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JP7352069B2 - 線材及び鋼線 - Google Patents

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JP7352069B2
JP7352069B2 JP2019138270A JP2019138270A JP7352069B2 JP 7352069 B2 JP7352069 B2 JP 7352069B2 JP 2019138270 A JP2019138270 A JP 2019138270A JP 2019138270 A JP2019138270 A JP 2019138270A JP 7352069 B2 JP7352069 B2 JP 7352069B2
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Description

本開示は、線材及び鋼線に関する。
鋼からなる線材は、自動車等のタイヤの補強材であるワイヤー、アルミ送電線などの補強用ワイヤー、PC(プレストレストコンクリート)鋼線、橋梁等に用いられるロープ用ワイヤーなどに使用される高強度鋼線の素材として幅広く用いられている。
通常、線材は熱間圧延によって製造され、所定の線径にまで伸線加工を行う途中で中間パテンティング処理を1~2回程度施し、細い鋼線(最終製品の素線)にまで伸線加工される。例えば、自動車用タイヤの補強材に使用される線径0.5mm以下の補強材では、線径1.5mm程度で中間パテンティングを施した後、最終線径まで伸線加工される。
伸線加工性を考慮した線材として、例えば、特許文献1では、重量%で、C:0.4-0.65%、Si:0.1-1.0%、Mn:0.1-1.0%,Cr:0.3%以下またはB:100ppm以下、残りFe及び不可避不純物の組成であって、そこにTi,Nb,Vの元素グループの中から選択した少なくとも1種以上が0.02%以下の範囲で含有されて、その組織が初析フェライトの分率が10%以下で、残りは6-10%のセメンタイト(cementite)が不連続的に形成されたパーライト(pearlite)組織を包含して構成されることを特徴とする伸線加工性が優れた高強度鋼線用線材が開示されている。
また、特許文献2では、質量%で、C:0.2~0.55%、Si:0.1~1.0%、Mn:0.1~1.1%、Al:0.01%以下(0%を含む)を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、フェライト面積率が20%以上50%未満で残部の90%以上がパーライトであることを特徴とする線径4~7mmの高強度鋼線用線材が開示されている。
特許第3409055号公報 特許第4267375号公報
線材に対して中間パテンティングを施すと、線材の微細組織は中間パテンティング時に崩されることになり、熱間圧延時及び熱間圧延後の線材の作りこみが最終製品に与える影響は小さくなってしまう。例えば、線材段階で微細組織として延性に富んでいても、中間パテンティング後には線材の特性差を保てない。
上記課題に鑑み、本開示は、中間パテンティング後においても強度と延性(絞り)のバランスに優れた線材を提供することを目的とする。
また、本開示は、強度と延性(絞り及び捻回特性)のバランスに優れた鋼線を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 質量%で
C:0.40%以上0.80%以下、
Si:0.10%以上2.0%以下、
Mn:0.10%以上1.0%以下、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
N:0.0015%%以上0.0060%以下、及び
Ti:0.005%以上0.030%以下、
を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼成分を有し、かつ、Nの含有量に対するTiの含有量の比が3.3以上6.5以下を満たし、
線材の直径をDとしたときに、中心軸からD/50以内の領域において円相当径が10nm以上のTi炭窒化物のうち10nm以上40nm以下のTi炭窒化物の個数が10%以上であり、前記中心軸からD/9以内の領域において円相当径が0.5μm以上のTi炭窒化物のうち3μm以上のTi炭窒化物の個数が40%以下である線材。
<2> 前記鋼成分が、質量%で
Al:0.050%以下、
Cr:1.0%以下、
Nb:0.050%以下、
V:0.15%以下、
Ca:0.0040%以下、
Mg:0.0040%以下、及び
B:0.0030%以下、
からなる群から選ばれる1種または2種以上を満たす<1>に記載の線材。
<3> パーライト組織を有し、前記中心軸からD/9以内の領域において、フェライト結晶方位が15°以上の角度差で囲まれる領域を結晶粒と定義した際の結晶粒径の平均値が、16μm以下である<1>又は<2>に記載の線材。
<4> パーライト組織を有し、前記中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織の面積率が、90%以上である<1>~<3>のいずれか1つに記載の線材。
<5> パーライト組織を有し、前記中心軸からD/9以内の領域における前記パーライト組織のラメラ間隔の平均値が、70nm以下である<1>~<3>のいずれか1つに記載の線材。
<6> 前記鋼成分が、質量%で
Al:0.005%以上0.050%以下
を満たす<1>~<5>のいずれか1つに記載の線材。
<7> 前記鋼成分が、質量%で
Cr:0.05%以上1.0%以下
を満たす<1>~<6>のいずれか1つに記載の線材。
<8> 前記鋼成分が、質量%で
Nb:0.003%以上0.050%以下及び
V:0.005%以上0.15%以下
の少なくとも一方を満たす<1>~<7>のいずれか1つに記載の線材。
<9> 前記鋼成分が、質量%で
Ca:0.0002%以上0.0040%以下及び
Mg:0.0002%以上0.0040%以下
の少なくとも一方を満たす<1>~<8>のいずれか1つに記載の線材。
<10> 前記鋼成分が、質量%で
B:0.0001%以上0.0030%以下
を満たす<1>~<9>のいずれか1つに記載の線材。
<11> 前記線材の直径が、1.5mm以上9.0mm以下である<1>~<10>のいずれか1つに記載の線材。
<12> <1>、<2>、及び<6>~<10>のいずれか1つに記載の鋼成分を有し、かつ、Nの含有量に対するTiの含有量の比が3.3以上6.5以下を満たし、
鋼線を平均昇温速度10℃/秒以上30℃/秒以下で900℃まで加熱して1分間保持した場合、鋼線の直径をdとしたときに、中心軸からd/20以内の領域において円相当径が10nm以上のTi炭窒化物のうち10nm以上40nm以下のTi炭窒化物の個数が10%以上であり、前記中心軸からd/9以内の領域において円相当径が0.5μm以上のTi炭窒化物のうち3μm以上のTi炭窒化物の個数が40%以下であり、前記中心軸からd/9以内の領域における鋼線の長手方向に対して平行となる<110>方位の集積度が2.0以上である鋼線。
<13> 前記鋼線の直径が、0.5mm以上3.0mm以下である<12>に記載の鋼線。
本開示によれば、中間パテンティング後においても強度と延性(絞り)のバランスに優れた線材が提供される。
また、本開示によれば、強度と延性(絞り及び捻回特性)のバランスに優れた鋼線が提供される。
本開示に係る線材の長手方向に垂直な断面(横断面)における測定領域を示す概略図である。 本開示に係る線材の長手方向に平行な断面(縦断面)における測定領域を示す概略図である。
本明細書中、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中、成分(元素)の含有量を示す「%」は、「質量%」を意味する。
本明細書中、C(炭素)の含有量を「C含有量」又は「C量」と表記することがある。他の元素の含有量についても同様に表記することがある。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書中、成分(元素)の含有量として、「X%以下」(Xは数値)として上限のみを記載している場合は、その成分(元素)をX%以下の範囲で含有することを意味する。
本発明者らは、熱間圧延時及び熱間圧延後の線材の作りこみで中間パテンティングを経た最終製品の特性をも制御することを検討した。
熱処理によって、フェライト、セメンタイトなどの組織形態は変化するが、介在物や析出物など熱的安定性の高い因子を制御すべきである。そこで本発明者らは、ピン止め粒子として活用できる微細な炭窒化物を制御することを考え、鋭意研究を重ねた結果、Ti炭窒化物を制御することで中間パテンティング後も微細構造を維持することができ、Ti炭窒化物は特に中心部に析出し易く、中心部の特定の領域において微細なTi炭窒化物と粗大なTi炭窒化物のそれぞれの個数密度(個数%)を制御することで、例えば鉛パテンティング(LP)後においても強度と延性のバランスに優れた線材及び鋼線を提供できることを見出し、本開示に係る線材及び鋼線を完成するに至った。
以下、本開示の実施形態に係る線材及び鋼線について具体的に説明する。
なお、本明細書において、「線材」は、熱間圧延後の鋼材のほか、1次伸線加工後に中間パテンティングとしてLPを行った鋼材も含まれる。また、「鋼線」とは、線材に伸線加工等を施して最終線径まで伸線加工(最終伸線加工)された鋼材を意味する。
[線材]
本実施形態に係る線材は、
質量%で
C:0.40%以上0.80%以下、
Si:0.10%以上2.0%以下、
Mn:0.10%以上1.0%以下、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
N:0.0015%%以上0.0060%以下、及び
Ti:0.005%以上0.030%以下、
を含有し、残部がFe及び不純物である鋼成分を有し、かつ、Nの含有量に対するTiの含有量の比が3.3以上6.5以下を満たし、
線材の直径をDとしたときに、中心軸からD/50以内の領域において円相当径が10nm以上のTi炭窒化物のうち10nm以上40nm以下のTi炭窒化物の個数が10%以上であり、前記中心軸からD/9以内の領域において円相当径が0.5μm以上のTi炭窒化物のうち3μm以上のTi炭窒化物の個数が40%以下である。
本実施形態に係る線材は、Feに代えて、
Al:0.050%以下、
Cr:1.0%以下、
Nb:0.050%以下、
V:0.15%以下、
Ca:0.0040%以下、
Mg:0.0040%以下、及び
B:0.0030%以下、
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含んでもよい。
<線材の鋼成分>
・C:0.40~0.80%
Cは、鋼を強化する元素である。この効果を得るため、Cを0.40%以上含有させる。
一方、Cの含有量が0.80%超になると、セメンタイト分率が大きくなり、線材の絞りが低下する。したがって、適切なC含有量は0.40~0.80%である。
さらに、亀裂形成抑制の観点からC含有量を0.45%以上とすることが好ましく、さらには0.50%以上であることが好ましい。
一方、線材の絞り向上の観点からC含有量を0.67%未満又は0.65%以下とすることが好ましい。
・Si:0.10~2.0%
Siは、鋼を強化する元素である。この効果を得るため、0.10%以上のSiを含有させる。しかし、2.0%を超えてSiを含有させると線材の絞りが低下する。よって、適切なSi含有量は0.10%~2.0%である。
線材の強度をより高めたい場合には、Siは0.15%以上含有させることが好ましく、0.20%以上がより好ましく、0.30%以上含有させれば一層好ましい。
一方、線材の絞り向上の観点からSi含有量を1.90%未満とすることが好ましく、1.85%以下とすることがより好ましく、1.80%以下とすることがさらに好ましい。
・Mn:0.10~1.0%
Mnは、鋼の強度を高める作用に加えて、鋼中のSをMnSとして固定して鋼線の熱間脆性を防止する作用を有する元素である。しかしながら、Mn含有量が0.10%未満では上記作用が十分でない。このため、Mn含有量の下限値は0.10%以上とする。
一方、Mnは偏析しやすい元素である。1.0%を超えてMnを含有させると、特に中心部にMnが濃化し、中心部にマルテンサイトやベイナイトが生成されて、線材の絞りが低下してしまう。よって、適切なMn含有量は0.10~1.0%である。
さらに、伸線加工後の鋼線の強度確保及び熱間脆性の防止をより高いレベルで実現するためには、Mn含有量を0.35%以上とすることが好ましく、0.40%以上とすることがより好ましい。Mn含有量を0.50%以上、又は0.55%以上としてもよい。
一方、粗大なMnSが形成されることも線材の絞りの低下の一因となる。線材の絞り向上の観点から、Mn含有量は0.90%以下とすることが好ましく、0.80%以下であればより一層好ましい。Mn含有量を0.75%以下、又は0.70%以下としてもよい。
・P:0.030%以下
Pは、線材の粒界に偏析して鋼のねじり特性を低下させてしまう元素である。線材のP含有量が0.030%を超えると、ねじり特性の低下が著しくなる。そこで、線材のP含有量は0.030%以下に制限する。P含有量の上限は0.025%以下であることが好ましい。P含有量は低いほど好ましいが、製造コスト(脱燐コスト)の低減の観点から、P含有量は、0%超であってもよく、0.0005%以上であってもよく、0.0010%以上であってもい。
・S:0.030%以下
Sは、MnSを形成して、線材の絞りを低下させてしまう元素である。線材のS含有量が0.030%を超えると、線材の絞りの低下が著しくなる。このことから、線材のS含有量は0.030%以下に制限する。S含有量の好ましい上限は0.015%以下である。S含有量は低いほど好ましいが、製造コスト(脱硫コスト)の低減の観点から、S含有量は、0%超であってもよく、0.002%以上であってもよく、0.005%以上であってもよい。
・N:0.0015~0.0060%
Nは、Ti炭窒化物となった際に熱的安定性を向上させる元素である。熱的安定性の高い効果を得るためにはN含有量は0.0015%以上とする。
一方、Nは、冷間での伸線加工中に転位に固着することにより線材の強度を上昇させる反面、ねじり特性を低下させてしまう元素である。線材のN含有量が0.0060%を超えると、ねじり特性の低下が著しくなる。そこで、線材のN含有量は0.0060%以下に制限する。よって、適切なN含有量は0.0015~0.0060%である。
Ti炭窒化物の熱的安定性を向上させる観点から、N含有量は0.0020%以上とすることが好ましく、0.0025%以上とすることがより好ましい。
一方、鋼のねじり特性の低下を抑制する観点から、N含有量の好ましい上限は0.0050%以下、又は0.0040%以下である。
・Ti:0.005~0.030%
Tiは、N及び/又はCと結合して炭窒化物を形成し、それらのピンニング効果によって熱間圧延時にオーステナイト粒を微細化し、鋼のねじり特性を改善する効果がある。この効果を得るために、Tiは0.005%以上含有させることが好ましい。
一方、Ti含有量が0.030%を超えると、その効果が飽和するだけでなく、鋼塊又は鋳片を鋼片に分塊圧延する工程で鋼片に割れが生じるなど鋼の製造性に悪影響を及ぼす。よって、Ti含有量は0.030%以下とする。よって、適切なTi含有量は0.005~0.030%である。
鋼のねじり特性を改善する観点から、Ti含有量を0.007%以上とするのが好ましく、0.010%以上のTiを含有させることが一層好ましい。
一方、分塊圧延工程における鋼片の割れを抑制する観点から、Ti含有量は0.025%以下であることが一層好ましい。
・Al:0.050%以下
Alは、任意の元素である。即ち、Al含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
Alは、脱酸作用を有する元素であり、線材中の酸素量低減のためにAlを添加してもよい。また、Alは、線材中に窒化物を形成して、オーステナイト粒径を微細化することでパーライトブロック粒径(PBS)を小さくする元素である。これらの作用効果を得たい場合は、Al含有量は0.005%以上が好ましい。
一方、Al含有量が0.050%を超えると、線材の電気抵抗率が過度に大きくなる場合がある。この理由は、Al含有量が0.050%を超えると、粗大な酸化物系介在物が著しく形成されやすくなり、ねじり特性の低下が顕著になる。したがって、Al含有量の上限は0.050%とする。Al含有量の好ましい上限は0.040%以下であり、より好ましい上限は0.035%以下であり、さらに好ましい上限は0.030%以下である。
・Cr:1.0%以下
Crは任意元素であり、Cr含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。Crは、Mnと同様に、鋼の焼入れ性を高めて、鋼を高強度化する元素である。この効果を確実に得るためには、0.05%以上のCrを含有させることが好ましい。
一方、Cr含有量が1.0%を超えると、ねじり特性が劣化する。そのため、Cr含有量は1.0%以下である。
なお、鋼の焼入れ性を上げる場合、Crは0.10%以上含有させるのが好ましく、0.30%以上含有させれば一層好ましい。Cr含有量の上限は、0.90%以下とすることが好ましく、0.80%以下であればより一層好ましい。
・Nb:0.050%以下
Nbは任意元素であり、Nb含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。Nbは、N又は/及びCと結合して、窒化物、炭化物又は炭窒化物を形成し、それらのピンニング効果によって熱間圧延時にオーステナイト粒を微細化し、鋼のねじり特性を改善する効果がある。このような効果を確実に得るためには、Nbは0.003%以上含有させることが好ましい。ねじり特性を改善する観点から、Nb含有量を0.004%以上とするのがより好ましく、0.005%以上のNbを含有させることが一層好ましい。
一方、Nb含有量が0.050%を超えると、その効果が飽和するだけでなく、鋼塊又は鋳片を鋼片に分塊圧延する工程で鋼片に割れが生じるなど鋼の製造性に悪影響を及ぼすので、Nb含有量は0.050%以下とする。Nb含有量は0.030%以下であることが一層好ましい。
・V:0.15%以下
Vは任意元素であり、V含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。Vは、N又は/及びCと結合して、窒化物、炭化物又は炭窒化物を形成し、それらのピンニング効果によって熱間圧延時にオーステナイト粒を微細化し、鋼のねじり特性を改善する効果がある。この効果を確実に得るためには0.005%以上のVを含有させることが好ましい。ねじり特性を改善する観点からは、V含有量を0.02%以上とするのが好ましく、0.03%以上含有させることが一層好ましい。
一方、V含有量が0.15%を超えると、その効果が飽和するだけでなく、鋼塊又は鋳片を鋼片に分塊圧延する工程で鋼片に割れが生じるなど鋼の製造性に悪影響を及ぼすので、V含有量は0.15%以下とする。V含有量は0.10%以下であることが好ましく、さらには0.07%以下であることが一層好ましい。
鋼のねじり特性の向上及び鋼片の割れの抑制の観点から、本実施形態の線材における鋼成分は、質量%で、Nb:0.003%以上0.050%以下及びV:0.005%以上0.15%以下の少なくとも一方を満たすことが好ましい。
・Ca:0.0040%以下
Caは任意元素であり、Ca含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。Caは、MnS中に固溶し、MnSを微細に分散する効果がある。MnSを微細に分散させることで、MnSに起因にした伸線加工中の断線を抑制できる。Caによる効果を確実に得るためには、Caは0.0002%以上含有させることが好ましい。より高い効果を得たい場合には、0.0005%以上のCaを含有させればよい。
しかし、Ca含有量が0.0040%を超えると、その効果は飽和する。さらに、Ca含有量が0.0040%を超えると、鋼中の酸素と反応して生成する酸化物が粗大となり、かえって線材の絞りの低下を招く。そのため、Caを含有させる場合の適正なCa含有量は、0.0040%以下である。Ca含有量は0.0030%以下であることが好ましく、0.0025%以下であれば一層好ましい。
・Mg:0.0040%以下
Mgは任意元素であり、Mg含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。Mgは脱酸元素であり、酸化物を生成するが、硫化物も生成することでMnSとの相互関係を有する元素であり、MnSを微細に分散させる効果がある。この効果によりMnSに起因した伸線加工中の断線を抑制できる。Mgによる効果を確実に得るためには、Mgは0.0002%以上含有させることが好ましい。より高い効果を得たい場合には、0.0005%以上のMgを含有させればよい。
しかし、Mg含有量が0.0040%を超えると、その効果は飽和するし、MgSを大量に生成し、かえって線材の絞りの低下を招く。したがって、Mgを含有させる場合の適正なMg含有量は、0.0040%以下である。Mg含有量は0.0035%以下であることが好ましく、0.0030%以下であれば一層好ましい。
伸線加工中の断線を抑制し、かつ、線材の絞りの低下を抑制する観点から、本実施形態の線材における鋼成分は、質量%で、Ca:0.0002%以上0.0040%以下及びMg:0.0002%以上0.0040%以下の少なくとも一方を満たすことが好ましい。
・B:0.0030%以下
Bは任意元素であり、B含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。Bは、微量含有されることで鋼のフェライト組織を低減する効果がある。この効果を確実に得たい場合には0.0001%以上のBを含有させることが好ましい。パーライト組織の面積率を増やしたい場合には、B含有量を0.0004%以上とすることが好ましく、0.0007%以上であればより一層好ましい。
一方、0.0030%超のBを含有させても、効果が飽和するだけでなく、粗大な窒化物が生成するので、ねじり特性が低下する。したがって、Bを含有させる場合のB含有量は0.0030%以下とする。なお、ねじり特性を向上させるためのB含有量は0.0025%以下とすることが好ましく、0.0020%以下であればより一層好ましい。
・Nの含有量に対するTiの含有量の比
Nの含有量に対するTiの含有量の比(以下、[Ti/N]と略記する場合がある)が3.3未満の場合、Tiによる固溶Nの固着が不十分になり、伸線加工後の鋼線のねじり特性が低下する。一方、[Ti/N]が6.5を超える場合、微細なTi炭窒化物が粗大化しやすく、効果的なピン止め効果が得られない。よって、本実施形態の線材は、鋼成分の[Ti/N]が、3.3以上6.5以下を満たすようにTiとNを含有させる。
[Ti/N]の下限は、好ましくは3.8以上であり、より好ましくは4.0以上である。
[Ti/N]の上限は、好ましくは6.0以下であり、より好ましくは5.5以下である。
<線材の金属組織>
・中心軸からD/50以内の領域における微細なTi炭窒化物の個数密度
本実施形態の線材は、線材の直径をDとしたときに、中心軸からD/50以内の領域において円相当径が10nm以上のTi炭窒化物のうち10nm以上40nm以下のTi炭窒化物(本明細書では「円相当径が10nm以上40nm以下のTi炭窒化物」を「微細なTi炭窒化物」と称する場合がある。)の個数が10%以上である。
円相当径が10nm以上40nm以下の微細なTi炭窒化物はピニング粒子として働き、旧オーステナイトの微細化を促進する。中心軸からD/50以内の領域における微細なTi炭窒化物の個数%が10%以上であれば、線材組織が十分に微細化され、線材の絞り、並びに、鋼線の絞り及び捻回特性が良好になる。中心軸からD/50以内の領域における微細なTi炭窒化物の個数%は、好ましくは11%以上であり、より好ましくは12%以上であり、多ければ多いほど好ましく、100%でもよい。
中心軸からD/50以内の領域における微細なTi炭窒化物の個数%は、以下のように測定して求める。
線材の長手方向に垂直な断面(すなわち線材の横断面)を切断した後、図1に示すように、線材10の直径をDとしたときの線材10の外周面から径方向のD/2の位置を中心軸Cとして中心軸CからD/50以内の領域(中心軸Cから半径D/50以内の領域)から、FIB(FOCUSED ION BEAM)装置を用いて切断面と垂直に(すなわち縦断面方向に)100μmのサンプルを採取し、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて倍率40000倍で縦断面の観察を行う。観察位置はサンプル内であれば任意の位置とし、10箇所の観察を行う。1視野あたりの面積は3.15×10-1μm(縦0.45μm、横0.70μm)とする。
次いで、それぞれの写真での析出物に対してエネルギー分散型X線分析器(EDS)を用いて特性X線スペクトルを得ることで元素分析を行う。このときTiと、CもしくはNの少なくとも一方が検出される場合、Ti炭窒化物と判断する。また、同時にO又はSが検出された場合には酸化物又は硫化物の可能性があるが、これらもサイズが細かい場合にはピニング効果があるため、Ti炭窒化物とみなす。
ただし、Ti以外の炭窒化物や酸化物、硫化物とTi炭窒化物が接触して(複合して)析出している場合、ピン止め粒子として作用しにくいため、単独で析出しているTi炭窒化物を数えることとする。
次いで、Ti炭窒化物と判断した粒子の数を数えるとともにサイズを円相当径として直径を評価する。撮影した10箇所の画像における円相当径が10nm以上のTi炭窒化物の総数に対する10nm以上40nm以下のTi炭窒化物(微細なTi炭窒化物)の総数の比を取り、微細なTi炭窒化物の個数密度(個数%)を算出する。なお、円相当径が10nm未満の粒子はTEMによって見えない場合もあり、10nm未満の粒子は数えない。
・中心軸からD/9以内の領域における粗大なTi炭窒化物の個数密度
また、本実施形態の線材は、線材の中心軸からD/9以内の領域において円相当径が0.5μm以上のTi炭窒化物のうち3μm以上のTi炭窒化物(本明細書では「円相当径が3μm以上のTi炭窒化物」を「粗大なTi炭窒化物」と称する場合がある。)の個数が40%以下である。
円相当径が3μm以上の粗大なTi炭窒化物は、伸線加工後の鋼線に対するねじり試験時に亀裂の形成を早める。中心軸からD/9以内の領域における粗大なTi炭窒化物の個数%が40%超になると、伸線加工後の鋼線の捻回特性を著しく低下させるため、40%以下とする。中心軸からD/9以内の領域における粗大なTi炭窒化物の個数%は、好ましくは38%以下であり、より好ましくは36%以下であり、少なければ少ないほど好ましく、0%でもよい。
中心軸からD/9以内の領域における粗大なTi炭窒化物の個数%は、以下のように測定して求める。
線材の長手方向に平行であり、かつ中心軸を含む断面(すなわち線材の縦断面)を鏡面研磨した後、図2に示すように線材10の直径をDとしたときの線材10の外周面から径方向のD/2の位置を中心軸Cとして中心軸CからD/9以内の領域(中心軸Cから半径D/9以内の領域)の任意の位置におけるそれぞれ5箇所について、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率1000倍で観察し、写真撮影する。
次いで、それぞれの写真での析出物に対してエネルギー分散型X線分析器(EDS)を用いて特性X線スペクトルを得ることで元素分析を行う。このときTiと、CもしくはNの少なくとも一方が検出される場合、Ti炭窒化物と判断する。また、同時にO又はSが検出された場合には酸化物又は硫化物の可能性があるが、これらもサイズが大きい場合には捻回特性を低下させうるのでTi炭窒化物とみなす。
次いで、Ti炭窒化物と判断した粒子の数を数えるとともにサイズを円相当径として直径を評価する。撮影した5箇所の写真における円相当径が0.5μm以上のTi炭窒化物の総数に対する3nm以上のTi炭窒化物(粗大なTi炭窒化物)の総数の比を取り、個数密度(個数%)を測定する。なお、円相当径が0.5μm以下の粒子はSEMによって見えない場合もあり、0.5μm以下の粒子は数えない。
・中心軸からD/9以内の領域において、フェライト結晶方位が15°以上の角度差で囲まれる面積の平均値
本実施形態の線材は、中心軸からD/9以内の領域において、フェライト結晶方位が15°以上の角度差で囲まれる面積の平均値が、16μm以下であることが好ましい。かかる面積の平均値が16μm以下であれば、パーライトブロック粒(PBS)が微細化されていることになり、亀裂形成時の伝播抵抗となるため延性が向上する。
フェライト結晶方位が15°以上の角度差で囲まれる結晶粒径の平均値は、以下のように測定して求める。
線材の長手方向に平行であり、かつ中心軸を含む断面(すなわち線材の縦断面)を鏡面研磨した後、コロイダルシリカで研磨し、中心軸からD/9以内の領域の任意の位置において電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率400倍で各4視野を観察し、電子線後方散乱回折法による測定(EBSD測定)を行う。1視野あたりの面積は、0.0324mm(縦0.18mm、横0.18mm)とし、測定時のステップは0.3μmとする。
次いで、結晶粒界を15°と定義して結晶粒径の加重平均を算出し、測定した4視野の平均値を15°以上の角度差で囲まれる領域の結晶粒径とする。例えば、OIM analysis(株式会社TSLソリューションズのEBSD解析ソフト、OIM:Orientation Imaging Microscopy)を用いることで結晶粒径を得ることができる。OIM analysisを用いる場合、CI値が0.1以下のピクセルおよび9個以下のピクセルの塊はデータの信頼性が低いためノイズとみなし、除外する。
・中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織の面積率
本実施形態の線材は、パーライト組織を有することが好ましく、中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織の面積率が90%以上であることが好ましい。中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織の面積率が90%以上であれば、高強度及び延性のバランスが特に優れた線材とすることができる。かかる観点から、中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織の面積率は、92%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
なお、中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織の面積率の上限値は特に限定されず、100%でもよいが、ばらつきの観点から99%以下であってもよい。なお、本実施形態の線材におけるパーライト組織以外の金属組織(非パーライト組織)としては、フェライト、ベイナイト、マルテンサイトが挙げられる。
中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織の面積率は、以下のように測定して求める。
線材の長手方向に平行であり、かつ中心軸を含む断面(すなわち線材の縦断面)を鏡面研磨した後、ピクラールで腐食し、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率2000倍で、線材の外周面からD/2の位置を中心軸として中心軸からD/9以内の領域の任意の位置におけるそれぞれ5箇所を観察し、写真撮影する。1視野あたりの面積は、2.7×10-3mm(縦0.045mm、横0.060mm)とする。
次いで、得られた各写真に透明シート(例えばOHP(Over Head Projector)シート)を重ねる。この状態で、各透明シートにおける「非パーライト組織」に色を塗る。
次いで、各透明シートにおける「色を塗った領域」の面積率を画像解析ソフト(image-J ver.1.51)により求め、その平均値を非パーライト組織の面積率の平均値として算出する。得られた非パーライト組織の面積率を100%から差し引くことでパーライト組織の面積率を算出し、5視野の平均値をパーライト組織の面積率とする。
・中心軸からD/9以内の領域におけるラメラ間隔の平均値
本実施形態の線材は、パーライト組織を有することが好ましく、中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織のラメラ間隔の平均値が70nm以下である好ましい。中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織のラメラ間隔の平均値が70nm以下であれば、より確実に高強度の線材とすることできる。かかる観点から、中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織のラメラ間隔の平均値は67nm以下がより好ましく、65nm以下がさらに好ましい。
なお、中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織のラメラ間隔の平均値の下限値は特に限定されないが、高強度化による延性低下の観点から、40nm以上であってもよい。
中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織のラメラ間隔は、以下のように測定して求める。
線材の長手方向に平行であり、かつ中心軸を含む断面(すなわち線材の縦断面)を鏡面研磨した後、ピクラールで腐食し、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率10000倍で、図2に示すように線材10の外周面からD/2の位置を中心軸Cとして中心軸CからD/9以内の領域の任意の位置におけるそれぞれ5箇所を観察し、写真撮影する。具体的には、各視野の写真を用いて視野内でパーライトラメラの向きが揃っている範囲において、ラメラ5間隔分が測定可能で、かつ最もラメラ間隔が小さい場所、及び2番目にラメラ間隔が小さい場所について、それぞれラメラに垂直に直線を引いて、ラメラ5間隔分の長さを求めて、それを5で割ることで各箇所(各視野につき2箇所)のパーライトラメラ間隔を求めることができる。このように求めた10箇所のラメラ間隔の平均値をその試料の「ラメラ間隔の平均値」とすることができる。
<線材の直径>
本実施形態の線材の直径(D)は特に限定されないが、断面内で均一な組織を形成させる観点から、1.5mm以上9.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以上8.0mm以下であることがより好ましい。
[鋼線]
次に、本実施形態の鋼線について説明する。
本実施形態の鋼線は、質量%で
C:0.40%以上0.80%以下、
Si:0.10%以上2.0%以下、
Mn:0.10%以上1.0%以下、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
N:0.0015%%以上0.0060%以下、及び
Ti:0.005%以上0.030%以下を含有し、残部がFe及び不純物である鋼成分を有し、かつ、Nの含有量に対するTiの含有量の比が3.3以上6.5以下を満たし、
鋼線を平均昇温速度10℃/秒以上30℃/秒以下で900℃まで加熱して1分間保持した場合、鋼線の直径をdとしたときに、中心軸からd/20以内の領域において円相当径が10nm以上のTi炭窒化物のうち10nm以上40nm以下のTi炭窒化物の個数が10%以上であり、前記中心軸からd/9以内の領域において円相当径が0.5μm以上のTi炭窒化物のうち3μm以上のTi炭窒化物の個数が40%以下であり、前記中心軸からd/9以内の領域における鋼線の長手方向に対して平行となる<110>方位の集積度が2.0以上である。
本実施形態の鋼線の鋼成分は、Feに代えて、
Al:0.050%以下、
Cr:1.0%以下、
Nb:0.050%以下、
V:0.15%以下、
Ca:0.0040%以下、
Mg:0.0040%以下、及び
B:0.0030%以下、
からなる群から選ばれる1種または2種以上を含んでもよい。
<鋼線の鋼成分>
本実施形態の鋼線は、前述した本実施形態の線材を伸線加工して得られるものであり、鋼成分は線材と同様であるため、ここでの説明は省略する。
<鋼線の金属組織>
Ti炭窒化物の大きさ及び個数は、伸線加工前後で大きく変化することはないが、線材を伸線加工して得られる鋼線は、その断面をSEM又はTEMで観察した場合、SEMではセメンタイト組織が微細になっておりフェライト素地が観察しにくく、TEMでは転位組織やセメンタイト組織が複雑に絡み合っているため、Ti炭窒化物を特定することが困難である。そこで、本実施形態の鋼線は、鋼線を平均昇温速度10℃/秒以上30℃/秒以下で900℃まで加熱して1分間保持する焼き入れをしてTi炭窒化物を観察し易くした上で、微細なTi炭窒化物と粗大なTi炭窒化物のそれぞれの個数%を特定する。
・中心軸からd/20以内の領域における微細なTi炭窒化物の個数密度
本実施形態の鋼線は、鋼線を平均昇温速度10℃/秒以上30℃/秒以下で900℃まで加熱して1分間保持(焼き入れ)した場合、鋼線の直径をdとしたときに、中心軸からd/20以内の領域において円相当径が10nm以上のTi炭窒化物のうち10nm以上40nm以下のTi炭窒化物の個数が10%以上である。
円相当径が10nm以上40nm以下の微細なTi炭窒化物はピニング粒子として働き、旧オーステナイトの微細化を促進する。鋼線の中心軸からd/20以内の領域における微細なTi炭窒化物の個数%が10%以上であれば、鋼線の組織が十分に微細化され、鋼線の絞り及び捻回特性が良好になる。中心軸からd/20以内の領域における微細なTi炭窒化物の個数%は、好ましくは11%以上であり、より好ましくは12%以上であり、多ければ多いほど好ましく、100%でもよい。
本実施形態の鋼線において微細なTi炭窒化物の個数%を求める方法は、鋼線を平均昇温速度10℃/秒以上30℃/秒以下で900℃まで加熱して1分間保持して焼き入れを行った後、中心軸からd/20以内の領域を測定対象とすること以外は、前述した線材において微細なTi炭窒化物の個数%を求める方法と同様であり、ここでの説明は省略する。
・中心軸からd/9以内の領域における粗大なTi炭窒化物の個数密度
本実施形態の鋼線は、鋼線を平均昇温速度10℃/秒以上30℃/秒以下で900℃まで加熱して1分間保持した場合、前記中心軸からd/9以内の領域において円相当径が0.5μm以上のTi炭窒化物のうち3μm以上のTi炭窒化物の個数が40%以下である。
円相当径が3μm以上の粗大なTi炭窒化物は、ねじり試験時に亀裂の形成を早める。鋼線の中心軸からd/9以内の領域における粗大なTi炭窒化物の個数%が40%超になると鋼線の捻回特性を著しく低下させるため、40%以下とする。中心軸からd/9以内の領域における粗大なTi炭窒化物の個数%は、好ましくは38%以下であり、より好ましくは36%以下であり、少なければ少ないほど好ましく、0%でもよい。
鋼線の中心軸からd/9以内の領域における粗大なTi炭窒化物の個数%を求める方法は、前述した線材の中心軸からD/9以内の領域における粗大なTi炭窒化物の個数%を求める方法と同様であり、ここでの説明は省略する。
・中心軸からd/9以内の領域における鋼線の長手方向に対して平行となる<110>方位の集積度
また、本実施形態の鋼線は、中心軸からd/9以内の領域における鋼線の長手方向に対して平行となる<110>方位の集積度(以下、単に「<110>の集積度」と記す場合がある。)が2.0以上である。ここで、<110>の集積度とは、方位<110>を有する結晶粒の存在頻度が、完全にランダムな方位分布を持つ組織(この場合、集積度は1)に対して何倍であるかを示す指標である。
本実施形態の鋼線は、中心軸からd/9以内の領域における<110>の集積度が2.0以上であることで、断面内の組織ばらつきを低減できるため捻回特性を向上させることができる。かかる観点から、本実施形態の鋼線は、中心軸からd/9以内の領域における<110>の集積度が2.1以上であることが好ましく、2.2以上であることがより好ましい。
なお、中心軸からd/9以内の領域における<110>の集積度の上限は特に限定されないが、伸線加工時の断線抑制の観点から、4.0以下であることが好ましく、3.8以下であることがより好ましい。
中心軸からd/9以内の領域における鋼線の長手方向に対して平行となる<110>方位の集積度は、以下のように測定して求める。
鋼線の長手方向に垂直な断面(すなわち鋼線の横断面)を鏡面研磨した後、コロイダルシリカで研磨し、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率400倍で中心軸から半径d/9以内の領域の任意の位置において各3視野を観察し、EBSD測定(電子線後方散乱回折法による測定)を行う。1視野あたりの面積は、0.0324mm(縦0.18mm、横0.18mm)とし、測定時のステップは0.1μmとする。
次いで、鋼線の長手方向から見た<110>の集積度を算出する。例えば、前述したOIM analysisを用いることで集積度の算出が可能である。OIM analysisを用いる場合、CI値が0.1以下のピクセルおよび9個以下のピクセルの塊はノイズとみなし、除外する。
<鋼線の直径>
本実施形態の鋼線の直径(d)は特に限定されないが、安定した捻回特性を得るためには、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.7mm以上2.5mm以下であることがより好ましい。
[線材の製造方法]
本実施形態の線材の製造方法は特に限定されないが、以下、一例として、本実施形態の線材の好ましい製造方法について説明する。
<鋳片加熱>
前述した鋼成分を有する鋳片を1200℃以上に加熱する。これにより(凝固時に形成する)円相当径が3μm以上となるような粗大なTi炭窒化物を溶解させることができ、割合を低減させることができる。Ti炭窒化物の溶解によって固溶Tiが増大し、分塊圧延中に微細にTi炭窒化物が分散する。鋳片の最大加熱温度は1350℃以下とすることが好ましい。鋳片を1350℃を超える温度に上げると脱炭が激しくなるためである。
<鋳片加熱時間>
1200℃以上の加熱時間を30分以上とすることで円相当径が3μm以上となるような粗大なTi炭窒化物を溶解させることができ、割合を低減させることができる。Ti炭窒化物の溶解によって固溶Tiが増大し、分塊圧延中に微細にTi炭窒化物が分散する。1200℃以上の加熱時間は300分以下とすることが好ましい。300分を超える加熱は大きな効果を示さないためである。
<線材加熱温度>
線材の加熱温度は1000℃以上とする。1000℃未満の加熱では線材圧延の反力が大きくなるためである。線材加熱時の最大温度T(℃)は、線材におけるTiの含有量を[Ti]、Cの含有量を[C]とした場合、以下の式(I)によって算出される値とすることが好ましい。
T=-9575/(log([Ti]×[C])-4.4)-360 ・・・(I)
上記式(I)で算出されるT(℃)を超える温度に線材を加熱すると分塊圧延中に析出した微細なTi炭窒化物が再度溶解し、線材圧延中には溶存したTi炭窒化物を核に析出するためピン止め効果が小さくなる。ピン止め効果を活用するためには分塊圧延中に析出した微細なTi炭窒化物を残存させることが有効である。
<線材加熱時間>
1000℃以上の加熱時間を35分以上とすることで線材圧延中の反力を十分に低減できる。一方、1000℃以上T℃以下の加熱時間が80分未満であれば、微細なTi炭窒化物を十分に残存させることができる。
上記の条件で鋳片の段階及び線材の段階でそれぞれ加熱することでTi炭窒化物が微細な粒径を有する線材を得ることができる。
上記の線材を用いて伸線加工を施すことで捻回特性に優れる鋼線を得ることができる。
また、上記の線材圧延を行って得られた線材を再度LPしても組織の微細化を再現することができる。
<LP加熱温度>
LPでの加熱温度は900℃以上とすることが好ましい。900℃未満ではフェライト/オーステナイトの二相組織となり、均一な組織が得られない可能性があるためである。LPでの加熱温度の上限となる最大温度Tは、前記式(I)で算出される値とすることが好ましい。上記式(I)で算出されるT(℃)を超える温度ではTi炭窒化物が溶解し、ピン止め効果が得られない。LP加熱温度は、より好ましくは1000℃以下である。
<LP加熱時間>
30秒以上のLP加熱を行うことで完全にオーステナイト化できるため、30秒以上とすることが好ましい。一方、300秒超のLP加熱はオーステナイト粒が粗大化することがあるため、300秒以下とすることが好ましい。
<鉛浴温度>
LPの際、鉛浴温度は500℃以上とすることが好ましい。500℃未満ではベイナイト変態域となり変態が完了しない可能性があるためである。鉛浴の最大温度は630℃以下とすることが好ましい。630℃超では線材の強度が低下するだけでなく、変態が完了しない可能性があるためである。
<鉛浴浸漬時間>
鉛浴浸漬時間は10秒以上とすることが好ましい。10秒未満ではパーライト変態が完了しない可能性があるためである。一方、鉛浴浸漬時間の上限は60秒とすることが好ましい。60秒超浸漬することで引張強度が低下する可能性があるためである。
[鋼線の製造方法]
本実施形態の鋼線の製造方法も特に限定されないが、好ましい製造方法の一例として、上記方法によって線材を製造した後、伸線加工することによって本実施形態の鋼線を製造する方法が挙げられる。
なお、上記方法によって製造した線材を用いて伸線加工を行っても、歪量が不十分であると鋼線の長手方向にそろった<110>の集積度が2.0未満となってしまう可能性があり、歪量が大き過ぎる伸線時に断線してしまう可能性がある。そこで、伸線加工前の線材の直径をD、鋼線の直径をdとしたとき、ε=2×ln(D/d)で表される真歪みεが、1.4以上4.0以下となるように伸線加工を行って鋼線を製造することが好ましい。
本実施形態の線材及び鋼線の用途は特に限定されないが、例えば、自動車等のタイヤの補強材であるワイヤー、アルミ送電線などの補強用ワイヤー、PC(プレストレストコンクリート)鋼線、橋梁等に用いられるロープ用ワイヤーなどに使用される高強度鋼線の素材として幅広く用いることができる。
以下、実施例によって本開示に係る線材及び鋼線の例を具体的に説明するが、本開示に係る線材及び鋼線は以下の実施例により制限されるものではない。
下記表1に示す化学組成(鋼成分)を有する鋼A及びB、並びに表2に示す化学組成を有する鋼1~32をそれぞれ溶製し、後述する方法で線材を作製した。
なお、表1及び表2中の「-」の表記は、当該元素の含有量が不純物レベルであり、実質的に含有されていないと判断できることを示す。表1及び表2に示された鋼の化学組成(質量%)の残部は鉄(Fe)及び不純物である。また、表2中の下線が付された値は、本開示に係る線材及び鋼線の鋼成分を満たさない値である。
それぞれ表1及び表2に示す化学組成の鋼を溶製し、以下の方法で線材を作製した。
まず、表1に示す化学組成の鋼A及びBをそれぞれ溶製した後、約1200℃~1300℃まで加熱し、分塊圧延によって、122mm角のビレット(鋼片)を得、線材圧延を行った。分塊圧延及び線材圧延での加熱並び仕上げ圧延後の調整冷却は、それぞれ表3に示された線材番号(R1)~(R30)に示す条件で行った。すなわち、鋼片が約1000~1120℃になるように加熱した後、線材圧延を施し、810℃~920℃で巻取り、平均冷却速度4℃/秒~33℃/秒で約30秒冷却し、φ5.5~φ8.5mmに熱間圧延した。
線材番号(R21)~(R30)に関しては、上記の製造条件とは異なる条件で線材圧延を行い、線材を得た。
[金属組織]
得られた線材の金属組織は、前述した方法により測定した。
表3においてPBS(パーライトブロック粒径)は、フェライト結晶方位が15°以上の角度差で囲まれた領域の粒径(円相当径)であり、パーライトブロックは、パーライトを構成するフェライト結晶方位が概ね同一である結晶粒である。
なお、非パーライト組織としては、フェライトが観察された。
[線材の引張強度及び断面減少率(絞り値)]
線材を340mmの長さに切断し、両端それぞれ70mmをくさびチャックで固定し、引張試験を行った。得られた最大荷重を断面積で除することで引張強さを算出した。
その後、線材の引張試験後の最も細くなった箇所の線径を測定し、引張試験前後の断面積の変化量を引張試験前の断面積で除し、100%をかけることで絞り値を算出した。
引張強さが900MPa以上であることが好ましいため、引張強さ900MPa以上を合格品と評価した。
絞り値は59%以上が好ましいため、絞り値59%以上を合格品と評価した。
表3に、線材番号(R1)~(R30)の製造条件、鋼成分[Ti/N]、線材組織、線材の特性を示す。
なお、線材加熱温度の好ましい上限値として前述の式(I)によって算出される値T(℃)は、鋼種Aについては1129℃であり、鋼種Bについては1067℃である。
表3中の下線が付された値は、本開示に係る線材の製造条件における不適切な値である。また、表3において線材組織について下線が付された値は、本開示に係る線材の組織を満たさない値である。線材の特性について下線が付された値は、不合格品と評価した値である。表4~表7において下線が付された値も同様である。
また、表3~表7において「微小Ti炭窒化物個数%」は、円相当径が10nm以上のTi炭窒化物のうち10nm以上40nm以下のTi炭窒化物の個数%を意味し、「粗大Ti炭窒化物個数%」は、円相当径が0.5μm以上のTi炭窒化物のうち3μm以上のTi炭窒化物の個数%を意味する。
Figure 0007352069000003
表3に示されるように、線材番号(R21)~(R23)及び(R27)は、分塊圧延での加熱温度が低い、もしくは加熱時間が短いために、粗大なTi炭窒化物が高い比率で残存するとともに、微細なTi炭窒化物の析出量が減った。そのため、線材の絞り値が59%を下回った。
線材番号(R24)~(R26)及び(R28)~(R30)は、線材圧延での温度が高い、もしくは加熱時間が長いため、分塊圧延で析出した微細なTi炭窒化物が溶解したため、線材の絞り値が低くなった。
圧延後の線材に対してリン酸亜鉛の皮膜処理を行い、φ1.8mmまで伸線加工を施した。
次いで、番号(R1)及び(R21)の線材に対して950℃~1150℃まで加熱し、550℃の鉛浴に浸漬させ、パーライト変態させた。
得られた線材について、前述した方法により金属組織(線材組織)及び特性を測定した。表4に、LP条件、鋼成分[Ti/N]、線材組織、特性を示す。
表4に示されるように、適正な加熱条件でLP処理を施したLP番号(L1)~(L4)では、LP後においても良好な絞りを有することができている。
一方、LP番号(L5)では微細なTi炭窒化物が溶解してしまい、絞り値が低下した。
LP番号(L6)~(L10)は線材の段階で微細なTi炭窒化物が少なく、LP後も絞り値が低かった。
圧延後の線材(R1)~(R30)に対してリン酸亜鉛の皮膜処理を行い、表5に示す線径dまで伸線加工を施し、鋼線を作製した。
得られた鋼線について、前述した方法により金属組織(線材組織)及び特性を測定した。表5に、伸線加工前の線材直径D、伸線加工後の鋼線直径d、鋼成分[Ti/N]、鋼線組織、鋼線の特性を示す。
[鋼線の引張強度及び断面減少率(絞り値)]
鋼線を340mmの長さに切断し、両端それぞれ70mmをくさびチャックで固定し引張試験を行った。得られた最大荷重を断面積で除することで引張強さを算出した。
その後、鋼線の引張試験後の最も細くなった箇所の線径を測定し、引張試験前後の断面積の変化量を引張試験前の断面積で除し、100%をかけることで絞り値を算出した。
引張強さが1500MPa以上であることが好ましいため、引張強さ1500MPa以上を合格品と評価した。
絞り値は59%以上が好ましいため、絞り値59%以上を合格品と評価した。
[伸線加工後の鋼線のねじり特性]
ねじり試験は、線径(直径)の100倍の長さの鋼線を15rpmで断線するまでねじり、ねじり回数を測定した。ねじり試験は、各鋼線について10本ずつ行い、10本の鋼線のねじり回数の平均値が38回以上の場合、ねじり特性が良好であると評価した。
伸線加工後の鋼線に関しても、微細なTi炭窒化物と粗大なTi炭窒化物を制御した 線材番号(R1)~(R19)では鋼線の絞り値、捻回数ともに高い次元で両立できている。
一方、線材番号(R20)では伸線加工ひずみが少なく<110>集合組織が不十分であるため、捻回数が低下した。
線材番号(R21)~(R23)及び(R27)は粗大なTi炭窒化物が高い比率で残存しており、微細なTi炭窒化物も少ないため、絞り値及び捻回数が低かった。
線材番号(R24)~(R26)及び(R28)~(R30)では微細なTi炭窒化物が少なく、絞り値及び捻回数が低かった。
表2に示す化学組成の鋼種番号1~32をそれぞれ溶製した後、表3の線材番号(R1)と同様の製造方法で線材(r1)~(r32)を製造した。
得られた線材について、前述した方法により金属組織(線材組織)及び特性を測定した。表6に、線材直径D、鋼成分[Ti/N]、線材組織、線材の特性を示す。
さらに、圧延後の線材に対してリン酸亜鉛の皮膜処理を行い、φ1.8mmまで伸線加工を施した。
得られた鋼線について、前述した方法により金属組織(鋼線組織)及び特性を測定した。表7に、鋼線直径d、鋼成分[Ti/N]、鋼線組織、鋼線の特性を示す。
線材番号(r1)~(r22)及び鋼線番号(w1)~(w22)に関しては成分、製造方法ともに適切であり、強度と延性を高く両立した線材、鋼線となっていた。
線材番号(r23)、鋼線番号(w23)はC量が低く、引張強度が低かった。
線材番号(r24)、鋼線番号(w24)はC量が高いため強度が高く、線材の絞り、鋼線の絞りが低かった。
線材番号(r25)、鋼線番号(w25)はMn量が低く固溶Sが残存し、線材の絞り、鋼線の絞りが低かった。
線材番号(r26)、鋼線番号(w26)はMn量が高く、中心部にMnが偏析してしまい、線材の絞り、鋼線の絞りが低かった。
線材番号(r27)、鋼線番号(w27)はSi量が低く、引張強度が低かった。
線材番号(r28)、鋼線番号(w28)はSi量が高く、線材段階で変態が完了しなかったため線材の絞り、鋼線の絞りが低かった。
線材番号(r29)、鋼線番号(w29)はTi量が高く、粗大なTi炭窒化物が高い比率で残存してしまい、線材の絞り、鋼線の絞り、捻回数が低かった。
線材番号(r30)、(r31)及び鋼線番号(w30)、(w31)はTi/Nが低く、固溶Nが残存してしまったため、線材の絞り、鋼線の絞り、捻回数が低かった。
線材番号(r32)、鋼線番号(w32)はTi/Nが高く、粗大なTi炭窒化物が多く、微細なTi炭窒化物がすくないために線材の絞り、鋼線の絞り、捻回数が低かった。
10 線材
C 中心軸
D 線材の直径

Claims (13)

  1. 質量%で
    C:0.40%以上0.80%以下、
    Si:0.10%以上2.0%以下、
    Mn:0.10%以上1.0%以下、
    P:0.030%以下、
    S:0.030%以下、
    N:0.0015%%以上0.0060%以下、及び
    Ti:0.005%以上0.030%以下、
    を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼成分を有し、かつ、Nの含有量に対するTiの含有量の比が3.3以上6.5以下を満たし、
    線材の直径をDとしたときに、中心軸からD/50以内の領域において円相当径が10nm以上のTi炭窒化物のうち10nm以上40nm以下のTi炭窒化物の個数が10%以上であり、前記中心軸からD/9以内の領域において円相当径が0.5μm以上のTi炭窒化物のうち3μm以上のTi炭窒化物の個数が40%以下である線材。
  2. 前記鋼成分が、質量%で
    Al:0.050%以下、
    Cr:1.0%以下、
    Nb:0.050%以下、
    V:0.15%以下、
    Ca:0.0040%以下、
    Mg:0.0040%以下、及び
    B:0.0030%以下、
    からなる群から選ばれる1種または2種以上を満たす請求項1に記載の線材。
  3. パーライト組織を有し、前記中心軸からD/9以内の領域において、フェライト結晶方位が15°以上の角度差で囲まれる領域を結晶粒と定義した際の結晶粒径の平均値が、16μm以下である請求項1又は請求項2に記載の線材。
  4. パーライト組織を有し、前記中心軸からD/9以内の領域におけるパーライト組織の面積率が、90%以上である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の線材。
  5. パーライト組織を有し、前記中心軸からD/9以内の領域における前記パーライト組織のラメラ間隔の平均値が、70nm以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の線材。
  6. 前記鋼成分が、質量%で
    Al:0.005%以上0.050%以下
    を満たす請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の線材。
  7. 前記鋼成分が、質量%で
    Cr:0.05%以上1.0%以下
    を満たす請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の線材。
  8. 前記鋼成分が、質量%で
    Nb:0.003%以上0.050%以下及び
    V:0.005%以上0.15%以下
    の少なくとも一方を満たす請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の線材。
  9. 前記鋼成分が、質量%で
    Ca:0.0002%以上0.0040%以下及び
    Mg:0.0002%以上0.0040%以下
    の少なくとも一方を満たす請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の線材。
  10. 前記鋼成分が、質量%で
    B:0.0001%以上0.0030%以下
    を満たす請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の線材。
  11. 前記線材の直径が、1.5mm以上9.0mm以下である請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の線材。
  12. 請求項1、請求項2、及び請求項6~請求項10のいずれか1項に記載の鋼成分を有し、かつ、Nの含有量に対するTiの含有量の比が3.3以上6.5以下を満たし、
    鋼線を平均昇温速度10℃/秒以上30℃/秒以下で900℃まで加熱して1分間保持した場合、鋼線の直径をdとしたときに、中心軸からd/20以内の領域において円相当径が10nm以上のTi炭窒化物のうち10nm以上40nm以下のTi炭窒化物の個数が10%以上であり、前記中心軸からd/9以内の領域において円相当径が0.5μm以上のTi炭窒化物のうち3μm以上のTi炭窒化物の個数が40%以下であり、前記中心軸からd/9以内の領域における鋼線の長手方向に対して平行となる<110>方位の集積度が2.0以上である鋼線。
  13. 前記鋼線の直径が、0.5mm以上3.0mm以下である請求項12に記載の鋼線。
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