以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10について説明をする図である。図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。また、以下において説明をする点を除き、印刷装置10は、公知の印刷装置と同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、印刷装置10は、図1に示す要部の構成以外にも、公知の印刷装置の同一又は同様の構成を更に備えてよい。
本例において、印刷装置10は、印刷対象の媒体(メディア)50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタである。また、印刷装置10は、媒体50に対してインクを吐出して、複数のインクの層を重ねて形成することで、隆起した形状を媒体50上に形成する。この場合、隆起した形状を媒体50上に形成することについては、例えば、媒体50上に立体的な形状を形成すること等と考えることもできる。また、印刷装置10の動作について、例えば、凹凸状に隆起した形状を媒体50上に形成する動作や、2.5D(2.5次元)の印刷を行う動作等と考えることもできる。また、このような印刷の動作を行うために、印刷装置10は、ヘッド部12、台部14、主走査駆動部16、副走査駆動部18、積層方向駆動部20、及び制御部30を備える。
ヘッド部12は、媒体50に対してインクを吐出する構成である。ヘッド部12の特徴については、後に更に詳しく説明をする。台部14は、ヘッド部12と対向させて媒体50を保持する台状部材である。本例において、台部14は、上面に媒体50を載置することで、媒体50を保持する。主走査駆動部16は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドに主走査動作を行わせる駆動部である。副走査駆動部18は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドに副走査動作を行わせる駆動部である。この場合、主走査動作とは、予め設定された主走査方向へ媒体50に対して相対的に移動しつつインクを吐出する動作のことである。副走査動作とは、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体50に対して相対的に移動する動作のことである。本例において、主走査方向は、図中に示すY方向と平行な方向である。副走査方向は、Y方向及び以下において説明をする積層方向(Z方向)と直交する方向(X方向)である。
積層方向駆動部20は、媒体50上においてインクの層が積層される積層方向において媒体50に対して相対的にヘッド部12を移動させる駆動部である。また、本例において、積層方向は、鉛直方向と平行な方向であり、X方向及びY方向と直交する。積層方向駆動部20は、例えば、媒体50上に積層されるインクの層の厚みに合わせて台部14の高さを変化させることで、媒体50に対して相対的にヘッド部12を移動させる。
また、より具体的に、媒体50上に複数のインクの層を形成する動作において、積層方向駆動部20は、例えば、予め設定された層数のインクの層が形成される毎にヘッド部12から離れる方向へ台部14を移動させる。このように構成すれば、例えば、形成中のインクの層とヘッド部12におけるインクジェットヘッドとの間の距離を一定の範囲に保つことができる。また、媒体50とヘッド部12との位置関係については、例えば、最終的に積層されるインクの層の高さに合わせて設定すること等も考えられる。この場合、例えば、印刷の動作を開始する前に、最終的に積層されるインクの層の高さに合わせて、積層方向における台部14の位置を調整する。このように構成すれば、例えば、印刷の動作中に台部14の高さを変更しないことで、印刷の動作をより高速化することができる。
制御部30は、例えば印刷装置10のCPUを含む部分であり、印刷装置10の各部の動作を制御する。本例によれば、例えば、印刷の動作を印刷装置10に適切に行わせることができる。また、これにより、例えば、媒体50上に複数のインクの層を重ねて形成することで、隆起した形状を媒体50上に適切に形成することができる。
続いて、本例におけるヘッド部12の特徴について、更に詳しく説明をする。図1(b)は、印刷装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。本例において、ヘッド部12は、互いに異なる色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッド102と、複数の紫外線光源104とを有する。また、複数のインクジェットヘッド102として、図1(b)に示すように、インクジェットヘッド102y、インクジェットヘッド102m、インクジェットヘッド102c、インクジェットヘッド102k(以下、インクジェットヘッド102y~kという)、及びインクジェットヘッド102wを有する。この場合、インクジェットヘッド102yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、インクジェットヘッド102wは、白色(ホワイト色、W色)のインクを吐出する。
この場合、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各色のインクを用いることで、様々な色の表現を適切に行うことができる。また、本例において、インクジェットヘッド102y~kは、図中に示すように、副走査方向における位置を揃えて主走査方向へ並べて配設される。また、インクジェットヘッド102y~kは、互いに異なる有色のインクをそれぞれが吐出する複数のカラーインク用ヘッドの一例である。イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各色のインクは、カラー印刷用の基本色であるプロセスカラーの一例である。
また、インクジェットヘッド102wは、副走査方向においてインクジェットヘッド102y~kと隣接する位置において、インクジェットヘッド102y~kと副走査方向における位置が重ならないように、副走査方向の位置をずらして配設される。本例において、インクジェットヘッド102wは、光反射性のインクを吐出する光反射インク用ヘッドの一例である。また、インクジェットヘッド102wが吐出する白色のインクは、光反射性のインクの一例である。
また、本例において、インクジェットヘッド102y~k及びインクジェットヘッド102wは、紫外線の照射に応じて硬化するインクである紫外線硬化型インクを吐出する。複数の紫外線光源104のそれぞれは、インクを硬化させるための紫外線を照射する手段であり、インクジェットヘッド102y~k及びインクジェットヘッド102wに対して主走査方向の一方側及び他方側に配設されることで、主走査動作時において、各インクジェットヘッドから吐出されたインクに紫外線を照射する。紫外線光源104については、例えば、インクを定着させる定着手段等と考えることもできる。
尚、印刷装置10の変形例においては、インクジェットヘッド102y~k及びインクジェットヘッド102wにおいて、紫外線硬化型インク以外のインクを用いること等も考えられる。この場合、印刷装置10は、インクの特性に応じた定着手段を備えることが好ましい。
また、本例において、ヘッド部12としては、例えば、2次元の画像を印刷する公知のインクジェットプリンタにおいて用いられているヘッド部と同一又は同様の構成を用いることが考えられる。この場合、2次元の画像を印刷する公知のインクジェットプリンタにおいて用いられているヘッド部とは、例えば、インクの層を平坦化するための平坦化手段(例えば、ローラ等)を有さずに、インクジェットヘッド102y~k、インクジェットヘッド102w、及び複数の紫外線光源104を有する構成のことである。また、ヘッド部12の構成の変形例において、ヘッド部12は、例えば、平坦化手段等を更に有してもよい。この場合、平坦化手段としては、例えば、インクジェット方式で立体的な造形物の造形を行う公知の造形装置(3Dプリンタ)のヘッド部において用いられている平坦化手段と同一又は同様の構成を用いること等が考えられる。
続いて、媒体50に対する印刷の動作により得られる印刷物について、更に詳しく説明をする。この場合、印刷物とは、所定の印刷の動作を行うことで作成される印刷の成果物のことである。また、本例において、印刷物については、例えば、印刷を行った後の媒体50等と考えることもできる。
また、以下においては、説明の便宜上、本例とは異なる方法で作成した印刷物の例(以下、参考例という)について、説明をする。図2は、印刷物の参考例について説明をする図である。
この参考例については、例えば図1を用いて説明をした印刷装置10における制御部30(図1参照)で行う制御を本例と異ならせた例等と考えることができる。また、この場合も、印刷装置10は、媒体50に対してインクを吐出して、複数のインクの層を重ねて形成することで、隆起した形状を媒体50上に形成する。そして、参考例の場合、制御部30によりインクジェットヘッド102y~k及びインクジェットヘッド102w(図1参照)等の動作を制御することで、印刷装置10は、媒体50上に、積層インク領域300及びカラー層306を形成する。
この場合、積層インク領域300は、媒体50上において複数のインクの層が重なる領域である。積層インク領域300については、例えば、カラー層306の下地となる隆起した領域等と考えることもできる。また、参考例において、積層インク領域300は、4次色領域302及び白色層304を有する。
4次色領域302は、インクジェットヘッド102y~kにより吐出される4色のインク(イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各色のインク)により形成される領域である。また、参考例において、4次色領域302は、隆起した形状を媒体50上に形成するために複数のインクの層を重ねた領域である。4次色領域302については、例えば、積層方向の形状(Z形状)をつくるための領域等と考えることもできる。また、4次色領域302について、例えば、指定された高さHまでインクの層を重ねた領域等と考えることもできる。
白色層304は、インクジェットヘッド102wにより吐出される白色のインクで4次色領域302上に形成される領域である。白色層304の形成時において、制御部30は、インクジェットヘッド102wに白色のインクを吐出させることで、4次色領域302の上面を覆うように、インクジェットヘッド102wに白色層304を形成させる。このように構成した場合、例えば、4次色領域302の上面を白色層304で覆うことで、4次色領域302の色を隠蔽することができる。また、この場合、白色層304について、その上に形成されるカラー層306の背景として機能すると考えることもできる。
カラー層306は、積層インク領域300上においてインクジェットヘッド102y~kにより画像が描かれる領域である。カラー層306の形成時において、制御部30は、印刷すべき画像に応じて設定される吐出位置に対し、インクジェットヘッド102y~kのそれぞれにインクを吐出させる。このように構成すれば、例えば、白色層304上にカラー画像を適切に描くことができる。また、この場合、4次色領域302及び白色層304の上にカラー層306を形成することにより、媒体50の表面から盛り上がった画像を描くことができる。また、参考例において、カラー層306は、必要に応じて、媒体50上において4次色領域302及びカラー層306が形成されていない部分にも形成される。このように構成すれば、例えば、一部分が盛り上がった画像等を媒体50上に描くことができる。参考例によれば、例えば、全体又は一部が盛り上がった画像を媒体50上に適切に描くことができる。
また、参考例のように、4次色領域302を用いて積層方向の形状をつくる場合、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの4色のインクを用いることで、例えば、1色のインクのみを用いて積層方向の形状をつくる場合と比べ、より短時間で積層方向の形状をつくることができる。また、この場合、積層方向の形状を高速につくることが可能になることで、例えば、より高い積層方向の形状をつくること等も可能になる。
より具体的に、4次色領域302を形成する動作において、制御部30は、同じ位置への主走査動作をインクジェットヘッド102y~kに繰り返して行わせることで、多数のインクの層を積層して形成させる。そして、この場合、4個のインクジェットヘッド(インクジェットヘッド102y~k)を用いて4次色領域302を形成することで、所定の高さHまでインクの層を積層するために要する時間について、1個のインクジェットヘッドのみを用いる場合と比べ、大幅に短縮することができる。また、上記においても説明をしたように、インクジェットヘッド102y~kは、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設されている。そして、この場合、各回の主走査動作において、インクジェットヘッド102y~kにより、同じ位置へ適切にインクを吐出することができる。また、その結果、所定の高さの4次色領域302の形成に要する時間について、1個のインクジェットヘッド102のみを用いて同じ高さの積層方向の形状をつくる場合と比べ、例えば1/4程度に短縮することができる。また、この場合、積層方向の形状をつくるのために専用のインクジェットヘッドを用いるのではなく、カラー層306の形成時に必要となるインクジェットヘッド102y~kを用いて4次色領域302の形成を行うことで、印刷装置10が備えるインクジェットヘッドの数が増えること等も防ぐことができる。
ここで、参考例では、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの4色のインクを用いて4次色領域302を形成している。そして、この場合、4次色領域302の色は、濃い黒色になると考えられる。また、この場合、4次色領域302について、例えば、カラー層306に描かれる画像等とは異なり、複数の色のインクの色を混ぜた色で均一に着色がされている領域等と考えることができる。そして、参考例では、上記においても説明をしたように、4次色領域302の上面を白色層304で覆うことで、4次色領域302の色を隠蔽している。しかし、インクのドットが定着する位置については、様々な原因により、誤差が生じる場合がある。この場合、インクのドットが定着する位置とは、着弾したインクにより形成されるインクのドットが定着する位置のことである。そして、この場合、設計上で4次色領域302と同じ範囲に白色層304を形成したとしても、両者の間で位置のずれ(版ずれ)が生じる場合がある。
また、より具体的に、本願の発明者が実際に様々な実験等で確認したところ、参考例のように積層インク領域300及びカラー層306を形成する場合においては、4次色領域302の外縁部の位置と白色層304の外縁部の位置との間にずれが生じること等で、4次色領域302を白色層304で十分に隠蔽できない場合もあった。そして、この場合、画像の視認時に4次色領域302の色が目立ってしまうことで、印刷の品質が低下する場合がある。これに対し、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、参考例とは異なる構成で印刷物を作成することで、このような問題の発生を適切に防ぎ得ることを見出した。以下、本例において作成する印刷物の構成について、詳しく説明をする。
図3は、本例において作成する印刷物について更に詳しく説明をする図である。図3(a)は、印刷物の構成の一例を示す。また、以下に説明をする点を除き、図3において、図1、2と同じ符号を付した構成は、図2における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。また、図3、及び以下において説明をする各図面においては、図示の便宜上、媒体50上に形成するインクの層数について、少なめの場合の例を図示している。しかし、実際の印刷時には、所望の高さに合わせて、より多くのインクの層を重ねることが考えられる。
本例においても、印刷装置10の制御部30(図1参照)によりインクジェットヘッド102y~k及びインクジェットヘッド102w(図1参照)等の動作を制御することで、印刷装置10は、媒体50上に、積層インク領域300及びカラー層306を形成する。しかし、この場合において、積層インク領域300の構成については、図2に示した参考例の場合と異ならせる。
より具体的に、本例において、印刷装置10は、積層インク領域300として、複数の4次色領域302、複数の白色層304、及び複数のカラー層308を含むインクの層を形成する。この場合、それぞれの4次色領域302は、参考例における4次色領域302と同様に、インクジェットヘッド102y~kにより吐出される4色のインクにより形成される領域である。制御部30は、インクジェットヘッド102y~kのそれぞれにインクを吐出させることで、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各色のインクを用いて、インクジェットヘッド102y~kに4次色領域302を形成させる。また、本例において、複数の4次色領域302のそれぞれは、積層インク領域300における有色領域の一例である。この場合、積層インク領域300における有色領域とは、インクジェットヘッド102y~kのうちの少なくとも2個のインクジェットヘッドにインクを吐出させることで形成される有色の領域のことである。
また、本例において、それぞれの4次色領域302は、複数のインクの層を重ねた領域ではなく、一つのインクの層により構成される領域である。この場合、一つのインクの層については、例えば、一つのインクジェットヘッドによる印字濃度が最大で100%になるように主走査動作及び副走査動作を行うことで形成されるインクの層等と考えることができる。印字濃度については、例えば、単位面積に対して単位時間に吐出するインクの濃度等と考えることができる。また、100%の印字濃度については、例えば、印刷の解像度に応じて設定されるそれぞれの吐出位置へ1回のインクの吐出を行う場合の印字濃度等と考えることができる。また、一つのインクの層については、例えば、カラー層306の形成時と同じように主走査動作を行うことで形成されるインクの層等と考えることもできる。この場合、カラー層306の形成時と同じように主走査動作を行うことについては、例えば、同じ位置に対して行う主走査動作の回数がカラー層306の形成時と同じになること等と考えることもできる。また、一つのインクの層については、例えば、印刷の動作の設定として指定されたパス数分の主走査動作を行うことで形成されるインクの層等と考えることもできる。また、本例におけるそれぞれの4次色領域302の形成時において、制御部30は、インクジェットヘッド102y~kのそれぞれに対し、同じ印字濃度でインクを吐出させる。また、より具体的に、それぞれの4次色領域302の形成時において、制御部30は、インクジェットヘッド102y~kのそれぞれに、100%の印字濃度でのインクの吐出を行わせる。
また、本例において、一つの4次色領域302の厚みは、例えば100μm程度になることが考えられる。そして、複数の4次色領域302は、例えば図中に示すように、間に白色層304及びカラー層306を挟んで重なる。また、この構成は、間に少なくとも白色層304を挟んで4次色領域302が重なる構成の一例である。また、積層インク領域300の構成の変形例においては、白色層304を挟んで重なるそれぞれの4次色領域302として、複数のインクの層を形成すること等も考えられる。
複数の白色層304のそれぞれは、参考例における白色層304と同様に、インクジェットヘッド102wにより吐出される白色のインクで形成される領域である。制御部30は、インクジェットヘッド102wにインクを吐出させることで、白色のインクを用いて、印刷装置10に白色層304を形成させる。また、本例において、複数の白色層304のそれぞれは、光反射領域の一例であり、複数の4次色領域302のそれぞれの上に形成される。また、本例において、印刷装置10は、4次色領域302の間に形成されるそれぞれの白色層304としても、一つのインクの層を形成する。
複数のカラー層308のそれぞれは、カラー層306において描かれる画像に合わせた色で着色がされる領域であり、インクジェットヘッド102y~kにより吐出される各色のインクで形成される。制御部30は、インクジェットヘッド102y~kのそれぞれにインクを吐出させることで、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各色のインクを用いて、印刷装置10にカラー層308を形成させる。この場合、画像に合わせた色で着色がされることについては、例えば、4次色領域302のように所定の色で均一に着色されるのではなく、カラー層306における画像の視認時に画像に関連する色として認識される色で着色がされることである。より具体的に、それぞれのカラー層308としては、例えば、カラー層306と同じ画像を示すインクの層を形成することが考えられる。
また、本例において、複数のカラー層308のそれぞれは、積層インク領域300における着色領域の一例であり、積層インク領域300における少なくとも一部の白色層304の上に形成される。また、より具体的に、図中に示すように、本例において、積層インク領域300の上には、カラー層306が形成される。そして、この場合、積層インク領域300の最上部にもカラー層308を形成すると、カラー層306の直下の層が白色層304ではなく、カラー層308になってしまう。そのため、本例においては、積層インク領域300における複数の白色層304のうち、一番上の白色層304以外の上に、カラー層308を形成する。
カラー層306は、参考例におけるカラー層306と同様に、積層インク領域300上においてインクジェットヘッド102y~kにより画像が描かれる領域である。本例において、カラー層306は、画像領域の一例である。制御部30は、インクジェットヘッド102y~kのそれぞれにインクを吐出させることで、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各色のインクを用いて、印刷装置10にカラー層306を形成させる。本例においても、積層インク領域300の上にカラー層306を形成することで、媒体50の表面から盛り上がった画像を描くことができる。
また、本例の場合も、積層インク領域300を形成する動作において、積層インク領域300の一部を構成する4次色領域302の形成時に複数のインクジェットヘッド(インクジェットヘッド102y~k)を用いることで、例えば上記において説明をした参考例と同様に、積層インク領域300の形成に要する時間を適切に短縮することができる。また、この場合、4次色領域302の形成時に同じ時間で積層できるインクの層の高さ(厚み)に着目すれば、1個のインクジェットヘッドのみを用いる場合と比べ、4倍程度になると考えることができる。そのため、本例によれば、例えば、所定の印刷時間内に形成できる積層インク領域300の高さがより高くなると考えることもできる。また、より具体的に、例えば、本例の印刷装置10においてインクの層を重ねる最大高さについては、2.0mm程度以上(例えば、1.5~2.5mm程度)にすること等が考えられる。
また、4次色領域302の形成に要する時間を短縮する点に着目して、そのために必要な特徴をより一般化して考えた場合、本例の特徴について、例えば、インクジェットヘッド102y~kのうちの少なくとも2個を用いて4次色領域302を形成していると考えることもできる。この場合、4次色領域302を形成するために行う各回の主走査動作において、制御部30は、インクジェットヘッド102y~kのうちの少なくとも2個にインクを吐出させることで、1回の主走査動作により吐出されるインクの量の合計について、1個のインクジェットヘッドのみを用いて主走査動作を行う場合よりも多くする。このように構成すれば、例えば、積層インク領域300の形成に要する時間を適切に短縮することができる。また、この場合、図1を用いて上記において説明をしたように、副走査方向における位置を揃えて主走査方向へ並ぶ複数のインクジェットヘッドで4次色領域302を形成することが好ましいと考えることもできる。また、本例においては、インクジェットヘッド102y~kで4次色領域302の形成を行うことで、例えば、印刷装置10が備えるインクジェットヘッドの数が増えること等も防ぐこともできる。
更に、本例においては、例えば、間に白色層304及びカラー層308を挟むように複数の4次色領域302を形成することで、白色層304等により、4次色領域302をより適切に覆うことができる。また、これにより、例えば、カラー層306における画像の視認時に4次色領域302の色の影響が生じることを適切に防ぐことができる。
また、この点に関し、例えば高さの高い積層インク領域300を形成する場合、上記において説明をした参考例のように多数のインクの層により4次色領域302を形成すると、版ずれの問題が生じやすくなると考えられる。より具体的に、インクジェットヘッドを用いて複数のインクの層を重ねて形成する場合、例えば、インクの層の外縁部が他の部分と比べて盛り上がった形状になりやすい。特に、4次色領域302の形成時のように、複数のインクジェットヘッドを用いて多くの量のインクを吐出する場合、インクの特性上、表面張力の影響により、このような盛り上がった形状が形成されやすくなる。また、その結果、4次色領域302の側面の形状がテーパー状になる場合がある。そして、この場合、盛り上がり方が顕著であると、版ずれの原因になることが考えられる。
これに対し、本例においては、積層インク領域300の一部を構成する4次色領域302を形成する毎に、その上に白色層304を形成している。このように構成すれば、例えば、4次色領域302の外縁部に顕著な盛り上がりが生じる前に、白色層304により4次色領域302の上面を適切に覆うことができる。また、この場合、4次色領域302の形成時と比べて少ないインクで形成される白色層304を4次色領域302上に形成することで、その時点での最上面のインクの層について、4次色領域302を形成した直後と異ならせることができる。また、これにより、例えば、多数のインクの層により4次色領域302を形成する場合と比べ、版ずれを生じにくくすることができる。そのため、本例によれば、例えば多くの4次色領域302を含む高い積層インク領域300を形成する場合にも、版ずれ等を生じにくくすることができる。また、これにより、例えば、複数のインクの層を重ねて形成することで隆起した形状を媒体50上に形成する場合において、印刷の動作に要する時間が長くなることをより適切に防ぐことができる。また、本例においては、4次色領域302の間において白色層304上にカラー層308を更に形成することで、例えば、カラー層306における画像の視認時に4次色領域302の色の影響が生じることをより適切に防ぐことができる。
また、上記においても説明をしたように、本例のヘッド部12(図1参照)において、インクジェットヘッド102wは、副走査方向においてインクジェットヘッド102y~kと隣接する位置において、インクジェットヘッド102y~kと副走査方向における位置が重ならないように、副走査方向の位置をずらして配設される。そして、このような構成については、例えば、本例のように4次色領域302と白色層304とを重ねて形成する場合に適した構成等と考えることもできる。
より具体的に、本例において、制御部30は、間に副走査動作を挟んで主走査動作が繰り返して行われるように、主走査駆動部16及び副走査駆動部18(図1参照)を制御する。また、この場合において、インクジェットヘッド102y~kによる主走査動作が行われた後にインクジェットヘッド102wによる主走査動作が行われるように、インクジェットヘッド102y~k及びインクジェットヘッド102wに副走査動作を行わせる。このように構成すれば、例えば、4次色領域302及び白色層304を重ねて形成すべき各位置に対して、4次色領域302を形成するために行う主走査動作及び副走査動作を行う動作の中で、白色層304の形成も適切に行うことができる。また、これにより、例えば、4次色領域302及び白色層304を有する積層インク領域300の形成を適切に行うことができる。また、この場合、制御部30の動作に着目すれば、制御部30は、間に少なくとも白色層304を挟んで4次色領域302が重なるように、複数の4次色領域302及び複数の白色層304を、インクジェットヘッド102y~k及びインクジェットヘッド102wに形成させる。
また、インクの層の外縁部が盛り上がることの影響を低減するためには、例えば図3(b)に示すように、積層インク領域300における複数のインクの層の重なり方について、上側のインクの層が形成される範囲を下側のインクの層が形成されている範囲よりも小さくすること等も考えられる。図3(b)は、印刷装置10を用いて作成する印刷物の変形例を示す図であり、媒体50上に形成されるインクの層の構成の例を示す。
本変形例での積層インク領域300の形成時において、制御部30は、積層インク領域300を構成する複数のインクの層の少なくとも一部の層が形成される範囲について、下のインクの層が形成されている範囲よりも小さくなるように設定する。このように構成すれば、例えば、それぞれのインクの層の外縁部の位置がずれて盛り上がった部分が重ならなくなることで、インクの層の外縁部が盛り上がることの影響を低減することができる。また、この場合、例えば、それぞれのインクの層の外縁部の位置がずれることで、側面部分の質感を向上させること等も可能になる。
また、より具体的に、本変形例においては、図中に示すように、積層インク領域300における複数の4次色領域302のうち、上側の一部の4次色領域302を形成する範囲について、下側の他の4次色領域302よりも狭くしている。また、それぞれの4次色領域302の上に白色層304、カラー層308、カラー層306を形成する範囲について、それぞれの4次色領域302を形成する範囲と同じにしている。このように構成すれば、例えば、一部の4次色領域302を形成する範囲を他の4次色領域302と異ならせた印刷物を適切に作成することができる。
また、この場合、カラー層306やカラー層308に描く画像については、それぞれの層を形成する範囲に合わせて適宜調整を行うことが考えられる。より具体的に、上記においても説明をしたように、積層インク領域300に含まれるそれぞれのカラー層308としては、例えば、積層インク領域300上に形成されるカラー層306と同じ画像を示すインクの層を形成することが考えられる。そして、この場合、範囲の異なるカラー層306やカラー層308については、同じ範囲(共通の範囲)に含まれる画像が同じになるようにすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、一部の4次色領域302を形成する範囲を他の4次色領域302と異ならせる場合において、4次色領域302の間にカラー層308を適切に形成することができる。
また、一部の4次色領域302を形成する範囲を他の4次色領域302と異ならせる構成としては、例えば、縁部が階段状になるように積層インク領域300を形成する構成等を考えることもできる。この場合、縁部が階段状になるとは、例えば、積層インク領域300を構成するそれぞれのインクの層の外縁部の位置について、下の層から上の層へ、段階的に徐々に内側に変化させることである。この場合、例えば、所定の数のインクの層が形成される毎に、外縁部の位置を変化させることが考えられる。
また、印刷物の更なる変形例においては、4次色領域302の間にカラー層308を形成しないこと等も考えられる。図4は、印刷物の更なる変形例を示す図である。以下に説明をする点を除き、図4において、図1~3と同じ符号を付した構成は、図1~3における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
図4(a)は、本変形例において媒体50上に形成されるインクの層の構成を示す。本変形例においても、印刷装置10は、媒体50上に、積層インク領域300及びカラー層306を形成する。また、積層インク領域300として、複数の4次色領域302及び複数の白色層304を含むインクの層を形成する。本変形例での積層インク領域300の構成については、例えば、図3(a)に示した構成における積層インク領域300からカラー層308(図3参照)を除いた構成等と考えることもできる。
本変形例においても、複数の4次色領域302を含む積層インク領域300を形成することで、積層インク領域300の形成に要する時間を適切に短縮することができる。また、この場合において、例えば、多数のインクの層により4次色領域302を形成するのではなく、積層インク領域300の一部を構成する4次色領域302を形成する毎にその上に白色層304を形成することで、多数のインクの層により4次色領域302を形成する場合と比べ、版ずれを生じにくくすることができる。そのため、本変形例においても、例えば、複数のインクの層を重ねて形成することで隆起した形状を媒体50上に形成する場合において、印刷の動作に要する時間が長くなることをより適切に防ぐことができる。
また、4次色領域302の間にカラー層308を形成しない場合においても、例えば図4(b)に示すように、積層インク領域300における複数のインクの層の重なり方について、上側のインクの層が形成される範囲を下側のインクの層が形成されている範囲よりも小さくしてもよい。図4(b)は、印刷物の更なる変形例において媒体50上に形成されるインクの層の構成を示す。
本変形例における積層インク領域300については、例えば、図3(b)に示した構成における積層インク領域300からカラー層308を除いた構成等と考えることができる。また、この場合、積層インク領域300の上に形成するカラー層306については、積層インク領域300において最も上に形成される4次色領域302(最上部の4次色領域302)よりも広い範囲に形成することが考えられる。また、この場合、カラー層306について、最上部の4次色領域302及び白色層304以外も覆うように形成すると考えることもできる。より具体的に、この場合、カラー層306については、例えば、積層インク領域300において最も広い範囲に形成される4次色領域302(例えば、一番下の4次色領域302)と同じ範囲に形成することが考えられる。
このように構成した場合、例えば、図中に破線で示すように、積層インク領域300において最上部の4次色領域302よりも外側にある部分に対しても、インクジェットヘッド102y~k(図1参照)から吐出するインクを付着させることができる。カラー層306を形成する範囲を広くすることについては、後に更に詳しく説明をする。また、印刷に求められる品質等によっては、カラー層306を形成する範囲について、最上部の4次色領域302を形成する範囲と同じにしてもよい。
続いて、カラー層306を形成する範囲について、更に詳しく説明をする。図5は、カラー層306を形成する範囲について説明をする図であり、間に4次色領域302のみを挟んで4次色領域302を重ねる構成で積層インク領域300を形成する場合について、積層インク領域300の上にカラー層306を形成する範囲の例を示す。また、以下において説明をする点を除き、図5において、図1~4と同じ符号を付した構成は、図1~4における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
図5(a)は、印刷物の更なる変形例において媒体50上に形成されるインクの層の構成を示す。図5(b)は、積層インク領域300及びカラー層306の形成時にインクの層を形成する範囲の例を示す図であり、図5(a)に示すように積層インク領域300及びカラー層306を形成する場合について、インクの層を形成する範囲の例を示す。この場合、インクの層を形成する範囲については、例えば、インクの層を形成するために用いるインクジェットヘッドでインクを吐出する範囲等と考えることもできる。また、図5(b)については、例えば、積層インク領域300を構成する複数の4次色領域302及び複数の白色層304を個別に示し、カラー層306について、直下の4次色領域302及び白色層304以外の位置へインクを吐出する部分も含めて示す図等と考えることもできる。
本変形例において、積層インク領域300は、図5(a)に示すように、縁部が階段状になるように形成される。この場合、積層インク領域300における複数の4次色領域302のそれぞれを形成する範囲については、図5(b)に示すように、積層方向の上側に行くほど狭くなるように設定することが考えられる。また、積層インク領域300における複数の白色層304のそれぞれを形成する範囲については、直下の4次色領域302を形成する範囲と同じに設定することが考えられる。
これに対し、図4に示した構成に関連して上記においても説明をしたように、カラー層306については、最上部の4次色領域302及び白色層304以外も覆うように形成することが考えられる。そして、この場合、カラー層306に対応するインクの層を形成する範囲は、図5(b)に示すように、最上部の4次色領域302及び白色層304に対応するインクの層を形成する範囲よりも広くなる。また、より具体的に、本変形例において、カラー層306に対応するインクの層を形成する範囲は、最も広い4次色領域302である一番下の4次色領域302を形成する範囲と同じになっている。
このように構成すれば、例えば、図5(a)に破線で示すように、積層インク領域300において最上部の4次色領域302よりも外側にある部分に対しても、インクジェットヘッド102y~k(図1参照)から吐出するインクを付着させることができる。また、これにより、例えば、白色層304の色がカラー層306の周囲において過度に目立つこと等を適切に防ぎ、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。
また、印刷物の更なる変形例においては、例えば、積層インク領域300における一番上の白色層304(カラー層306の直下の白色層304)を形成する範囲についても、カラー層306と同様の広い範囲にすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、積層インク領域300における複数の4次色領域302の側面等に白色のインクを付着させることができる。また、これにより、例えば、4次色領域302の色をより適切に隠蔽することができる。
続いて、上記において説明をした各構成に関する補足説明等を行う。図2~図5においては、図示の便宜上、積層インク領域300について、上面が平坦になる形状の積層インク領域300を図示している。しかし、積層インク領域300としては、例えば図6に示すように、位置によって高さが異なる形状に形成することも考えられる。
図6は、積層インク領域300の形状について更に詳しく説明をする図である。図6(a)は、4次色領域302の間に白色層304及びカラー層308を形成する場合について、位置によって高さが異なる形状の積層インク領域300を備える印刷物の例を示す。図6(b)は、4次色領域302の間に白色層304のみを形成する場合について、位置によって高さが異なる形状の積層インク領域300を備える印刷物の例を示す。
これらの場合、積層インク領域300について、例えば、媒体50の位置によって高さが異なる領域等と考えることもできる。また、積層インク領域300について、例えば、凹凸状に隆起する領域等と考えることもできる。このような積層インク領域300を形成する場合にも、4次色領域302の間に白色層304等を形成することで、版ずれを生じにくくすることができる。
また、この場合、カラー層306を形成する範囲については、4次色領域302の間にカラー層308を形成するか否かに合わせて、適宜設定することが考えられる。より具体的に、4次色領域302の間に白色層304及びカラー層308を形成する場合、例えば、図6(a)に示すように、積層インク領域300の全体の中で最も高い位置に形成される4次色領域302を最上部の4次色領域302と考えて、最上部以外の4次色領域302の上には白色層304及びカラー層308を形成し、最上部の4次色領域302の上には、白色層304及びカラー層306を形成することが考えられる。
これに対し、4次色領域302の間に白色層304のみを形成する場合、例えば、図6(b)に示すように、積層方向と直交する面内の位置毎に最上部の4次色領域302を考えて、その上に白色層304及びカラー層306を形成することが考えられる。また、この場合、例えば図5(b)を用いて上記において説明をしたように、カラー層306に対応するインクの層を形成する範囲を一番下の4次色領域302を形成する範囲と同じにすることで、位置毎での最上部の4次色領域302の上にカラー層306を形成することが考えられる。
また、上記においては、4次色領域302について、主に、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの4色のインクを用いて4次色領域302を形成する場合について、説明をした。この場合、インクジェットヘッド102y~kについて、例えば、カラー層306の形成に用いる少なくとも2個のインクジェットヘッドの一例と考えることができる。また、4次色領域302の形成の仕方の変形例においては、これらの4色以外のインクを更に用いて4次色領域302を形成してもよい。この場合、例えば、白色のインクを更に用いて4次色領域302を形成すること等が考えられる。また、上記においても説明をしたように、4次色領域302の形成時においては、必ずしもイエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの4色の全ての色のインクを用いずに、一部の色のインクのみを用いてもよい。この場合も、例えば2色以上のインクを用いて4次色領域302の形成を行うことで、積層インク領域300の形成を短時間で適切に行うことができる。