JP7239314B2 - 樹脂積層体並びに該樹脂積層体を含む透明基板材料及び透明保護材料 - Google Patents
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Description
<1> ポリカーボネート樹脂を主成分とするポリカーボネート系樹脂(A)シートの少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂(B)を含む層が積層されてなる樹脂積層体であって、
前記熱可塑性樹脂(B)が、ビニル芳香族単量体単位を50~75質量%、環状酸無水物単量体単位を5~30質量%、及びメタクリル酸エステル単量体単位を5~35質量%含む共重合体(b1)と、アクリル樹脂(b2)とを含み、
前記共重合体(b1)が、厚さ100μmの該共重合体(b1)からなる単層フィルムとした場合に、0.25mmφ以上0.60mmφ未満のサイズの歪み欠陥を有する外観不良原因透明物の数が20個未満/0.25m2、且つ、0.60mmφ以上のサイズの歪み欠陥を有する外観不良原因透明物の数が10個未満/0.25m2を満たす、前記樹脂積層体である。
<2> 前記熱可塑性樹脂(B)における共重合体(b1)と、アクリル樹脂(b2)との含有量の合計100質量部を基準として、共重合体(b1)の含有量が5~95質量部であり、アクリル樹脂(b2)の含有量が95~5質量部である、上記<1>に記載の樹脂積層体である。
<3> 前記熱可塑性樹脂(B)が、共重合体(b1)と、アクリル樹脂(b2)とのポリマーアロイである、上記<1>または<2>に記載の樹脂積層体である。
<4> 前記共重合体(b1)に含まれるビニル芳香族単量体単位が、スチレンである、上記<1>~<3>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<5> 前記共重合体(b1)に含まれるメタクリル酸エステル単量体単位が、メタクリル酸エステルである、上記<1>~<4>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<6> 前記共重合体(b1)に含まれる環状酸無水物単量体単位が、無水マレイン酸である、上記<1>~<5>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<7> 前記熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚さが10~250μmであり、前記樹脂積層体の全体厚みが0.05~3.5mmの範囲である、上記<1>~<6>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<8> 前記樹脂積層体の全体厚みに対する前記熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚みの割合が30%未満である、上記<1>~<7>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<9> 前記共重合体(b1)の重量平均分子量(Mw)が5万~30万である、上記<1>~<8>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<10> 前記ポリカーボネート系樹脂(A)シートを構成するポリカーボネート系樹脂(A)の重量平均分子量が15,000~75,000である、上記<1>~<9>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<11> 前記熱可塑性樹脂(B)を含む層および前記ポリカーボネート系樹脂(A)シートの少なくとも一方が紫外線吸収剤を含有する、上記<1>~<10>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<12> 前記熱可塑性樹脂(B)を含む層の表面にハードコート層をさらに備える、上記<1>~<11>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<13> 前記樹脂積層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理および防汚処理のいずれか一つ以上が施されてなる、上記<1>~<12>のいずれかに記載の樹脂積層体である。
<14> 上記<1>~<13>のいずれかに記載の樹脂積層体を含む透明基板材料である。
<15> 上記<1>~<13>のいずれかに記載の樹脂積層体を含む透明保護材料である。
<16> 上記<1>~<13>のいずれかに記載の樹脂積層体を含むタッチパネル前面保護板である。
<17> 上記<1>~<13>のいずれかに記載の樹脂積層体を含む、OA機器用または携帯電子機器用の前面板である。
本発明におけるポリカーボネート系樹脂(A)シートに使用されるポリカーボネート系樹脂(A)は、ポリカーボネート樹脂を主成分とするポリカーボネート系樹脂(A)である。ここで、「ポリカーボネート樹脂を主成分とする」とは、ポリカーボネート樹脂の含有量が50質量%を超えることを意味する。ポリカーボネート系樹脂(A)は、75質量%以上のポリカーボネート樹脂を含んでいるのが好ましく、90質量%以上のポリカーボネート樹脂を含んでいるのがより好ましく、実質的にポリカーボネート樹脂からなるのがさらに好ましい。ポリカーボネート系樹脂(A)は分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む。即ち、-[O-R-OCO]-単位(式中、Rが脂肪族基、芳香族基、又は脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つものを示す)を含むものであれば特に限定されるものではないが、特に下記式[1]の構造単位を含むポリカーボネートを使用することが好ましい。このようなポリカーボネートを使用することで、耐衝撃性に優れた樹脂積層体を得ることができる。
近年、前面板にも曲げ加工を行うような要望が増えていることから、ポリカーボネート系樹脂(A)は、下記一般式[2]で表わされる1価フェノールを末端停止剤として用いて合成することが好ましい。
R2~R5はそれぞれ水素、ハロゲン、又は置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基若しくは炭素数6~12のアリール基を表し、置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基である。)
一例として、R1の炭素数が36以下であれば、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性が高く、経済性も良い。R1の炭素数が22以下であれば、1価フェノールは、特に有機溶剤溶解性に優れており、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性を非常に高くすることができ、経済性も向上する。
一般式[2]又は一般式[3]におけるR1の炭素数が小さすぎると、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が十分に低い値とはならず、熱成形性が低下することがある。
ポリカーボネート系樹脂(A)の重量平均分子量は、特開2007-179018号公報の段落0061~0064の記載に基づいて測定することができる。測定法の詳細を以下に示す。
(重量平均分子量)
Mw=Σ(NiMi2)/Σ(NiMi)
(換算式)
MPC=0.47822MPS1.01470
なお、MPCはPCの分子量、MPSはPSの分子量を示す。
本発明に使用される熱可塑性樹脂(B)は、後述の共重合体(b1)と、アクリル樹脂(b2)とを含む。それぞれの構成要素について以下に説明する。
本発明による熱可塑性樹脂(B)に含まれる共重合体(b1)は、ビニル芳香族単量体単位を50~75質量%、好ましくは52~70質量%、より好ましくは53~67質量%、環状酸無水物単量体単位を5~30質量%、好ましくは10~30質量%、より好ましくは12~30質量%、およびメタクリル酸エステル単量体単位を5~35質量%、好ましくは10~30質量%、より好ましくは15~27質量%、含む三元共重合体である。共重合体(b1)として、2種類以上の共重合体を用いてもよい。
共重合体(b1)の製造時には、ビニル芳香族単量体と環状酸無水物単量体が重合しやすいため、重合初期から環状酸無水物単量体が多いと、環状酸無水物単量体単位を多く含む共重合体(透明物)が一部生成される。
環状酸無水物単量体の添加量は、重合初期段階では、共重合体の環状酸無水物単量体単位の総重量100%に対して、7%以下が好ましく、6%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。重合段階での環状酸無水物単量体の分添速度は、共重合体の環状酸無水物単量体単位の総重量100%に対して、7%/時以下が好ましく、6%/時以下がより好ましく、5%/時以下がさらに好ましい。
共重合体(b1)が、本発明で規定される外観不良原因透明物の数を満たすようになるには、重合時の環状酸無水物単量体の添加量及び分添速度を調整することが重要であり、上述したような添加量及び分添速度とすることにより、好適に本発明で規定される外観不良原因透明物の数を満たすようにすることができる。
本発明において、歪み欠陥とは、透明物または異物(コンタミ等)がフィルムまたは樹脂積層体の最表面にくることで、フィルムまたは樹脂積層体が凸状になる目視可能な外観不良を言い、上記歪み欠陥で、透明物が起因しているものを、外観不良原因透明物と言う。
外観不良原因透明物となる透明物のサイズは、10~200μmφである。
本発明において、スジ欠陥とは、透明物または異物(コンタミ等)が熱可塑性樹脂(B)とポリカーボネート系樹脂(A)シートの界面付近に存在することで、熱可塑性樹脂(B)とポリカーボネート系樹脂(A)シートに傷が入る目視可能な外観不良を言い、上記スジ欠陥で、透明物が起因しているものを、スジ不良原因透明物と言う。
スジ不良原因透明物となる透明物のサイズは、10~200μmφである。
本発明で用いられるアクリル樹脂(b2)は、例えばアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル等のビニル系単量体を単独重合したものが挙げられ、特に単量体単位として、メタクリル酸メチルが好ましい。また、前記単量体単位を2種類以上含んだ共重合体でもよい。
本発明において、共重合体(b1)とアクリル樹脂(b2)の質量比は、(b1)成分が5~95質量部に対して(b2)成分が95~5質量部であることが好ましい。より好ましくは、(b1)成分が25~80質量部に対して(b2)成分が75~20質量部である。更に好ましくは(b1)成分が40~75質量部に対して(b2)成分が60~25質量部である。この質量比内にすることにより、透明性を維持しつつ、高温高湿下に曝されても耐反り変形性に優れた熱可塑性樹脂(B)となる。
本発明の樹脂積層体の製造方法は、特に限定されない。例えば、個別に形成した熱可塑性樹脂層(B)と、ポリカーボネート系樹脂(A)シートとを積層して両者を加熱圧着する方法、個別に形成した熱可塑性樹脂層(B)とポリカーボネート系樹脂(A)シートとを積層して、両者を接着剤によって接着する方法、熱可塑性樹脂(B)層とポリカーボネート系樹脂(A)シートとを共押出成形する方法、予め形成しておいた熱可塑性樹脂(B)層を用いて、ポリカーボネート系樹脂(A)シートをインモールド成形して一体化する方法等が挙げられる。上記のうち、個別に形成した熱可塑性樹脂層(B)とポリカーボネート系樹脂(A)シートとを積層して、両者を接着剤によって接着する方法は、透明物による大きな欠陥が発生するが、製造コストや生産性の観点からは、共押出成形する方法が好ましい。
本発明において、熱可塑性樹脂(B)層の厚さは、樹脂積層体の表面硬度や耐衝撃性に影響する。つまり、熱可塑性樹脂(B)層の厚さが薄すぎると表面硬度が低くなり好ましくない。熱可塑性樹脂(B)層の厚さが大きすぎると耐衝撃性が悪くなり好ましくない。熱可塑性樹脂(B)層の厚さは10~250μmが好ましく、30~200μmがより好ましい。さらに好ましくは60~150μmである。
本発明において、基材層を形成するポリカーボネート系樹脂(A)および/または表層を形成する熱可塑性樹脂(B)には、上述の主たる成分以外の成分を含めることができる。
本発明において、熱可塑性樹脂(B)層の表面、またはポリカーボネート系樹脂(A)シートの表面にハードコート処理を施してもよい。例えば、熱エネルギーおよび/または光エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料を用いるハードコート処理によりハードコート層を形成する。熱エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料としては、例えば、ポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などの熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。また、光エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料としては、例えば、1官能および/または多官能であるアクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーからなる樹脂組成物に光重合開始剤が加えられた光硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂(A-1)及びアクリル樹脂(b2-1)として、下記に示す材料を使用したが、これらに限定されるわけではない。
ポリカーボネート系樹脂(A-1):三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ユーピロンE-2000(重量平均分子量:34,000)
アクリル樹脂(b2-1):株式会社クラレ製メチルメタクリレート樹脂 パラペットHR-L、(メチルメタクリレート樹脂100%、重量平均分子量:90,000)
マレイン酸無水物が20質量%濃度となるようにメチルイソブチルケトンに溶解させた20%マレイン酸無水物溶液と、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが2質量%となるようにメチルイソブチルケトンに希釈した2%t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート溶液とを事前に調製し、重合に使用した。
撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、20%マレイン酸無水物溶液1.2kg(共重合体の環状酸無水物単量体単位の総重量100%に対して4.08%)、スチレン25.5kg、メチルメタクレリレート8.3kg、t-ドデシルメルカプタン30g、メチルイソブチルケトン2kgを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら80分かけて87℃まで昇温した。
昇温後87℃を保持しながら、20%マレイン酸無水物溶液を1.2kg/時(共重合体の環状酸無水物単量体単位の総重量100%に対して4.08%/時)、および2%t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート溶液を188g/時の分添速度で各々連続的に16時間かけて添加し続けた。
その後、2%t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを30g添加した。
20%マレイン酸無水物溶液は、そのまま1.2kg/時の分添速度を維持しながら、4.125℃/時の昇温速度で8時間かけて120℃まで昇温した。
20%マレイン酸無水物溶液の分添は、分添量が積算で28.2kg(共重合体の環状酸無水物単量体単位の総重量100%に対して95.92%)になった時点で停止した。昇温後、1時間120℃を保持して重合を終了させた。
重合液は、ギヤーポンプを用いて、脱気押出機手前のフィードラインに目開き100μmのポリマーフィルターを取り付けた二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(b1-1)を得た。得られた共重合体(b1-1)はスチレン:無水マレイン酸:MMAの質量比=65:15:20、重量平均分子量:180,000であった。
マレイン酸無水物が20質量%濃度となるようにメチルイソブチルケトンに溶解させた20%マレイン酸無水物溶液と、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが2質量%となるようにメチルイソブチルケトンに希釈した2%t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート溶液とを事前に調製し、重合に使用した。
撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、20%マレイン酸無水物溶液2.4kg(共重合体の環状酸無水物単量体単位の総重量100%に対して8.16%)、スチレン25.5kg、メチルメタクレリレート8.3kg、t-ドデシルメルカプタン30g、メチルイソブチルケトン2kgを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて87℃まで昇温した。
昇温後87℃を保持しながら、20%マレイン酸無水物溶液を2.4kg/時(共重合体の環状酸無水物単量体単位の総重量100%に対して8.16%/時)、および2%t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート溶液を375g/時の分添速度で各々連続的に8時間かけて添加し続けた。
その後、2%t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを30g添加した。
20%マレイン酸無水物溶液は、そのまま2.4kg/時の分添速度を維持しながら、8.25℃/時の昇温速度で4時間かけて120℃まで昇温した。
20%マレイン酸無水物溶液の分添は、分添量が積算で27kg(共重合体の環状酸無水物単量体単位の総重量100%に対して91.84%)になった時点で停止した。昇温後、1時間120℃を保持して重合を終了させた。
重合液は、ギヤーポンプを用いて、脱気押出機手前のフィードラインに目開き100μmのポリマーフィルターを取り付けた二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(c1-1)を得た。得られた共重合体(c1-1)はスチレン:無水マレイン酸:MMAの質量比=65:15:20、重量平均分子量:170,000であった。
ペレット形状の共重合体(b1-1)及び共重合体(c1-1)を90℃で2時間乾燥した後、40mmΦ単軸押出機、300mm幅のTダイ、及び押出機とTダイの間に目開き10μmのポリマーフィルターを用いて260℃で押出すことで得られたシート状の溶融樹脂をフレキシブルロールで圧着した後、冷却ロールで冷却し、幅250mm、厚さ100±5μmのフィルムを得た。このフィルムについて、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
フィルムの中央部0.25m2(幅250mm×1000mm)を目視にて、0.25mmφ以上0.60mmφ未満の歪み欠陥と、0.60mmφ以上の大きな歪み欠陥を探し、目視可能な上記歪み欠陥を顕微鏡で観察して、外観不良原因透明物の数をカウントした。透明物の顕微鏡写真の例を図1に示す。評価基準は、以下の通りである。
〇:0.25mmφ以上0.60mmφ未満のサイズの歪み欠陥を有する外観不良原因透明物の数が20個未満、且つ、0.60mmφ以上のサイズの歪み欠陥を有する外観不良原因透明物の数が10個未満のフィルム
×:上記範囲外のフィルム。
上記の共重合体(b1-1)を75質量部と、メチルメタクリレート樹脂としてのパラペットHR-L(b2-1)25質量部との合計100質量部に対して、リン系添加剤PEP-36(株式会社ADEKA製)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H-100、理研ビタミン株式会社製)0.2質量%を加え、ブレンダーで20分混合後、目開き10μmのポリマーフィルターを取り付けたスクリュー径26mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM-26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度240℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレットは安定して製造できた。
上記の共重合体(c1-1)を75質量部と、メチルメタクリレート樹脂としてのパラペットHR-L(b2-1)25質量部との合計100質量部に対して、リン系添加剤PEP36(株式会社ADEKA製)500ppm、およびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H-100、理研ビタミン株式会社製)0.2質量%を加え、製造例1と同様に混合、ペレット化を行った。ペレットは安定して製造できた。
軸径32mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、全押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結された650mm幅のTダイとを有する多層押出機に各押出機と連結したマルチマニホールドダイとを有する多層押出装置を用いて樹脂積層体を成形した。軸径32mmの単軸押出機に製造例1で得たペレット(B11)を連続的に導入し、シリンダー温度240℃、吐出量を2.1kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート系樹脂(A-1)(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、製品名:ユーピロンE-2000)を連続的に導入し、シリンダー温度280℃、吐出量を30.0kg/hで押し出した。全押出機に連結されたフィードブロックは2種2層の分配ピンを備え、温度270℃にしてペレット(B11)とポリカーボネート系樹脂(A-1)を導入し積層した。その先に連結された温度270℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から温度130℃、140℃、180℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却し、ペレット(B11)とポリカーボネート系樹脂(A-1)の樹脂積層体(D11)を得た。得られた樹脂積層体(D11)の全体厚みは1000±50μm、表層厚みは60±5μmであった。この樹脂積層体について、以下の評価を行った。評価結果を表3に示す。
ペレット(B11)の代わりにペレット(C11)を使用した以外は、実施例1の樹脂積層体(D11)と同様にしてペレット(C11)とポリカーボネート系樹脂(A-1)の樹脂積層体(E11)を得た。得られた樹脂積層体(E11)の全体厚みは1000±50μm、表層厚みは60±5μmであった。この樹脂積層体について、以下の評価を行った。評価結果を表3に示す。
樹脂積層体における熱可塑性樹脂(B)を含む層側の中央部0.25m2(幅500mm×500mm)を目視にて、0.25mmφ以上0.60mmφ未満の歪み欠陥と、0.60mmφ以上の大きな歪み欠陥を探し、目視可能な上記歪み欠陥を顕微鏡で観察して、外観不良原因透明物の数をカウントした。評価基準は、以下の通りである。
〇:0.25mmφ以上0.60mmφ未満のサイズの歪み欠陥を有する外観不良原因透明物の数が4個未満、0.60mmφ以上のサイズの歪み欠陥を有する外観不良原因透明物の数が1個未満、且つ、スジ欠陥の長さが0.25mm以上であるスジ不良原因透明物の数が1個以下の樹脂積層体
×:上記範囲外の樹脂積層体。
樹脂積層体の中央付近から縦10cm、横6cmの試験片を切り出した。試験片を2点支持型のホルダーにセットして温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機に24時間以上投入して状態調整した後、反りを測定した。このときの値を処理前反り量の値とした。次に試験片をホルダーにセットして温度85℃、相対湿度85%に設定した環境試験機の中に投入し、その状態で120時間保持した。さらに温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機の中にホルダーごと移動し、その状態で4時間保持後に再度反りを測定した。このときの値を処理後反り量の値とした。反りの測定には、電動ステージ具備の3次元形状測定機を使用し、取り出した試験片を上に凸の状態で水平に静置し、1mm間隔でスキャンし、中央部の盛り上がりを反りとして計測した。処理前後の反り量の差、すなわち、(処理後反り量)-(処理前反り量)を反り変化量として評価した。その際、熱可塑性樹脂(B)層側が凸の場合は「-」符号、ポリカーボネート系樹脂(A)シート側が凸の場合は「+」符号で評価した。また、反り変化量の絶対値が700μm以下であれば、肉眼でほとんど反りが認識できなくなるため耐反り変形性に優れていると判断とした。
即ち、共重合体(b1-1)とアクリル樹脂(b2-1)とを含む熱可塑性樹脂を使用した実施例1の樹脂積層体と、共重合体(c1-1)とアクリル樹脂(b2-1)とを含む熱可塑性樹脂を使用した比較例1の樹脂積層体とを比較すると、実施例1の樹脂積層体の方が外観が良好であった。
また、実施例1の樹脂積層体の方が高温高湿下の反り変化量が小さかった。
Claims (11)
- ポリカーボネート樹脂を主成分とするポリカーボネート系樹脂(A)シートの少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂(B)を含む層が積層されてなり、
前記ポリカーボネート系樹脂(A)シートを構成するポリカーボネート系樹脂(A)の重量平均分子量が15,000~75,000であり、
前記熱可塑性樹脂(B)が、ビニル芳香族単量体単位を50~75質量%、環状酸無水物単量体単位を5~30質量%、及びメタクリル酸エステル単量体単位を5~35質量%含む共重合体(b1)と、アクリル樹脂(b2)とを含み、
前記熱可塑性樹脂(B)における共重合体(b1)と、アクリル樹脂(b2)との含有量の合計100質量部を基準として、共重合体(b1)の含有量が5~95質量部であり、アクリル樹脂(b2)の含有量が95~5質量部であり、
前記共重合体(b1)が、厚さ100μmの該共重合体(b1)からなる単層フィルムとした場合に、0.25mmφ以上0.60mmφ未満のサイズの歪み欠陥を有する外観不良原因透明物の数が20個未満/0.25m2、且つ、0.60mmφ以上のサイズの歪み欠陥を有する外観不良原因透明物の数が10個未満/0.25m2を満たす、樹脂積層体の製造方法であって、
前記共重合体(b1)の重合初期段階では、前記共重合体(b1)における環状酸無水物単量体単位の総重量100%に対して、環状酸無水物単量体の添加量を7%以下とし、かつ、重合段階では、前記共重合体(b1)における環状酸無水物単量体単位の総重量100%に対して、環状酸無水物単量体の分添速度を7%/時以下として、前記共重合体(b1)を調製する工程を含む、前記製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂(B)が、共重合体(b1)と、アクリル樹脂(b2)とのポリマーアロイである、請求項1に記載の製造方法。
- 前記共重合体(b1)に含まれるビニル芳香族単量体単位が、スチレンである、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記共重合体(b1)に含まれるメタクリル酸エステル単量体単位が、メタクリル酸エステルである、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記共重合体(b1)に含まれる環状酸無水物単量体単位が、無水マレイン酸である、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚さが10~250μmであり、前記樹脂積層体の全体厚みが0.05~3.5mmの範囲である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
- 前記樹脂積層体の全体厚みに対する前記熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚みの割合が30%未満である、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
- 前記共重合体(b1)の重量平均分子量が5万~30万である、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂(B)を含む層および前記ポリカーボネート系樹脂(A)シートの少なくとも一方が紫外線吸収剤を含有する、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂(B)を含む層の表面にハードコート層をさらに備える、請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
- 前記樹脂積層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理および防汚処理のいずれか一つ以上が施されてなる、請求項1~10のいずれかに記載の製造方法。
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