以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(3つの足部を有する磁芯の場合の例(トランスの個数:N=1))
2.変形例(4つの足部を有する磁芯の場合の例(トランスの個数:N=1))
3.その他の変形例(トランスの個数:N≧2の場合の例など)
<1.実施の形態>
[全体構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1)の概略構成例を、回路図で表したものである。このスイッチング電源装置1は、電源としての直流入力電源10(例えば第1のバッテリ)から供給される直流入力電圧Vinを直流出力電圧Voutに電圧変換し、負荷9に電力を供給する、DC-DCコンバータとして機能するものである。なお、この負荷9としては、例えば、電子機器やバッテリ(第2のバッテリ)等が挙げられる。また、本実施の形態のスイッチング電源装置1は、後述するトランスの個数が1個(N=1)であると共に、後述する整流素子対が1組(N=1)の場合の例となっている。
なお、スイッチング電源装置1における電圧変換の態様としては、アップコンバート(昇圧)およびダウンコンバート(降圧)のいずれであってもよい。
ここで、直流入力電圧Vinは、本発明における「入力電圧」の一具体例に対応し、直流出力電圧Voutは、本発明における「出力電圧」の一具体例に対応している。また、直流入力電源10は、本発明における「電源」の一具体例に対応し、この直流入力電源10とスイッチング電源装置1とを備えたシステムが、本発明における「電力供給システム」の一具体例に対応している。
スイッチング電源装置1は、2つの入力端子T1,T2と、2つの出力端子T3,T4と、入力平滑コンデンサCinと、インバータ回路2と、トランス3と、整流平滑回路4と、駆動回路5とを備えている。入力端子T1,T2間には直流入力電圧Vinが入力され、出力端子T3,T4の間からは直流出力電圧Voutが出力されるようになっている。
なお、入力端子T1,T2は、本発明における「入力端子対」の一具体例に対応し、出力端子T3,T4は、本発明における「出力端子対」の一具体例に対応している。
入力平滑コンデンサCinは、入力端子T1に接続された1次側高圧ラインL1Hと、入力端子T2に接続された1次側低圧ラインL1Lとの間に配置されている。具体的には、後述するインバータ回路2と入力端子T1,T2との間の位置において、入力平滑コンデンサCinの第1端が1次側高圧ラインL1Hに接続されると共に、入力平滑コンデンサCinの第2端が1次側低圧ラインL1Lに接続されている。この入力平滑コンデンサCinは、入力端子T1,T2から入力された直流入力電圧Vinを平滑化するためのコンデンサである。
(インバータ回路2)
インバータ回路2は、入力端子T1,T2と、後述するトランス3における1次側巻線31との間に、配置されている。このインバータ回路2は、4つのスイッチング素子S1~S4を有しており、フルブリッジ回路により構成されている。
このインバータ回路2では、スイッチング素子S1,S2の第1端同士が、接続点P1において互いに接続され、スイッチング素子S3,S4の第1端同士が、接続点P2において互いに接続されている。また、スイッチング素子S1,S3の第2端第2端同士が、1次側高圧ラインL1H上において互いに接続され、スイッチング素子S2,S4の第2端同士が、1次側低圧ラインL1L上において互いに接続されている。なお、接続点P1,P2間には、後述するトランス3の1次側巻線31が挿入配置されている。
このような構成によりインバータ回路2では、後述する駆動回路5から供給される駆動信号SG1~SG4に従って各スイッチング素子S1~S4がスイッチング動作(オン・オフ動作)を行うことで、以下のようになる。すなわち、入力端子T1,T2間に印加される直流入力電圧Vinを交流電圧(電圧Vb)に変換して、トランス3(1次側巻線31)へと出力するようになっている。
なお、スイッチング素子S1~S4としては、例えば電界効果型トランジスタ(MOS-FET;Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチ素子が用いられる。スイッチング素子S1~S4としてMOS―FETを用いた場合には、各スイッチング素子S1~S4に並列接続されるコンデンサおよびダイオード(図示せず)をそれぞれ、このMOS―FETの寄生容量または寄生ダイオードから構成することが可能である。また、このようなコンデンサをそれぞれ、ダイオードの接合容量で構成することも可能である。このように構成した場合、スイッチング素子S1~S4とは別個にコンデンサやダイオードを設ける必要がなくなり、ZVS(Zero Voltage Switching),ZCS(Zero Current Switching)等の共振スイッチング動作を行うインバータ回路2の回路構成を、簡素化することが可能となる。
(トランス3)
トランス3は、磁芯30と、1次側巻線31と、2次側巻線321,322とを有している。また、詳細は後述するが(図2)、このトランス3における1次側巻線31および2次側巻線321,322をそれぞれ、シートコイル(多層基板)により構成する場合には、以下のような構成になっていてもよく、本実施の形態ではそのような構成の場合の例となっている。すなわち、本実施の形態では図2に示したように、2次側巻線321が、互いに並列接続された2つの2次側巻線32a,32bにより構成されていると共に、2次側巻線322が、互いに並列接続された2つの2次側巻線32c,32dにより構成されている。そして、本実施の形態ではトランス3全体として、4つの2次側巻線32a,32b,32c,32dが設けられるようになっている(図2)。このような構成は、各2次側巻線を多層に配置し、並列接続して構成する場合に、特に有効である。したがって、以降の説明では上記したように、2次側巻線321,322がそれぞれ、互いに並列接続された複数の巻線(サブ巻線)により構成されている場合の例について、説明する。なお、このようにして互いに並列接続された複数の巻線の個数としては、図2に示したように、2個ずつの場合には限られず、例えば、3個ずつ以上であってもよい。
1次側巻線31では、第1端が接続点P1に接続され、第2端が接続点P2に接続されている。2次側巻線321では、第1端が後述する整流平滑回路4内の接続点P3に接続され、第2端がこの整流平滑回路4内の接続点P4に接続されている。2次側巻線322では、第1端がこの整流平滑回路4内の接続点P5に接続され、第2端がこの整流平滑回路4内の接続点P6に接続されている。
このトランス3は、インバータ回路2によって生成された交流電圧(トランス3の1次側巻線31に入力される1次巻線間電圧Vp)を電圧変換し、2次側巻線321,322の各端部から交流電圧(2次巻線間電圧Vs)を出力するようになっている。また、この場合における、1次巻線間電圧Vpに対する各2次巻線間電圧Vsの電圧変換の度合いは、1次側巻線31と2次側巻線321,322との巻数比によって定まる。
なお、スイッチング電源装置1における、このようなトランス3付近の詳細構成例については、後述する(図2)。
(整流平滑回路4)
整流平滑回路4は、出力端子T3,T4と、トランス3における2次側巻線321,322(後述する2次側巻線32a~32d)との間に配置されており、以下説明する複数本(この例では4本)のアームを有する、フルブリッジ型の整流平滑回路となっている。この整流平滑回路4は、8個の整流ダイオード411,412,421,422,431,432,441,442と、1個のチョークコイルLchと、1個の出力平滑コンデンサCoutとを有している。
この整流平滑回路4では、同じ向きで互いに直列配置(直列接続)された2個ずつの整流ダイオード(一対の整流素子)によって、4本のアームが形成されている。換言すると、整流平滑回路4では以下説明するように、出力ラインLOと接地ラインLGとの間の複数(4本)の経路上にそれぞれ、整流ダイオードが個別に2段ずつ配置(2個の整流ダイオードが互いに直列配置)されている。
具体的には、整流ダイオード411,412によって第1のアームが形成され、整流ダイオード421,422によって第2のアームが形成され、整流ダイオード431,432によって第3のアームが形成され、整流ダイオード441,442によって第4のアームが形成されている。また、これら第1~第4のアームは、出力端子T3,T4間において互いに並列配置されている。具体的には、第1~第4のアームの第1端同士の接続点(接続点Px)が、チョークコイルLchおよび出力ラインLOを介して出力端子T3に接続され、第1~第4のアームの第2端同士の接続点が、出力端子T4から延伸する接地ラインLGに接続されている。
ここで、整流ダイオード411,412,421,422,431,432,441,442はそれぞれ、本発明における「整流素子」の一具体例に対応している。また、整流ダイオード411,412による一対の整流素子対は、本発明における「第1の整流素子対」の一具体例に対応し、整流ダイオード421,422による一対の整流素子対は、本発明における「第2の整流素子対」の一具体例に対応している。同様に、整流ダイオード431,432による一対の整流素子対は、本発明における「第3の整流素子対」の一具体例に対応し、整流ダイオード441,442による一対の整流素子対は、本発明における「第4の整流素子対」の一具体例に対応している。
上記した第1のアームでは、整流ダイオード411,412のカソードがそれぞれ、この第1のアームの上記第1端側に配置されていると共に、整流ダイオード411,412のアノードがそれぞれ、この第1のアームの上記第2端側に配置されている。具体的には、整流ダイオード411のカソードが接続点Pxに接続され、整流ダイオード411のアノードと整流ダイオード412のカソードとが接続点P3において互いに接続され、整流ダイオード412のアノードが接地ラインLGに接続されている。
同様に、第2のアームでは、整流ダイオード421,422のカソードがそれぞれ、この第2のアームの上記第1端側に配置されていると共に、整流ダイオード421,422のアノードがそれぞれ、この第2のアームの上記第2端側に配置されている。具体的には、整流ダイオード421のカソードが接続点Pxに接続され、整流ダイオード421のアノードと整流ダイオード422のカソードとが接続点P4において互いに接続され、整流ダイオード422のアノードが接地ラインLGに接続されている。
同様に、第3のアームでは、整流ダイオード431,432のカソードがそれぞれ、この第3のアームの上記第1端側に配置されていると共に、整流ダイオード431,432のアノードがそれぞれ、この第3のアームの上記第2端側に配置されている。具体的には、整流ダイオード431のカソードが接続点Pxに接続され、整流ダイオード431のアノードと整流ダイオード432のカソードとが接続点P5において互いに接続され、整流ダイオード432のアノードが接地ラインLGに接続されている。
同様に、第4のアームでは、整流ダイオード441,442のカソードがそれぞれ、この第4のアームの上記第1端側に配置されていると共に、整流ダイオード441,442のアノードがそれぞれ、この第4のアームの上記第2端側に配置されている。具体的には、整流ダイオード441のカソードが接続点Pxに接続され、整流ダイオード441のアノードと整流ダイオード442のカソードとが接続点P6において互いに接続され、整流ダイオード442のアノードが接地ラインLGに接続されている。
また、これら第1~第4のアームのうち、互いに隣接する第1のアームと第2のアームとの間には、トランス3における2次側巻線321が、Hブリッジ接続されている。また、互いに隣接する第3のアームと第4のアームとの間には、トランス3における2次側巻線322が、Hブリッジ接続されている。より具体的には、第1のアーム上の接続点P3と第2のアーム上の接続点P4との間に、2次側巻線321が挿入配置されている。また、第3のアーム上の接続点P5と第4のアーム上の接続点P6との間に、2次側巻線322が挿入配置されている。
このような第1~第4のアームと出力平滑コンデンサCoutとの間には、チョークコイルLchが配置されている。具体的には、これら第1~第4のアームにおける上記第1端同士の接続点(接続点Px)と、出力平滑コンデンサCoutの第1端との間には、出力ラインLOを介してチョークコイルLchが挿入配置されている。また、第1~第4のアームにおける上記第2端同士の接続点は、接地ラインLG上において、出力平滑コンデンサCoutの第2端に接続されている。なお、出力ラインLOは出力端子T3に接続されているとともに、接地ラインLGは出力端子T4に接続されている。そして、これらの出力ラインLOと接地ラインLGとの間(出力端子T3,T4の間)に、出力平滑コンデンサCoutが接続されている。
このような構成の整流平滑回路4では、整流ダイオード411,412,421,422,431,432,441,442(4つの整流素子対)により構成される整流回路において、トランス3の2次側巻線321,322から出力される交流電圧を整流し、整流後の電圧(2次側整流電圧Vd)として出力するようになっている。また、チョークコイルLchおよび出力平滑コンデンサCoutにより構成される平滑回路において、上記整流回路から出力される2次側整流電圧Vdを平滑化することで、直流出力電圧Voutを生成するようになっている。なお、このようにして生成された直流出力電圧Voutは、出力端子T3,T4から前述した負荷9に出力され、給電されるようになっている。
(駆動回路5)
駆動回路5は、インバータ回路2内のスイッチング素子S1~S4の動作をそれぞれ制御する、スイッチング駆動を行う回路である。具体的には、駆動回路5は、スイッチング素子S1~S4に対してそれぞれ駆動信号SG1~SG4を供給することで、各スイッチング素子S1~S4のオン・オフ動作を制御するようになっている。
ここで、このような駆動回路5は、例えば、後述する所定の位相差φ(図3参照)を持って動作するようにスイッチング駆動を行うことで、直流出力電圧Voutの大きさを制御するようになっている。このようにして駆動回路5は、スイッチング素子S1~S4に対して位相制御(スイッチング位相制御)を行い、上記した位相差φを適切に設定することで、直流出力電圧Voutを安定化させるようになっている。また、駆動回路5は、このようなインバータ回路2(4個のスイッチング素子S1~S4)に対して、例えば、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御を行うようにしてもよい。
なお、このような駆動回路5は、本発明における「駆動部」の一具体例に対応している。
[トランス3付近の詳細構成]
続いて、図1に加えて図2を参照して、上記したトランス3付近の詳細構成例について説明する。
図2は、図1に示したトランス3付近(トランス3および整流平滑回路4)の詳細構成例を、模式的に表したものである。
この図2に示したように、本実施の形態のトランス3では、前述した磁芯30が、1つの中足部30cと2つの外足部30a,30bとを有する、3脚型の磁芯により構成されている。また、このような3脚型の磁芯30は、例えば、フェライトなどの磁性材料により構成されている。なお、この図2では図示の便宜上、このような3脚型の磁芯30における足部(脚部)をその上面側から見た構成例を、示している。
また、この図2に示したように、本実施の形態のトランス3では、2次側巻線321が、互いに並列接続された2つの2次側巻線32a,32bにより構成されていると共に、2次側巻線322が、互いに並列接続された2つの2次側巻線32c,32dにより構成されている。つまり、このトランス3全体としては、4つの2次側巻線32a,32b,32c,32dが設けられている。また、このような4つの2次側巻線32a,32b,32c,32dは、例えば、各々が薄膜状のコイルパターン(銅やアルミニウムなどの導電性のパターン)によって積層されてなる、シートコイルにより構成されていてもよいし、巻線構造によって構成されていてもよい。同様に、1次側巻線31も、2次側巻線32a,32b,32c,32dと同様に積層されてなる、シートコイルにより構成されていてもよいし、巻線構造によって構成されていてもよい。
ここで、上記した外足部30aは、本発明における「第1の外足部」の一具体例に対応し、上記した外足部30bは、本発明における「第2の外足部」の一具体例に対応している。また、上記した2次側巻線32a,32bはそれぞれ、本発明における「第1の2次側巻線」および「複数の巻線(サブ巻線)」の一具体例に対応している、同様に、2次側巻線32c,32dはそれぞれ、本発明における「第2の2次側巻線」および「複数の巻線(サブ巻線)」の一具体例に対応している。
このような本実施の形態のトランス3では、図2に示したように、1次側巻線31が、中足部30cに巻回されている(図2の例では、1ターン分巻回されている)。一方、2次側巻線321を構成する2つの2次側巻線32a,32bはそれぞれ、中足部30cと外足部30aとの間において巻回されている(図2の例では、2次側巻線32a,32bともに、0.5ターン(ハーフターン)分巻回されている)。同様に、2次側巻線322を構成する2つの2次側巻線32c,32dはそれぞれ、中足部30cと外足部30bとの間において巻回されている(図2の例では、2次側巻線32c,32dともに、0.5ターン(ハーフターン)分巻回されている)。
また、本実施の形態のトランス3内においては、詳細は後述するが(図13)、図2中に示した2次回路電流Is1~Is4の向きがそれぞれ、以下の関係となるように、設定されている。換言すると、このような2次回路電流Is1~Is4の向きがそれぞれ以下の関係となるように、上記した1次側巻線31および2次側巻線32a,32b,32c,32dがそれぞれ、上記したように磁芯30に対して巻回されている。
ここで、2次側巻線32a,32bの双方を同時に経由して、整流ダイオード411,412による一対の整流素子対へと流れる電流を、2次回路電流Is1とし、2次側巻線32a,32bの双方を同時に経由して、整流ダイオード421,422による一対の整流素子対へと流れる電流を、2次回路電流Is2とする(図2参照)。また、2次側巻線32c,32dの双方を同時に経由して、整流ダイオード431,432による一対の整流素子対へと流れる電流を、2次回路電流Is3とし、2次側巻線32c,32dの双方を同時に経由して、整流ダイオード441,442による一対の整流素子対へと流れる電流を、2次回路電流Is4とする(図2参照)。すると、2次回路電流Is1または2次回路電流Is2の向きと、2次回路電流Is3または2次回路電流Is4の向きとが、互いに逆方向となるように、1次側巻線31および2次側巻線32a,32b,32c,32dがそれぞれ、磁芯30に対して巻回されている。具体的には、図2中に実線で示した2次回路電流Is1,Is3同士が、互いに逆向きになると共に、図2中に破線で示した2次回路電流Is2,Is4同士が、互いに逆向きになるように、設定されている。
ここで、上記した2次回路電流Is1,Is2(2次回路電流Is1または2次回路電流Is2)は、本発明における「第1の電流」の一具体例に対応している。また、上記した2次回路電流Is3,Is4(2次回路電流Is3または2次回路電流Is4)は、本発明における「第2の電流」の一具体例に対応している。
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
このスイッチング電源装置1では、インバータ回路2において、直流入力電源10から入力端子T1,T2を介して供給される直流入力電圧Vinがスイッチングされることで、交流電圧(1次巻線間電圧Vp)が生成される。この交流電圧は、トランス3における1次側巻線31へ供給される。そして、トランス3においてこの交流電圧が変圧されることで、2次側巻線321,322から、変圧された交流電圧(2次巻線間電圧Vs)が出力される。
整流平滑回路4では、トランス3の2次側巻線321,322から出力された交流電圧(変圧された交流電圧)が、整流ダイオード411,412,421,422,431,432,441,442によって整流された後、チョークコイルLchおよび出力平滑コンデンサCoutによって平滑化される。これにより、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutが出力される。そして、この直流出力電圧Voutは、負荷9に給電される。
(B.詳細動作)
続いて、図1,図2に加えて図3~図9を参照して、スイッチング電源装置1の詳細動作(前述した位相制御の詳細)について説明する。
ここで、図3は、スイッチング電源装置1の動作例(位相シフト制御動作の一例)を、タイミング波形図で表したものである。具体的には、この図3において、(A)~(D)はそれぞれ、前述した駆動信号SG1~SG4における電圧波形を示し、(E1)は、前述した1次巻線間電圧Vpにおける電圧波形を示し、(E2)は、前述した2次巻線間電圧Vsにおける電圧波形を示している。また、(F)~(I)はそれぞれ、前述した2次回路電流Is1~Is4における電流波形を示し、(J)は、チョークコイルLchを流れる電流IL(図1参照)における電流波形を示している。なお、この図3における横軸は、時間tを示している。
ちなみに、各駆動信号SG1~SG4において「H(ハイ)」状態となる期間が、対応する各スイッチング素子S1~S4がオン状態となる期間に相当する。一方、各駆動信号SG1~SG4において「L(ロー)」状態となる期間が、対応する各スイッチング素子S1~S4がオフ状態となる期間に相当する。また、この図3の例では、前述した位相制御の際における位相差φ(駆動信号SG1,SG2と駆動信号SG3,SG4との間での位相差φ)を、示している。
更に、この図3においては、時間tに沿って、4つの期間(図3中に示した期間A1,A2,B1,B2の各期間)が設定されている。具体的には、図3中に示したように、タイミングt1~t2の期間が、期間A1に対応し、タイミングt2~t3の期間が、期間A2に対応している。また、タイミングt3~t4の期間が、期間B1に対応し、タイミングt4~t5の期間が、期間B2に対応している。そして、これら4つの期間が順番に(期間A1,A2,B1,B2の順に)繰り返されることで、スイッチング周期Tが規定されるようになっている(図3参照)。具体的には、例えば図3中に示したタイミングt1~t5の期間が、そのようなスイッチング周期Tに対応している。
ここで、図4~図7はそれぞれ、図3中に示した上記4つの期間(上記した期間A1,A2,B1,B2の各期間)における動作例を、回路図で表したものである。以下では、これらの各状態における動作例を、図1を参照しつつ、詳細に説明する。
(期間A1)
まず、図4に示した期間A1(t=t1~t2の期間)では、スイッチング素子S1,S4がそれぞれオン状態に設定されると共に、スイッチング素子S2,S3がそれぞれオフ状態に設定されている(図3(A)~図3(D)参照)。すると、トランス3の1次側には、図4に示したように、直流入力電源10から一次側高圧ラインL1H、スイッチング素子S1、1次側巻線31、スイッチング素子S4および1次側低圧ラインL1Lをそれぞれ、この順序で経由して直流入力電源10へと戻る、1次回路電流Ipが流れる。また、この際の1次巻線間電圧Vp(接続点P2から接続点P1を観測した際の電圧)の値は、Vp=Vinとなる(図3(E1)参照)。一方、この際の2次巻線間電圧Vs(接続点P4から接続点P3を観測した際の電圧、および、接続点P6から接続点P5を観測した際の電圧)はそれぞれ、1次巻線間電圧Vpに対してトランス3の巻数比を乗じた電圧値となる。具体的には、1次側の巻数をNp、2次側の巻線をNsとした場合、トランス3の巻数比は(Ns/Np)となるため、Vs=Vp×(Ns/Np)となる(図3(E2)参照)。そして、トランス3の2次側には、図4に示したように、2次側巻線321から整流ダイオード411、チョークコイルLch、出力ラインLO、接地ラインLGおよび整流ダイオード422をそれぞれ、この順序で経由して2次側巻線321へと戻る、2次回路電流Is1が流れる。また、2次側巻線322から整流ダイオード431、チョークコイルLch、出力ラインLO、接地ラインLGおよび整流ダイオード442をそれぞれ、この順序で経由して2次側巻線322へと戻る、2次回路電流Is3が流れる。
(期間A2)
続いて、図5に示した期間A2(t=t2~t3の期間)では、スイッチング素子S1,S3がそれぞれオン状態に設定されると共に、スイッチング素子S2,S4がそれぞれオフ状態に設定されている(図3(A)~図3(D)参照)。この期間A2では、図5に示したように、トランス3の1次側には、1次回路電流Ipは流れない。また、この際の1次巻線間電圧Vpの値は、Vp=0Vとなる(図3(E1)参照)。同様に、この際の2次巻線間電圧Vsの値も、Vs=0Vとなる(図3(E2)参照)。そして、トランス3の2次側には、図5に示したように、チョークコイルLchから出力ラインLO、接地ラインLGおよび整流ダイオード412,411をそれぞれ、この順序で経由してチョークコイルLchに戻る、2次回路電流Is1が流れる。同様に、チョークコイルLchから出力ラインLO、接地ラインLGおよび整流ダイオード422,421をそれぞれ、この順序で経由してチョークコイルLchに戻る、2次回路電流Is2が流れる。同様に、チョークコイルLchから出力ラインLO、接地ラインLGおよび整流ダイオード432,431をそれぞれ、この順序で経由してチョークコイルLchに戻る、2次回路電流Is3が流れる。同様に、チョークコイルLchから出力ラインLO、接地ラインLGおよび整流ダイオード442,441をそれぞれ、この順序で経由してチョークコイルLchに戻る、2次回路電流Is4が流れる。
(期間B1)
次いで、図6に示した期間B1(t=t3~t4の期間)では、スイッチング素子S2,S3がそれぞれオン状態に設定されると共に、スイッチング素子S1,S4がそれぞれオフ状態に設定されている(図3(A)~図3(D)参照)。すると、トランス3の1次側には、図6に示したように、直流入力電源10から一次側高圧ラインL1H、スイッチング素子S3、1次側巻線31、スイッチング素子S2および1次側低圧ラインL1Lをそれぞれ、この順序で経由して直流入力電源10へと戻る、1次回路電流Ipが流れる。一方、この際の1次巻線間電圧Vpの値は、引き続き、Vp=-Vinとなる(図3(E1)参照)。また、この際の2次巻線間電圧Vsはそれぞれ、前述した期間A1の場合と同様に、1次巻線間電圧Vpに対してトランス3の巻数比を乗じた電圧値となる。具体的には、この期間B1では、Vs=-Vp×(Ns/Np)となる(図3(E2)参照)。そして、トランス3の2次側には、図6に示したように、2次側巻線321から整流ダイオード421、チョークコイルLch、出力ラインLO、接地ラインLGおよび整流ダイオード412をそれぞれ、この順序で経由して2次側巻線321へと戻る、2次回路電流Is2が流れる。また、2次側巻線322から整流ダイオード441、チョークコイルLch、出力ラインLO、接地ラインLGおよび整流ダイオード432をそれぞれ、この順序で経由して2次側巻線322へと戻る、2次回路電流Is4が流れる。
(期間B2)
続いて、図7に示した期間B2(t=t4~t5の期間)では、スイッチング素子S2,S4がそれぞれオン状態に設定されると共に、スイッチング素子S1,S3がそれぞれオフ状態に設定されている(図3(A)~図3(D)参照)。この期間B2では、図7に示したように、トランス3の1次側には、1次回路電流Ipは流れない。また、この際の1次巻線間電圧Vpの値は、Vp=0Vとなる(図3(E1)参照)。同様に、この際の2次巻線間電圧Vsの値も、Vs=0Vとなる(図3(E2)参照)。そして、トランス3の2次側には、図7に示したように、チョークコイルLchから出力ラインLO、接地ラインLGおよび整流ダイオード412,411をそれぞれ、この順序で経由してチョークコイルLchに戻る、2次回路電流Is1が流れる。同様に、チョークコイルLchから出力ラインLO、接地ラインLGおよび整流ダイオード422,421をそれぞれ、この順序で経由してチョークコイルLchに戻る、2次回路電流Is2が流れる。同様に、チョークコイルLchから出力ラインLO、接地ラインLGおよび整流ダイオード432,431をそれぞれ、この順序で経由してチョークコイルLchに戻る、2次回路電流Is3が流れる。同様に、チョークコイルLchから出力ラインLO、接地ラインLGおよび整流ダイオード442,441をそれぞれ、この順序で経由してチョークコイルLchに戻る、2次回路電流Is4が流れる。
以上で、図3および図4~図7に示した、一連の動作(スイッチング周期T内での位相シフト制御動作の一例)についての説明が、終了となる。
(C.作用・効果)
続いて、本実施の形態のスイッチング電源装置1における作用および効果について、比較例と比較しつつ詳細に説明する。
(C-1.比較例)
図8は、比較例に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置101)の概略構成を、回路図で表したものである。また、図9は、この比較例のスイッチング電源装置101におけるトランス付近(後述するトランス103および整流平滑回路104)の詳細構成例を、模式的に表したものである。なお、この図9においても、前述した図2と同様に図示の便宜上、3脚型の磁芯30における脚部をその上面側から見た構成例を、示している。
この比較例のスイッチング電源装置101は、図8に示したように、図1に示した本実施の形態のスイッチング電源装置1において、トランス3および整流平滑回路4の代わりに、トランス103および整流平滑回路104をそれぞれ設けたものに対応している。
整流平滑回路104は、整流平滑回路4と同様に、出力端子T3,T4と、トランス103における後述する2次側巻線321,322(2次側巻線32a~32d)との間に配置されている。ただし、この整流平滑回路104は、前述したフルブリッジ型の整流平滑回路4とは異なり、以下説明するセンタタップ型の整流平滑回路となっている。
具体的には、図8に示したように、この整流平滑回路104は、4個の整流ダイオード412,422,432,442と、1個のチョークコイルLchと、1個の出力平滑コンデンサCoutとを有している。なお、この整流平滑回路104内における平滑回路については、整流平滑回路4内の前述した平滑回路と同じ構成であるため、説明を省略する。一方、整流平滑回路104内の整流回路は、整流平滑回路4内の前述した整流回路とは異なり、上記した4個の整流ダイオード412,422,432,442がそれぞれ、以下のように配置されている。
すなわち、図8に示したように、整流ダイオード412では、アノードが接地ラインLGに接続され、カソードが2次側巻線321の第1端に接続されている。整流ダイオード422では、アノードが接地ラインLGに接続され、カソードが2次側巻線321の第2端に接続されている。整流ダイオード432では、アノードが接地ラインLGに接続され、カソードが2次側巻線322の第1端に接続されている。整流ダイオード442では、アノードが接地ラインLGに接続され、カソードが2次側巻線322の第2端に接続されている。また、2次側巻線321におけるセンタタップCT1と、2次側巻線322におけるセンタタップCT2とはそれぞれ、接続点Pxを介して、チョークコイルLchの第1端に共通接続されている(図8参照)。
トランス103は、トランス3と同様に、3脚型の磁芯30と、1次側巻線31と、2次側巻線321,322とを有している。ただし、このトランス103内での2次側巻線321,322の詳細構成(巻回方法等)は、以下説明するように、トランス3内における前述した2次側巻線321,322の詳細構成(図2)とは、異なっている。
具体的には、図9に示したように、このトランス103内では、まず、2次側巻線321が、整流ダイオード412,422を介して互いに並列接続された、2つの2次側巻線32a,32bにより構成されている。同様に、2次側巻線322が、整流ダイオード432,442を介して互いに並列接続された、2つの2次側巻線32c,32dにより構成されている。つまり、このトランス103全体としても、前述したトランス3全体と同様に、4つの2次側巻線32a,32b,32c,32dが設けられている。
また、このトランス103では、図9に示したように、1次側巻線31がトランス3の場合(図2)と同様に、中足部30cに巻回されている(1ターン分巻回されている)。一方、トランス3の場合(図2)とは異なり、上記した2次側巻線32a,32b,32c,32dについては、以下のようになっている。すなわち、2次側巻線321における2次側巻線32aと、2次側巻線322における2次側巻線32dとがそれぞれ、中足部30cと外足部30aとの間において巻回されている(図9の例では、2次側巻線32a,32dともに、0.5ターン分巻回されている)。また、2次側巻線321における2次側巻線32bと、2次側巻線322における2次側巻線32cとがそれぞれ、中足部30cと外足部30bとの間において巻回されている(図9の例では、2次側巻線32b,32cともに、0.5ターン分巻回されている)。
ここで、図10(A),図10(B)はそれぞれ、このような比較例のトランス103付近に流れる電流の向き(図9中に示した2次回路電流Is1~Is4の向き)の関係を、模式的に表にまとめて示したものである。
なお、図8,図9中において、整流ダイオード412から2次側巻線32aを経由して、センタタップCT1側へと流れる電流を、2次回路電流Is1とする。同様に、整流ダイオード422から2次側巻線32bを経由して、センタタップCT1側へと流れる電流を、2次回路電流Is2とする。整流ダイオード432から2次側巻線32cを経由して、センタタップCT2側へと流れる電流を、2次回路電流Is3とする。整流ダイオード442から2次側巻線32dを経由して、センタタップCT2側へと流れる電流を、2次回路電流Is4とする。
まず、図10(A)に示したように、トランス103の1次側巻線31を流れる1次回路電流Ipの向きが、この1次側巻線31の第2端側から第1端側(図8中に実線で示した、下側から上側)へと向かう方向である場合には、以下のようになる。すなわち、この場合、トランス103の2次側巻線321,322ではそれぞれ、第1端側から第2端側(図8中の上側から下側)へと、図8中に実線で示した2次回路電流Is1,Is3が流れることになる。つまり、図9を参照すると、図10(A)に示したように、この場合、2次側巻線32aを経由して流れる2次回路電流Is1の向きと、2次側巻線32cを経由して流れる2次回路電流Is3の向きとが、トランス103内において、互いに逆向きとなる。
一方、図10(B)に示したように、トランス103の1次側巻線31を流れる1次回路電流Ipの向きが、この1次側巻線31の第1端側から第2端側(図8中に破線で示した、上側から下側)へと向かう方向である場合には、以下のようになる。すなわち、この場合、トランス103の2次側巻線321,322ではそれぞれ、第2端側から第1端側(図8中の下側から上側)へと、図8中に破線で示した2次回路電流Is2,Is4が流れることになる。つまり、図9を参照すると、図10(B)に示したように、この場合、2次側巻線32dを経由して流れる2次回路電流Is4の向きと、2次側巻線32bを経由して流れる2次回路電流Is2の向きとが、トランス103内において、互いに逆向きとなる。
このようにして、この比較例のスイッチング電源装置101では、2次側巻線32a~32dを個別に経由する2次回路電流Is1~Is4の向きが、以下の関係となるように、1次側巻線31および2次側巻線32a,32b,32c,32dがそれぞれ、磁芯30に対して巻回されていることになる。
すなわち、中足部30cと外足部30aとの間に巻回されている2次側巻線32a,32dのうちの、一方のみを経由して流れる、2次回路電流Is1または2次回路電流Is4の向きと、中足部30cと外足部30bとの間に巻回されている2次側巻線32b,32cの一方のみを経由して流れる、2次回路電流Is2または2次回路電流Is3の向きとが、互いに逆方向となっている。具体的には、図9中に実線で示した2次回路電流Is1,Is3同士が、互いに逆向きになる(図10(A)参照)と共に、図9中に破線で示した2次回路電流Is2,Is4同士が、互いに逆向きになる(図10(B)参照)ように、設定されている。
つまり、この比較例のトランス103では、4個の2次側巻線32a~32dのうち、同時に電流が流れているのは、図10(A),図10(B)のいずれの状態においても、2個の2次側巻線のみとなる。具体的には、図10(A)の状態では、2個の2次側巻線32a,32cのみに、2次回路電流Is1,Is3が個別に流れ、図10(B)の状態では、2個の2次側巻線32b,32dのみに、2次回路電流Is2,Is4が個別に流れることになる。
このようにして、この比較例では、トランス103の4個の2次側巻線32a~32dにおいて、電流が常に流れるわけではない(常時、4個のうちの2個のみに電流が流れる)。言い換えると、これら4個の2次側巻線32a~32dではそれぞれ、電流(2次回路電流Is1~Is4)が流れない期間が存在することになる。その結果、この比較例では、これらの2次側巻線32a~32dにおける利用効率が、低いことになる。また、2次側巻線32a~32dでの利用効率が低いと、例えば大電流を流すような場合には、2次側巻線32a~32dにおける導通損失が増大し、発熱が大きくなってしまうおそれがある。
以上のことから、この比較例では、スイッチング電源装置101における電力変換効率が、低下してしまうおそれがある。
(C-2.本実施の形態)
これに対して、本実施の形態のスイッチング電源装置1では、上記比較例のスイッチング電源装置101とは異なり、トランス3内における2次回路電流Is1~Is4の向きが、以下の関係となるように設定されている。
ここで、図11(A),図11(B)はそれぞれ、本実施の形態のトランス3付近に流れる電流の向き(図2中に示した2次回路電流Is1~Is4の向き)の関係を、模式的に表にまとめて示したものである。
まず、図11(A)に示したように、前述した期間A1の場合(図4)には、以下のようになる。すなわち、この期間A1では、トランス3の1次側巻線31を流れる1次回路電流Ipの向きが、この1次側巻線31の第1端側から第2端側(図4中の上側から下側)へと向かう方向となる。したがって、この場合、トランス3の2次側巻線321,322ではそれぞれ、第2端側から第1端側(図4中の下側から上側)へと、2次回路電流Is1,Is3が流れることになる。つまり、図2中に実線で示した2次回路電流Is1,Is3を参照すると、図11(A)に示したように、この場合、2次側巻線32a,32bの双方を経由して流れる2次回路電流Is1の向きと、2次側巻線32c,32dの双方を経由して流れる2次回路電流Is3の向きとが、トランス3内において、互いに逆向きとなる。
一方、図11(B)に示したように、前述した期間B1の場合(図6)には、以下のようになる。すなわち、この期間B1では、トランス3の1次側巻線31を流れる1次回路電流Ipの向きが、この1次側巻線31の第2端側から第1端側(図6中の下側から上側)へと向かう方向となる。したがって、この場合、トランス3の2次側巻線321,322ではそれぞれ、第1端側から第2端側(図6中の上側から下側)へと、2次回路電流Is2,Is4が流れることになる。つまり、図2中に破線で示した2次回路電流Is2,Is4を参照すると、図11(B)に示したように、この場合、2次側巻線32a,32bの双方を経由して流れる2次回路電流Is2の向きと、2次側巻線32c,32dの双方を経由して流れる2次回路電流Is4の向きとが、トランス3内において、互いに逆向きとなる。
このようにして、本実施の形態のスイッチング電源装置1では、上記した2次回路電流Is1~Is4の向きが以下の関係となるように、1次側巻線31および2次側巻線32a,32b,32c,32dがそれぞれ、磁芯30に対して巻回されていることになる。
すなわち、中足部30cと外足部30aとの間に巻回されている2次側巻線32a,32bの双方を同時に経由して流れる、2次回路電流Is1または2次回路電流Is2の向きと、中足部30cと外足部30bとの間に巻回されている2次側巻線32c,32dの双方を同時に経由して流れる、2次回路電流Is3または2次回路電流Is4の向きとが、互いに逆方向となっている。具体的には、図2中に実線で示した2次回路電流Is1,Is3同士が、互いに逆向きになる(図11(A)参照)と共に、図2中に破線で示した2次回路電流Is2,Is4同士が、互いに逆向きになる(図11(B)参照)ように、設定されている。
つまり、本実施の形態のトランス3では、上記比較例のトランス103とは異なり、4個の2次側巻線32a~32dの全てに対して、常時、同時に電流が流れていることになる。具体的には、図11(A)に示した期間A1では、2次回路電流Is1,Is3が流れることで、4個の2次側巻線32a~32dの全てに対して、同時に電流が流れることになる。一方、図11(B)に示した期間B1においても、2次回路電流Is2,Is4が流れることで、4個の2次側巻線32a~32dの全てに対して、同時に電流が流れることになる。
このようにして本実施の形態では、上記比較例とは異なり、トランス3における4個の2次側巻線32a~32dの全てにおいて、電流が常に流れる(常時、4個の全てに電流が流れる)。言い換えると、本実施の形態では上記比較例とは異なり、これら4個の2次側巻線32a~32dのいずれにおいても、電流(2次回路電流Is1~Is4)が流れない期間が存在しないことになる。その結果、本実施の形態では上記比較例と比べ、これらの2次側巻線32a~32dにおける利用効率が、向上することになる。また、2次側巻線32a~32dでの利用効率が向上することから、例えば大電流を流すような場合においても、上記比較例と比べ、2次側巻線32a~32dにおける導通損失が低減し、発熱が抑えられることになる。更に、2次側巻線32a~32dでの利用効率が向上することから、例えば、2次側巻線32a,32b同士を1つの巻線にまとめると共に、2次側巻線32c,32d同士を1つの巻線にまとめることにより、巻線構造の小型化を図ることができ、トランス3の小型化を図ることも可能となる。
以上のことから、本実施の形態では上記比較例等と比べ、スイッチング電源装置1における電力変換効率を、向上させることが可能となる。
また、本実施の形態では、トランス3における磁芯30が、中足部30cと外足部30a,30bとを有する3脚型の磁芯であると共に、1次側巻線31が中足部30cに巻回され、2次側巻線32a,32bがそれぞれ、中足部30cと外足部30aとの間において巻回され、2次側巻線30c,30dがそれぞれ、中足部30cと外足部30bとの間において巻回されているようにしたので、以下のようになる。すなわち、上記した2次回路電流Is1~Is4の向きの関係が、簡易な構成で、容易に設定することが可能となる。
更に、本実施の形態では、大電流を流す場合でも複数のトランスを必要とせず、1つのトランス3だけで対応できることから、スイッチング電源装置1の構成が簡易なものとなり、小型化や低コスト化を図ることが可能となる。
加えて、本実施の形態では、トランス3における1次側巻線31および2次側巻線32a~32dがそれぞれ、例えば、前述したシートコイルにより構成されている場合には、以下のようになる。すなわち、この場合も、スイッチング電源装置1の構成が簡易なものとなり、小型化や低コスト化を図ることが可能となる。
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例について説明する。なお、以下では、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
[構成]
図12は、変形例に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1A)におけるトランス付近(後述するトランス3Aおよび整流平滑回路4)の詳細構成例を、模式的に表したものである。
なお、実施の形態と同様に、直流入力電源10とこのスイッチング電源装置1Aとを備えたシステムは、本発明における「電力供給システム」の一具体例に対応している。
本変形例のスイッチング電源装置1Aは、実施の形態のスイッチング電源装置1において、前述した3脚型の磁芯30を有するトランス3の代わりに、以下説明する4つの足部(脚部)を含む磁芯30Aを有する、トランス3Aを設けるようにしたものであり、他の構成は同様となっている。
このトランス3Aは、上記した磁芯30Aと、1次側巻線31と、2次側巻線321,322とを有している。また、実施の形態のトランス3と同様に、2次側巻線321は、2つの2次側巻線32a,32bにより構成されていると共に、2次側巻線322は、2つの2次側巻線32c,32dにより構成されている(図12参照)。したがって、このトランス3A全体としても、4つの2次側巻線32a,32b,32c,32dが設けられている。
ここで、本変形例における磁芯30Aは、上記した4つの足部同士が互いに対向するように配置された、上部コアUCおよび下部コアDCを有している。なお、図12においては図示の便宜上、これらの上部コアUCおよび下部コアDCのうち、下部コアDCのみを図示している。
上部コアUCは、基体部(ベースコア)UCbと、この基体部UCbから垂直方向に延びた4本の足部分である足部UC1~UC4と、を含んで構成されている。同様に、下部コアDCは、基体部(ベースコア)DCbと、この基体部DCbから垂直方向に延びた4本の足部分である足部DC1~DC4と、を含んで構成されている(図12参照)。このような足部UC1,DC1、足部UC2,DC2、足部UC3,DC3および足部UC4,DC4はそれぞれ、基体部UCb,DCb上の矩形状の面の四隅をなすようにして、互いに離間して配置されている。そして、これらの4つの足部UC1~UC4,DC1~DC4は、互いに対向する2つの基体部UCb,DCb同士を、磁気的に連結するようになっている。なお、上部コアUCおよび下部コアDCはそれぞれ、例えばフェライトなどの磁性材料により構成されている。
このような本本変形例のトランス3Aでは、1次側巻線31が、上記した4つの足部UC1~UC4,DC1~DC4の各々に対して、巻回されている。一方、2次側巻線321を構成する、互いに並列接続された2つの2次側巻線32a,32bはそれぞれ、足部UC1,DC1と足部UC2,DC2との間において巻回されている(図12の例では、2次側巻線32a,32bともに、0.5ターン分巻回されている)。同様に、2次側巻線322を構成する、互いに並列接続された2つの2次側巻線32c,32dはそれぞれ、足部UC3,DC3と足部UC4,DC4との間において巻回されている(図12の例では、2次側巻線32c,32dともに、0.5ターン分巻回されている)。
また、本変形例のトランス3A内においても、実施の形態で説明したトランス3内と同様に、図12中に示した2次回路電流Is1~Is4の向きがそれぞれ、以下の関係となるように、設定されている。換言すると、このような2次回路電流Is1~Is4の向きがそれぞれ以下の関係となるように、上記した1次側巻線31および2次側巻線32a,32b,32c,32dがそれぞれ、上記したようにして磁芯30Aに対して巻回されている。
すなわち、本変形例においても実施の形態と同様に、前述した2次回路電流Is1または2次回路電流Is2の向きと、前述した2次回路電流Is3または2次回路電流Is4の向きとが、互いに逆方向となるように、上記した各巻線が磁芯30Aに対して巻回されている。具体的には、図12中に実線で示した2次回路電流Is1,Is3同士が、互いに逆向きになると共に、図12中に破線で示した2次回路電流Is2,Is4同士が、互いに逆向きになるように、設定されている。
[作用・効果]
このような構成からなる本変形例のスイッチング電源装置1Aにおいても、基本的には、実施の形態のスイッチング電源装置1と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、本変形例においても前述した比較例等と比べ、スイッチング電源装置1Aにおける電力変換効率を、向上させることが可能となる。
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態等では、インバータ回路の構成を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、インバータ回路として他の構成のものを用いるようにしてもよい。具体的には、上記実施の形態等では、インバータ回路が、4個のスイッチング素子を含むフルブリッジ回路の場合について説明した。しかしながら、この場合には限られず、2個のスイッチング素子を含むハーフブリッジ回路や、ハーフブリッジ回路とフルブリッジ回路とを組み合わせた回路など、他の構成のインバータ回路を用いるようにしてもよい。
また、上記実施の形態等では、整流平滑回路の構成を、具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、整流平滑回路として他の構成のものを用いるようにしてもよい。具体例1としては、例えば、整流平滑回路内の各整流素子を、MOS-FETの寄生ダイオードにより構成するようにしてもよい。また、その場合には、このMOS-FETの寄生ダイオードが導通する期間と同期して、MOS-FET自身もオン状態となる(同期整流を行う)ようにするのが好ましい。より少ない電圧降下で整流することができるからである。なお、この場合、MOS-FETにおけるソース側に、寄生ダイオードのアノード側が配置されると共に、MOS-FETにおけるドレイン側に、寄生ダイオードのカソード側が配置されることになる。また、具体例2としては、例えば平滑回路を、コンデンサインプット型としてもよい。
更に、上記実施の形態等では、トランスの構成(磁芯や2次側巻線の構成など)について、具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、トランスとして他の構成のもの(磁芯や2次側巻線として他の構成のもの)を用いるようにしてもよい。具体的には、上記実施の形態等では、2次側巻線がそれぞれ、互いに並列接続された複数の巻線(サブ巻線)により構成されている場合について説明したが、この場合の例には限られない。すなわち、例えば、2次側巻線がそれぞれ、1つの巻線により構成されているようにしてもよい。
加えて、上記実施の形態等では、トランスの個数が1個の場合(整流平滑回路内の整流素子の個数が、4×2×1=8個の場合)を例に挙げて説明したが、それらの個数は、この場合の例には限られない。具体的には、本発明は、トランスの個数がN個(N:1以上の整数)の場合(整流平滑回路内の整流素子の個数が、4×2×N個の場合)に、適用することが可能である。つまり、上記実施の形態等で説明したN=1の場合だけでなく、N≧2の任意の整数の場合についても同様にして、本発明を適用することが可能である。具体的には、上記したN個のトランスにはそれぞれ、磁芯と、1次側巻線と、前述した第1および第2の2次側巻線とが、設けられると共に、整流回路には、N組の第1ないし第4の整流素子(前述)が、設けられることになる。そして、これらN個のトランス内ではそれぞれ、前述した第1の電流の向きと、前述した第2の電流の向きとが、互いに逆方向となるように、1次側巻線と上記した第1ないし第4の2次側巻線とがそれぞれ、例えば上記実施の形態等で説明したような巻回方法にて、磁芯に対して巻回されることになる。なお、上記実施の形態等で説明した、トランスや整流素子の個数としては、物理的な個数には限られず、等価回路に存在する個数を意味している。
また、上記実施の形態等では、駆動回路による各スイッチング素子の動作制御(スイッチング駆動)の手法を、具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、スイッチング駆動の手法として、他の手法を用いるようにしてもよい。具体的には、例えば、前述した位相シフト制御(スイッチング位相制御)やPMW制御の手法等については、上記実施の形態等の手法には限られず、他の手法を用いるようにしてもよい。
更に、上記実施の形態等では、本発明に係るスイッチング電源装置の一例として、DC-DCコンバータを挙げて説明したが、本発明は、例えばAC-DCコンバータなどの、他の種類のスイッチング電源装置にも適用することが可能である。
加えて、これまでに説明した各構成例等を、任意の組み合わせで適用してもよい。