添付図面を参照して本発明に係る第1~第4の実施の形態を順に詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
(第1の実施の形態)
図1~図5を参照して、本発明に係る第1の実施の形態を説明する。先ず、図1を参照して、本実施の形態の超音波診断装置100の全体構成を説明する。図1は、本実施の形態の超音波診断装置100を示す模式図である。
図1に示すように、超音波診断装置100は、超音波探触子10、本体部11及びコネクター部12を備える。超音波探触子10は、コネクター部12に接続されたケーブル14を介して本体部11と接続される。本体部11からの電気信号としての送信信号(駆動信号)は、ケーブル14を介して超音波探触子10の圧電部としての圧電素子1(図2参照)に送信される。この送信信号は、圧電素子1において超音波に変換され、被検体の生体内に送波される。送波された超音波は被検体の生体内の組織などで反射され、当該反射超音波の一部がまた圧電素子1に受波され電気信号としての受信信号に変換され、本体部11に送信される。受信信号は、本体部11において被検体内の内部状態を画像化した超音波画像データに変換され表示部13に表示される。
超音波探触子10は、振動子としての圧電素子1を備えており、この圧電素子1は、例えば、方位方向(走査方向)に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の圧電素子1を備えた超音波探触子10を用いている。なお、圧電素子1は、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、圧電素子1の個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子10としてコンベックス電子スキャンプローブを用いて、コンベックス走査方式による超音波の走査を行うものとするが、リニア走査方式又はセクタ走査方式の何れの方式を採用することもできる。本体部11と超音波探触子10との通信は、ケーブル14を介する有線通信に代えて、UWB(Ultra Wide Band)などの無線通信により行うこととしてもよい。
次いで、図2を参照して、超音波診断装置100の機能構成を説明する。図2は、超音波診断装置100の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本体部11は、例えば、操作入力部15と、送信部16と、受信部17と、画像生成部18と、画像処理部19と、DSC(Digital Scan Converter)20と、表示部13と、制御部21と、を備える。
操作入力部15は、医師、技師などの操作者の操作入力を受け付ける。操作入力部15は、例えば、診断開始を指示するコマンド、被検体の個人情報などのデータ、超音波画像データなどを表示部13に表示するための各種画像パラメーターの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボードなどを備えており、操作信号を制御部21に出力する。なお、本体部11が、表示部13の表示パネル上に設けられ操作者のタッチ入力を受け付けるタッチパネルを備える構成としてもよい。
送信部16は、制御部21の制御に従って、超音波探触子10にケーブル14を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子10に送信超音波を発生させる回路である。また、送信部16は、例えば、クロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を備える。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。遅延回路は、圧電素子1ごとに対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させ、送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。上述のように構成された送信部16は、例えば、超音波探触子10に配列された複数(例えば、192個)の圧電素子1のうちの連続する一部(例えば、64個)を駆動して送信超音波を発生させる。そして、送信部16は、送信超音波を発生させる毎に駆動する圧電素子1を方位方向(走査方向)にずらすことで走査(スキャン)を行う。
受信部17は、制御部21の制御に従って、超音波探触子10からケーブル14を介して電気信号である受信信号を受信する回路である。受信部17は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、圧電素子1ごとに対応した個別経路ごとに、予め設定された増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ-デジタル変換(A/D変換)するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、圧電素子1ごとに対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。
画像生成部18は、制御部21の制御に従って、受信部17からの音線データに対して包絡線検波処理や対数圧縮などを実施し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することにより、受信エネルギーとしての輝度値を有する画素からなるB(Brightness)モード画像データを生成することができる。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。画像生成部18は、画像モードがBモードの超音波画像データとしてのBモード画像データの他、A(Amplitude)モード、M(Motion)モード、ドプラ法による画像モード(カラードプラモードなど)など、他の画像モードの超音波画像データが生成できるものであってもよい。
画像処理部19は、制御部21の制御に従って、設定中の各種画像パラメーターに応じて、画像生成部18から出力されたBモード画像データに画像処理を施す。また、画像処理部19は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成された画像メモリー部19aを備える。画像処理部19は、制御部21の制御に従って、画像処理を施したBモード画像データをフレーム単位で画像メモリー部19aに記憶する。フレーム単位での画像データを超音波画像データあるいはフレーム画像データということがある。画像処理部19は、制御部21の制御に従って、上述したようにして生成された画像データを順にDSC20に出力する。
DSC20は、制御部21の制御に従って、画像処理部19より受信した画像データを表示用の画像信号に変換し、表示部13に出力する。
表示部13は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイなどの表示装置が適用可能である。表示部13は、制御部21の制御に従って、DSC20から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波画像データの静止画又は動画の表示を行う。
制御部21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備え、ROMに記憶されているシステムプログラムなどの各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置100の各部の動作を制御する。ROMは、半導体などの不揮発メモリーなどにより構成され、超音波診断装置100に対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、ガンマテーブルなどの各種データなどを記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
超音波診断装置100が備える各部について、各々の機能ブロックの一部又は全部の機能は、集積回路などのハードウェア回路として実現することができる。集積回路とは、例えばLSI(Large Scale Integration)であり、LSIは集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。また、各々の機能ブロックの一部又は全部の機能をソフトウェアにより実行するようにしてもよい。この場合、このソフトウェアは一つ又はそれ以上のROMなどの記憶媒体、光ディスク、又はハードディスクなどに記憶されており、このソフトウェアが演算処理器により実行される。
つぎに、図3を参照して、超音波探触子10の全体構造の一例を説明する。図3は、超音波探触子10の一部断面図である。
図3に示すように、超音波探触子10は、圧電素子1と、圧電素子1に電圧を印加するために前面側に配置された接地電極2及び背面側に配置された信号電極3と、信号電極3の背面側に配置された反射部としての反射層5及び信号用電気端子7と、圧電素子1から前面側にこの順で配置された音響マッチング層6及び音響レンズ8と、信号用電気端子7から背面側に配置されたバッキング部としてのバッキング(材)4と、を有する。本実施の形態において、圧電素子1に設けた信号電極3及び反射層5は、互いに接して配置される。また、図3に示すように、X軸、Y軸、Z軸をとるものとする。
圧電素子1は、電圧の印加により超音波を送波する複数個の圧電体(振動子)が図3中X方向に1次元に配列されて形成される。圧電素子1の厚さは、たとえば0.05[mm]以上0.3[mm]以下とすることができる。それぞれの圧電体は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系などの圧電セラミック、マグネシウム酸ニオブ酸鉛・チタン酸鉛固溶体(PMN-PT)及び亜鉛酸ニオブ酸鉛・チタン酸鉛固溶体(PZN-PT)などの圧電単結晶、並びにこれらの材料と高分子材料とを複合した複合圧電体、などにより形成される。
接地電極2は、金及び銀などを、蒸着、スパッタリング及び銀の焼き付けなどの方法で圧電素子1の前面に配置した電極である。信号電極3は、金及び銀などを、蒸着、スパッタリング及び銀の焼き付けなどの方法で、圧電素子1の背面に配置した電極である。反射層5は、圧電素子1に設けた信号電極3の背面に配置した層である。反射層5が、圧電素子1の音響インピーダンスより大きい値を有する材料により構成されることにより、圧電素子1は、圧電素子1が送受信波する超音波の波長の4分の1波長の振動をするように構成される。信号用電気端子7は、反射層5の背面側に接して配置され、信号電極3と反射層5を経由して超音波診断装置100の本体部11に配置された外部の電源などとを接続する。
音響マッチング層6は、圧電素子1と音響レンズ8との間を音響的に整合させるための層であり、圧電素子1と音響レンズ8との概ね中間の音響インピーダンスを有する材料により構成される。本実施形態では、音響マッチング層6は、第1の音響マッチング層6a、第2の音響マッチング層6b、第3の音響マッチング層6c及び第4の音響マッチング層6dの4層からなる。
本実施形態において、第1の音響マッチング層6aは、音響インピーダンスが8[MRayls(メガレールス)]以上20[MRayls]以下である、シリコン、水晶、快削性セラミックス、金属粉を充填したグラファイト、及び金属又は酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂などの材料から形成される。第2の音響マッチング層6bは、音響インピーダンスが6[MRayls]以上12[MRayls]以下である、グラファイト、及び金属又は酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂から形成される。第3の音響マッチング層6cは、音響インピーダンスが3[MRayls]以上6[MRayls]以下である、金属又は酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂などの材料から形成される。第4の音響マッチング層6dは、1.7[MRayls]以上2.3[MRayls]以下である、ゴム材料を混合したプラスチック材、及びシリコーンゴム粉を充填した樹脂などから形成される。
このように音響マッチング層6を多層化することで、超音波探触子の広帯域化を図れる。なお、音響マッチング層6を多層化するときは、音響レンズ8に近づくにつれて音響レンズ8の音響インピーダンスに段階的又は連続的に近づくように、各層の音響インピーダンスが設定されることがより好ましい。また、多層化された音響マッチング層6の各層は、エポキシ系接着剤などの、当該技術分野で通常使用される接着剤で接着されてもよい。
なお、音響マッチング層6の材料は上記材料に限定されず、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、マコールガラス、ガラス、溶融石英、コッパーグラファイト、および、樹脂などを含む公知の材料を使用することが可能である。上記樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ナイロン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂などが含まれる。
音響レンズ8は、被検体の生体に近い音響インピーダンスを有し、かつ生体とは異なる音速を有する、たとえば軟質の高分子材料などにより構成されており、生体と音響レンズ8との音速差による屈折を利用して圧電素子1から送波された超音波を集束して、分解能を向上させる。本実施の形態では、音響レンズ8は、図中Y方向(圧電体の配列方向Xに直交する方向)に沿って延び、生体より音速が遅い音響レンズ8の場合にはZ方向に凸状となる、シリンドリカル型の音響レンズであり、上記超音波をY方向に集束させて超音波探触子10の被検体側に放射する。上記軟質の高分子材料の例には、シリコーンゴムなどが含まれる。
反射層5は、圧電素子1(、信号電極3)と信号用電気端子7との間に配置された層であり、超音波探触子10が使用できる周波数を広帯域化および高感度化する機能を有する。反射層5は、上記圧電素子1より大きい音響インピーダンスを有する材料から形成される。
バッキング4は、圧電素子1及び反射層5を保持し、かつ、圧電素子1から反射層5を介して背面側に送波された超音波を減衰させる層である。バッキング4は、通常、音響インピーダンス、減衰及び放熱を調整するための材料を充填した合成ゴム、天然ゴム、エポキシ樹脂及び熱可塑性樹脂などから形成される。
超音波探触子10は、超音波を送受信する単体の圧電素子1を有する超音波送受波部を機械的に回転、揺動又はスライドさせる、及び圧電素子1を複数個アレイ状に配列し電子的に走査できる超音波送受波部を機械的に回転又は揺動して3次元の超音波画像を得るための保護部材であるウインドウ(不図示)を、超音波探触子10の被検体と接触する側を被覆する位置に有してもよい。また、超音波探触子10は、ウインドウと音響レンズ8などとの間に、ウインドウと圧電素子1の送受波面との間を音響的に整合させるための音響媒体液(不図示)を有してもよい。
(反射層5について)
圧電素子1の厚みは、約0.25波長に設定され、従来の一般的な0.5波長共振を用いた圧電素子より薄く設定される。電圧を印加した場合の圧電素子1に発生する電界強度は、圧電素子1の厚みに反比例するため、本実施の形態における圧電素子1は、従来の圧電素子と比較して内部の電界強度が大きくなり、大きなひずみが発生する。本実施の形態における圧電素子1の厚みは、従来の一般的な0.5波長共振型圧電素子の厚みの1/2程度になるため、圧電素子1のひずみは、従来の約2倍程度になる。
しかし、圧電素子1の接地電極2、信号電極3を設けた両端面に負荷がかからないフリーに近い状態で振動させると、厚み方向の0.5波長共振が強く励振されてしまい、送受信周波数が上昇してしまう、これを0.25波長共振にするために、圧電素子1より音響インピーダンスが大きい反射層5を設ける。このことにより、圧電素子1の背面側の振動を抑制し、送受信周波数の上昇を押さえた状態で、大きなひずみを発生させることが可能になる。この状態によって、音響エネルギーが反射層5側にはあまり分配されず、結果的に送信時の効率が高い超音波探触子とすることができる。また、圧電素子1の厚みを薄くしているために、電気的容量が大きくなり、感度が高く、広帯域の超音波探触子の構成にすることができる。
反射層5に適用される材料としては、タングステンやタンタルなど、圧電素子1との音響インピーダンスの差が大きい材料であれば適用できるが、製作する観点からタングステンカーバイドが好適である。また、タングステンカーバイドと他の材料とを混合してなるものであってもよい。
なお、上記の反射層5の材料は、電気的に導体であるので圧電素子1の信号電極3と信号用電気端子7とは電気的に接続することができるが、反射層5が電気的に絶縁体若しくは半導体のような場合には、反射層5の周囲に若しくは反射層5に貫通孔を設けて銅や金の導体をメッキや蒸着若しくはスパッタリングなどの方法で設けることにより、圧電素子1の信号電極3と信号用電気端子7とを電気的に接続してもよい。
圧電素子1に反射層5を設けた構成は上記のような特徴を有する一方で、以下のような課題がある。この課題については、図4を参照して説明する。図4(a)は、反射波P1及び多重反射波P2が発生する超音波探触子10の概略模式図である。図4(b)は、超音波探触子10のパルス応答特性を示す図である。
図4(a)の超音波探触子10は、図3に示す構成と同じである。圧電素子1に駆動電圧を印加すると、圧電素子1が振動し超音波が音響マッチング層6及び音響レンズ8を経由して被検体(図4(a)では反射体R)に送信され、被検体から反射した反射波(図4(a)ではP1で表示)は再び逆の経路を経由して圧電素子1で受信して、これを電気信号に変換して超音波診断装置の本体に送信され、本体で画像化される。しかしながら、受信した反射波P1は、反射層5に伝わり、反射層5と信号用電気端子7又はバッキング4との境界から、音響インピーダンスの差が大きいため反射し、この反射した超音波(多重反射波、図4(b)ではP2で表示)が、再び音響レンズ8側に伝搬し、被検体側に送信していく。図4(b)では、横軸に時間をとり、縦軸に圧電素子1の応答の電圧をとっている。
この多重反射波P2は不要なものであり、これが多重反射となり超音波画像上に虚像として表示され誤診になる可能性が出てくる。多重反射波P2は、従来の圧電素子の0.5波長共振の構成に比べ、反射層5を設けた構成は、2~3dB大きくなっており、この差が多重反射として課題になる。この多重反射波P2を低減することが重要になる。特に頸部の診断領域で頸動脈などの画像診断において、頸動脈内に多重反射が表示されることは、存在しない虚像として表示されてしまい誤診につながる。
本実施の形態では、この多重反射波P2を低減し、多重反射が問題にならないレベルである従来の圧電素子の0.5波長共振の構成に比べ、同等レベル又は同等以下のレベルにする構成にしたことに特徴を有している。ここで、図4(b)に示すように、反射波P1のVpp(peak to peak)を電圧値V1とし、多重反射波P2のVppを電圧値V2とする。
図5は、超音波探触子10の反射層5の厚みと多重反射の相対比較値との関係を示すグラフである。図5に示すように、超音波探触子10の構成において、反射層5の厚み(超音波送信周波数の波長で換算した厚み)を変えた時、図4(a)に示す反射体Rから最初に反射してきた反射波P1の電圧値V1と、再度反射した多重反射波P2の電圧値V2との比、すなわち多重反射をデシベル表示したとき、反射層5の厚みを通常の厚み(超音波の波長の0.1倍)としたときの多重反射の電圧値V1と電圧値V2との比を基準として0dBにしたときの多重反射の相対比較値の結果を示す。具体的には、デシベル表示した多重反射の電圧値V1と電圧値V2との比=20log(V2/V1)である。なお、図5は、次表Iに示す各構成の音響インピーダンスの値を用いて、図3に例示する構成の超音波探触子10において、超音波の中心周波数を10[MHz]としたとき、圧電素子1から送受信した超音波のパルス応答特性を、KLM(Krimholtz, Leedom and Matthaei)法によりシミュレーションして得られた結果である。
なお、シミュレーションに用いた構成は、図3に示す超音波探触子10の音響レンズ8前面に水を被検体と仮定し、その水中に反射体Rとしてステンレスの反射板を距離5[mm]に設置した状態から反射したパルス応答波形(反射波P1、多重反射波P2)の電圧値V1,V2を計算させている。なお、反射層5の厚みは、圧電素子1が送受信する超音波の波長で正規化している。
反射層5を設けた構成の厚みは、圧電素子1と反射層5の厚みにより周波数が変化するが、周波数特性、中心周波数との観点から設計すると反射層5の厚みは、波長に対して約0.25倍(約0.25波長)ではなく、約0.1倍(約0.1波長)付近の厚みが良好である。この反射層5の厚み0.1倍における多重反射の比較値を基準にし、図5に示すように、反射層5の厚みが厚くなると、多重反射は増加し、厚みを薄くすると減少する傾向となっていることが確認できる。
一般的に使用する反射層5の厚み約0.1波長(以降、圧電素子1が送受信する超音波の波長をλと表記する)を基準にして、多重反射を低減するには、反射層5の厚みを薄くすればよいということが図5から理解できる。
多重反射の比較値を従来の圧電素子の0.5λ共振の構成の問題ないレベルにするには、約2dB以上低減させる必要がある。反射層5の通常の厚み約0.1λから多重反射の比較値を2dB以上向上させるというレベルになると、図5のグラフから、反射層5の厚みは、波長の0.05λ未満となる。さらに反射層5の厚みを薄くしていくと多重反射はさらに低減できるが、反射層5がなくなる構成、つまり厚みが0になると、圧電素子1は従来の0.5λ共振の構成になるため、反射層5の特徴が出せなくなる。このため、圧電素子1は0.25λ共振ができるように、反射層5の厚みは0を除いて0.05λ未満の範囲が望ましい。
また、反射層5の厚みが薄くなるに従い、反射層の効果は徐々に低下してくる傾向があるため、さらに望ましくは、反射層5の厚みは0.01λ以上0.05λ未満の範囲が望ましい。
以上、本実施の形態によれば、超音波探触子10は、超音波を送受信する圧電素子1と、圧電素子1の背面側に設けられたバッキング4と、圧電素子1とバッキング4との間に配置され、圧電素子1の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する反射層5と、を備える。反射層5の厚みは、超音波の波長λに対して、0を除く(0より大きく)0.05λ未満である。より好ましくは、反射層5の厚みは、超音波の波長λに対して、0.01λ以上0.05λ未満である。
このため、超音波画像に影響しないように多重反射を低減でき、超音波探触子10を容易に高感度化でき、周波数を容易に広帯域化でき、超音波診断装置100を高分解能化できる。
また、反射層5は、均一の厚みを有する。このため、超音波探触子10を容易に製造できる。
また、超音波診断装置100は、超音波探触子10と、駆動信号を生成して超音波探触子10に出力する送信部16と、超音波探触子10から入力された受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像生成部18と、を備える。このため、多重反射を低減でき、超音波探触子10の高感度化、周波数の広帯域化、超音波診断装置100の高分解能化を実現でき、虚像のない高画質な超音波画像データを生成できる。
(第2の実施の形態)
図6を参照して、本発明に係る第2の実施の形態を説明する。図6(a)は、圧電素子1と反射層521とを示す断面図である。図6(b)は、圧電素子1と反射層522とを示す断面図である。図6(c)は、圧電素子1と反射層523とを示す断面図である。
本実施の形態では、装置構成として、第1の実施の形態の超音波診断装置100を用いるものとするが、超音波探触子10の反射層5を、図6(a)に示す反射層521、図6(b)に示す反射層522、又は図6(c)に示す反射層523に代えた構成とする。超音波診断装置100において、第1の実施の形態と同じ構成部分には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
圧電素子1の一方の面に設けた反射層5のもう一方の面に凹凸を設けた構成の代表的な一例の構成を図6(a)、図6(b)、図6(c)に示す。図6(a)の反射層521の凹凸の形状は、規則的若しくは不規則的に設けた構成であり、凹凸を設けた反射層5の最も薄くなっている厚みtλは、0を除いて0.05波長未満の範囲を有している。また、図6(b)において、圧電素子1の中心付近の反射層522は薄く、外側に行くにしたがって厚くなるような連続的な構成であり、圧電素子1の中心付近で最も薄くなっている反射層522の厚みtλは、反射層521の構成と同じで0を除いて0.05波長未満の範囲を有している。また、図6(c)の反射層5は階段状(段階的)の規則的若しくは不規則的に設けた厚みを有した構成であり、最も薄くなっている反射層523の厚みtλは、図6(a)の構成と同じで0を除いて0.05λ未満の範囲を有している。
また、圧電素子1の一方の面に設けた反射層5のもう一方の面に設けた凹凸は、一次元に限定するものではなく二次元に設けてもよい。
反射層に凹凸を設けるには、機械加工、化学的なエッチング、レーザー加工若しくはサンドブラストなどの方法が用いられる。
このように、反射層521,522,523の端面に凹凸を設けたことにより超音波の反射波を散乱させ、更に反射層521,522,523が最も薄くなる厚みtλは、0を除いて0.05波長未満の範囲にすることにより、多重反射を低減でき、しかも超音波の高感度化、広帯域化を容易として、超音波診断装置100の高分解能化を実現する。
以上、本実施の形態によれば、反射層521,522,523は、不均一の厚みを有する。このため、超音波画像に影響しないように多重反射をより低減でき、超音波探触子10をより容易に高感度化でき、周波数をより容易に広帯域化でき、超音波診断装置100をより高分解能化できる。
また、反射層521,522,523の不均一の厚みは、連続的、段階的、規則的又は不規則的に可変されている。このため、反射層521,522,523を多様に製造できる。
また、反射層521,522,523は、圧電素子1側の面の反対側の面に凹凸の形状を有する。このため、超音波画像に影響しないように多重反射をさらに低減でき、超音波探触子10をさらに容易に高感度化でき、周波数をさらに容易に広帯域化でき、超音波診断装置100をさらに高分解能化できる。
(第3の実施の形態)
図7~図9を参照して、本発明に係る第3の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、装置構成として、第1の実施の形態の超音波診断装置100を用いるものとするが、超音波探触子10を、図7に示す超音波探触子10Aに代えた構成とする。超音波診断装置100において、第1、第2の実施の形態と同じ構成部分には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
まず、図7を参照して、超音波探触子10Aの全体構造の一例を説明する。図7は、超音波探触子10Aの一部断面図である。
超音波探触子10Aは、反射層5と信号用電気端子7との間に、中間部としての中間層9を設けた構成を有する。
また、超音波探触子10Aに中間層9を設けた構成において、第1の実施の形態にて示した構成と同じ条件で、多重反射の比較値を計算した。反射層5の厚みtd(圧電素子1が送受信波する超音波の波長に対しての厚み)、中間層9の音響インピーダンスZm[MRayls]、及び中間層9の厚みtm(圧電素子1が送受信波する超音波の波長に対しての厚み)を変化させて計算した。
図8は、超音波探触子10Aにおける反射層5の厚みと中間層9の音響インピーダンスと中間層9の厚みの範囲とを概略的に示す図である。その結果、図8に示すように、反射層5の厚みtd、中間層9の音響インピーダンスZm、及び中間層9の厚みtmを変数とする直交座標(td,Zm,tm)において、下記点A1から点A18を頂点とする多面体で囲まれる領域、すなわち下記条件に示す領域において、多重反射をさらに低減することを可能にすることが確認できた。
点A1(0.01,4,0.02)
点A2(0.01,4,0.12)
点A3(0.01,16,0.02)
点A4(0.01,16,0.34)
点A5(0.01,28,0.02)
点A6(0.01,28,0.08)
点A7(0.03,4,0.02)
点A8(0.03,4,0.12)
点A9(0.03,16,0.02)
点A10(0.03,16,0.42)
点A11(0.03,28,0.4)
点A12(0.03,28,0.5)
点A13(0.049,4,0.02)
点A14(0.049,4,0.12)
点A15(0.049,16,0.18)
点A16(0.049,16,0.42)
点A17(0.049,28,0.42)
点A18(0.049,28,0.5)
上記領域は、多重反射の比較値を、従来の圧電素子の厚み0.5λ共振の構成の問題ないレベル以上すなわち、約2dB以上低減させることが可能な領域であり、これらから外れる領域は、多重反射が大きくなる傾向であり望ましくない。もちろんこれら領域の境界となる数値は、当然のことであるが、ばらつきがあって10%程度の範囲で許容できるものである。
図8の結果から、中間層9の音響インピーダンスは、4から28[MRayls]の範囲である。したがって、多重反射の比較値が問題ないレベルまで低減できる中間層9の音響インピーダンスは、表1に示すバッキング4の音響インピーダンスの3[MRayls]とは、異なる値(バッキング4の音響インピーダンスより小さい値)を有することが必要であるとともに、反射層5の音響インピーダンスの94[MRayls]とも異なることが必要であり、しかも反射層5の音響インピーダンスより小さい値の領域が、良好な結果が得られる。
中間層9の材料としては、導体であるグラファイト若しくはグラファイトに銅、タングステンなどの金属、若しくは炭化物を充填した材料、又は樹脂に金属粉、酸化物などを充填した複合材料などを用いるとよい。
なお、本実施の形態では、中間層9は、1層の場合について説明したが、このほか、中間層9を複数層設ける構成にしても同様の効果を得ることができる。例えば、中間層を2層とした場合には、反射層5側に設ける中間層の音響インピーダンスは、バッキング4側つまり信号用電気端子7側に設ける中間層の音響インピーダンスより小さい値の組み合わせにすることにより、多重反射をさらに低減することが可能である。
なお、中間層9として、圧電素子1の信号電極3と信号用電気端子7と電気的に接続するために、電気的に導体であることが望ましいが、中間層9が電気的に絶縁体、若しくは半導体のような場合には、中間層9の周囲に若しくは中間層9に複数個の貫通孔を設けて銅や金の導体をメッキや蒸着若しくは、スパッタリングなどの方法で設けることにより、圧電素子1の信号電極3と反射層5、及び信号用電気端子7とを電気的に接続してもよい。
なお、上記では、中間層9は、ほぼ均一の厚みを有した構成の場合について説明したが、このほか、図9(a)~図9(c)に示す構成としてもよい。図9(a)は、圧電素子1と反射層5と中間層931とを示す断面図である。図9(b)は、圧電素子1と反射層531と中間層932とを示す断面図である。図9(c)は、圧電素子1と反射層5と中間層933とを示す断面図である。
図9(a)~図9(c)に示すように、中間層9は、不均一の厚みを有し、連続的若しくは段階的に可変した厚みを有した構成、又は中間層9のどちらか一方の面、若しくは両面に凹凸を設けて不均一の厚みにしても同様の効果を得ることができる。中間層9の不均一の厚みの最も薄くなる厚みは、図8に示した範囲を有することが望ましい。
図9(a)に示す超音波探触子10Aは、圧電素子1と反射層5と中間層931とを有する。反射層5は、0を除いて0.05λ未満の範囲で、ほぼ均一の厚みを有する。反射層5の端面に設ける中間層931の面は平面で、その対抗する面は不均一の厚みになるように、規則的に、若しくは不規則的に凹凸を設けた構成にしている。このような構成にすることにより、反射層5から中間層931に伝搬した超音波は凹凸により散乱し、多重反射をさらに低減できる。なお、凹凸の間隙には、エポキシ樹脂などの接着剤を設けてもよい。
また、図9(b)に示す超音波探触子10Aは、圧電素子1と反射層531と中間層932とを有する。圧電素子1の面に設けた反射層531の面に対抗する面は、不均一の厚みになるように規則的に、若しくは不規則的に凹凸を設け、その端面に設ける中間層932の面は平面で、その対抗する面は不均一の厚みになるように、規則的に、若しくは不規則的に凹凸を設けた構成にしている。このような構成にすることにより、反射層531の凹凸の端面で超音波は散乱するが、すべて散乱させることができない超音波は、中間層932に伝搬し、中間層932の凹凸により散乱し、多重反射をさらに低減できる。なお、凹凸の間隙にはエポキシ樹脂などの接着剤を設けてもよい。この時、間隙に設ける材料の音響インピーダンスは、音響的に不整合になるように、中間層932の音響インピーダンスより小さい値を有することが望ましい。
また、図9(c)に示す超音波探触子10Aは、圧電素子1と反射層5と中間層933とを有する。反射層5は、ほぼ均一の厚みを有し、その端面に設ける中間層933の面は不均一の厚みになるように、規則的に、若しくは不規則的に凹凸を設け、その対抗する面は平坦な面の構成にしている。このような構成にすることにより、反射層5と中間層933間で超音波を散乱させることができ、多重反射をさらに低減できる。なお、凹凸の間隙にはエポキシ樹脂などの接着剤を設けてもよい。凹凸の間隙に設ける材料の音響インピーダンスは、音響的に不整合になるように、中間層933の音響インピーダンスより小さい値を有することが望ましい。
なお、本実施の形態は、図8~図9(c)に示すように、中間層9,931,932,933が反射層5,531に接するような構成について説明したが、このほか、中間層9,931,932,933を、信号用電気端子7及びバッキング4の間と、反射層5,531及び信号用電気端子7の間との何れか片側又は両側に設けても同様の効果が得られる。
図9(a)~図9(c)に示すように、中間層9の面の一方若しくは両側に不均一の厚みになるように、規則的に、若しくは不規則的に凹凸の形状を設ける構成にすることにより、多重反射はさらなる低減が可能となり、超音波の高感度化、広帯域化を容易として、超音波診断装置100の高分解能化を実現する。また、中間層9は、図6(a)~図6(c)に示すように、不均一の厚みになるように、連続的若しくは段階的に凹凸の形状を設ける構成としてもよい。
また、中間層9の面の一方若しくは両側に設けた凹凸は一次元に限定するものではなく、二次元に設けてもよい。
以上、本実施の形態によれば、超音波探触子10Aは、反射層5とバッキング4との間に配置され、反射層5の音響インピーダンス及びバッキング4の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスを有する中間層9を備える。このため、超音波画像に影響しないように多重反射を低減でき、超音波探触子10を容易に高感度化でき、周波数を容易に広帯域化でき、超音波診断装置100を高分解能化できる。
また、中間層9は、バッキング4の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する。このため、超音波画像に影響しないように多重反射を確実に低減でき、超音波探触子10を容易かつ確実に高感度化でき、周波数を容易かつ確実に広帯域化でき、超音波診断装置100を確実に高分解能化できる。
また、反射層5の超音波の波長に対する厚みtdと、中間層9の音響インピーダンスZmと、中間層9の超音波の波長に対する厚みtmとは、td、Zm及びtmを変数とする直交座標(td,Zm,tm)において、上記A1から点A18を頂点とする多面体で囲まれる領域に含まれる。このため、超音波画像に影響しないように多重反射をより低減でき、超音波探触子10をより容易に高感度化でき、周波数をより容易に広帯域化でき、超音波診断装置100をより高分解能化できる。
また、中間層9の材料は、導体である。あるいは、中間層9は、絶縁体材料又は半導体材料と、当該絶縁体材料又は半導体材料の周辺又は内部を貫通された導体と、を有する。このため、導体により、圧電素子1の信号電極3と信号用電気端子7とを確実に電気的に接続できる。
また、中間層931,932,933は、不均一の厚みを有する。このため、超音波画像に影響しないように多重反射をより低減でき、超音波探触子10を容易に高感度化でき、周波数を容易に広帯域化でき、超音波診断装置100を高分解能化できる。
また、中間層931,932,933の不均一の厚みは、連続的、段階的、規則的又は不規則的に可変されている。このため、中間層931,932,933を多様に製造できる。
また、中間層931,932は、圧電素子1側の面の反対側の面に凹凸の形状を有する。このため、超音波画像に影響しないように多重反射をさらに低減でき、超音波探触子10をさらに容易に高感度化でき、周波数をさらに容易に広帯域化でき、超音波診断装置100をさらに高分解能化できる。
(第4の実施の形態)
図10~図16を参照して、本発明に係る第4の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、装置構成として、第1の実施の形態の超音波診断装置100を用いるものとするが、超音波探触子10を、図10に示す超音波探触子10Bに代えた構成とする。超音波診断装置100において、第1~第3の実施の形態と同じ構成部分には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
まず、図10を参照して、超音波探触子10Bの全体構造の一例を説明する。図10は、超音波探触子10Bの一部断面図である。
超音波探触子10Bは、反射層5と信号用電気端子7との間に、中間層部としての中間層9a,9bの2層からなる中間層9Bを設けた構成を有する。第1~第3の実施の形態と異なる点は、反射層5の厚みは、0を除く0.05未満の厚みはもちろん、更に厚みが厚くなる0.05λから0.1λの範囲においても、多重反射を低減できる構成にしていることに特徴を有している。
ついで、図11~図16を参照して、超音波探触子10Bの多重反射の相対比較値を説明する。図11は、超音波探触子10Bの中間層9aの厚みがない場合の中間層9bの厚みと反射層5の厚みと多重反射の相対比較値との関係を示すグラフである。図12は、超音波探触子10Bの所定の中間層9bの場合の反射層5の厚みと中間層9aの厚みと多重反射の相対比較値との関係を示すグラフである。図13は、超音波探触子10Bの所定の中間層9aの場合の中間層9bの厚みと反射層5の厚みと多重反射の相対比較値との関係を示すグラフである。図14は、超音波探触子10Bの所定の反射層5の場合の中間層9bの厚みと中間層9aの厚みと多重反射の相対比較値との関係を示すグラフである。図15は、超音波探触子10Bの所定の反射層5の場合の中間層9bの厚みと中間層9aの厚みと多重反射の相対比較値との関係を示すグラフである。図16は、超音波探触子10Bの所定の反射層5の場合の中間層9bの厚みと中間層9aの厚みと多重反射の相対比較値との関係を示すグラフである。
第1の実施形態と同じ条件で、2層の中間層9a,9bを設けた超音波探触子10Bの構成において、反射層5の厚み、中間層9a、9bの厚み、及び中間層9bの音響インピーダンスを可変して、多重反射の相対比較値を計算した。なお、この時の中間層9aの音響インピーダンスは、3[MRayls]とし、中間層9bの音響インピーダンスは、6、10[MRayls]に可変している。
図11は、中間層9aなし、つまり中間層9bの音響インピーダンスを10[MRayls]の一層にして、反射層5の厚みと、中間層9bの厚みとを可変した時の多重反射の相対比較値の傾向を示している。
図11のグラフの縦軸は超音波探触子10Bの多重反射の相対比較値を示している。ただし、この多重反射の相対比較値は、図5の場合と異なり、従来の圧電素子の0.5λ共振の構成の問題ないレベルを0dBとして基準にした相対比較値である。したがって、多重反射の相対比較値は0dB以下の値になると良好なレベルということになる。また、横軸は、中間層9bの厚みを示している。
図11の結果から明らかのように、中間層9bの厚みが変化すると、多重反射の相対比較値も変化することが確認できる。中間層9bの厚みが、少なくとも0.06λから0.31λの範囲において、多重反射の相対比較値は、ほぼ0dB以下(多重反射が問題にならないレベル)になっており、多重反射の低減化が可能となっている。また、反射層5の厚みも、0.045λから0.075λの範囲でもほぼ0dB以下の領域になっており、多重反射の低減化が可能となっている。第1の実施の形態では、反射層5の厚みが0.05λ以上では、多重反射の相対比較値が問題となるレベルであったが、本実施の形態のように、中間層9bを設けることにより、反射層5の厚みが0.1λと厚くなっている構成でも、一部多重反射が0dB以上の領域があるが、中間層9bの厚み、約0.16λ以上からは0dB以下に低減できる多重反射の領域があり、中間層9bの厚みを調整することにより十分多重反射が低減できることが可能である。なお、反射層5の厚みが0.05λ未満(0.045λ)であると、多重反射の相対比較値が最も低減されている。
図12は、中間層9a,9bの2層設け、中間層9aの厚みを0から0.041λの範囲に可変し、また、反射層5の厚みを0.045λから0.1λの範囲に可変した時の超音波探触子10Bの多重反射の相対比較値を計算した結果を示す。なお、図12は、中間層9aの音響インピーダンスは、3[MRayls]、中間層9bの音響インピーダンスは、10[MRayls]の値で計算した結果である。
図12の結果から確認できるように、すべての条件において、多重反射の相対比較値が問題にならない0dB以下となっている。なお、反射層5の厚みが0.05λ未満(0.045λ)であると、多重反射の相対比較値が最も低減されている。
中間層9aの音響インピーダンスが3[MRayls]の材料としては、一般的なエポキシ樹脂の接着剤などを使用する。また、中間層9bの音響インピーダンスが10[MRayls]の材料としては、エポキシ樹脂にタングステンや酸化物の粒子を充填したものや、グラファイトと金属粉若しくは、炭化物などの複合材料を使用できる。
なお、中間層9aの音響インピーダンスは3[MRayls]、中間層9bの音響インピーダンスは10[MRayls]の場合について説明したが、このほか、中間層9aの音響インピーダンスは、中間層9bの音響インピーダンスより小さい他の組み合わせにおいても同様の効果が得られる。
また、図13は、中間層9a,9bの2層設け、中間層9aの音響インピーダンスが3[MRayls]で、厚み0.025λの時、反射層5の厚みを0.045λから0.1λの範囲に可変し、中間層9bの音響インピーダンスが10[MRayls]で、厚みを0.06λから0.31λの範囲に可変した時の、超音波探触子10Bの多重反射の相対比較値を計算した結果を示す。
図13から、これらいずれの条件においても多重反射の相対比較値は、問題ないレベルの0dB以下となっていることがわかる。反射層5の厚みが0.1λの条件では中間層9bの厚みが0.06λと0.31λで若干0dB以上となっているが、+0.3dB程度であり、多重反射が問題ないレベルの許容範囲といえる。なお、反射層5の厚みが0.05λ未満(0.045λ)であると、多重反射の相対比較値が最も低減されている。
また、図14は、中間層9a,9bの2層設け、反射層5の厚みを0.075λに固定し、中間層9aの音響インピーダンスが3[MRayls]で、厚みを0から0.124λの範囲に可変し、そして中間層9bの音響インピーダンスが10[MRayls]で厚みを0.06λから0.31λの範囲に可変した時の、超音波探触子10Bの多重反射の相対比較値を計算した結果を示す。
図14から、これらいずれの条件下においても、多重反射の相対比較値は、問題ないレベルの0dB以下となっていることがわかる。中間層9aの厚みが0.1λと0.124λの条件で中間層9bの厚みが0.25λから0.31λで若干0dB以上となっているが、+0.1dB以下であり、多重反射が問題ないレベルの許容範囲といえる。
また、図15は、中間層9a,9bの2層設け、反射層5の厚みを0.075λに固定し、中間層9aの音響インピーダンスが3[MRayls]で、厚みを0から0.124λの範囲に可変し、そして中間層9bの音響インピーダンスが6[MRayls]で厚みを0.06λから0.31λの範囲に可変した時の、超音波探触子10Bの多重反射の相対比較値を計算した結果を示す。これらいずれの条件下においても多重反射の相対比較値は、問題ないレベルの0dB以下となっていることがわかる。
また、図16は、中間層9a,9bの2層設け、反射層5の厚みを0.075λに固定し、中間層9aの音響インピーダンスが3[MRayls]で、厚みを0から0.124λの範囲に可変し、そして中間層9bの音響インピーダンスが14[MRayls]で厚みを0.06λから0.31λの範囲に可変した時の、超音波探触子10Bの多重反射の相対比較値を計算した結果を示す。これらいずれの条件下においても多重反射の相対比較値は、問題ないレベルのほぼ0dB以下となっていることがわかる。
以上のように、中間層9aの音響インピーダンスは、中間層9bの音響インピーダンスより小さい値の組み合わせと、それぞれの厚みを選択することにより、反射層5の厚みが0.05λ以上の厚みを有している場合においても、多重反射は、問題ないレベルまで低減できることを明らかにした。
したがって、超音波探触子10Bは、多重反射を低減でき、しかも超音波探触子10Bの高感度化、広帯域化を容易として、超音波診断装置100の高分解能化を実現する。
以上、本実施の形態によれば、超音波探触子10Bは、中間層9Bを備える。中間層9Bは、中間層9a,9bを有する。反射層5側の中間層9aの音響インピーダンスは、バッキング4側の中間層9bの音響インピーダンスより小さい。このため、反射層5の厚みが0を除く0.05λ未満の範囲になくても、超音波画像に影響しないように多重反射を低減でき、超音波探触子10Bを容易に高感度化でき、周波数を容易に広帯域化でき、超音波診断装置100を高分解能化できる。さらに、反射層5の厚みが0を除く0.05λ未満の範囲にあれば、超音波画像に影響しないように多重反射をさらに低減でき、超音波探触子10Bをさらに容易に高感度化でき、周波数をさらに容易に広帯域化でき、超音波診断装置100をさらに高分解能化できる。
なお、本実施の形態の中間層9a,9bとして、圧電素子1の信号電極3と信号用電気端子7と電気的に接続するために電気的に導体であることが望ましいが、中間層9a,9bが電気的に絶縁体若しくは半導体のような場合には、反射層5の周囲に若しくは反射層5に貫通孔を設けて銅や金の導体をメッキや蒸着若しくはスパッタリングなどの方法で設けることにより、圧電素子1の信号電極3と反射層5、および信号用電気端子7を電気的に接続してもよい。
また、本実施の形態では、反射層5、中間層9a,9bは、ほぼ均一の厚みを有した構成の場合について説明したが、このほか、第3の実施の形態で説明した、図9(a)~図9(c)に示すように、中間層9Bは、不均一の厚みを有し、連続的、段階的、規則的又は不規則的に可変した厚みを有した構成、また反射層5、中間層9a,9bのどちらか一方の面、若しくは両面に凹凸を設けて不均一の厚みにしても同様の効果を得ることができる。中間層9a,9bを凹凸構成にした場合の厚みは、平均厚みとして考えるとよい。また、図9(a)~図9(c)に示すように中間層9bが中間層9a側の面に凹凸の不均一の厚みの構成の場合は、凹凸の間隙部分を中間層9aとすれば、中間層9bと反射層5が接触するため、中間層9bを導体構成にしている場合には、中間層9bと反射層5とは電気的に接続されるため、中間層9aには絶縁体の材料を使用してもよい。
また、本実施の形態では、中間層9Bが2層の場合について説明したが、このほか、3層以上の複数層にし、隣り合う層の音響インピーダンスは異なるような構成にしても同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態は、図10に示すように、複数の中間層9Bが、反射層5に接するような構成について説明したが、このほか、複数の中間層9Bを、信号用電気端子7及びバッキング4の間と、反射層5及び信号用電気端子7の間とのいずれか片方又は両側に設けても同様の効果を得ることができる。
なお、上記各実施の形態における記述は、本発明に係る好適な超音波探触子及び超音波診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。例えば、上記各実施の形態の少なくとも2つを適宜組み合わせる構成としてもよい。
また、以上の各実施の形態における超音波診断装置100を構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。