以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
●第1の実施形態●
●システム構成
図1は、第1の実施形態に係る異常検知システムのシステム構成の一例を示す図である。図1に示す異常検知システム1Aは、情報処理装置10が加工機70等の対象装置から発生した物理量に係る検知信号に基づいて、対象装置の異常診断を行うシステムである。
図1に示されているように、第1の実施形態に係る異常検知システム1Aは、情報処理装置10、検知装置30および加工機70によって構成されている。
このうち、情報処理装置10は、加工機70と通信可能になるように接続され、加工機70の動作について異常の診断を行う診断装置である。情報処理装置10は、専用のソフトウエアプログラムがインストールされた汎用的なPC(Personal Computer)であってもよい。また、情報処理装置10は、単一のコンピュータによって構成されてもよいし、複数のコンピュータによって構成されてもよい。情報処理装置10は、出力装置の一例である。
情報処理装置10と加工機70とは、どのような接続形態で接続されてもよい。例えば、情報処理装置10と加工機70とは、専用の接続線、有線LAN(Local Area Network)等の有線ネットワーク、または無線ネットワーク等により接続されるものとすればよい。
また、加工機70は、工具を用いて、加工対象に対して切削、研削または研磨等の加工を行う工作機械である。加工機70は、情報処理装置10による診断の対象となる対象装置の一例である。なお、対象装置は、加工機70に限定されるものではなく、診断の対象となり得る実動作区間の推定を必要とする機械であればよく、例えば、組立機、測定機、検査機、または洗浄機等の機械であってもよい。また、対象装置には、クラッチもしくはギヤ等を含む動力源となるエンジン、またはモータを含む機械も含まれる。以下では、加工機70を対象装置の一例として説明する。
検知装置30は、加工機70に設置された工具と加工対象とが加工動作中に接触することにより発する振動もしくは音等、または、工具や加工機70自体が発する振動もしくは音等の物理量を検知し、検知した物理量の情報を検知信号(センサデータ)として、情報処理装置10へ出力するセンサである。検知装置30は、例えば、マイク、振動センサ、加速度センサ、またはAEセンサ等で構成され、振動または音等の物理量の変化を検出する。これらの検出手段は、ドリル、エンドミル、バイトチップまたは砥石等の機械的振動を発生する工具の近傍に設置される。設置方法は、ネジによる固定、マグネットによる固定、接着剤による接着、または、対象装置に穴開け加工等を行ってそこに埋め込むことによる設置等の方法により設置される。また、検知装置30は、加工機70に対して固定されていなくてもよく、加工機70により発せられる振動または音等の物理量の変化を検出できるように加工機70の周囲に設置されていればよい。なお、検知装置30の個数は、任意であってよい。また、同一の物理量を検知する複数の検知装置30を備えてもよいし、相互に異なる物理量を検知する複数の検知装置30を備えてもよい。
ここで、情報処理装置10と検知装置30は、情報処理システム5を構成する。情報処理装置10と検知装置30の間には、検知装置30からの出力信号をフィルタリングする数種類のフィルタ、または、フィルタを選択するフィルタ選択手段が必要に応じて設けてもよい。
また、検知装置30は、加工機70に予め備えられているものとしてもよく、または完成機械である加工機70に対して後から取り付けられるものとしてもよい。さらに、検知装置30は、加工機70の近傍に設置されることに限定されるものではなく、情報処理装置10側に設置されるものとしてもよい。また、検知装置30は、情報処理装置10の内部に設けられる構成であってもよい。
なお、図1は、1台の加工機70が情報処理装置10に接続されている例が示されているが、これに限定されるものではなく、複数台の加工機70が情報処理装置10に対して、それぞれ通信可能となるように接続されているものとしてもよい。
●概略
ここで、第1の実施形態に係る異常検知システムの処理の概略について説明する。図2および図3は、第1の実施形態に係る異常検知システムの処理の概略の一例を示す図である。なお、図2および図3は、第1の実施形態に係る異常検知システムの概略を簡略的に説明したものであり、異常検知システム1Aが実現する機能等の詳細は、後述する図面等を用いて説明する。
図2および図3に示す異常検知システム1Aは、検知装置30によって検知された加工機70の音である検知信号を出力させる情報処理装置10を用いて、加工機70の状態を容易にユーザに判断させることができるシステムである。
まず、図2を用いて、検知装置30によって取得された検知信号を、出力装置の一例である情報処理装置10に記憶させる処理について説明する。ステップS1aにおいて、対象装置の一例である加工機70は、所定の工具を用いた加工処理の動作を開始する。ステップS2aにおいて、加工機70は、ステップS1aによって開始した動作に係る処理情報を、情報処理装置10へ送信する。ここで、処理情報とは、加工機70の動作の種類ごとに定められるコンテキスト情報である。詳細は後述するが、処理情報には、工具の種別、加工機70による加工方法(加工種別)、または被加工材等の情報が含まれている。
次に、ステップS3aにおいて、加工機70の動作中において、検知装置30は、加工機70から発せられる振動または音等の物理量を検知する。ここでは、検知装置30は、加工機70から発せられる音を検知するものとして説明する。そして、ステップS4aにおいて、検知装置30は、検知した音に係る音響信号である検知信号(第1の検知信号の一例)を情報処理装置10へ送信する。
ステップS5aにおいて、情報処理装置10は、受信した検知信号に含まれる可聴帯域外の信号を周波数変換する。これにより、情報処理装置10は、可聴帯域外の信号が可聴帯域の信号に変換された検知信号(第2の検知信号の一例)を取得する。ここで、可聴帯域外の信号とは、人間の可聴帯域である20Hz~20kHzの周波数範囲外の信号である。
そして、ステップS6aにおいて、情報処理装置10は、ステップS2aによって受信された処理情報と、ステップS5aによって変換された検知信号とを関連づけて記憶する。これにより、情報処理装置10は、加工機70の動作に応じて変化し、かつ可聴帯域外の信号を含む検知信号を可聴帯域の信号に変換する。そして、情報処理装置10は、変換した信号に係る信号データを、対応する加工機70の動作ごとに記憶する。
次に、図3を用いて、図2に示した処理において記憶した検知信号を用いて、対象装置の異常を診断する処理について説明する。ステップS1bにおいて、情報処理装置10は、音響出力させる検知信号を特定するための出力項目データを含む信号出力要求を取得する。この信号出力要求は、情報処理装置10に表示された表示画面に対するユーザ入力によって受け付けることにより取得してもよいし、加工機70に表示された表示画面に対するユーザ入力によって受け付けられたデータを受信することにより取得してもよい。
ステップS2bにおいて、情報処理装置10は、図2の処理において記憶された検知信号のうち、ステップS1bにおいて受信された出力項目データに対応する特定の処理情報に関連づけられた特定の検知信号(特定の第2の検知信号の一例)を選択する。そして、ステップS3bにおいて、情報処理装置10は、ステップS2bにおいて選択された特定の検知信号を音響出力させる。
これにより、情報処理装置10は、ユーザが予め記憶した信号データのうち、ユーザが聴きたい対象装置の動作に係る音響信号を任意に選択することができるので、ユーザに加工機70の状態を容易に把握させることができる。また、情報処理装置10は、可聴帯域外の信号を含む検知信号を可聴帯域に変換した信号を音響出力させることで、対象装置の状態を精度良くユーザに判断させることができる。なお、図2および図3は、選択された特定の検知信号を音響出力させる例を説明したが、検知信号の出力方法は、これに限られず、特定の検知信号の信号波形や周波数スペクトログラム等を示す表示画面を表示させる等の方法によって、ユーザが確認可能な状態になるように検知信号を出力させてもよい。
●ハードウエア構成
続いて、図4および図5を用いて、第1の実施形態における情報処理装置10および加工機70のハードウエア構成を説明する。なお、図4および図5に示すハードウエア構成は、各実施形態において同様の構成を備えていてもよく、必要に応じて構成要素が追加または削除されてもよい。
〇情報処理装置のハードウエア構成〇
まず、図4を用いて、情報処理装置10のハードウエア構成を説明する。図4は、第1の実施形態に係る情報処理装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
情報処理装置10は、コンピュータによって構築されており、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HD(Hard Disk)104、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ105、ディスプレイI/F106および通信I/F107を備えている。
これらのうち、CPU101は、情報処理装置10全体の動作を制御する。ROM102は、IPL(Initial Program Loader)等のCPU101の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM103は、CPU101のワークエリアとして使用される。HD104は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ105は、CPU101の制御にしたがってHD104に対する各種データの読み出しまたは書き込みを制御する。ディスプレイI/F106は、ディスプレイ106aに画像を表示させる回路である。ディスプレイ106aは、カーソル、メニュー、ウインドウ、文字または画像等の各種情報を表示する液晶や有機EL(Electro Luminescence)等の表示部の一種である。通信I/F107は、加工機70等の他の装置との通信に用いられるインターフェースである。通信I/F107は、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)に対応したNIC(Network Interface Card)等である。
また、情報処理装置10は、センサI/F108、音入出力I/F109、入力I/F110、メディアI/F111、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ112を備えている。
センサI/F108は、検知装置30に含まれるセンサアンプ302を介して検知信号を受信するインターフェースである。音入出力I/F109は、CPU101の制御に従ってスピーカ109aおよびマイク109bとの間で音信号の入出力を処理する回路である。入力I/F110は、情報処理装置10に所定の入力手段を接続させるためのインターフェースである。キーボード110aは、文字、数値、各種指示等の入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。マウス110bは、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動等を行う入力手段の一種である。メディアI/F111は、フラッシュメモリ等の記録メディア111aに対するデータの読み出しまたは書き込み(記憶)を制御する。DVD-RWドライブ112は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW112aに対する各種データの読み出しまたは書き込みを制御する。なお、DVD-RWに限らず、DVD-R等であってもよい。また、DVD-RWドライブ112は、ブルーレイディスク(登録商標)に対する各種データの読み出しまたは書き込みを制御するブルーレイドライブであってもよい。
また、情報処理装置10は、バスライン113を備えている。バスライン113は、CPU101等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
なお、上記各プログラムが記憶されたHDやCD-ROM等の記録媒体は、いずれもプログラム製品(Program Product)として、国内または国外へ提供されることができる。情報処理装置10は、例えば、本発明に係るプログラムが実行されることで本発明に係る出力制御方法を実現する。
〇加工機のハードウエア構成〇
図5を用いて、加工機70のハードウエア構成を説明する。図5は、第1の実施形態に係る加工機のハードウエア構成の一例を示す図である。
図5に示すように、加工機70は、CPU701、ROM702、RAM703、ディスプレイI/F704、通信I/F705、駆動回路706、音出力I/F707、入力I/F708、およびセンサI/F709を備えている。
これらのうち、CPU701は、加工機70全体の動作を制御する。ROM702は、IPL等のCPU701の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM703は、CPU701のワークエリアとして使用される。ディスプレイI/F704は、ディスプレイ704aに画像を表示させる回路である。ディスプレイ704aは、カーソル、メニュー、ウインドウ、文字または画像等の各種情報を表示する液晶や有機EL等の表示部の一種である。
通信I/F705は、情報処理装置10等の他の装置との通信に用いられるインターフェースである。通信I/F705は、例えば、TCP/IPに対応したNIC等である。
駆動回路706は、モータ706aの駆動を制御する回路である。モータ706aは、加工に用いる工具50を駆動させる。工具50は、例えば、ドリル、エンドミル、バイトチップ、砥石等である。また、工具50には、加工対象が載置され加工に合わせて移動されるテーブル等も含まれる。
音出力I/F707は、CPU701の制御に従ってスピーカ707aおよびマイク707bとの間で音信号の出力を処理する回路である。入力I/F708は、加工機70に所定の入力手段を接続させるためのインターフェースである。キーボード708aは、文字、数値、各種指示等の入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。マウス708bは、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動等を行う入力手段の一種である。
また、加工機70は、バスライン710を備えている。バスライン710は、CPU701等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
また、加工機70から出力される振動または音等の物理量を検知する検知装置30は、センサ301およびセンサアンプ302を備えている。センサ301は、上述のように、加工機70に設置された工具50と加工対象とが加工動作中に接触することにより発する振動もしくは音等、または、工具50もしくは加工機70自体が発する振動もしくは音等の物理量を検知する。また、センサ301は、検知した物理量の情報に基づく検知信号(センサデータ)を取得する。センサ301は、例えば、マイク、振動センサ、加速度センサ、またはAEセンサ等である。センサアンプ302は、センサ301の検知感度等を調整し、かつセンサ301によって検出された検知信号を出力する。
●機能構成
続いて、第1の実施形態に係る装置および端末の機能構成について説明する。図6は、第1の実施形態に係る異常検知システムの機能構成の一例を示す図である。
〇情報処理装置の機能構成〇
まず、情報処理装置10の機能構成について説明する。情報処理装置10によって実現される機能は、送受信部11、検知装置通信部12、受付部13、表示制御部14、音制御部15、生成部16、信号処理部17、選択部18、判断部21、記憶・読出部19および記憶部1000を含む。なお、情報処理装置10の各機能は、単一のコンピュータによって実現されてもよく、複数のコンピュータまたはモジュールの組み合わせによって実現されてもよい。
送受信部11は、加工機70等の他の装置との間で各種データ(または情報)の送受信を行う機能である。送受信部11は、例えば、加工機70の現在の動作に係る処理情報を受信する。送受信部11は、主に、図4に示した通信I/F107、およびCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。送受信部11は、第1の取得手段の一例である。
検知装置通信部12は、検知装置30との間でデータ通信を行う機能である。検知装置通信部12は、例えば、検知装置30によって検知された検知信号(センサデータ)を受信する。検知装置通信部12は、主に、図4に示したCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。検知装置通信部12は、第2の取得手段の一例である。また、検知装置通信部12によって受信される検知信号は、第1の検知信号の一例である。
受付部13は、図4に示したキーボード110a等の入力手段に対するユーザ入力を受け付ける機能である。受付部13は、例えば、出力信号選択画面200(図15参照)に対する入力に応じて、出力項目の選択を受け付ける。受付部13は、主に、図4に示したCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。
表示制御部14は、図4に示したディスプレイ106aに各種画面を表示させる機能である。表示制御部14は、例えば、WEBブラウザ等を用いて、HTML(HyperText Markup Language)等により生成された画像データに係る出力信号選択画面200(図16参照)またはデータ抽出画面250(図20参照)を、ディスプレイ106aに表示させる。表示制御部14は、主に、図4に示したディスプレイI/F106、およびCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。
音制御部15は、図4に示したスピーカ109aから音信号を出力する機能である。音制御部15は、例えば、スピーカ109aから出力させる検知信号を設定し、設定した検知信号をスピーカ109aから音響出力させる。音制御部15は、主に、図4に示した音入出力I/F109、およびCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。
生成部16は、ディスプレイ106aに表示させる各種画像データを生成する機能である。生成部16は、例えば、ディスプレイ106aに表示させる出力信号選択画面200(図16参照)またはデータ抽出画面250(図20参照)に係る画像データを生成する。また、生成部16は、送受信部11によって処理情報が受信された場合に、受信された処理情報を含む条件情報を識別するための条件IDを生成する。生成部16は、主に、図4に示したCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。
信号処理部17は、検知装置通信部12によって受信された検知信号の信号処理を行う機能である。信号処理部17の詳細な説明は、後述する。信号処理部17は、主に、図4に示したCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。
選択部18は、ユーザからの信号出力要求に基づいて、音響出力させる検知信号を選択する機能である。選択部18は、例えば、受付部13によって受け付けられた信号出力要求に含まれる出力項目データに対応する条件情報に関連づけて記憶された検知信号を選択する。選択部18は、主に、図4に示したCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。選択部18は、選択手段の一例である。
判断部21は、主に、図4に示したCPU101の処理によって実現され、各種判断を行う機能である。判断部21は、例えば、選択部18によって選択された複数の検知信号に係る信号データの差分を算出する。判断部21は、算出手段の一例である。
記憶・読出部19は、記憶部1000に各種データを記憶させ、または記憶部1000から各種データを読み出す機能である。記憶・読出部19は、主に、図4に示したCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。記憶部1000は、主に、図4に示したROM102、HD104および記録メディア111aによって実現される。また、記憶部1000には、条件情報管理DB1001および検知信号管理DB1003が構築されている。このうち、条件情報管理DB1001は、後述の条件情報管理テーブルによって構成されている。検知信号管理DB1003は、後述の検知信号管理テーブルによって構成されている。記憶部1000は、記憶手段の一例である。
ここで、図7を用いて、信号処理部17の機能構成について詳細に説明する。図7は、第1の実施形態に係る信号処理部の詳細な機能構成の一例を示す図である。図7に示す信号処理部17は、増幅処理部171、A/D変換部172、周波数変換部173、D/A変換部174およびデータ抽出部175を含む。
増幅処理部171は、検知装置通信部12によって受信された検知信号の増幅処理を行う機能である。増幅処理部171は、例えば、検知装置通信部12によって受信されたアナログ信号を任意の大きさに増幅する。また、増幅処理部171は、例えば、A/D変換部172によって変換されたデジタル信号を任意の大きさに増幅する。
A/D変換部172は、増幅処理部171によって増幅処理されたアナログ信号を、デジタル信号に変換する処理を行う機能である。
周波数変換部173は、検知装置通信部12によって受信された検知信号の周波数変換処理を行う機能である。周波数変換部173は、例えば、検知信号に含まれる可聴帯域外の信号成分を、可聴帯域の信号成分に変換する処理を行う。可聴帯域外の信号とは、人間の可聴帯域である20Hz~20kHzの周波数範囲外の信号である。周波数変換部173は、例えば、検知信号に含まれる可聴帯域外の信号である20kHz以上の信号を、20kHz以下または人間がより聴きやすい周波数範囲である6000Hz以下の信号に周波数シフトさせる。周波数変換部173による処理の詳細は、後述する。周波数変換部173は、変換手段の一例である。また、周波数変換部173によって変換された可聴帯域の信号は、第2の検知信号の一例である。
D/A変換部174は、増幅処理部171によって増幅処理されたデジタル信号を、アナログ信号に変換する処理を行う機能である。
データ抽出部175は、検知装置通信部12によって受信された検知信号の特徴量を用いて、検知信号の特定の区間に係る信号データを抽出する機能である。特徴量は、検知信号の特徴を示す情報であればどのような情報であってもよい。例えば、検知信号が音響データである場合、データ抽出部175は、例えば、エネルギー、周波数スペクトル、時間またはMFCC(メル周波数ケプストラム係数)等を特徴量として用いて、特定の区間に係る信号データを抽出する。データ抽出部175は、抽出手段の一例である。
〇条件情報管理テーブル
図8は、第1の実施形態に係る条件情報管理テーブルの一例を示す概念図である。記憶部1000には、図8に示すような条件情報管理テーブルによって構成されている条件情報管理DB1001が構築されている。図8に示す条件情報管理テーブルは、加工機70の動作に係る処理情報を加工機70が行った動作ごとに管理するためのものである。条件情報管理テーブルには、条件IDごとに処理情報が関連づけられた条件情報が記憶して管理されている。条件IDは、処理情報を含む条件情報を識別するための識別情報である。処理情報は、加工機70の動作の種類ごとに定められるコンテキスト情報である。図8に示すように、処理情報には、工具50の種別(工具50の識別情報)、加工機70による加工方法(加工種別)、その動作を開始してからの累積ジョブ回数、加工機70を用いて加工される被加工材の情報が含まれる。工具50の種別としては、例えば、ドリル、エンドミル、フェイスミル、ボールエンドミル、ザグリカッタ、ボーリング、バイトチップ、砥石等である。また、加工方法としては、切削、研磨である。より詳細には、加工方法には、穴あけ、貫通穴あけ、キツツキ加工、溝加工、側面加工、コンター加工、ランピング加工、バリ取り等が含まれる。さらに、被加工材としては、合金、カーボン樹脂、樹脂材等である。より詳細には、被加工材は、図8に示すように、S50C(日本工業規格(JIS))、FC250(日本工業規格(JIS))、S20CK(日本工業規格(JIS))等で表される。
なお、処理情報に含まれる項目は、これに限られず、1回のジョブに含まれる加工回数、加工機70の識別情報、工具50の径および工具50の材質等のコンフィギュレーション情報、並びに工具50の動作状態を示す情報が含まれてもよい。このうち、工具50の動作状態を示す情報には、例えば、工具50の被加工材(加工対象)に対する送り動作から実際の加工処理が終了するまでの区間を示すためのON/OFF信号(「ラダー信号」)等が含まれる。また、処理情報に含まれる項目には、工具50(駆動部74)の使用開始からの累積使用時間、工具50(駆動部74)に係る負荷、工具50(駆動部74)の回転数、工具50(駆動部74)の加工速度等の加工条件等を示す情報が含まれていてもよい。
〇検知信号管理テーブル
図9は、第1の実施形態に係る検知信号管理テーブルの一例を示す概念図である。記憶部1000には、図9に示すような検知信号管理テーブルによって構成されている検知信号管理DB1003が構築されている。図9に示す検知信号管理テーブルは、検知装置30から送信された検知信号を管理するためのものである。検知信号管理テーブルには、条件IDごとに、検知信号および周波数変換部173によって周波数変換された信号の信号データが関連づけられて記憶して管理されている。条件IDは、図8に示した条件情報管理テーブルに含まれる条件情報を識別するための識別情報である。これにより、検知装置30から送信された検知信号は、条件IDによって、当該検知信号が発生した動作に係る処理情報と関連づけて記憶される。なお、検知信号と周波数変換された信号は、いずれかが検知信号管理DB1003に記憶されている構成であればよい。
〇検知装置の機能構成〇
次に、検知装置30の機能構成について説明する。検知装置30によって実現される機能は、装置接続部31および検知信号取得部32を含む。
装置接続部31は、検知信号取得部32によって取得された検知信号を、情報処理装置10へ送信する機能である。装置接続部31は、主に、図5に示したセンサアンプ302によって実現される。
検知信号取得部32は、加工機70の動作によって変化する振動または音等の物理量を検知し、物理量の情報を検知信号として取得する機能である。検知信号取得部32は、主に、図5に示したセンサ301によって実現される。検知信号取得部32は、加工機70に設置された工具50と加工対象とが加工動作中に接触することにより発する振動もしくは音等、または、工具50や加工機70自体が発する振動もしくは音等の物理量を検知し、検知した物理量の情報を検知情報(センサデータ)として取得する。例えば、加工に用いる工具50である刃の折れ、または刃のチッピング等が発生すると、加工時の音が変化する。そのため、検知信号取得部32は、マイク等のセンサ301を用いて音響データを検知し、検知した音響データに係る検知信号を、装置接続部31を介して、情報処理装置10へ送信する。検知信号取得部32は、主に、図5に示したセンサ301によって実現される。
〇加工機の機能構成〇
次に、加工機70によって実現される機能は、送受信部71、数値制御部72、駆動制御部73、駆動部74、設定部75、受付部76、表示制御部77および音制御部78を含む。
送受信部71は、情報処理装置10等の他の装置との間で各種データ(または情報)の送受信を行う機能である。送受信部71は、例えば、加工機70の現在の動作に係る処理情報を、情報処理装置10へ送信する。送受信部71は、主に、図5に示した通信I/F705、およびCPU701で実行されるプログラム等によって実現される。
数値制御部72は、駆動制御部73による加工を数値制御(NC:Numerical Control)により実行する機能である。数値制御部72は、例えば、駆動部74の動作を制御するための数値制御データを生成して出力する。また、数値制御部72は、例えば、加工機70の動作に係る処理情報を送受信部71へ出力する。さらに、数値制御部72は、例えば、現在の加工機70の動作に対応するコンテキスト情報を、逐次、送受信部71を介して情報処理装置10へ送信する。
数値制御部72は、例えば、加工対象を加工する際、加工の工程に応じて、駆動する駆動部74の種類、または駆動部74の駆動状態(回転数、回転速度等)を変更する。そして、数値制御部72は、動作の種類を変更するごとに、変更した動作の種類に対応するコンテキスト情報を、送受信部71を介して情報処理装置10へ逐次送信する。数値制御部72は、主に、図5に示したCPU701で実行されるプログラム等によって実現される。
駆動制御部73は、数値制御部72により求められた数値制御データに基づいて、駆動部74を駆動制御する機能である。駆動制御部73は、例えば、図5に示す駆動回路706によって実現される。駆動制御部73は、主に、図5に示した駆動回路706、およびCPU701で実行されるプログラム等によって実現される。
駆動部74は、駆動制御部73による駆動制御の対象となる機能である。駆動部74は、例えば、駆動制御部73による制御によって工具を駆動する。駆動部74は、例えば、駆動制御部73によって駆動制御されるアクチュエータであり、主に、図4に示すモータ706a等によって実現される。なお、駆動部74は、加工に用いられ、数値制御の対象となるものであればどのようなアクチュエータであってもよい。また、駆動部74は、二つ以上備えられていてもよい。
設定部75は、加工機70の現在の動作に対応する条件情報を設定する機能である。設定部75は、主に、図5に示したCPU701で実行されるプログラム等によって実現される。
受付部76は、図5に示したキーボード708a等の入力手段に対するユーザ入力を受け付ける機能である。受付部76は、例えば、ディスプレイ704aに表示された出力信号選択画面200(図16参照)に対する入力に応じて、出力項目の選択を受け付ける。受付部76は、主に、図5に示した入力I/F708、およびCPU701で実行されるプログラム等によって実現される。
表示制御部77は、図5に示したディスプレイ704aに各種画面情報を表示させる機能である。表示制御部77は、例えば、ディスプレイ704aに出力信号選択画面200(図16参照)を表示させる。表示制御部77は、主に、図5に示したディスプレイI/F704、およびCPU701で実行されるプログラム等によって実現される。
音制御部78は、図5に示されているCPU701からの命令によって実現され、スピーカ707aから音信号を出力する機能である。音制御部78は、例えば、スピーカ707aから出力させる検知信号を設定し、設定した検知信号をスピーカ707aから音響出力させる。音制御部78は、主に、図5に示した音出力I/F707、およびCPU701で実行されるプログラム等によって実現される。
●第1の実施形態の処理または動作
〇検知信号の記憶処理〇
続いて、図10乃至図21を用いて、第1の実施形態に係る異常検知システムにおける処理または動作について説明する。まず、図10乃至図14を用いて、加工機70の動作に基づく検知信号を、情報処理装置10に記憶させる処理について説明する。図10は、第1の実施形態に係る異常検知システムにおける検知信号の記憶処理の一例を示すシーケンス図である。
ステップS11において、加工機70の送受信部71は、情報処理システム5を構成する情報処理装置10へ、現在の加工機70の動作に係る処理情報を送信する。具体的には、加工機70の設定部75は、被加工材(加工対象)への加工開始時に、具体的な加工内容を示す処理情報を設定する。処理情報は、上述のように、加工機70の動作の種類ごとに定められるコンテキスト情報である。そして、送受信部71は、設定部75によって設定された処理情報を、情報処理装置10へ送信する。これにより、情報処理装置10の送受信部11は、加工機70から送信された処理情報を受信する(第1の取得ステップの一例)。
ステップS12において、情報処理装置10の生成部16は、送受信部11によって受信された処理情報を含む条件情報を識別するための条件IDを生成する。そして、ステップS13において、記憶・読出部19は、生成部16によって生成された条件IDと、送受信部11によって受信された処理情報とを関連づけた条件情報を、条件情報管理DB1001に記憶して管理する。条件情報管理DB1001は、図8に示したように、条件IDごとに、加工機70により実行される具体的な加工処理の内容を示す処理情報を関連づけて条件情報管理テーブルに記憶・管理している。
ステップS14において、情報処理システム5を構成する検知装置30の検知信号取得部32は、加工機70により発生した振動または音等の物理量を検知する。ここでは、検知信号取得部32は、加工機70によって発生した音を検知し、検知した音に係る検知信号(音響信号)を取得する。
ステップS15において、検知装置30の装置接続部31は、ステップS14によって取得された検知信号を、情報処理装置10へ送信する。これにより、情報処理装置10の検知装置通信部12は、検知装置30から送信された検知信号を受信する(第2の取得ステップの一例)。
ステップS16において、情報処理装置10の信号処理部17は、検知装置通信部12によって受信された検知信号の信号処理を行う。ここで、図11乃至図14を用いて、信号処理部17による検知信号に対する処理について説明する。図11は、第1の実施形態に係る情報処理装置における検知信号に対する信号処理の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS151において、情報処理装置10は、検知装置通信部12によって検知信号が受信(取得)された場合、処理をステップS152へ移行させる。一方で、情報処理装置10は、検知装置通信部12によって検知信号が受信(取得)されるまでステップS151の処理を繰り返す。
ステップS152において、信号処理部17の増幅処理部171は、検知装置通信部12によって受信(取得)された検知信号の増幅処理を行い、検知信号を任意の大きさに増幅させる。ステップS153において、信号処理部17のA/D変換部172は、増幅処理部171によって増幅されたアナログ信号を、デジタル信号に変換する。そして、ステップS154において、情報処理装置10は、A/D変換部172によって変換されたデジタル信号に、可聴帯域外の周波数の信号成分が存在する場合、処理をステップS155へ移行させる。可聴帯域外の周波数の信号成分とは、人間の可聴帯域である20Hz~20kHzの周波数範囲外の周波数成分を有する信号である。一方で、情報処理装置10は、A/D変換部172によって変換されたデジタル信号に、可聴帯域外の周波数の信号成分が存在しない場合、処理を終了する。
ステップS155において、信号処理部17の周波数変換部173は、A/D変換部172によって変換されたデジタル信号の周波数変換処理を行う(変換ステップの一例)。具体的には、周波数変換部173は、A/D変換部172によって変換されたデジタル信号に含まれる可聴帯域外の周波数成分を有する信号を、可聴帯域の周波数成分に周波数シフトさせる。
ここで、加工機70の動作中に検知される検知信号の周波数成分の一例について説明する。図12(a)は、加工機70の加工動作において、正常に加工が行われている際に検知される検知信号のスペクトログラムを示し、図12(b)は、加工機70の加工動作において、異常が発生している際に検知される検知信号のスペクトログラムを示す。図12(b)に示すように、加工機70における加工動作中に異常が発生した場合、30000Hz付近に周波数成分が現れる。図13に示すように、人間の聴くことができる音(可聴帯域)の周波数範囲は、概ね20Hz~20000Hzの範囲であり、20000Hz以上の周波数の信号成分の音は、可聴帯域外となり聴くことができない。そのため、図12(b)に示したように、30000Hz付近に異常の特徴が表れる信号の場合、この検知信号を音響出力したとしても異常の特徴を聴き分けることができないため、ユーザは、加工機70の異常発生を判断することができない。
そこで、図14に示すように、周波数変換部173は、可聴帯域外の周波数の信号成分を、可聴帯域の周波数の信号成分に変換することにより、検知信号の可聴化を行う。周波数変換部173は、人間の聴こえない周波数範囲の周波数成分のシフトを行い、人間が聴こえる周波数帯域に変換する。図14の例では、周波数変換部173は、可聴帯域外の周波数範囲である20000Hz~30000Hzの周波数成分を、0~10000Hzの可聴帯域の周波数範囲に変換し、高周波数帯域の特徴を人間が聴取可能な周波数範囲に変換する。この場合、周波数変換部173は、変換前の検知信号に含まれる可聴帯域の周波数の信号成分を削除する。そして、周波数変換部173は、図14に示すようなスペクトログラムの情報を、波形情報(スペクトラムデータ)に戻して音響信号として出力できるようにする。
なお、正常に加工が行われている際に検知される検知信号および異常が発生している際に検知される検知信号に含まれる周波数成分は、これに限られない。例えば、周波数変換部173は、正常に加工が行われている際に検知される検知信号にも可聴帯域外の周波数範囲の周波数成分が含まれている場合、正常時の検知信号に対しても上記のような周波数変換処理を行ってもよい。この場合、情報処理装置10は、出力させた音響信号によって、正常時と異常発生時の可聴帯域外の検知信号の変化についてもユーザに把握させることができる。
図10に戻り、検知信号の記憶処理の説明を続ける。ステップS17において、情報処理装置10の記憶・読出部19は、信号処理部17によって処理された信号データを、検知信号管理DB1003に記憶する(記憶制御ステップの一例)。情報処理装置10は、図9に示したように、ステップS12によって生成された条件IDごとに、ステップS15によって受信された検知信号に係る信号データ、および信号処理部17によって処理された信号データを関連づけて検知信号管理テーブルに記憶して管理する。これにより、情報処理装置10は、加工機70の動作に応じて変化し、かつ可聴帯域外の信号を含む検知信号を可聴帯域の信号に変換する。そして、情報処理装置10は、変換した信号に係る信号データを、対応する加工機70の動作ごとに記憶する。
〇音響信号の出力処理〇
続いて、図15乃至図19を用いて、上記処理において記憶された信号データに係る音響信号の出力処理について説明する。図15は、第1の実施形態に係る情報処理装置における音響信号の出力処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS31において、情報処理装置10の表示制御部14は、ディスプレイ106aに出力信号選択画面200を表示させる。具体的には、表示制御部14は、ディスプレイ106aに表示された所定の入力画面に対する入力を受付部13が受け付けることによって、出力信号選択画面200を表示させる。
図16は、情報処理装置に表示される出力信号選択画面の一例を示す図ある。図16に示す出力信号選択画面200は、音響出力させる検知信号に係る信号データをユーザに選択させるための表示画面である。出力信号選択画面200には、音響出力させる検知信号を特定するための出力項目選択領域210、出力項目選択領域210で選択された項目に対応する検知信号の特定の区間を抽出するための抽出範囲選択領域220、検知信号の周波数変換を行う場合に選択される周波数変換選択ボタン230、出力項目選択領域210で選択された項目に対応する検知信号の分析を実行する場合に押下される「分析」ボタン240、出力項目選択領域210で選択された項目に対応する検知信号を音響出力する場合に押下される「OK」ボタン201、および出力信号の選択処理を中止する場合に押下される「CANCEL」ボタン203が含まれている。
ここで、出力項目選択領域210には、処理情報に含まれる各種項目のデータが選択可能になっている。出力項目選択領域210には、例えば、工具50(駆動部74)を選択可能な工具選択領域211、被加工材(加工対象)を選択可能な被加工材選択領域212、加工方法を選択可能な加工方法選択領域213、および加工(ジョブ)回数を選択可能な加工回数選択領域214が含まれている。なお、出力項目選択領域210に含まれる各選択領域に対応する項目は、これに限られず、処理情報に示される項目に応じて適宜追加変更されてもよい。
また、抽出範囲選択領域220は、出力項目選択領域210で選択された項目により特定される検知信号の特定の区間を抽出するための入力を受け付ける。抽出範囲選択領域220には、特徴量の一例である周波数スペクトルの特定の区間の入力領域221、特徴量の一例である処理時間の特定に区間の入力領域222、検知信号の特徴量の詳細を表示させるための「VIEW」ボタン225が含まれている。検知信号の特定区間に係る信号データの抽出処理については、後述する。図16に示した出力信号選択画面200は、第1の表示画面の一例である。
ステップS32において、ユーザが出力信号選択画面200に含まれる出力項目選択領域210の各入力領域への入力を行い、「OK」ボタン201を選択することによって、受付部13は、各入力領域に入力された出力項目データを含む信号出力要求を受け付ける。図16の例では、受付部13は、出力項目データとして、工具;「ドリル(φ1mm)」、被加工材;「FC250(日本工業規格(JIS))」、加工方法;「切削」、加工(ジョブ)回数;「1回目」のデータを受け付ける。
ステップS33において、情報処理装置10は、受付部13によって受け付けられた出力項目データに基づいて、音響出力させる信号データの選択処理を実行する(選択ステップの一例)。ここで、図17を用いて、出力対象の検知信号の選択処理について説明する。図17は、第1の実施形態に係る情報処理装置における出力対象の検知信号の選択処理の一例を示すフローチャートである。なお、図17において、情報処理装置10は、図10および図11に示したように、周波数変換された信号に係る信号データを予め記憶しているものとして説明する。
ステップS331aにおいて、選択部18は、条件情報管理DB1001(図8参照)に記憶された処理情報のうち、ステップS32によって受け付けられた出力項目データに対応する処理情報を選択する。具体的には、記憶・読出部19は、条件情報管理DB1001から条件情報管理テーブルを読み出す。そして、選択部18は、読み出された条件情報管理テーブルに含まれる条件情報のうち、受付部13によって受け付けられた出力項目データに対応する処理情報を含む条件情報を選択する。この場合、選択部18は、例えば、図16に示した出力項目選択領域210に入力された出力項目データに対応する処理情報である条件ID;「A000001」の条件情報を選択する。
ステップS332aにおいて、選択部18は、検知信号管理DB1003(図9参照)に記憶されたデータのうち、ステップS331aによって選択された処理情報に関連づけられた条件IDと同一の条件IDに関連づけられた信号データを選択する。具体的には、記憶・読出部19は、検知信号管理DB1003から検知信号管理テーブルを読み出す。そして、選択部18は、読み出された検知信号管理テーブルに含まれるデータのうち、選択された条件情報に含まれる条件IDに関連づけられた信号データを選択する。この場合、選択部18は、例えば、条件ID;「A000001」に関連づけられた周波数変換後の検知信号に係る信号データ;「信号データ1b」を選択する。
ステップS333aにおいて、信号処理部17の増幅処理部171は、選択部18によって選択された信号データに係る検知信号の増幅処理を行い、検知信号を任意の大きさに増幅させる。ステップS334aにおいて、信号処理部17のD/A変換部174は、増幅処理部171によって増幅されたデジタル信号を、アナログ信号に変換する。
図15に戻り、音響信号の出力処理の説明を続ける。ステップS34において、情報処理装置10の音制御部15は、スピーカ109a等を用いて、選択部18によって選択された信号データに係る音響信号を音響出力させる。これにより、情報処理装置10は、ユーザが予め記憶した信号データのうち、ユーザが聴きたい対象装置の動作に係る音響信号を任意に選択することができるので、対象装置の状態の判断の精度を向上させることができる。
ここで、図18を用いて、図17に示した出力対象の検知信号の選択処理の別の例を説明する。図18は、第1の実施形態に係る情報処理装置における出力対象の検知信号の選択処理の変形例を示すフローチャートである。図18に示す検知信号の選択処理は、図10および図11に示した検知信号の記憶処理において、可聴帯域外の信号に対する周波数変換処理を行っていない場合の処理である。なお、図18に示すステップS331bおよびステップS332bの処理は、図17に示したステップS331aおよびステップS332aの処理と同様であるため、説明を省略する。図18の場合、ステップS332bの処理において、選択部18は、検知信号管理DB1003(図9参照)に記憶されたデータから周波数変換処理が行われていない検知信号に係る信号データ(例えば、「信号データ1a」を選択する。
ステップS333bにおいて、情報処理装置10は、選択部18によって選択された信号データに係る検知信号に、可聴帯域外の周波数信号が存在する場合、処理をステップS334bへ移行させる。一方で、情報処理装置10は、選択部18によって選択された信号データに係る検知信号に、可聴帯域外の周波数信号が存在しない場合、処理をステップS336bへ移行させる。
ステップS334bにおいて、信号処理部17の周波数変換部173は、選択部18によって選択された信号データに係る検知信号の周波数変換処理を行う。周波数変換処理は、図11乃至図14を用いて説明した処理と同様である。ステップS335bにおいて、記憶・読出部19は、周波数変換部173によって処理された信号に係る信号データ(例えば、「信号データ1b」)を、検知信号管理DB1003に記憶する。
ステップS336bにおいて、信号処理部17の増幅処理部171は、周波数変換部173によって処理された信号データに係る検知信号の増幅処理を行い、検知信号を任意の大きさに増幅させる。ステップS337bにおいて、信号処理部17のD/A変換部174は、増幅処理部171によって増幅されたデジタル信号を、アナログ信号に変換する。なお、ステップS336bの処理とステップS337bの処理の順序は前後してもよく、または並列して行われてもよい。この場合、増幅処理部171は、D/A変換部174によって変換されたアナログ信号の増幅処理を行う。そして、情報処理装置10の音制御部15は、スピーカ109a等を用いて、周波数変換部173によって処理された信号データに係る音響信号を音響出力させることができる。このように、可聴帯域外の周波数成分の信号の周波数変換処理は、図11に示したように情報処理装置10に検知信号を記憶する際に行っても、図18に示したように出力対象の検知信号を選択する際に行ってもよい。
ここで、図19を用いて、加工機70の正常動作時と異常発生時における検知信号を可聴化させた信号のスペクトログラムを示す。図19(a)は、正常動作時における処理信号のスペクトログラムの一例を示し、図19(b)は、異常発生時における処理信号のスペクトログラムの一例を示す。図19に示すように、情報処理装置10は、周波数変換部173によって人間が聴き取ることができない高域の可聴帯域外の周波数範囲の信号を可聴帯域に周波数シフトさせているため、異常発生時の音響信号と正常動作時の音響信号をユーザが聴き分ける際に、正常動作時からの差異によって加工機70の異常発生をユーザに判断させやすくなる。
これにより、異常検知システム1Aは、例えば、加工機70の加工状態が正常か異常かの判断ができないユーザに対しても、任意の検知信号を情報処理装置10に予め記憶しておき、正常動作時の加工音との比較または異常発生時の加工音との比較等を行う場合において、過去の信号データに係る音響信号を利用することで、対象装置が正常動作しているか異常発生しているかをユーザに判断させることができる。
なお、図15乃至図19において、情報処理装置10に出力信号選択画面200を表示させてユーザに出力対象の検知信号を選択させる例を説明したが、加工機70に出力信号選択画面200を表示させてユーザに出力対象の検知信号を選択させる構成であってもよい。この場合、加工機70の表示制御部77は、ディスプレイ704aに出力信号選択画面200を表示させ、受付部76は、出力項目選択領域210に対する入力を受け付ける。加工機70は、受け付けられた入力に対応する出力項目データを、送受信部71によって情報処理装置10へ送信し、情報処理装置10によって選択された信号データを送受信部71によって受信する。そして、加工機70の音制御部78は、スピーカ707a等を用いて、送受信部71によって受信された信号データに係る音響信号を音響出力させることができる。
〇特定の区間に係る信号データの抽出処理〇
続いて、図20および図21を用いて、音響出力させる検知信号の特定の区間に係る信号データの抽出処理について説明する。特定の区間に係る信号データの抽出処理は、図16に示した出力信号選択画面200における抽出範囲選択領域220に対する入力を受け付けることによって行われる。情報処理装置10は、例えば、周波数スペクトルまたは時間である特徴量の特定の区間の指定を入力領域221または222への入力により受け付けることによって、指定された特定の区間に係る信号データを抽出する。また、情報処理装置10は、抽出範囲選択領域220に含まれる「VIEW」ボタン225の選択を受付部13によって受け付けることにより、後述するデータ抽出画面250を用いて、特定の区間に係る信号データの抽出処理を行う。以下、抽出範囲選択領域220に含まれる「VIEW」ボタン225の選択を受付部13によって受け付けた場合の処理について説明する。
図20は、第1の実施形態に係る情報処理装置における出力対象の検知信号の特定の区間に係る信号データの抽出処理の一例を示すフローチャートである。なお、図20は、図10および図11に示したように、周波数変換された信号に係る信号データを情報処理装置10が予め記憶しているものとして説明するが、情報処理装置10は、図18に示したように、選択部18によって信号データを選択した後に周波数変換処理を行う構成であってもよい。
ステップS331cにおいて、選択部18は、条件情報管理DB1001(図8参照)に記憶された処理情報のうち、ステップS32によって受け付けられた出力項目データに対応する処理情報を選択する。具体的には、記憶・読出部19は、条件情報管理DB1001から条件情報管理テーブルを読み出す。そして、選択部18は、読み出された条件情報管理テーブルに含まれる条件情報のうち、受付部13によって受け付けられた出力項目データに対応する処理情報を含む条件情報を選択する。
ステップS332cにおいて、選択部18は、検知信号管理DB1003(図9参照)に記憶されたデータのうち、ステップS331aによって選択された処理情報に関連づけられた条件IDと同一の条件IDに関連づけられた信号データを選択する。具体的には、記憶・読出部19は、検知信号管理DB1003から検知信号管理テーブルを読み出す。そして、選択部18は、読み出された検知信号管理テーブルに含まれるデータのうち、選択された条件情報に含まれる条件IDに関連づけられた信号データを選択する。
ステップS333cにおいて、情報処理装置10の表示制御部14は、ディスプレイ106aにデータ抽出画面250を表示させる。図21は、第1の実施形態に係る情報処理装置に表示されるデータ抽出画面の一例を示すフローチャートである。図21に示すデータ抽出画面250は、選択部18によって選択された信号データに係る検知信号における特定の区間に係る信号データを抽出するための表示画面である。データ抽出画面250には、選択部18によって選択された信号データに係る検知信号の特徴量をユーザが確認可能な状態で表示されている。ここで、検知信号の特徴量は、例えば、検知信号の信号波形、検知信号の周波数スペクトログラム、検知信号の元となる物理量を発生させた加工機70の加工区間(上記「ラダー信号」)である。また、データ抽出画面250には、ぞれぞれの特徴量における特定の区間を特定するための抽出範囲特定領域270、特定の区間に係る信号データの抽出処理を行う場合に押下される「OK」ボタン251、および特定の区間に係る信号データの抽出処理を中止する場合に押下される「CANCEL」ボタン253が含まれている。ここで、特徴量が周波数スペクトログラムである場合の特定の区間は、抽出範囲特定領域270によって特定される特定の周波数領域(周波数範囲)である。また、特徴量が検知信号の信号波形または加工機70の加工区間である場合の特定の区間は、抽出範囲特定領域270によって特定される特定の時間範囲である。図21に示したデータ抽出画面250は、第2の表示画面の一例である。
ステップS334cにおいて、ユーザがデータ抽出画面250に含まれる抽出範囲特定領域270を用いて抽出範囲を指定し、「OK」ボタン251を選択することによって、受付部13は、特徴量に係る信号データの抽出範囲の選択を受け付ける。また、受付部13は、データ抽出画面250の左側にあるチェックボックスの選択された項目(特徴量)に対する抽出範囲の指定を受け付ける。図21の例では、受付部13は、特徴量の一例として周波数スペクトログラムに対して、抽出範囲特定領域270を用いて指定された抽出範囲の選択を受け付ける。
ステップS335cにおいて、信号処理部17のデータ抽出部175は、ステップS332cによって選択された信号データのうち、ステップS334cによって選択された抽出範囲に係る信号データを抽出する。
ステップS336cにおいて、信号処理部17の増幅処理部171は、データ抽出部175によって抽出された信号データに係る信号の増幅処理を行い、信号を任意の大きさに増幅させる。ステップS337cにおいて、信号処理部17のD/A変換部174は、増幅処理部171によって増幅されたデジタル信号を、アナログ信号に変換する。そして、情報処理装置10の音制御部15は、スピーカ109a等を用いて、データ抽出部175によって抽出された信号データに係る音響信号を音響出力させることができる。
これにより、情報処理装置10のユーザは、検知信号の特定の区間がフォーカスされた音響信号を聴くことができるので、加工機70が正常動作しているか異常が発生しているかを、より精度良く判断することができる。なお、図20は、データ抽出画面250を用いて信号データの抽出範囲をユーザに選択させる例を説明したが、信号データの抽出範囲の選択は、データ抽出部175によって自動的に行われる構成であってもよい。この場合、データ抽出部175は、例えば、ステップS332cによって選択された信号データを分析し、検知信号の特徴量が予め設定された挙動を示す特定の区間に係る信号データを抽出する。
●第1の実施形態の効果
したがって、第1の実施形態に係る異常検知システムは、加工機70により発生した音に係る検知信号を可聴帯域の信号に変換して、加工機70の動作ごとにラベル(条件ID)付けして情報処理装置10に記憶する。そして、情報処理装置10は、ユーザにより選択された信号データを可聴化することによって音響出力させる。これにより、ユーザは、検知信号を音響出力させる情報処理装置10を用いて、加工機70の状態を把握することできる。
●第1の実施形態の変形例1●
続いて、第1の実施形態の変形例1に係る異常検知システムについて説明する。第1の実施形態の変形例1に係る異常検知システムは、加工機70の現在の動作によって発生した検知信号と過去の関連する動作に対応する検知信号とを情報処理装置10によって比較・分析することにより、加工機70の異常を検知するシステムである。
●条件情報管理テーブル
図22は、第1の実施形態の変形例1に係る条件情報管理テーブルの一例を示す概念図である。図22に示す条件情報管理テーブルは、図8に示した条件情報管理テーブルと同様に、条件情報管理DB1001に構成されている。図22に示す条件情報管理テーブルは、図8に示した条件情報管理テーブルに含まれるデータに加えて、加工機70による動作のうち関連する動作(処理)を識別するための関連IDが関連づけられて管理されている。関連IDは、条件情報管理テーブルに含まれる処理情報のうち、関連する処理を示す処理情報に対して同一の関連IDが付与されている。図22の例では、条件ID;「A000001」と条件ID;「A00004」によって識別される処理情報に、同一の関連ID;「R001」が付与され、条件ID;「A000002」と条件ID;「A000007」によって識別される処理情報に、同一の関連ID;「R002」が付与されている。ここで、関連IDが付与される関連する処理とは、例えば、工具の種別と被加工材(加工対象)が同一で、加工(ジョブ)回数の異なる処理である。なお、関連IDが付与される処理は、これに限られず、ユーザの設定に応じて適宜複数の処理を対応づけるために関連IDを付与させることができる。この関連IDは、例えば、図10のステップS13の処理において、記憶・読出部19によって条件情報を条件情報管理DB1001に記憶させる際に付与される。
●検知信号の分析処理
続いて、図23乃至図25を用いて、情報処理装置10による検知信号の分析処理について説明する。検知信号の分析処理は、図16に示した出力信号選択画面200における「分析」ボタン240に対する入力を受け付けることによって行われる。
図23は、第1の実施形態の変形例1に係る情報処理装置における出力対象の検知信号の分析処理の一例を示すフローチャートである。なお、図23は、図10および図11に示したように、周波数変換された信号に係る信号データを情報処理装置10が予め記憶しているものとして説明するが、情報処理装置10は、図18に示したように、選択部18によって信号データを選択した後に周波数変換処理を行う構成であってもよい。
ステップS331dにおいて、選択部18は、条件情報管理DB1001(図22参照)に記憶された処理情報のうち、ステップS32によって受け付けられた出力項目データに対応する処理情報を選択する。具体的には、記憶・読出部19は、条件情報管理DB1001から条件情報管理テーブルを読み出す。そして、選択部18は、読み出された条件情報管理テーブルに含まれる条件情報のうち、受付部13によって受け付けられた出力項目データに対応する処理情報を含む条件情報を選択する。
ステップS332dにおいて、選択部18は、記憶・読出部19によって読み出された条件情報管理テーブルに含まれる条件情報のうち、ステップS331dによって選択された処理情報を含む条件情報に含まれる関連IDと同一の関連IDに関連づけられた処理情報(処理情報を含む条件情報)を選択する。
ステップS333dにおいて、選択部18は、検知信号管理DB1003(図9参照)に記憶されたデータのうち、ステップS331dおよびステップS332dによって選択された複数の処理情報のそれぞれに関連づけられた条件IDと同一の条件IDに関連づけられた信号データを選択する。具体的には、記憶・読出部19は、検知信号管理DB1003から検知信号管理テーブルを読み出す。そして、選択部18は、読み出された検知信号管理テーブルに含まれるデータのうち、選択された複数の条件情報に含まれる各条件IDに関連づけられた信号データをそれぞれ選択する。
ステップS334dにおいて、判断部21は、ステップ333dによって選択された複数の信号データの波形スペクトルを比較する。ステップS335dにおいて、判断部21は、ステップS334dによる比較の結果、複数の信号データの波形スペクトルに所定値以上の差異がある場合、処理をステップS336dへ移行させる。一方で、判断部21は、複数の信号データの波形スペクトルに所定値以上の差異がない場合、処理を終了する。
ステップS336dにおいて、判断部21は、複数の信号データにおける差分を算出する。ここで、加工機70の正常動作時と異常発生時に発生する信号の差分について説明する。図24(a)は、正常動作時における検知信号のスペクトログラムと平均スペクトルの一例を示す図であり、図24(b)は、異常発生時における検知信号のスペクトログラムと平均スペクトルの一例を示す図である。図25は、正常動作時と異常発生時の平均スペクトルの差分を抽出した周波数スペクトルの一例を示す図である。図24(b)に示すように、加工機70の異常発生時の検知信号には、可聴帯域外である高域の周波数範囲の周波数成分が含まれる。これを検知信号の平均スペクトルで比較すると、図24(a)と図24(b)示すように、異常動作時には、正常動作には発生していないスペクトル成分が存在する。そこで、判断部21は、図25に示すように、正常動作時の検知信号に係る信号データと異常発生時の検知信号に係る信号データの差分の周波数スペクトルを算出する。
ステップS337dにおいて、信号処理部17の増幅処理部171は、判断部21によって算出された差分に係る信号の増幅処理を行い、信号を任意の大きさに増幅させる。ステップS338dにおいて、信号処理部17のD/A変換部174は、増幅処理部171によって増幅されたデジタル信号を、アナログ信号に変換する。なお、ステップS337dの処理とステップS338dの処理の順序は前後してもよく、または並列して行われてもよい。この場合、増幅処理部171は、D/A変換部174によって変換されたアナログ信号の増幅処理を行う。そして、情報処理装置10の音制御部15は、スピーカ109a等を用いて、判断部21によって算出された差分に係る音響信号を音響出力させることができる。
これにより、第1の実施形態の変形例1に係る情報処理装置は、加工機70の関連する動作に係る複数の検知信号の検知信号の信号データを比較分析し、差分に係る音響信号を出力することで、対象装置の状態変化の発生をサジェストしてユーザによる状態変換の判断を容易化させる。そのため、ユーザは、対象装置の状態変化を簡単に聴き分けられることができる。
また、情報処理装置10は、判断部21によって算出された差分に係る音響信号の音量を大きくして出力する構成であってもよい。さらに、判断部21によって算出された差分に係る音響信号の周波数成分が、情報処理装置10の周囲の環境音に似た周波数成分である場合、情報処理装置10は、周囲の環境音とは異なる周波数成分を有する音響信号を出力する構成であってもよい。
●第1の実施形態の変形例2●
続いて、第1の実施形態の変形例2に係る異常検知システムについて説明する。第1の実施形態の変形例2に係る異常検知システムは、検知装置30によって加工機70から発生する音以外の波形データを検知装置30により検知し、検知した波形データから変換された音響信号を情報処理装置10によって出力させるシステムである。これにより、第1の実施形態の変形例2に係る異常検知システムは、加工機70から発生される音以外の物理量を用いても、情報処理装置10で可聴化させて音響出力することで、加工機70の状態をユーザに把握させることができる。
図26は、モータの駆動波形において、音響出力させる処理信号の周波数スペクトルの一例を示す図である。図26の左側には、加工機70の正常動作時と異常発生時における加工機70のモータ706aのロードメータ波形を示す。加工機70の異常発生時には、正常動作時とは異なるモータ706aの駆動波形が発生する。また、モータ706aの駆動波形に係る検知信号は、人間が聴くには低すぎる可聴帯域外の周波数の信号を含む場合がある。そこで、情報処理装置10は、図26の右側に示すように、モータ706aの駆動波形に係る検知信号波形に、正弦波等の搬送波ロードメータ波形を掛け合わせた処理信号波形に変換して可聴化することで、音響信号を出力させる。
この場合、検知装置30の装置接続部31は、検知信号取得部32によって検知されたモータ706a(駆動部74)の駆動波形に係る検知信号を、情報処理装置10へ送信する。情報処理装置10の信号処理部17は、送受信部11によって受信された駆動波形に係る検知信号の信号処理を行い、図26に示すような処理信号に変換する。そして、情報処理装置10は、上述のような選択処理によって、処理信号に係る音響信号を音響出力させる。
これにより、第1の実施形態の変形例2に係る異常検知システムは、音以外の検知信号を用いた場合においても、それらの情報を情報処理装置10により音響信号に変換して可聴化することで、ユーザに加工機70の状態を判断させることができる。
●第2の実施形態●
次に、第2の実施形態に係る異常検知システムついて説明する。なお、第1の実施形態と同一構成および同一機能は、同一の符号を付して、その説明を省略する。第2の実施形態に係る異常検知システム1Bは、検知装置30によって取得された検知信号を、情報処理装置10に変えてクラウドサーバ40が記憶するシステムである。これによって、異常検知システム1Bは、情報処理装置10からクラウドサーバ40へアクセスすることによって、異なる環境に設置された検知装置30の検知信号を取得することができるので、検知信号に係る信号データの音響出力を用いた加工機70の異常診断の精度を向上させることができる。
●システム構成
まず、図27を用いて、第2の実施形態の異常検知システムの構成の概略について説明する。図27は、第2の実施形態に係る異常検知システムのシステム構成の一例を示す図である。図27に示すように、第2の実施形態の異常検知システム1Bは、第1の実施形態に係る構成に、クラウドサーバ40が追加されている。情報処理装置10とクラウドサーバ40は、インターネットやイントラネット等の通信ネットワーク3を介して相互通信することができる。情報処理装置10とクラウドサーバ40は、出力システム7を構成すする。また、クラウドサーバ40は、外部装置の一例である。
クラウドサーバ40は、サーバコンピュータであり、複数台のサーバコンピュータで分散して機能を実行する場合も含まれる。クラウドサーバ40は、検知装置30によって取得された検知信号に係る信号データを記憶している。また、クラウドサーバ40は、情報処理装置10からの要求に応じて、記憶している信号データおよび加工機70の動作に係る処理情報を、情報処理装置10に提供する。なお、クラウドサーバ40のハードウエア構成は、図4に示した情報処理装置10と同様またはその一部が変更されたハードウエア構成であるため、説明を省略する。
●機能構成
続いて、第2の実施形態に係る装置および端末の機能構成について説明する。図28は、第2の実施形態に係る異常検知システムの機能構成の一例を示す図である。なお、検知装置30および加工機70の機能構成は、図6に示した構成と同様であるため説明を省略する。
情報処理装置10によって実現される機能は、図6に示した機能に加え、サーバ通信部22を含む。サーバ通信部22は、インターネット等の通信ネットワーク3を介して、他の装置(例えば、クラウドサーバ40)との間で、各種データまたは情報の送受信を行う機能である。サーバ通信部22は、主に、図4に示した通信I/F107およびCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。サーバ通信部22は、第1の送信手段の一例である。
また、クラウドサーバ40によって実現される機能は、送受信部41、生成部42、選択部43、記憶・読出部49および記憶部4000を含む。送受信部41は、通信ネットワーク3を介して、他の装置(例えば、情報処理装置10)との間で各種データまたは情報の送受信を行う機能である。送受信部41は、主に、図4に示した通信I/F107およびCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。送受信部41は、第2の送信手段の一例である。
生成部42は、送受信部41によって処理情報が受信された場合に、受信された処理情報を含む条件情報を識別するための条件IDを生成する機能である。生成部42は、主に、図4に示したCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。
選択部43は、ユーザからの信号出力要求に基づいて、音響出力させる検知信号を選択する機能である。選択部43は、例えば、送受信部41によって受信された信号出力要求に含まれる出力項目データに対応する条件情報に関連づけて記憶された検知信号を選択する。選択部18は、主に、図4に示したCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。選択部43は、選択手段の一例である。
記憶・読出部49は、記憶部4000に各種データを記憶させ、または記憶部4000から各種データを読み出す機能である。記憶・読出部49は、主に、図4に示したCPU101で実行されるプログラム等によって実現される。記憶部4000は、主に、図4に示したROM102、HD104および記録メディア111aによって実現される。また、記憶部4000には、条件情報管理DB4001および検知信号管理DB4003が構築されている。このうち、条件情報管理DB4001は、図8または図22に示した条件情報管理テーブルによって構成されている。検知信号管理DB1003は、図9に示した検知信号管理テーブルによって構成されている。記憶部4000は、記憶手段の一例である。
●第2の実施形態の処理または動作
○検知信号の記憶処理〇
続いて、図29および図30を用いて、第2の実施形態に係る異常検知システムにおける処理または動作について説明する。図29は、第2の実施形態に係る異常検知システムにおける検知信号の記憶処理の一例を示すシーケンス図である。
ステップS51において、加工機70の送受信部71は、情報処理システム5を構成する情報処理装置10へ、現在の加工機70の動作に係る処理情報を送信する。具体的には、加工機70の設定部75は、被加工材(加工対象)への加工開始時に、具体的な加工内容を示す処理情報を設定する。そして、送受信部71は、設定部75によって設定された処理情報を、情報処理装置10へ送信する。これにより、情報処理装置10の送受信部11は、加工機70から送信された処理情報を受信する。
ステップS52において、情報処理装置10のサーバ通信部22は、加工機70から送信された処理情報を、通信ネットワーク3を介して、クラウドサーバ40へ送信する。これにより、クラウドサーバ40の送受信部41は、情報処理装置10から送信された処理情報を受信する。
ステップS53において、クラウドサーバ40の生成部42は、送受信部41によって受信された処理情報を含む条件情報を識別するための条件IDを生成する。そして、ステップS54において、記憶・読出部49は、生成部42によって生成された条件IDと、送受信部41によって受信された処理情報とを関連づけた条件情報を、条件情報管理DB4001に記憶して管理する。条件情報管理DB4001に構成される条件情報管理テーブルは、図8に示した内容と同様である。ステップS55において、クラウドサーバ40の送受信部41は、ステップS53によって生成された条件IDを含む条件情報を、通信ネットワーク3を介して、情報処理装置10へ送信する。これにより、情報処理装置10のサーバ通信部22は、クラウドサーバ40から送信された条件情報を受信する。
ステップS56において、情報処理システム5を構成する検知装置30の検知信号取得部32は、加工機70により発生した振動または音等の物理量を検知する。ここでは、検知信号取得部32は、加工機70によって発生した音を検知し、検知した音に係る検知信号(音響信号)を取得する。
ステップS57において、検知装置30の装置接続部31は、ステップS56によって取得された検知信号を、情報処理装置10へ送信する。これにより、情報処理装置10の検知装置通信部12は、検知装置30から送信された検知信号を受信する。
ステップS58において、情報処理装置10の信号処理部17は、検知装置通信部12によって受信された検知信号の信号処理を行う。信号処理部17による処理は、図11に示した処理と同様であるため、説明を省略する。
ステップS59において、情報処理装置10のサーバ通信部22は、ステップS58によって処理された信号データ、およびステップS55によって受信された条件情報に示される条件IDを、通信ネットワーク3を介してクラウドサーバ40へ送信する。これにより、クラウドサーバ40の送受信部41は、情報処理装置10から送信された信号データおよび条件IDを受信する。
ステップS60において、クラウドサーバ40の記憶・読出部49は、ステップS59によって受信された信号データおよび条件IDを関連づけて検知信号管理DB4003に記憶する。検知信号管理DB4003に構成される検知信号管理テーブルは、図9に示した内容と同様である。
○音響信号の出力処理〇
続いて、図30を用いて、図29の処理において記憶された信号データに係る音響信号の出力処理について説明する。図30は、第2の実施形態に係る情報処理システムにおける出力対象の検知信号の選択処理の一例を示すフローチャートである。なお、図30は、図16に示した出力信号選択画面200に含まれる出力項目選択領域210に対してユーザ入力が行われることによって、情報処理装置10の受付部13が出力項目データを受け付けた場合の処理である。
ステップS71において、情報処理装置10のサーバ通信部22は、受付部13によって受け付けられた出力項目データを、通信ネットワーク3を介してクラウドサーバ40へ送信する。これにより、クラウドサーバ40の送受信部41は、情報処理装置10から送信された出力項目データを受信する。
ステップS72において、クラウドサーバ40の選択部43は、条件情報管理DB4001に記憶された処理情報のうち、ステップS71によって受信された出力項目データに対応する処理情報を選択する。具体的には、記憶・読出部49は、条件情報管理DB4001から条件情報管理テーブルを読み出す。そして、選択部43は、読み出された条件情報管理テーブルに含まれる条件情報のうち、送受信部41によって受信された出力項目データに対応する処理情報を含む条件情報を選択する。
ステップS73において、選択部43は、検知信号管理DB4003に記憶されたデータのうち、ステップS72によって選択された処理情報に関連づけられた条件IDと同一の条件IDに関連づけられた信号データを選択する。具体的には、記憶・読出部49は、検知信号管理DB4003から検知信号管理テーブルを読み出す。そして、選択部43は、読み出された検知信号管理テーブルに含まれるデータのうち、選択された条件情報に含まれる条件IDに関連づけられた信号データを選択する。
ステップS74において、クラウドサーバ40の送受信部41は、選択部43によって選択された信号データを、通信ネットワーク3を介して情報処理装置10へ送信する。そして、情報処理装置10のサーバ通信部22は、クラウドサーバ40から送信された信号データを受信する。ステップS75において、情報処理装置10は、ステップS74によって受信された信号データの信号処理を行う。ステップS75の処理は、例えば、図17に指示したステップS333aとステップS334aの処理、図18に示したステップS333b~ステップS337bの処理、または図20に示したステップS333c~ステップS337cの処理が行われる。
●第2の実施形態の効果
したがって、第2の実施形態の異常検知システムは、情報処理装置10からクラウドサーバ40へアクセスすることによって、異なる環境に設置された検知装置30の検知信号を取得することができるので、検知信号に係る信号データの音響出力を用いた加工機70の異常診断の精度を向上させることができる。
●第3の実施形態●
次に、第3の実施形態に係る異常検知システムついて説明する。なお、第1の実施形態または第2の実施形態と同一構成および同一機能は、同一の符号を付して、その説明を省略する。第3の実施形態に係る異常検知システム1Cは、上述の実施形態で説明した加工機70に変えて、画像形成装置80を備えるシステムである。
●システム構成
まず、図31および図32を用いて、第3の実施形態の異常検知システムの構成の概略について説明する。図31は、第3の実施形態に係る異常検知システムのシステム構成の一例を示す図である。図31に示すように、第3の実施形態の異常検知システム1Cは、対象装置の一例として画像形成装置80が備えられている。画像形成装置80は、スキャナ機能やプリント機能等を有する画像処理装置である。画像形成装置80は、例えば、MFP(Multi-Function Peripheral:複合機)、複写機(コピー機)、プリンタ、FAX装置、スキャナ装置等である。
異常検知システム1Cは、画像形成装置80の動作によって発生する振動または音等の物理量を検知装置30によって検知する。画像形成装置80による動作とは、コピー、プリント、スキャン等の動作音が発生するジョブである。また、画像形成装置80は、画像形成装置80の動作に係る処理情報を、情報処理装置10へ送信する。画像形成装置80の動作に係る処理情報とは、例えば、印刷枚数、用紙の種別、給紙トレイの種別、両面印刷の有無の項目に関する情報である。さらに、情報処理装置10は、上述の実施形態と同様に、検知装置30によって取得された検知信号を受信し、画像形成装置80から送信された処理情報と関連づけて記憶する。
図32は、画像形成装置の概略構成図の一例である。図32は、画像形成装置80が複合機であるものとして説明する。画像形成装置80は、主に、給紙テーブル860、本体部800、画像読取りユニット830、および原稿自動搬送装置(ADF)840を備えている。
本体部800は、ほぼ中央に中間転写ベルト810を有している。中間転写ベルト810は、例えば伸びの少ないフッ素樹脂や伸びの大きなゴム材料に帆布等の伸びにくい材料で構成された基層に、弾性層を設けた複層ベルトである。弾性層は、例えば、フッ素系ゴムやアクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴムの表面に、例えば、フッ素系樹脂をコーティングして平滑性のよいコート層を形成したものである。中間転写ベルト810は、3つの支持ローラ814~816に掛け廻されており、不図示の中間転写モータにより時計廻り(紙面から見て)に回動駆動される。支持ローラ815と816の間には、中間転写ベルト10上に残留した残留トナーを除去する中間転写体クリーニングユニット817が配置されている。
中間転写ベルト810の支持ローラ814と支持ローラ815との間には、中間転写ベルト810の移動方向に沿って、各色の、感光体ドラム841,チャージャユニット818、トナー容器819、現像ユニットおよびクリーニングユニットからなる作像装置820が配置されている。各色とは、トナーの色であり、ブラック(K),イエロー(Y),マゼンタ(M)およびシアン(C)である。作像装置820は、ICタグを備え、プリンタ本体に対して脱着可能に装着されている。作像装置820の上方には、各色の感光体ドラム841に画像形成のためのレーザ光を照射する書き込みユニット821が配置されている。
また、中間転写ベルト810の下方には、2次転写ユニット822がある。2次転写ユニット822は、1対のローラ823の間に無端ベルトである2次転写ベルト824が掛け渡されている。紙面右側のローラ823は、中間転写ベルト810を押し上げて支持ローラ816に押当てられるように配置されている。この2次転写ベルト824は、中間転写ベルト810上の画像を、用紙上に転写する。2次転写ユニット822の用紙の搬送方向(下流側)には、用紙上に転写された転写画像を定着する定着ユニット825が配置されている。トナー像が転写された用紙は定着ユニット825に送り込まれる。定着ユニット825は、無端ベルトである定着ベルト826と、定着ベルト826に押し当てられたに加熱加圧ローラ827を有している。2次転写ユニット822および定着ユニット825の下方に、シート反転ユニット828が配置されている。シート反転ユニット828は、表面に画像が形成された直後の用紙の表裏を反転して、再度、2次転写ユニット822に送り出す。これにより、用紙の裏面にも画像が形成可能になる。
次に、画像読取りユニット830と原稿自動搬送装置(ADF)840について説明する。原稿自動搬送装置(ADF)840の原稿給紙台831上に原稿が載値されているものとする。この場合、図33に示す操作パネル8040のスタートスイッチが押下されると、原稿自動搬送装置(ADF)840は、原稿をコンタクトガラス832上に搬送する。原稿自動搬送装置(ADF)840に原稿が無い場合、原稿はユーザによりコンタクトガラス832に手置きされる。その後、ユーザはスタートスイッチを押下する。
コンタクトガラス832上の原稿を読むために、画像読取りユニット830は、スキャナとしての動作を開始する。画像読取りユニット830は、第1キャリッジ833および第2キャリッジ834を、読取り走査のため駆動する。そして、第1キャリッジ833上の光源からコンタクトガラス832に光を照射するとともに原稿面からの反射光を第1キャリッジ833の第1ミラーで反射して第2キャリッジ834に向ける。第2キャリッジ834上のミラーはこの光を反射して結像レンズ835に反射し、反射光は、結像レンズ835を通過して読取りセンサである読取りセンサ836に結像される。読取りセンサ836で得た画像信号に基づいてK,Y,M,Cの各色の画像データが生成される。
また、スタートスイッチが押下された時に、中間転写ベルト810の回動駆動が開始されるとともに、作像装置820の各ユニットの作像準備が開始され、各色の作像の作像シーケンスが開始される。各色用の感光体ドラム841に各色の画像データに基づいて変調された露光レーザが投射され、各色の作像プロセスにより、各色のトナー像が中間転写ベルト810上に一枚の画像として、重ねて転写される。このトナー画像の先端が2次転写ユニット822に進入する時に、同時に用紙の先端が2次転写ユニット822に進入するようにタイミングをはかって用紙が、レジストローラ849から2次転写ユニット822に送り込まれる。これにより中間転写ベルト810上のトナー像が用紙に転写される。トナー像が転写された用紙は、定着ユニット825に送り込まれ、そこでトナー像が用紙に定着される。
なお、上述の用紙は、給紙テーブル860の給紙ローラ842の1つが選択的に回転駆動され、給紙ユニット843に多段に備える給紙トレイ844の1つから用紙を繰り出し、分離ローラ845で1枚だけ分離して、搬送が開始される。用紙は、搬送コロユニット846に入れられ、搬送ローラ847で搬送して本体部800内の搬送コロユニット848に導かれる。搬送コロユニット848のレジストローラ849に突き当てて止めてから、前述のタイミングで2次転写ユニット822に送り出される。
手差しトレイ851上に用紙を差し込んで給紙することもできる。ユーザが手差しトレイ851上に用紙を差し込んでいる場合、本体部800が給紙ローラ850を回転駆動して手差しトレイ851上の用紙の1枚を分離して手差し給紙路853に引き込み、同じくレジストローラ849に突き当てて止める。
給紙テーブル860には、例えば、フォトセンサからなるセンサが搭載されており、給紙トレイ844に収納されている用紙の残量や有無を検知するペーパーエンドセンサ、用紙のサイズや向きを検出するサイズ検知センサ、各トレイが画像形成装置80の本体部800に装着されているか否かを検出するトレイセット検知がある。また、用紙の搬送中に用紙が好適に搬送されているか否か、搬送ジャム(紙詰まり)の発生の有無を検出する紙搬送センサが各給紙トレイにある。
定着ユニット825で定着処理され排出される用紙は、切換爪855で排出ローラ856に案内され排紙トレイ857上にスタックされる。または、切換爪855でシート反転ユニット828に案内され、そこで反転して再び転写位置へと導かれ、裏面にも画像が形成された後、排出ローラ856で排紙トレイ857上に排出される。一方、画像転写後の中間転写ベルト810上に残留する残留トナーは、中間転写体クリーニングユニット817で除去し、再度の画像形成に備える。
●ハードウエア構成
図33は、画像形成装置のハードウエア構成の一例を示す図である。図33に示すように、画像形成装置80は、コントローラ8010、近距離通信回路8020、エンジン制御部8030、操作パネル8040およびネットワークI/F8050を備えている。
これらのうち、コントローラ8010は、コンピュータの主要部であるCPU8001、システムメモリ(MEM-P)8002、ノースブリッジ(NB)8003、サウスブリッジ(SB)8004、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)8006、記憶部であるローカルメモリ(MEM-C)8007、HDDコントローラ8008、および記憶部であるHD8009を有し、NB8003とASIC8006との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス8021で接続した構成となっている。
これらのうち、CPU8001は、画像形成装置80の全体制御を行う制御部である。NB8003は、CPU8001と、MEM-P8002、SB8004およびAGPバス8021とを接続するためのブリッジであり、MEM-P8002に対する読み書き等を制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタおよびAGPターゲットとを有する。
MEM-P8002は、コントローラ8010の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリであるROM8002a、プログラムやデータの展開、およびメモリ印刷時の描画用メモリ等として用いるRAM8002bとからなる。なお、RAM8002bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
SB8004は、NB8003とPCIバス8022、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。ASIC8006は、画像処理用のハードウエア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス8021、PCIバス8022、HDDコントローラ8008およびMEM-C8007をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC8006は、PCIターゲットおよびAGPマスタ、ASIC8006の中核をなすアービタ(ARB)、MEM-C8007を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジック等により画像データの回転等を行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、並びに、スキャナ部8031およびプリンタ部8032との間でPCIバス8022を介したデータ転送を行うPCIユニットとからなる。なお、ASIC8006には、USB(Universal Serial Bus)のインターフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインターフェースを接続するようにしてもよい。
MEM-C8007は、コピー用画像バッファおよび符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD8009は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HDDコントローラ8008は、CPU8001の制御にしたがってHD8009に対するデータの読出または書込を制御する。AGPバス8021は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースであり、MEM-P8002に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
また、近距離通信回路8020には、近距離通信回路8020のアンテナ8020aが備わっている。近距離通信回路8020は、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth(登録商標)等の通信回路である。
さらに、エンジン制御部8030は、スキャナ部8031およびプリンタ部8032によって構成されている。また、操作パネル8040は、現在の設定値や選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部8040a、並びに、濃度の設定条件等の画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキーおよびコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなる操作部8040bを備えている。コントローラ8010は、画像形成装置80全体の制御を行い、例えば、描画、通信、操作パネル8040からの入力等を制御する。スキャナ部8031またはプリンタ部8032には、誤差拡散やガンマ変換等の画像処理部分が含まれている。
なお、画像形成装置80は、操作パネル8040のアプリケーション切り替えキーにより、ドキュメントボックス機能、コピー機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能を順次に切り替えて選択することが可能となる。ドキュメントボックス機能の選択時にはドキュメントボックスモードとなり、コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
また、ネットワークI/F8050は、通信ネットワークを利用してデータ通信をするためのインターフェースである。近距離通信回路8020およびネットワークI/F8050は、PCIバス8022を介して、ASIC8006に電気的に接続されている。
検知装置30は、上記各実施形態と同様に、センサ301およびセンサアンプ302を備える。検知装置30は、センサ301によって、エンジン制御部803の制御動作によってスキャナ部8031またはプリンタ部8032の動作中に発生する振動または音等の物理量を検知する。
●機能構成
続いて、第3の実施形態に係る装置および端末の機能構成について説明する。図34は、第3の実施形態に係る異常検知システムの機能構成の一例を示す図である。なお、情報処理装置10および検知装置30の機能構成は、図6に示した構成と同様であるため説明を省略する。
画像形成装置80によって実現される機能は、送受信部81、画像形成制御部82、駆動制御部83、駆動部84、設定部85、受付部86および表示制御部87を含む。
送受信部81は、情報処理装置10等の他の装置との間で各種データ(または情報)の送受信を行う機能である。送受信部81は、例えば、画像形成装置80の現在の動作に係る処理情報を、情報処理装置10へ送信する。送受信部81は、主に、図33に示したネットワークI/F8050、およびCPU8001で実行されるプログラム等によって実現される。
画像形成制御部82は、スキャナ部8031またはプリンタ部8032によって実行される、用紙上にトナー画像を形成する画像形成処理を制御する機能である。画像形成制御部82は、主に、図33に示したエンジン制御部8030、およびCPU8001で実行されるプログラム等によって実現される。
駆動制御部83は、駆動部84を駆動制御する機能である。駆動制御部83は、例えば、図33に示すエンジン制御部8030によって実現される。駆動制御部83は、主に、図33に示したエンジン制御部8030、およびCPU8001で実行されるプログラム等によって実現される。
駆動部84は、駆動制御部83による駆動制御の対象となる機能である。駆動部84は、例えば、駆動制御部83による制御によってスキャナ部8031またはプリンタ部8032を駆動する。駆動部84は、駆動制御部83によって駆動制御されるアクチュエータであり、主に、図33に示すスキャナ部8031またはプリンタ部8032等によって実現される。
設定部85は、画像形成装置80の現在の動作に対応する条件情報を設定する機能である。設定部85は、主に、図33に示したCPU8001で実行されるプログラム等によって実現される。
受付部86は、図33に示した操作部8040b等の入力手段に対するユーザ入力を受け付ける機能である。受付部86は、例えば、パネル表示部8040aに表示された出力信号選択画面200(図16参照)に対する入力に応じて、出力項目の選択を受け付ける。受付部86は、主に、図33に示したCPU8001で実行されるプログラム等によって実現される。
表示制御部87は、図33に示したパネル表示部8040aに各種画面情報を表示させる機能である。表示制御部87は、例えば、パネル表示部8040aに出力信号選択画面200(図16参照)を表示させる。表示制御部87は、主に、図33に示したCPU8001で実行されるプログラム等によって実現される。
なお、第3の実施形態に係る異常検知システムの処理または動作は、上記各実施形態と同様であるため、説明を省略する。これにより、異常検知システム1Cは、加工機70を対象装置とする場合と同様に、画像形成装置80の動作ごとに記憶された検知信号を、ユーザが任意に音響出力させることができるので、画像形成装置80の状態をユーザに把握させることができる。
また、上記各実施形態において、検知信号を音響出力させる例を説明したが、検知信号の出力方法は、これに限られず、信号波形や周波数スペクトログラム等を示す表示画面を表示させる等の方法によって、ユーザが確認可能な状態になるように検知信号を出力させる構成であってもよい。
●まとめ●
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10(出力装置の一例)は、対象装置(例えば、加工機70または画像形成装置80)の動作に係る処理情報を取得する送受信部11(第1の取得手段の一例)と、取得された処理情報に係る対象装置の動作に応じて変化し、かつ可聴帯域外の信号を含む検知信号(第1の検知信号の一例)を取得する検知装置通信部12(第2の取得手段の一例)と、取得された検知信号を可聴帯域の信号である第2の検知信号へ変換する周波数変換部173(変換手段の一例)と、取得された処理情報および第2の検知信号を関連づけて記憶する記憶部1000(記憶手段の一例)と、特定の処理情報に基づいて、記憶部1000に記憶させた複数の第2の検知信号から特定の第2の検知信号を選択する選択部18(選択手段の一例)と、を備え、選択部18によって選択された特定の第2の検知信号を出力させる。これにより、情報処理装置10は、特定に処理情報に関連づけられた検知信号を出力させることにより、ユーザに対象装置の状態を把握させることができる。また、情報処理装置10は、可聴帯域外の信号を含む検知信号を可聴帯域に変換した信号を出力させることで、対象装置の状態を精度良くユーザに判断させることができる。
また、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10(出力装置の一例)は、選択部18(選択手段の一例)によって選択された特定の第2の検知信号に含まれる特定の時間または特定の周波数領域である特定の区間に係る信号データを抽出するデータ抽出部175(抽出手段の一例)を備え、データ抽出部175によって抽出された信号データに係る信号を出力させる。これにより、情報処理装置10は、検知信号に係る特徴量を用いて、検知信号の特定の区間がフォーカスされた信号を出力することで、対象装置が正常動作しているか異常発生しているかを、ユーザにより精度良く判断させることができる。
さらに、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10(出力装置の一例)において、記憶部1000(記憶手段の一例)は、関連する対象装置(例えば、加工機70または画像形成装置80)の動作に係る異なる処理情報を関連づけて記憶し、選択部18(選択手段の一例)は、選択された特定の第2の検知信号に関連づけられた他の第2の検知信号を選択する。そして、情報処理装置10は、特定の第2の検知信号と他の第2の検知信号の差分を算出する判断部21(算出手段の一例)を備え、算出された差分に係る信号を出力させる。これにより、情報処理装置10は、加工機70の関連する動作に係る複数の検知信号の検知信号の信号データを比較分析し、差分に係る信号を出力することで、対象装置の状態変化の発生をサジェストしてユーザによる状態変換の判断を容易化させる。そのため、ユーザは、対象装置の状態変化を簡単に聴き分けられることができる。
また、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10(出力装置の一例)は、第2の検知信号を選択させるための出力信号選択画面200(第1の表示画面の一例)をディスプレイ106a(表示部の一例)に表示させる表示制御部14(表示制御手段の一例)と、出力信号選択画面200への入力に応じて、対象装置(例えば、加工機70または画像形成装置80)の動作に係る特定の処理情報の選択を受け付ける受付部13(受付手段の一例)を備え、選択部18(選択手段の一例)は、受付部13によって受け付けられた特定の処理情報に基づいて、特定の第2の検知信号を選択する。これにより、情報処理装置10は、対象装置の動作ごとに予め記憶させた信号データの中から、ユーザが対象装置の動作に応じて任意に選択した信号データに係る音響信号を出力することで、対象装置の正常動作時と異常発生時に発せられる音を、比較可能な状態でユーザに聴かせることができる。
さらに、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10(出力装置の一例)は、選択部18(選択手段の一例)によって選択された特定の第2の検知信号に含まれる特定の時間または特定の周波数領域である特定の区間に係る信号データを抽出するデータ抽出部175(抽出手段の一例)を備える。そして、情報処理装置10において、表示制御部14(表示制御手段の一例)は、特定の第2の検知信号に係る特徴量を示すデータ抽出画面250(第2の表示画面の一例)をディスプレイ106a(表示部の一例)に表示させ、受付部13(受付手段の一例)は、データ抽出画面250に示される特徴量における特定の区間の選択を受け付け、データ抽出部175は、受付部13によって受け付けられた特定の区間に係る信号データを抽出し、データ抽出部175によって抽出された信号データに係る信号を出力させる。これにより、情報処理装置10は、ユーザが任意に選択した特定の区間がフォーカスされた音響信号を出力することで、検知信号のうちユーザが聴きたい箇所の音を出力することができるので、対象装置が正常動作しているか異常発生しているかを、ユーザにより精度良く判断させることができる。
また、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10(出力装置の一例)は、対象装置(例えば、加工機70または画像形成装置80)の動作に係る処理情報を取得する送受信部11(第1の取得手段の一例)と、取得された処理情報に係る対象装置の動作に応じて変化し、かつ可聴帯域外の信号を含む検知信号(第1の検知信号の一例)を取得する検知装置通信部12(第2の取得手段の一例)と、送受信部11によって取得された処理情報、および検知装置通信部12によって取得された検知信号を関連づけて記憶部1000(所定の記憶領域の一例)に記憶させる記憶・読出部19と、特定の処理情報に基づいて、記憶部1000に記憶させた複数の検知信号から特定の検知信号を選択する選択部18(選択手段の一例)と、選択部18によって選択された特定の検知信号に含まれる可聴帯域外の信号を、可聴帯域の信号である第2の検知信号へ変換する周波数変換部173(変換手段の一例)と、を備え、周波数変換部173によって変換された第2の検知信号を出力させる。これにより、情報処理装置10は、特定に処理情報に関連づけられた検知信号を出力させることにより、ユーザに対象装置の状態を把握させることができる。また、情報処理装置10は、可聴帯域外の信号を含む検知信号を可聴帯域に変換した信号を出力させることで、対象装置の状態を精度良くユーザに判断させることができる。
●補足●
なお、各実施形態の機能は、アセンブラ、C、C++、C#、Java(登録商標)等のレガシープログラミング言語やオブジェクト指向プログラミング言語等で記述されたコンピュータ実行可能なプログラムにより実現でき、各実施形態の機能を実行するためのプログラムは、電気通信回線を通じて頒布することができる。
また、各実施形態の機能を実行するためのプログラムは、ROM、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、CD-RW(Re-Writable)、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-RW、ブルーレイディスク、SDカード、MO(Magneto-Optical disc)等の装置可読な記録媒体に格納して頒布することもできる。
さらに、各実施形態の機能の一部または全部は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブル・デバイス(PD)上に実装することができ、またはASICとして実装することができ、各実施形態の機能をPD上に実現するためにPDにダウンロードする回路構成データ(ビットストリームデータ)、回路構成データを生成するためのHDL(Hardware Description Language)、VHDL(Very High Speed Integrated Circuits Hardware Description Language)、Verilog-HDL等により記述されたデータとして記録媒体により配布することができる。
これまで本発明の一実施形態に係る出力装置、情報処理システム、出力システム、出力制御方法およびプログラムについて説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態の追加、変更または削除等、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。