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JP7396464B2 - 中空糸膜の製造方法 - Google Patents

中空糸膜の製造方法 Download PDF

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JP7396464B2 JP2022512003A JP2022512003A JP7396464B2 JP 7396464 B2 JP7396464 B2 JP 7396464B2 JP 2022512003 A JP2022512003 A JP 2022512003A JP 2022512003 A JP2022512003 A JP 2022512003A JP 7396464 B2 JP7396464 B2 JP 7396464B2
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Description

本発明は、中空糸膜および中空糸膜の製造方法に関する。
特許文献1(特開2012-81533号公報)、特許文献2(国際公開第2016/136294号)および特許文献3(特表2018-506161号公報)には、セルロースアセテート以外のセルロース系樹脂とセルロース系ナノファイバーとを含む中空糸膜が開示されている。
特開2012-81533号公報 国際公開第2016/136294号 特表2018-506161号公報
中空糸膜が逆浸透(RO)法等の膜分離処理に用いられる場合において、中空糸膜の透過水量が経時的に減少するという問題がある。中空糸膜の透過水量が経時的に減少すると、膜分離処理に必要な運転エネルギーが経時的に増大するといった問題が生じる。
中空糸膜を構成するポリマー材料にセルロース系ナノファイバーを添加することにより、一般に中空糸膜の強度が向上し、経時的な物理的変化が抑制され、透過水量の経時的な減少を抑制する効果が期待される。
本発明は、透水性能とその透水性能の維持率との両方に優れた中空糸膜を提供することを目的とする。
(1) セルロースエステルおよびセルロース系ナノファイバーを含む、中空糸膜。
(2) 前記セルロースエステルおよび前記セルロース系ナノファイバーの総量に対する前記セルロース系ナノファイバーの量の比率は、0.01~10質量%である、(1)に記載の中空糸膜。
(3) 前記セルロース系ナノファイバーの繊維幅(繊維径)は1~200nmである、(1)または(2)に記載の中空糸膜。
(4) セルロースエステルおよびセルロース系ナノファイバーを含む中空糸膜の製造方法であって、
紡糸原液をノズルから空中走行部を経て凝固液中に吐出して、前記紡糸原液の凝固物を前記凝固液中から曳き出すことにより、中空糸型の半透膜である中空糸膜を得る、紡糸工程を含み、
前記紡糸原液は、セルロースエステル、セルロース系ナノファイバー、溶媒および非溶媒を含み、
前記紡糸工程の前に前記紡糸原液を混練する、製造方法。
(5) 前記セルロースエステル、前記セルロース系ナノファイバーの粉体、前記溶媒および前記非溶媒を混合してなる前記紡糸原液が混練されるか、
前記セルロース系ナノファイバーの粉体を前記溶媒に分散させてなるスラリーを、前記セルロースエステルおよび前記非溶媒と混合してなる前記紡糸原液が混練されるか、または、
前記セルロース系ナノファイバーの粉体を前記非溶媒に分散させてなるスラリーを、前記セルロースエステルおよび前記溶媒と混合してなる前記紡糸原液が混練される、(4)に記載の製造方法。
(6) 前記紡糸原液において、前記セルロースエステルおよび前記セルロース系ナノファイバーの総量に対する前記セルロース系ナノファイバーの量の比率は、0.01~10質量%である、(4)または(5)に記載の製造方法。
(7) 前記紡糸原液中のセルロースエステルの濃度は、20~60質量%である、(4)~(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8) 前記紡糸原液を混練するときの温度は、150~200℃である、(4)~(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9) 前記紡糸原液を混練するときのせん断速度は、500~3500sec-1である、(4)~(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10) 前記紡糸原液において、前記セルロース系ナノファイバーの繊維幅(繊維径)は1~200nmである、(4)~(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11) (4)~(10)のいずれかに記載の製造方法により製造される、セルロースエステルおよびセルロース系ナノファイバーを含む、中空糸膜。
本発明によれば、透水性能とその透水性能の維持率との両方に優れた中空糸膜を提供することができる。
中空糸膜の製造方法の一例を説明するための模式図である。 染色試験後の実施例3の中空糸膜のマイクロスコープ写真である。 染色試験後の比較例2の中空糸膜のマイクロスコープ写真である。 強伸度の測定における破断後の実施例3の中空糸膜のマイクロスコープ写真である。 強伸度の測定における破断後の比較例2の中空糸膜のマイクロスコープ写真である。 膜性能試験装置の一例を説明するための模式図である。 実施例および比較例について、破断強度とFRとの関係を示すグラフである。
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
<中空糸膜>
本実施形態の中空糸膜は、中空糸型の半透膜である。
中空糸膜は、セルロースエステルおよびセルロース系ナノファイバーを含む。
(セルロースエステル)
セルロースエステルとしては、例えば、酢酸セルロース(三酢酸セルロース、一酢酸セルロース、二酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースなど)、フタル酸セルロース、コハク酸セルロースなどが挙げられる。
セルロースエステルは、好ましくは酢酸セルロースである。酢酸セルロースは、殺菌剤である塩素に対する耐性があり、微生物の増殖を抑制できる特徴を有している。酢酸セルロースは、耐久性の点から、好ましくは三酢酸セルロースである。
(セルロース系ナノファイバー)
セルロース系ナノファイバー(CNF)は、例えば、木材、植物等に由来する天然由来のセルロースをナノメートルオーダーのサイズに細分化(解繊)することで得られる。
解繊を行う方法としては、例えば、機械的な粉砕法および化学的な細分化法の少なくともいずれかを用いることができる。化学的な細分化法としては、例えば、TEPMO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)酸化、リン酸エステル化、カルボシキメチル化、スルホン化、ザンテート化、酵素処理などが挙げられる。
CNFの市販品としては、CNFの粉体、CNFが水または有機溶剤に分散してなるゲルなどの製品を購入することができる。
セルロース系ナノファイバー(以下、「CNF」と略す場合がある)は、セルロース系樹脂(セルロースまたはセルロース誘導体)を含む。
セルロース誘導体としては、例えば、セルロースエステル、セルロースエーテル、それらの混合物などが挙げられる。
セルロースエステルとしては、例えば、酢酸セルロース(三酢酸セルロース、一酢酸セルロースおよび二酢酸セルロース)、フタル酸セルロース、コハク酸セルロースなどが挙げられる。
セルロースエーテルとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。
セルロースエステルおよびCNFの総量に対するCNFの量の比率(CNF比率)は、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%であり、さらに好ましくは0.01~3質量%であり、最も好ましくは0.01~1質量%である。なお、CNF含有率は、下記式により算出される。
CNF比率(質量%)=[CNFの量]/([セルロースエステルの量]+[CNFの量])×100
CNF比率が低すぎると、中空糸膜の強度が低くなる。一方、CNF比率が高すぎると、中空糸膜の分画性(塩除去率)が低くなる。
CNFの繊維幅(繊維径)は、好ましくは1~200nmであり、より好ましくは1~50nmである。なお、CNFの繊維幅は、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)、SPM(走査型プローブ電子顕微鏡)、E-SEM(環境制御型走査電子顕微鏡)、クライオSEMなどによって測定できる。
CNFの繊維長は、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは20nm~10μmである。なお、CNFの繊維長は、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)、SPM(走査型プローブ電子顕微鏡)、E-SEM(環境制御型走査電子顕微鏡)、クライオSEMなどによって測定できる。
(中空糸膜の形状等)
中空糸膜の内径は、好ましくは30μm以上300μm以下であり、より好ましくは35μm以上260μm以下である。
中空糸膜(膜全体)の厚みは、好ましくは20~200μmであり、より好ましくは30~150μmである。なお、膜厚は(外径-内径)/2で算出できる。
中空糸膜の中空率は、好ましくは10~65%であり、より好ましくは12~55%である。なお、中空率は、中空糸膜の横断面における中空部の面積の割合であり、「中空部断面積/(膜部断面積+中空部断面積)×100(%)」で表される。
中空糸膜の平均孔径(膜全体の微細孔の平均孔径)は、2nm以下であることが好ましい。平均孔径の測定方法としては、例えば、示差走査熱量測定(DSC)法が挙げられる。
本実施形態の中空糸膜は、逆浸透(RO)法、ブラインコンセントレーション(BC)法等の特に中空糸膜が高圧に曝される膜分離処理に用いられる場合に、中空糸膜の透過水量の経時的な減少を抑制する効果が発揮される。これにより、当該中空糸膜を用いた膜分離処理に必要な運転エネルギーの経時的な増大が抑制される。
なお、BC法とは、例えば、特開2018-65114号公報に記載されるような、中空糸膜モジュールの一方の第1室に対象溶液の一部を流し、他方の第2室に対象溶液の他の一部を流して、第1室内の対象溶液を加圧することで、第1室内の対象溶液に含まれる溶媒(水など)を中空糸膜を介して第2室内に移行させ、第1室内の対象溶液を濃縮し、第2室内の対象溶液を希釈する膜分離方法である。
また、RO法やBC法を用いた処理は、他の処理と組み合わせたシステムの一部として用いられることが多いため、中空糸膜の透過水量が経時的に減少すると、システム全体の制御が困難になる場合がある。このため、透過水量維持率が高い本実施形態の中空糸膜を、RO法やBC法が他の処理と組み合わせられたシステムに用いることにより、特にシステム全体の制御を容易にすることができる。
また、本実施形態の中空糸膜は、特に、中空糸膜の外側から加圧される場合(すなわち、中空糸膜の内側より中空糸膜の外側の液の圧力の方が高い場合)に、中空糸膜の透過水量の経時的な減少を抑制することができる。
<中空糸膜の製造方法>
本発明は、上記のセルロースエステルおよびセルロース系ナノファイバーを含む中空糸膜を得るための中空糸膜の製造方法にも関する。
本実施形態の中空糸膜の製造方法は、少なくとも後述の紡糸工程を含む。
なお、本実施形態の中空糸膜の製造方法において用いられる紡糸方法は、「溶液紡糸」と呼ばれる方法であり、特許文献2(国際公開第2016/136294号)に開示されるような(溶融紡糸)とは異なる紡糸方法である。
〔紡糸工程〕
図1を参照して、紡糸工程では、紡糸原液(spinning dope)10をノズル11から空中走行部を経て凝固液21中に吐出して、紡糸原液の凝固物を凝固液中から曳き出すことにより、中空糸型の半透膜である中空糸膜が得られる。中空糸膜の曳き出し等は、例えば、ローラー12,13,14,15により行われる。なお、曳き出し速度は、ローラー13の表面速度である。
(紡糸原液)
紡糸原液(スピニングドープ)は、中空糸膜の原材料(上述の中空糸膜を構成するセルロースエステルおよびセルロース系ナノファイバーを含む材料)と、溶媒および非溶媒と、を含む。溶媒は、セルロースエステルを溶解可能な液体であり、非溶媒は、セルロースエステルを溶解しない液体(水を除く)である。なお、紡糸原液は、溶媒と非溶媒に加えて、さらに水を含んでいてもよい。
紡糸原液中のセルロースエステルの濃度は、好ましくは20~60質量%であり、より好ましくは30~50質量%である。
セルロースエステルの濃度が低すぎると、分画性や膜の強度が低くなる。一方、セルロースエステルの濃度が高すぎると、透水性が低くなる。また、セルロースエステルの濃度が高すぎると、紡糸原液の粘度が高くなり過ぎて、紡糸の実施が困難になる場合がある。
セルロースエステルおよびCNFの総量に対するCNFの量の比率(CNF比率)は、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%であり、さらに好ましくは0.01~3質量%であり、最も好ましくは0.01~1質量%である。なお、CNF含有率は、下記式により算出される。
CNF比率(質量%)=[CNFの仕込み量]/([セルロースエステルの仕込み量]+[CNFの仕込み量])×100
CNF比率が低すぎると、中空糸膜の強度が低くなる。一方、CNF比率が高すぎると、中空糸膜の分画性が低くなる。また、CNF比率が高すぎると、紡糸原液の粘度が高くなり過ぎて、紡糸の実施が困難になる場合がある。
紡糸原液中の溶媒(S)/非溶媒(NS)の質量比(S/NS比)は、好ましくは40/60~70/30である。紡糸原液中の溶媒/非溶媒の質量比が小さくなりすぎる(NSの比率を大きくしすぎる)と、膜断面の構造の均質性が高まるが、紡糸安定性が低下することがあるため、S/NS比は、より好ましくは50/50~70/30である。
(混練)
本実施の形態において、紡糸原液は、紡糸工程の前に混練される。「混練」とは、紡糸原液の材料を混合した後、さらに、後述するような特定の範囲のせん断力を付与し、高温および/または加圧系にて強制的にCNFを紡糸原液中に分散させることを意味する。このような混練を実施することで、紡糸原液中でのCNFの分散性(分散均一性)が向上し、CNFの凝集等による中空糸膜の欠陥の発生が抑制され、中空糸膜の強度が向上し、透水性能の維持率の向上が期待される。
混練工程は、例えば、プラネタリーミキサー、エクストルーダー、ニーダー(加圧式ニーダー、双腕式ニーダーなど)等を用いて実施される。
紡糸原液を混練するときの温度は、セルロースエステルの溶解性と熱による変性を考慮し、好ましくは150~200℃であり、より好ましくは160~190℃である。
混練時のせん断速度は、混練度の向上とせん断による熱劣化を考慮し、好ましくは500~3500sec-1であり、より好ましくは500~2000sec-1である。
中空糸膜の構成材料となるセルロースエステルを含むポリマー、セルロース系ナノファイバー(CNF)、溶媒および非溶媒を混合する際のポリマー、CNF等の添加順序や混合方法は、特に限定されない。
例えば、ポリマー、溶媒および非溶媒の混練物にCNFを添加してもよく、また、溶媒または非溶媒中にCNFを分散させてなるスラリーを、ポリマーを含む混練物に添加してもよい。
なお、紡糸原液の最終的な混練の後に、フィルタリングによって紡糸原液から繊維長の大きいCNFもしくは大きなクラスターを除去することも好ましい。これにより、紡糸原液中でのCNFの分散性(分散均一性)がさらに向上し、CNFの凝集等による中空糸膜の欠陥の発生が抑制され、中空糸膜の強度がさらに向上し、透水性能の維持率のさらなる向上が期待される。
(凝固液)
凝固液は、好ましくは溶媒と非溶媒(水を除く)とを含む。なお、この場合、凝固液は、溶媒と非溶媒に加えて、さらに水を含んでいてもよい。凝固液中の溶媒および非溶媒の総量の比率(以下、「凝固液の濃度」と記す場合がある)は、好ましくは30~70質量%であり、より好ましくは33~50質量%である。
また、凝固液の温度は、好ましくは10~30℃である。この場合、中空糸膜の膜厚方向の構造均質性を高めることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
実施形態で説明した中空糸膜の製造方法により、以下の条件で実施例1の中空糸膜が製造された。
(紡糸原液の組成)
セルロースエステル:三酢酸セルロース(CTA)(LT35、ダイセル社製)
セルロースエステル濃度:41.2質量%(紡糸原液中)
CNF:市販のCNFの粉体(第一工業製薬株式会社製、I-2SX)
CNF比率(CTAとCNFの総量に対するCNFの量の比率):1.0質量%
溶媒:N-メチルピロリドン(NMP)
非溶媒:エチレングリコール(EG)
〔溶媒/非溶媒(S/NS)比= 55/45〕
安息香酸〔0.3質量%〕
(紡糸原液の調製)
上記のCNFの粉末を他の材料と共に混合し、混合された材料(紡糸原液)を混練することで、紡糸工程で用いる紡糸原液を調製した。
混練は、温度:185℃、せん断速度:1500~1700〔1/sec〕の条件で、原液の混練滞留時間を30分に調整して実施した。
(紡糸工程の条件)
紡糸原液の溶解温度:185℃
紡糸原液の吐出温度:158℃
吐出用のノズル:三分割ノズル(ノズルの断面積:0.05mm
〔ノズルの断面積とは、ノズルの先端部分における紡糸原液吐出孔の断面積である。〕
空中走行部(AG)滞留時間:0.06秒
凝固液の温度:18℃
曳き出し速度:40m/分
(凝固液の組成)
溶媒(S):NMP
非溶媒(NS):EG

凝固液の濃度〔(Sの質量+NSの質量)/凝固液の質量〕:45%
S/NS比は、紡糸原液と同じ。
〔後処理工程の条件〕
熱水処理の条件
温度 98℃
時間 20分
塩漬(塩アニール)処理の条件
食塩水の濃度 4.5質量%
食塩水の温度 82℃
時間 20分
〔実施例2~11〕
表1に示されるように、CNF添加濃度、セルロースエステル種、原料溶液のS/NS比、混練温度、混練時のせん断速度、凝固浴温度が変更された。なお、実施例7において、LT35/LT75の比は、88/12とした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例2~11の中空糸膜が製造された。(尚、表1において、左向き矢印は、左の欄と同じであることを意味する。)
〔比較例1〕
紡糸原液において、CNFを添加しなかった。それ以外の点は実施例1と同様にして、比較例1の中空糸膜を得た。
〔比較例2~4〕
表1に示されるように、CNF添加濃度、原料溶液のS/NS比、混練温度が変更された。それ以外は比較例1と同様にして、比較例2~4の中空糸膜が製造された。
<外径および内径の測定>
実施例1~11および比較例1~4の中空糸膜について、内径および外径を以下の方法で測定した。
中空糸膜の外径および内径は、中空糸膜をスライドグラスの中央に開けられた直径3mmの孔に中空糸膜が抜け落ちない程度に適当本数通し、スライドグラスの上下面に沿ってカミソリにより中空糸膜をカットし、中空糸膜断面サンプルを得た後、投影機(Nikon PROFILE PROJECTOR V-12)を用いて中空糸膜断面の短径、長径を測定することにより得られる。
外径については、中空糸膜断面1個につき中空糸膜外表面のX-X方向とY-Y方向の寸法を測定し、それらの値の算術平均値を中空糸膜断面1個の外径とした。また、内径については、中空糸膜断面1個につき中空部のX-X方向とY-Y方向の寸法を測定し、算術平均値を中空糸膜断面1個の内径とした。なお、最大および最小を含む10断面について同様に測定を行い、平均値を内径および外径とした。
中空糸膜の外径および内径の測定結果は表1に示される。
<強伸度の測定>
実施例1~11および比較例1~4の中空糸膜について、以下の方法で強伸度(降伏強度、破断強度、降伏伸度および破断伸度)を測定した。
強伸度の測定は、糸引っ張り試験機(エー・アンド・デイ社製テンシロン(モデルNo.RTC1210A))を用いて実施した。
フルスケール5000g(条件設定では200g)のセルを使用し、全長約15cmの単糸をチャック(チャック間距離:5cm)に固定し、50mm/分の速度で下側チャックを下降させた。
チャート紙に印されたS-Sカーブから、中空糸膜の破断点の単糸あたりの荷重(破断強度)、伸度(破断伸度)および降伏点の単糸あたりの荷重(降伏強度)、伸度(降伏伸度)を読み取った。具体的には、特開2011-212638号公報の[0061]に示される方法を用いて荷重および伸度を得た。
なお、強伸度の測定は、湿潤状態の中空糸膜を用いて、温度20℃、湿度65%の条件下で実施した。
測定結果を表1に示す。なお、実施例および比較例の各々について、5回ずつ測定を実施し、その平均値を表1に示した。
Figure 0007396464000001
表1に示されるように、実施例は比較例と比べて降伏伸度が抑えられ降伏強度が向上しており、降伏強度(gf/本)/降伏伸度(%)の比率(すなわち、単位伸び当りの必要応力)が大きくなり、可逆的な降伏領域での強度が向上していることを示す。
また、破断伸度が抑えられ破断強度が向上しており、破断強度(gf/本)/破断伸度(%)(すなわち、破断点での応力/伸度比)が大きくなり、中空糸膜の形状変化が小さくかつ、より破断しにくい中空糸膜であることを示す。
図7に、実施例および比較例について、破断強度とFR(耐圧性加速条件における4年後の透過水量)との関係をグラフで示す。
図7に示される実施例と比較例を分断する線より上側の範囲は、下記関係式を満たす範囲である(表1の最も下の2行を参照)。すなわち、実施例は、下記関係式を満たす。
破断強度[gf/本]/3+FR[L/m/D]≧4.58×10-3×(AN後OD)[μm]
このように、本発明の中空糸膜においては、破断強度が高められた場合でも、所定以上の透過性能を維持することができる。
<透過水量の測定>
実施例1~11および比較例1~4の中空糸膜について、高濃度塩水によるRO性能の確認試験を行った。
具体的には、まず、中空糸膜をU字状に束ねて、プラスチック製スリーブに挿入した後、熱硬化性樹脂をスリーブに注入し、硬化させて封止した。熱硬化性樹脂で硬化させた中空糸膜の端部を切断することで中空糸膜の開口面を得て、外径基準の膜面積が0.16mの評価用モジュール30を作製した(図6)。
図6に示されるような評価液タンク40、供給ポンプ42、シェル31、流量調整バルブ43、圧力調整バルブ44等を備える膜性能試験装置を用いて、評価用モジュール30のRO性能を評価した。
〔標準条件評価〕
具体的には、濃度35000ppmの塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を、25℃、圧力5.4MPaで中空糸膜の外側に流す条件(標準条件)で、中空糸膜の外側から内側へ向かって水を透過させた。このRO処理を1時間行った。その後、中空糸膜の開口面より膜透過水を採取して、透過水量を測定した。
この透過水量に基づいて、上記標準条件での単位膜面積当たりの1日当りの透過水量(標準条件透過流束:FRs)を下記式より算出した。
FRs[L/m/日]=透過水量[L]/膜面積[m]/採取時間[分]×(60[分]×24[時間])
〔耐圧性加速条件評価〕
次に、標準条件から、耐圧性加速試験条件に条件変更を行い、濃度47300ppmの塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を、35℃、圧力6.76MPaで中空糸膜の外側に流す条件で、中空糸膜の外側から内側へ向かって水を透過させた。このRO処理を2時間行い、中空糸膜の開口面より膜透過水を採取、透過水量を測定し、単位膜面積当たりの1日当りの透過水量(耐圧性加速試験条件透過流束:FR0)を下記式より算出した。
FR[L/m/日]=透過水量[L]/膜面積[m]/採取時間[分]×(60[分]×24[時間])
〔透過水量変化係数(-m値)の計算〕
m値は、以下のようにして求めた。
さらに、100時間まで透過水量を連続的に測定し、透過水量の変化を確認した。透過水量変化係数(-m値)は、経過時間に応じた透過水量の変化の傾きを示す。
-m値は、時間と透過水量の対数値、x=log(経過時間)、y=log(透過水量)の回帰直線式の傾きより算出した(下記式)。
Figure 0007396464000002
次に、上記式より、耐圧性加速条件における4年後の透過水量維持率(MF)および耐圧性加速条件における4年後の透過水量を算出した。
耐圧性加速条件における4年後の透過水量維持率(MF)
=(4年×365日×24時間/2時間)(-m)=17520(-m)
耐圧性加速条件における4年後の透過水量(FR
=FR×MF
以上の測定等の結果を表1に示す。
表1に示されるように、実施例1~11では、比較例1~4よりも透水性能と、経年後の透水性能の維持率の両方に優れた中空糸膜が得られた。
<染色試験>
実施例3および比較例2について、染色試験を実施した。具体的には、図6の膜性能試験装置において、評価液タンク40内の評価液41に、ナカライテスク社製の蛍光染料(分子量570)を添加し、上記標準条件にて1時間RO評価運転を実施した。なお、この染色試験により、膜の部分的な欠陥が生じた箇所が染色される。
染色試験後の実施例3および比較例2の中空糸膜のマイクロスコープ写真をそれぞれ図2および図3に示す。なお、図2は実施例3で得られた中空糸膜であり、また、図3は比較例2で得られた中空糸膜である。
また、実施例3および比較例2について、染色試験後に上記強伸度の測定を実施しときの、破断後の実施例3および比較例2の中空糸膜のマイクロスコープ写真をそれぞれ図4および図5に示す。なお、図4(a),(b)は図2(a),(b)に対応する写真であり、図5(a)~(c)は図3(a)~(c)に対応する写真である。
図5に示される写真から、染色試験により染色された箇所で、中空糸膜の破断が生じていることが分かる。
<塩除去率の測定>
実施例3および比較例2について、塩除去率を測定した。具体的には、上記透過水量の測定で使用された塩化ナトリウム(NaCl)濃度35000ppmの供給水溶液と、上記透過水量の測定で採取された膜透過水と、について、電気伝導率計(東亜ディーケーケー社CM-25R)を用いてNaCl濃度(塩濃度)を測定した。測定結果に基づいて、塩除去率は下記式より算出された。
塩除去率[%]=(1-膜透過水塩濃度[mg/L]/供給水溶液塩濃度[mg/L])×100
その結果、実施例3の塩除去率は99.9%(塩透過率として0.1%)であり、比較例2の塩除去率は95.0%(塩透過率として5%)であった。この結果から、比較例2においては、塩の透過量が多く、このことからもCNFの分散性が悪いために、部分的な欠陥が生じている可能性が示唆される。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 紡糸原液、11 ノズル、12,13,14,15 ローラー、16 中空糸膜、21 凝固液、30 評価用モジュール、31 シェル、40 評価液タンク、41 評価液、42 供給ポンプ、43 流量調整バルブ、44 圧力調整バルブ。

Claims (7)

  1. セルロースエステルおよびセルロース系ナノファイバーを含む中空糸膜の製造方法であって、
    紡糸原液をノズルから空中走行部を経て凝固液中に吐出して、前記紡糸原液の凝固物を前記凝固液中から曳き出すことにより、中空糸型の半透膜である中空糸膜を得る、紡糸工程を含み、
    前記紡糸原液は、セルロースエステル、セルロース系ナノファイバー、溶媒および非溶媒を含み、
    前記紡糸工程の前に前記紡糸原液を混練し、
    前記紡糸原液において、前記セルロースエステルおよび前記セルロース系ナノファイバーの総量に対する前記セルロース系ナノファイバーの量の比率は、0.01~10質量%である、製造方法。
  2. 前記セルロースエステル、前記セルロース系ナノファイバーの粉体、前記溶媒および前記非溶媒を混合してなる前記紡糸原液が混練されるか、
    前記セルロース系ナノファイバーの粉体を前記溶媒に分散させてなるスラリーを、前記セルロースエステルおよび前記非溶媒と混合してなる前記紡糸原液が混練されるか、または、
    前記セルロース系ナノファイバーの粉体を前記非溶媒に分散させてなるスラリーを、前記セルロースエステルおよび前記溶媒と混合してなる前記紡糸原液が混練される、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記紡糸原液中のセルロースエステルの濃度は、20~60質量%である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記紡糸原液を混練するときの温度は、150~200℃である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記紡糸原液を混練するときのせん断速度は、500~3500sec-1である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記紡糸原液において、前記セルロース系ナノファイバーの繊維幅(繊維径)は1~200nmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記紡糸原液において、前記セルロースエステルおよび前記セルロース系ナノファイバーの総量に対する前記セルロース系ナノファイバーの量の比率は、0.01~5質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
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