本発明の電子写真用白色トナーは、所定量の酸化チタン粒子を含有し、結着樹脂がポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを有する複合樹脂を含有している点に大きな特徴を有しており、白色トナー画像とカラートナー画像がともに未定着の状態で積層し、熱定着させて画像を形成しても、白色トナーとカラートナーとの混色を抑制することができる。
白色トナーとカラートナーとの混色によるカラートナー画像の発色性の低下は、シアントナーやイエロートナー等のカラートナーの発色の原理と白色トナーとでは、発色の原理が異なることによる。
例えば、シアントナーの発色の原理は、シアン顔料がシアン色の元となる光の波長以外を吸収し、シアン色の元となる波長の光を透過又は反射することで発色する。そのため、カラートナー同士の場合は、上記原理から混色しても問題ない。
一方、白色トナーの発色の原理は、白顔料ですべての波長(可視光)の光を屈折・反射・散乱させることで白色を発色している。
従って、カラートナーと白色トナーが混色した場合は、白色トナーの部分ですべての波長が屈折・反射・散乱されてしまいカラートナーの発色性が低下し、白色顔料の含有量が多いほど、発色性の低下が顕著になる。
この課題に対して、白色トナーが複合樹脂を含む場合に混色が改善される理由の詳細は不明なるも、以下のように推察される。
白色トナーの帯電性や流動性が不均一である場合は、流動性が高い粒子や帯電性が低い粒子は外力に弱く、白色トナー画像から脱離して混色の原因となると考えられる。これに対し、複合樹脂を含むトナーでは、白色顔料である酸化チタンの分散が良好になるため、トナー1個1個の均一性が高まる。その結果、外添剤が白色トナー表面に均一に付着し、トナー1個1個の流動性、帯電性が均一になる。このような均一性の高いトナーにより、帯電性や流動性が均一な粒子により形成された記録媒体上の白色トナーの未定着画像は、均一性が高く各粒子が外力(色重ね時の外力)により飛び散ったり脱離したりし難くなるため、カラートナーと白色トナーとの混色が抑制されたものと考えられる。
本発明の白色トナーは、前記の如く、結着樹脂として、ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを有する複合樹脂を含有する。複合樹脂は、非晶質複合樹脂、結晶性複合樹脂のいずれであってよく、両者が併用されていてもよい。本発明では、低温定着性及び耐熱保存性の観点から、非晶質複合樹脂を含むことが好ましい。
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最大ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最大ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である一方、非晶質樹脂は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最大ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
ポリエステル樹脂は、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
アルコール成分としては、例えば、脂肪族ジオール、好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは炭素数2以上15以下の脂肪族ジオールや、式(I):
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、グリセリン等が挙げられる。
非晶質複合樹脂のアルコール成分としては、低温定着性及び耐熱保存性の観点から、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、非晶質複合樹脂のアルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
結晶性複合樹脂のアルコール成分としては、脂肪族ジオールが好ましい。脂肪族ジオールとしては、複合樹脂の結晶性を高め、低温定着性を向上させる観点から、α,ω-直鎖アルカンジオールが好ましく、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール等が挙げられる。これらの中では、1,10-デカンジオール及び1,12-ドデカンジオールから選ばれた1種又は2種がより好ましく、1,10-デカンジオールがさらに好ましい。
結晶性複合樹脂のアルコール成分に含まれる脂肪族ジオールの炭素数は、耐熱保存性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは9以上、さらに好ましくは10以上であり、そして、低温定着性及び顔料分散性の観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジオールの含有量は、樹脂の結晶性を高め、低温定着性を向上させる観点から、結晶性複合樹脂のアルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
カルボン酸成分において、2価のカルボン酸系化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、炭素数が1以上30以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。なお、カルボン酸系化合物とは、カルボン酸、その無水物及びその炭素数が1以上3以下のアルキルエステルを指す。
3価以上のカルボン酸系化合物としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、又はそれらの酸無水物等が挙げられる。
非晶質複合樹脂のカルボン酸成分は、帯電安定性の観点から、芳香族ジカルボン酸系化合物を含むことが好ましい。芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、非晶質複合樹脂のカルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは25モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上であり、そして、100モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。
3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、非晶質複合樹脂のカルボン酸成分中、低温定着性及び耐高温オフセット性の観点から、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは8モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下である。
結晶性複合樹脂のカルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸系化合物を含むことが好ましい。
結晶性複合樹脂のカルボン酸成分に含まれる脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数は、低温定着性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは10以上であり、そして、耐久性の観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下であり、10が特に好ましい。
脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、樹脂の結晶性を高め、低温定着性を向上させる観点から、結晶性複合樹脂のカルボン酸成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、ポリエステル樹脂の分子量及び軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
ポリエステル樹脂におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下である。
ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
スチレン系樹脂は、少なくとも、スチレン、又はα-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン化合物」という)を含む原料モノマーの付加重合体である。
非晶質複合樹脂においては、スチレン化合物、好ましくはスチレンの含有量は、スチレン樹脂の原料モノマー中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。また、結晶性複合樹脂においては、スチレン化合物、好ましくはスチレンの含有量は、スチレン樹脂の原料モノマー中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
非晶質複合樹脂のスチレン系樹脂は、原料モノマーとしてアルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。なお、本明細書において、「(イソ)」は、この基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両者を示す。
スチレン系樹脂の原料モノマーとしての(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、そして、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数をいう。
アルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、非晶質複合樹脂のスチレン系樹脂の原料モノマー中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
スチレン系樹脂の原料モノマーには、スチレン化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の原料モノマー、例えば、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が含まれていてもよい。
スチレン系樹脂の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、重合禁止剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で行うことができるが、温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
本発明において、複合樹脂は、低温定着性及び顔料分散性の観点から、ポリエステル樹脂の原料モノマー及びスチレン系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマーを介してポリエステル樹脂とスチレン系樹脂が化学結合した樹脂が好ましい。
両反応性モノマーは、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシ基、より好ましくはカルボキシ基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がより好ましく、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がさらに好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸系化合物は、ポリエステル樹脂の原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、ポリエステル樹脂の原料モノマーである。
両反応性モノマーの使用量は、ポリエステル樹脂のアルコール成分の合計100モルに対して、スチレン系樹脂とポリエステル樹脂との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30モル以下、より好ましくは20モル以下、さらに好ましくは10モル以下である。
また、両反応性モノマーの使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計100質量部に対して、スチレン系樹脂とポリエステル樹脂との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。ここで、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計に重合開始剤は含める。
両反応性モノマーを用いて得られる複合樹脂は、具体的には、以下の方法により製造することが好ましい。両反応性モノマーは、トナーの耐久性を向上させる観点、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、スチレン系樹脂の原料モノマーとともに付加重合反応に用いることが好ましい。
(i) ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)の後に、スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上のポリエステル樹脂の原料モノマー等を反応系に添加し、工程(A)の重縮合反応や両反応性モノマーとの反応をさらに進めてもよい。
(ii) スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)を行う方法
(iii) ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)とスチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを、並行して進行する条件で反応を行う方法
上記(i)の方法においては、重縮合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した重縮合系樹脂を用いてもよい。上記(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して進行する際には、ポリエステル樹脂の原料モノマーを含有した混合物中に、スチレン系樹脂の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
上記(i)~(iii)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
複合樹脂におけるスチレン系樹脂とポリエステル樹脂の質量比(スチレン系樹脂/ポリエステル樹脂)は、顔料分散性及び耐熱保存性の観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上であり、そして、低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましくは45/55以下、より好ましくは40/60以下、さらに好ましくは35/65以下、さらに好ましくは30/70以下、さらに好ましくは25/75以下である。なお、上記の計算において、ポリエステル樹脂の質量は、用いられるポリエステル樹脂の原料モノマーと両反応性モノマーの合計量である。また、スチレン系樹脂の量は、スチレン系樹脂の原料モノマーと重合開始剤の合計量である。
非晶質複合樹脂の軟化点は、耐久性の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは155℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
非晶質複合樹脂のガラス転移温度は、耐久性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは65℃以下である。
非晶質複合樹脂の酸価は、帯電性の観点から、好ましく1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、さらに好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、環境安定性の観点から、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、さらに好ましくは30mgKOH/g以下である。
結晶性複合樹脂の軟化点は、耐久性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは75℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは85℃以下である。
結晶性複合樹脂の融点は、耐久性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは75℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは85℃以下である。
結晶性複合樹脂の酸価は、帯電性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、さらに好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、環境安定性の観点から、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下、さらに好ましくは10mgKOH/g以下である。
非晶質複合樹脂と結晶性複合樹脂を含む場合の、非晶質複合樹脂と結晶性複合樹脂の質量比(非晶質複合樹脂/結晶性複合樹脂)は、耐久性の観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、さらに好ましくは70/30以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは99/1以下、より好ましくは95/5以下、さらに好ましくは90/10以下である。
複合樹脂の含有量は、結着樹脂中、25質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
結着樹脂には、非晶質複合樹脂及び結晶性複合樹脂以外の樹脂が本発明の効果を損なわない範囲で含有されていてもよく、他の樹脂としては、非晶質ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
なお、結着樹脂中に結晶性樹脂を含む場合、顔料分散性の観点から、結晶性樹脂の含有量は、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。ここで、結晶性樹脂としては、前記複合樹脂のうち結晶性であるもの(結晶性複合樹脂)や、結晶性ポリエステル樹脂等が挙げられる。
結着樹脂の含有量は、トナー中、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、そして、好ましくは65質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
本発明の白色トナーは、白色トナーの白色濃度を向上させる観点から、着色剤として酸化チタン粒子を含有する。酸化チタンの含有量は、着色剤中、90質量%以上が好ましく、着色剤として、酸化チタン粒子のみを用いることがより好ましいが、白色発色性の効果が損なわれない範囲において、酸化チタン粒子以外の他の着色剤が含有されていてもよい。他の着色剤としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、中空樹脂粒子等が挙げられる。
酸化チタン粒子は、アナターゼ型、ルチル型、ブルカイト型のいずれの結晶型のものも使用できる。
酸化チタン粒子の個数平均一次粒子径は、白色トナーの白色濃度を向上させる観点、及び隠蔽性を向上させる観点から、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上、さらに好ましくは230nm以上である。また、トナーの生産性を向上させる観点、及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは270nm以下である。
酸化チタン粒子の市販品としては、「CR-50-2」「CR-58」(以上、石原産業社製)等が挙げられる。
酸化チタン粒子の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、50質量部以上であり、好ましくは75質量部以上、より好ましくは100質量部以上であり、そして、顔料分散性の観点から、200質量部以下であり、好ましくは175質量部以下、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは125質量部以下である。
本発明の白色トナーには、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよい。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」、「FCA-201-PS」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、高分子タイプ、例えば「FCA-2521NJ」(藤倉化成(株)製)等;含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。ただし、荷電制御剤が、高分子タイプの場合は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは7.5質量部以下である。
本発明の白色トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、酸化チタン粒子、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
本発明では、顔料分散性の観点から、結着樹脂や酸化チタン粒子とともに、シリカ粒子を混合して製造することが好ましい。従って、本発明の白色トナーは、
工程1:結着樹脂と酸化チタン粒子とシリカ粒子とを含む成分を混合して混合物を得る工程、
工程2:得られた混合物を溶融混練して混練物を得る工程、及び
工程3:得られた混練物を粉砕し、分級する工程
を含む方法により、製造することが好ましい。
工程1で用いるシリカ粒子は、白色トナーの生産性を向上させる観点から、疎水化処理された疎水性シリカ粒子であるのが好ましい。
シリカ粒子の疎水化処理剤としては、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノジシラザン、環状オルガノポリシラザン、線状オルガノポリシロキサン等が例示され、具体的には、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
工程1で用いるシリカ粒子の個数平均一次粒子径は、白色トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは8nm以上、さらに好ましくは12nm以上であり、そして、トナーの生産性を向上させる観点、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及び転写抜けの発生を抑制する観点から、好ましくは20nm以下、より好ましくは18nm以下、さらに好ましくは16nm以下である。
工程1で用いるシリカ粒子の使用量、好ましくはトナー中の含有量は、白色トナーの生産性を向上させる観点、結着樹脂100質量部に対して、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及び転写抜けの発生を抑制する観点から、好ましくは0.25質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.6質量部以上、さらに好ましくは0.8質量部以上であり、そして、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及び転写抜けの発生を抑制する観点から、好ましくは4.5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
工程1は、結着樹脂と酸化チタン粒子とシリカ粒子とを含む成分を混合して混合物を得る工程である。工程1において、結着樹脂と酸化チタン粒子とシリカ粒子の混合(予備混合)に用いられる混合機としては、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル等が挙げられるが、分散性向上の観点から、ヘンシェルミキサーが好ましい。
ヘンシェルミキサーでのトナー原料の混合は、攪拌の周速、及び混合時間を調整することで行う。攪拌の周速は、着色剤や荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点から、10~30m/sが好ましい。また、攪拌時間は、着色剤や荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点から、1~10分が好ましい。
工程2は、工程1で得られた混合物を溶融混練する工程である。溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができるが、二軸混練機で行うのが好ましい。二軸混練機とは、二本の混練軸をバレルが覆い隠す閉鎖型の混練機であり、着色剤や荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点から、軸の回転方向が同方向に回転できるタイプが好ましい。市販品としては、生産性を向上させる観点から高速での二軸の噛み合わせが良好な、池貝鉄工社製の二軸押出機PCMシリーズが好ましい。
二軸混練機での溶融混練は、バレル設定温度(押出機内部壁面の温度)、軸の回転の周速、及びトナー原料混合物の供給速度を調整することで行う。バレル設定温度は、着色剤や荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点から、80~140℃が好ましく、90~120℃がより好ましい。
軸の回転の周速は、着色剤や荷電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点から0.1~1m/sが好ましい。
二軸混練機へのトナー原料混合物の供給速度は、使用する混練機の許容能力と、上記のバレル設定温度及び軸回転数に応じて適宜調整する。例えば、池貝鉄工社製の二軸押出機PCM-87を使用する場合、二軸混練機へのトナー原料混合物の供給速度は、100~200kg/hが好ましい。
工程3は、工程2で得られた溶融混練物を粉砕し、分級する工程である。
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混練物を、0.1~5mm程度に粗粉砕した後、さらに微粉砕してもよい。
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられるが、ハンマーミル等を用いてもよい。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式カウンタージェットミル、衝突板式ジェットミル、機械式ミル等が挙げられる。
分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程とを繰り返してもよい。
工程3で得られるトナーの体積中位粒径(D50)は、トナーの画像品質を向上させる観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
本発明のトナーは、転写性を向上させる観点から、工程3で得られるトナー粒子を母粒子として、さらに外添剤と混合する工程を含む方法により得られるものが好ましい。なお、本発明において、トナー中の含有量とは、トナー母粒子中の含有量を意味する。
外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、及び酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられる。これらの中では、シリカが好ましい。
外添剤として使用するシリカは、トナーの転写性を向上させる観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
外添剤の個数平均一次粒子径は、トナーの帯電性や流動性、及び転写性を向上させる観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、及び転写性を向上させる観点から、外添剤で処理する前のトナー母粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは4質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以下である。
トナー母粒子と外添剤との混合には、回転羽根等の攪拌具を備えた混合機を用いることが好ましく、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速混合機が好ましく、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
本発明の白色トナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
本発明では、さらに、本発明の白色トナー及びカラートナーを用いる画像形成方法を提供する。具体的には、記録媒体上で、未定着の白色トナー画像上にカラートナー画像を未定着の状態で積層した後、熱定着させる工程を含む、画像形成方法である。
記録媒体としては、特に制限されず、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙や、アート紙、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販されている和紙、はがき用紙、合成紙、フィルム、布等が挙げられる。
記録媒体の色は、視認性の観点から白色の背景(ベース層)が必要とされる色、具体的には無色透明及び白色以外の色であることが好ましい。
画像形成方法は、熱定着工程を有し、電子写真法により画像形成する方法であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、感光体を帯電させる帯電工程、感光体を露光する露光工程、感光体上に形成された静電潜像に、トナー粒子を付着させてトナー像を形成させる現像工程、形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写工程、及び転写されたトナー像を記録媒体に熱定着させる定着工程を含む方法が挙げられる。
熱定着工程は、接触加熱方式が好ましい。接触加熱方式としては、特に熱圧定着方式、さらには熱ローラ定着方式及び固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式等を挙げることができる。
熱ロール定着方式の定着方法においては、通常、表面にフッ素樹脂等が被覆された鉄やアルミニウム等からなる金属シリンダー内部に熱源が備えられた上ローラと、シリコーンゴム等で形成された下ローラとから構成された定着装置等が用いられる。上ローラ及び下ローラ間には圧力が加えられており、この圧力によって下ローラが変形されることにより、この変形部にいわゆるニップが形成される。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1.5gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最大ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し測定する。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、DSC Q20)を用いて昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し、そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最大ピーク温度を離型剤の融点とする。
〔酸化チタン粒子、シリカ粒子及び外添剤の個数平均一次粒子径〕
個数平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影倍率5000~50000倍の適切な倍率で、粒径(長径と短径の平均値)を100個の粒子について測定し、それらの平均値を酸化チタン粒子、シリカ粒子及び外添剤の個数平均一次粒子径とする。
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
樹脂製造例1
表1に示すフマル酸及び無水トリメリット酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸1gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃にて8時間反応を行った後、8.3kPaにて1時間反応させた。170℃に降温し、スチレン系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。170℃に保持したまま1時間付加重合反応を熟成させた後、210℃に昇温し、8.3kPaにて1時間スチレン系樹脂の原料モノマーの除去及び両反応性モノマーとポリエステル部位の反応を行った。さらに、210℃にて、無水トリメリット酸、フマル酸及びターシャリブチルカテコール5gを添加し、所望の軟化点に達するまで反応を行い、非晶質複合樹脂(樹脂A)を得た。
樹脂製造例2
表1に示すフマル酸及び無水トリメリット酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸1gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃にて8時間反応を行った。反応後、8.3kPaにて1時間反応させた。さらに、210℃に降温して、無水トリメリット酸、フマル酸及びターシャリブチルカテコール5gを添加し、所望の軟化点に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂B)を得た。
樹脂製造例3
表2に示すセバシン酸以外のポリエステル樹脂の原料モノマーを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、120℃に加熱した。120℃にて、表2に示すセバシン酸のうち1500gを添加し、さらに160℃まで加熱し、6時間反応させた。その後、表2に示すスチレン系樹脂の原料モノマー、重合開始剤及び両反応性モノマーを滴下ロートにより1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間付加重合反応を熟成させた後、8.3kPaにて1時間スチレン系樹脂の原料モノマーの除去を行った。さらに、残りのセバシン酸を添加し、200℃まで8時間かけて昇温、8.3kPaにて30分反応させた。さらに、2-エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを添加し、200℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて、結晶性複合樹脂(樹脂C)を得た。
樹脂製造例4
表2に示すポリエステル樹脂の原料モノマーを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、140℃に加熱した。さらに200℃まで加熱し、10時間反応させた後、8.3kPaにて30分反応させた。さらに、2-エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを添加し、200℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂D)を得た
実施例1~5、比較例1及び参考例1
表3に示す結着樹脂(合計100質量部)及び酸化チタン粒子「CR-50-2」(石原産業社製、個数平均一次粒子径:250nm)と、荷電制御剤「FCA-2521NJ」(藤倉化成社製)5質量部、離型剤「HNP-9」(日本精蝋社製、パラフィンワックス、融点:79℃)1.5質量部、及び疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル社製、個数平均一次粒子径:16nm)2質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間予備混合した後、二軸押出機「PCM-87」(池貝鉄工社製)を用いて溶融混練した。溶融混練の条件は、原料のフィード量2.5kg/min(150kg/h)、バレル設定温度 100℃、スクリュー混練部 軸回転数 180r/min(軸の回転の周速 0.30m/sec)であった。得られた混練物を冷却ロールで圧延しながら20℃以下に冷却し、冷却された溶融混練物をロートプレックス(東亜機械社製)で3mmに粗粉砕した。得られた粗砕物を、カッターミル(奈良機械製作所社製)を用いて体積中位粒径(D50)が1.5~2.5mmに粗粉砕した後、衝突板式ジェットミル「I-20型」(日本ニューマチック工業社製)で微粉砕した。
さらに、得られた粉砕物を気流式分級機「DSF型」(日本ニューマチック工業社製)で分級を行い、体積中位粒径(D50)が7.0μmのトナー母粒子を得た。
得られたトナー母粒子100質量部と、外添剤として疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:DMDS、個数平均一次粒子径:16nm)1.0質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:シリコーンオイル、個数平均一次粒子径:40nm)1.5質量部を添加しヘンシェルミキサーにて3分間混合して、白色トナーを得た。
さらに、実施例1において、酸化チタン粒子の代わりにシアン顔料「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアンブルー)5質量部を使用した以外は同様にして、シアントナーを得た。得られたシアントナーを各実施例及び比較例の白色トナーと組み合わせて後述の試験例に使用した。
試験例〔HH環境下での耐混色性〕
非磁性一成分現像装置「COREFIDO C712dnw」(沖データ(株)製)に白色トナーを実装し、HH環境(温度30℃/湿度80%)に24時間放置後、5%印字率で1000枚印字を行った。その後、2cm×3cmのベタ画像部(トナー付着量:1.5mg/cm2)を有する未定着の画像を90kg紙(紀州色上質紙、厚口、黒)上に得た。さらに、「COREFIDO C712dnw」(沖データ(株)製)の定着器を定着速度100mm/secの外部定着器に改造し、定着温度を170℃に設定し未定着画像を定着させた。
その定着画像上に、HH環境(温度30℃/湿度80%)に24時間放置後、5%印字率で1000枚印字を行ったシアントナーを用いて、2cm×3cmのベタ画像部(トナー付着量:1.0mg/cm2)を有するシアントナー画像を前記白色トナーの定着画像上に積層した。さらに、改造した前記定着器で定着温度を170℃に設定し、未定着のシアントナー画像を定着させた。この白色トナー画像上にシアントナー画像を印刷したサンプルは、白色トナー画像の定着後にシアントナーを定着しており、混色が無いため、基準Aとした。
次に、非磁性一成分現像装置「COREFIDO C712dnw」(沖データ(株)製)に白色トナーを実装し、HH環境(温度30℃/湿度80%)に24時間放置後、5%印字率で1000枚印字を行った。その後、2cm×3cmのベタ画像部(トナー付着量:1.5mg/cm2)を有する未定着の画像を90kg紙(紀州色上質紙、厚口、黒)上に得た。この白色トナーの未定着画像上に、HH環境(温度30℃/湿度80%)に24時間放置後、5%印字率で1000枚印字を行ったシアントナーを用いて、2cm×3cmのベタ画像部(トナー付着量:1.0mg/cm2)を有するシアントナー画像を積層した。さらに、改造した前記定着器で定着温度を170℃に設定し、未定着の白色トナー画像上にシアントナー画像を未定着の状態で積層した画像を定着させた。
この白色トナー上にシアントナー画像を印刷したサンプルと基準Aとの色差(ΔE)を測定し、耐混色性を評価した。色差が小さいほど、耐混色性に優れることを示す。結果を表3に示す。
以上の結果より、複合樹脂の含有量が少なすぎる比較例1の白色トナーと対比して、実施例1~5の白色トナーは、未定着の状態でカラートナー画像を積層し、熱定着しても、混色が抑制されることが分かる。なかでも、実施例1、4、5の対比から、結晶性樹脂の含有量を低減することにより、顕著に耐混色性が向上することが分かる。
また、参考例1の結果より、白色カラートナーとカラートナーとの混色は、酸化チタン粒子の含有量が少ない場合には認識されず、酸化チタン粒子の含有量が多い場合に特有の認識される課題であることが分かる。