JP7301732B2 - ねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板及びそれを用いた半導体装置 - Google Patents
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Description
セラミックス回路基板に半導体素子を実装した半導体装置は、様々な方法で固定されている。その一つとしてねじ止め構造がある。特開2003-197824号公報(特許文献2)には、セラミックス基板にねじ穴を設け、ねじ穴に補強部材を設けている。特許文献2では、ねじ穴に補強部材を設けることにより、ねじ止め時のクラックの発生を抑制している。しかしながら、セラミックス基板にねじ穴を設けること自体がセラミクス基板の強度低下を招くものである。このため、穴開け工程を行わない、ねじ止め構造が求められていた。
特開2005-45105号公報(特許文献3)には、セラミックス回路基板の沿面に圧接用部材を設けた構造が開示されている。特許文献3では、モジュールケース、圧接用部材を介してねじ止めを行っている。
本発明は、このような問題に対応するためのものであり、ねじ止め構造後の半導体装置のTCTを向上させることができるねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板を提供するものである。また、ねじ止め構造の際の位置合わせ工程が簡素化できるねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板を提供するものである。
図1に実施形態にかかるねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板の一例を示した。図2にねじ止めパット部材の接合層がはみ出た構造の一例を示した。図中、1はねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板、2はセラミックス基板、3は金属回路板、4はねじ止めパット部材、5は接合層、である。また、Lはねじ止めパット部材の接合層はみだし部の長さ、Hはねじ止めパット部材の接合層はみだし部の厚さ、である。
ねじ止めパット付きセラミックス回路基板1は、ねじ止めパット部材4を接合する接合層5にはみだし部を有している。ねじ止めパット部材4の接合層5のはみだし部の長さLは2μm以上200μm以下が好ましい。また、ねじ止めパット部材4の接合層5のはみだし部の厚さHは5μm以上50μm以下が好ましい。また、はみだし部の長さL/はみだし部の高さHが0.5以上3.0以下の範囲内であることが好ましい。
ねじ止めパット部材4に接合層はみだし部を設けることにより、ねじ止めパット部材4の接合強度を向上させることができる。このため、ねじ止めパット部材4にねじ頭が接するようなねじ止め構造をとることができる。また、接合層はみだし部を設けることにより、ねじ止め後の半導体装置のTCT(熱サイクル)特性を向上させることができる。
銅板を接合するための活性金属は、Ti(チタン)、Nb(ニオブ)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)から選ばれる1種または2種以上である。また、活性金属以外の成分としては、Ag(銀)およびCu(銅)が挙げられる。また、In(インジウム)、Sn(錫)、C(炭素)から選ばれる1種または2種以上を添加してもよい。なお、銅板には銅合金板も含まれるものとする。
また、アルミニウム板を接合するための活性金属はSi(珪素)である。また、活性金属以外の成分としては、Al(アルミニウム)が挙げられる。なお、アルミニウム板にはアルミニウム合金板も含まれるものとする。
ねじ止めパット部材4の長辺とは、多角形状のときは最も長い辺となる。多角形状には、正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、台形などが挙げられる。なお、多角形状のときは、角にR形状が付与されていてもよいものとする。R形状とは、曲率半径を有した形状のことを示す。
また、ねじ止めパット部材4が、L字形状、V字形状などのときは最も長い辺が長辺となる。また、ねじ止めパット部材4が円形形状のときは最も長い対角線を長辺とする。円形形状には、真円、楕円が挙げられる。また、ねじ止めパット部材4が星形形状、S字形状などのときは最も長い対角線を長辺とする。
なお、少なくとも一対が対角線上に配置されていればよく、対角線上に配置されていないねじ止めパット部材4が存在していてもよいものとする。例えば、セラミックス基板2の長辺の真ん中にねじ止めパット部材4を設けることもできる。また、ねじ止めパット部材4の個数は偶数が好ましいが、奇数であってもよい。
また、セラミックス基板2の角部は面取り形状部であってもよい。セラミックス基板2の角部を面取り形状とすることにより、ねじ止めパット部材4と位置合わせを行い易くすることができる。
図3にセラミックス基板2の裏面に放熱板を設けたねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板の一例を示した。図中、1はねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板、2はセラミックス基板、3は金属回路板、4はねじ止めパット部材、5は接合層、6は放熱板、7は放熱板の端部から垂直に引いた線、である。
放熱板6の端部とは、放熱板6の側面の最外部を示す。つまり、放熱板6の側面の最も沿面に近い箇所となる。放熱板6の端部から垂直線7を引いたとき、ねじ止めパット部材4に重なる個所があることが好ましい。重なる個所があるということは、ねじ止めパット部材4の裏側に放熱板6が存在しているということである。ねじ止めパット部材4は、ねじ止めに使われる。ねじ止めを行うと、セラミックス基板2の沿面に応力がかかる。放熱板6がねじ止めパット部材4の裏側に存在することにより、セラミックス基板2の沿面にかかる応力を緩和する効果が得られる。これにより、ねじ止め時にセラミックス基板2が破損することを抑制することができる。また、ねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板1をねじ止めした後の半導体装置10のTCT特性を向上させることができる。
窒化珪素基板は、3点曲げ強度が600MPa以上と高強度である。また、熱伝導率が50W/m・K以上、さらには80W/m・K以上のものが好ましい。
また、アルミナ基板は熱伝導率20~30W/m・K、3点曲げ強度400~500MPa程度であるが安価である。また、アルジル基板は、酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムを混合した焼結体からなるものである。アルジル基板は3点曲げ強度が450~550MPa程度と比較的高い。
また、窒化アルミニウム基板は熱伝導率170W/m・K以上と高いが、3点曲げ強度は350~450MPa程度である。
セラミックス基板の中では窒化珪素基板が好ましい。前述のように窒化珪素基板は3点曲げ強度が高い。強度が高いセラミックス基板であればねじ止め時の破損を抑制することができる。このため、セラミックス基板は3点曲げ強度が600MPa以上、さらには700MPa以上であることが好ましい。窒化珪素基板は、3点曲げ強度が600MPa以上、さらには700MPa以上のものが得られるため好ましい。
ねじ頭との接触面積は、次の方法で求めるものとする。まず、ねじ頭の接触可能な面積を求める。ねじ頭の接触可能な面積は、ねじ頭を上から見たときの面積からねじ溝を設けた部分の面積を除いた面積とする。例えば、上から見たときのねじ頭は直径10mmの円形とする。また、ねじ溝を設けた部分の直径が3mmの円形とする。ねじ頭の接触可能な面積は、5mm×5mm×3.14-1.5mm×1.5mm×3.14=71.435mm2となる。ねじ止め構造をとったとき、ねじ止めパット部材4とねじ頭の接触可能な面積とが接する面積をねじ頭との接触面積とする。
ねじ止めパット部材4とねじ頭との接触面積が小さいと点接触のようになり、ねじ止め個所の応力が大きくなる。ねじ止めパット部材4とねじ頭の接触面積を大きくすることにより面接触のようになる。面接触であるとねじ止め個所の応力を分散させることができる。なお、ねじ止めパット部材4とねじ頭との接触面積が大きすぎると、ねじ止めパット部材4の大型化を招く可能性がある。ねじ止めパット部材4の大型化は、金属回路基板3の配置場所を狭くすることになる。このため、ねじ止めパット部材4とねじ頭の接触面積は15%以上45%以下が好ましい。
また、金属回路板3の側面において、金属回路板3厚さの1/2の点からセラミックス基板1側の金属回路板3の端部まで直線を引いたとき、この直線とセラミックス基板1の平面方向とがなす角度θが80°以下であることが好ましい。角度θが80°以下であるということは、金属回路板3の側面はセラミックス基板1方向に向かって広がっている傾斜形状となる。金属回路板3の側面が傾斜形状を有することにより、TCT特性を向上させることができる。
ねじ止めパット部材4と金属回路板3の側面形状は任意の断面において観察するものとする。断面形状の観察は断面SEM写真を用いて観察するものとする。また、ねじ止めパット部材4に最も近い金属回路板3の断面を観察するものとする。
断面SEM写真において、ねじ止めパット部材4と金属回路板3の厚さの差が0mm以上0.1mm以下のときは実質的に同じと判断する。また、断面SEM写真において、ねじ止めパット部材4と金属回路板3の接合層はみだし部の面積の差が0%以上20%以下であると実質的に同じと判断する。また、断面SEM写真において、ねじ止めパット部材4と金属回路板3の角度θの差が0°以上10°以下であると実質的に同じと判断する。また、
ねじ止めパット部材4と金属回路板3の厚さ、接合層はみだし部の面積の差、角度θの差のいずれもが上記範囲を満たしたとき、ねじ止めパット部材4と金属回路板3の側面形状が実質的に同じとなる。
また、半導体装置はねじ止め構造をとることが好ましい。図4に実施形態にかかる半導体装置の一例を示した。図中、10は半導体装置、11は半導体素子、12はねじ、13は実装ボード、である。図4は、ねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板1に半導体素子11を実装し、ねじ12で実装ボード13にねじ止めした構造を例示したものである。
ねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板1は沿面にねじ止めパット部材4が設けられている。このため、セラミックス基板にねじ穴を設けなくてもねじ止め構造がとれている。また、ねじ12のねじ頭をねじ止めパット部材4に直接接する構造を取ることもできる。なお、実装ボード13はねじ止めする場所として使われるものである。ヒートシンクや筐体などであってもよい。また、半導体装置10は、モールド樹脂を設けてもよいものとする。
また、ねじ止めパット部材4の面積は、ねじ頭との接触面積が15%以上になる面積を有することが好ましい。ねじ頭とねじ止めパット部材を面接触とすることにより、ねじ止め応力を緩和することができる。実施形態にかかる半導体装置は、ねじ止め構造後であってもTCT特性を向上させることができる。
また、ねじ止めトルクを0.05N・m以上としたとしても、セラミックス基板の割れを抑制することができる。なお、ねじ止めトルクの上限は特に限定されるものではないが0.50N・m以下が好ましい。
まず、セラミックス基板と金属板の接合体を作製する。
セラミックス基板2は、窒化珪素基板、アルミナ基板、アルジル基板、窒化アルミニウム基板から選ばれる1種が好ましい。また、セラミックス基板は、3点曲げ強度が600MPa以上、熱伝導率が50W/m・K以上の窒化珪素基板であることが好ましい。また、窒化珪素基板は厚さ0.40mm以下、さらには0.30mm以下のものであることが好ましい。
また、金属板は、銅板またはアルミニウム板であることが好ましい。特に、金属板は銅板であることが好ましい。銅の熱伝導率は400W/m・K程度であるのに対し、アルミニウムは240W/m・K程度である。銅板の方が熱伝導率が高いため放熱性が高い。また、銅のビッカース硬さは370MPa程度であるのに対し、アルミニウムは170MPa程度である。銅板の方が硬いため、ねじ止めに適している。
セラミックス基板と金属板の接合には活性金属接合法を用いるものとする。活性金属接合法は、活性金属を含む接合ろう材を用いた接合法である。
銅板を接合するための活性金属は、Ti(チタン)、Nb(ニオブ)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)から選ばれる1種または2種以上である。また、活性金属以外の成分としては、Ag(銀)およびCu(銅)が挙げられる。また、In(インジウム)、Sn(錫)、C(炭素)から選ばれる1種または2種以上を添加してもよい。なお、銅板には銅合金板も含まれるものとする。
また、アルミニウム板を接合するための活性金属はSi(珪素)である。また、活性金属以外の成分としては、Al(アルミニウム)が挙げられる。なお、アルミニウム板にはアルミニウム合金板も含まれるものとする。
また、放熱板6として用いる金属板についてもセラミックス基板2の縦横サイズと略同じであることが好ましい。また、金属回路板になる金属板を表金属板、放熱板になる金属板を裏金属板とする。接合体を作製する際は、表金属板と裏金属板の縦横サイズが略同じであることが好ましい。略同じであるということは表金属板と裏金属板の縦横サイズが±2mmの範囲内であることを示す。ねじ止めパット部材4と金属回路板3を別々に配置して、接合することも可能である。しかしながら、表裏の金属板のサイズに差がありすぎると接合体に反りが生じやすい。反りが生じると、反り直し工程の負荷が増えるので好ましくない。
次に、エッチング工程を行う。表金属板は、金属回路板3およびねじ止めパット部材4を形成する。また、金属回路板3およびねじ止めパット部材4の接合層はみだし部と側面形状が実質的に同じになるようにすることが好ましい。
断面SEM写真において、ねじ止めパット部材4と金属回路板3の接合層はみだし部の面積の差が0%以上20%以下であると実質的に同じと判断する。また、断面SEM写真において、ねじ止めパット部材4と金属回路板3の角度θの差が0°以上10°以下であると実質的に同じと判断する。
また、放熱板もエッチングして、接合層はみだし部と角度θを金属回路板3と実質的に同じにすることが好ましい。また、必要に応じ、ねじ止めパット部材4表面を化学研磨してもよいものとする。
以上の工程により、ねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板を製造することができる。
(実施例1~6、比較例1~3)
窒化珪素基板と銅板により活性金属接合法を用いて接合体を作製した。また、窒化珪素基板と銅板の縦横サイズは略同じに統一した。また、表銅板は金属回路板およびねじ止めパット部材となる銅板である。裏銅板は放熱板となる銅板である。作製した接合体は表1に示す通りである。
次に、金属回路板に半導体素子を実装して、半導体装置を作製した。各半導体装置をねじ止め構造を行った。その際に、ねじ頭のサイズを変えてねじ止めパット部材とねじ頭の接触面積を変えた。また、ねじ止めトルクを変えてねじ止め構造を行った。
ねじ止め時のセラミックス基板の破損の有無を測定した。また、ねじ止め後の半導体装置のTCT特性を測定した。
ねじ止め時のセラミックス基板の破損の有無は、ねじ止め工程を20個行った。1つでも破損が生じたものを破損「あり」、1つも破損が生じなかったものを破損「なし」とした。
また、TCT試験は、-40℃×30分→25℃×10分→175℃×30分→25℃×10分を1サイクルとし、1000サイクル後のセラミックス回路基板の破損の有無を調べた。またTCT試験は、ねじ止め工程でセラミックス基板が破損しなかったものを試験対象としたものである。
その結果を表4に示す。
それに対し、比較例はねじ止めパット部材を設けていないことから、破損が発生していた。このため、実施例にかかるねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板は信頼性の高いものであることが分かる。
2…セラミックス基板
3…金属回路板
4…ねじ止めパット部材
5…接合層
6…放熱板
7…放熱板の端部から垂直に引いた線
10…半導体装置
11…半導体素子
12…ねじ
13…実装ボート
L…接合層はみだし部の幅
H…接合層はみだし部の厚さ
Claims (10)
- セラミックス基板の同じ面にねじ止めパット部材および金属回路板を設け、反対側の面には放熱板が設けられた構造であり、放熱板の端部から垂直線を引いたとき、ねじ止めパット部材に重なる個所があり、ねじ止めパット部材は接合層を介してセラミックス基板に接合されると共に、ねじ止めパット部材の端部から接合層がはみ出た構造を有していることを特徴とするねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板。
- ねじ止めパット部材の長辺長さは、セラミックス基板の長辺の長さの1/5以下であることを特徴とする請求項1記載のねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板。
- ねじ止めパット部材は、複数個有し、少なくとも一対は対角線上に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載のねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板。
- セラミックス基板の角部は面取り形状部であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板。
- セラミックス基板にねじ止め用の穴部が形成されていないことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板。
- セラミックス基板の厚さが0.4mm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板。
- セラミックス基板が3点曲げ強度600MPa以上の窒化珪素基板であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板。
- ねじ止めパット部材の面積は、ねじ頭との接触面積が15%以上になる面積を有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板。
- 請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のねじ止めパット部材付きセラミックス回路基板に半導体素子を実装したことを特徴とする半導体装置。
- ねじ止めパット部材にねじ頭が接するようにねじ止めされた構造を有することを特徴とする請求項9記載の半導体装置。
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