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JP7356184B2 - 光吸収体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、感光性材料からなる光吸収体に関する。
光を使って情報を得る装置では、光量や光路の調整、ゴーストやフレアの原因となる反射光の除去などのため、光吸収体が必要になる場合がある。この膜は、ガラスやプラスチック素材への蒸着や塗装など物理的および化学的な方法で作製される。特に医用・眼鏡機器関連用途では、黒点、黒斑、斑点などと称され、目の角膜や水晶体で生じる有害な反射光や散乱光を吸収して除去する光学素子が形成される(たとえば特許文献1参照)。
具体的には、ガラス板上にフォトリソグラフィー技術を用いてクロム膜をパターニングしてスケール、エンコーダー、回折素子等の機能を果たす規則的な突起を形成したり、穴を開けて黒色塗料を充填して形成していた。
特公昭62-30767号公報
しかしながら、形成した突起では、図5(a)に示すように楕円状に盛り上がったり、図5(b)に示すように頂部等に傾斜が存在したりし易かった。また、穴では、図5(c)に示すように、深くなるほど狭まる等、傾斜状に形成され易かった。そのため、黒点部分が厚い箇所と薄い箇所にて光の吸収にムラが生じる懸念があった。また、突起において傾斜があると、散乱光が生じる原因となっていた。
さらに、塗装を行った場合、図6に示すように、塗料の遮光率が波長によって異なる問題があった。加えて、蒸着や塗装を行うため、光学性能が良好であってもコストがかかる問題があった。
本発明の目的は、光の吸収ムラや散乱光の発生がなく、かつ低コストで作製可能な光吸収体を提供することにある。
本発明者は、上述の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、次の知見を得た。
つまり、感光性材料からなる層の表面に、露光により黒点状の膜を形成すると、光の吸収ムラや散乱光の発生がない光吸収体を、低コストで作製できるという知見である。
本発明は、この本発明者の知見に基づき、上述の課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 感光性材料からなる層の表面に、露光により黒点状の膜が形成されたことを特徴とする光吸収体である。
<2> 前記感光性材料は感光性フィルムであり、紫外線およびレーザー光の少なくともいずれかの露光により、黒点状の前記膜が形成される<1>に記載の光吸収体である。
<3> パターンが形成されたフォトマスクを透過して紫外線露光を行うことにより、規則的に黒点状の前記膜が形成される<1>または<2>に記載の光吸収体である。
<4> 前記感光性材料はカラーレジストであり、パターンが形成されたフォトマスクを透過して紫外線露光を行った後、現像により黒点状の前記膜が形成される<1>に記載の光吸収体である。
<5> 前記膜による400~2,000nm間の光透過率が0.5%以下である<1>から<4>のいずれかに記載の光吸収体である。
<6> 医用機器および眼鏡機器の光学素子に用いられる<1>から<5>のいずれかに記載の光吸収体である。
本発明の光吸収体は、感光性材料からなる層の表面に、露光により黒点状の膜を形成するので、光の吸収ムラや散乱光の発生がなく、かつ低コストで作製可能な光吸収体を得ることが可能となる。
感光性フィルムにおいて、図1(a)は黒点状の膜を形成する方法、図1(b)は規則的に黒点状の膜を形成する方法、図1(c)は光量調整を行う方法を示す概略図である。 図2は、感光性フィルムからなる本発明の光吸収体を示す図である。 図3は、本発明の光吸収体の遮光率の波長依存性を示すグラフである。 カラーレジストにおいて、図4(a)は黒点状の膜を形成する方法、図4(b)および(c)は、いずれも光量調整を行う方法を示す概略図である。 図5(a)~(c)は、従来の光吸収体を示す図である。 図6は、従来の光吸収体の遮光率の波長依存性を示すグラフである。 図7は、作製した本発明の光吸収体における光透過率を示すグラフである。 図8は、塗料を塗装して作製した光吸収体における光透過率を示すグラフである。
[第1の形態]
本発明の第1の形態の光吸収体は感光性フィルムからなる。
感光性フィルムは、感光層を、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなるベースフィルムと、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)からなるカバーフィルムとで挟んだ三層構造をなす通常知られたものを用いればよい。
感光層を構成する感光性樹脂は、バインダー、重合性化合物および光重合開始剤と言った、感光性樹脂を得るのに通常用いられる成分からなる組成物溶液から作製したものであれば、特に制限はない。また、バインダー、重合性化合物および光重合開始剤についても、感光性フィルムの作製において通常用いられる成分であれば特に制限はなく、ソルダーレジスト形成用の熱架橋剤を含んだものであってもよい。
また、感光性樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲において、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤、分散剤等の公知の各種添加剤を配合してもよい。
感光性フィルムは、たとえば、ポリエステルベースの感光性フィルムを用いた場合、わずか0.1秒未満の露光時間で光吸収体を作製可能である。具体的な市販品としては、たとえば、AGFA社のIdealine RPF、富士フイルム社製のXPR-7S等を好適に用いることができる。
本形態では、この感光性フィルムに露光により、光の反射を防止するための黒点状の膜を形成する。この膜は遮光性を有するため、これが形成されることにより、本形態は光吸収体として機能する。
具体的には、図1(a)に示すように、カバーフィルムを剥がした感光性フィルム10の表面に露光を行って膜11を形成する。この露光は、フォトマスクを透過した紫外線(UV)露光であってもよいし、レーザー光を感光性フィルム10の表面に直接照射してもよい。
これらの露光手段のうち、フォトマスクは、クロムマスクのように、パターンを形成できるマスクが好ましく、クロムマスクであれば、クロム単層でも、クロム層に酸化クロム(Cr)の反射防止膜を蒸着してもよい。また、レーザー光は、たとえば、白、赤、緑、青等、どの色の光であってもよい。
パターンを形成できるマスクを用いた場合は、図1(b)に示すように、予めパターンを形成したフォトマスクを感光性フィルム10に露光することにより、規則的に複数の黒点状の膜11…を形成できる。この規則的に形成された膜は、スケール、エンコーダー、回折素子等として適用することができる。
また、図1(c)に示すように、感光性フィルム10の表面に膜厚が異なるフォトマスクを透過してUV露光を行えば、光透過率をたとえば50~100%となるように光量調整を行うこともできる。
図2に示すように、これにより得られた膜11は、傾斜がなく垂直方向に形成されるため、深さムラが生じない。そのため、光の当たる位置の違いによる吸収ムラを防ぐことができる。また、突起のように感光性フィルム10の層上に出る要素でないため、散乱光の発生も防ぐことができる。
さらに、露光により形成するため、塗料を用いて形成した場合のように、光吸収率(遮光率)の波長依存性がなく、図3に示すように、光の波長に関わらず、概ね一定の遮光率で光を吸収することができる。加えて、露光を行うのみで膜を形成するため、蒸着や塗装に比して低コストで形成することができる。
ここで、遮光を目的とした場合の光透過率は、400~2000nm間で一貫して0.5%以下であることが好ましく、0.2%未満であることがより好ましい。この光透過率は、市販の光学濃度計を用いて測定可能であるが、たとえば、Xライト社製光学濃度計(X-rite exact)を好適に用いることができる。
また、露光により得られた膜には、現像および定着を行う。その場合の現像および定着の方法としては、特に制限はなく、用いる感光性フィルムに合わせて適切な条件を選択して行えばよい。
たとえば、現像は、AGFA社製の物理現像液(PDEV)を、現像速度20~40秒、現像温度35~38℃の条件にて、現像補充量250ml/mであって一日当たり2Lを追加するペースで用いて行うことが好適である。その場合、定着は、同社製の物理定着液(PFIX)を定着補充量350ml/mmのペースで用いて、50%の黒化を行い、20℃程度の常温の水洗水にて水洗することが好ましい。
また、富士フイルム社製の現像液ND-1を用いて、たとえば、温度20℃、湿度50%の暗室下にて、液温35℃の現像液を30秒間用いて現像を行った後、同社製の定着液NF-1を用いた定着を行うことも好適である。
なお、定着液にはチオ硫酸ナトリウム等の硫黄成分を含む物質が用いられることがあるが、これらに含まれる硫黄成分は、現像の際に十分に除去することが好ましい。硫黄成分の有無に関しては、市販の蛍光X線硫黄分析装置や一般的な溶液導電率測定法を適宜に用いて測定すればよい。
本発明の光吸収体の厚さは、特に制限はなく、通常10~40μm程度であるが、本発明では、既に述べたように黒点状の膜の遮光性が高いので、層厚を相対的に薄くすることが可能となる。
[第2の形態]
本発明の第2の形態の光吸収体はカラーレジストからなる。
カラーレジストは、第1の形態で述べた感光性樹脂にレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の着色剤を加える以外は、概ね同様であり、着色剤としても、通常カラーレジスト作製時に用いるものを適宜選択することでよい。
本形態では、このカラーレジスト上に露光により、光の反射を防止するための黒点状の膜を形成する。この膜の形成により、本形態は光吸収体として機能する。
具体的には、図4(a)に示すように、カラーレジスト20の表面に、予めパターンを形成したフォトマスクを透過してUV露光を行った後、現像して黒点状の膜21を形成する。この膜21は、フォトマスクに形成するパターンによって、図中右側の例のように単一形成することも、図中左側の例のように、規則的に複数の膜21…を形成して回折素子等として機能させることもできる。
この際の現像条件としては、用いるカラーレジストに合わせて適切な条件を選択して行えばよく、たとえば、第1の形態で挙げたような条件にて、現像を行い、さらに定着を行うことが好ましい。
また、光量調整を行うこともでき、図4(b)に示すように、光透過率をたとえば50%のように全面均一にすることもできるし、図4(c)に示すように、膜厚が異なるフォトマスクを透過して光透過率を、たとえば50~100%となるように調整することもできる。
さらに、図4(a)~(c)に示した例では、フォトマスクによりパターンを形成しているが、第1の形態と同様にレーザー光で露光することとしてもよい。
これにより得られた膜は、垂直方向に突出し、かつ頂部が平坦で傾斜ができたりしないため、厚さムラが生じない。そのため、光の当たる位置の違いによる吸収ムラや散乱公の発生を防ぐことができる。また、波長依存性がないこと、低コストで作製可能なこと、光吸収体の層厚を相対的に薄くできることは、第1の形態と同様である。
[他の形態]
また、本発明の光吸収体は、上述した各形態に限らず、たとえば、感光性材料はカラーでないレジストを用い、フォトリソグラフィーにより、金属膜にエッチングを行うことでパターンを形成して得ることでもよい。
本発明の光吸収体は、高い遮光性を有するため、光量や光路の調整、ゴーストやフレアの原因となる反射光の除去などが必要な光を使って情報を得る装置、つまり光学装置の用途に好適に用いることができる。特に、黒点、黒斑、斑点などと称され、目の角膜や水晶体で生じる有害な反射光や散乱光を吸収して除去する光学素子を必要とする医用・眼鏡機器関連用途にて、より好適に用いることができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
(実施例1)
感光性フィルムとしてのポリエステルベースで厚さ0.18mmの赤感性用フォトツーリングフィルム(AGFA社製Idealine RPF)に、0.07秒の間、波長633nmの赤色レーザー光を露光し、直径0.5mmの図1(a)に示すような黒点状の光吸収体を作製した。
得られた黒点において、Xライト社製光学濃度計(X-rite exact)を用いて400~2,000nm間の光透過率(%)を測定したところ、図7に示すように、一貫して0.2%未満であり、波長に依存せず概ね確実に光を遮光できた。
(実施例2)
露光する光を波長670nmの赤色半導体レーザー光に変えた以外は、実施例1と同様にして黒点を作製し、実施例1と同様に光透過性を測定したところ、波長に依存せず概ね確実に光を遮光できていた。
(実施例3)
赤感性用フォトツーリングフィルムを、同じポリエステルベースで青緑色感性用のフィルム(AGFA社製Idealine OPF)に変え、波長500~530nmの緑色レーザー光を露光した以外は、実施例1と同様にして黒点を作製し、実施例1と同様に光透過率を測定したところ、波長に依存せず概ね確実に光を遮光できていた。
(実施例4)
実施例3の青緑色感性用のフィルムに、波長488nmの青色アルゴンレーザー光を露光した以外は実施例3と同様にして黒点を作製し、実施例3と同様に光透過性を測定したところ、波長に依存せず概ね確実に光を遮光できていた。
(実施例5)
感光性フィルムとしての富士フイルム社製XPR-7Sに、レーザースポットサイズ0.004mm、レーザー送りピッチ0.001mmの条件にて、波長647nmのレーザー光を露光し、実施例1と同様のサイズである直径0.5mmの黒点状の膜を描画した。その後、温度20℃、湿度50%の暗室下にて、30秒の間、液温35℃とした現像液(富士フイルム社製ND-1)を用いて描画した膜の現像を行い、さらに定着液(富士フイルム社製NF-1)を用いて定着を行った後、水洗および乾燥させて光吸収体を作製した。
得られた黒点において、実施例1と同様に光透過性を測定したところ、波長に依存せず概ね確実に光を遮光できていた。
(比較例1)
感光性フィルムに穴を開けて、その穴に黒色塗料としてのエスケー技研製ミラクプライマーSRを塗装することにより作製した黒点状の光吸収体において、実施例1と同様に光透過率を測定した。結果を図8に示す。
(比較例2)
黒色塗料を、東洋工業社製BS-421A BLK SDに変えた以外は、比較例1と同様にして感光性フィルムの穴に塗装をし、実施例1と同様に光透過率を測定した。結果を図8に示す。
(比較例3)
黒色塗料を、東レ製フォトブラックに変えた以外は、比較例1と同様にして感光性フィルムの穴に塗装をし、実施例1と同様に光透過率を測定した。結果を図8に示す。
比較例1~3の光吸収体では、図8に示すように、いずれも波長900nmを超えた辺りから上昇する傾向が観られた。
これらの結果から、感光性材料からなる層の表面に、露光により作製した本発明の光吸収体は、波長依存性が殆どなく、従来の手法のように塗装により作製した光吸収体に比して極めて優れた光吸収能を示すことがわかった。
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、本発明の光吸収体は、上記実施の形態に限定されず、その範囲内で想定されるあらゆる技術的思想を含んでもよい。
本発明は、光量や光路の調整、ゴーストやフレアの原因となる反射光の除去などが必要な医療機器等の光学装置の用途にて広く用いることができる。
10 感光性フィルム
11,21 膜
20 カラーレジスト

Claims (2)

  1. 医用機器および眼鏡機器の光学素子に用いられる光吸収体の製造方法であって、
    感光性フィルムからなる層の表面に、有色のレーザー光の露光により400~2,000nm間の光透過率が0.5%以下である、前記感光性フィルムの層上に出る要素でない黒点状の膜を形成し、
    光吸収体を目の角膜ないしは水晶体で生じる有害な反射光ないしは散乱光を吸収して除去する前記光学素子に適用可能とすることを特徴とする光吸収体の製造方法。
  2. 露光する前記感光性フィルムは、ハロゲン化銀を含む請求項1に記載の光吸収体の製造方法。
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