JP7300309B2 - トナーバインダー - Google Patents
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Description
電子写真プロセスでは感光体上に形成された静電潜像をトナーにより現像し、形成されたトナー像を紙等の記録媒体に転写した後、加熱により定着させて画像を形成している。このプロセスにおいて、トナーには帯電安定性、現像槽内で固着しない保存安定性及び高温での耐ホットオフセット性等が必須となる。
環境負荷及び高速化の観点からトナーを低温定着化する技術として、結着樹脂として用いられる非晶性ポリエステルやスチレン-アクリル樹脂のガラス転移温度を下げることが挙げられるが、この手法ではトナーの保存安定性が悪くなるという問題点がある。
前記結晶性樹脂として結晶性アルキルアクリレート及び/又は結晶性アルキルメタクリレートを構成成分とする結晶性ビニル樹脂を結着樹脂として用いることで低温定着性が向上することが知られている。(特許文献1~5)
しかし、例えば特許文献1ではビニル樹脂の結晶性が低いことに由来し、融点が低く、保管温度が50℃を超える場合、トナーの保存安定性が極端に悪くなる。特許文献2では、トナーバインダー中の前記ビニル樹脂の重量割合が低いことにより、シャープメルト性が損なわれ、低温定着性が満足いくものではなかった。特許文献3では、ビニル樹脂を構成するアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートの重量割合が高く、結晶性が高いことに由来し、高温で非常に低粘度化するため、高温でのローラー剥離性が悪くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。特許文献4では吸湿性の高い単量体を用いているため、高温高湿下での樹脂の体積固有抵抗が低くなり、帯電性が悪くなる。特許文献5ではビニル樹脂の酸価が高く吸湿性が高いため、特に高温高湿下での樹脂の体積固有抵抗が低くなり、帯電安定性が悪くなる。
すなわち本発明は、単量体(a)、単量体(a)以外の単量体(b)及びスチレンを必須構成単量体とするビニル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、単量体(a)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレート及び/又は鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40のビニルエステルであり、単量体(b)のハンセン溶解度パラメーター(HSP)の水素結合項(dH)が6.0以上13.0以下であり、ビニル樹脂(A)のDSC測定による融点が40~80℃であり、ビニル樹脂(A)の比誘電率ε’が2.2~4.0であり、ビニル樹脂(A)の体積固有抵抗値が3.0×1010~6.3×1011Ω・cmであり、トナーバインダーの重量を基準としてビニル樹脂(A)の重量割合が20.1~90重量%であり、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として単量体(a)の重量割合が15~90重量%であることを特徴とするトナーバインダーである。
本発明のトナーバインダーは、単量体(a)を必須構成単量体とするビニル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、単量体(a)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレート及び/又は鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40のビニルエステルであり、ビニル樹脂(A)のDSC測定による融点が40~80℃であり、ビニル樹脂(A)の比誘電率ε’が2.2~4.0であり、ビニル樹脂(A)の体積固有抵抗値が3.0×1010~6.3×1011Ω・cmであり、トナーバインダーの重量を基準としてビニル樹脂(A)の重量割合が20.1~99.9重量%であり、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として単量体(a)の重量割合が15~90重量%であることを特徴とするトナーバインダーである。
本発明において「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートあるいはアクリレートを意味する。
上記の単量体(a)は、鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレート及び/又は鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40のビニルエステルである。
鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレートとしては、炭素数18~36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレート[オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ヘンエイコサニル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セリル(メタ)アクリレート、モンタニル(メタ)アクリレート、ミリシル(メタ)アクリレート、ドトリアコンタ(メタ)アクリレート等]及び炭素数18~36の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリレート[2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート等]が挙げられる。
鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40のビニルエステルとしては、炭素数18~36の直鎖のアルキル基を有するビニルエステル[例えば、ステアリン酸ビニル、ベヘン酸ビニル、トリアコンタン酸ビニル及びヘキサトリアコンタン酸ビニル等]及び炭素数18~36の分岐のアルキル基を有するビニルエステル等が挙げられる。
これらの内、トナーの保存安定性の観点から好ましくは炭素数18~30の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレート及び炭素数18~36の直鎖のアルキル基を有するビニルエステルであり、更に好ましくは炭素数18~24の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレート及び炭素数18~24の直鎖のアルキル基を有するビニルエステルである。単量体(a)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
単量体(a)の重量割合が15重量%未満であると低温定着性が悪化し、90重量%より大きいと耐ホットオフセット性が悪化する。
単量体(b)の水素結合項(dH)が15.0を超えると、保存安定性及び帯電安定性が悪化し、5.0未満の場合は保存安定性が悪化する。
以降、単量体(b)の化合物名に続けて記載した括弧内に単量体(b)のハンセン溶解度パラメーター(HSP)の水素結合項(dH)の値を記載した。
具体的には、アクリルアミド(12.8)、メタアクリルアミド(11.6)、N-メチルアクリルアミド(9.7)及びN-エチルアクリルアミド(8.7)等が挙げられる。
なお、本明細書中、カルボキシル基を有する化合物及び構造における炭素数には、カルボキシル基部分に含まれる炭素数は含まない。
更に好ましくはメタクリル酸メチル、酢酸ビニル、ビニルプロピオン、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルピロリドン、(無水)マレイン酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等である。
単量体(c)としては、単量体(a)、単量体(b)以外の単量体であれば特に制限はないが、例えばスチレン、アルキル基の炭素数が1~3のアルキルスチレン(例えばα-メチルスチレン及びp-メチルスチレン等)、アクリル酸ヒドロキシエチル、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸が挙げられる。これらのうちトナーとしたときの保存安定性の観点から好ましくはスチレン及びマレイン酸である。
装置(一例) : HLC-8120 〔東ソー(株)製〕
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液(不溶解分を孔径1μmのPTFEフィルターでろ過したものを用いる)
移動相 :テトラヒドロフラン(重合禁止剤を含まない)
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(重量平均分子量: 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)〔東ソー(株)製〕
融点が40℃未満の場合は保存安定性が悪くなり、80℃を超えると低温定着性が悪くなる。
装置 : 安藤電気(株)製 TR-1100型誘電体損自動測定装置
安藤電気(株)製 TO-198型恒温槽
固体用電極: SE-70型固体用電極
測定環境 : 23℃、50%RH
ビニル樹脂(A)を成型用リング(塩ビ製、φ25mm、高さ5mm)に1.5g入れ、プレス機で98kN×10秒プレスし、厚さ約2.3mm、φ=25mmの円柱状に成型した。成型品を23℃、50%RHで30分以上放置し、成型用リングから外し、成型品の厚さをマイクロメーターで測定した(D、単位μm)。主電極と対電極に挟んで1kHzで測定し、CONDUCTANCE(Gx、単位nS)と静電容量(Cx、単位pF)を記録した。得られた数値を下記式(1)又は(2)に代入することにより体積固有抵抗値及び誘電率を算出した。
体積固有抵抗値=3.14×(0.9)2/(Gx×D×10-13) (1)
誘電率=(14.39×Cx×D)/32400 (2)
ビニル樹脂(A)の比誘電率は、算出された誘電率と空気の比誘電率1.000585との比で求められる。
ビスフェノールAに付加するアルキレンオキサイドとしては、炭素数が2~4のアルキレンオキサイドが好ましく、具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-、2,3-、1,3-又はiso-ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
炭素数5~36のアルキレングリコールとしては、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール及び1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
炭素数6~36の脂環式ジオールとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
炭素数6~36の脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、炭素数6~36の脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは2~4)等が挙げられる。
2価フェノールとしては、単環2価フェノール(例えばハイドロキノン)及びビスフェノールA以外のビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物(好ましくは平均付加モル数2~30)等が挙げられる。
[式中、Xは炭素数1~3のアルキレン基、-SO2-、-O-、-S-又は直接結合を表わす。Arは、水素原子がハロゲン原子又は炭素数1~30のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基を表す。]
これらのアルコール成分(x)のうち低温定着性の観点から、好ましくは炭素数2~4の脂肪族ジオール及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、更に好ましくは1.2-プロピレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物である。
脂肪族(脂環式を含む)モノカルボン酸としては、炭素数1~30のアルカンモノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、セロチン酸、モニタン酸及びメリシン酸等)及び炭素数3~24のアルケンモノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸及びリノール酸等)等が挙げられる。
芳香族モノカルボン酸としては、炭素数7~36の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、メチル安息香酸、p-t-ブチル安息香酸、フェニルプロピオン酸及びナフトエ酸等)等が挙げられる。
これらのカルボン酸成分(y)のうち低温定着性及び耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは炭素数4~36のアルカンジカルボン酸、炭素数4~36のアルケンジカルボン酸、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸及び炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸であり、更に好ましくはアジピン酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びトリメリット酸である。
反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
チタン含有触媒としては、チタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、特開2006-243715号公報に記載の触媒〔チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、及びそれらの分子内重縮合物等〕及び特開2007-11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)等が挙げられる。
アンチモン含有触媒としては、三酸化アンチモン等が挙げられる。
ジルコニウム含有触媒としては、酢酸ジルコニル等が挙げられる。
ニッケル含有触媒としては、ニッケルアセチルアセトナート等が挙げられる。
アルミニウム含有触媒としては、水酸化アルミニウム及びアルミニウムトリイソプロポキシド等が挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度が、50℃以上であると保存安定性が良好であり、80℃以下であると低温定着性が良好である。
<測定条件>
(1)30℃から20℃/分で150℃まで昇温
(2)150℃で10分間保持
(3)20℃/分で-35℃まで冷却
(4)-35℃で10分間保持
(5)20℃/分で150℃まで昇温
上記測定によって得られた示差走査熱量曲線から、縦軸を吸発熱量、横軸を温度とするグラフを描き、そのグラフの低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
試料0.5gに50mlのTHFを加え、3時間撹拌還流させる。冷却後、グラスフィルターにて不溶解分をろ別し、グラスフィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧乾燥する。グラスフィルター上の乾燥した樹脂分の重量と試料の重量比から、不溶解分を算出する。
フローテスター{たとえば、(株)島津製作所製、CFT-500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)を軟化点とする。
融点が40℃以上の場合は保存安定性が良好となり、80℃以下の場合は低温定着性が良好となる。
なお、トナーバインダーの融点はビニル樹脂(A)の融点と同様の条件で測定される。
トナーバインダーの酸価は、例えばJIS K 0070などの方法で測定される。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置及び連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続式混合装置としては、二軸混練機、スタティックミキサー、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等が挙げられる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100部に対して、好ましくは1~40部、更に好ましくは3~10部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20~150部、更に好ましくは40~120部である。
なお、離型剤の軟化点は非晶性ポリエステル樹脂(B)の軟化点と同様の条件で測定される。
着色剤はトナーの重量を基準として、好ましくは0.05~60重量%、更に好ましくは0.1~55重量%、特に好ましくは0.5~50重量%である。
離型剤はトナーの重量を基準として、好ましくは0~30重量%、更に好ましくは0.5~20重量%、特に好ましくは1~10重量%である。
荷電制御剤はトナーの重量を基準として、好ましくは0~20重量%、更に好ましくは0.1~10重量%、特に好ましくは0.5~7.5重量%である。
流動化剤はトナーの重量を基準として、好ましくは0~10重量%、更に好ましくは0~5重量%、特に好ましくは0.1~4重量%である。
また、添加剤の合計含有量はトナーの重量を基準として、好ましくは3~70重量%、更に好ましくは4~58重量%、特に好ましくは5~50重量%である。
トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
これらの製造方法のうち、生産性、低温定着性および保存性の観点から混練粉砕法および溶解懸濁法が好ましい。
具体的には、電解水溶液であるISOTON-II(ベックマン・コールター社製)100~150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1~5mL加える。さらに測定試料を2~20mg加え、試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして50μmアパーチャーを用いて、トナー粒子の体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナー粒子の体積平均粒径(D50)(μm)、個数平均粒径(μm)、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)を求める。
オートクレーブにキシレン17部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で140℃まで昇温した。単量体(a)であるベヘニルアクリレート[日油(株)製、以下同様]50部、単量体(c)であるスチレン[出光興産(株)製、以下同様]25部、単量体(b)であるアクリロニトリル[ナカライテクス(株)製、以下同様]23.5部、単量体(b)であるメタクリル酸[ナカライテクス(株)製、以下同様)]1.5部、パーブチルD[ジ-t-ブチルパーオキシド、日油(株)、以下同様]0.15部及びキシレン17部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で2時間保ち重合を完結させたのち、170℃にて脱溶剤を行い、ビニル樹脂(A1)を得た。ビニル樹脂(A1)の重量平均分子量、融点、体積固有抵抗値、比誘電率及び酸価を表1に記載した。
表1記載の単量体の組成に基づきそれぞれの単量体及びラジカル開始剤を指定の重量部としたこと以外は製造例1と同様にしてビニル樹脂(A2)~(A10)を得た。分析値はそれぞれ表1に示したとおりであった。
撹拌機付のオートクレーブにキシレン[ナカライテクス(株)製、以下同様]100部、単量体(a)であるベヘニルアクリレート100部、チオグリコール酸1.5部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で85℃まで昇温した。ジ-t-ブチルパーオキシド[アゾV65、富士フィルム和光純薬(株)製、以下同様]0.80部を仕込み、オートクレーブ内温度を85℃のまま同温度にコントロールしながら3時間かけて重合を行った。その後更に105℃まで昇温し、105℃で1時間撹拌した後に30℃まで冷却した。冷却後、反応容器内に単量体(b)であるメタクリル酸ヒドロキシエチル(東京化成工業(株)製)2.5部を加え55℃まで昇温した後、シジクロヘキシルカルボジイミド(東京化成工業(株)製)4部、4-メチルアミノピリジン(東京化成工業(株)製)0.1部、t-Buハイドロキノン(東京化成工業(株)製)0.1部をクロロホルム20部に溶解した混合液を1時間かけて滴下した。その後更に55℃で5時間撹拌を行った。その後35℃まで冷却して固形分を除いた溶解分をメタノール沈殿法により精製した。得られた固形分を減圧乾燥して白色固体のマクロモノマーを得た。白色固体のマクロモノマーは重量平均分子量が6,000、融点が65℃であった。
さらに、別のオートクレーブにキシレン17部を仕込み、窒素で置換した後、170℃まで昇温した。次いで、同温度で白色固体のマクロモノマー64部、単量体(b)であるメタクリル酸メチル[ナカライテクス(株)製、以下同様]30部、単量体(b)であるメタクリロニトリル[ナカライテクス(株)製、以下同様]16部、単量体(b)であるメタクリル酸4部、パーブチルD0.15部及びトルエン17部の混合溶液を、同温度で3時間かけて滴下し重合を行った。更に同温度で2時間保ち重合を完結させたのち、170℃にて脱溶剤を行い、ビニル樹脂(A11)を得た。ビニル樹脂(A11)の重量平均分子量、融点、体積固有抵抗値、比誘電率及び酸価を表1に記載した。
比較製造例1~3は表1に記載の単量体の組成に基づきそれぞれの単量体を指定の重量部としたこと以外は製造例1と同様にしてビニル樹脂(A’1)~(A’3)を得た。分析値はそれぞれ表1に示したとおりであった。
[非晶性ポリエステル樹脂(B1)の製造]
反応槽中に、ビスフェノールAのプロピレンオキシド2モル付加物164部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド3モル付加物577部、テレフタル酸260部、無水トリメリット酸24部及び縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、0.5~2.5kPaの減圧下230℃で反応させ、生成する水を留去しながら10時間反応させ、酸価が1mgKOH/g以下になった後、180℃に冷却した。無水トリメリット酸21部を加え、1時間反応させた。150℃に冷却し、スチールベルトクーラーを使用して非晶性ポリエステル樹脂(B1)を得た。分析値は表2に示したとおりであった。
ビニル樹脂(A1)85.0部及び、非晶性ポリエステル樹脂(B1)15.0部を混合し、小型二軸混練機[株式会社 井元製作所製 IMC-IADA型]に45g/分で供給し、100℃、180rpmで混練した。得られたものを室温まで冷却することにより、本発明のトナーバインダー(C1)を得た。
表3に示した重量部数のビニル樹脂(A)と非晶性ポリエステル樹脂(B)とを混合し、実施例1と同様にして、本発明のトナーバインダー(C2)~(C16)を得た。
表3に示した重量部数のビニル樹脂(A’)と非晶性ポリエステル樹脂(B)とを混合し、実施例1と同様にして、トナーバインダー(C’1)~(C’3)を得た。
トナーバインダーの融点は示差走査熱量計(「TA Instruments(株)製 DSC20を用いて測定した。トナーバインダーを20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程のビニル樹脂(A)由来の吸熱ピークのトップを示す温度を融点とした。
[ワックス分散液1の製造]
冷却管、温度計及び撹拌機を備えた反応容器に、カルナウバワックス15部及び酢酸エチル85部を投入し、80℃に加熱して溶解し、1時間かけて30℃まで冷却し、カルナウバワックスを微粒子状に晶析させ、更に「ウルトラビスコミル」[アイメックス製]で湿式粉砕し(ワックス分散液1)を作製した。
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩[エレミノールRS-30、三洋化成工業社製]11部、スチレン139部、メタクリル酸138部、アクリル酸ブチル184部及び過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。更に、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で5時間熟成してビニルポリマー(スチレン-メタクリル酸-アクリル酸ブチル-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液(微粒子分散液1)を得た。(微粒子分散液1)をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製LA-920)で測定した体積平均粒径は、0.15μmであった。
水1200部、カーボンブラック[キャボット社製、リーガル400R]40部、実施例1で製造したトナーバインダー(C1)20部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を3本ロールを用いて90℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕して顔料マスターバッチ(MB1)を得た。
[水相s1の製造]
攪拌棒をセットした容器に、水955部、(微粒子分散液1)15部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液[エレミノールMON7、三洋化成工業製]30部を投入し、乳白色の液体(水相s1)を得た。
ビーカー内にトナーバインダー(C1)191部、顔料マスターバッチ(MB1)25部、(ワックス分散液1)67部、酢酸エチル124部を投入して溶解・混合均一化し、(油相s1)を得た。この(油相s1)中に(水相s1)600部を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)を使用し、回転数12000rpmで25℃で1分間分散操作を行い、さらにフィルムエバポレータで減圧度-0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で30分間脱溶剤し、水性着色重合体分散体(X1)を得た。
水性着色重合体分散体(X1)100部を遠心分離し、更に水60部を加えて遠心分離して固液分離する工程を2回繰り返した後、35℃で1時間乾燥した後に、分級装置(エルボジェット、マツボウ(株)製)で、3.17μm以下の微粉が12個数%以下、8.0μm以上の粗粉が3体積%以下となるように、微粉及び粗粉を除去して着色重合体粒子(Cs1)を得た。
次に、得られた着色粉体の着色重合体粒子(Cs1)100部に対し、疎水性シリカ[アエロジルR972、日本アエロジル(株)製]を1部添加し、周速を15m/secとして30秒混合、1分間休止を5サイクル行い、トナー組成物(Ts1)を得た。
トナーバインダー(C1)に変えて(C2)~(C16)及び(C’1)~(C’3)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順でそれぞれ[油相s2]~[油相s16]及び[油相s’1]~[油相s’3]を得て、表4~6記載の組成でトナー組成物(Ts2)~(Ts16)及び(Ts’1)~(Ts’3)を得た。
得られたトナーバインダーの低温定着性、保存安定性、耐ホットオフセット性、帯電安定性の測定方法、評価方法、判定基準を以下の方法で行った。その結果を表4~6に示した。
トナー組成物を紙面上に0.8mg/cm2となるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。上記の重量密度で粉体を均一に載せることができるのであれば他の方法を用いてもよい。
この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cm2の条件で通した時のコールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。この評価条件では一般に140℃以下が必要とされる。
50℃、湿度80%に温調調湿された乾燥機にトナー組成物を15時間静置し、ブロッキングの有無を目視で判断し、下記の基準で保存安定性を評価した。
[判定基準]
○:ブロッキングは発生していない
×:ブロッキングが発生している
トナー組成物を紙面上に0.6mg/cm2となるよう均一に載せる。このときトナー組成物を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)5kg/cm2の条件で通した時のホットオフセット温度を測定した。この評価条件では一般に140℃以上が必要とされる。
トナー組成物0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F-150)20gとを50mlのガラス瓶に入れ、相対湿度(1)50%(2)85%で8時間以上調湿する。
ターブラーシェーカーミキサーにて50rpm×10および60分間摩擦撹拌し、それぞれの時間毎に帯電量を測定した。測定にはブローオフ帯電量測定装置[東芝ケミカル(株)製]を用いた。相対湿度50%の摩擦時間10分の帯電量をもって飽和帯電量とした。また、「相対湿度85%の摩擦時間60分の帯電量/相対湿度50%の摩擦時間60分の帯電量」を計算し、これを帯電安定性の指標とした。
[帯電安定性の判定基準]
◎:0.6以上
○:0.5以上、0.6未満
△:0.3以上、0.5未満
×:0.3未満
Claims (3)
- 単量体(a)、単量体(a)以外の単量体(b)及びスチレンを必須構成単量体とするビニル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、単量体(a)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレート及び/又は鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40のビニルエステルであり、単量体(b)のハンセン溶解度パラメーター(HSP)の水素結合項(dH)が6.0以上13.0以下であり、ビニル樹脂(A)のDSC測定による融点が40~80℃であり、ビニル樹脂(A)の比誘電率ε’が2.2~4.0であり、ビニル樹脂(A)の体積固有抵抗値が3.0×1010~6.3×1011Ω・cmであり、トナーバインダーの重量を基準としてビニル樹脂(A)の重量割合が20.1~90重量%であり、ビニル樹脂(A)を構成する単量体の合計重量を基準として単量体(a)の重量割合が15~90重量%であることを特徴とするトナーバインダー。
- ビニル樹脂(A)の酸価が19.9mgKOH/g以下である請求項1に記載のトナーバインダー。
- トナーバインダーがアルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とを必須構成単量体とする非晶性ポリエステル樹脂(B)を含有し、非晶性ポリエステル樹脂(B)の軟化点が90~144℃である請求項1又は2に記載のトナーバインダー。
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