン系樹脂などが挙げられる。環状オレフィン系樹脂としては、エチレン-ノルボルネン共重合体などの環状オレフィン共重合体(COC)、ポリノルボルネン、ポリジシクロベンタジエン、ポリシクロペンタジエンもしくはこれらの水添物などの環状オレフィン類の付加もしくは開環重合体またはその水添物などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのポリオレフィン系樹脂のうち、通常、鎖状オレフィン系樹脂であることが多い。
鎖状オレフィン系樹脂の重合成分であるα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、1-オクテン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどのα-C2-20オレフィンなどが挙げられ、好ましくはα-C2-10オレフィン、さらに好ましくはエチレン、プロピレンなどのα-C2-6オレフィンである。
鎖状オレフィン系樹脂は、前記α-オレフィンの単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、共重合体(コポリマー)であってもよい。共重合体における重合成分は、2種以上のα-オレフィンを含んでいてもよく、α-オレフィンとは異なる共重合性単量体を含んでいてもよい。なお、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などであってもよい。
前記α-オレフィンとは異なる共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体、不飽和カルボン酸またはその酸無水物、カルボン酸ビニルエステル、ジエンなどが挙げられる。
(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N置換(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステルなどが挙げられる。また、前記N置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどのモノまたはジアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
不飽和カルボン酸またはその酸無水物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸またはこれらの無水物(無水マレイン酸など)などが挙げられる。
カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステルなどが挙げられる。
ジエンとしては、例えば、1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエンなどの非共役アルカジエン、ブタジエン、イソプレンなどの共役アルカジエンなどが挙げられる。
これらの共重合性単量体は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。鎖状オレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂)が共重合性単量体を含む場合、構成単位全体に対する共重合性単量体の割合は、例えば70モル%程度以下であってもよく、通常50モル%以下、例えば30モル%以下(例えば0.01~30モル%)、好ましくは20モル%以下(例えば0.1~20モル%)、さらに好ましくは10モル%以下(例えば1~10モル%)程度である。
代表的な鎖状オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ1-ブテン系樹脂、ポリ4-メチル-1-ペンテン系樹脂などのポリα-C2-6オレフィン系樹脂などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
これらのポリオレフィン系樹脂のうち、通常、ポリエチレン系樹脂[例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、エチレン-(α-C4-10オレフィン)共重合体[エチレン-(1-ブテン)共重合体、エチレン-(4-メチル-1-ペンテン)共重合体など]、変性ポリエチレン(無水マレイン酸変性ポリエチレンなど)、塩素化ポリエチレン、アイオノマーなど]やポリプロピレン系樹脂がよく利用され、特にポリプロピレン系樹脂が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(またはプロピレンホモポリマー);プロピレンと他の共重合性単量体との共重合体または変性ポリプロピレン、具体的には、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-(1-ブテン)共重合体、プロピレン-エチレン-(1-ブテン)共重合体などのプロピレンと他のα-C2-10オレフィンとの共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられる。なお、プロピレンと他のα-C2-10オレフィンとの共重合体において、プロピレン(またはプロピレン単位)の割合は、モノマー全体に対して、例えば70モル%以上(例えば75~99.5モル%)、好ましくは80モル%以上(例えば85~99モル%)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば94~98モル%)程度であってもよい。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、結晶化度の観点から、高密度ポリプロピレン(高結晶ポリプロピレン(HCPP))、中密度ポリプロピレン、低密度ポリプロピレン(低結晶ポリプロピレン(LCPP))、超低密度ポリプロピレン(超低結晶ポリプロピレン(VLCPP))などが挙げられる。ポリプロピレン系樹脂は、立体規則性の観点から、アイソタクチックポリプロピレン(IPP)、シンジオタクチックポリプロピレン(SPP)などの立体規則性を有するポリプロピレン系樹脂であってもよく、アタクチックポリプロピレン(APP)のように立体規則性を有しないポリプロピレン系樹脂であってもよい。なお、立体規則性を有するポリプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて得られる分子量分布の狭いポリプロピレン系樹脂であってもよい。
これらのポリプロピレン系樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。ポリプロピレン系樹脂は、結晶性ポリプロピレン系樹脂であってもよいが、接着性の観点から、非晶性(または低結晶性)ポリプロピレン系樹脂(例えば、プロピレン-(1-ブテン)共重合体などのプロピレンと他のα-C2-10オレフィンとの共重合体、LCPP、VLCPP、APPなど)、または無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。このようなポリプロピレン系樹脂にポリシランを組み合わせると、より有効に接着性を向上できるようである。
そのため、熱可塑性樹脂(特にポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂)は、接着性をより向上させる観点から、下記(i)~(ii)の少なくとも一方を満たすのが好ましく、特に少なくとも(ii)を満たすのが好ましい。
(i)非晶性(または低結晶性)である
(ii)酸(不飽和カルボン酸など)またはその無水物、およびエポキシ化合物から選択される少なくとも一種で変性されている。
前記(i)について、非晶性(または低結晶性)の熱可塑性樹脂(特に非晶性ポリプロピレン系樹脂)における結晶化度は、例えば50%以下程度であってもよく、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下、特に、実質的に0%程度(完全非晶)であってもよい。
前記(ii)について、前記熱可塑性樹脂(特にポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂)を変性(酸変性)またはグラフトするための酸またはその酸無水物としては、例えば、前述のα-オレフィンとは異なる共重合性単量体において、不飽和カルボン酸またはその酸無水物として例示した酸またはその無水物と同様の化合物などが挙げられ、(メタ)アクリル酸、マレイン酸またはその無水物が好ましく、マレイン酸またはその無水物がさらに好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂(特にポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂)を変性(エポキシ変性またはグリシジル変性)またはグラフトするためのエポキシ化合物としては、エチレン性不飽和結合とエポキシ含有基(エポキシ基、グリシジル基、2-メチルグリシジル基、シクロヘキセニルオキシド基(エポキシ化シクロヘキセニル基)など)とを有する化合物などが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
酸またはその無水物、およびエポキシ化合物の割合(変性割合または変性量)は、変性された熱可塑性樹脂全体に対して、例えば30質量%以下(例えば0.5~25質量%)、好ましくは20質量%以下(例えば1~15質量%)程度であってもよい。
酸またはその無水物、およびエポキシ化合物のうち、少なくとも酸またはその無水物で変性するのが好ましく、特に酸無水物で変性するのが好ましい。
酸(不飽和カルボン酸など)もしくはその無水物で変性(酸変性)された熱可塑性樹脂(特に無水マレイン酸変性ポリプロピレンなどの酸変性ポリオレフィン系樹脂)の酸価は、例えば0.1~250mgKOH/g程度であってもよく、好ましくは1~200mgKOH/g、さらに好ましくは10~100mgKOH/g程度であってもよい。
また、熱可塑性樹脂(特にポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂)の重量平均分子量Mwは、例えば、1000~10000000程度の範囲から選択してもよい。また、数平均分子量Mnは、例えば、1000~1000000程度の範囲から選択してもよい。分子量分布Mw/Mnは、例えば、1~50程度の範囲から選択してもよく、例えば、2~25である。重量平均分子量Mwや数平均分子量Mnが大きすぎると、接着性が低下するおそれがあり、小さすぎると、機械的強度(または耐久性)が低下するおそれがある。なお、本明細書および特許請求の範囲において、重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布は、GPCにより標準ポリスチレン換算で測定できる。
熱可塑性樹脂(特にポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂)の融点は、例えば30~200℃(例えば35~180℃)程度であってもよく、好ましくは40~150℃(例えば45~120℃)、さらに好ましくは50~100℃(例えば55~90℃)、特に60~80℃であってもよく、融点を有していなくてもよい。
接着剤に含まれる接着性改善剤(ポリシラン)の割合は、接着性改善剤(ポリシラン)と熱可塑性樹脂などの樹脂成分(特にポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂)との総量に対して、例えば0.001~80質量%程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.01~50質量%、0.05~30質量%、0.1~15質量%、0.5~10質量%、1~9質量%、2~8質量%、3~7質量%、4~6質量%である。ポリシランの割合が少なすぎると、接着剤の接着力を向上できないおそれがある。また、ポリシランの割合が多すぎても、接着剤の接着力を向上できないおそれがある。本発明では、ポリシランの割合が比較的少量であっても、接着性を有効に改善できる。そのため、ポリシラン添加前の材料物性を大きく低下させることなく、有効に保持できる。
(他の成分)
接着剤は、樹脂成分の種類、接着剤の形態(例えば、溶剤形、ホットメルト形、エマルション形、ラテックス形など)、用途などに応じて、必要であれば、溶剤(溶媒または分散媒)や慣用の添加剤などの他の成分を含んでいてもよい。
溶剤(溶媒または分散媒)としては、例えば、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エーテル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、ケトン類、カルボン酸類、エステル類、カーボネート類、アミド類、尿素類、ニトリル類、ニトロ化炭化水素類、ホスホルアミド類、スルホン類、スルホキシド類、水などが挙げられる。
炭化水素類としては、ヘキサン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ミネラルスピリット、ソルベントナフサなどの石油系混合溶剤などが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどが挙げられる。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノールなどのC1-6アルコールなどが挙げられる。
エーテル類としては、鎖状エーテル類、環状エーテル類などが挙げられる。鎖状エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのジC1-6アルキルエーテルなどが挙げられる。環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、2-メチル-1,3-ジオキソランなどの5~7員環エーテルなどが挙げられる。
グリコールエーテル類としては、例えば、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのカルビトール類、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの(モノないしヘキサ)C2-4アルキレングリコールモノC1-6アルキルエーテルなどが挙げられる。(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどの(モノないしヘキサ)C2-4アルキレングリコールジC1-6アルキルエーテルなどが挙げられる。
グリコールエーテルアセテート類としては、例えば、メチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類、メチルカルビトールアセテートなどのカルビトールアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの(ポリ)C2-4アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルアセテートなどが挙げられる。
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などの鎖状ケトン類;シクロヘキサノンなどの環状ケトン類などが挙げられる。
カルボン酸類としては、例えば、酢酸、プロピオン酸などが挙げられる。
エステル類としては、鎖状エステル類、環状エステル類などが挙げられる。鎖状エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル、乳酸メチルなどの乳酸エステルなどなどが挙げられる。環状エステル類(またはラクトン類)としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン(またはγ-ヘキサノラクトン)などの置換基を有していてもよい5~7員環ラクトンなどが挙げられる。
カーボネート類としては、鎖状カーボネート類、環状カーボネート類などが挙げられる。鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(または炭酸ジメチル)、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(または炭酸ジエチル)などのジC1-6アルキル-カーボネートなどが挙げられる。環状カーボネート類としては、例えば、エチレンカーボネート(または炭酸エチレン)、プロピレンカーボネート(または炭酸プロピレン)などの5~7員環カーボネートなどが挙げられる。
アミド類としては、鎖状アミド類、環状アミド類(またはラクタム類)などが挙げられる。鎖状アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)などのN,N-ジC1-6アルキル-C1-6アルカン酸アミドなどが挙げられる。環状アミド類としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの5~7員環ラクタムなどが挙げられる。
尿素類(またはウレア類)としては、例えば、鎖状尿素類、環状尿素類などが挙げられる。鎖状尿素類としては、例えば、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、テトライソプロピル尿素などのテトラC1-6アルキル-尿素などが挙げられる。環状尿素類としては、例えば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMIまたはN,N’-ジメチルエチレン尿素)、N,N’-ジメチル-N,N’-トリメチレン尿素(またはN,N’-プロピレン尿素)などのN,N’-ジC1-6アルキル-N,N’-ジないしテトラメチレン尿素などが挙げられる。
ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのシアン化C1-6アルカン、ベンゾニトリルなどのシアン化アレーンなどが挙げられる。
ニトロ化炭化水素類としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパンなどのニトロC1-6アルカン、ニトロベンゼンなどのニトロアレーンなどが挙げられる。
ホスホルアミド類としては、例えば、ヘキサメチルホスホルアミドなどのヘキサC1-6アルキルホスホルアミドなどが挙げられる。
スルホン類としては、鎖状スルホン類、環状スルホン類などが挙げられる。鎖状スルホン類としては、例えば、エチルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホンなどのジC1-6アルキルスルホンなどが挙げられる。環状スルホン類としては、例えば、スルホラン(またはテトラメチレンスルホンもしくはテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド)、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホランなどのトリないしヘキサメチレンスルホン類などが挙げられる。
スルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのジC1-6アルキルスルホキシドなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて含まれていてもよい。これらの溶媒のうち、ポリシランおよび樹脂成分の溶解性に優れる点から、通常、炭化水素類(トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ミネラルスピリットなどの石油系混合溶剤など)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルムなど)、エーテル類(THFなどの環状エーテル類など)、グリコールエーテルアセテート類(PGMEAなどの(ポリ)C2-4アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルアセテートなど)、ケトン類(MEKなどの鎖状ケトン類、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など)、エステル類(酢酸エチルなどの酢酸エステルなど)、アミド類(NMPなどの環状アミド類など)などがよく利用され、なかでも、トルエンなどの芳香族炭化水素類などであることが多い。
溶剤の使用量は、特に制限されず、所望の粘度に調整できる程度の量であってもよく、溶剤を含んでいなくてもよい。溶剤を用いる場合、接着剤の固形分濃度(有効成分(溶剤を除いた成分)の濃度)が、例えば1~90質量%(例えば3~70質量%)、好ましくは5~50質量%(例えば8~30質量%)、さらに好ましくは10~15質量%程度となるように調製してもよい。
前記慣用の添加剤としては、例えば、充填剤(補強剤または強化剤)(粉粒状または繊維状の充填剤など)、安定剤(酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、耐候安定剤など)、粘着付与剤(タッキファイヤー)、本発明の接着性改善剤とは異なる他の接着性改善剤(密着性付与剤)、可塑剤、軟化剤、硬化剤、着色料(染料、顔料など)、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、導電剤、防錆剤、界面活性剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤(シランカップリング剤など)、分散剤、相溶化剤などを含んでいてもよい。
これらの添加剤は単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。添加剤の割合は、ポリシランと樹脂成分(熱可塑性樹脂など)との総量100質量部に対して、例えば30質量部以下(例えば0~20質量部)、好ましくは10質量部以下(例えば0~5質量部)程度であってもよい。
[基材(被着材または被着体)]
接着剤を介してまたは介さずに(好ましくは接着剤を介して)互いに接着(または接合)される2以上の基材の種類は特に制限されない。基材(特に基材表面または接着面)を形成する材料としては、例えば、樹脂材料(例えば、前記接着剤の樹脂成分の項において例示した硬化性樹脂および熱可塑性樹脂と同様の樹脂、ゴム、木材など)、無機材料(例えば、金属単体、合金などの金属;ガラス、シリコン、セメント、金属酸化物などのセラミックスなど)などが挙げられる。
前記金属単体としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛などが挙げられ、前記合金としては、例えば、前記金属単体などを含む合金、具体的には、アルミニウム合金、鋼(ステンレス鋼、高張力鋼、超高張力鋼など)などが挙げられる。前記金属酸化物としては、例えば、前記金属単体(または合金)として例示した金属の酸化物などが挙げられ、具体的には酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニアなど)、酸化鉄などが挙げられる。
これらの材料を単独でまたは2種以上組み合わせて基材(一方の基材)を形成することができる。本発明では、同種材料間のみならず、異種材料間の接着であっても有効に接着できるため、少なくとも2つの基材の接着面がそれぞれ異なる材料で形成されているのが好ましく、特に樹脂材料-無機材料間の接着(接着面が樹脂材料を主として含む基材と、接着面が無機材料を主として含む基材との接着)が好ましい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「主として含む」とは、構成成分中の主成分(または最大成分)であることを意味し、接着面(基材表面)の構成成分全体に対して、例えば50質量%以上(例えば60質量%以上)、好ましくは70質量%以上(例えば80質量%以上)、さらに好ましくは90質量%以上(例えば95質量%以上)の割合で含むことを意味する。
このような樹脂材料と無機材料との接着において、好ましい樹脂材料としては、ポリオレフィン系樹脂などの低表面エネルギーを有する樹脂(非極性樹脂)が挙げられ、さらに好ましくはポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂であり、特にポリプロピレン系樹脂である。また、好ましい無機材料としては、金属単体もしくはその合金またはそれらの酸化物が挙げられ、さらに好ましくはアルミニウムもしくはその合金またはそれらの酸化物であり、特にアルミニウムもしくはその合金の酸化物である。本発明では、同種材料間の接着でさえ困難な非極性樹脂(特にポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂など)で形成された非極性基材であっても、無機材料(特にアルミニウムもしくはその合金またはそれらの酸化物など)などで形成された極性基材に対して、高い接着力で簡便に接着できる。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「極性基材」とは、極性基(ヒドロキシル基、カルボキシル基などの酸素含有基など)を有することなどにより、ポリオレフィン系樹脂などの非極性樹脂に比べて高い表面エネルギーを有する基材を意味し、金属、金属酸化物などの無機材料で形成された基材のみならず、極性樹脂、例えば、PETなどのポリエステル樹脂、ビスフェノール型ポリカーボネートなどのポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂などのポリアミド系樹脂、ABS樹脂などのアクリロニトリルを共重合成分に含むスチレン系樹脂などで形成された基材も含む意味に用いる。
基材には、必要に応じて、前処理(または表面処理)を施してもよい。表面処理としては、特に制限されず、基材表面の組成および/または形状を変化させる処理や、基材表面に基材と異なる材料をコーティングする処理などであってもよく、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、クロム酸処理、オゾンおよび/または紫外線照射処理、表面熱処理(高周波焼入れ、炎焼入れ、火炎処理、熱風処理など)、陽極酸化処理(アルマイト処理など)、化成処理(または薬品処理)、イオン注入、ブラスト処理(サンドブラスト処理、ウォーターブラスト処理など)、エッチング処理(プラズマ処理、電解エッチング、化学エッチングなど)、溶剤処理、研磨処理、ショットピーニング、めっき処理[湿式めっき(電気めっき、無電解めっき(化学めっき)など)、乾式めっき(または蒸着)(PVD、CVDなど)、溶融めっき(溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっきなど)など]、塗装、ライニング処理(樹脂ライニング、ガラスライニングなど)、溶射処理、プライマー処理などが挙げられる。
これらの表面処理は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。本発明では、接着前に予め表面処理(特に、ブラスト処理、エッチング処理、コロナ放電処理、クロム酸処理、オゾンおよび/または紫外線照射処理、表面熱処理、化成処理(または薬品処理、プライマー処理などのように、表面の変性および/または粗面化などにより接着性を向上させる処理)を施さなくても高い接着力で接着できるため、簡便性(または生産性)にも優れている。
なお、基材の形態または形状は特に制限されず、例えば、繊維状(糸状、ロープ状、ワイヤー状など)などの一次元形状;板状、シート状、フィルム状、箔状、布またはクロス状(織布、編布、不織布など)、紙状(上質紙、グラシン紙、クラフト紙、和紙など)などの二次元形状;塊状、ブロック状、棒状(円柱状、多角柱状など)、中空状(管状など)などの3次元形状などが挙げられる。
これらの形状は、単独であってもよく、2種以上組み合わされた複雑形状であってもよい。通常、板状、フィルム状などの二次元形状であることが多い。樹脂材料がフィルム状である場合、無延伸フィルムであってもよく、一軸または二軸延伸フィルム(例えば、二軸延伸フィルム)であってもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、使用した原料の調製方法について下記に示す。
[原料]
(接着剤原料)
ポリシラン:大阪ガスケミカル(株)製「OGSOL SI-10-40」、ポリメチルフェニルシラン、数平均分子量Mn 620、重量平均分子量Mw 700
タフセレン:住友化学(株)製「タフセレン(登録商標)X1102」、非晶性ポリプロピレン系樹脂
アウローレン:日本製紙(株)製「アウローレン(登録商標)350S」、無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂、融点 65~75℃、極性基量 中
(基材)
アルミ板材:(株)光モール製「アルミ平板 AP2×15」、幅15mm、厚み2mm、アルミニウム合金A6063の平板のアルマイト仕上げ品、表面の粗面化処理は実施せず
ポリプロピレンフィルム:(株)ZAP(ザップ)製「OPPロール」、幅15mm、厚み 100μm。
[比較例1]
トルエン90gに、タフセレン10gを溶かして塗工液を調製し、アルミ板材の下部(長さ方向の端部)から25mmの領域に前記塗工液をディップし、乾燥することで厚み約3~5μmの塗工層(接着剤層)を調製した。この塗工層にポリプロピレンフィルムを幅方向を揃えてはり合わせ、塗工層部分を160℃で80秒間、0.1MPaの圧力でプレスすることで融着サンプルを作製した。得られたサンプルを万能試験機にて180°剥離試験(引張速度:50mm/分、引張試験時の塗工層の幅:15mm、N=5)を行ったところ、平均剥離強度は0.21N/15mmであった。なお、試験後のサンプルにおける剥離面を確認したところ、アルミ板材と接着剤層との界面で剥離していた。
[実施例1]
トルエン90g、タフセレン9.5gおよびポリシラン0.5gを混合して調製した塗工液を用いる以外は、比較例1と同様にして180°剥離試験を行った結果、平均剥離強度は0.62N/15mmであった。なお、試験後のサンプルにおける剥離面を確認したところ、アルミ板材と接着剤層との界面で剥離していた。
[比較例2]
トルエン90gおよびアウローレン10gを混合して調製した塗工液を用いる以外は、比較例1と同様にして180°剥離試験を行った結果、平均剥離強度は1.98N/15mmであった。なお、試験後のサンプルにおける剥離面を確認したところ、アルミ板材と接着剤層との界面、およびポリプロピレンフィルムと接着剤層との界面の双方で剥離していた。
[実施例2]
トルエン90g、アウローレン9.5gおよびポリシラン0.5gを混合して調製した塗工液を用いる以外は、比較例1と同様にして180°剥離試験を行った結果、平均剥離強度は2.96N/15mmであった。なお、試験後のサンプルにおける剥離面を確認したところ、アルミ板材と接着剤層との界面、およびポリプロピレンフィルムと接着剤層との界面の双方で剥離していた。
[比較例3]
塗工層を形成することなく、アルミ板材とポリプロピレンフィルムとを直接重ね合わせてプレスすること以外は、比較例1と同様にしてサンプルを作製したところ、接着している様子は見られなかった。
[参考例1]
トルエン90gおよびポリシラン10gを混合して調製した塗工液を用いる以外は、比較例1と同様にしてサンプルを作製したところ、接着している様子は確認できたが、手で引っ張ると簡単に剥がれ、ほとんど接着性を有していなかった。