以下、本発明の実施形態に係る検査装置について、図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1及び図2は本発明の第1実施形態に係る検査装置1を示す図であって、図1が検査装置1の構成を概略的に示し、図2が検査装置1のブロック図を示す。検査装置1は、検査要部及びその周辺の周辺部を有する検査対象物10Aを検査する装置である。
検査装置1の構成の説明に先立って、図3及び図4を参照して、検査装置1の検査対象となる検査対象物10Aの一例について説明する。図3及び図4に示す検査対象物10Aの一例は、基板120上において半田部101によって接合された下面電極部品100が存在する領域部分である。この場合、検査要部が下面電極部品100に隠れた部分となる半田部101によって構成され、周辺部が下面電極部品100と基板120とによって構成される。
下面電極部品100は、BGA(Ball Grid Array)やLGA(Land Grid Array)などの下面に電極を有する表面実装型の、電子部品がパッケージに収納された部品である。下面電極部品100は、多数の半田ボール103を下面に備えている。各半田ボール103は、下面電極部品100の周囲に所定の配列で設けられ、いわゆるリフロー処理で溶融されて硬化した後、半田部101として、下面電極部品100とプリント基板120とを物理的並びに電気的に接続する。
半田部101は、プリント処理と実装処理とリフロー処理とを経て基板120に形成される。プリント処理では、基板120に設けられたランドW1上に半田102(クリーム半田)を印刷する工程が含まれる。また、実装処理では、プリントされた半田102の上に下面電極部品100を実装する工程が含まれる。また、リフロー処理では、下面電極部品100が実装されたプリント基板120を溶融炉内で加熱する工程が含まれる。図4(B)に示すように、印刷された半田102と半田ボール103とが加熱されて融合し、一体的に硬化する。この硬化した半田が半田部101となる。半田部101は、基板120のランドW1と下面電極部品100の電極W2とを電気的並びに物理的に接続する。
ここで、図4(B)に示すように、半田部101とランドW1との接合面104は、良品であれば、ランド幅Dと同じ接合幅dで仕上がっている。しかしながら、中には、接合幅dがランド幅Dよりも短くなっている不良品も少なくない。例えば図4(C)に示すように、接合幅dが狭くなっている場合や、全く接合していない場合等も存在し得る。いうまでもなく、それらの場合には、強度不足や接続不良が生じ得ることになる。そこで、個々の半田部101の良否、特に、接合面104の接合幅dを検査要部として精緻に判定するため、本実施形態の検査装置1が使用される。
図1及び図2に示すように、検査装置1は、周辺検査部2とX線検査部3とを備える。なお、検査装置1において、周辺検査部2とX線検査部3とは、それぞれが独立した装置であってもよい。
図5は、検査装置1に備えられる周辺検査部2の動作を説明する図である。周辺検査部2は、検査対象物10Aの周辺部(下面電極部品100及び基板120)の、三次元の形状に関する周辺形状データDAを取得するユニットである。本実施形態の周辺検査部2は、ステレオカメラ21と、第1ステージ22と、第1データ通信部23と、カメラ駆動部24と、第1ステージ駆動部25と、周辺検査制御部26とを含む。
第1ステージ22は、検査対象物10Aを載置するステージである。第1ステージ22は、コンベア機構で具体化されており、第1ステージ駆動部25によって、所定の水平方向に沿う搬送方向に移動可能になっている。以下の説明では、第1ステージ22の搬送方向に沿う方向をX方向、これと直交する水平方向をY方向、X方向及びY方向と直交する鉛直方向をZ方向と称する。第1ステージ22は、所定の検査位置で検査対象物10Aを停止させて保持することが可能なように構成されている。また、第1ステージ22は、検査が終了した検査対象物10Aを前記検査位置からX方向に搬送して、X線検査部3に向かって検査対象物10Aを搬出することが可能なように構成されている。
図1に示すように、第1ステージ22のX方向上流側には、検査対象物10Aを周辺検査部2の第1ステージ22に搬入する搬入コンベア4が設置されている。搬入コンベア4は、所定の工程を終了した後、検査対象物10Aを第1ステージ22上に搬入する。
ステレオカメラ21は、第1ステージ22上において前記検査位置に停止された検査対象物10Aの上方に位置するように配置され、カメラ駆動部24によって駆動される。ステレオカメラ21は、一定の間隔に並ぶ複数(例えば2つ)のレンズを構成する第1レンズ211及び第2レンズ212を有し、カメラ駆動部24の駆動によって検査対象物10Aを複数の異なる方向から撮像することで、ステレオ画像GSを取得する。ステレオ画像GSは、いわゆる両眼視差を再現した立体的な空間把握のできる画像であり、第1レンズ211を介した撮像によって取得された第1ステレオ画像GS1と、第2レンズ212を介した撮像によって取得された第2ステレオ画像GS2とを含む。
第1データ通信部23は、後述のX線検査部3の第2データ通信部34とデータ通信可能に接続されたインターフェイスである。第1データ通信部23は、周辺検査制御部26のデータ生成部264によって生成された周辺形状データDAを第2データ通信部34へ送信する。なお、図2に示すように、周辺検査部2とX線検査部3との間のデータ通信は、サーバーSVを介して行われるように構成してもよい。サーバーSVは、通信部SV1と長期記憶部SV2とを備える。サーバーSVの通信部SV1が、周辺検査部2の第1データ通信部23と、X線検査部3の第2データ通信部34との間の通信経路を構築する。サーバーSVの長期記憶部SV2は、周辺検査制御部26のデータ生成部264によって生成された周辺形状データDAを、長期間にわたって記憶することが可能な記憶部である。長期記憶部SV2に記憶された周辺形状データDAは、周辺検査部2の検査履歴として扱うことができる。また、周辺形状データDAは、詳細については後述するが、X線検査部3によるX線検査時の再構成処理の事前情報として扱われる。X線検査部3によるX線検査は、周辺検査部2の検査に対して連続的に行われてもよいし、所定期間後に行われてもよい。周辺検査部2の検査に対して所定期間後にX線検査部3によるX線検査が行われる場合には、サーバーSVの長期記憶部SV2から周辺形状データDAが取り出される。
周辺検査制御部26は、例えば制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)や一時的にデータを記憶するフラッシュメモリ等の記憶装置が内蔵されたマイクロコンピュータからなる。周辺検査制御部26は、前記制御プログラムが読み出されることにより、各種の演算やデータの生成及び記憶を実行すると共に、第1データ通信部23、カメラ駆動部24及び第1ステージ駆動部25を制御する。周辺検査制御部26は、第1通信制御部261と、第1搬送制御部262と、カメラ制御部263と、データ生成部264と、第1記憶部265とを含む。
第1通信制御部261は、第1データ通信部23を制御することにより、当該第1データ通信部23とX線検査部3の第2データ通信部34との間のデータ通信、又はサーバーSVの通信部SV1を介したデータ通信を制御する。第1搬送制御部262は、第1ステージ駆動部25を制御することにより、第1ステージ22をX方向に移動させる。カメラ制御部263は、カメラ駆動部24を制御することにより、ステレオカメラ21に検査対象物10Aのステレオ画像GSを取得させる。
データ生成部264は、ステレオカメラ21により取得されたステレオ画像GSに基づいて、検査対象物10Aの周辺部(下面電極部品100及び基板120)の三次元形状に関する周辺形状データDAを生成する。データ生成部264は、ステレオ画像GSを構成する第1ステレオ画像GS1と第2ステレオ画像GS2との2枚の画像の各部についてマッチング(ステレオマッチング)を行うことで、2枚の画像間で対応する部位の位置の差を表す視差を推定する。ステレオマッチングによって2枚の画像GS1,GS2上の各部位の視差を推定した後、データ生成部264は、三角測距の原理に基づいて周辺形状データDAを生成する。
具体的に、データ生成部264は、図5に示すように、ステレオ画像GSに基づいて、基板上面高さ位置データDA1と、部品上面高さ位置データDA2と、部品下面高さ位置データDA3と、部品下面端部位置データDA4とを含む高さ位置データを、周辺形状データDAとして生成する。基板上面高さ位置データDA1は、検査対象物10Aの周辺部を構成する基板120の上面の高さ位置に関する、基板120の下面からの距離データである。部品上面高さ位置データDA2は、検査対象物10Aの周辺部を構成する下面電極部品100の上面の高さ位置に関する、基板120の下面からの距離データである。部品下面高さ位置データDA3は、下面電極部品100の下面の高さ位置に関する、基板120の下面からの距離データである。部品下面端部位置データDA4は、下面電極部品100の下面における水平方向の端部の、基板120の上面に対する位置を示すデータである。
データ生成部264は、ステレオカメラ21で取得されたステレオ画像GSに基づくことによって、検査対象物10Aにおける周辺部(下面電極部品100及び基板120)の三次元形状に関する正確な周辺形状データDAを生成することができる。データ生成部264により生成された周辺形状データDAは、第1記憶部265に記憶されると共に、第1データ通信部23を介してX線検査部3に送信される。データ生成部264による周辺形状データDAの生成が終了すると、第1搬送制御部262は、第1ステージ駆動部25を制御して第1ステージ22に、検査対象物10AをX線検査部3へ搬出させる。
基板120上において半田部101によって接合された下面電極部品100が存在する領域部分となる検査対象物10Aでは、半田部101は、下面電極部品100に隠れている。このような、下面電極部品100に隠れた部分となる検査要部としての半田部101は、X線検査部3によって適切に検査することができる。
図1及び図2に加えて図6、図7及び図8を参照して、X線検査部3について説明する。図6は、検査装置1に備えられるX線検査部3の動作を説明する図である。図7は、X線検査部3の再構成部395の動作を説明する図である。図8は、再構成部395の演算の様子を説明する図である。
X線検査部3は、周辺検査部2によって取得された周辺形状データDAを参照しつつ、検査要部としての半田部101を含む検査対象物10A全体のX線画像からなる検査画像GI(図7(C)参照)を生成するユニットである。X線検査部3は、X線源31と、X線検出器32と、第2ステージ33と、第2データ通信部34と、X線源駆動部35と、検出器駆動部36と、第2ステージ駆動部37と、表示部38と、X線検査制御部39と、を含む。
第2ステージ33は、検査対象物10Aを載置するステージである。第2ステージ33は、コンベア機構で具体化されており、第2ステージ駆動部37によって、X方向及びY方向を含む水平面上を移動可能になっている。第2ステージ33は、所定の検査位置で検査対象物10Aを停止させて保持することが可能なように構成されている。また、第2ステージ33は、検査が終了した検査対象物10Aを前記検査位置からX方向に搬送して、X線検査部3から検査対象物10Aを搬出することが可能なように構成されている。
図1に示すように、第2ステージ33のX方向下流側には、検査対象物10Aを第2ステージ33からX線検査部3の外側に搬出する搬出コンベア5が設置されている。搬出コンベア5は、X線検査部3で検査処理が終了した検査対象物10Aを第2ステージ33から搬出する。
X線源31は、第2ステージ33上の検査対象物10Aの上方に位置するように配置され、X線源駆動部35によって駆動される。X線源31は、第2ステージ33の上方からX線を第2ステージ33上の検査対象物10Aに照射するものである。X線源31から放射されたX線は、一部が検査対象物10A等に吸収されて減衰した状態で、当該検査対象物10Aを透過する。
X線検出器32は、第2ステージ33の下方に位置するように配置され、検出器駆動部36によって駆動される。X線検出器32は、第2ステージ33上の検査対象物10Aを透過したX線を検出し、当該透過したX線の強度に基づく投影データbm(図8参照)を出力するものである。
X線検出器32は、複数の検出素子とデータ収集回路とを有する。X線検出器32において複数の検出素子は、検査対象物10Aを透過したX線を検出し、検出されたX線の強度に応じた波高値を有する電気信号を発生する。X線検出器32においてデータ収集回路は、複数の検出素子からの電気信号に基づいてデジタルデータからなる投影データbmを生成する。データ収集回路は、例えば、積分回路とA/D変換器とが実装された半導体集積回路により実現される。積分回路は、複数の検出素子からの電気信号を積分し、積分信号を生成する。A/D変換器は、積分回路により生成された積分信号をA/D変換し、当該積分信号の波高値に対応するデータ値を有するデジタルデータを生成する。このデジタルデータが投影データbmとなる。
X線検出器32から出力された投影データbmに基づいて、検査対象物10AのX線画像を構成することができる。X線検出器32は、第2ステージ33の下方において、検出器駆動部36によってX方向及びY方向を含む水平面上を移動可能になっている。X線検出器32は、第2ステージ33上の検査対象物10Aを透過したX線を検出することが可能となるように、X線源31によるX線の放射方向に対応して、検出器駆動部36によって水平面上を移動される。なお、X線検出器32から出力された投影データbmは、X線検査制御部39に入力される。
第2データ通信部34は、周辺検査部2の第1データ通信部23とデータ通信可能に接続されたインターフェイスである。第2データ通信部34は、第1データ通信部23から送信された周辺形状データDAを受信する。第2データ通信部34によって受信された周辺形状データDAは、X線検査制御部39に入力される。
表示部38は、液晶ディスプレイ等で具体化され、例えば、後述のX線検査制御部39の再構成部395により生成された検査画像GIを表示する。
X線検査制御部39は、例えば制御プログラムを記憶するROMや一時的にデータを記憶するフラッシュメモリ等の記憶装置が内蔵されたマイクロコンピュータからなる。X線検査制御部39は、前記制御プログラムが読み出されることにより、各種の演算やデータの生成及び記憶を実行すると共に、第2データ通信部34、X線源駆動部35、検出器駆動部36、第2ステージ駆動部37及び表示部38を制御する。X線検査制御部39は、第2通信制御部391と、第2搬送制御部392と、透過方向設定部393と、撮像制御部394と、再構成部395と、判定部396と、表示制御部397と、第2記憶部398と、を含む。
第2通信制御部391は、第2データ通信部34を制御することにより、当該第2データ通信部34と周辺検査部2の第1データ通信部23との間のデータ通信、又はサーバーSVの通信部SV1を介したデータ通信を制御する。第2通信制御部391は、第1データ通信部23を介して周辺検査部2から送信された周辺形状データDAを、第2データ通信部34に受信させる。第2データ通信部34により受信された周辺形状データDAは、第2記憶部398に一時的に記憶される。
第2搬送制御部392は、第1ステージ22から第2ステージ33への検査対象物10Aの搬入時、並びに、第2ステージ33から搬出コンベア5への検査対象物10Aの搬出時において、第2ステージ駆動部37を制御することにより、第2ステージ33をX方向に移動させる。
表示制御部398は、表示部38を制御することにより、当該表示部38に各種情報を表示させる。
透過方向設定部393は、X線検出器32によるX線の検出に際し、検査対象物10Aに対するX線の透過方向ψ(R,θ)を複数設定する。図4及び図6に示すように、透過方向設定部393は、検査対象物10Aにおける半田部101とランドW1との接合面104に対して斜めに交差する透過方向ψ(R,θ)を複数設定する。具体的には、透過方向設定部393は、複数の方位Rと傾斜角度θとによって透過方向ψ(R,θ)を設定する。方位Rは、検査対象物10Aにおける接合面104の中心Oを通る垂直軸V回りの角度であり、上方からの平面視で反時計回りに角度をとっている。この中心OをX方向に通る線をX方向の座標軸Xaとし、中心Oを原点として搬送方向上流側を(-)、下流側お(+)とした場合、方位Rの範囲は、座標軸Xaの上流側から下流側へ平面視で反時計回りに0°≦R<360°に設定される。また、傾斜角度θは、接合面104の中心Oを通るY方向の座標軸Ya回りの角度であり、搬送方向の上流側(-)を左側にして見たときに時計回りに角度をとっている。傾斜角度θの範囲は、垂直軸Vから接合面104へ0°≦θ<90°に設定される。傾斜角度θは、全方位Rにわたって、+方向として処理される。
撮像制御部394は、X線源31と検査対象物10AとX線検出器32との位置関係が、透過方向設定部393により設定された透過方向ψ(R,θ)を満たすように、検出器駆動部36を介してX線検出器32を水平面上で移動させると共に、第2ステージ駆動部37を介して第2ステージ33を水平面上で移動させる。更に、撮像制御部394は、X線源駆動部35を介してX線源31によるX線の放射を制御すると共に、検出器駆動部36を介してX線検出器32によるX線の検出を制御する。これにより、撮像制御部394は、透過方向設定部393により設定された透過方向ψ(R,θ)毎の投影データbmをX線検出器32から出力させる。
再構成部395は、X線検出器32から出力された投影データbmに基づいて構成される検査対象物10AのX線画像に対して再構成処理を行って、検査画像GIを生成するものである。図7に示すように、再構成部395は、検査対象物10Aの全体が収まる範囲を再構成対象領域ARとして設定し(図7(A))、当該再構成対象領域ARを複数のセルARCに分割する(図7(B))。再構成部395は、検査画像GI(図7(C))に求められる解像度に応じて、再構成対象領域ARを構成するセルARCの数を設定する。
再構成対象領域ARを構成する各セルARCのX線の減衰率xnと、各セルARC内をX線が透過する距離を示す透過距離amnと、X線検出器32から出力される透過方向ψ(R,θ)毎の投影データbmとの関係は、下記式(1)で表すことができる。
なお、「m」は、X線検出器32においてX線を検出する検出素子の数(検出素子数)に透過方向ψ(R,θ)の設定数を乗じた数値を示す。また、「n」は、再構成対象領域ARを構成するセルARCの数(セル数)を示す。
再構成部395は、上記式(1)を用いて、透過方向ψ(R,θ)毎の投影データbmと、X線の透過距離amnとに基づいて、再構成対象領域ARを構成するセルARC毎のX線の減衰率xnを、逐次近似アルゴリズムに従い演算する。再構成部395は、この演算によって画像の再構成を行って検査画像GIを生成する。
逐次近似アルゴリズムとしては、例えば、加法的ART(Additive Algebraic Reconstruction Technique)に従ったアルゴリズムを挙げることができる。加法的ARTの具体的な反復式は、下記式(2)で表される。
なお、式(2)中、「x」は再構成対象領域ARを構成する各セルARCのX線の減衰率を示し、「a」は各セルARC内をX線が透過する透過距離を示し、「b」はX線検出器32から出力される透過方向ψ(R,θ)毎の投影データを示す。また、式(2)中、「k」は再構成部395による再構成処理の反復回数を示し、「i」は式(1)における「m」に相当する内部反復回数を示し、「j」は式(1)における再構成対象領域ARを構成するセルARCのセル数nに相当する。
再構成部395により実行される、式(1)を用いた画像の再構成処理について、図8を参照しつつ簡易なモデルで具体的に説明する。図8に示す例においては、再構成部395は、再構成対象領域ARを4つのセルARC1,ARC2,ARC3,ARC4に分割し、X線検出器32が3つの検出素子を有しており、透過方向ψ(R,θ)が2つの方向に設定されている。すなわち、図8に示す例においては、式(1)におけるセル数nが「4」であり、式(1)におけるX線検出器32の検出素子数に透過方向ψ(R,θ)の設定数を乗じた数値mが「6」である。この場合、下記式(3)で示されるように、再構成対象領域ARを構成する各セルARCのX線の減衰率xnは、Xn=(x1,x2,x3,x4)で表される。また、各セルARC内をX線が透過する透過距離amnは、amn=(a11,a12,・・・,a33,a34)、並びに、amn=(a41,42,・・・,a63,a64)で表される。また、X線検出器32から出力される透過方向ψ(R,θ)毎の投影データbmは、bm=(b1,b2,b3)、並びに、bm=(b4,b5,b6)で表される。
ここで、既述の通り、透過方向設定部393により設定される検査対象物10Aに対するX線の透過方向ψ(R,θ)において、傾斜角度θの範囲は0°≦θ<90°に設定される。このため、検査対象物10Aに対するX線の透過方向ψ(R,θ)の設定範囲に、制限があることになる。この結果、上記式(1)を用いたX線の減衰率xnの演算によって再構成部395が検査画像GIを生成する際に、投影データbmが不足する場合がある。この場合、上記式(1)を満足する、再構成対象領域ARを構成するセルARC毎のX線の減衰率xnは、無数に存在する。このため、検査対象物10Aの検査要部(半田部101)に関して十分な画質の検査画像GIを生成するための画像再構成を行うことは困難である。
そこで、再構成部395は、加法的ARTの式(2)に従って、再構成対象領域ARを構成するセルARC毎のX線の減衰率xnを演算する際に、周辺検査部2により取得された周辺形状データDAを事前情報として参照する。具体的には、再構成部395は、図7(B)に示すように、再構成対象領域ARを構成する複数のセルARCのうち、周辺形状データDAで示される周辺部(下面電極部品100及び基板120)に属する少なくとも一部の周辺セルARCBのX線の減衰率xnについては、事前情報として所定の固定値(例えば「0;ゼロ」)に設定する。換言すると、再構成部395は、周辺セルARCBの減衰率xnについては固定値に設定した上で、検査対象物10Aの検査要部(半田部101)に対応した要部セルARCAの減衰率xnを演算することになる。
図5及び図7(B)を参照してより具体的に説明すると、再構成部395は、再構成対象領域ARを構成する複数のセルARCのうち、基板上面高さ位置データDA1で示される位置よりも下側のセルと、部品下面高さ位置データDA3で示される位置よりも上側のセルとを周辺セルARCBとして認識する。この場合、部品上面高さ位置データDA2で示される位置よりも上側のセルも周辺セルARCBに含まれる。更に、再構成部395は、部品下面端部位置データDA4で示される位置よりも外側のセルについても周辺セルARCBとして認識する。そして、再構成部395は、再構成対象領域ARを構成するセルARC毎のX線の減衰率xnを演算する場合に、上記のようにして認識した周辺セルARCBの減衰率xnを、事前情報として所定の固定値に設定する。
これにより、検査対象物10Aに対するX線の透過方向ψ(R,θ)の設定範囲に制限がある等の理由で投影データbmが不足している状況下においても、再構成対象領域ARを構成するセルARCのうち、周辺セルARCB以外の検査要部(半田部101)に対応した要部セルARCAにおけるX線の減衰率xnとして、より適切な減衰率xnを導出することができる。このため、再構成部395は、検査対象物10Aの検査要部(半田部101)に関して十分な画質の検査画像GIを生成することが可能となる。
また、再構成部395が画像の再構成を行う際に周辺形状データDAを事前情報として参照することによって、周辺形状データDAを参照しない場合と比較して、少ない投影データbmで検査対象物10Aの検査要部(半田部101)に関して十分な画質の検査画像GIを生成することができる。これにより、検査対象物10Aに対するX線の透過方向ψ(R,θ)毎の投影データbmの取得に要するトータル時間、並びに画像の再構成に要する時間を短縮することが可能であると共に、検査対象物10AのX線の被曝量を低減することができる。
再構成部395が画像の再構成を行う際に周辺形状データDAを事前情報として参照することによって実現される上記の作用効果は、図9に示すサンプルデータDSMを用いた画像の再構成結果によって実証されている。図9に示すサンプルデータDSMは、矩形状の再構成対象領域が10行/10列の合計100個のセルに分割されたものであって、再構成対象領域の中央に黒色の矩形環状の要部セルが配置されたものである。サンプルデータDSMにおいては、矩形環状の要部セルに囲まれた4個のセルと、要部セルの周囲に存在する2行/2列ずつのセルとが周辺セルとして扱われる。
図9に示すように、サンプルデータDSMについての画像の再構成を、事前情報を付加することなく行った場合、再構成処理の反復回数が50回に達しても、矩形環状の要部セルに対応した黒色の領域部分が十分な画質で再現されていない。
これに対し、要部セルに対して上下2行ずつの周辺セルのX線の減衰率については事前情報として固定値を設定した状態で、サンプルデータDSMについての画像の再構成を行った場合、矩形環状の要部セルに対応した黒色の領域部分が十分な画質で再現される。
再構成部395により生成された検査画像GIは、第2記憶部398に記憶されると共に、表示制御部397によって制御された表示部38に表示される。
判定部396は、再構成部395により生成された検査画像GIに基づいて、検査対象物10Aにおける検査要部としての半田部101の良否を判定する。具体的には、判定部396は、検査画像GIを画像処理することにより、半田部101における接合面104の接合幅d(図4参照)を算出し、その算出した接合幅dに基づき半田部101の良否を判定する。
検査装置1の検査対象は、基板120上において半田部101によって接合された下面電極部品100が存在する領域部分となる、上記の検査対象物10Aに限定されるものではない。検査装置1の検査対象は、図10及び図11に示す検査対象物10Bであってもよい。図10及び図11に示す検査対象物10Bは、基板120上においてフィレット112(半田部)によって接合されたリード111を有したリード部品110が存在する領域部分である。この場合、検査要部がリード111に隠れた部分となるフィレット112によって構成され、周辺部がリード部品110と基板120とによって構成される。
検査対象物10Bにおいては、略矩形状に形成されたリード部品110の各辺から複数のリード111が外方に突出するように設けられている。リード111は、リード部品110の外方に突出する突出部111aと、突出部111aから屈曲して下方に垂下する脚部111bと、脚部111bの下端から屈曲して、先端側がリード部品110の外方(リード部品110と反対側の方向)に延びるヒール部111cと、を有している。リード111は、ヒール部111cの下面が半田付けされる。溶融した半田は、リード111の背面111dに濡れ拡がって、半田部としてのフィレット112となる。
検査対象物10Bの検査において、フィレット112の良否は、背面111dに濡れ拡がったフィレット112の高さ(フィレット高さ)Hが基準高さHsに至っているか否かによって決定される。図11(A),(B)に示す例は、それぞれ半田(フィレット112)の量が幾分少ない場合、多い場合であるが、何れもフィレット112が基準となる高さHsを越えていて、良品とされる場合である。他方、図11(C)の場合、リード111の背面111dに対してフィレット112が充分に濡れ拡がっておらず、強度不足や接続不良を来す不良品と判定されるものである。
検査対象物10Bを検査する場合の周辺検査部2及びX線検査部3の動作について、図12及び図13を参照して以下に説明する。図12は、検査対象物10Bを検査する場合における周辺検査部2の動作を説明する図である。図13は、検査対象物10Bを検査する場合におけるX線検査部3の動作を説明する図である。
搬入コンベア4によって検査対象物10Bが周辺検査部2の第1ステージ22上に搬入されると、ステレオカメラ21は、カメラ駆動部24の駆動によって検査対象物10Bのステレオ画像GSを取得する。そして、図12に示すように、データ生成部264は、ステレオカメラ21により取得されたステレオ画像GSに基づいて、検査対象物10Bの周辺部(リード部品110及び基板120)の三次元形状に関する周辺形状データDAを生成する。具体的に、データ生成部264は、ステレオ画像GSに基づいて、基板上面高さ位置データDA1と、部品上面高さ位置データDA2と、リード上面高さ位置データDA3と、リード外側面位置データDA4とを含む位置データを、周辺形状データDAとして生成する。基板上面高さ位置データDA1は、検査対象物10Bの周辺部を構成する基板120の上面の高さ位置に関する、基板120の下面からの距離データである。部品上面高さ位置データDA2は、検査対象物10Bの周辺部を構成するリード部品110の上面の高さ位置に関する、基板120の下面からの距離データである。リード上面高さ位置データDA3は、リード111のフィレット112との接合部分、すなわちヒール部111cの上面の高さ位置に関する、基板120の下面からの距離データである。リード外側面位置データDA4は、リード111の外方側の側面、すなわち脚部111bの外側面(背面111dとは反対側の面)の位置に関する、リード部品110の端縁からの距離データである。
データ生成部264は、ステレオカメラ21で取得されたステレオ画像GSに基づくことによって、検査対象物10Bにおける周辺部(リード部品110及び基板120)の三次元形状に関する正確な周辺形状データDAを生成することができる。データ生成部264により生成された周辺形状データDAは、第1記憶部265に記憶されると共に、第1データ通信部23を介してX線検査部3に送信される。データ生成部264による周辺形状データDAの生成が終了すると、第1搬送制御部262は、第1ステージ駆動部25を制御して第1ステージ22に、検査対象物10BをX線検査部3へ搬出させる。
基板120上においてフィレット112によって接合されたリード部品110が存在する領域部分となる検査対象物10Bでは、フィレット112は、リード111の背面111dに隠れている。このような、リード111の背面111dに隠れた部分となる検査要部としてのフィレット112は、X線検査部3によって適切に検査することができる。
X線検査部3の第2ステージ33上に検査対象物10Bが載置されると、透過方向設定部393は、X線検出器32によるX線の検出に際し、検査対象物10Bに対するX線の透過方向ψ(R,θ)を複数設定する。そして、撮像制御部394は、X線源31と検査対象物10BとX線検出器32との位置関係が、透過方向設定部393により設定された透過方向ψ(R,θ)を満たすように、検出器駆動部36を介してX線検出器32を水平面上で移動させると共に、第2ステージ駆動部37を介して第2ステージ33を水平面上で移動させる。更に、撮像制御部394は、X線源駆動部35を介してX線源31によるX線の放射を制御すると共に、検出器駆動部36を介してX線検出器32によるX線の検出を制御する。これにより、撮像制御部394は、透過方向設定部393により設定された透過方向ψ(R,θ)毎の投影データbmをX線検出器32から出力させる。
図13に示すように、再構成部395は、検査対象物10Bの全体が収まる範囲を再構成対象領域ARとして設定し(図13(A))、当該再構成対象領域ARを複数のセルARCに分割する(図13(B))。更に、再構成部395は、上記式(1)を用いて、透過方向ψ(R,θ)毎の投影データbmと、X線の透過距離amnとに基づいて、再構成対象領域ARを構成するセルARC毎のX線の減衰率xnを、逐次近似アルゴリズムに従い演算する。この際、再構成部395は、周辺検査部2により取得された周辺形状データDAを事前情報として参照する。具体的には、再構成部395は、図13(B)に示すように、再構成対象領域ARを構成する複数のセルARCのうち、周辺形状データDAで示される周辺部(リード部品110及び基板120)に属する少なくとも一部の周辺セルARCBのX線の減衰率xnについては、事前情報として所定の固定値(例えば「0;ゼロ」)に設定する。換言すると、再構成部395は、周辺セルARCBの減衰率xnについては固定値に設定した上で、検査対象物10Bの検査要部(フィレット112)に対応した要部セルARCAの減衰率xnを演算することになる。
図12及び図13(B)を参照してより具体的に説明すると、再構成部395は、再構成対象領域ARを構成する複数のセルARCのうち、基板上面高さ位置データDA1で示される位置よりも下側のセルと、リード上面高さ位置データDA3で示される位置よりも上側で且つリード外側面位置データDA4で示される位置よりも外側のセルとを、周辺セルARCBとして認識する。更に、再構成部395は、部品上面高さ位置データDA2で示される位置よりも上側のセルについても周辺セルARCBとして認識する。そして、再構成部395は、再構成対象領域ARを構成するセルARC毎のX線の減衰率xnを演算する場合に、上記のようにして認識した周辺セルARCBの減衰率xnを、事前情報として所定の固定値に設定する。
これにより、検査対象物10Bに対するX線の透過方向ψ(R,θ)の設定範囲に制限がある等の理由で投影データbmが不足している状況下においても、再構成対象領域ARを構成するセルARCのうち、周辺セルARCB以外の検査要部(フィレット112)に対応した要部セルARCAにおけるX線の減衰率xnとして、より適切な減衰率xnを導出することができる。このため、再構成部395は、検査対象物10Bの検査要部(フィレット112)に関して十分な画質の検査画像を生成することが可能となる。
次に、図14のフローチャートを参照して、本実施形態に係る検査装置1の動作について説明する。
搬入コンベア4によって検査対象物10A,10Bが周辺検査部2の第1ステージ22上に搬入されると(ステップs1)、周辺検査部2は、周辺形状データDAを取得する(ステップs2)。この周辺形状データDAは、第1データ通信部23を介してX線検査部3の第2データ通信部34へ送信される(ステップs3)。また、周辺検査部2による周辺形状データDAの取得が終了すると、第1搬送制御部262は、第1ステージ駆動部25を制御して第1ステージ22に、検査対象物10A,10BをX線検査部3へ搬出させる(ステップs4)。
検査対象物10A,10BがX線検査部3の第2ステージ33上に搬入されると(ステップs5)、透過方向設定部393は、検査対象物10A,10Bに対するX線の透過方向ψ(R,θ)を複数設定する(ステップs6)。そして、ステップs7において、撮像制御部394は、X線源31と検査対象物10BとX線検出器32との位置関係が、透過方向設定部393により設定された透過方向ψ(R,θ)を満たすように、検出器駆動部36を介してX線検出器32を水平面上で移動させると共に、第2ステージ駆動部37を介して第2ステージ33を水平面上で移動させる。更に、撮像制御部394は、X線源駆動部35を介してX線源31によるX線の放射を制御すると共に、検出器駆動部36を介してX線検出器32によるX線の検出を制御する。これにより、撮像制御部394は、透過方向設定部393により設定された透過方向ψ(R,θ)毎の投影データbmをX線検出器32から出力させる。
ステップs7に続くステップs8において、撮像制御部394は、透過方向設定部393により設定された全ての透過方向ψ(R,θ)について、X線検出器32から投影データbmを出力させたか否かを判定する。全ての透過方向ψ(R,θ)についての投影データbmが出力されると、再構成部395は、画像の再構成処理を実行する(ステップs9)。再構成部395は、検査対象物10A,10Bに対応した再構成対象領域ARを構成するセルARC毎のX線の減衰率xnを、逐次近似アルゴリズムに従い演算する。この際、再構成部395は、再構成対象領域ARを構成する複数のセルARCのうち、周辺形状データDAで示される周辺部に属する少なくとも一部の周辺セルARCBのX線の減衰率xnについては、事前情報として所定の固定値に設定する。再構成部395は、画像の再構成を行うことによって、検査対象物10A,10Bに対応した検査画像を生成する。
再構成部395により生成された検査画像は、表示制御部397の制御によって表示部38に表示される(ステップs10)。また、判定部396は、再構成部395により生成された検査画像に基づいて、検査対象物10A,10Bにおける検査要部の良否を判定する(ステップ11)。このようなステップs1からステップs11で示される各処理が実行されることにより、検査対象物10A,10Bの検査を行うことができる。
[第2実施形態]
次に、図15及び図16を参照して、本発明の第2実施形態に係る検査装置1Aについて説明する。図15及び図16は第2実施形態に係る検査装置1Aを示す図であって、図15が検査装置1Aの構成を概略的に示し、図16が検査装置1Aのブロック図を示す。
検査装置1Aは、周辺検査部2AとX線検査部3とを備える。検査装置1Aは、周辺検査部2Aの構成が上記の周辺検査部2と異なること以外は第1実施形態に係る検査装置1と同様に構成される。すなわち、検査装置1Aに備えられるX線検査部3の構成は、第1実施形態に係る検査装置1と同様である。このため、検査装置1AのX線検査部3についての詳細な説明は省略する。また、検査装置1Aの検査対象としては、第1実施形態に係る検査装置1と同様に、下面電極部品100を含む検査対象物10A、並びに、リード部品110を含む検査対象物10Bなどを挙げることができる。まず、検査対象物10Aの検査について説明する。
検査装置1Aに備えられる周辺検査部2Aは、検査対象物10Aの周辺部(下面電極部品100及び基板120)の、三次元の形状に関する周辺形状データDAを取得するユニットである。本実施形態の周辺検査部2Aは、照明部2A0と、撮像部2A1と、第1ステージ2A2と、第1データ通信部2A3と、照明駆動部2A41と、撮像駆動部2A42と、第1ステージ駆動部2A5と、周辺検査制御部2A6とを含む。
第1ステージ2A2は、検査対象物10Aを載置するステージである。第1ステージ2A2は、コンベア機構で具体化されており、第1ステージ駆動部2A5によってX方向に移動可能になっている。第1ステージ2A2は、所定の検査位置で検査対象物10Aを停止させて保持することが可能なように構成されている。また、第1ステージ2A2は、検査が終了した検査対象物10Aを前記検査位置からX方向に搬送して、X線検査部3に向かって検査対象物10Aを搬出することが可能なように構成されている。
図15に示すように、第1ステージ2A2のX方向上流側には、検査対象物10Aを周辺検査部2Aの第1ステージ2A2に搬入する搬入コンベア4が設置されている。搬入コンベア4は、所定の工程を終了した後、検査対象物10Aを第1ステージ2A2上に搬入する。
照明部2A0は、第1ステージ2A2上において前記検査位置に停止された検査対象物10Aの斜め上方に位置するように配置され、照明駆動部2A41によって駆動される。照明部2A0は、第1ステージ2A2上の検査対象物10Aに照明光L1を照射する。図17は周辺検査部2Aの照明部2A0を説明する図であり、図18は照明部2A0が照射する照明光L1を説明する図である。
図17に示すように、照明部2A0は、A方向(第1方向)に延びる長手の基部2A01と、その基部2A01に設けられた複数の発光素子2A02から構成される複数の発光素子列2A0Lと、を含む。発光素子2A02は、矩形状の発光ダイオードである。この発光素子2A02が所定の間隔を隔ててA方向に直線状に複数配列されることにより、A方向に延びる発光素子列2A0Lが構成される。基部2A01上において、A方向に延びる発光素子列2A0Lが、A方向に直交するB方向(第2方向)に並んで複数配置されている。
照明部2A0は、B方向に並ぶ複数の発光素子列2A0Lを、発光素子列2A0L毎に独立して点灯及び消灯することが可能なように構成されている。なお、図17に示す例では、ハッチングが付された5つの発光素子列2A0Lを構成する発光素子2A02を発光させた状態が示されている。
照明部2A0は、複数の発光素子列2A0Lの中から、互いに等間隔で離間した少なくとも3つの発光素子列2A0Lを組み合わせて発光させる。これにより、照明部2A0は、B方向に略正弦波状の明るさの分布を有する周期的な明暗パターン2A0P(図18(B)参照)を持つ照明光L1を照射するように構成される。例えば、図18に示すように、照明部2A0は、B方向に並ぶ複数の発光素子列2A0Lのうち、互いに等間隔で離間した3つの発光素子列2A0Lを組み合わせて発光させる。図18(A)に示すように、3つの発光素子列2A0Lを構成する発光素子2A02からそれぞれ出射された光は、発光素子2A02からの距離に応じた光の減衰により、B方向について各発光素子2A02の配置位置を中心とした等方的な明るさの分布を形成する。このため、図18(B)に示すように、3つの発光素子列2A0Lを構成する発光素子2A02からそれぞれ出射された光を重ね合わせることによって、B方向の所定範囲RA内において略正弦波状の明るさの分布を有する周期的な明暗パターン2A0Pが形成される。すなわち、照明部2A0は、第1ステージ2A2上の検査対象物10Aに、周期的な明暗パターン2A0Pを持つ照明光L1を照射する。
撮像部2A1は、第1ステージ2A2上の検査対象物10Aの上方に位置するように配置され、撮像駆動部2A42によって駆動される。撮像部2A1は、照明部2A0による照明光L1が照射された検査対象物10Aを撮像する。
第1データ通信部2A3は、X線検査部3の第2データ通信部34とデータ通信可能に接続されたインターフェイスである。第1データ通信部2A3は、周辺検査制御部2A6のデータ生成部2A66によって生成された周辺形状データDA(後記の図19)を第2データ通信部34へ送信する。なお、第1実施形態に係る検査装置1と同様に、周辺検査部2AとX線検査部3との間のデータ通信は、サーバーSVを介して行われるように構成してもよい。
周辺検査制御部2A6は、例えば制御プログラムを記憶するROMや一時的にデータを記憶するフラッシュメモリ等の記憶装置が内蔵されたマイクロコンピュータからなる。周辺検査制御部2A6は、前記制御プログラムが読み出されることにより、各種の演算やデータの生成及び記憶を実行すると共に、第1データ通信部2A3、照明駆動部2A41、撮像駆動部2A42、及び第1ステージ駆動部2A5を制御する。図19は、周辺検査制御部2A6の制御によって実行される周辺検査部2Aの動作を説明する図である。
周辺検査制御部2A6は、第1通信制御部2A61と、第1搬送制御部2A62と、照明制御部2A63と、周辺撮像制御部2A64と、位相シフト部2A65と、データ生成部2A66と、第1記憶部2A67とを含む。
第1通信制御部2A61は、第1データ通信部2A3を制御することにより、当該第1データ通信部2A3とX線検査部3の第2データ通信部34との間のデータ通信、又はサーバーSVの通信部SV1を介したデータ通信を制御する。第1搬送制御部2A62は、第1ステージ駆動部2A5を制御することにより、第1ステージ2A2をX方向に移動させる。
照明制御部2A63は、照明駆動部2A41を制御することにより、照明部2A0による照明光L1の照射を制御する。位相シフト部2A65は、第1ステージ2A2上の検査対象物10Aに対する照明光L1の明暗パターン2A0Pの位置を、明暗パターン2A0Pの繰り返し方向(B方向)に相対的に移動させる位相シフト動作を行う。周辺撮像制御部2A64は、撮像駆動部2A42を制御することにより、位相シフト部2A65の位相シフト動作毎に、照明光L1が照射された検査対象物10Aを撮像部2A1に撮像させる。これにより、撮像部2A1は、図19に示すように、照明光L1の明暗パターン2A0Pの位置が互いに異なる複数の位相シフト画像GPを取得する。図19に示す例では、撮像部2A1は、照明光L1の明暗パターン2A0Pの位置が互いに異なる第1位相シフト画像GP1と第2位相シフト画像GP2とを取得する。
データ生成部2A66は、図19に示すように、撮像部2A1により取得された複数の位相シフト画像GPに基づいて、検査対象物10Aの周辺部(下面電極部品100及び基板120)の三次元形状に関する周辺形状データDAを生成する。具体的に、データ生成部2A66は、複数の位相シフト画像GPに基づいて、基板上面高さ位置データDA1と、部品上面高さ位置データDA2と、部品下面端部位置データDA4とを含む高さ位置データを、周辺形状データDAとして生成する。基板上面高さ位置データDA1は、検査対象物10Aの周辺部を構成する基板120の上面の高さ位置に関する、基板120の下面からの距離データである。部品上面高さ位置データDA2は、検査対象物10Aの周辺部を構成する下面電極部品100の上面の高さ位置に関する、基板120の下面からの距離データである。部品下面端部位置データDA4は、下面電極部品100の下面における水平方向の端部の、基板120の上面に対する位置を示すデータである。
データ生成部2A66は、撮像部2A1で取得された複数の位相シフト画像GPに基づくことによって、検査対象物10Aにおける周辺部(下面電極部品100及び基板120)の三次元形状に関する正確な周辺形状データDAを生成することができる。データ生成部2A66により生成された周辺形状データDAは、第1記憶部2A67に記憶されると共に、第1データ通信部2A3を介してX線検査部3に送信される。データ生成部2A66による周辺形状データDAの生成が終了すると、第1搬送制御部2A62は、第1ステージ駆動部2A5を制御して第1ステージ2A2に、検査対象物10AをX線検査部3へ搬出させる。
図20は、検査装置1Aに備えられたX線検査部3の動作を説明する図である。X線検査部3の第2ステージ33上に検査対象物10Aが載置されると、透過方向設定部393は、検査対象物10Aに対するX線の透過方向ψ(R,θ)を複数設定する。そして、撮像制御部394は、X線源31と検査対象物10AとX線検出器32との位置関係が、透過方向設定部393により設定された透過方向ψ(R,θ)を満たすように、検出器駆動部36を介してX線検出器32を水平面上で移動させると共に、第2ステージ駆動部37を介して第2ステージ33を水平面上で移動させる。更に、撮像制御部394は、X線源駆動部35を介してX線源31によるX線の放射を制御すると共に、検出器駆動部36を介してX線検出器32によるX線の検出を制御する。これにより、撮像制御部394は、透過方向設定部393により設定された透過方向ψ(R,θ)毎の投影データbmをX線検出器32から出力させる。
図20に示すように、再構成部395は、検査対象物10Aの全体が収まる範囲を再構成対象領域ARとして設定し(図20(A))、当該再構成対象領域ARを複数のセルARCに分割する(図20(B))。更に、再構成部395は、上記式(1)を用いて、透過方向ψ(R,θ)毎の投影データbmと、X線の透過距離amnとに基づいて、再構成対象領域ARを構成するセルARC毎のX線の減衰率xnを、逐次近似アルゴリズムに従い演算する。この際、再構成部395は、周辺検査部2Aにより取得された周辺形状データDAを事前情報として参照する。具体的には、再構成部395は、図20(B)に示すように、再構成対象領域ARを構成する複数のセルARCのうち、周辺形状データDAで示される周辺部(下面電極部品100及び基板120)に属する少なくとも一部の周辺セルARCBのX線の減衰率xnについては、事前情報として所定の固定値(例えば「0;ゼロ」)に設定する。換言すると、再構成部395は、周辺セルARCBの減衰率xnについては固定値に設定した上で、検査対象物10Aの検査要部(半田部101)に対応した要部セルARCAの減衰率xnを演算することになる。
図19及び図20(B)を参照してより具体的に説明すると、再構成部395は、再構成対象領域ARを構成する複数のセルARCのうち、基板上面高さ位置データDA1で示される位置よりも下側のセルと、部品上面高さ位置データDA2で示される位置よりも上側のセルとを周辺セルARCBとして認識する。更に、再構成部395は、部品下面端部位置データDA4で示される位置よりも外側のセルについても周辺セルARCBとして認識する。そして、再構成部395は、再構成対象領域ARを構成するセルARC毎のX線の減衰率xnを演算する場合に、上記のようにして認識した周辺セルARCBの減衰率xnを、事前情報として所定の固定値に設定する。
これにより、検査対象物10Aに対するX線の透過方向ψ(R,θ)の設定範囲に制限がある等の理由で投影データbmが不足している状況下においても、再構成対象領域ARを構成するセルARCのうち、周辺セルARCB以外の検査要部(半田部101)に対応した要部セルARCAにおけるX線の減衰率xnとして、より適切な減衰率xnを導出することができる。このため、再構成部395は、検査対象物10Aの検査要部(半田部101)に関して十分な画質の検査画像を生成することが可能となる。
検査装置1Aの検査対象は、基板120上において半田部101によって接合された下面電極部品100が存在する領域部分となる、上記の検査対象物10Aに限定されるものではない。検査装置1Aの検査対象は、基板120上においてフィレット112によって接合されたリード111を有したリード部品110が存在する領域部分となる、検査対象物10Bであってもよい。
検査対象物10Bを検査する場合の周辺検査部2A及びX線検査部3の動作については、既述の図12及び図13を参照して以下に説明する。
搬入コンベア4によって検査対象物10Bが周辺検査部2Aの第1ステージ2A2上に搬入されると、照明部2A0は、検査対象物10Bに周期的な明暗パターン2A0Pを持つ照明光L1を照射する。そして、位相シフト部2A65は、検査対象物10Bに対する照明光L1の明暗パターン2A0Pの位置をB方向に相対的に移動させる位相シフト動作を行う。この状態で撮像部2A1は、位相シフト部2A65の位相シフト動作毎に、照明光L1が照射された検査対象物10Bを撮像し、照明光L1の明暗パターン2A0Pの位置が互いに異なる複数の位相シフト画像GPを取得する。
そして、データ生成部2A66は、撮像部2A1により取得された複数の位相シフト画像GPに基づいて、検査対象物10Bの周辺部(リード部品110及び基板120)の三次元形状に関する周辺形状データDAを生成する(既述の図12参照)。具体的に、データ生成部2A66は、基板上面高さ位置データDA1と、部品上面高さ位置データDA2と、リード上面高さ位置データDA3と、リード外側面位置データDA4とを含む位置データを、周辺形状データDAとして生成する。基板上面高さ位置データDA1は、検査対象物10Bの周辺部を構成する基板120の上面の高さ位置に関する、基板120の下面からの距離データである。部品上面高さ位置データDA2は、検査対象物10Bの周辺部を構成するリード部品110の上面の高さ位置に関する、基板120の下面からの距離データである。リード上面高さ位置データDA3は、リード111のフィレット112との接合部分、すなわちヒール部111cの上面の高さ位置に関する、基板120の下面からの距離データである。リード外側面位置データDA4は、リード111の外方側の側面、すなわち脚部111bの外側面(背面111dとは反対側の面)の位置に関する、リード部品110の端縁からの距離データである。
データ生成部2A66は、撮像部2A1により取得された複数の位相シフト画像GPに基づくことによって、検査対象物10Bにおける周辺部(リード部品110及び基板120)の三次元形状に関する正確な周辺形状データDAを生成することができる。データ生成部2A66により生成された周辺形状データDAは、第1記憶部2A67に記憶されると共に、第1データ通信部2A3を介してX線検査部3に送信される。データ生成部2A66による周辺形状データDAの生成が終了すると、第1搬送制御部2A62は、第1ステージ駆動部2A5を制御して第1ステージ2A2に、検査対象物10BをX線検査部3へ搬出させる。
X線検査部3の第2ステージ33上に検査対象物10Bが載置されると、透過方向設定部393は、X線検出器32によるX線の検出に際し、検査対象物10Bに対するX線の透過方向ψ(R,θ)を複数設定する。そして、撮像制御部394は、X線源31と検査対象物10BとX線検出器32との位置関係が、透過方向設定部393により設定された透過方向ψ(R,θ)を満たすように、検出器駆動部36を介してX線検出器32を水平面上で移動させると共に、第2ステージ駆動部37を介して第2ステージ33を水平面上で移動させる。更に、撮像制御部394は、X線源駆動部35を介してX線源31によるX線の放射を制御すると共に、検出器駆動部36を介してX線検出器32によるX線の検出を制御する。これにより、撮像制御部394は、透過方向設定部393により設定された透過方向ψ(R,θ)毎の投影データbmをX線検出器32から出力させる。
再構成部395は、検査対象物10Bの全体が収まる範囲を再構成対象領域ARとして設定し(既述の図13(A)参照)、当該再構成対象領域ARを複数のセルARCに分割する(既述の図13(B)参照)。更に、再構成部395は、上記式(1)を用いて、透過方向ψ(R,θ)毎の投影データbmと、X線の透過距離amnとに基づいて、再構成対象領域ARを構成するセルARC毎のX線の減衰率xnを、逐次近似アルゴリズムに従い演算する。この際、再構成部395は、周辺検査部2Aにより取得された周辺形状データDAを事前情報として参照する。具体的には、再構成部395は、再構成対象領域ARを構成する複数のセルARCのうち、周辺形状データDAで示される周辺部(リード部品110及び基板120)に属する少なくとも一部の周辺セルARCBのX線の減衰率xnについては、事前情報として所定の固定値(例えば「0;ゼロ」)に設定する。換言すると、再構成部395は、周辺セルARCBの減衰率xnについては固定値に設定した上で、検査対象物10Bの検査要部(フィレット112)に対応した要部セルARCAの減衰率xnを演算することになる。
具体的に説明すると、再構成部395は、再構成対象領域ARを構成する複数のセルARCのうち、基板上面高さ位置データDA1で示される位置よりも下側のセルと、リード上面高さ位置データDA3で示される位置よりも上側で且つリード外側面位置データDA4で示される位置よりも外側のセルとを、周辺セルARCBとして認識する。更に、再構成部395は、部品上面高さ位置データDA2で示される位置よりも上側のセルについても周辺セルARCBとして認識する。そして、再構成部395は、再構成対象領域ARを構成するセルARC毎のX線の減衰率xnを演算する場合に、上記のようにして認識した周辺セルARCBの減衰率xnを、事前情報として所定の固定値に設定する。
これにより、検査対象物10Bに対するX線の透過方向ψ(R,θ)の設定範囲に制限がある等の理由で投影データbmが不足している状況下においても、再構成対象領域ARを構成するセルARCのうち、周辺セルARCB以外の検査要部(フィレット112)に対応した要部セルARCAにおけるX線の減衰率xnとして、より適切な減衰率xnを導出することができる。このため、再構成部395は、検査対象物10Bの検査要部(フィレット112)に関して十分な画質の検査画像を生成することが可能となる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取り得る。
上記の実施形態では、周辺形状データDAを取得する周辺検査部として、ステレオカメラ21を含む構成の周辺検査部2(図1及び図2)、位相シフト部2A65を含む構成の周辺検査部2A(図15及び図16)について説明したが、このような構成に限定されるものではない。周辺検査部は、検査対象物10A,10Bにおける周辺部の三次元形状に関する周辺形状データDAの取得が可能であれば、その構成は特に限定されるものではない。例えば、光切断法やフォトメトリックステレオ法などが採用された構成を、周辺検査部としてもよい。
光切断法は、投光光学系により生成されたライン状のレーザ光を検査対象物10A,10Bに照射し、その反射光をイメージングセンサで受光し三角測距することで、検査対象物10A,10Bにおける周辺部の三次元形状に関する周辺形状データDAを取得する手法である。光切断法では、検査対象物10A,10Bを移動させることで、検査対象物10A,10B全体の計測が行われる。フォトメトリックステレオ法は、検査対象物10A,10Bを同一地点から照明の照射方向を変えた画像を複数枚撮像し、検査対象物10A,10B中の各領域部分の明るさの変化に基づいて、検査対象物10A,10Bにおける周辺部の三次元形状に関する周辺形状データDAを取得する手法である。