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JP7358873B2 - アンテナ内蔵式電子時計 - Google Patents

アンテナ内蔵式電子時計 Download PDF

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Description

本発明は、アンテナ内蔵式電子時計に関する。
腕時計などの小型の電子時計において、衛星信号を受信するパッチアンテナを内蔵するアンテナ内蔵式電子時計が知られている(特許文献1参照)。
特開2019-70674号公報
特許文献1の時計では、地板と裏蓋との間にパッチアンテナを配置する構成であるため、ムーブメントが厚くなり、かつステップモーターや電池等の他の部品と平面視で重ならないように配置する必要があるためにムーブメントの径が大きくなり、パッチアンテナやステップモーターなどの部品レイアウトに制約が生じる課題がある。
また、パッチアンテナを用いる場合に比べてムーブメントを薄型化できかつ小型化でき、部品レイアウトへの影響も少ない逆F型アンテナや環状アンテナ等を利用することが考えられる。これらのアンテナの場合、パッチアンテナに比べて平面サイズが大きくなり、ベゼルに近接配置されるため、金属ベゼルを用いると受信性能が低下するという課題がある。
本開示のアンテナ内蔵式電子時計は、導電性材料で構成される胴と、導電性材料で構成されて前記胴の時計表面側に設けられるベゼルと、前記ベゼルに取付けられるカバーガラスと、を含む時計ケースと、前記時計ケース内に配置される文字板と、前記文字板の周囲に配置されるダイヤルリングと、前記文字板の表面に直交する方向から見た平面視において、少なくとも一部が前記文字板の外周よりも外側に配置されて、前記時計ケース内に配置されるアンテナと、を備え、前記文字板、前記ダイヤルリング、および前記カバーガラスの少なくとも1つは、前記アンテナより時計表面側に配置され、かつ、前記アンテナに対して、前記アンテナで受信する電波の波長に応じて設定される所定距離以内に配置される誘電体であることを特徴とする。
本開示のアンテナ内蔵式電子時計において、前記誘電体は、前記文字板を構成する非導電性材料の比誘電率の2倍以上、5倍以下の材料で構成されることが好ましい。
本開示のアンテナ内蔵式電子時計において、前記アンテナは、前記文字板と、前記時計ケース内に配置される地板との間に配置され、非導電性材料で構成される基材と、この基材に形成された電極とを備える平面形状アンテナであることが好ましい。
本開示のアンテナ内蔵式電子時計において、前記アンテナは、前記文字板と、前記時計ケースとの間に配置される環状アンテナであることが好ましい。
本開示のアンテナ内蔵式電子時計において、前記アンテナと、前記誘電体との距離は、前記電波の波長の1/42以下であることが好ましい。
第1実施形態のアンテナ内蔵式電子時計の要部を示す正面図である。 前記アンテナ内蔵式電子時計の要部を示す断面図である。 前記アンテナ内蔵式電子時計に用いられる板状の逆F型アンテナを示す斜視図である。 前記逆F型アンテナを示す平面図である。 前記逆F型アンテナの受信特性を示すグラフである。 第2実施形態の逆F型アンテナを示す斜視図である。 第3実施形態のアンテナ内蔵式電子時計の要部を示す断面図である。 変形例のアンテナ内蔵式電子時計の要部を示す断面図である。
[第1実施形態]
以下、第1実施形態のアンテナ内蔵式電子時計1を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、アンテナ内蔵式電子時計1を単に電子時計1と略して説明する。また、本実施形態では、図2に示す電子時計1のカバーガラス13側を時計表面側または上側とし、裏蓋14側を時計裏面側または下側として説明する。
本実施形態の電子時計1は、後述するように、板状の逆F型アンテナ50を内蔵し、地球の上空を所定の軌道で周回している複数のGPS衛星や準天頂衛星などの位置情報衛星からの衛星信号を受信して衛星時刻情報を取得し、内部時刻情報を修正できるように構成されている。
電子時計1は、図1、2に示すように、文字板2、ムーブメント20、時針31、分針32、秒針33、逆F型アンテナ50、電池24等を収容する時計ケース10を備える。また、電子時計1は、外部操作用のりゅうず6と、2つのボタン7A、7Bとを備える。ムーブメント20は、時針31、分針32、秒針33が取り付けられる指針軸35、36、37とを備え、指針軸35~37は金属等の導電性の材料で形成されている。なお、図2は、文字板2の6時位置および12時位置を結ぶ線に沿った断面図である。
文字板2は、ポリカーボネート樹脂などの非導電性部材にて円板状に形成されている。本実施形態の文字板2は、比誘電率が3のポリカーボネート樹脂で形成されている。
文字板2の平面中心には、同軸に設けられた3本の指針軸35、36、37が配置されている。指針軸35は、筒車であり、時針31が取り付けられている。指針軸36は、二番車360および二番車360に取り付けられた筒カナで構成され、分針32が取り付けられている。指針軸37は、四番車370と四番車370の軸で構成され、秒針33が取り付けられている。これらの指針軸35、36、37は、導電性材料で構成されている。なお、本実施形態では、日窓や日車を設けていないが、これらを設けてもよい。
時針31、分針32、秒針33は、後述するステップモーターおよび輪列を介して駆動される。また、時針31、分針32、秒針33は、全体が金属製の導電性材料で構成されている。
本実施形態において、平面視とは、文字板2のカバーガラス13に対向する表面に直交する軸方向、つまり指針軸35~37の軸方向から文字板2等を見ることを意味する。
図2に示すように、時計ケース10は、円筒状の胴11と、胴11の表面側に固定されるリング状のベゼル12と、ベゼル12に固定されるカバーガラス13と、胴11に取り付けられる裏蓋14とを備える。なお、本実施形態では、胴11と裏蓋14とは、別体で構成されているが、これに限らず、胴11および裏蓋14が一体化されたワンピースケースを用いてもよい。
胴11、ベゼル12、裏蓋14は、ステンレス鋼、チタン合金、アルミ、真鍮などの金属材料で製造される。本実施形態では、ベゼル12は、ステンレス鋼で構成される。
カバーガラス13は、ガラスや合成樹脂材などで透明な材料で製造され、本実施形態では、サファイア板状ガラスで構成される。このサファイア板状ガラスは、比誘電率が10であり、高純度のアルミナで構成された単結晶サファイアを使用して形成されている。また、カバーガラス13の直径は31mm、厚さは1.3mmである。
次に、電子時計1の時計ケース10に内蔵される内部構造について説明する。
図2に示すように、時計ケース10内には、文字板2の他、ダイヤルリング15、ムーブメント20、逆F型アンテナ50等が収容される。
ダイヤルリング15は、文字板2と同様にポリカーボネート樹脂などで構成される。本実施形態のダイヤルリング15は、比誘電率が3のポリカーボネート樹脂で形成されている。ダイヤルリング15は文字板2の外周に沿って配置されている。文字板2の外周はダイヤルリング15の内周より大きく、文字板2の外周上面をダイヤルリング15の内周で覆うことにより、文字板2の外周はダイヤルリング15によって視認されないようになっている。
ムーブメント20は、地板21、図示略の輪列受け、地板21および輪列受けに支持される駆動体22、回路基板23、電池24を備える。地板21は、プラスチック等の非導電性部材にて形成されている。
駆動体22は、図2に示すように、地板21および輪列受け間に配置され、時針31を駆動する第1モーターおよび第1輪列と、分針32を駆動する第2モーターおよび第2輪列と、秒針33を駆動する第3モーター103および第3輪列130とを備えて構成される。なお、図2では、第3モーター103、第3輪列130のみを図示し、第1モーター、第2モーター、第1輪列、第2輪列は省略している。
回路基板23には、図2では図示を略しているが、制御ICや受信IC等が実装されている。制御ICは、通常時は、第1モーター、第2モーター、第3モーター103の駆動を制御し、時針31、分針32、秒針33を運針して時刻を表示する時刻表示処理を実行する。
さらに、制御ICは、衛星信号の受信時は、受信ICを作動して逆F型アンテナ50による受信処理を行うとともに、第1モーター、第2モーター、第3モーター103を作動して時針31、分針32、秒針33を受信時待機位置まで移動して停止させる受信用移動処理を実行する。
電池24は、一次電池でもよいし、二次電池でもよい。二次電池を設けた場合は、二次電池を充電するための発電装置を電子時計1内に組み込めば良い。例えば、発電装置としてソーラーパネルを設ける場合は、文字板2と、後述する逆F型アンテナ50の第1導体素子51との間に配置し、文字板2を透光性部材で構成すればよい。
[板状の逆F型アンテナ]
逆F型アンテナ50は、図2~図4に示すように、板状の第1導体素子51と、平面視で第1導体素子51と重なるように配置された板状の第2導体素子52と、第1導体素子51および第2導体素子52を短絡する短絡部53とを備えて構成されている。逆F型アンテナ50は、地板21と文字板2との間に配置されている。したがって、逆F型アンテナ50は、文字板2と地板21との間に配置された平面形状アンテナである。
第1導体素子51は、給電素子54を介して回路基板23に実装された受信ICに導通されている。第2導体素子52は、接続素子55を介して回路基板23のグランド端子に導通されている。
第1導体素子51および第2導体素子52は、図3および図4に示すように、短絡部53を除いて文字板2とほぼ同じ直径の円板状に形成されており、平面中心位置には指針軸35~37が挿通される貫通穴51A、52Aが形成されている。第2導体素子52には、給電素子54が挿通される貫通穴52Bと、接続素子55が接続される接地端子52Cとが形成されている。なお、逆F型アンテナ50としては、グランド電極となる第2導体素子52が、放射電極となる第1導体素子51よりも一回り大きいサイズで構成され、第1導体素子51の外周の位置が第2導体素子52の外周よりも内側に配置されるものが好ましい。
第1導体素子51および第2導体素子52は、例えば銅、銅合金、アルミ、アルミ合金などの金属薄板で形成されることが好ましい。このように第1導体素子51および第2導体素子52を金属製とすることにより、薄型化が可能で、容易に成形できる。また、第1導体素子51および第2導体素子52は、誘電体基材56の表面に形成された金属被覆で構成することもできる。金属被覆は、例えば銅、銀、ニッケル、アルミなどのメッキ処理によって形成することができる。
なお、第1導体素子51および第2導体素子52のうち、いずれか一方を金属製とし、他方を基材に金属皮膜を施した構成としてもよい。
短絡部53は、第1導体素子51および第2導体素子52と同様な材質つまり導電体で構成されている。この短絡部53は、第1導体素子51および第2導体素子52の外縁部に設けられている。
短絡部53は、第1導体素子51と第2導体素子52とを垂直に接続するように直線状に形成されてもよいし、外周側に膨らんだ湾曲部を含んで形成されてもよい。短絡部53に湾曲部を設けることにより、外部から受けた衝撃を緩衝する緩衝部として湾曲部を機能させることができる。
短絡部53は、1箇所に設けられてもよいし、複数箇所に設けられても良い。すなわち、第1導体素子51、第2導体素子52、短絡部53は、GPS衛星信号を受信するために必要な受信特性が得られるように設計すればよい。
本実施形態では、第1導体素子51および第2導体素子52の間には、合成樹脂製の誘電体基材56が配置されている。
誘電体基材56は、逆F型アンテナ50のために専用で設けてもよいが、時計用部品で兼用してもよい。例えば、日車や曜車等のカレンダー車を備える電子時計の場合は、カレンダー車を保持するカレンダー押さえを誘電体基材56として利用してもよい。
第1導体素子51、第2導体素子52、短絡部53は、例えば金属薄板をプレス加工によって折り曲げ成形する方法等を用いて一体構造で形成されていることが好ましい。このような構成を適用すれば、逆F型アンテナ50をより効率的に製造できる。
本実施形態では、逆F型アンテナ50を時計ケース10内に組み込んだ場合に、逆F型アンテナ50の短絡部53は、文字板2の平面視において、文字板2の外周よりも外側に配置される。このため、逆F型アンテナ50の少なくとも一部は、文字板2の表面に直交する方向から見た平面視において、文字板2の外周よりも外側に配置されている。すなわち、本実施形態では、図2および図4に示すように、逆F型アンテナ50の少なくとも一部である短絡部53は、文字板2の外周よりも外側に配置されている。
給電素子54は、回路基板23上に設けられた給電端子に接続され、第1導体素子51および第2導体素子52により受信した信号を、回路基板23に実装される受信ICに供給する機能を有している。
接続素子55は、回路基板23上に設けられたグランド端子と、第2導体素子52に設けられた接地端子52Cとを接続している。
なお、文字板2と第1導体素子51との間にソーラーパネルを設ける場合、第1導体素子51をソーラーパネルの支持基板として兼用してもよい。
次に、電子時計1において、逆F型アンテナ50と、逆F型アンテナ50での受信性能に影響する誘電体との関係について説明する。
本願の発明者は、時計ケース10のカバーガラス13側の縁、つまりベゼル12を導電性材料、例えばステンレス鋼やチタンで形成した場合、金属製のベゼル12の影響による受信性能の低下に加えて、共振周波数と放射効率のずれが発生して受信性能がさらに低下するという新たな課題を見出した。
すなわち、腕時計である電子時計1内に組み込む衛星信号受信用の逆F型アンテナ50は、パッチアンテナと比べて第1導体素子51、第2導体素子52の平面積を大きくする必要があり、逆F型アンテナ50の外周縁がベゼル12に近接して配置される。このため、時計ケース10のデザイン性や品質を向上させるために、ベゼル12をステンレス鋼やチタンなどの金属材料で形成した場合、図5のグラフに示すように、逆F型アンテナ50の共振周波数f1と、放射効率が最大となる周波数f2とは約30MHzずれており、このずれが受信性能の低下に影響していることが判明した。図5のグラフにおいて、横軸は周波数(MHz)であり、グラフの左側に設けられた第1の縦軸は逆F型アンテナ50の反射特性S11(dB)であり、グラフの右側に設けられた第2の縦軸は最大の放射効率を0dBとしたときの差分(dB)である。本実施形態において逆F型アンテナ50は、GPS衛星から送信される電波の周波数に共振するよう共振周波数f1が設定されている。本実施形態の構成において、共振周波数f1に対し、逆F型アンテナ50の放射効率が最大となる周波数f2は約30MHzずれていた。このずれの発生により、共振周波数f1において逆F型アンテナ50のアンテナ利得は低下している。
したがって、逆F型アンテナ50の受信性能を向上させるためには、前記共振周波数f1と周波数f2とのずれを小さくすればよい。そこで、本実施形態では、電子時計1に用いられる時計部品を、逆F型アンテナ50の誘電体として利用することで受信信号の周波数を下げている。
逆F型アンテナ50で受信する衛星信号の周波数を低減することに寄与する誘電体は、逆F型アンテナ50に対して、受信電波の波長に応じて設定される所定距離以内に配置される誘電体である。なお、逆F型アンテナ50の上側つまりカバーガラス13側に配置される誘電体と逆F型アンテナ50との所定距離は、逆F型アンテナ50の上面つまり第1導体素子51の上面と、誘電体の下面との距離である。例えば、誘電体であるカバーガラス13と逆F型アンテナ50との所定距離は、図2に示す寸法Hである。
電子時計1において、衛星信号の周波数の低減に寄与する誘電体は、逆F型アンテナ50の上側に配置される文字板2、カバーガラス13、ダイヤルリング15である。ここで、カバーガラス13と逆F型アンテナ50との距離による受信特性への影響を確認するため、文字板2およびダイヤルリング15を備える電子時計1において、カバーガラス13の配置位置によるアンテナ利得の変化を実測した。
カバーガラス13が無いときの逆F型アンテナ50のアンテナ利得を0dBとした場合、カバーガラス13の下面と逆F型アンテナ50の上面との距離が、3.5mmの場合は約1.0dBアンテナ利得が良くなり、4.5mmの場合はカバーガラス13が無い場合と同等のアンテナ利得であり、4.9mmの場合、約0.5dBアンテナ利得が悪化した。このため、カバーガラス13の下面と逆F型アンテナ50の上面との距離を4.5mm以下に設定すれば、カバーガラス13によってアンテナ利得を向上できる。
ここで、GPS衛星から送信される電波L1の周波数は1575.42MHzであり、波長λは約190mmである。190mm÷4.5mm=約42であるため、前記所定距離Hは、波長λの1/42以下に設定すればよい。
誘電体である文字板2、カバーガラス13、ダイヤルリング15のうち、逆F型アンテナ50への影響が大きいのは、逆F型アンテナ50の近くで大きな面積を有する文字板2である。カバーガラス13は、文字板2に比べて逆F型アンテナ50から離れて配置されるため、比誘電率が文字板2よりも高い誘電体でないと共振周波数を下げる効果が小さくなる。一方、比誘電率が文字板2に比べて一定以上大きくなると、共振周波数を下げる効果が大きすぎて共振周波数f1と周波数f2とのずれが逆に大きくなる。
このため、カバーガラス13の材料は、文字板2の比誘電率に対して所定範囲の比誘電率を有する材料であることが好ましい。本実施形態の電子時計1で実測した結果、比誘電率が約3のポリカーボネート樹脂製の文字板2に対し、カバーガラス13の比誘電率が約6未満であると周波数が殆ど変化せず、比誘電率が約15よりも大きいと周波数が変化しすぎてアンテナ利得が却って低下した。
したがって、カバーガラス13の比誘電率は約6以上、15以下、つまり文字板2の比誘電率の2倍以上、5倍以下であることが好ましい。このため、本実施形態では、比誘電率が約10であるサファイアガラス製のカバーガラス13を用いており、比誘電率が約3のカバーガラス13を用いた場合に比べて約1.0dBアンテナ利得が向上した。
[第1実施形態の作用効果]
電子時計1は、ダイヤルリング15をポリカーボネート樹脂で形成し、カバーガラス13をサファイアガラスで形成したので、非導電性材料で構成される文字板2、ダイヤルリング15およびカバーガラス13を誘電体として機能させることができる。
そして、文字板2、ダイヤルリング15およびカバーガラス13を、逆F型アンテナ50で受信する電波の波長に応じて設定される所定距離以内、具体的には、波長λの1/42以下の距離以内に配置したので、誘電体である文字板2、ダイヤルリング15、カバーガラス13による波長短縮効果により、逆F型アンテナ50の共振周波数f1と放射効率が最良となる周波数f2とのずれを抑制できる。これにより、ベゼル12をステンレス鋼やチタンなどの導電性材料で構成しても、アンテナ利得つまり受信性能の低下を抑制することができる。
したがって、金属製のベゼル12を用いることで時計ケース10の意匠性を向上でき、かつ、パッチアンテナに比べて薄型化できる逆F型アンテナ50を用いることで、電子時計1も薄型化でき、逆F型アンテナ50の受信性能を確保できる。
さらに、薄型化できる逆F型アンテナ50を用いたので、電池24、モーター、輪列などの時計用部品と逆F型アンテナ50とを平面視で重ねて配置できる。このため、電子時計1を小型化、つまり電子時計1の平面サイズを小さくできる。
文字板2は、比誘電率が約3のポリカーボネート樹脂で形成し、カバーガラス13は、比誘電率が約10つまり文字板2の比誘電率の2倍以上、5倍以下の比誘電率を有するサファイアガラスで形成したので、共振周波数を適切な量で変動させることができる。このため、逆F型アンテナ50の共振周波数と放射効率が最良となる周波数とのずれを小さくでき、受信性能の低下をより一層抑制できる。
カバーガラス13を、逆F型アンテナ50から所定距離以内に配置することで、逆F型アンテナ50で受信する電波の波長を短縮させる誘電体として機能させることができる。このため、波長短縮効果を発揮させる誘電体部品を別途追加する必要が無く、受信性能の低下を抑制できる。
カバーガラス13は、文字板2と同様に、電子時計1の平面視での面積が大きいため、逆F型アンテナ50に対して所定距離以内に配置して誘電体として利用することで、文字板2だけでは十分な波長短縮効果が得られない場合でも、カバーガラス13による波長短縮効果が加わることで、共振周波数を適切に変動させることができ、受信性能の低下を抑制できる。
ダイヤルリング15を、逆F型アンテナ50から所定距離以内に配置することで、逆F型アンテナ50で受信する電波の波長を短縮させる誘電体として機能させることができる。このため、波長短縮効果を発揮させる誘電体部品を別途追加する必要が無く、受信性能の低下を抑制できる。
衛星信号を受信するアンテナとして、λ/4で共振する逆F型アンテナ50を用いたので、λ/2で共振するアンテナに比べて小型化できる。このため、逆F型アンテナ50を有する電子時計1の外形サイズも小さく構成できる。
[第2実施形態]
次に第2実施形態のアンテナ内蔵式電子時計について説明する。第2実施形態の電子時計は、第1実施形態における板状の逆F型アンテナ50を、ワイヤー状の逆F型アンテナ150に変更したものであり、その他の構成は第1実施形態と同様である。このため、逆F型アンテナ150以外の構成は図示を省略し、第1実施形態と同じ符号を用いて説明する。
図6は、逆F型アンテナ150の構成を説明するための模式図である。図6に示すように、逆F型アンテナ150は、リボン151と、給電部152と、短絡部153とを備えている。
リボン151は、円弧状に形成され、給電部152および短絡部153は直線状に形成されている。
リボン151、給電部152、短絡部153は、銅線やアルミニウム等の針金やパイプを用いて構成してもよいし、銅線やアルミニウム等の薄板を用いて構成してもよい。これらの針金、パイプ、薄板で構成すれば、リボン151、給電部152、短絡部153を安価に製造できる。
また、リボン151、給電部152、短絡部153は、適当な形状の基台に導電性の箔の貼付やエッチング、印刷等によって形成してもよい。基台に導電性の箔を貼付などで形成すれば、逆F型アンテナ150の形状のバラツキが少なくなり、アンテナの特性が安定し、受信性能のバラツキも防止できる。
さらに、リボン151、給電部152、短絡部153は、合成樹脂製のダイヤルリング15にメッキを施すことによって形成してもよい。
また、時計ケース10内にポリカーボネート樹脂等で構成された中枠を設ける場合、リボン151、給電部152、短絡部153は、中枠の内周面にメッキを施すことによって形成してもよい。
時計ケース10のダイヤルリング15や中枠にメッキを施して逆F型アンテナ150を構成する場合、時計用の部品をアンテナ部品としても兼用できるため、安価に製造できる。
逆F型アンテナ150のリボン151の一端には、給電部152及び短絡部153が接続され、リボン151の他の一端は開放されている。給電部152と短絡部153は回路基板23と接続されており、給電部152は回路基板23の信号パターンに接続され、短絡部153は回路基板23のGNDパターンに接続されている。
逆F型アンテナ150は、時計ケース10の内部空間において、文字板2の表面に直交する方向から見た平面視において、少なくとも一部が文字板2の外周よりも外側に配置されている。例えば、時計ケース10の中枠が合成樹脂製の場合、中枠の内壁に溝を形成し、この溝にリボン151を収容して保持すればよい。この場合、リボン151は、平面視において、文字板2の外周よりも外側に配置される。
なお、リボン151を保持する方法は、溝を用いる方法だけでなく、例えば中枠の内側にリボン151を案内する凸部を複数個所に設け、これらの凸部によってリボン151を保持する方法を用いてもよい。
本実施形態の逆F型アンテナ150におけるリボン151と短絡部153は、長さが1λよりも十分に短いダイポールアンテナを折り曲げて、円弧状のループ素子(磁流素子)としてのリボン151と、直線素子(電流素子)としての短絡部153とを形成した場合と同様の構成となっている。
リボン151は、平面視においてベゼル12とほぼ重なる位置に配置されており、上下方向においてベゼル12よりも下方に配置され、ベゼル12と所定の間隔を有している。
リボン151には、給電点を移動させるための給電部152が接続されている。短絡部153は回路基板23のGNDパターンに接続され、給電部152は回路基板23の信号パターンに接続されている。このような構成においては、短絡部153とベゼル12が電流ベクトルを発する電流素子として動作し、リボン151が磁流ベクトルを発する磁流素子として動作する。つまり、回路基板23はGND板として機能し、回路基板23は前記上下方向においてリボン151の下方に配置されている。
したがって、ベゼル12は、無給電の素子であり、リボン151は、給電部152に接続される素子である。
逆F型アンテナ150は、ワイヤー状であるため、板状の逆F型アンテナ50のように誘電体基材56を備えていない。一方、第2実施形態の電子時計においても、文字板2、ダイヤルリング15、カバーガラス13は、逆F型アンテナ150の誘電体として機能する。
[第2実施形態の作用効果]
第2実施形態の電子時計においても、文字板2に加えて、ダイヤルリング15やカバーガラス13を逆F型アンテナ150の誘電体として利用できるため、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、ワイヤー型の逆F型アンテナ150は、リボン151を文字板2の外周側に配置できるため、板状の逆F型アンテナ50を用いた電子時計1に比べても電子時計を薄型化および小型化できる。
[第3実施形態]
次に第3実施形態の電子時計1Cについて説明する。第3実施形態の電子時計1Cは、図7に示すように、環状アンテナ(リングアンテナ)250を用いている点が第1実施形態の電子時計1と相違する。このため、電子時計1Cにおいて、電子時計1と同一または同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
電子時計1Cは、透光性の文字板2と、文字板2の裏面側に配置されたソーラーパネル210とを備え、ソーラーパネル210で発電した電力を充電可能な二次電池である電池24に供給している。
環状アンテナ250は、詳細な図示は省略するが、誘電体から形成された環状の基材と、基材に形成されたアンテナパターン(アンテナ素子)とを有する。誘電体は、たとえは比誘電率が5~20程度の材料で構成されている。アンテナパターンは、カバーガラス13側から見た平面視において、環の一部を切り欠いたC形ループ素子であり、電磁波を電流に変換するアンテナ素子として機能する。このアンテナパターンは、給電ピン254を介して回路基板23に導通されている。
環状アンテナ250は、文字板2およびソーラーパネル210の外周に沿って配置されている。すなわち、環状アンテナ250の内側空間に文字板2やソーラーパネル210が配置されている。
環状アンテナ250は、ベゼル12の内周側に配置されたダイヤルリング15によって被覆されている。
電子時計1Cにおいて、カバーガラス13およびダイヤルリング15は、電子時計1と同様に、非導電性材料で構成されている。これらのカバーガラス13およびダイヤルリング15は、環状アンテナ250の時計表面側に配置され、環状アンテナ250のアンテナパターンに対して、環状アンテナ250で受信する衛星信号の波長に応じて設定される所定距離以内に配置されている。
このため、カバーガラス13およびダイヤルリング15は、文字板2よりも時計表面側に配置される誘電体である。
[第3実施形態の作用効果]
第3実施形態の電子時計1Cにおいても、ダイヤルリング15やカバーガラス13を環状アンテナ250の誘電体として利用できるため、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
すなわち、本発明者が調べたところ、環状アンテナ250を用いた場合も、環状アンテナ250の共振周波数と放射効率が最良となる周波数とにズレが発生した。ただし、このズレ量は、逆F型アンテナ50に比べて小さく、逆F型アンテナ50では30MHz程度のズレであったものが、環状アンテナ250では10MHz程度であった。
ダイヤルリング15およびカバーガラス13は、環状アンテナ250で受信する電波に対して波長短縮効果を発揮し、環状アンテナ250の共振周波数と放射効率が最良となる周波数とのズレを抑制でき、ベゼル12をステンレス鋼やチタンなどの導電性材料で構成しても、アンテナ利得つまり受信性能の低下を抑制することができる。
[他の実施形態]
本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
前記各実施形態では、胴11およびベゼル12が別体であったが、胴とベゼルとを一体に形成してもよい。この場合、時計ケースを安価に製造できる。また、アンテナ内蔵式電子時計としては、ダイヤルリングを備えないものでもよい。
図8に示すように、カバーガラス13Dを、サファイアボックスガラスで構成した電子時計1Dを用いてもよい。この電子時計1Dにおいても前記各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
ダイヤルリング15は、比誘電率が3程度の誘電体で構成していたが、高誘電率の樹脂材料、例えば比誘電率が9~15程度の樹脂材料で構成してもよい。ダイヤルリング15を高誘電率の材料で構成すれば、カバーガラス13はサファイアガラスに比べて誘電率が低い誘電体で構成できる。高誘電率の材料は、例えば、ポリプラスチックス株式会社の誘電率制御樹脂材料「フレクティス(登録商標)」等が利用できる。
アンテナ内蔵式電子時計において、アンテナよりも時計表面側に配置されて、アンテナから所定距離以内に配置される誘電体は、文字板、ダイヤルリング、カバーガラスの少なくとも1つであればよい。
逆F型アンテナ50の構成は前記実施形態に限定されない。例えば、第2導体素子52を地板21の上面ではなく、回路基板23の上面に配置し、第1導体素子51および第2導体素子52を離して配置してもよい。この場合、第2導体素子52を回路基板23のグランド端子に直接導通させることができ、接続素子55を不要にできる。
また、逆F型アンテナ50は、受信する電波の種類に応じたサイズに設定すればよく、前記電波を受信できるものであれば、平面視で文字板2の外周に配置される部分が存在しなくてもよい。
前記各実施形態では、GPS衛星から送信される衛星信号を受信していたが、アンテナで受信する信号はこれに限られない。例えば、ガリレオ(EU)、GLONASS(ロシア)、北斗(中国)などの他の全地球的航法衛星システム(GNSS)や、SBAS等の静止衛星や準天頂衛星等から時刻情報を含む衛星信号を受信してもよい。
また、このような衛星信号に限られず、例えば、Bluetooth(登録商標)、BLE(Bluetooth Low Energy)、Wi-Fi(登録商標)、NFC(Near Field Communication)、LPWA(Low Power Wide Area)等の他の電波を受信してもよい。
1、1C、1D…アンテナ内蔵式電子時計、6…りゅうず、7A…ボタン、7B…ボタン、10…時計ケース、11…胴、12…ベゼル、13、13D…カバーガラス、14…裏蓋、15…ダイヤルリング、2…文字板、20…ムーブメント、21…地板、22…駆動体、23…回路基板、24…電池、31…時針、32…分針、33…秒針、35…指針軸、36…指針軸、37…指針軸、50…逆F型アンテナ、51…第1導体素子、51A…貫通穴、52…第2導体素子、52A…貫通穴、52B…貫通穴、52C…接地端子、53…短絡部、54…給電素子、55…接続素子、56…誘電体基材、103…第3モーター、130…第3輪列、150…逆F型アンテナ、151…リボン、152…給電部、153…アンテナ電極、210…ソーラーパネル、250…環状アンテナ、254…給電ピン、360…二番車、370…四番車。

Claims (5)

  1. 導電性材料で構成される胴と、導電性材料で構成されて前記胴の時計表面側に設けられるベゼルと、前記ベゼルに取付けられるカバーガラスと、を含む時計ケースと、
    前記時計ケース内に配置される文字板と、
    前記文字板の周囲に配置されるダイヤルリングと、
    前記文字板の表面に直交する方向から見た平面視において、少なくとも一部が前記文字板の外周よりも外側に配置されて、前記時計ケース内に配置されるアンテナと、を備え、
    前記文字板、前記ダイヤルリング、および前記カバーガラスの少なくとも1つは、前記アンテナより時計表面側に配置され、かつ、前記アンテナに対して、前記アンテナで受信する電波の波長に応じて設定される所定距離以内に配置される誘電体であ
    前記アンテナは、前記文字板と、前記時計ケース内に配置される地板との間に配置され、非導電性材料で構成される基材と、この基材に形成された電極とを備える平面形状アンテナである
    ことを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
  2. 請求項1に記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
    前記ダイヤルリングまたは前記カバーガラスは、前記文字板を構成する非導電性材料の比誘電率の2倍以上、5倍以下の材料で構成される
    ことを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
  3. 請求項1または請求項2に記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
    前記アンテナと、前記誘電体との距離は、前記電波の波長の1/42以下である
    ことを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアンテナ内蔵式時計において、
    前記文字板の表面に直交する方向から見た平面視において、前記アンテナの外周は、前記ダイヤルリングの内周より大きく且つ前記ダイヤルリングで覆われる
    ことを特徴とするアンテナ内蔵式時計。
  5. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
    前記アンテナは、共振周波数f1に設定され、
    前記導電性材料で構成された前記ベゼルは、前記アンテナの放射効率が最大となる周波数f2を前記共振周波数f1に対してずらすものであり、
    前記誘電体は、前記周波数f2を前記共振周波数f1に近づける
    ことを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
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