本発明に係るエアロゾル生成装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、それらの相対的な配置等は一例である。また、処理の順序も一例であり、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り入れ替えたり並列に実行したりすることができる。したがって、特に限定的な説明がない限り、発明の技術的範囲は以下の例のみには限定されない。
<実施形態>
図1は、エアロゾル生成装置の外観の一例を示す斜視図である。図2は、エアロゾル生成装置の一例を示す分解図である。エアロゾル生成装置1は、電子シガレットやネブライザー等であり、使用者の吸引に応じてエアロゾルを生成し、使用者に提供する。なお、使用者が行う1回の連続した吸引を「パフ」と呼ぶものとする。また、本実施形態では、エアロゾル生成装置1は、生成したエアロゾルに対し、香味等の成分を添加して使用者の口腔内に放出する。
図1及び図2に示すように、エアロゾル生成装置1は、本体2と、エアロゾル源保持部3と、添加成分保持部4とを備える。本体2は、電力を供給すると共に装置全体の動作を制御する。エアロゾル源保持部3は、霧化させてエアロゾルを生成するためのエアロゾル源を保持する。添加成分保持部4は、香味やニコチン等の成分を保持する。使用者は、添加成分保持部4側の端部である吸口を咥え、香味等が添加されたエアロゾルを吸引することができる。
エアロゾル生成装置1は、本体2、エアロゾル源保持部3及び添加成分保持部4を、使用者等が組み立てることによって形成される。本実施形態では、本体2、エアロゾル源保持部3及び添加成分保持部4は、それぞれ径が所定の大きさである円柱状、円錐台状等であり、本体2、エアロゾル源保持部3、添加成分保持部4の順に結合させることができる。本体2とエアロゾル源保持部3とは、例えば、それぞれの端部に設けられた雄ねじ部分と雌ねじ部分とが螺合することにより結合される。また、エアロゾル源保持部3と添加成分保持部4とは、例えば、エアロゾル源保持部3の一端に設けられた筒状の部分に、側面にテーパが付けられた添加成分保持部4を嵌め込むことにより結合される。また、エアロゾル源保持部3及び添加成分保持部4は、使い捨ての交換部品であってもよい。
<内部構成>
図3は、エアロゾル生成装置1の内部の一例を示す概略図である。本体2は、電源21と、制御部22と、吸引センサ23とを備える。制御部22は、電源21及び吸引センサ23とそれぞれ電気的に接続されている。電源21は、二次電池等であり、エアロゾル生成装置1が備える電気回路に電力を供給する。制御部22は、マイクロコントローラ(MCU:Micro-Control Unit)等のプロセッサであり、エアロゾル生成装置1が備える電気回路の動作を制御する。また、吸引センサ23は、気圧センサや流量センサ等である。使用者がエアロゾル生成装置1の吸口から吸引すると、吸引センサ23は、エアロゾル生成装置1の内部に生じる負圧や気体の流量に応じた値を出力する。すなわち、制御部22は、吸引センサ23の出力値に基づいて吸引を検知することができる。
エアロゾル生成装置1のエアロゾル源保持部3は、貯留部31と、供給部32と、負荷33と、残量センサ34とを備える。貯留部31は、加熱により霧化する液体状のエアロゾル源を貯留する容器である。なお、エアロゾル源は、例えばグリセリンやプロピレングリコールのような、ポリオール系の材料である。なお、エアロゾル源は、さらにニコチン液、水、香料等を含む混合液(「香味源」とも呼ぶ)であってもよい。貯留部31には、このようなエアロゾル源が予め貯留されているものとする。なお、エアロゾル源は貯留部31を必要としない固体であってもよい。
供給部32は、例えばガラス繊維のような繊維材料を撚って形成されるウィックを含む。供給部32は、貯留部31と接続される。また、供給部32は負荷33と接続され、又は供給部32の少なくとも一部が負荷33の近傍に配置される。エアロゾル源は毛細管現象によりウィックに浸透し、負荷33による加熱によってエアロゾル源を霧化できる部分まで移動する。換言すれば、供給部32は、貯留部31からエアロゾル源を吸い上げ、負荷33又はその近傍へ運ぶ。なお、ガラス繊維に代えて多孔質状のセラミックをウィックに用いてもよい。
負荷33は、例えばコイル状のヒータであり、電流が流れることで発熱する。また、例えば負荷33は正温度係数(PTC:Positive Temperature Coefficient)特性を有し、その抵抗値が発熱温度にほぼ正比例する。なお、負荷33は必ずしも正温度係数特性を有している必要はなく、その抵抗値と発熱温度に相関があるものであればよい。一例として、負荷33は負温度係数(NTC:Negative Temperature Coefficient)特性を有していてもよい。なお、負荷33はウィックの外部に巻かれていてもよいし、逆に負荷33の周囲をウィックが覆うような構成であってもよい。負荷33への給電は、制御部22によって制御される。供給部32によって貯留部31から負荷33へエアロゾル源が供給されると、負荷33の熱によりエアロゾル源が蒸発し、エアロゾルが生成される。また、制御部22は、吸引センサ23の出力値に基づいて使用者による吸引動作が検知された場合に、負荷33への給電を行い、エアロゾルを生成させる。また、貯留部31に貯留されたエアロゾル源の残量が十分である場合、負荷33へも十分な量のエアロゾル源が供給され、負荷33における発熱はエアロゾル源に輸送されるため、換言すれば負荷33における発熱はエアロゾル源の昇温及び気化に用いられるため、負荷33の温度は予め設計された所定の温度を超えることはほぼない。一方、貯留部31に貯留されたエアロゾル源が枯渇すると、負荷33へのエアロゾル源の時間当たりの供給量が低下する。その結果、負荷33における発熱はエアロゾル源に輸送されないため、換言すれば負荷33における発熱はエアロゾル源の昇温及び気化に用いられないため、負荷33が過熱し、これに伴い負荷33の抵抗値も上昇する。
残量センサ34は、負荷33の温度に基づいて貯留部31に貯留されたエアロゾル源の残量を推定するためのセンシングデータを出力する。例えば、残量センサ34は、負荷33と直列に接続された電流測定用の抵抗器(シャント抵抗)と、抵抗器と並列に接続され、抵抗器の電圧値を測定する測定装置とを含む。なお、抵抗器は、その抵抗値が温度によってほぼ変化しない予め定められた一定の値である。よって、既知の抵抗値と測定された電圧値に基づいて、抵抗器に流れる電流値が求められる。
なお、上述したシャント抵抗を用いた測定装置に代えて、ホール素子を用いた測定装置を用いてもよい。ホール素子は、負荷33と直列の位置に設けられる。すなわち、負荷33と直列に接続された導線の周囲に、ホール素子を備えるギャップコアが配置される。そして、ホール素子は、自身を貫流する電流によって発生する磁界を検出する。ホール素子を用いる場合、「自身を貫流する電流」とは、ギャップコアの中央に配置され、ホール素子とは接しない導線を流れる電流であり、その電流値は負荷33を流れる電流と同じになる。また、本実施形態において残量センサ34は、抵抗器に流れる電流値を出力した。これに代えて、抵抗器の両端に掛かる電圧値や、電流値や電圧値そのものの値ではなく、これに所定の演算を施した値を用いてもよい。これら抵抗器に流れる電流値に代えて用いることができる測定値は、抵抗器に流れる電流値に応じてその値が変わる値である。すなわち、残量センサ34は、抵抗器に流れる電流値に応じた測定値を出力すればよい。抵抗器に流れる電流値に代えてこれらの測定値を用いても、本発明の技術的思想に包含されることはもちろんである。
エアロゾル生成装置1の添加成分保持部4は、内部にたばこの葉の刻や、メンソール等の香味成分41を保持する。また、添加成分保持部4は、吸口側及びエアロゾル源保持部3と結合される部分に通気孔を備え、使用者が吸口から吸引すると添加成分保持部4の内部に負圧が生じ、エアロゾル源保持部3において発生したエアロゾルが吸引されると共に、添加成分保持部4の内部においてニコチンや香味等の成分がエアロゾルに添加され、使用者の口腔内に放出される。
なお、図3に示した内部構成は一例である。エアロゾル源保持部3は、円柱の側面に沿って設けられ円形の断面の中央に沿って空洞を有するトーラス状であってもよい。この場合、中央の空洞に供給部32や負荷33が配置されるようにしてもよい。また、使用者に対し装置の状態を出力するために、LED(Light Emitting Diode)やバイブレータ等の出力部をさらに備えていてもよい。
<回路構成>
図4は、エアロゾル生成装置内の回路構成のうち、エアロゾル源の残量の検知、及び負荷への給電の制御に関わる部分の一例を示す回路図である。エアロゾル生成装置1は、電源21と、制御部22と、電圧変換部211と、スイッチ(スイッチング素子)Q1及びQ2と、負荷33と、残量センサ34とを備える。電源21と負荷33とを接続する、スイッチQ1及びQ2並びに電圧変換部211を含む部分を、本発明に係る「給電回路」とも呼ぶ。例えば、電源21及び制御部22は、図1~3の本体2に設けられ、電圧変換部211、スイッチQ1及びQ2、負荷33並びに残量センサ34は、図1~3のエアロゾル源保持部3に設けられる。また、本体2とエアロゾル源保持部3とを結合することにより、内部の構成要素が電気的に接続され、図4に示すような回路が形成される。なお、例えば電圧変換部211やスイッチQ1及びQ2、残量センサ34の少なくとも一部を本体2に設けるようにしてもよい。エアロゾル源保持部3や添加成分保持部4を使い捨ての交換部品として構成した場合、これらに含まれる構成品が少なければ少ないほど、交換部品のコストを下げられる。
電源21は、各構成要素と直接的又は間接的に電気接続され、回路に電力を供給する。制御部22は、スイッチQ1及びQ2、残量センサ34と接続される。また、制御部22は、残量センサ34の出力値を取得し、貯留部31に残っているエアロゾル源の推定値を算出したり、算出した推定値や吸引センサ23の出力値等に基づいてスイッチQ1及びQ2の開閉を制御したりする。
スイッチQ1及びQ2は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)のような半導体スイッチ等である。また、スイッチQ1は、一端が電源21と接続され、他端が負荷33と接続されている。そして、スイッチQ1を閉じることにより、負荷33に給電し、エアロゾルを生成させることができる。例えば、制御部22は、使用者による吸引動作を検知した場合に、スイッチQ1を閉じる。なお、スイッチQ1及び負荷33を通過する経路を「エアロゾル生成経路」及び「第1給電路」とも呼ぶものとする。
また、スイッチQ2は、一端が電圧変換部211を介して電源21と接続され、他端が残量センサ34を経由して負荷33と接続されている。そして、スイッチQ2を閉じることにより、残量センサ34の出力値を得ることができる。なお、スイッチQ2、残量センサ34、及び負荷33を通過し、残量センサ34が所定の測定値を出力する経路を、「残量検出経路」及び本発明に係る「第2給電路」とも呼ぶものとする。なお、残量センサ34にホール素子を用いる場合は、残量センサ34はスイッチQ2及び負荷33に接続する必要は無く、スイッチQ2と負荷33の間における所定の測定値を出力できるように設けてあればよい。換言すれば、ホール素子内をスイッチQ2と負荷33を結ぶ導線が通るように構成すればよい。
このように、図4に示す回路は、電源21からエアロゾル生成経路と残量検出経路とに分岐する第1ノード51と、エアロゾル生成経路と残量検出経路とが合流し、負荷33に接続される第2ノード52とを備えている。
電圧変換部211は、電源21の出力する電圧を変換して負荷33へ出力することができる。具体的には、図4に示すLDO(Low Drop-Out)レギュレータ等のような電圧レギュレータであり、一定の電圧を出力する。電圧変換部211は、一端が電源21と接続され、他端はスイッチQ2と接続されている。また、電圧変換部211は、スイッチQ3と、抵抗器R1及びR2と、キャパシタC1及びC2と、コンパレータCompと基準電圧VREFを出力する定電圧源を含む。なお、図4に示すLDOレギュレータを用いる場合、その出力電圧Voutは以下の式(1)で求められる。
Vout=R2/(R1+R2)×VREF ・・・(1)
スイッチQ3は、半導体スイッチ等であり、コンパレータCompの出力に応じて開閉される。また、スイッチQ3の一端は電源21と接続され、スイッチQ3の開閉のデューティ比によって出力電圧が変更される。スイッチQ3の出力電圧は、直列に接続された抵抗器R1及びR2によって分圧され、コンパレータCompの一方の入力端子に印加される。また、コンパレータCompの他方の入力端子には、基準電圧VREFが印加される。そして、基準電圧VREFとスイッチQ3の出力電圧との比較結果を示す信号が出力される。このように、スイッチQ3へ印加される電圧値が変動しても、所定値以上であれば、コンパレータCompからのフィードバックを受けて、スイッチQ3の出力電圧を一定にすることができる。コンパレータComp及びスイッチQ3を、本発明に係る「電圧変換部」とも呼ぶ。
なお、キャパシタC1は、その一端が、電圧変換部211内における電源21側の端部に接続され、他端はグラウンドに接続されている。キャパシタC1は電力を蓄積するとともに、サージ電圧から回路を保護する。キャパシタC2は、その一端がスイッチQ3の出力端子に接続されており、出力電圧を平滑化する。
二次電池のような電源を利用する場合、充電率の低下に伴い電源電圧も低下する。本実施形態に係る電圧変換部211によれば、電源電圧がある程度変動する場合であっても、定電圧を供給することができる。
残量センサ34は、シャント抵抗341と、電圧計342とを含む。シャント抵抗341の一端は、スイッチQ2を介して電圧変換部211に接続されている。また、シャント抵抗341の他端は、負荷33に接続されている。すなわち、シャント抵抗341は、負荷33と直列に接続されている。また、電圧計342は、シャント抵抗341と並列に接続されており、シャント抵抗341における電圧降下量を測定することができる。また、電圧計342は、制御部22とも接続されており、測定したシャント抵抗341における電圧降下量を制御部22へ出力する。
<残量推定処理>
図5は、貯留部31に貯留されているエアロゾル源の量を推定する処理を説明するためのブロック図である。なお、電圧変換部211が出力する電圧Voutは、定数であるものとする。また、シャント抵抗341の抵抗値Rshuntは既知の定数である。よって、シャント抵抗341の両端電圧Vshuntを用いて、シャント抵抗341に流れる電流値Ishuntは以下の式(2)で求められる。
Ishunt=Vshunt/Rshunt ・・・(2)
なお、シャント抵抗341と直列に接続された負荷33に流れる電流値IHTRは、Ishuntと同一である。シャント抵抗341は、負荷33と直列に接続されており、負荷を流れる電流値に応じた値が測定される。
ここで、電圧変換部211の出力電圧Voutは、負荷33の抵抗値RHTRを用いると、次の式(3)で表すことができる。
Vout=Ishunt×(Rshunt+RHTR) ・・・(3)
式(3)を変形すると、負荷33の抵抗値RHTRは、以下の式(4)で表すことができる。
RHTR=Vout/Ishunt-Rshunt ・・・(4)
また、負荷33は、前述した正温度係数(PTC)特性を有しており、図5に示すように負荷33の抵抗値RHTRは負荷33の温度THTRにほぼ正比例する。したがって、負荷33の抵抗値RHTRに基づいて負荷33の温度THTRを算出することができる。本実施形態では、負荷33の抵抗値RHTRと温度THTRとの関係を示す情報を、例えばテーブルに予め記憶させておくものとする。従って、専用の温度センサを用いずに、負荷33の温度THTRを推定することができる。なお、負荷33が負の温度係数特性(NTC)を有している場合も、抵抗値RHTRと温度THTRとの関係を示す情報に基づいて、負荷33の温度THTRを推定することができる。
また、本実施形態では、負荷33によって周囲のエアロゾル源が蒸発させられた場合であっても、貯留部31に十分な量のエアロゾル源が貯留されているときは、供給部32を介して負荷33へエアロゾル源が供給され続ける。したがって、貯留部31におけるエアロゾル源の残量が所定量以上であれば、負荷33の温度は、通常はエアロゾル源の沸点を超えて大幅に上昇することはない。しかしながら、貯留部31におけるエアロゾル源の残量が減少すると、これに伴い、供給部32を介して負荷33へ供給されるエアロゾル源の量も減少し、負荷33の温度はエアロゾル源の沸点を超えてさらに上昇することになる。このようなエアロゾル源の残量と負荷33の温度との関係を示す情報は、実験などによって予めわかっているものとする。そして、当該情報と、算出された負荷33の温度THTRとに基づいて、貯留部31が保持しているエアロゾル源の残量Quantityを推定することができる。なお、残量は、貯留部31の容量に対する残量の割合として求めるようにしてもよい。
また、エアロゾル源の残量と負荷33の温度との間には相関関係があるため、予め定められた残量の閾値に対応する負荷33の温度の閾値を用いて、負荷33の温度が温度の閾値を超えた場合に、貯留部31のエアロゾル源が枯渇したと判断することができる。さらに、負荷33の抵抗値と温度との間にも対応関係があるため、負荷33の抵抗値が、上述した温度の閾値に対応する抵抗値の閾値を超えた場合に、貯留部31のエアロゾル源が枯渇したと判断することもできる。また、上述した式(4)の変数はシャント抵抗341を流れる電流値Ishuntのみであるため、上述した抵抗値の閾値に対応する電流値の閾値も、一意に定まる。ここで、シャント抵抗341を流れる電流値Ishuntとは、負荷33を流れる電流値IHTRと同一である。したがって、負荷33を流れる電流値IHTRが、予め定められた電流値の閾値未満の値を示した場合に、貯留部31のエアロゾル源が枯渇したと判断することもできる。すなわち、負荷33に流す電流値等の測定値について、例えばエアロゾル源が充分に残っている状態における目標値又は目標範囲を定め、目標値又は目標範囲を含む既定の範囲に測定値が属するか否かによって、エアロゾル源の残量が充分であるか判断することができる。既定の範囲は、例えば上述した閾値を用いて定めることができる。
以上のように、本実施形態によれば、負荷33の抵抗値R
HTR を、シャント抵抗341を流れる電流の値Ishuntという1つの測定値を用いて算出することができる。なお、シャント抵抗341の電流値Ishuntは、式(2)に示したように、シャント抵抗341の両端電圧Vshuntを測定することで求めることができる。ここで、一般的に、センサが出力する測定値にはオフセット誤差、ゲイン誤差、ヒステリシス誤差、リニアリティ誤差といった様々な誤差が含まれる。本実施形態では、定電圧を出力する電圧変換部211を用いることにより、貯留部31が保持しているエアロゾル源の残量Quantity又は貯留部31のエアロゾル源が枯渇したか否かを推定するにあたって、測定値を代入すべき変数を1つにしている。したがって、例えば複数の変数に異なるセンサの出力値を代入することによって負荷の抵抗値等を算出するような手法よりも、算出される負荷33の抵抗値R
HTR の精度は向上する。その結果、負荷33の抵抗値R
HTR に基づいて推定されるエアロゾル源の残量も、精度が向上する。
図6は、残量推定処理の一例を示す処理フロー図である。図7は、使用者がエアロゾル生成装置を使用する状態の一例を示すタイミングチャートである。図7は、矢印の方向が時間t(s)の経過を示し、グラフはそれぞれ、スイッチQ1及びQ2の開閉、負荷33を流れる電流の値IHTR、算出される負荷33の温度THTR、エアロゾル源の残量Quantityの変化を示している。なお、閾値Thre1及びThre2は、エアロゾル源の枯渇を検知するための所定の閾値である。エアロゾル生成装置1は、使用者がエアロゾル生成装置1を使用する際に、残量の推定を実行し、エアロゾル源の減少を検知した場合には所定の処理を行う。
エアロゾル生成装置1の制御部22は、吸引センサ23の出力に基づいて、使用者が吸引動作を行ったか判断する(図6:S1)。本ステップでは、制御部22は、吸引センサ23の出力に基づいて、負圧の発生や流量の変化等を検知した場合、使用者の吸引を検知したと判断する。吸引を検知しなかった場合(S1:No)、S1の処理を繰り返す。なお、負圧や流量の変化を0ではない閾値と比較することで、使用者の吸引を検知してもよい。
一方、吸引を検知した場合(S1:Yes)、制御部22は、スイッチQ1をパルス幅制御(PWM,Pulse Width Modulation)する(図6:S2)。例えば、図7の時刻t1において吸引が検知されたものとする。時刻t1の後、制御部22は、所定の周期でスイッチQ1を開閉させる。また、スイッチQ1の開閉に伴い、負荷33には電流が流れ、負荷33の温度THTRはエアロゾル源の沸点程度まで上昇する。また、エアロゾル源は、負荷33の温度によって加熱され、蒸発し、エアロゾル源の残量Quantityは減少する。なお、ステップS2でスイッチQ1を制御する際は、PWM制御に代えて、パルス周波数制御(PFM, Pulse Frequency Modulation)を用いてもよい。
また、制御部22は、吸引センサ23の出力に基づいて、使用者が吸引動作を終了したか判断する(図6:S3)。本ステップにおいては、制御部22は、吸引センサ23の出力に基づいて、負圧の発生や流量の変化等が検知されなくなった場合、使用者が吸引を終了したと判断する。吸引が終了していない場合(S3:No)、制御部22はS2の処理を繰り返す。なお、負圧や流量の変化を0ではない閾値と比較することで、使用者の吸引の終了を検知してもよい。または、ステップS1において使用者の吸引を検知してから所定時間が経過した場合、ステップS3の判断によらず、ステップS4に進んでもよい。
一方、吸引が終了した場合(S3:Yes)、制御部22はスイッチQ1のPWM制御を停止する(図6:S4)。例えば、図7の時刻t2において吸引が終了したと判断されたものとする。時刻t2の後、スイッチQ1は開いた状態(OFF)になり、負荷33への給電が停止される。また、負荷33へは供給部32を介して貯留部31からエアロゾル源が供給され、負荷33の温度THTRは放熱によって次第に低下する。そして、負荷33の温度THTRの低下によりエアロゾル源の蒸発が停止し、残量Quantityの減少も停止する。
以上のように、スイッチQ1がオンになることで、図6において点線の角丸長方形で囲われたS2~S4では、図4のエアロゾル生成経路に電流が流れる。
その後、制御部22は、スイッチQ2を所定の期間継続して閉じる(図6:S5)。スイッチQ2がオンになることで、図6において点線の角丸長方形で囲われたS5~S9では、図4の残量検出経路に電流が流れる。図7の時刻t3において、スイッチQ2は、閉じた状態(ON)になっている。残量検出経路においては、負荷33と直列にシャント抵抗341が接続されている。よって、シャント抵抗341が追加された分、エアロゾル生成経路よりも残量検出経路の方が、経路上の抵抗値は大きくなり、負荷33を流れる電流値IHTRは低くなっている。
また、スイッチQ2を閉じた状態において、制御部22は、残量センサ34から測定値を取得し、シャント抵抗341を流れる電流値を検出する(図6:S6)。本ステップでは、例えば電圧計342によって測定されたシャント抵抗341の両端電圧を用いて、上述した式(2)により、シャント抵抗341の電流値Ishuntが算出される。なお、シャント抵抗341の電流値Ishuntは、負荷33を流れる電流値IHTRと同じである。
スイッチQ2を閉じた状態において、制御部22は、負荷33を流れる電流値が予め定められた電流の閾値未満の値を示したか否か判断する(図6:S7)。すなわち、制御部22は、測定値が、目標値又は目標範囲を含む既定の範囲に属するか判断する。ここで、電流の閾値(図7:Thre1)は、貯留部31のエアロゾル源が枯渇したと判断すべき、予め定められたエアロゾル源の残量の閾値(図7:Thre2)に対応する値である。すなわち、負荷33を流れる電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示した場合、エアロゾル源の残量は閾値Thre2未満の値となったものと判断することができる。
スイッチQ2が閉じられた所定の期間において、電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示した場合(S7:Yes)、制御部22はエアロゾル源の枯渇を検知し、所定の処理を行う(図6:S8)。S6で測定される電圧値及びこれに基づいて求められる電流値が所定の閾値よりも小さい場合、エアロゾル源の残量が少なくなっているため、S6で測定される電圧値及びこれに基づいて求められる電流値がさらに減少するように本ステップでは制御する。例えば、制御部22は、例えば、スイッチQ1又はスイッチQ2の動作を停止させたり、図示していない電力ヒューズを用いて負荷33への給電を切断したりして、エアロゾル生成装置1の動作を停止させてもよい。
なお、図7の時刻t3~t4のように、エアロゾル源の残量が十分である場合には、電流値IHTRは閾値Thre1よりも大きくなる。
S8の後、又はスイッチQ2が閉じられた所定の期間にわたり、電流値IHTRが閾値Thre1以上である場合(S7:No)、制御部22はスイッチQ2を開く(図6:S9)。図7のt4においては、所定の期間が経過し、電流値IHTRが閾値Thre1以上であったため、スイッチQ2がオフになっている。なお、スイッチQ2を閉じる所定の期間(図7の時刻t3~t4に相当)は、S2~S4においてスイッチQ1を閉じる期間(図7の時刻t1~t2に相当)よりも短い。また、S7において、測定値が既定の範囲に属すると判断された場合は、その後に吸引を検知した場合(S1:Yes)におけるスイッチQ1の開閉(S2)において、例えばスイッチングのデューティ比を調整することにより、S6において算出される電流値(測定値)が目標値又は目標範囲に収束するように制御する。ここで、測定値が既定の範囲に属する場合において、測定値を目標値又は目標範囲に収束させるための給電回路の制御(本発明に係る「第1制御モード」とも呼ぶ)よりも、測定値が既定の範囲に属しない場合において、負荷33へ流す電流量を減少させるための給電回路の制御(本発明に係る「第2制御モード」とも呼ぶ)の方が、測定値の変化量が大きくなるように制御される。
以上で、残量推定処理を終了する。その後、S1の処理に戻り、使用者による吸引動作を検知した場合には図6の処理を再度実行する。
図7の時刻t5においては、使用者の吸引動作を検知し(図6:S1:Yes)、スイッチQ1のPWM制御が開始されている。また、図7の時刻t6においては、使用者の吸引動作が終了したと判断され(図6:S3:Yes)、スイッチQ1のPWM制御が停止されている。そして、図7の時刻t7においてスイッチQ2がオンにされ(図6:S5)、シャント抵抗の電流値が算出される(図6:S6)。その後、図7の時刻t7以降に示すように、エアロゾル源の残量Quantityが閾値Thre2未満となり、負荷33の温度THTRが上昇している。そして、負荷33を流れる電流値IHTRが低下し、時刻t8において、制御部22は、電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示したことを検知する(図6:S7:Yes)。この場合、エアロゾル源の枯渇によりエアロゾルの生成ができないことがわかるため、制御部22は、例えば時刻t8以降において使用者の吸引を検知してもスイッチQ1の開閉を行わないようにする。図7の例では、その後、時刻t9において所定期間が経過し、スイッチQ2がオフにされている(図6:S9)。なお、電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示した時刻t8において、制御部22はスイッチQ2をオフにしてもよい。
以上のように、本実施形態では、電圧を変換する電圧変換部211を設けることにより、エアロゾル源の残量又はその枯渇の推定にあたり、制御に用いる変数に混入する誤差が低減され、例えばエアロゾル源の残量に応じた制御の精度を向上させることができる。
<判定期間>
上述の実施形態では、残量判定処理において、制御部22は、スイッチQ2を所定の期間、継続してオンにして、残量センサ34の測定値を取得していた。なお、スイッチQ2を閉じる期間を、残量センサ34及び負荷33へ給電するための「給電シーケンス」と呼ぶものとする。ここで、エアロゾル源の残量の判定を行うために、残量を判定するための「判定期間」を用いるようにしてもよい。判定期間は、例えば給電シーケンスに時間軸において内包され、その長さは可変とする。
図8は、判定期間の長さの決め方の一例を説明するための図である。図8のグラフは、横軸が時間tの経過を示し、縦軸が負荷33を流れる電流値IHTRを示している。また、図8の例では、便宜上、スイッチQ1の開閉に伴う電流値IHTRを省略し、スイッチQ2が閉じられた給電シーケンスにおいて負荷33を流れる電流値IHTRのみを示している。
図8の期間p1は通常時の給電シーケンスであり、左に示す電流値IHTRは、エアロゾル源の残量が十分であるときの模式的なプロファイルである。初期的には、判定期間は給電シーケンス(p1)と同一であるものとする。左に示す例では、通電に伴い負荷33の温度THTRが上昇し、これに伴う負荷33の抵抗値RHTRの増加によって、電流値IHTRは漸減するものの、閾値Thre1未満の値を示さない。このような場合、判定期間は変更されない。
中央に示す電流値IHTRは、判定期間(p1)内に電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示した場合の例を表している。ここで、当該給電シーケンスの開始から電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示すまでの期間p2を、後の給電シーケンスに内包される判定期間の長さとする。すなわち、前の給電シーケンスにおける、電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示した時間に基づき、後の給電シーケンスにおける判定期間を調整する。換言すれば、エアロゾル源が枯渇する可能性が高いほど、判定期間を短く設定する。また、給電シーケンスの長さを基準として、給電シーケンス(判定期間)内に電流値IHTRが閾値Thre1未満になった場合、エアロゾル源が枯渇する可能性が閾値(本発明に係る「第2の閾値」とも呼ぶ)以上になったと判断するようにしてもよい。換言すれば、エアロゾル源が枯渇する可能性が閾値以上の場合のみ、判定期間を給電シーケンスよりも短くするといえる。
右に示す電流値IHTRは、判定期間(p2)内に電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示した場合の例を表している。エアロゾル生成装置1の使用中は、貯留部31に保持されているエアロゾル源の量は減少する一方である。したがって、エアロゾル源が枯渇すると、通常、給電の開始から電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示すまでの期間は短くなる一方であるといえる。図8の例では、上述のように変更される判定期間内において電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示すケースが、繰り返される判定期間において連続して既定数を超えて発生した場合に、エアロゾル源が枯渇した(すなわち、異常)と判断するものとする。なお、エアロゾル源が枯渇した場合には、図8に示すように残量検知回路への給電を停止するようにしてもよい。
図9は、負荷を流れる電流値の変化の他の例を示す図である。図9に示す左と中央の電流値IHTRの変化は、図8と同一である。図9の右に示す電流値IHTRは、エアロゾル源の残量が十分であるときのプロファイルと同じであり、判定期間(p2)内に電流値IHTRは閾値Thre1未満の値を示していない。ここで、図3に示したようなエアロゾル生成装置1においては、その構造上、使用者の吸引の仕方によっては、貯留部31から供給部32へのエアロゾル源の供給は、毛細管現象により行われるため、これを制御部22等によって制御することは困難である。使用者が1回のパフで想定されるよりも長時間吸引した場合や、想定される通常の間隔よりも短い間隔で吸引を行った場合、負荷33の周囲から一時的に通常時よりもエアロゾル源の量が減少する可能性がある。このような場合、図9の中央に示すように、判定期間内に電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示す可能性がある。その後、使用者が異なる吸引の仕方をすれば、図9の右に示すように判定期間内に電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示さない。よって、図9の例では、判定期間内において電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示すケースが、繰り返される判定期間において連続して既定数を超えていないため、貯留部31が貯留したエアロゾル源は枯渇していないと判断される。
以上のような判定期間を採用することで、エアロゾル源が枯渇したか否かの判断の精度をさらに向上させることができる。すなわち、判定期間を変更することにより判定動作における基準を調整することができ、判定の精度を向上させ得る。
<判定処理の変形例>
図10は、判定期間の設定を行う処理の一例を示す処理フロー図である。本変形例では、制御部22は、図6に示した残量推定処理のうち、S5~S9の処理に代えて、図10の判定処理を実行する。
まず、エアロゾル生成装置1の制御部22は、スイッチQ2をオンにする(図10:S5)。本ステップは、図6のS5と同じである。
また、制御部22は、タイマを起動し、経過時間tのカウントを開始する(図10:S11)。
そして、制御部22は、経過時間tが判定期間以上であるか判断する(図10:S12)。経過時間tが判定期間以上でない場合(S12:No)、制御部22は、経過時間のカウントを行う(図10:S21)。本ステップでは、タイマ起動又は前回のS21の処理からの経過時間の差分Δtをtに加算する。
また、制御部22は、負荷33を流れる電流値IHTRを検出する(図10:S6)。本ステップの処理は、図6のS6と同じである。
そして、制御部22は、算出した電流値IHTRが所定の閾値Thre1よりも小さいか判断する(図10:S7)。本ステップは、図6のS7と同様である。電流値IHTRが閾値Thre1以上である場合(S7:No)、S12の処理に戻る。
一方、電流値IHTRが閾値Thre1よりも小さい場合(S7:Yes)、制御部22は、枯渇が検知された判定期間の数を計数するためのカウンタに、1を加算する(図10:S22)。
そして、制御部22は、カウンタが既定値(閾値)を超えたか判断する(S23)。カウンタが既定値を超えたと判断された場合(S23:Yes)、制御部22は、エアロゾル源の枯渇を検知したと判断し、所定の処理を行う(図10:S8)。本ステップは、図6のS8と同じである。
一方、カウンタは既定値を超えていないと判断された場合(S23:No)、制御部22は、給電シーケンスが終了したか判断する(図10:S31)。給電シーケンスが経過していない場合(S31:No)、制御部22は経過時間tを更新してS31の処理に戻る。
一方、給電シーケンスが終了したと判断された場合(S31:Yes)、制御部22は、判定期間を更新する(図10:S32)。本ステップでは、S7において電流値IHTRが閾値Thre1よりも小さいと判断された時点の経過時間tを、新たな判定期間として設定する。すなわち、前の給電シーケンスにおける、測定値が閾値未満の値を示す時間に基づき、後の給電シーケンスにおける判定期間を調整する。換言すれば、前の給電シーケンスにおける測定値に基づき、後の給電シーケンスにおける判定期間の長さを調整する。また、現在の給電シーケンスにおける測定値に基づき、将来の給電シーケンスにおける判定期間の長さを調整するともいえる。
また、S12において、経過時間tが判定期間以上であると判断された場合(S12:Yes)、制御部22は、給電シーケンスが終了したか判断する(図10:S13)。給電シーケンスが終了していない場合(S13:No)、制御部22は、給電シーケンスが終了するまで給電を継続する。判定期間が経過し、給電シーケンスが経過していない状態とは、図9の右に示す期間において、期間p2が経過した後、且つ期間p1が経過する前である。
一方、給電シーケンスが終了したと判断された場合(S13:Yes)、制御部22は、判定期間の長さを給電シーケンスの長さと同一に設定する(図10:S14)。
また、制御部22は、カウンタをリセットする(図10:S15)。すなわち、当該給電期間に伴い規定される判定期間においては、電流値IHTRが閾値Thre1未満の値を示さなかったため、枯渇が検知された判定期間が連続する数を計数するためのカウンタをリセットしている。なお、カウンタをリセットせずに、枯渇が検知された判定期間の数が所定の閾値を超えた場合に異常と判断するようにしてもよい。
S15、S8、又はS32の後、制御部22はスイッチQ2をオフにする(図10:S9)。本ステップは、図6のS9と同じである。
以上のような処理によって、図8及び図9に示した可変の判定期間を実現することができる。
<シャント抵抗>
制御部22は、使用者がエアロゾル生成装置1を吸引していない期間に残量検出経路を機能させ、エアロゾル源の残量を推定する。しかしながら、使用者が吸引していない期間に吸口からエアロゾルが放出されることは好ましくない。すなわち、スイッチQ2を閉じている期間に負荷33がエアロゾル源を蒸発させる量は、少ないほど望ましい。
一方、エアロゾル源の残量がわずかになった場合において、制御部22は、残量の変化を精度よく検知できることが好ましい。すなわち、残量センサ34の測定値は、エアロゾル源の残量に応じて大きく変化するほど分解能が高まるため、望ましい。これらの観点に基づいて、以下、シャント抵抗の抵抗値について説明する。
図11は、貯留部、供給部及び負荷において消費されるエネルギーを模式的に表す図である。Q1は供給部32のウィックの発熱量、Q2は負荷33のコイルの発熱量、Q3は液体のエアロゾル源の温度上昇に要する熱量、Q4は液体から気体へのエアロゾル源の状態変化に要する熱量、Q5は輻射による空気の発熱等を表す。消費されるエネルギーQは、Q1~Q5の和である。
また、物体の熱容量C(J/K)は物体の質量m(g)と比熱c(J/g・K)との積である。また、物体の温度をT(K)変化させるための熱量Q(J/K)は、m×C×Tと表すことができる。したがって、消費されるエネルギーQは、負荷33の温度THTRがエアロゾル源の沸点Tbより低い場合、次の式(6)で模式的に表すことができる。なお、m1は供給部32のウィックの質量、C1は供給部32のウィックの比熱、m2は負荷33のコイルの質量、C2は負荷33のコイルの比熱、m3は液体のエアロゾル源の質量、C3は液体のエアロゾル源の比熱、T0は負荷33の温度の初期値である。
Q=(m1C1+m2C2+m3C3)(THTR-T0) ・・・(6)
また、消費されるエネルギーQは、負荷33の温度THTRがエアロゾル源の沸点Tb以上である場合、次の式(7)で表すことができる。なお、m4は液体であるエアロゾル源のうち蒸発する分の質量、H4は液体であるエアロゾル源の蒸発熱である。
Q=(m1C1+m2C2)(THTR-T0)+m3C3(Tb-T0)+m4H4
・・・(7)
したがって、蒸発に由来したエアロゾルを生成させないためには、閾値Ethreは、次の式(8)に示すような条件を満たす必要がある。
Ethre<(m1C1+m2C2+m3C3)(Tb-T0) ・・・(8)
図12は、負荷33において消費されるエネルギー(電力量)と生成されるエアロゾル量との関係を模式的に示すグラフである。図12の横軸はエネルギーを示し、縦軸はTPM(Total Particle Matter:エアロゾルを形成する物質の量)を示す。図12に示すように、負荷33において消費されるエネルギーが所定の閾値Ethreを超えると、エアロゾルの生成が開始され、さらに消費されるエネルギーにほぼ正比例して、生成されるエアロゾルの量も増加する。なお、図12の縦軸は必ずしも負荷33によって生成されるエアロゾル量でなくてもよい。例えば、エアロゾル源の蒸発に由来して生成されるエアロゾル量でもよい。または、吸口から放出されるエアロゾル量であってもよい。
ここで、負荷33で消費されるエネルギーEHTRは、次の式(9)で表すことができる。なお、WHTRは負荷33の仕事率、tQ2_ONはスイッチQ2をオンにしている時間(s)である。なお、スイッチQ2は、シャント抵抗の電流値を測定するためにある程度の時間だけオンにする必要がある。
EHTR=WHTR×tQ2_ON ・・・(9)
また、残量検出経路を流れる電流値I
Q2、負荷33の温度T
HTRに応じて変化する抵抗値R
HTR(T
HTR)、シャント抵抗の測定電圧V
measを用いて式(9)を変形すると、以下の式(10)になる。
したがって、次の式(11)で表されるように、負荷33において消費されるエネルギーE
HTRが、図12の閾値E
threより小さければ、エアロゾルは生成されない。
これを変形すると、次の式(12)のようになる。すなわち、シャント抵抗の抵抗値R
shuntは、式(12)を満たすような値であれば、残量推定処理においてエアロゾルが生成されないため、好ましい。
一般的に、シャント抵抗を追加する回路への影響を小さくするため、シャント抵抗の抵抗値は、数10mΩ程度の低い値が好ましい。しかし、本実施形態においては、エアロゾルの生成を抑制するという観点から上述のようなシャント抵抗の抵抗値の下限が定まる。下限値は、負荷33の抵抗値よりも大きい、例えば数Ω程度の値であることが好ましい。このように、電源から抵抗器へ給電される給電シーケンスにおいて、負荷が生成するエアロゾル量が所定の閾値以下となる第1条件を満たすようにシャント抵抗の抵抗値を設定することが好ましい。
なお、シャント抵抗の抵抗値を大きくせず、シャント抵抗と直列に、全体の抵抗値を増大させるために追加する調整用抵抗器をさらに備えるようにしてもよい。この場合、追加する調整用抵抗器については両端電圧を測定しないようにしてもよい。
図13は、エアロゾル源の残量Quantityと、負荷33の抵抗値との関係を示すグラフの一例である。図13のグラフは、横軸がエアロゾル源の残量を示し、縦軸が負荷33の温度に応じて定まる抵抗値を示す。また、RHTR(TDepletion)は、エアロゾル源の残量が枯渇した場合の抵抗値である。RHTR(TR.T.)は、室温における抵抗値である。ここで、ビット数を含む制御部22の分解能に対し、電圧や電流、ひいては負荷33の抵抗値や温度の測定レンジを適切に設定することにより、エアロゾル源の残量の推定の精度が向上する。一方、負荷33の抵抗値であるRHTR(TDepletion)とRHTR(TR.T.)との差が大きいほど、エアロゾル源の残量に応じて変動する幅が大きくなる。換言すれば、制御部22の分解能や測定レンジとは別に、負荷33の温度に応じて変化する抵抗値の変動幅を大きくすることでも、制御部22が算出する残量の推定値の精度が向上するといえる。
また、エアロゾル源の残量が枯渇した場合の負荷33の抵抗値R
HTR(T
Depletion)を用いて、当該時点に残量センサ34の出力値に基づいて検知される電流値I
Q2_ON(T
Depletion)を次の式(13)で表すことができる。
同様に、室温における負荷33の抵抗値R
HTR(T
R.T.)を用いて、当該時点に残量センサ34の出力値に基づいて検知される電流値I
Q2_ON(T
R.T.)を、次の式(14)で表すことができる。
そして、電流値I
Q2_ON(T
R.T.)から電流値I
Q2_ON(T
Depletion)を減じた差分ΔI
Q2_ONは、次の式(15)で表すことができる。
式(15)からわかるように、R
shuntを大きくすると電流値I
Q2_ON(T
R.T.)と電流値I
Q2_ON(T
Depletion)との差分ΔI
Q2_ONは小さくなり、エアロゾル源の残量を正確に推定することができない。したがって、式(16)に示すように、差分ΔI
Q2_ONが所望の閾値ΔI
threよりも大きくなるようにシャント抵抗の抵抗値R
shuntを決定するものとする。
式(16)を抵抗値R
shuntについて解けば、残量の推定値の分解能が十分に大きくなるために、抵抗値R
shuntが満たすべき条件は、所望の閾値ΔI
threを用いて次の式(17)で表される。したがって、式(17)を満たすように抵抗値R
shuntを設定すればよい。
本実施形態においては、室温において負荷33に流れる電流値IQ2_ON(TR.T.)と、エアロゾル源が枯渇した場合において負荷33に流れる電流値IQ2_ON(TDepletion)の差分ΔIQ2_ONが、制御部22が検知できる程度の大きさになるように、抵抗値Rshuntを設定した。これに代えて、例えばエアロゾル源の沸点近傍において負荷33に流れる電流値と、エアロゾル源が枯渇した場合において負荷33に流れる電流値の差分が、制御部22が検知できる程度の大きさになるように、抵抗値Rshuntを設定してもよい。一般的に、制御部22が検知できる電流差に対応する温度差が小さいほど、エアロゾル源の残量に対する推定精度は向上する。
ここで、制御部22の分解能及び負荷33の抵抗値を含む残量検出回路の設定が、エアロゾル源の残量に対する推定精度に及ぼす影響についてさらに詳述する。制御部22にnビットのマイクロコントローラを用い、基準電圧としてV
REFを印加する場合、制御部22の分解能Resolutionは、次の式(18)で表すことができる。
また、負荷33が室温である場合に電圧計342が検出する値と、エアロゾル源の残量が枯渇した場合に電圧計342が検出する値の差分ΔV
Q2_ONは、式(15)に基づき、次の式(19)で表すことができる。
従って、式(18),(19)より、制御部22は、0~ΔV
Q2_ONの範囲に亘って、次の式(20)で表される値及びその整数倍を電圧差として検知できる。
さらに式(20)より、制御部22は、室温からエアロゾル源の残量が枯渇した場合における負荷33の温度に亘って、次の式(21)で表される値及びその整数倍をヒータの温度として検知できる。
一例として、式(21)における変数を変化させた場合における、制御部22の負荷33の温度に対する分解能を、次の表1に示す。
表1から明らかなように、各変数の値を調整することで、制御部22の負荷33の温度に対する分解能は大きく変動する傾向にある。エアロゾル源の残量が枯渇しているか否かを判断するためには、制御部22は、制御部22による非制御時及び制御開始時の温度である室温と、エアロゾル源の残量が枯渇した場合の温度を最低限区別できる必要がある。すなわち、室温における残量センサ34の測定値と、エアロゾル源の残量が枯渇した場合の温度における残量センサ34の測定値が、制御部22が区別できる程度の有意差を持っている必要がある。換言すれば、制御部22の負荷33の温度に対する分解能は、エアロゾル源の残量が枯渇した場合の温度と室温の差分以下の必要がある。
前述したように、エアロゾル源の残量が充分にある場合は、負荷33の温度はエアロゾル源の沸点近傍に維持される。エアロゾル源の残量が枯渇しているかより正確に判断するためには、制御部22は、このエアロゾル源の沸点とエアロゾル源の残量が枯渇した場合の温度を区別できることが好ましい。すなわち、エアロゾル源の沸点における残量センサ34の測定値と、エアロゾル源の残量が枯渇した場合の温度における残量センサ34の測定値が、制御部22が区別できる程度の有意差を持っていることが好ましい。換言すれば、制御部22の負荷33の温度に対する分解能は、エアロゾル源の残量が枯渇した場合の温度とエアロゾル源の沸点の差分以下であることが好ましい。
さらに、残量センサ34の測定値を、エアロゾル源の残量が枯渇しているか否かの判断のみではなく、負荷33の温度センサとしても用いる場合は、制御部22は、制御部22における非制御時及び制御開始時の温度である室温と、エアロゾル源の沸点を区別できることが好ましい。すなわち、室温における残量センサ34の測定値と、エアロゾル源の沸点における残量センサ34の測定値が、制御部22が区別できる程度の有意差を持っていることが好ましい。換言すれば、制御部22の負荷33の温度に対する分解能は、エアロゾル源の沸点と室温の差分以下であることが好ましい。
より高精度に負荷33の温度センサとして用いようとすると、制御部22の負荷33の温度に対する分解能は、10℃以下であることが好ましい。より好ましくは5℃以下であることが好ましい。さらにより好ましくは1℃以下であることが好ましい。また、エアロゾル源の残量が枯渇しつつある場合と、実際にエアロゾル源の残量が枯渇した場合を正確に区別しようとするならば、制御部22の負荷33の温度に対する分解能は、エアロゾル源の残量が枯渇した場合の温度と室温の差分の約数であることが好ましい。
なお、表1から明らかなように制御部22のビット数を向上させることで、換言すれば制御部22を高性能化することで、制御部22の負荷33の温度に対する分解能は容易に向上する。しかし、制御部22を高性能化しようとすると、コスト,重量,サイズなどの増大を招来してしまう。
以上のように、負荷33が生成するエアロゾルの量が所定の閾値以下となる第1条件と、エアロゾル源の残量の減少を残量センサ34の出力値に基づいて制御部22が検知可能になるという第2条件との少なくともいずれかを満たすようにシャント抵抗の抵抗値を決めるようにしてもよく、両者を満たすような抵抗値であればさらに好ましい。また、第1条件を満たす最小値と第2条件を満たす最大値のうち、第2条件を満たす最大値により近い値であってもよい。このようにすれば、測定中におけるエアロゾルの生成を低減させつつも、残量検知の分解能をできる限り向上させることができる。その結果として、エアロゾル源の残量を高精度のみならず短期間に推定できるため、測定中におけるエアロゾルの生成をさらに低減できる。
また、第1条件と第2条件は、いずれも負荷33の温度の変化に対する残量センサ34の測定値である負荷33に流れる電流値の変化の応答性に関するものであるといえる。負荷33の温度の変化に対する負荷33に流れる電流値の変化の応答性が強い場合は、直列につないだシャント抵抗341と負荷33の合成抵抗において、負荷33が支配的な場合である。つまり、シャント抵抗の抵抗値Rshuntは小さい値であるため、第2条件は満たしやすくなるものの、第1条件は満たしにくくなる。
一方、負荷33の温度の変化に対する負荷33に流れる電流値の変化の応答性が弱い場合は、直列につないだシャント抵抗341と負荷33の合成抵抗において、シャント抵抗341が支配的な場合である。つまり、シャント抵抗の抵抗値Rshuntは大きい値であるため、第1条件は満たしやすくなるものの、第2条件は満たしにくくなる。
すなわち第1条件を満たすためには、負荷33の温度の変化に対する負荷33に流れる電流値の変化の応答性が既定の上限以下である必要がある。一方の第2条件を満たすためには、負荷33の温度の変化に対する負荷33に流れる電流値の変化の応答性が既定の下限以上である必要がある。そして、第1条件と第2条件の双方を満たすためには、負荷33の温度の変化に対する負荷33に流れる電流値の変化の応答性が、既定の上限と下限で定義される範囲に属する必要がある。
<回路の変形例1>
図14は、エアロゾル生成装置1が備える回路の変形例を示す図である。図14の例では、残量検出経路がエアロゾル生成経路を兼ねている。すなわち、電圧変換部211、スイッチQ2、残量センサ34、負荷33が直列に接続されている。そして、エアロゾルの生成と、残量の推定とを1つの経路で行う。このような構成であっても、残量の推定を行うことができる。
<回路の変形例2>
図15は、エアロゾル生成装置1が備える回路の他の変形例を示す図である。図15の例では、リニアレギュレータに代えてスイッチングレギュレータである電圧変換部212を備える。一例として電圧変換部212は、昇圧型のコンバータであり、インダクタL1と、ダイオードD1と、スイッチQ4と、平滑コンデンサとして機能するキャパシタC1及びC2とを備える。電圧変換部212は、電源21からエアロゾル生成経路と残量検出経路とに分岐する前に設けられている。よって、制御部22が電圧変換部212のスイッチQ4の開閉を制御することにより、エアロゾル生成経路と残量検出経路とにそれぞれ異なる大きさの電圧を出力することができる。なお、リニアレギュレータに代えてスイッチングレギュレータを用いる場合でも、図14におけるリニアレギュレータと同様の位置にスイッチングレギュレータを設けてもよい。
またエアロゾル源の残量を検出するために、経路全体に一定電圧を印加する必要がある残量検出回路に比べ、印加電圧に対する制約が少ないエアロゾル生成経路を機能させる場合の電力損失が、残量検出経路を機能させる場合の電力損失より小さくなるように、電圧変換部212を制御するようにしてもよい。これによって電源21の蓄電量の浪費を抑制できる。また、制御部22は、エアロゾル生成経路よりも残量検知経路の方が、負荷33を流れる電流が小さくなるように制御する。これにより残量検知経路を機能させてエアロゾル源の残量を推定している間に、負荷33におけるエアロゾルの生成を抑制できる。
またエアロゾル生成経路を機能させる間においては、スイッチングレギュレータは、ローサイド・スイッチQ4のスイッチングを停止して、オン状態にし続ける「直結モード」(「直結状態」とも呼ぶ)で動作させるようにしてもよい。すなわち、スイッチQ4のデューティ比を100%にしてもよい。スイッチングレギュレータをスイッチングさせた場合の損失としては、導通損に加え、スイッチングに伴う遷移損やスイッチング損が挙げられる。しかし、直結モードでスイッチングレギュレータを動作させることで、スイッチングレギュレータにおける損失を導通損のみにすることができるため、電源21の蓄電量の利用効率が上がる。また、エアロゾル生成経路を機能させている間の一部においてのみ、スイッチングレギュレータを直結モードで動作させてもよい。一例として、電源21の蓄電量が充分にあり、その出力電圧が高い場合には、スイッチングレギュレータを直結モードで動作させる。一方、電源21の蓄電量が少なくなり、その出力電圧が低い場合には、スイッチングレギュレータのスイッチングを行ってもよい。このような構成であっても、残量の推定を行うことができると共に、リニアレギュレータを用いる場合よりも損失を低減することができる。なお、昇圧型に代えて、降圧型または昇降圧型のコンバータを用いてもよい。
<その他>
エアロゾル生成装置が加熱する対象は、ニコチンやその他の添加材料を含む液体の香味源であってもよい。この場合、添加成分保持部を通過させずに、生成されたエアロゾルを使用者が吸引する。このような香味源を利用する場合も、上述のエアロゾル生成装置によれば残量を精度よく推定できる。
また、制御部22は、スイッチQ1及びQ2を同時にオンにしないように制御する。すなわち、エアロゾル生成経路と残量検出経路とが同時に機能しないように制御する。さらに、スイッチQ1及びQ2の開閉状態を切り替える際には、両者がオフになったデッドタイムを設けるようにしてもよい。このようにすれば、2つの経路に電流が流れることを抑制できる。一方、デッドタイムにおいて負荷33の温度をできる限り低下させないよう、デッドタイムは短いことが好ましい。
図6に示した処理においては、使用者が行う1回のパフに対して残量推定処理を1回、行うものとして説明した。しかしながら、1回ずつでなく複数回のパフに対して1回の残量推定処理を交互に行うようにしてもよい。また、エアロゾル源保持部3の交換後はエアロゾル源の残量は十分であるため、所定の回数のパフの後に、残量推定処理を開始するようにしてもよい。すなわち、エアロゾル生成経路よりも残量検知経路の方が通電の頻度が小さくなるようにしてもよい。このようにすれば、過度な残量推定処理が抑制され、適切なタイミングにおいてのみ実行されるため、電源21の蓄電量の利用効率が向上する。