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JP7303015B2 - 樹脂複合体の製造方法、及び変性セルロース繊維 - Google Patents

樹脂複合体の製造方法、及び変性セルロース繊維 Download PDF

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JP7303015B2
JP7303015B2 JP2019088711A JP2019088711A JP7303015B2 JP 7303015 B2 JP7303015 B2 JP 7303015B2 JP 2019088711 A JP2019088711 A JP 2019088711A JP 2019088711 A JP2019088711 A JP 2019088711A JP 7303015 B2 JP7303015 B2 JP 7303015B2
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Description

本発明は、変性セルロースナノファイバーを含有する樹脂複合体に関するものである。
セルロースナノファイバーは、1000nm以下のナノレベルの繊維径を持つ繊維であり、軽量で、且つ、高い強度および弾性率を有し、低い線熱膨張係数を有することから、樹脂複合体の補強材料として好適に使用されている。
従来、セルロースナノファイバーを含む樹脂複合体を製造する方法としては、セルロース原料を化学変性して得られた変性セルロース繊維を解繊し、セルロースナノファイバーとしてから樹脂と混練して樹脂複合体を得る方法等が知られている。
また、セルロース原料を化学変性して得られた変性セルロース繊維と樹脂を、混練機のせん断力により樹脂と複合化しながら変性セルロース繊維を解繊することにより、セルロースナノファイバーを含む樹脂複合体を得る方法が知られている(特許文献1参照)。この方法は、混練しながら解繊も行うことができるため、解繊してから樹脂と混練する方法と比較して、製造コストを抑えることができる利点がある。
特開2017-171713号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、大量に樹脂複合体を製造する場合において、混練機に変性セルロース繊維と樹脂を投入する際に、投入口でブリッジ(詰まり)が発生しやすく、また、混練機のスクリューへの食い込みが悪いという問題があった。また、詰まりが解消した瞬間に、変性セルロース繊維と樹脂とが一気に混練機内に入るため、スクリュートルクが上昇し、装置のギアボックスが破損するなどのトラブルが発生していた。また、変性セルロース繊維と樹脂とが一気に混練機内に入ることにより、解繊圧が弱まることで解繊性が低下し、得られる樹脂複合体の強度が低下する場合があった。
本発明の目的は、曲げ強度の高い樹脂複合体を提供することである。
本発明は、以下の(1)~(2)を提供する。
(1)変性セルロースナノファイバーと、樹脂とを含有する樹脂複合体であって、前記変性セルロースナノファイバーは、平均繊維長0.7~1.3mmおよび長径が3mm以上の凝集物数が乾燥重量0.5gあたり30個以下の変性セルロース繊維が混練機内で解繊されてなるものである、樹脂複合体。
(2)前記変性セルロースナノファイバーは、アセチル化セルロースナノファイバーであり、前記アセチル化セルロースナノファイバーは、アセチル基置換度が0.4~1.3である(1)記載の樹脂複合体。
本発明によれば、曲げ強度の高い樹脂複合体を得ることができる。
本発明の樹脂複合体を製造する際に用いる粉砕機の概略を示す図である。 本発明の樹脂複合体を製造する際に用いる混練機の概略を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の樹脂複合体について説明する。本発明において「~」は端値を含む。すなわち「X~Y」はその両端の値XおよびYを含む。
本発明の樹脂複合体は、変性セルロースナノファイバーと、樹脂とを含有する樹脂複合体であって、この変性セルロースナノファイバーは、平均繊維長0.7~1.3mmおよび長径が3mm以上の凝集物数が乾燥重量0.5gあたり30個以下の変性セルロース繊維が混練機内で解繊されてなるものである。
また、本発明の樹脂複合体は、粉砕機の回転刃で径1mm以上、5mm以下のスクリーンに対して変性セルロース繊維を押し付けながら粉砕し、前記スクリーンを通過させる粉砕工程と、前記粉砕工程において前記スクリーンを通過した前記変性セルロース繊維および樹脂を混練機に投入する投入工程と、前記投入工程で投入された前記変性セルロース繊維と前記樹脂とを混練しつつ、前記変性セルロース繊維を解繊し、変性セルロースナノファイバーおよび前記樹脂を含有する樹脂複合体を得る工程とを含む製造方法により、製造することができる。
(粉砕工程)
粉砕工程に用いる粉砕機の概略を図1に示す。図1に示す粉砕機2は、被粉砕材料を投入するための投入口4を有する本体6、本体6に固定された固定刃8、投入口4から投入された被粉砕材料を粉砕室10に引き込むブレード12aを有する回転刃12、粉砕された材料の排出粒度を調整するスクリーン14を備えている。
粉砕工程においては、粉砕機2の投入口4から、乾燥した状態の変性セルロース繊維の綿状の塊3を投入する。投入された変性セルロース繊維の綿状塊3は、回転刃12により粉砕室10に引き込まれ、回転刃12のブレード12aと固定刃8との間に作用するせん断力により粉砕される。さらに、回転刃12の全体で、スクリーン14に対して変性セルロース繊維を押し付けながら粉砕し、スクリーン14の径より小さくなると、粉砕機2から排出される。スクリーン14の径以上の変性セルロース繊維は、回転刃12で持ち上げられて、粉砕が繰り返される。
ここで、本発明においては、径が1mm以上、5mm以下、好ましくは径が3mm以上、5mm以下のスクリーン14を用いることが好ましい。スクリーンの径が小さすぎると、このスクリーンを通して得られる変性セルロース繊維の平均繊維長が短くなりすぎるため、得られる樹脂複合体は、曲げ強度が低いものとなる。また、径が大きすぎると、混練機への食い込みが劣ることに起因する作業性の低下や得られる樹脂複合体の強度低下が発生する。
スクリーン14を通して得られる変性セルロース繊維は、平均繊維長0.7~1.3mmであり、0.8~1.1mmが好ましい。また、スクリーン14を通して得られる変性セルロース繊維は、長径が3mm以上の凝集物数が乾燥重量0.5gあたり30個以下であり、10個以下が好ましく、5個以下がより好ましい。
粉砕工程において粉砕する変性セルロース繊維は、混練時の乾燥負荷軽減の観点から、乾燥させたものを用いることが好ましい。粉砕機2に投入する前段階の乾燥させた変性セルロース繊維は、通常、綿状の繊維塊である。
(変性セルロース繊維)
本発明に用いる変性セルロース繊維は、セルロース原料に対して各種の化学変性を行うことで得られる。化学変性の種類としては、アシル化、リン酸化等のエステル化、酸化(カルボキシル化)、カルボキシメチル化、シランカップリング、フッ素化、カチオン化等が挙げられる。中でも、アシル化によるエステル化が好ましく、アシル基の中でも、アセチル基を用いるアセチル化がより好ましい。
(セルロース原料)
本発明において、セルロース原料とは、セルロースを主体とした様々な形態の材料をいい、リグノセルロースを含むものであり、パルプ(晒又は未晒木材パルプ、晒又は未晒非木材パルプ、精製リンター、ジュート、マニラ麻、ケナフ等の草本由来のパルプなど)、酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等の天然セルロース、セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体等の何らかの溶媒に溶解した後に紡糸された再生セルロース、及び上記セルロース原料に加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル等の機械的処理等をすることによってセルロースを解重合した微細セルロースなどが例示される。
なお、リグノセルロースは、植物の細胞壁を構成する、複合炭化水素高分子であり、主に多糖類のセルロース、ヘミセルロースと、芳香族高分子であるリグニンから構成されている。リグニンの含有量は、原材料となるパルプ等に対して、脱リグニン、又は漂白を行うことにより、調整することができる。
(化学変性)
(エステル化)
本発明において、セルロース原料をエステル化して、エステル化セルロース繊維を得る方法は、特に限定されないが例えば、セルロース原料にアシル基やリン酸基を導入する方法が挙げられ、疎水化が容易で、樹脂と混ざりやすくなる観点から、アシル基を導入する方法(アシル化)が好ましい。
(アシル化)
アシル化セルロース繊維としては、セルロース表面に存在する水酸基が低級アシル基で置換されていることが好ましい。なお、上記「低級」は「炭素数が1~5である」ことを示す。アシル基(R-CO-)で、「低級アシル基」と言う場合、そのRは炭素数が1~5のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基(ピバル基)、ペンチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。
本発明に用いることができるアシル化セルロース繊維は、セルロース及びヘミセルロースの少なくとも一種(リグノセルロースが含まれる)中に存在する水酸基(即ち、糖鎖の水酸基)が、飽和脂肪酸、不飽和カルボン酸、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸、テトラ不飽和脂肪酸、ペンタ不飽和脂肪酸、ヘキサ不飽和脂肪酸、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸、アミノ酸、
マレイミド化合物:
Figure 0007303015000001
フタルイミド化合物:
Figure 0007303015000002
からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物のカルボキシ基から水素原子を除去した残基によって置換されていることが好ましい。
本発明においては、アシル化セルロース繊維として、セルロースの糖鎖の水酸基が、上記カルボン酸のカルボキシ基から水酸基を除いた残基(アシル基(アルカノイル基))でアシル化されていることが好ましい。
アシル化セルロース繊維のアシル基は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ペラルゴン酸、デカン酸(カプリン酸)、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸及びアラキジン酸から選ばれる飽和脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の飽和脂肪酸のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。また、アシル化セルロース繊維のアシル基は、フェノキシ酢酸、3-フェノキシプロピオン酸、4-フェノキシ酪酸及び5-フェノキシ吉草酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族置換飽和脂肪酸のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。
アシル化セルロース繊維のアシル基は、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の不飽和カルボン酸のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。
アシル化セルロース繊維のアシル基は、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸及びリシノール酸からなる群から選ばれる少なくとも一種のモノ不飽和脂肪酸のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。
アシル化セルロース繊維のアシル基は、ソルビン酸、リノール酸及びエイコサジエン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種のジ不飽和脂肪酸のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。
アシル化セルロース繊維のアシル基は、リノレン酸、ピノレン酸及びエレオステアリン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種のトリ不飽和脂肪酸のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。
アシル化セルロース繊維のアシル基は、ステアリドン酸及びアラキドン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラ不飽和脂肪酸のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。
アシル化セルロース繊維のアシル基は、ボセオペンタエン酸及びエイコサペンタエン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種のペンタ不飽和脂肪酸のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。
アシル化セルロース繊維のアシル基は、ドコサヘキサエン酸及びニシン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種のヘキサ不飽和脂肪酸のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。
アシル化セルロース繊維のアシル基は、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシベンゼンカルボン酸)及びケイ皮酸(3-フェニルプロパ-2-エン酸)からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族カルボン酸のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。
アシル化セルロース繊維のアシル基は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。
アシル化セルロース繊維のアシル基は、グリシン、β-アラニン及びε-アミノカプロン酸(6-アミノヘキサン酸)からなる群から選ばれる少なくとも一種のアミノ酸のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。
アシル化セルロース繊維のアシル基は、マレイミド化合物及びフタルイミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物のカルボキシル基から水素原子を除去した残基であることが好ましい。
上記の中でも、アシル化セルロース繊維としては、製造の容易さ、製造コストの観点から、アシル基がアセチル基(CH-CO-)であるアセチル化セルロース繊維が好ましい。また、アセチル化セルロース繊維のアセチル基置換度(DS)が、樹脂複合体となったときの強度発現の観点から、好ましくは0.4~1.3、より好ましくは0.6~1.1となるように調整する。
アシル化反応は、セルロース原料を膨潤させることのできる無水非プロトン性極性溶媒、例えばN-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中に原料を懸濁し、上記カルボン酸の無水物又は酸塩化物で、塩基の存在下で行うと短時間で反応を行うことが可能となるが、撹拌しながら反応を行うことなどにより塩基無しの条件で反応を行うことも可能である。このアシル化反応で用いる塩基としては、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が好ましく、炭酸カリウムがより好ましい。
アシル化反応は、例えば、室温~100℃で撹拌しながら行うことが好ましい。
(酸化)
本発明において、セルロース原料の酸化(カルボキシル化)は公知の方法を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、セルロース繊維の絶乾重量に対して、カルボキシル基の量が0.5mmol/g~3.0mmol/gになるように調整することが好ましい。
その一例として、セルロースをN-オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することにより得ることができる。この酸化反応により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基またはカルボキシレート基を有するセルロース系繊維(酸化セルロース繊維)を得ることができる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5重量%以下が好ましい。N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。
N-オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01~10mmolが好ましく、0.02~1mmolがより好ましく、0.05~0.5mmolがさらに好ましい。また、反応系に対し0.1~4mmol/L程度がよい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物およびヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.1~100mmolが好ましく、0.1~10mmolがより好ましく、0.5~5mmolがさらに好ましい。
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などを使用できる。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムは好ましい。酸化剤の適切な使用量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.5~500mmolが好ましく、0.7~50mmolがより好ましく、1~25mmolがさらに好ましく、3~10mmolが最も好ましい。また、例えば、N-オキシル化合物1molに対して1~40molが好ましい。
酸化(カルボキシル化)方法の別の例として、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、グルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50~250g/mであることが好ましく、70~220g/mであることがより好ましい。セルロース原料に対するオゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100重量部とした際に、0.1~30重量部であることが好ましく、5~30重量部であることがより好ましい。オゾン処理温度は、0~50℃であることが好ましく、20~50℃であることがより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、1~360分程度であり、30~300分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロース繊維の収率が良好となる。オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水またはアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、溶液中にセルロース原料を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
(カルボキシメチル化)
本発明において、セルロース原料をカルボキシメチル化してカルボキシメチル化セルロース繊維を得る方法としては公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではないが、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01~0.50となるように調整することが好ましい。その一例として次のような製造方法を挙げることができるが、従来公知の方法で合成してもよく、市販品を使用してもよい。セルロースを発底原料にし、溶媒に3~20重量倍の水及び/又は低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールの混合割合は、60~95重量%である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5~20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0~70℃、好ましくは10~60℃、かつ反応時間15分~8時間、好ましくは30分~7時間、マーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05~10.0倍モル添加し、反応温度30~90℃、好ましくは40~80℃、かつ反応時間30分~10時間、好ましくは1時間~4時間、エーテル化反応を行う。
(カチオン化)
本発明において、セルロース原料のカチオン化は公知の方法を用いて行うことができ、カチオン化により例えば、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、これらアンモニウム、ホスホニウムまたはスルホニウムを有する基をセルロース分子に有することができるが、アンモニウムを有する基が好ましく、特に、四級アンモニウムを含む基が好ましい。具体的なカチオン化の方法としては、特に限定されるものではないが、一例として、セルロース原料にグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハイドライト又はそのハロヒドリン型などのカチオン化剤と触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を水及び/又は炭素数1~4のアルコールの存在下で反応させることによって、四級アンモニウムを含む基を有する、カチオン変性されたセルロース繊維を得ることができる。
(酸添加処理)
上記のようにして得られた変性セルロース繊維がナトリウム塩等の塩型である場合には、酸添加処理を行って、酸型の変性セルロース繊維とすることにより、疎水性とすることができ、樹脂と混ざりやすい観点から好ましい。酸添加処理とは、変性セルロース繊維の分散液中に酸を添加する処理である。酸は、無機酸でも有機酸でもよい。無機酸としては例えば、硫酸、塩酸、硝酸、亜硫酸、亜硝酸、リン酸、二酸化塩素発生装置の残留酸などの鉱酸が挙げられ、好適には塩酸である。有機酸としては例えば、酢酸、乳酸、蓚酸、クエン酸、蟻酸などが挙げられる。酸処理時のpHは、通常2以上であり、3以上が好ましい。上限は6以下が好ましく、5以下が好ましい。従ってpHは、2~6が好ましく、2~5がより好ましく、3~5が更に好ましい。酸の添加量に特に制限はなく、変性セルロース繊維が凝集して半透明のゲル状物質が沈殿した時点で酸の添加を終了すればよい。
(洗浄)
化学変性により得られた変性セルロース繊維は、変性処理後(必要に応じて酸添加処理後)に、水などを用いた洗浄処理を行うことが好ましい。
(脱水)
洗浄処理においては必要に応じて脱水を行ってもよい。脱水は例えば、遠心分離法による脱水が挙げられる。脱水は、溶媒中の固形分が25~50%程度になるまで行うことが好ましい。
(乾燥)
本発明に用いる変性セルロース繊維は、粉砕工程に用いる前に、乾燥させることが好ましい。乾燥は、例えば、送風乾燥機や真空乾燥機を用いて行うことができる。乾燥は、変性セルロース繊維の含水率が1~5%程度になるまで行うことが好ましい。
(投入工程)
投入工程においては、粉砕工程でスクリーンを通過した変性セルロース繊維および樹脂を混練機に投入する。混練機に投入する際には、フィーダーを用いることが好ましい。また、投入前に、変性セルロース繊維および樹脂を混合しておくことが好ましい。本発明においては、粉砕工程でスクリーンを通過した変性セルロース繊維を用いるため、混練機に投入する際に、変性セルロース繊維の繊維塊が適度に解れており、投入口(シュート部)におけるブリッジ(詰まり)の発生を抑制することができる。また、混練機のスクリューへの食い込みが良好なものとなる。
なお、回転刃でスクリーンに対して押し付けることなく粉砕し、その後、スクリーンを通過させた変性セルロース繊維を用いる場合は、得られる変性セルロース繊維が再び凝集して繊維塊となりやすく、混練機のスクリューへの食い込みが悪化する虞がある。
(混練機)
投入工程で用いる混練機の概略を図2に示す。図2に示す混練機16は、ケーシング18内に平行に配設した一対の混練軸20を等速で回転駆動する二軸型の混練機である。各混練軸20には混練部材としての小判型のパドル22が取り付けられている。この混練機16においては、各混練軸20のパドル22の回転領域の一部が重なって、パドル22の尖端部がケーシング18の内面に付着する混練物を掻き取るとともに、一方のパドル22の尖端部が他方のパドル22の表面に付着した混練物を掻き取る構造となっている。本発明では、上記パドルの形状としてニーダーやローターといった被混練材料に高せん断力を付与できるピースを1つ以上設定されていることが好ましく、2つ以上が連続して設定されていることがより好ましい。
被混練材料である変性セルロース繊維および樹脂の混合物は、ケーシング18の一端側で混練軸20と直角方向に設けられた投入口24から供給され、混練機16により混練されることにより製造された変性セルロースナノファイバーと樹脂を含有する樹脂複合体が投入口24と反対の他端側に設けられた排出口26から排出される。
投入工程で用いる混練機としては、変性セルロース繊維および樹脂を溶融混練することができるものであれば、上記に例示した混練機に限定されることなく使用することができ、例えば、ベンチロール、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー等の混練機が挙げられる。また、二軸混練機、四軸混練機等の多軸混練機も使用することができる。
(樹脂複合体を得る工程)
上記投入工程において混練機16に投入された変性セルロース繊維と樹脂は、溶融混練され、この溶融混練時に発生するせん断力により変性セルロース繊維が解繊され、変性セルロースナノファイバーおよび樹脂を含有する本発明の樹脂複合体を製造することができる。
溶融混練温度は、使用する樹脂に合わせて調整することができる。溶融混練時の加熱設定温度は、熱可塑性樹脂供給業者が推奨する、最低加工温度±10℃程度が好ましい。混合温度をこの温度範囲に設定することにより、変性セルロースナノファイバーおよび樹脂を均一に混合することができる。
(樹脂)
本発明に用いる樹脂(以下、「マスターバッチ用樹脂」ということがある)としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド(以下「PA」とも記す、またナイロン樹脂とも記す)、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とエステルとの共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、(熱可塑性)ポリウレタン、ポリアセタール、アセタールとオキシエチレンとの共重合体、ビニルエーテル樹脂、セルロース系樹脂(ジアセチル化セルロース等)等を好ましく使用することができる。中でも、ポリアミド(PA)は、分子構造内に極性の高いアミド結合を有するため、セルロース系材料との親和性が高いため、好ましく使用することができる。
ポリアミド(PA)として、ナイロン6(ポリアミド6、PA6)、ナイロン11(ポリアミド11、PA11)、ナイロン12(ポリアミド12、PA12)、ナイロン66(ポリアミド66、PA66)、ナイロン46(ポリアミド46、PA46)、ナイロン610(ポリアミド610、PA610)、ナイロン612(ポリアミド612、PA612))等の脂肪族PA、フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンと塩化テレフタロイルや塩化イソフタロイル等の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体からなる芳香族PA等を挙げることができる。変性セルロース繊維、変性セルロースナノファイバー、および後述する希釈用樹脂との親和性が高い観点から、脂肪族PAを用いることが好ましく、PA6、PA66、PA11、PA12を用いることがより好ましく、PA6を用いることが特に好ましい。
樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合樹脂として用いてもよい。
(変性セルロースナノファイバー)
本発明においては、上記の通り、変性セルロース繊維と樹脂とを混練機内で溶融混練しつつ、変性セルロース繊維を解繊することで、変性セルロースナノファイバーと樹脂を含有する樹脂複合体を調製することができる。
セルロースナノファイバーは、繊維径が4~1000nm程度、アスペクト比が100以上の微細繊維である。
(樹脂複合体)
上記の製造方法により得られる本発明の樹脂複合体は、変性セルロースナノファイバーを含むため、曲げ強度に優れる。また、上記の製造方法により得られる変性セルロースナノファイバーおよび樹脂を含有する樹脂複合体は、さらに希釈用樹脂で希釈して用いることもできる。
希釈用樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン(以下「PP」とも記す)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド(PA、ナイロン樹脂)、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とエステルとの共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、(熱可塑性)ポリウレタン、ポリアセタール、ビニルエーテル樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂(トリアセチル化セルロース、ジアセチル化セルロース等)等が挙げられる。
変性セルロースナノファイバーおよびマスターバッチ用樹脂を含有する樹脂複合体(マスターバッチ)に、希釈用樹脂を加えて溶融混練することにより、希釈用樹脂をさらに含む樹脂複合体を得ることができる。希釈用樹脂を加えて溶融混練する場合、両成分を室温下で加熱せずに混合してから溶融混練しても、加熱しながら混合して溶融混練しても良い。
希釈用樹脂を加えて溶融混練する場合における混練機としては、上記の投入工程で用いる混練機と同様のものを使用することができる。また、溶融混練温度は、使用する樹脂に合わせて調整することができる。溶融混練時の加熱設定温度は、熱可塑性樹脂供給業者が推奨する、最低加工温度±10℃程度が好ましい。混合温度をこの温度範囲に設定することにより、変性セルロースナノファイバーおよび樹脂を均一に混合することができる。
上記の製造方法により製造される本発明の樹脂複合体は、更に、例えば、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;着色剤;可塑剤;香料;顔料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;紫外線分散剤;消臭剤、酸化防止剤等の添加剤を配合してもよい。任意の添加剤の含有割合としては、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜含有されてもよい。
本発明によれば、曲げ強度の高い樹脂複合体を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(アセチル基置換度(DS)の測定方法)
(逆滴定方法によるDSの測定)
アセチル化セルロース繊維の試料を乾燥し、0.5g(A)を正確に秤量した。そこにエタノール75mL、0.5NのNaOH 50mL(0.025mol)(B)を加え、3~4時間撹拌した。これを濾過、水洗、乾燥し、濾紙上の試料のFT-IR測定を行い、エステル結合のカルボニルに基づく吸収ピークが消失していること、つまりエステル結合が加水分解されていることを確認した。
濾液を下記の逆滴定に用いた。
濾液には加水分解の結果生じた酢酸ナトリウム塩及び過剰に加えられたNaOHが存在する。このNaOHの中和滴定を1NのHClを用いて行った(指示薬にはフェノールフタレインを使用)。
・0.025mol(B)-(中和に使用したHClのモル数)
=セルロースなどの水酸基にエステル結合していたアセチル基のモル数(C)
・(セルロース繰り返しユニット分子量162
×セルロース繰り返しユニットのモル数(未知(D))
+(アセチル基の分子量43×(C))
=秤量した試料0.5g(A)
上記式より、セルロースの繰り返しユニットのモル数(D)を算出した。
DSは、下記式により算出した。
・DS=(C)/(D)
(変性セルロース繊維の物性評価)
変性セルロース繊維の平均繊維長は、変性セルロース繊維0.1gを500mLの水で撹拌・離解した懸濁液を準備し、Lorentzen & Wettre社製のFiber Testerにて測定した。変性セルロース繊維中の凝集物数は、90℃の送風乾燥機で3時間以上乾燥した変性セルロース繊維0.5gを採取し、この中で長軸の長さが3mm以上、短軸の長さが1mm以上の塊の数を数え評価を行った。
(操業性の評価)
実施例および比較例において、操業性の指標として、変性セルロース繊維および樹脂の混合物を混練機に対して、フィーダーを用いて投入する際の、混練機シュート部での詰まりの回数を計測した。混練機シュート部での詰まりは、7時間の連続運転を3回実施し、発生する詰まり回数の平均を求めた。結果を表1及び2に示す。
(曲げ強度の測定)
実施例および比較例で得られたペレット状の樹脂複合体150gを小型成形機(Xplore Instruments社製「MC15」)に投入し、加熱筒(シリンダー)の温度250℃、金型温度は40℃の条件で、バー試験片を成形した。(厚さ4mm、並行部長さ80mm)得られた試験片について、精密万能試験機(島津製作所(株)製「オートグラフAG-Xplus」を用いて、試験速度10mm/分、標点間距離は64mmで、曲げ強度を測定した。
希釈用樹脂のみを用いて上記と同様にバー試験片を成形し、得られた試験片について上記と同様に曲げ強度を測定し、PA6ニート樹脂およびPPニート樹脂の曲げ強度として、それぞれ85MPa、50MPaを得た。
(曲げ強度の評価)
上記測定で得られた実施例および比較例の試験片の曲げ強度の値を、樹脂複合体を製造する際に用いた希釈用樹脂(PA6ニート樹脂又はPPニート樹脂)の試験片の曲げ強度の値で除することにより補強率を算出し、下記基準で評価した。結果を表1及び2に示す。
〇:ニート樹脂に対する補強率が1.35以上
△:ニート樹脂に対する補強率が1.20以上、1.35未満
×:ニート樹脂に対する補強率が1.20未満
なお、実施例1-6、及び比較例1、2については、希釈用樹脂としてPA6樹脂を用いたため、PA6ニート樹脂の曲げ強度の値を用い、実施例7及び比較例3については、希釈用樹脂としてPP樹脂を用いたため、PPニート樹脂の曲げ強度の値を用い、それぞれ補強率を算出した。
(変性セルロース繊維の粉砕に使用した粉砕機)
(粉砕機1)
(株)ホーライ製「UGO3-280XKFT」
回転刃形式:オープンストレートカッタ
(粉砕機2)
不二パウダル(株)製「パワーミルFL-200」
回転刃形式:フラッシュミル
(マスターバッチ及び樹脂複合体の製造に使用した混練機と運転条件)
(株)テクノベル製「MFU15TW-45HG-NH」二軸混練機
スクリュー径:15mm、L/D:45、処理速度:300g/時
スクリュー回転数は、通常200rpmで運転した。混練温度は200~220℃で運転した。
(実施例1)
(アセチル化セルロース繊維の調製)
含水針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)8.0kg(固形分4.0kg)を、撹拌機(日本コークス工業(株)製「FM150L」)に投入した後、撹拌を開始し、50℃で減圧脱水した。次いで、無水酢酸4.0kgを加え、80℃で2時間反応させた。反応後、水で洗浄し変性セルロース繊維としてのアセチル化セルロース繊維(アセチル化修飾NUKP)を得た。次いでアセチル化セルロース繊維を乾燥機に投入し、60~70℃で減圧乾燥した。得られたアセチル化セルロース繊維の含水率を、赤外水分計で測定した。含水率は、2.3重量%であった。アセチル化セルロース繊維のアセチル基置換度(DS)は0.7であった。
(アセチル化セルロース繊維の粉砕機による処理)
この時点で上記アセチル化セルロース繊維は綿状の繊維塊となっていた。この繊維塊を解す目的で粉砕機による処理を実施した。粉砕機はスクリーンに回転刃全体で押し付けるタイプの粉砕機として、粉砕機1を用い、径が1mmのスクリーンを通したアセチル化セルロース繊維を準備した。
(マスターバッチA及び樹脂複合体Aの製造に使用した材料)
(a)変性セルロース繊維(アセチル化セルロース繊維)
(b)マスターバッチ用樹脂
・PA6:(宇部興産(株)製PA6 P1011F)
(c)希釈用樹脂
・PA6:(宇部興産(株)製PA6 1011FB)
(d)酸化防止剤:BASF製「Irganox 1010」
(マスターバッチAの製造)
上記の粉砕機による処理を行ったアセチル化セルロース繊維(絶対乾燥物として930g)、マスターバッチ用樹脂(PA6:1200g)及び酸化防止剤(70g)を、ポリエチレン製の袋に入れ、振り交ぜて混合した。得られた混合物2200gを前述の二軸混練機に付属するフィーダー((株)テクノベル製)を用いて混練機に投入、加熱温度下で混練し、(a)アセチル化セルロース繊維に由来するアセチル化セルロースナノファイバー、(b)マスターバッチ用樹脂、及び(d)酸化防止剤を含むマスターバッチAを製造した。
(樹脂複合体Aの製造)
得られたマスターバッチA60gと希釈用樹脂(PA6)120gとを混合し、前記二軸混練機にて加熱温度下で混練した。次いで溶融混練物をペレタイザーを用いてペレット化し、(a)アセチル化セルロース繊維に由来するアセチル化セルロースナノファイバー、(b)マスターバッチ用樹脂、(c)希釈用樹脂及び(d)酸化防止剤を含むペレット状の樹脂複合体(成形体)Aを得た。
(実施例2)
径が1mmのスクリーンに代えて、径が3mmのスクリーンを通したアセチル化セルロース繊維を準備し、これを用いたこと以外は、実施例1と同様に、マスターバッチおよび樹脂複合体の製造を行った。
(実施例3)
径が1mmのスクリーンに代えて、径が5mmのスクリーンを通したアセチル化セルロース繊維を準備し、これを用いたこと以外は、実施例1と同様に、マスターバッチおよび樹脂複合体の製造を行った。
(実施例4)
使用するアセチル化セルロース繊維の反応時間を1時間としてDSを0.4で調整した以外は、実施例2と同様に、マスターバッチおよび樹脂複合体の製造を行った。
(実施例5)
使用するアセチル化セルロース繊維の反応時間を10時間としてDSを1.0で調整した以外は、実施例2と同様に、マスターバッチおよび樹脂複合体の製造を行った。
(実施例6)
使用するアセチル化セルロース繊維の反応時間を15時間としてDSを1.3で調整した以外は、実施例2と同様に、マスターバッチおよび樹脂複合体の製造を行った。
(比較例1)
スクリーンに回転刃全体で被粉砕物を押し付けるタイプの粉砕機1に代えて、スクリーンに刃全体で被粉砕物を押し付けないタイプの粉砕機2(S/C目穴φ3mm)にて処理したアセチル化セルロース繊維を準備し、これを用いたこと以外は、実施例1と同様に、マスターバッチおよび樹脂複合体の製造を行った。
(比較例2)
乾燥後のアセチル化セルロース繊維に対して、粉砕処理を行わず、この未粉砕のアセチル化セルロース繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様に、マスターバッチおよび樹脂複合体の製造を行った。
(実施例7)
径が1mmのスクリーンに代えて、径が3mmのスクリーンを通したこと以外は実施例1と同様に粉砕機による処理を行ったアセチル化セルロース繊維を準備し、使用する樹脂を以下のように変更してマスターバッチBおよび樹脂複合体Bの製造を行った。
(マスターバッチB及び樹脂複合体Bの製造に使用した材料)
(a)変性セルロース繊維(アセチル化セルロース繊維)
(b)マスターバッチ用樹脂
・PA6:(宇部興産(株)製PA6 P1011F)
・ PP:(日本ポリプロ(株)製PP MA04Aを凍結粉砕により粉末としたもの)
(c)希釈用樹脂
・ PP:(日本ポリプロ(株)製PP MA04A)
(d)酸化防止剤:BASF製「Irganox 1010」
(マスターバッチBの製造)
上記の粉砕機による処理を行ったアセチル化セルロース繊維(絶対乾燥物として930g)、マスターバッチ用樹脂(PA6:600g)、マスターバッチ用樹脂(PP:600g)及び酸化防止剤(70g)を、ポリエチレン製の袋に入れ、振り交ぜて混合した。得られた混合物2200gを前述の二軸混練機に付属するフィーダー((株)テクノベル製)を用いて混練機に投入、加熱温度下で混練し、(a)アセチル化セルロース繊維に由来するアセチル化セルロースナノファイバー、(b)マスターバッチ用樹脂、及び(d)酸化防止剤を含むマスターバッチBを製造した。
(樹脂複合体Bの製造)
得られたマスターバッチB60gと希釈用樹脂(PP)120gとを混合し、前記二軸混練機にて加熱温度下で混練した。次いで溶融混練物をペレタイザーを用いてペレット化し、(a)アセチル化セルロース繊維に由来するアセチル化セルロースナノファイバー、(b)マスターバッチ用樹脂、(c)希釈用樹脂及び(d)酸化防止剤を含むペレット状の樹脂複合体(成形体)Bを得た。
(比較例3)
乾燥後のアセチル化セルロース繊維に対して、粉砕処理を行わず、この未粉砕のアセチル化セルロース繊維を用いたこと以外は、実施例7と同様に、マスターバッチおよび樹脂複合体の製造を行った。
Figure 0007303015000003
Figure 0007303015000004
表1及び2に示すように、変性セルロースナノファイバーと、樹脂とを含有する樹脂複合体であって、この変性セルロースナノファイバーは、平均繊維長0.7~1.3mmおよび長径が3mm以上の凝集物数が乾燥重量0.5gあたり30個以下の変性セルロース繊維が混練機内で解繊されてなるものである樹脂複合体について、曲げ強度においてニート樹脂からの補強性に優れる。
また、表1に示すように、使用するアセチル化セルロース繊維のDSを0.4から1.3の範囲で調整したパルプを使用して得られる樹脂複合体について、曲げ強度においてニート樹脂からの補強性に優れる。
2…粉砕機、3…変性セルロース繊維の綿状塊、4…投入口、6…本体、8…固定刃、10…粉砕室、12…回転刃、12a…ブレード、14…スクリーン、16…混練機、18…ケーシング、20…混練軸、22…パドル、24…投入口、26…排出口

Claims (3)

  1. 変性セルロースナノファイバーと、樹脂とを含有する樹脂複合体の製造方法であって、
    平均繊維長0.7~1.3mmおよび長径が3mm以上の凝集物数が乾燥重量0.5gあたり30個以下の変性セルロース繊維と、樹脂とを含む混合物を混練機で混練する工程を含み、
    前記変性セルロースナノファイバーは、前記変性セルロース繊維が前記混練機内で解繊されてなるものである、樹脂複合体の製造方法
  2. 前記変性セルロースナノファイバーは、アセチル化セルロースナノファイバーであり、前記アセチル化セルロースナノファイバーは、アセチル基置換度が0.4~1.3である請求項1記載の樹脂複合体の製造方法
  3. 樹脂複合体に用いられる変性セルロース繊維であって、
    平均繊維長0.7~1.3mmおよび長径が3mm以上の凝集物数が乾燥重量0.5gあたり30個以下である、変性セルロース繊維。
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