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JP7398807B2 - 微生物吸着材およびこれを用いた微生物殺菌方法 - Google Patents

微生物吸着材およびこれを用いた微生物殺菌方法 Download PDF

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JP7398807B2
JP7398807B2 JP2020539594A JP2020539594A JP7398807B2 JP 7398807 B2 JP7398807 B2 JP 7398807B2 JP 2020539594 A JP2020539594 A JP 2020539594A JP 2020539594 A JP2020539594 A JP 2020539594A JP 7398807 B2 JP7398807 B2 JP 7398807B2
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Description

本発明は、糞尿等に含まれる大腸菌等の細菌、鳥インフルエンザウイルス等のウイルス等の微生物を吸着する微生物吸着材およびこれを用いた微生物殺菌方法に関する。
人や家畜にとって有害な細菌やウイルスに対しては種々の対策がなされている。例えば、家畜の糞尿の処理方法は、形状や畜種によって異なっているが、「野積み」、「素掘り」での処理は、水質汚濁、悪臭の発生源となっており改善が求められている。また、畜産農家から発生した処理水を河川や湖沼等の公共用水域に排出する場合、「水質汚濁防止法」に基づき排水基準(生活環境項目および健康項目)が適用される。このように、処理水の排出には、排水基準が設けられているものの、処理水に含まれる大腸菌群数は、限りなくゼロにすることが望ましいのは言うまでもない。
ここで、処理水に含まれる大腸菌群の除去方法として、塩素またはオゾン注入、紫外線照射等が一般的であるが、塩素注入は、安価であるものの鋼製配管等の設備を腐食させるという問題がある。また、オゾン注入や紫外線照射は、処理コストが高くなるため、特に小規模の畜産農家では設備導入が難しいという問題がある。
また、鳥インフルエンザウイルスは、変異によって高病原性鳥インフルエンザウイルスに変化することがある。野鳥の腸管内に高病原性鳥インフルエンザウイルスが保有されると、養鶏農場周囲にウイルスを含む糞便を落下させ、それらが鶏の感染源となっていると考えられている。ここで、高病原性鳥インフルエンザウイルスの鶏舎内への侵入を防ぐためには、鶏舎周囲への石灰等の薬剤散布が重要となるが、化学薬品の大量使用による環境負荷とコスト面が課題となっていた。
発明者らは、特定の火山灰土壌、特に特定の鬼界アカホヤ火山灰土壌が腸管出血性大腸菌や鳥インフルエンザウイルスの吸着性能に優れるのみならず、驚くことに殺菌効果もあることを見出した。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、安価にかつ環境への負担の少ない細菌やウイルス等の微生物を吸着・殺菌できる微生物吸着材およびこれを用いた微生物殺菌方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の微生物吸着材は、
Alが30wt%以上である火山灰土壌を用いたことを特徴としている。
この特徴によれば、細菌、ウイルス等の微生物を含む水分を吸着しやすく、吸着・殺菌能力が高い。
前記火山灰土壌は、Feが3~8wt%である鬼界アカホヤ火山灰土壌であることを特徴としている。
この特徴によれば、Alの割合がFeに比べ3倍以上と多く、アルミニウムイオンとリン酸イオンで錯体を形成しやすいため、リン酸を含む微生物等の吸着・殺菌能力に優れる。
前記火山灰土壌は、SiOが39~65wt%、Alが31~45wt%、Feが3~8wt%、その他が0~22wt%からなることを特徴としている。
この特徴によれば、天然の鬼界アカホヤ火山灰土壌への加工処理が少ない。
前記火山灰土壌は、焼成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、天然の鬼界アカホヤ火山灰土壌中に含まれている雑菌を消滅させることができる。
前記焼成は、1000℃以下で行われることを特徴としている。
この特徴によれば、火山灰土壌が有する細孔の径が小さいものが存在しやすく、微生物を吸着しやすい。
前記火山灰土壌は、少なくとも径100nm以下の細孔を有することを特徴としている。
この特徴によれば、細孔の径が小さいものが存在しやすく、微生物を吸着しやすい。
前記火山灰土壌は、比表面積が3.9m-1以上であることを特徴としている。
この特徴によれば、表面積が広く、微生物を吸着しやすい。
前記火山灰土壌は、粒径1mm以下の粉末であることを特徴としている。
この特徴によれば、粉末状であるので散布して使用することが簡便である。
前記火山灰土壌は、土粒子密度2.6~2.7g/cmの粉末であることを特徴としている。
この特徴によれば、土粒子密度が低いため、攪拌やばっ気を行うことで水に浮かせた状態で使用することができる。
前記課題を解決するために、本発明の微生物吸着材を用いた微生物殺菌方法は、前記微生物吸着材を用いたことを特徴としている。
この特徴によれば、細菌やウイルス等の微生物を安価にかつ環境への負担の少なく殺菌することができる。
本発明の実施例における微生物吸着材を構成するアカホヤの焼成温度と細孔径分布の関係を示すグラフである。 実施例における微生物吸着材を構成するアカホヤの大腸菌に対する吸着能力を調べた実験結果を示す図である。 本発明の実施例1における微生物吸着材の大腸菌に対する殺菌能力を調べた実験結果を示す図である。 本発明の実施例2における微生物吸着材の鳥インフルエンザウイルスに対する吸着能力を調べた実験結果を示す図である。 本発明の実施例5における微生物吸着材に吸着された大腸菌の生存試験の結果を示すグラフである。 本発明の実施例6における微生物吸着材に吸着されたO-157の生存試験の結果を示すグラフである。
発明者らは、家畜の糞尿等に含まれる腸管出血性大腸菌(以下、単に「大腸菌」と表記することもある。)等の細菌、鳥インフルエンザウイルス等のウイルス等の微生物を吸着ないし殺菌する素材として、火山灰土壌、特に天然の鬼界アカホヤ火山灰土壌(以下、単に「アカホヤ」と表記する。)が優れるとの知見を得た。研究の結果から、成分および構造に着目することが有意であったことから、先ずこの事項について説明する。
微生物吸着材による微生物の吸着ないし殺菌のメカニズムについて説明する。微生物吸着材は、径100nm以下の無数の細孔を有し、その比表面積が大きいため、ファンデルワールス力や水素結合による微生物に対する物理的な吸着性に優れているとともに、吸水性にも優れている。さらに、微生物吸着材は、Al(酸化アルミニウム)およびFe(酸化鉄)の組成比が高く、親水性を示すため、吸水後では、イオン化したAl3+(アルミニウムイオン)およびFe3+(鉄イオン)が微生物の細胞膜の表面(リン脂質の親水基)を構成するPO 3-(リン酸イオン)と高い化学結合性(化学反応性)を示し、不溶性のAlPO(リン酸アルミニウム)およびFePO(リン酸鉄)が生成される。イオン化したAl3+およびFe3+とPO 3-との化学結合の化学式を下記の化1に示す。
Figure 0007398807000001
尚、微生物の細胞膜は、リン脂質の自己組織化により脂質二重層を構成しているが、細胞膜の表面(リン脂質の親水基)を構成するPO 3-が微生物吸着材のAl3+およびFe3+と化学結合してAlPOおよびFePOを生成することにより、リン脂質が分解する。特に、大腸菌については、このリン脂質の分解を原因として細胞膜の分解が起こり死滅するものと考えられる。尚、微生物吸着材に吸着されず処理水中を浮遊している大腸菌についても、処理水中に溶け出したAl3+およびFe3+と化学結合することにより同様に死滅する。
このように、微生物吸着材は、径100nm以下の無数の細孔により微生物を物理的に吸着するとともに、イオン化したAl3+およびFe3+が微生物の細胞膜を構成するPO 3-と高い化学結合性を示してAlPOおよびFePOを生成することにより、微生物を効率よく吸着ないし殺菌することができる。
本発明に係る微生物吸着材を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。尚、本実施例において成分組成比等の各試験結果はサンプル数3以上の平均値である。
微生物吸着材は、宮崎県東諸県郡地区産出のアカホヤを粉砕してふるいにかけた後、次の条件で焼成することにより土壌由来の細菌を死滅させるとともに、構成化合物を安定させ、一定の形状と強度を確保する。
温度 800℃
保持時間 60分(昇温100℃/1時間)
焼成装置(ADVANTEC社製電気マッフル炉FUW220PA)
焼成前のアカホヤの成分組成比は以下のとおりであった。尚、成分組成比は、島津製作所社製エネルギー分散型蛍光X線分析装置EDX-720を用いてJIS K0119:2008により分析した。
51.0wt% SiO
39.7wt% Al
4.71wt% Fe
1.49wt% K
1.40wt% CaO
0.51wt% MgO
0.53wt% TiO
0.66wt% その他
焼成後のアカホヤの成分組成比は以下の表1のとおりであった。
Figure 0007398807000002
焼成後のアカホヤは、Alの成分組成比が38.3wt%、Feの成分組成比が3.96wt%であり、SiOに対してAlおよびFeの比率が高い。
ここで、焼成温度によって細孔径分布、比表面積が変化しているので以下説明する。尚、細孔径分布は、Micromeritics社製AutoPoreV9620を用いて水銀圧入法(JIS R1655)により分析した。
図1のグラフに示されるように、アカホヤの細孔は、径0.01~10μm(100~10000nm)に分布しており、焼成温度800~1000℃では、径100nm以下の細孔は1体積%以上であり細孔の分布があるが、焼成温度1100℃、1150℃では、径100nm以下の細孔は1体積%未満であり細孔の分布がなくなっている。すなわち、焼成温度が高くなるにつれて細孔が閉塞し、細孔径分布が変化することが確認された。
また、比表面積は、Micromeritics社製FlowSorb3 2310を用いてBET法(JIS Z8830)により求めた。
表2に示されるように、アカホヤの比表面積は、焼成無しで68.7m-1であったものが、焼成温度800℃で36.0m-1、焼成温度900℃で9.54m-1、焼成温度1000℃で3.9m-1、焼成温度1100℃で1.35m-1、焼成温度1150℃で0.79m-1と低下している。すなわち、焼成温度が高くなるにつれて細孔の閉塞に伴い比表面積が低下する。
Figure 0007398807000003
また、図2の写真に示されるように、焼成温度800℃で焼成したアカホヤに大腸菌の浮遊液をろ過した後の通過液を培養すると、生菌が検出されなかった(図2の中段参照)。また、大腸菌の浮遊液をろ過した後のアカホヤに再びバッファ液を通して洗浄した洗浄液を培養しても、同様の結果が得られた(図2の下段参照)。すなわち、アカホヤの焼成は、径100nm以下の細孔の分布があり、その比表面積が3.9m-1以上(好ましくは36.0~69.0m-1)となる焼成温度1000℃以下(好ましくは800℃以下)で行われることにより、アカホヤの細孔による微生物の物理的な吸着能力を維持することができる。また、焼成温度が100℃未満では、土壌由来の細菌が十分に死滅しない可能性があることから、焼成温度は、好ましくは100~1000℃、さらに好ましくは180~800℃であることが判明した。さらに、火山灰土壌中の有機物は無い方が好ましく、この場合、焼成温度は800℃以上であることが望ましい。
次に、上述したアカホヤと同様の加工処理を行った栃木県鹿沼地区産出の赤玉土について説明する。
焼成前の赤玉土の成分組成比は以下のとおりであった。
46.5wt% SiO
34.9wt% Al
13.2wt% Fe
1.37wt% K
0.58wt% CaO
1.31wt% MgO
1.35wt% TiO
0.79wt% その他
焼成後の赤玉土の成分組成比は以下の表3のとおりであった。
Figure 0007398807000004
焼成後の赤玉土は、Alの成分組成比が33.0wt%、Feの成分組成比が12.5wt%であり、SiOに対してAlおよびFeの比率が高い。また、アカホヤと比べてAlの成分組成比が低く、Feの成分組成比が高い。
次に、上述したアカホヤおよび赤玉土と同様の加工処理を行った宮崎県新富地区産出の粘土について説明する。
焼成前の成分組成比は以下のとおりであった。
65.2wt% SiO
23.0wt% Al
5.18wt% Fe
3.71wt% K
0.24wt% CaO
1.65wt% MgO
0.81wt% TiO
0.21wt% その他
焼成後の粘土の成分組成比は以下の表4のとおりであった。
Figure 0007398807000005
焼成後の粘土は、Alの成分組成比が22.7wt%、Feの成分組成比が4.76wt%であり、SiOに対してAlおよびFeの比率が低い。また、アカホヤと比べてAlの成分組成比が低く、Feの成分組成比が略同じである。
尚、上述したアカホヤ、赤玉土および粘土と同様の加工処理を行った宮崎県都城地区産出のシラスについて、焼成後のシラスは、一般的な成分の特徴として、SiOに対してAlおよびFeの比率が低い。また、アカホヤと比べてAlおよびFeの成分組成比が低い。
同じく、栃木県鹿沼地区産出の鹿沼土について、焼成後の鹿沼土は、一般的な成分の特徴として、SiOに対してAlおよびFeの比率が低い。また、アカホヤと比べてAlおよびFeの比率が低い。
すなわち、アカホヤは、赤玉土、粘土、シラスおよび鹿沼土と比べて、安定度定数の高いAl3+を生じるAlの成分組成比が高く、かつ赤玉土と比べてFeの成分組成比が低いため、例えばAl3+(アルミニウムイオン)と糞尿中のPO 3-(リン酸イオン)で錯体を形成しやすく、当該錯体と微生物の細胞膜を構成するPO 3-との逐次反応が起こり、微生物をより効率よく吸着することができる。
このように、微生物吸着材は、九州南部において地下の比較的浅い場所に無尽蔵に存在する自然素材であるアカホヤから構成されることにより、細菌やウイルス等の微生物に対する高い吸着能力を有しながら、安価にかつ環境への負担の少なくすることができる。尚、微生物吸着材として用いるアカホヤは、九州南部において産出されたものであれば、宮崎県東諸県郡地区産出のものに限らない。
尚、以下の各実施例におけるアカホヤ等の火山灰土壌は、上述した成分のものを用いている。
実施例1に係る微生物吸着材について説明する。実施例1の微生物吸着材は、粉砕し次の条件で乾熱滅菌した後、粒径0.5mm以下に調整したアカホヤ10gを径15mmの円筒形状のカラム内に充填することにより構成されている。
温度 180℃
時間 40分
乾熱滅菌器(ADVANTEC社製STA620DA)
微生物吸着材に大腸菌(10cfu/ml)10mlを通過させた後、カラム内のアカホヤ10mgを4℃で保存し、吸着した大腸菌の生存性を培養法により確認すると、図3の写真に示されるように、アカホヤに吸着された大腸菌は時間の経過と共に死滅していき、6日以降は生菌が検出されなかった(図3の左シャーレ参照)。尚、対照実験として、同一のカラムに宮崎県都城地区産出のシラス10gを充填して同様の実験を行った場合には、17日後まで生菌が検出された(図3の右シャーレ参照)。すなわち、アカホヤを素材とする微生物吸着材は、大腸菌の吸着・殺菌能力を有する。
尚、本実施例では、180℃で40分乾熱滅菌したアカホヤを使用する例について説明したが、焼成温度800℃で焼成されたアカホヤについても、同様の結果が得られた。
実施例2に係る微生物吸着材について説明する。実施例2の微生物吸着材は、粉砕し乾熱滅菌したアカホヤ0.2gを0.6mlのカラム(マイクロチューブ)に入れることにより構成されている。
微生物吸着材に鳥インフルエンザウイルス(H3N2亜型)0.4ml(HA価16倍、図4の上から2段目参照)を接種し、アカホヤを通過した後の通過液を2~256倍に希釈して血球凝集価(HA価)を測定すると、図4の写真に示されるように、鳥インフルエンザウイルスがアカホヤに吸着され、血球と凝集しなかった(HA価陰性、図4の下から2段目参照)。尚、対照実験として、0.6mlのカラムに宮崎県都城地区産出のシラス0.2gを入れて同様の実験を行った場合には、鳥インフルエンザウイルスがシラスにほとんど吸着されず血球と凝集した(HA価8倍,図4の最下段参照)。すなわち、アカホヤを素材とする微生物吸着材は、鳥インフルエンザウイルスの吸着能力を有する。
実施例3に係る微生物吸着材について説明する。実施例3の微生物吸着材は、天然または焼成されたアカホヤであり、大型の容器に家畜の糞尿等の処理対象と一緒に投入した後、攪拌ことにより、処理対象物に含まれる大腸菌等の微生物との接触を促進しながら吸着ないし殺菌する。尚、これらの処理において発生する汚泥(使用後の微生物吸着材)は、大地還元が可能であることから処理コストが安く、汚泥の処理設備も不要となる。
実施例4に係る微生物吸着材について説明する。実施例4の微生物吸着材は、粒径0.5mm以下の粉末状に加工処理された天然または焼成されたアカホヤであり、散布しやすくなっている。粉末状の微生物吸着材は、例えば畜舎周囲に散布されることにより、畜舎周囲に存在する微生物を吸着ないし殺菌し、微生物の畜舎内への侵入を防ぐことができる。また、微生物吸着材として自然素材であるアカホヤを使用することにより、大量散布してもコストが安く、環境負荷も少ない。
これらのことから、粒径は1mm以下、好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下である。
さらに、微生物吸着材の素材としてのアカホヤを攪拌またはばっ気させることにより、水中に浮遊させた状態で使用できるようにしてもよい。また、例えば畜舎の出入口等に設置したトレー等に水を張り、水面に微生物吸着材を散布し、水面に浮かせた状態とすることにより、微生物吸着材を靴や家畜の脚等に確実に付着させ、靴や家畜の脚等に存在する微生物を確実に吸着ないし殺菌し、微生物の畜舎内への侵入を防ぐことができる。
これらのことから、土粒子密度は2.6~2.7g/cmが好ましく、さらにできる限り密度が低いことが好ましい。尚、土粒子密度は、JIS A1202:2009により求めた。
実施例5では大腸菌の生存試験について説明する。実施例5の微生物吸着材は、粉砕し次の条件で乾熱滅菌した後、粒径0.5mm以下に調整したアカホヤ、赤玉土、鹿沼土、シラス各10gを径15mmの円筒形状のカラム内にそれぞれ充填することにより構成されている。
温度 180℃
時間 40分
乾熱滅菌器(ADVANTEC社製STA620DA)
微生物吸着材に定量の大腸菌を通過させた後、カラム内のアカホヤ、赤玉土、鹿沼土、シラス各10mgをそれぞれ4℃で保存し、吸着した大腸菌の生存性を培養法により確認すると、図5のグラフに示されるように、アカホヤ、赤玉土、鹿沼土、シラスに吸着された大腸菌は時間の経過と共にその菌数が減少していくことが確認された。このように、アカホヤ、赤玉土、鹿沼土、シラスを素材とする微生物吸着材は、大腸菌の吸着・殺菌能力を有する。
ここで、菌数が100分の1まで減少、すなわち99%の菌が死滅することで、有意な殺菌効果と言えるので、この値を評価基準とした。菌数が100分の1未満となる日数、すなわち大腸菌が死滅する日数は、アカホヤ、赤玉土に吸着された大腸菌は3日後、鹿沼土に吸着された大腸菌は9日後、シラスに吸着された大腸菌は17日後であり、それぞれ殺菌効果が確認された。このように、アカホヤ、赤玉土を素材とする微生物吸着材は、短期間で殺菌効果が得られることが確認された。尚、アカホヤ、赤玉土、鹿沼土に吸着された大腸菌は、その菌数が17日後には約1log cfu/gまで減少しており、長期間かけて略全ての菌が殺菌されることが確認された。
実施例6では腸管出血性大腸菌O-157の生存試験について説明する。尚、微生物吸着材は実施例5と同様に製作したものを用いた。
微生物吸着材に定量の腸管出血性大腸菌O-157(以下、単に「O-157」と表記する。)を通過させた後、カラム内のアカホヤ、赤玉土、鹿沼土、シラス各10mgをそれぞれ4℃で保存し、吸着したO-157の生存性を培養法により確認すると、図6のグラフに示されるように、アカホヤ、赤玉土、鹿沼土に吸着されたO-157は時間の経過と共にその菌数が減少していくことが確認された。このように、アカホヤ、赤玉土、鹿沼土を素材とする微生物吸着材は、O-157の吸着・殺菌能力を有する。
ここで、菌数が100分の1まで減少、すなわち99%の菌が死滅することで、有意な殺菌効果と言えるので、この値を評価基準とした。菌数が100分の1未満となる日数、すなわちO-157が死滅する日数は、アカホヤ、赤玉土に吸着されたO-157は7日後、鹿沼土に吸着されたO-157は14日以上後であり、それぞれ殺菌効果が確認された。このように、アカホヤ、赤玉土を素材とする微生物吸着材は、短期間で殺菌効果が得られることが確認された。尚、アカホヤ、赤玉土に吸着されたO-157は、その菌数が1ヶ月後には約1log cfu/gまで減少しており、長期間かけて略全ての菌が殺菌されることが確認された。
これら実施例5,6から、表5に示されるように、アカホヤ、赤玉土を素材とする微生物吸着材は、鹿沼土、シラスを素材とする微生物吸着材と比べて大腸菌およびO-157に対する有意な殺菌能力を有する。尚、表5中の「○」は有意な殺菌能力があることを示し、「△」は長い期間を要するものの殺菌能力があること示し、「×」は殺菌能力が不十分であったものを示している。
また、図5を参照し大腸菌に対する短期間(3日間以内)での殺菌能力、すなわち0日から3日後までの菌数の減少率は、アカホヤが赤玉土よりも優位である。同様に、図6を参照しO-157に対する短期間(7日間以内)での殺菌能力、すなわち0日から7日後までの菌数の減少率は、赤玉土がアカホヤよりも優位である。
Figure 0007398807000006
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例1~4では、微生物吸着材に天然または焼成等の加工処理が行われたアカホヤが用いられる例について説明したが、これに限らず、Alを30wt%以上含有している火山灰土壌であれば、例えば天然の赤玉土、あるいは焼成された赤玉土であってもよく、鹿沼土や粘土やシラス等の火山灰土壌にAlを30wt%以上含有させるように加工処理したものであってもよい。
また、微生物吸着材は、大腸菌以外の細菌(例えば、黄色ブドウ球菌、サルモネラ属菌、カンピロバクター、枯草菌芽胞、炭疽菌芽胞等)、鳥インフルエンザウイルス以外のウイルス等の微生物に対しても吸着効果を奏する。
また、微生物吸着材は、焼成に限らず、例えば紫外線等により殺菌処理されてもよい。
産業上の利用分野
1.家畜飼育環境の浄化システムの吸着材としての利用。
2.空気の浄化システム、例えば大気中の微生物を吸着する吸着材としての利用。
3.水の浄化システム、例えば閉鎖性水域(湖沼)における富栄養塩(リン)除去および大腸菌または大腸菌群等の微生物の吸着材としての利用。
4.バイオテロ対策システムにおける炭疽菌芽胞等の細菌やウイルスの吸着材としての利用。
5.病原体吸着物質含有飼料としての利用。

Claims (8)

  1. Alが30wt%以上である火山灰土壌を用いたものであって、
    前記火山灰土壌は、Feが3~8wt%である鬼界アカホヤ火山灰土壌であることを特徴とする微生物吸着材。
  2. Al が30wt%以上である火山灰土壌を用いたものであって、
    前記火山灰土壌は、SiOが39~65wt%、Alが31~45wt%、Feが3~8wt%、その他が0~22wt%からなることを特徴とする微生物吸着材。
  3. 前記火山灰土壌は、焼成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の微生物吸着材。
  4. 前記火山灰土壌は、少なくとも径100nm以下の細孔を有することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の微生物吸着材。
  5. 前記火山灰土壌は、比表面積が3.9m-1以上であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の微生物吸着材。
  6. 前記火山灰土壌は、粒径1mm以下の粉末であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の微生物吸着材。
  7. 前記火山灰土壌は、土粒子密度2.6~2.7g/cmの粉末であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の微生物吸着材。
  8. 前記請求項1ないしのいずれかに記載の微生物吸着材を用いた微生物殺菌方法。
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