本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
<画像形成装置の全体的な概略構成>
図1を参照して、本発明の実施例に係る電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置)の全体構成について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本発明が適用可能な画像形成装置としては、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリなどが挙げられ、ここではレーザプリンタに適用した場合について説明する。本実施例の画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザプリンタである。画像形成装置100は、画像情報に従って、記録材(例えば、記録用紙、プラスチックシート、布など)にフルカラー画像を形成することができる。画像情報は、画像形成装置本体100Aに接続された画像読み取り装置、或いは、画像形成装置本体100Aに通信可能に接続されたパーンナルコンピュータ等のホスト機器から、画像形成装置本体100Aに入力される。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。本実施例では、第1~第4の画像形成部SY、SM、SC、SKは、鉛直方向と交差する方向に一列に配置されている。尚、本実施例では、第1~第4の画像形成部SY、SM、SC、SKの構成及び動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して、総括的に説明する。
本実施例では、画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に並設された4個のドラム型の電子写真感光体、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、図示しない駆動手段(駆動源)により図示矢印A方向(時計方向)に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、感光ドラム1の表面を均―に帯電する帯電手段としての帯電ローラ2、画像情報に基づきレーザを照射して感光ドラム1上に静電像(静電潜像)を形成する露光手段としてのスキャナユニット(露光装置)3が配置されている。さらに、感光ドラム1の周囲には、静電像をトナー像(現像剤像)として現像する現像手段としての現像ユニット(現像装置)4、転写後の感光ドラム1の表面に残った転写残トナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニング部材6が配置されている。さらに、4個の感光ドラム1に対向して、感光ドラム1上のトナー像を記録材12に転写するための中間転写体としての中間転写ベルト5が感光ドラム1の上方に配置されている。
なお、本実施例では、現像装置としての現像ユニット4は、現像剤として非磁性一成分現像剤のトナーを用いる。また、本実施例では、現像ユニット4は、現像剤担持体としての現像ローラを感光ドラム1に対して接触させて反転現像を行うものである。即ち、本実施例では、現像ユニット4は、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを、感光ドラム1上の露光により電荷が減衰した部分(画像部、露光部)に付着させることで静電像を現像する。
本実施例では、感光ドラム1と、感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像ユニット4及びクリーニング部材6とは、一体化され、即ち、一体的にカートリッジ化されて、プロセスカートリッジ7を形成している。プロセスカートリッジ7は、画像形成装置本体100Aに設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。本実施例では、各色用のプロセスカートリッジ7は、全て同一形状を有しており、各色用のプロセスカートリッジ7内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーが収容されている。
中間転写体としての無端状のベルトで形成された中間転写ベルト5は、全ての感光ドラム1に当接し、図示矢印B方向(反時計方向)に循環移動(回転)する。中間転写ベルト5は、複数の支持部材として、駆動ローラ51、二次転写対向ローラ52、従動ローラ53に掛け渡されている。中間転写ベルト5の内周面側には、各感光ドラム1に対向するように、一次転写手段としての、4個の一次転写ローラ8が並設されている。一次転写ローラ8は、中間転写ベルト5を感光ドラム1に向けて押圧し、中間転写ベルト5と感光ドラム1とが当接する一次転写部N1を形成する。そして、一次転写ローラ8に、図示しない一次転写バイアス印加手段としての一次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、感光ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
また、中間転写ベルト5の外周面側において二次転写対向ローラ52に対向する位置には、二次転写手段としての二次転写ローラ9が配置されている。二次転写ローラ9は、中間転写ベルト5を介して二次転写対向ローラ52に圧接し、中間転写ベルト5と二次転写ローラ9とが当接する二次転写部N2を形成する。そして、二次転写ローラ9に、図示しない二次転写バイアス印加手段としての二次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、中間転写ベルト5上のトナー像が記録材12に転写(二次転写)される。
更に説明すれば、画像形成時には、先ず、感光体ドラム1の表面が帯電ローラ2によって一様に帯電される。次いで、スキャナユニット3から発された画像情報に応じたレーザ光によって、帯電した感光体ドラム1の表面が走査露光され、感光体ドラム1上に画像情報に従った静電像が形成される。次いで、感光体ドラム1上に形成された静電像は、現像ユニット4によってトナー像として現像される。感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ8の作用によって中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
例えば、フルカラー画像の形成時には、上述した一次転写までのプロセスが、第1~第4の画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて順次に行われ、中間転写ベルト5上に各色のトナー像が次に重ね合わせて一次転写される。その後、中間転写ベルト5の移動と同期が取られて記録材12が二次転写部N2へと搬送される。中間転写ベルト5上の4色トナー像は、記録材12を介して中間転写ベルト5に当接している二次転写ローラ9の作用によって、一括して記録材12上に二次転写される。トナー像が転写された記録材12は、定着手段としての定着装置10に搬送される。定着装置10において記録材12に熱及び圧力を加えられることで、記録材12にトナー像が定着される。トナー像が定着された記録材12は、定着装置10からさらに下流に搬送され、機外に排紙される。
一次転写工程後に感光ドラム1上に残留した一次転写残トナーは、クリーニング部材6によって除去、回収される。また、二次転写工程後に中間転写ベルト5上に残留した二次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置11によって清掃される。なお、画像形成装置100は、所望の一つの画像形成部のみを用いて、又は、幾つか(全てではない)の画像形成部のみを用いて、単色又はマルチカラーの画像を形成することもできるようになっている。
<プロセスカートリッジの概略構成>
図2を参照して、本実施例の画像形成装置100に装着されるプロセスカートリッジ7の全体構成について説明する。本実施例では、収容しているトナーの種類(色)を除いて、各色用のプロセスカートリッジ7の構成及び動作は実質的に同一である。図2は、感光ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に沿って見た本実施例のプロセスカートリッジ7の概略断面(主断面)図である。図2のプロセスカートリッジ7の姿勢は、画像形成装置本体に装着された状態での姿勢であり、以下でプロセスカートリッジの各部材の位置関係や方向等について記載する場合はこの姿勢における位置関係や方向等を示している。すなわち、図2における紙面の上下方向が鉛直方向に対応し、紙面の左右方向が水平方向に対応する。なお、この配置構成の設定は、画像形成装置が、通常の設置状態として、水平面に設置されることを前提とした設定である。
プロセスカートリッジ7は、感光ドラム1等を備えた感光体ユニット13と、現像ローラ17等を備えた現像ユニット4と、を一体化して構成される。感光体ユニット13は、感光体ユニット13内の各種要素を支持する枠体としてのクリーニング枠体14を有する。クリーニング枠体14には、感光ドラム1が図示しない軸受を介して回転可能に取り付けられている。感光ドラム1は、図示しない駆動手段(駆動源)としての駆動モータの駆動力が感光体ユニット13に伝達されることで、画像形成動作に応じて図示矢印A方向(時計方向)に回転駆動される。本実施例にて、画像形成プロセスの中心となる感光ドラム1は、アルミニウム製シリンダの外周面に機能性膜である下引き層、キャリア発生層、キャリア移送層を順にコーティングした有機感光ドラム1を用いている。
また、感光体ユニット13には、感光ドラム1の周面上に接触するように、クリーニング部材6、帯電ローラ2が配置されている。クリーニング部材6によって感光ドラム1の表面から除去された転写残トナーは、クリーニング枠体14内に落下、収容される。帯電手段である帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部を感光ドラム1に加圧接触することで従動回転する。ここで、帯電ローラ2の芯金には、帯電工程として、感光ドラム1に対して所定の直流電圧が印加されており、これにより感光ドラム1の表面には、一様な暗部電位(Vd)が形成される。前述のスキャナユニット3からのレーザ光によって画像データに対応して発光されるレーザ光のスポットパターンは、感光ドラム1を露光し、露光された部位は、キャリア発生層からのキャリアにより表面の電荷が消失し、電位が低下する。この結果、露光部位は所定の明部電位(Vl)、未露光部位は所定の暗部電位(Vd)の静電潜像が、感光ドラム1上に形成される。本実施例では、Vd=-500V、Vl=-100Vとしている。
<現像ユニット>
現像ユニット4は、現像ローラ17と、現像ブレード21と、トナー供給ローラ20と、攪拌搬送部材22と、を備える。現像ローラ17は、現像剤担持体として、トナー40を担持する。現像ブレード21は、規制部材として、現像ローラ17上に担持されるトナー40(の層厚)を規制する。トナー供給ローラ20は、現像剤供給部材として、現像ローラ17にトナー40を供給する。攪拌搬送部材22は、搬送部材として、トナー40をトナー供給ローラ20へ搬送する。現像ユニット4は、現像ローラ17、トナー供給ローラ20、撹拌搬送部材22がそれぞれ回転可能に組み付けられる枠体としての現像容器18を備える。現像容器18は、撹拌搬送部材22が配置されるトナー収容室18aと、現像ローラ17及びトナー供給ローラ20が配置される現像室18bと、トナー収容室18aと現像室18bとをトナー40の移動が可能なように互いに連通する連通口18cと、を有する。連通口18cは、トナー収容室18aと現像室18bとを仕切る仕切壁部18d(18d1~18d3)に設けられている。
仕切壁部18dは、現像枠体18(現像容器)の内部空間をトナー収容室18aと現像室18bとに区画する。仕切壁部18dは、現像枠体18内部空間を、連通口18c上方で仕切る第1壁部18d1と、連通口18c下方で仕切る第2壁部18d2と、第2壁部18d2に連なり、トナー供給ローラ20、現像ローラ17の下方で仕切る第3壁部18d3と、を有する。第1壁部18d1、第2壁部18d2は、連通口18cのトナー収容室18aから現像室18bに向かう開口方向が水平方向よりも上方に向くように、鉛直方向に対して傾斜した方向に延びている。連通口18cは、仕切壁部18dにおけるトナー供給ローラ20に対して現像ローラ17とは反対側の領域において、現像室18bにおけるトナー供給ローラ20よりも上方の空間と対向するように開口している。これにより、現像室18bの内部空間が上方に向かうほど水平方向に広がるとともに、トナー収容室18aの下方から上方に向かって攪拌搬送部材22に汲み上げられるトナー40を連通口18cが受け入れやすいように構成される。第3壁部18d3は、第2壁部18d2の下端からトナー供給ローラ20、現像ローラ17の下方を略水平方向に延びている。第3壁部18d3は、第2壁部18d2とともに、連通口18cを通過したトナー40のうち、トナー供給ローラ20や現像ローラ17からこぼれ落ちたトナー40を受けとめるような構成(トナー40の貯留槽)を形成している。この第2壁部18d2、第3壁部18d3からなる構成は、長手方向(現像ローラ17またはトナー供給ローラ20の回転軸線に沿った方向)において現像枠体18の一方の側面から他方の側面にわたって形成されている。
ここで、現像室18bの内部空間を、第1の空間、第2の空間、第3の空間に区分けして考える。図7において第1の空間をS1、第2の空間をS2、第3の空間をS3の符号でそれぞれ示している。
第1の空間とは、現像室18bにおけるニップ部Nの上方の空間を指す。より具体的には、第1の空間とは、現像室18bの内部空間のうち、ニップ部Nよりも上方においてトナー供給ローラ20及び現像ローラ17の周面と現像室18bの内壁面とが互いに対向する空間領域のことである。第1の空間は、トナー供給ローラ20及び現像ローラ17の周面のうちニップ部Nよりも上方の領域と、これらに対向する現像室18bの内壁面と、現像室18bの長手方向両側面と、によって囲まれる。
第2の空間とは、現像室18bにおいて、トナー供給ローラ20下方の狭小部を境界として、トナー供給ローラ20の回転下流方向に空間が拡大するよう設けられた空間を指す。
ここで狭小部とは、現像室18bの内部空間を区画する壁部18dの第3壁部18d3と、トナー供給ローラ20周面との対向領域において、両者の間隔が最も狭くなる部分を指す。
具体的には、第2の空間は、トナー供給ローラ20周面と第3壁部18d3との対向空間において狭小部を境にトナー供給ローラ20の回転方向下流側に向かうほど、トナー供給ローラ20周面と第3壁部18d3との間の間隔が徐々に拡大する空間領域である。第2の空間は、狭小部よりもトナー供給ローラ20回転方向下流側において、第3壁部18d3と、これに対向するトナー供給ローラ20及び現像ローラ17の周面の領域と、現像ブレード21と、現像室18bの長手方向両側面と、によって囲まれる。
第3の空間とは、現像室18bの内部において前記狭小部を境界としてトナー供給ローラ20の回転上流方向に空間が拡大するよう設けられた空間を指す。より具体的には、第3の空間は、トナー供給ローラ20周面と第3壁部18d3との対向空間において狭小部を境に上記回転方向上流側に向かうほど、トナー供給ローラ20周面と第3壁部18d3との間の間隔が徐々に拡大する空間領域である。第3の空間は、狭小部よりもトナー供給ローラ20回転方向上流側において、第2壁部18d2及び第3壁部18d3と、これらに対向するトナー供給ローラ20周面の領域と、現像室18bの長手方向両側面と、によって囲まれる。
本実施例では、図2、図7等に示す断面において、第2の空間の方が第3の空間よりも広くなるように構成されている。
攪拌搬送部材22により汲み上げられたトナー40は、連通口18c上端(第1壁部18d1下端との境目)がトナー供給ローラ20上端よりも上方に配置されていることで、トナー供給ローラ20を乗り越えてニップ部Nの上方(第1の空間)に供給される。ニップ部Nの上方(第1の空間)に供給されたトナー40は、トナー供給ローラ20の変形によりトナー供給ローラ20の内部(発泡層の気泡空洞内)に吸い込まれ、トナー供給ローラ20の回転によって図の反時計方向に移動し、ニップ部Nの下端に到達する。また、攪拌搬送部材22により汲み上げられ、トナー供給ローラ20表面に供給されたトナー40の一部は、トナー供給ローラ20の矢印E方向の回転によってトナー収容室18aに一部が戻る。残りのトナー40は、トナー供給ローラ20下方の領域(第3の空間→第2の空間)に向かって搬送される。
ニップ部Nの下端に到達した所でトナー供給ローラ20の変形によりトナー供給ローラ20の内部(発泡層の気泡空洞内)からトナー40が吐き出され、ニップ部Nで摺擦されながら現像ローラ17に供給される。現像ローラ17に付着したトナー40は、現像ブレード21に規制、及び帯電され、規制部を通過したトナー40により現像ローラ17上に均一なトナーコートが形成される。また、現像部で現像せずに残ったトナー40もニップ部Nでトナー供給ローラ20と現像ローラ17の表面が互いに逆方向に回転することで強く掻きとられる。現像ブレード21で規制されて現像ローラ17から脱離したトナー40は現像ブレード21の下方(第2の空間)に落下する。また、トナー供給ローラ20の内部から吐き出され、現像ローラ17に付着しなかったトナー40は、ニップ部Nの下方(第2の空間)に吐き出される。
以上の動作が繰り返されると、第2の空間にトナー40が蓄積されていきトナー40の圧密状態を形成する。圧密状態が形成されると圧密部からトナー供給ローラ20表面、乃至は内部にトナー40が供給されるようになる。また、圧密状態の形成により、狭小部を通り抜け、第2の空間(圧密空間)から第3の空間にトナー40が移動する。そのトナー40の流れの圧力により、トナー40の一部は、連通口18c下方の第2壁部18d2の上端を乗り越え、トナー収容室18aへと戻される。
図7を参照して、本実施例の現像室18b内の各部材の配置構成の詳細を説明する。図7は、本実施例に係る現像装置における各部材の配置関係を説明する模式的断面図である。
本実施例においては、(i)現像室18bとトナー収容室18aとを隔てている連通口18cの上端(第1壁部18d1における連通口18cとの境目)は、トナー供給ローラ20上端に対して上方に配置した。すなわち、図7に示すように、連通口18cの上端を通る水平線h1は、トナー供給ローラ20の上端を通る水平線h2よりも上方に位置している。
(ii)ニップ部Nの中心(高さ方向における中央部、又はトナー供給ローラ20と現像ローラ17の回転中心を結ぶ線と交わる位置)は、連通口18c下端に対して上方に、ニップ部Nの下端は、連通口18c下端に対して上方に配置した。すなわち、図7に示すように、ニップ部Nの中心を通る水平線h4は、連通口18cの下端(第2壁部18d2の上端(第2壁部18d2における連通口18cとの境目))を通る水平線h6よりも上方に位置している。また、ニップ部Nの下端を通る水平線h5は、連通口18cの下端を通る水平線h6よりも上方に位置している。
(iii)連通口18c下端(第2壁部18d2の上端)は、現像ブレード21と現像ローラ17との当接位置21cの現像ローラ17回転方向上流側の端部21bに対して上方に配置した。すなわち、図7に示すように、連通口18cの下端(第2壁部18d2の上端)を通る水平線h6は、現像ブレード21の現像ローラ17との当接位置21cを通る水平線h7よりも上方に位置している。
(iv)第2の空間と第3の空間を形成する現像室18b内面のうち第3壁部18d3上面は、次のように配置した。まず、現像ブレード21における現像ローラ17との当接位置21cよりも現像ローラ17回転方向上流側に位置する端部21b(自由端先端)を基準とした鉛直線を引く(図7参照)。そして、その鉛直線と第2の空間に面する現像室18b内面(第3壁部18d3上面)との交点の位置を基準とし、その基準点から狭小部に対して水平方向に離れた位置から、狭小部を挟んだ第3の空間側に向かって略水平に延びる面となるように配置した。
(v)連通口18cの下端は、トナー供給ローラ20の下端よりも上方に配置した。すなわち、図7に示すように、連通口18cの下端(第2壁部18d2の上端)を通る水平線h6は、トナー供給ローラ20の下端を通る水平線h8よりも上方に位置している。
以下に、(i)~(v)の配置構成の作用効果について説明する。
(i)連通口18c上端とトナー供給ローラ20上端の配置関係
前述したようにトナー供給ローラ20への主なトナー供給は、攪拌搬送部材22によりトナー40が汲み上げられ、ニップ部Nの上方(第1の空間)に直接供給されることで行われる。本実施例では連通口18cの上端がトナー供給ローラ20の上端よりも上方に配置されているため、トナー供給ローラ20を乗り越えてニップ部Nの上方(第1の空間)のトナー供給ローラ20の吸い込み口にトナー40を供給することができる。(トナー供給ローラ20は、現像ローラ17に対してカウンター方向に回転しているためニップ部Nの上方でトナー40を吸い込む)。連通口18cの上端がトナー供給ローラ20の上端よりも下方に配置されている場合には、連通口18cの上端がトナー供給経路を塞ぐため、攪拌搬送部材22により直接、ニップ部Nの上方の空間にトナー供給することが困難となる。また、そのような場合には、トナー供給ローラ20の側面に供給されたトナー40は、トナー供給ローラ20の回転によりトナー収容室18a方向に戻されてしまって、トナー供給ローラ20に対して十分なトナー供給を行うことができない場合がある。
(ii)ニップ部Nの中心(高さ方向における中央部)と連通口18c下端の配置関係
連通口18cの下端がニップ部Nの中心位置(高さ方向における中央部の高さ)よりも上方では、現像室18b内の第2の空間と第3の空間に収容されるトナー剤面の高さがニップ部Nの中心を超える。このような配置ではニップ部Nにトナー40が侵入しやすくなり、現像動作後に現像ローラ17上に残ったトナー40に対するトナー供給ローラ20の機械的剥ぎ取り力が弱くなって、剥ぎ取り不足に起因する「現像スジ」といった画像不良が発生しやすくなった。そのため連通口18cの下端の位置は、少なくともニップ部Nの上端よりも下方に設けることが必要である。すなわち、図7に示すように、連通口18c下端を通る水平線h6が、ニップ部N上端を通る水平線h3よりも下方に位置するように構成する。さらに、連通口18cの下端を、ニップ部Nの中心位置よりも下方に配置することで、トナー供給ローラ20の剥ぎ取り性能を向上させることができるため望ましい。更には、連通口18cの下端は、ニップ部Nの下端よりも下方に配置することでトナー供給ローラ20の剥ぎ取り性能を更に向上させることができるため、より望ましい。すなわち、図7に示すように、連通口18c下端を通る水平線h6が、ニップ部N下端を通る水平線h5よりも下方に位置するように構成することが望ましい。
(iii)連通口18c下端と現像ブレード21先端部との配置関係
連通口18cの下端を、現像ブレード21と現像ローラ17との当接位置21cの現像ローラ17の回転方向上流側の端部21bに対して、同じ位置、乃至は上方に配置する。こうすることで、現像ブレード21で規制された余剰のトナー40が第2の空間に絶え間なく供給される。こうすることで、第2の空間でのトナー40の圧密度がより高まり、第2の空間からのトナー供給ローラ20へのトナー供給と、第3の空間から連通口18c下端の壁を乗り越えてトナー収容室18aに戻るトナー40の流れと、を形成することができる。本実施例の他の構成要件を満たしつつ、連通口18cの下端が、現像ブレード21における現像ローラ17との当接位置21cよりも現像ローラ17の回転方向上流側の端部21bに対して下方にある場合には、第2の空間の圧密度が高まり難かった。
(iv)現像ブレード21先端部と現像容器内壁の角度の配置関係
また、第2の空間から第3の空間にトナー40が移動するためには、トナー40の移動を妨げないように第2の空間と第3の空間に面する現像枠体18壁部内面(第3壁部30c上面)の角度を適切に設定することが必要である。そこで、本実施例では、上述した鉛直線(図7参照)と現像枠体18壁部内面(第3壁部18d3上面)との交点よりも、狭小部に対して水平方向に離れた位置から現像枠体18壁部内面が略水平となるように構成した。こうすることで、トナー供給ローラ20から現像ローラ17に供給され現像ブレード21で規制された後、第2の空間に落下したトナー40が狭小部を挟んだ第3の空間の方向に向かって移動しやすくなる。
なお、第2の空間から第3の空間に向かってトナーがより移動しやすくなるように、第2の空間から第3の空間に向かって降下する(第3壁部18d3上面に傾斜をつける)ように構成してもよい。こうすることで、第2の空間から第3の空間へのトナー循環をより促進することができる。
(v)連通口18cの下端とトナー供給ローラ20との配置関係
また、本実施例の構成において、連通口18cの下端はトナー供給ローラ20の下端よりも上方に配置した。こうすることで第3の空間からトナー収容室18aに戻るトナー量を適正量に制御することができ、それにより第2の空間に適切な圧密空間を形成することができる。
現像室18bは、トナー40を現像容器18外部へ運び出すための開口部として現像開口が設けられており、その現像開口を塞ぐような配置で現像ローラ17が現像容器18に回転可能に組み付けられている。すなわち、現像容器18に収容されたトナー40は、回転する現像ローラ17に担持搬送されることで現像開口を通過して現像容器18の外部へ移動し、感光ドラム1の静電潜像の現像に供されることになる。その際、現像容器18外部へ運び出されるトナー量は、現像ブレード21によって規制、調整されることになる。トナー収容室18aは、現像室18bよりも重力方向下方に位置する。現像ブレード21が現像ローラ17に当接する位置は、現像ローラ17の回転中心よりも下方、かつ水平方向において現像ローラ17の回転中心とトナー供給ローラ20の回転中心との間に位置する。
トナー供給ローラ20と現像ローラ17とは、各々の表面がニップ部Nの下端から上端に移動する方向に回転している。すなわち、トナー供給ローラ20は図示矢印E方向(反時計方向)に、現像ローラ17は矢印D方向(反時計方向)に回転している。トナー供給ローラ20と現像ローラ17は所定の侵入量を持って接触している。
トナー供給ローラ20と現像ローラ17とは、ニップ部Nにおいて互いに同方向に周速差を持って回転しており、この動作により、トナー供給ローラ20による現像ローラ17へのトナー供給を行っている。その際、トナー供給ローラと現像ローラとの電位差を調整することにより、現像ローラへのトナー供給量を調整することが出来る。
本実施例においては、トナー供給ローラ20が700rpm、現像ローラ17が700rpmの回転速度で駆動回転し、現像ローラ17に対してトナー供給ローラ20がΔ-100Vとなるよう、トナー供給ローラに対してはV=-400Vを印加している。そうすることで、トナー供給ローラ20から現像ローラ17に電気的にトナーが供給しやすい状態にしている。尚、本実施例においては、現像ローラ17、トナー供給ローラ20は、共に外径15mmであり、トナー供給ローラ20の現像ローラ17への侵入量、即ち、トナー供給ローラ20が現像ローラ17により凹状とされるその凹み量を1.0mmに設定した。
攪拌搬送部材22は、トナー収容室18a内に収容されたトナー40を攪拌すると共に、現像室18b内のトナー供給ローラ20の上部に向けて図中矢印G方向にトナー40を搬送する。本実施例において、撹拌搬送部材22は130rpmの回転速度で駆動回転している。現像ローラ17と感光ドラム1とは、対向部において各々の表面が同方向(本実施例では下から上に向かう方向)に移動するようにそれぞれ回転する。なお、本実施例では、現像ローラ17は、感光ドラム1に接触して配置されているが、現像ローラ17は、感光ドラム1に対して所定間隔を開けて近接配置される構成であってもよい。
本実施例において、現像ローラ17として、弾性ゴム層(弾性層1702)を被覆したローラを用いた。弾性ゴム層は、感光ドラム1との接触状態を均一に保つ為に、その硬度はMD1硬度で20~50[°]の硬度が好適に用いられる。硬度が20°未満となると表面を研磨しにくくなり、所望のローラ表面形状を得ることが難しくなる。硬度が50°より大きくなると、感光ドラム1への現像ローラ17の当接力が高くなり、トナーが圧接により潰れやすくなる。実施例においては、ゴム硬度38°のものを用いた。ゴム硬度は高分子計器株式会社製のMD-1硬度計(押針形状:タイプA)により測定した。
表面粗さは中心線平均粗さRaで0.2~2[μm]に設定され、必要量のトナーが表面に保持される。Raが0.2未満となると所望のトナー量が得られず、濃度が薄くなる。またRaが2より大きくなると、トナー個々に十分な帯電を与えにくく、非画像部にトナーが付着する、所謂「かぶり」が発生しやすくなる。実施例においては、Ra=1.0μmのものを用いた。中心線平均粗さRaは、小坂研究所社製「サーフコーダSE3500」により測定した。
本実施例においては、現像ローラ17に印加された所定のDCバイアスに対して、摩擦帯電によりマイナスに帯電したトナー40が、感光ドラム1に接触する現像部において、その電位差から、明部電位部にのみ転移して静電潜像を顕像化する。本実施例においては、現像ローラ17に対してV=-300Vを印加することにより、明部電位部との電位差ΔV=200Vを形成し、トナー像を形成している。
図3を参照して、本実施例における現像ユニット4のトナーシール構成について説明する。図3は、現像ローラ17の回転軸方向(長手方向)の端部周辺における現像ユニット4の構成を示す模式的断面図である。現像ユニット4における、現像ブレード21裏面、及び現像ローラ17周面との隙間には、現像ローラ17と摺擦する面がフェルトやパイル織物などで形成された、可撓性の端部シール部材80を配置し、シールしている。端部シール部材80は現像ローラ17と現像ユニット4と現像ブレード21の裏面(現像ローラ17の当接面と反対の面)との隙間を埋めている。端部シール部材80を現像ローラの周面および現像ブレードの裏面と圧接することで、長手方向にトナーが漏れるのを防止している。
<現像ブレードの構成>
次に、本発明の特徴である現像ブレード21(規制部材)について説明する。
本実施例では、図4に示すように、現像ブレード21は、現像ローラ17の回転に対し、カウンター方向を向くように配置されており、現像ローラ17に担持されるトナー量を規制する部材である。
また、トナー40は、現像ブレード21と現像ローラ17との摺擦により摩擦帯電されて電荷を付与されると同時に層厚規制される。
現像ブレード21は、長手方向と直交する短手方向(D11)の一方の端部21aが現像容器18にビス等の締結具によって固定され、他方の端部21bは自由端となっている。現像ブレード21が、現像容器18に固定された一端21aから現像ローラ17に当接する他端21bへ延びる方向(D11)は、現像ローラ17と当接する部分(2102)において、現像ローラ17の回転方向(D)とは逆方向(カウンター方向)となる。
本実施例においては、現像ブレード21として短手方向の自由長が8mm、厚みが0.07mm以上、0.10mm以下の板バネ状の弾性を有するSUS304-1/2Hの薄板を用いている。ここで、現像ブレード21としてはこの限りではなく、リン青銅やアルミニウム等の金属薄板でも良い。
現像ブレード21は、自由端(21b)側を現像ローラ17表面に線圧が20~40[N/m]となる押圧力で当接させる。現像ブレード21は、図4に示すように、直線状に延びる直線部211aを備えている。そして、直線部211aの自由端側には、曲りはじめ位置P1から先端21bへ向けて所定の曲率半径R(Rb)で円弧状に折り曲げられている(折り曲げ部2102が形成される)。
また、図4に示すように、現像ブレード21は、直線状に延びる直線部211aから先端21bまで垂直方向(D11に直交する方向)に距離H(ブレード厚みを含む、以後高さH)と、曲げ角度θ[°](方向D11とD12の間に角度)を持つ。
現像ブレード21の高さHを0.15[mm]より低くする場合は、曲げ代を確保するために、薄板を曲げた後に先端部を切断する必要がある。そのためコストがかかり好ましくない。
また、高さHを0.5[mm]より高くした場合は、現像ユニット4と現像ブレード21と現像ローラ17周面との隙間を端部シール部材80で埋めきれず、長手方向にトナー漏れが発生する場合がある。したがって、本実施例において、高さHが0.15[mm]≦H≦0.5[mm]、所定の曲率半径Rbを得るために曲げ角度(方向D11と方向D12の間の角度)が80≦θ≦130である現像ブレード21を用いた。
現像ブレード21の曲げ部2012の稜線2101は、図3の紙面に垂直な手前から奥方向に延在し、この稜線2101が現像ローラ17の表面移動方向に対して直交するように現像ローラ17の表面に当接している。
現像ブレード21に不図示のブレードバイアス電源から所定電圧を印加し、トナーコートの安定化を図っており、ブレードバイアスとしてV=-500Vを印加している。
<トナー>
<有機ケイ素重合体を含有する表層について>
トナー粒子が有機ケイ素重合体を含有する表層を有する場合、式(1)で表される部分構造を有することが好ましい。
R-SiO3/2 式(1)
(Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基を示す。)
式(1)の構造を有する有機ケイ素重合体において、Si原子の4個の原子価のうち1個はRと、残り3個はO原子と結合している。O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si-O-Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、-SiO3/2と表現される。この有機ケイ素重合体の-SiO3/2構造は、多数のシロキサン結合で構成されるシリカ(SiO2)と類似の性質を有することが考えられる。従って、従来の有機樹脂により表層形成されたトナーに比べて無機物に近い構造のため、マルテンス硬度を高くすることが可能であると考えられる。
式(1)で表される部分構造において、Rは炭素数が1以上6以下の炭化水素基であることが好ましい。これにより帯電量が安定しやすい。特に環境安定性に優れている、炭素数が1以上5以下の脂肪族炭化水素基、又はフェニル基が好ましい。
本発明において、上記Rは炭素数が1以上3以下の炭化水素基であることが、帯電性のさらなる向上のためにより好ましい。帯電性が良好であると、転写性が良く転写残トナーが少ないためドラム、帯電部材及び転写部材の汚染が良化する。
炭素数が1以上3以下の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、又はビニル基が好ましく例示できる。環境安定性と保存安定性の観点から、より好ましくは、Rはメチル基である。
有機ケイ素重合体の製造例としては、ゾルゲル法が好ましい。ゾルゲル法は、液体原料を出発原料に用いて加水分解及び縮合重合させ、ゾル状態を経てゲル化する方法であり、ガラス、セラミックス、有機-無機ハイブリット、ナノコンポジットを合成する方法に用いられる。この製造方法を用いれば、表層、繊維、バルク体、微粒子などの種々の形状の機能性材料を液相から低温で作製することができる。
トナー粒子の表層に存在する有機ケイ素重合体は、具体的には、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物の加水分解及び縮重合によって生成されることが好ましい。
この有機ケイ素重合体を含有する表層をトナー粒子に設けることによって、環境安定性が向上し、かつ、長期使用時におけるトナーの性能低下が生じにくく、保存安定性に優れたトナーを得ることができる。
さらに、ゾルゲル法は、液体から出発し、その液体をゲル化することによって材料を形成しているため、様々な微細構造及び形状をつくることができる。特に、トナー粒子が水系媒体中で製造される場合には、有機ケイ素化合物のシラノール基のような親水基による親水性によってトナー粒子の表面に析出させやすくなる。上記微細構造及び形状は反応温度、反応時間、反応溶媒、pHや有機金属化合物の種類及び量などによって調整することができる。
トナー粒子の表層の有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物の縮重合物であることが好ましい。
(式(Z)中、R1は、炭素数1以上6以下の炭化水素基を表し、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基を表す。)
R1の炭化水素基(好ましくはアルキル基)により疎水性を向上することができ、環境安定性に優れたトナー粒子を得ることができる。また、炭化水素基として芳香族炭化水素基であるアリール基、例えばフェニル基を用いることもできる。R1の疎水性が大きい場合、様々な環境において帯電量変動が大きくなる傾向を示すことから、環境安定性を鑑みてR1は炭素数1以上3以下の炭化水素基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基である(以下、反応基ともいう)。これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮重合させて架橋構造を形成し、耐部材汚染及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。加水分解性が室温で穏やかであり、トナー粒子の表面への析出性と被覆性の観点から、炭素数1~3のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基やエトキシ基であることがより好ましい。また、R2、R3及びR4の加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明に用いられる有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のR1を除く一分子中に3つの反応基(R2、R3及びR4)を有する有機ケイ素化合物(以下、三官能性シランともいう)を1種又は複数種を組み合わせて用いるとよい。
さらに、トナー粒子中の有機ケイ素重合体の含有量は0.5質量%以上10.5質量%以下であることが好ましい。
有機ケイ素重合体の含有量が0.5質量%以上であることで、表層の表面自由エネルギーを更に小さくすることができ、流動性が向上し、部材汚染やカブリの発生を抑制することができる。10.5質量%以下であることで、チャージアップを発生し難くすることができる。有機ケイ素重合体の含有量は有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、有機ケイ素重合体形成時のトナー粒子の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
有機ケイ素重合体を含有する表層とトナーコア粒子は、隙間なく接していることが好ましい。これにより、トナー粒子の表層よりも内部の樹脂成分や離型剤等によるブリードの発生が抑えられ、保存安定性、環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。表層には上記の有機ケイ素重合体の他に、スチレン-アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂や各種添加剤などを含有させてもよい。
トナー粒子は、結着樹脂を含有する。結着樹脂は特段限定されず、従来公知のものを用いることができる。ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましい。
<トナー粒子の製造方法>
トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることができる。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法を好ましく用いることができる。さらに、湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができる。
ここでは懸濁重合法について説明する。懸濁重合法においてはまず、結着樹脂を生成するための重合性単量体及び必要に応じて着色剤などのその他の添加剤をボールミル、超音波分散機のような分散機を用いてこれらを均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する(工程)。即ち、「重合性単量体組成物の調製工程」である。このとき、必要に応じて多官能性単量体や連鎖移動剤、また、離型剤としてのワックスや荷電制御剤、可塑剤などを適宜加えることができる。
次に、上記重合性単量体組成物を予め用意しておいた水系媒体中に投入し、高せん断力を有する撹拌機や分散機により、重合性単量体組成物からなる液滴を所望のトナー粒子のサイズに形成する(造粒工程)。
造粒工程における水系媒体は分散安定剤を含有していることが、トナー粒子の粒径制御、粒度分布のシャープ化、製造過程におけるトナー粒子の合一を抑制するために好ましい。
分散安定剤としては、一般的に立体障害による反発力を発現させる高分子と、静電気的な反発力で分散安定化を図る難水溶性無機化合物とに大別される。難水溶性無機化合物の微粒子は、酸やアルカリにより溶解するため、重合後に酸やアルカリで洗浄することにより溶解させて容易に除去することができるため、好適に用いられる。
造粒工程の後、あるいは造粒工程を行いながら、好ましくは50℃以上90℃以下の温度に設定して、重合性単量体組成物に含まれる重合性単量体の重合を行い、トナー粒子分散液を得る(重合工程)。
重合工程では容器内の温度分布が均一になる様に攪拌操作を行うことが好ましい。重合開始剤を添加する場合、任意のタイミングと所要時間で行うことができる。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温してもよく、さらに、未反応の重合性単量体、副生成物などを系外に除去するために反応後半、または反応終了後に、一部水系媒体を蒸留操作により留去してもよい。蒸留操作は常圧又は減圧下で行うことができる。
トナー粒子の粒径は、高精細かつ高解像の画像を得るという観点から重量平均粒径が3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。トナーの重量平均粒径は細孔電気抵抗法により測定することができる。例えば「コールター・カウンター Multisizer 3」(ベックマン・コールター(株)製)用いて測定することができる。こうして得られたトナー粒子分散液は、トナー粒子と水系媒体を固液分離する濾過工程へと送られる。
得られたトナー粒子分散液からトナー粒子を得るための固液分離は、一般的な濾過方法で行うことができ、その後トナー粒子表面から除去しきれなかった異物を除去するため、リスラリーや洗浄水のかけ洗いなどによって更に洗浄を行うことが好ましい。十分な洗浄が行なわれた後に、再び固液分離してトナーケーキを得る。その後、公知の乾燥手段により乾燥され、必要であれば分級により所定外の粒径を有する粒子群を分離してトナー粒子を得る。このとき分離された所定外の粒径を有する粒子群は最終的な収率を向上させるために再利用してもよい。
有機ケイ素重合体を有する表層を形成する場合は、水系媒体中でトナー粒子を形成する場合には水系媒体中で重合工程などを行いながら前述のように有機ケイ素化合物の加水分解液を添加して該表層を形成させることができる。重合後のトナー粒子の分散液をコア粒子分散液として用いて、有機ケイ素化合物の加水分解液を添加し、該表層を形成させてもよい。また、混練粉砕法など水系媒体以外の場合には得られたトナー粒子を水系媒体に分散してコア粒子分散液として用いて、前述のように有機ケイ素化合物の加水分解液を添加し、該表層を形成させることができる。
<マルテンス硬度の測定方法>
硬度とは、物体の表面又は表面近傍の機械的性質の一つであり、異物によって変形や傷を与えられようとするときの、物体の変形しにくさ、物体の傷つきにくさであり、様々な測定方法や定義が存在する。例えば測定方法は測定領域の広さによって使い分けられ、測定領域が10μm以上の場合にはビッカース法、10μm以下の場合にはナノインデンテーション法、1μm以下の場合にはAFMなどと使い分けられることが多い。定義としては、例えば押し込み硬さとしてはブリネル硬度やビッカース硬度、引っ掻き硬さとしてはマルテンス硬度、反発硬さとしてはショア硬度などが使い分けられている。
トナーの測定においては、一般的な粒径は3μm~10μmであるから、ナノインデンテーション法が好ましく用いられる測定方法である。発明者らの検討によると本発明の効果を発現するための硬度の規定として、引っ掻き硬さを表すマルテンス硬度が適当であった。これは、トナーが現像機内で金属や外添剤などの硬い物質に引っ掻かれることに対する強さを表し得るのが引っ掻き硬さであるためと考えている。
ナノインデンテーション法にてトナーのマルテンス硬度を測定する方法は市販のISO14577-1に準拠した装置にて、ISO14577-1に規定された押込み試験の手順に従って、得られた荷重-変位曲線から算出することができる。本発明においては、前記ISO規格に準拠した装置として、超微小押し込み硬さ試験機「ENT-1100b」(株式会社エリオニクス製)を用いた。測定方法は、装置に付属の「ENT1100操作マニュアル」に記載されているが、具体的な測定方法は以下の通りである。
測定環境は、付属の温度調節装置にてシールドケース内を30.0℃に保った。雰囲気温度を一定に保つことは熱膨張やドリフトなどによる測定データのバラつき低減に有効である。設定温度は、トナーが摩擦される現像機近辺の温度を想定した30.0℃の条件とした。試料台は装置に付属の標準試料台を用い、トナーを塗布した後にトナーが分散するように微弱なエアーを吹き付け、その試料台を装置にセットして1時間以上保持してから測定を行った。
圧子には装置に付属の先端が20μm四方の平面である平圧子(チタン製圧子、先端はダイヤモンド製)を用いて測定した。トナーの様に小径かつ球形の物体、外添剤が付着している物体、表面に凹凸が存在する物体においては、尖った圧子を用いると測定精度に大きな影響を与えるため平圧子を用いる。試験の最大荷重は2.0×10-4Nに設定して行った。この試験荷重に設定することで、現像部においてトナー1粒が受けるストレスに相当する条件で、トナーの表層を破壊せずに硬度を測定することが可能である。本発明においては、耐摩擦性が重要であるから表層を破壊せずに維持したまま硬さを測ることが重要である。
測定対象の粒子としては、装置付属の顕微鏡による測定用画面(視野サイズ:横幅160μm、縦幅120μm)にトナーが単独で存在しているものを選択した。ただし、変位量の誤差を極力無くすため、粒子径(D)が個数平均粒径(D1)の±0.5μmの範囲にあるもの(D1-0.5μm≦D≦D1+0.5μm)を選択した。なお、測定対象粒子の粒径測定は装置付属のソフトを用いてトナーの長径と短径を測定し、[(長径+短径)/2]をもって粒子径D(μm)とした。また、個数平均粒径は「コールター・カウンター Multisizer 3(ベックマン・コールター株式会社製)により後述する方法にて測定した。
測定に際しては、粒子径D(μm)が上記条件を満たす任意のトナー100粒を選んで測定を行った。測定の際に入力する条件は以下の通りである。
試験モード :負荷-除荷試験
試験荷重 :20.000mgf(=2.0×10-4N)
分割数:1000step
ステップインターバル:10msec
解析メニュー「データ解析(ISO)」を選択して測定を行うと、測定後に装置付属ソフトでマルテンス硬度が解析され、出力される。トナー100粒について上記測定を行って、その相加平均値を本発明におけるマルテンス硬度とした。
トナーの最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定したときのマルテンス硬度を200MPa以上1100MPa以下に調整することにより、従来のトナーよりも現像部におけるトナーの耐摩耗性を大幅に向上させることが可能となった。それにより、高速高画質化のためのプロセス設計の自由度を上げることが可能となった。
つまり、規制ブレードニップ幅増、現像ローラ回転速度増、キャリア混合撹拌速度増など選択の幅が広がる。その結果、部材削れ起因による「現像スジ」を抑制しつつ、帯電量を維持することができた。したがって、濃度ムラの発生を抑制できた。
当該マルテンス硬度が200MPaよりも低い場合には、帯電付与部材としての現像ブレードとのシェアに耐えられず、トナーの帯電量が低下し、電位ムラ起因の濃度ムラとボタ落ちが発生した。当該マルテンス硬度の好ましい値は250MPa以上であり、より好ましい値は300MPa以上である。
一方、当該マルテンス硬度が1100MPaよりも高い場合、現像ブレードや現像ローラを傷つけてしまい、「現像スジ」が発生した。当該マルテンス硬度の好ましい値は1000MPa以下であり、より好ましい値は900MPa以下である。
最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定する時のマルテンス硬度を200MPa以上1100MPa以下に調整するための手段は特に限定されない。ただし、当該硬度は一般的なトナーに用いられている有機樹脂の硬さに比べて大幅に硬いため、硬度を上げるために通常行われている手段では達成が困難である。例えば、ガラス転移温度の高い樹脂設計にする手段、樹脂分子量を上げる手段、熱硬化する手段、表層にフィラーを添加する手段などでは達成が難しい。
一般的なトナーに用いられている有機樹脂のマルテンス硬度は、最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定すると50MPa~80MPa程度である。さらに樹脂設計や分子量を上げるなどして硬度を上げた場合でも120MPa以下程度である。さらに、磁性体やケイ素化合物といったフィラーを表層近傍に充填して熱硬化させた場合でも、せいぜい185MPa程度であり、本発明のトナーは一般的なトナーに比べて大幅に硬い。
<硬度の制御方法>
上記特定の硬度範囲に調整するための1つの手段として、例えば、適切な硬度を持つ無機物などの物質でトナーの表層を形成させ、更にその化学構造やマクロ構造を適切な硬度を持つ様に制御する方法が挙げられる。
具体的な例示として、上記特定の硬度を持ち得る物質としては有機ケイ素重合体が挙げられ、材料の選択として有機ケイ素重合体のケイ素原子に直接結合している炭素原子の数や炭素鎖長などによって硬度を調整することが可能である。
トナー粒子が、有機ケイ素重合体を含有する表層を有する。該有機ケイ素重合体のケイ素原子に直接結合している炭素原子の数が、ケイ素原子1個当たり、平均1個以上3個以下(好ましくは1個以上2個以下、より好ましくは1個)であると、上記特定の硬度に調整しやすいため好ましい。
化学構造によりマルテンス硬度を調整する手段としては表層物質の架橋や重合度などの化学構造の調整などにより可能である。マクロ構造によりマルテンス硬度を調整する手段としては、表層の凸凹形状や凸間を繋ぐネットワーク構造の調整などにより可能である。これらの調整は有機ケイ素重合体を表層として用いる場合には、有機ケイ素重合体を前処理する際のpH、濃度、温度、時間などで調整可能である。また、トナーのコア粒子に有機ケイ素重合体を表層付けするタイミングや形態、濃度、反応温度などによって調整可能である。
本発明において特に好ましいのは以下の方法である。まず、結着樹脂を含むトナーのコア粒子を製造して水系媒体に分散し、コア粒子分散液を得る。この時の濃度はコア粒子分散液総量に対し、コア粒子の固形分が10質量%以上40質量%以下となる濃度で分散することが好ましい。そして、該コア粒子分散液の温度は35℃以上に調整しておくことが好ましい。また、該コア粒子分散液のpHは有機ケイ素化合物の縮合が進みにくいpHに調整することが好ましい。有機ケイ素重合体の縮合が進みにくいpHは物質によって異なるため、最も反応が進みにくいpHを中心として、±0.5以内が好ましい。
一方、有機ケイ素化合物は加水分解処理を行ったものを用いることが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物の前処理として別容器で加水分解しておく。加水分解の仕込み濃度は有機ケイ素化合物の量を100質量部とした場合、イオン交換水やRO水などイオン分を除去した水40質量部以上500質量部以下が好ましく、より好ましくは水100質量部以上400質量部以下である。加水分解の条件としては、好ましくはpHが2~7、温度が15~80℃、時間が30~600分である。
得られた加水分解液とコア粒子分散液とを混合して縮合に適したpH(好ましくは6~12、又は1~3、より好ましくは8~12)に調整することで、有機ケイ素化合物を縮合させながらトナーのコア粒子表面に表層付けすることができる。縮合と表層付けは35℃以上で60分間以上取ることが好ましい。また、縮合に適したpHに調整する前に35℃以上で保持する時間を調整することで表面のマクロ構造を調整可能であるが、特定のマルテンス硬度を得やすくするため、3分以上120分以下が好ましい。
以上のような手段によって反応残基を減らすことができ、表層に凹凸を形成させることができ、更に凸間にネットワーク構造を形成させることができるため、上記特定のマルテンス硬度のトナーを得られやすい。有機ケイ素重合体を含有する表層を用いる場合には、有機ケイ素重合体の固着率が90%以上100%以下であることが好ましい。より好ましくは、95%以上100%以下である。有機ケイ素重合体の固着率の測定方法は後述する。
<有機ケイ素重合体の固着率の測定方法>
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製した。遠心分離用チューブ(容量50ml)に上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作った。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐした。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分間振とうした。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離した。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取した。採取したトナーを含む水溶液を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥した。乾燥品をスパチュラで解砕し、蛍光X線でケイ素の量を測定した。水洗後のトナーと初期のトナーの測定対象の元素量比から固着率(%)を計算した。
各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いた。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間10秒とした。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出した。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリング直径10mmの中に水洗後のトナーと初期のトナーを約1g入れて平らにならす。そして、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで60秒間加圧し、厚さ約2mmに成型したペレットを用いた。
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出した。
トナー中の定量方法としては、例えばケイ素量はトナー粒子100質量部に対して、例えば、シリカ(SiO2)微粉末を0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合した。同様にして、シリカ微粉末を2.0質量部、5.0質量部となるようにトナー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とした。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定した。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとした。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO2添加量を横軸として、一次関数の検量線を得た。
次に、分析対象のトナーを、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにしてペレットとし、そのSi-Kα線の計数率を測定した。そして、上記の検量線からトナー中の有機ケイ素重合体の含有量を求めた。上記方法により算出した初期のトナーの元素量に対して、水洗後のトナーの元素量の比率を求め固着率(%)とした。
<トナー>
本実施例に用いたトナー40の模式図を図5に示す。本実施例では、母粒子40aに有機ケイ素重合体を含有する表層40bを有するトナー粒子を用いている。
以下、各材料の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
(水系媒体1の調製工程)
反応容器中のイオン交換水1000.0部に、リン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
(表層用有機ケイ素化合物の加水分解工程)
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを3.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を70℃にした。その後、表層用有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して表層用有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
(重合性単量体組成物の調製工程)
・スチレン :60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 :6.5部
前記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料分散液を調製した。前記顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン :20.0部
・n-ブチルアクリレート :20.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン) :0.3部
・飽和ポリエステル樹脂 :5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=10000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃) :7.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、T.K.ホモミクサーの回転数を12000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて12000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合工程)
造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行ってコア粒子を得た。スラリーの温度を55℃に冷却してpHを測定したところ、pH=5.0だった。55℃で撹拌を継続したまま、表層用有機ケイ素化合物の加水分解液を20.0部添加してトナー粒子の表層形成を開始した。そのまま30分保持した後に、水酸化ナトリウム水溶液を用いてスラリーを縮合完結用にpH=9.0に調整して更に300分保持し、表層を形成させた。
(洗浄、乾燥工程)
重合工程終了後、トナー粒子のスラリーを冷却し、トナー粒子のスラリーに塩酸を加えpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行い、更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットしてトナー粒子1を得た。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。
本実施例においては、得られたトナー粒子1を外添せずにそのままトナーaとして用いた。さらに、(重合工程)における加水分解液を添加する時の条件、及び添加後の保持時間を表1のように変えトナーb~dを作製した。なお、スラリーのpH調整は塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液で行った。
トナーeは、(表層用有機ケイ素化合物の加水分解工程)は行わなかった。代わりに、表層用有機ケイ素化合物のメチルトリエトキシシラン15部をモノマーのまま(重合性単量体組成物の調製工程)で添加した。(重合工程)では70℃に冷却してpH測定を行った後、加水分解液の添加を行わなかった。70℃で撹拌を継続したまま、水酸化ナトリウム水溶液を用いてスラリーを縮合完結用にpH=9.0に調整して更に300分保持して表層を形成させた。それ以外はトナーaと同様の方法でトナーを作製した。
本実施例においては、外添せずそのままトナーa~eを用いたが、外添剤を用いてもよい。
粒径とマルテンス硬度、固着率の測定は、発明を実施するための形態で述べた方法により測定を行った。以下、表2にトナーa~eのマルテンス硬度と固着率を示す。
<実験内容1>
本実施例の構成において、以下の実験を行った。
曲率半径R[mm]が異なる現像ブレード21を複数作製(表3)した。また、曲げ部分(2102)の外周側曲面(2102A)の曲率半径R[mm] と高さH[mm](図4を参照)、十点平均粗さRzを形状測定マイクロスコープ(KEYENCE社製 VK-X200)で測定した。
図6(a)はブレードbの曲げ部分(2102)を形状測定マイクロスコープ(KEYENCE社製 VK-X200)で測定する際の、測定角度を示した図である。現像ブレード21の曲げ部(2102)を斜め45°から測定した。
図6(b)は、ブレードbの曲げ部分を形状測定マイクロスコープ(KEYENCE社製 VK-X200)で測定した、曲げ部分(2102)の外周側曲面(2102A)の曲率半径R[mm](Rb)の検出結果を示す図である。
表3に示した現像ブレード21の曲げ部分の外周側曲面の曲率半径R[mm]と高さH[mm]、十点平均粗さRzは、全て図6で示した観察角度で測定を行った。
表3に示すように、曲げ部分2102の外周側曲面(2102A)の曲率半径R[mm](Rb)が小さいほど、Rzが増加することが分かる。つまり、曲率半径R[mm]が小さいほど凸部が高くなり、凸部でトナーが滞留しやすくなるので、凸部にトナーが融着しやすくなる。
表2に示したトナーa~eと、表3に示したブレードa~dを用いて、「現像スジ」、「ボタ落ち」を評価した。
評価条件は、常温常湿(25℃/50%)の環境下において1晩放置し、十分に環境になじませた後、実験用画像を記録材に形成する画像形成を、10000枚の記録材に対して間欠的に行った(耐久テスト)後に、上記の評価を行った。本実施例では、実験用画像として、画像印字率5%の横線を用いた。
評価方法に関しては、以下に詳しく述べる。
<現像スジの評価>
LETTERサイズのXEROX Vitality用紙(XEROX社製、75g/m2)にハーフトーン(トナーの載り量:0.2mg/cm2)の画像をプリントアウトし、現像スジを以下の通りA、B、Cランク付けした。なお、A、Bランクでは、画質に影響がないことも確認された。具体的には、
A: 現像ローラ上にも、画像上にも排紙方向の縦スジは見られなかった。
B: 現像ローラの両端には、周方向の軽微の細いスジ、また、画像上には、排紙方向の軽微な縦スジが見られたが、画質に影響するような顕著なものではなかった。
C: 現像ローラ上および画像上には、画質に影響する複数のスジが見られた。
<ボタ落ちの評価>
耐久テストを実施し終了した画像形成装置を分解し、トナーの「ボタ落ち」(剥離状態)があるか無いかを調査し、合格「○」と不合格「×」として評価を行った。
この評価におけるトナーの「ボタ落ち」の現象とは、現像ローラのトナー規制部より下流部において、トナーが現像ローラ上に保持されずに現像ローラの重力下方向にトナーが落下している状態である。トナーの「ボタ落ち」が発生した状態で画像形成を継続すると、画像形成本体内や記録紙への汚染に繋がりやすく、画像品質の低下を生じさせる場合がある。
<実験結果1>
以下、本実施例の「現像スジ」、「ボタ落ち」の評価結果を表4に示す。
本実施例の構成において、最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定した時のマルテンス硬度が、200MPa以上1100MPa以下のトナーを用いることで、曲げブレードを使用することができる。即ち、曲げブレードを用いた場合でも、トナーの硬度が高いことから、ブレード曲げ部の凸になった部分でトナーが繰り返し摺擦されてもブレードにトナーが融着しない。
また、現像ブレードと現像ローラとの当接部の曲率半径R[mm]がR≦0.3である現像ブレードを用いることで、ピーク圧が確保できトナーを規制しつつ、ボタ落ちを抑制できた。なお、R<0.08の場合では、現像ブレードの曲げ部の曲率半径が小さすぎるため、加工時に割れやく作製が困難である。
表4から理解できるように、トナーa~cを用いて、ブレードa~cを用いた場合、トナー融着が起因する「現像スジ」を抑制しつつ、現像ローラに対する「ピーク圧」を確保することができ、「ボタ落ち」を抑制することができた。
なお、トナーdを用いた場合では、マルテンス硬度が1200Mpaと硬すぎたため、現像ブレードや現像ローラの表面を傷つけやすくなり、現像ローラ上のトナー層が正常に形成されず、「現像スジ」が発生した。
一方、トナーeを用いた場合では、マルテンス硬度が185Mpaと柔らかいため、ブレード曲げ部の凸になった部分にトナーが付着し、繰り返し摺擦されることで融着が発生した。トナーが融着した部分では、現像ローラの表面にトナー層が形成されないため、同様に「現像スジ」が発生した。
また、ブレードeを用いた場合では、曲率半径Rが大きいため、現像ローラとの当接部の面積が広がり圧力が分散し、現像ローラに対するピーク圧が確保できにくくなる。したがって、現像ローラ上のトナーを規制できず、ボタ落ちが発生した。
以上の様々の実験結果を重なり、且つ本発明の発明者らの鋭意な研究により、現像剤担持体に対する規制部材の当接圧(ピーク圧)を確保しつつ、現像剤の規制ブレードへの融着を軽減することが可能な構成を導いた。
即ち、最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定した時のマルテンス硬度が、200MPa以上1100MPa以下であるトナーを用いて、現像ブレードと現像ローラとの当接部の曲率半径R[mm]が0.08≦R≦0.3である。このような構成によれば、現像ローラに対するピーク圧を確保し、ボタ落ちを抑制しつつ、トナー融着を回避することができる。
(その他)
前述した実施例では、現像ブレードの自由端を「曲げ加工」という加工方法により、当接部に所定の曲率半径を形成することができる。なお、当接部を所定の曲率半径となるように形成するには、「曲げ加工」以外の加工方法を用いてもよい。
例えば、現像ブレードの自由端を少しずつ研磨し加工する「研磨加工」方法が挙げられる。なお、「曲げ加工」は、「研磨加工」に比べ、製造コストの面では有利であり、望ましい。
本実施例の構成を以下のように纏めることができる。
即ち、本実施例の現像装置は、現像剤を担持する現像剤担持体(17)と、現像剤担持体を回転可能に支持する現像枠体(18)と、規制部材(21)と、を有する。規制部材は、現像枠体に取り付けられ、現像剤担持体の表面に当接することによって現像剤担持体に担持された現像剤(40)の厚みを規制する。また、規制部材は、現像剤担持体の表面と当接可能な稜線(2101)を有する曲面部(2102)を備える。
現像剤に含まれるトナーの最大荷重2.0×10-4Nの条件でのマルテンス硬度をHMとし、曲面部の曲率半径をRbとし、現像剤担持体の表面の曲率半径をRdとしたとき、200MPa≦HM≦1100MPa、0.08mm≦Rb≦0.3mmである。
また、本実施例のプロセスカートリッジ(7)は、現像装置(4)と、現像剤像を担持する像担持体(1)と、を備えることができる。
また、本実施例の画像形成装置(100)は、現像装置(4)と、現像剤像を担持する像担持体(1)と、像担持体から現像剤像を記録材へ転写する転写部材(9)と、を備えることができる。
また、本実施例では、規制部材(21)は、第1の部分(2103)と、第2の部分(2104)を有することができる。具体的に、現像剤担持体の回転軸(1701)方向から見たとき、第1の部分の一端(2103A)が現像枠体(18)に固定され、現像枠体側から現像剤担持体側へ向かう第1方向(D11)に延びている。第2の部分の一端(2104A)が第1の部分の他端(2103B)に接続され、第1方向と交差する第2方向(D12)に延びている。曲面部(2102)は、第1の部分(2103)と第2の部分(2104)が接続される箇所に形成されていることが望ましい。
また、本実施例では、第2の部分を、第1の部分の他端を折り曲げることによって形成してもよく、曲面部(2102)は折り曲げる箇所に形成されていることが望ましい。
また、本実施例では、現像剤担持体の回転軸方向から見たとき、第1の部分における曲げ始める位置(P1)から、第2の部分の他端(2104B)までの、第1方向と直交する方向における距離をHとすることができる。このとき、0.15mm≦H≦0.5mmであることが好ましい。
また、本実施例では、現像剤担持体の回転軸方向から見たとき、第1方向(D11)と第2方向(D12)の間の角度をθとしたとき、80°≦θ≦130°であることが好ましい。
また、本実施例では、規制部材における曲面部の十点平均粗さをRzとしたとき、0μm≦Rz≦11μmであることが好ましい。
また、本実施例では、現像剤担持体は、表面に弾性を有する弾性層(1702)を備えることができる。なお、弾性層のMD-1硬度が、20°以上、60°以下であり、且つ、弾性層の表面粗さの中心線平均粗さRaが、0.2以上、2以下であることが好ましい。
また、本実施例では、規制部材は、金属部材から構成されることが好ましい。
また、本実施例では、現像剤は、非磁性の一成分現像剤であってもよい。
また、本実施例では、曲面部の曲率半径Rbと、現像剤担持体の表面の曲率半径Rdは、
Rd>Rbであることが好ましい。
また、本実施例では、トナーのトナー粒子は、有機ケイ素重合体を含有する表層を有することができる。
また、本実施例では、有機ケイ素重合体は、R-SiO3/2(式(1))で表される構造を有することができる。なお、Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基を示す。
また、本実施例では、現像装置は、画像を形成する画像形成装置の装置本体に着脱可能である。