本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、エンジンからクラッチを介して伝達された回転を変速する変速機構と、変速機構を収容する変速機ケースと、変速機ケースの上面に配置され、変速機構のシフト操作およびクラッチのクラッチ操作を油圧により行うシフトユニットと、を備える車両用変速機であって、シフトユニットは、変速機ケースの前面よりも前方に突出する突出部と、油圧によりクラッチを接続状態と切断状態とに切り換えるクラッチ操作装置とを有し、クラッチ操作装置は、作動油が流通するクラッチパイプを突出部の前方に有し、シフトユニットの前面と変速機ケースの前面とを連結し、シフトユニットを支持する支持ブラケットを備え、支持ブラケットは、クラッチパイプの前方に配置されていることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、シフトユニットを保護でき、かつ変速機ケースの剛性を確保できる。
以下、本発明の実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。図1から図10において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用変速機の上下前後左右方向とし、車両の前後方向に対して直交する方向が左右方向、車両用変速機の高さ方向が上下方向である。
(第1実施例)
図1から図7は、本発明の第1実施例に係る車両用変速機を示す図である。
まず、構成を説明する。図1において、ハイブリッド車両(以下、単に車両という)1は、車体2を備えており、車体2は、ダッシュパネル3によって前側のエンジンルーム2Aと後側の車室2Bとに仕切られている。エンジンルーム2Aには駆動装置4が設置されており、駆動装置4は、前進6速、後進1速の変速段を有する。駆動装置4は本発明における車両用変速機を構成する。
図2において、駆動装置4にはエンジン8が連結されている。駆動装置4は変速機ケース5を備えており、変速機ケース5は、エンジン8の側から順に、ライトケース6、レフトケース7およびカバー部材27を有する。
ライトケース6にはエンジン8が連結されている。エンジン8は、クランク軸9を有し(図3参照)、クランク軸9は、車両1の幅方向に延びるように設置されている。すなわち、本実施例のエンジン8は、横置きエンジンから構成されており、本実施例の車両1は、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)車両である。
レフトケース7は、エンジン8と反対側、すなわち、ライトケース6の左側に連結されている。ライトケース6の左側の外周縁にはフランジ部6F(図2参照)が形成されている。図1、図2において、レフトケース7の右側の外周縁にはフランジ部7Fが形成されている。
図1に示すように、フランジ部7Fにはボルト23Aが挿入されるボス部7fが設けられており、ボス部7fは、フランジ部7Fに沿って複数設けられている。
フランジ部6Fにはボス部7fに合致する複数の図示しないボス部が形成されており、ボルト23A(図1参照)によってフランジ部6Fのボス部とフランジ部7Fのボス部7fを締結することで、ライトケース6とレフトケース7が締結されて一体化される。
ライトケース6にはクラッチ10(図3参照)が収容されている。レフトケース7には、図3に示す入力軸11、前進用出力軸12、後進用出力軸13、終減速機構14およびディファレンシャル装置15が収容されている。
入力軸11、前進用出力軸12および後進用出力軸13は、車両の左右方向に沿って平行に設置されている。入力軸11、前進用出力軸12および後進用出力軸13は、変速機構61の一部を構成する。変速機構61は、エンジン8からクラッチ10を介して伝達された回転を変速する。変速機構61において、車両の前方から入力軸11、前進用出力軸12、ディファレンシャル装置15の順に配置されている。
図3において、入力軸11は、クラッチ10を介してエンジン8に連結されており、クラッチ10を介してエンジン8の動力が伝達される。入力軸11は、1速段用の入力ギヤ16A、2速段用の入力ギヤ16B、3速段用の入力ギヤ16C、4速段用の入力ギヤ16D、5速段用の入力ギヤ16Eおよび6速段用の入力ギヤ16Fを有する。
入力ギヤ16A、16Bは、入力軸11に固定されており、入力軸11と一体で回転する。入力ギヤ16Cから入力ギヤ16Fは、入力軸11に図示しないニードルベアリングを介して相対回転自在に設けられている。
前進用出力軸12は、1速段用の出力ギヤ17A、2速段用の出力ギヤ17B、3速段用の出力ギヤ17C、4速段用の出力ギヤ17D、5速段用の出力ギヤ17E、6速段用の出力ギヤ17Fおよび前進用のファイナルドライブギヤ17Gを有する。
出力ギヤ17Aから出力ギヤ17Fは、同一の変速段を構成する入力ギヤ16Aから入力ギヤ16Fに噛み合っている。例えば、4速段用の出力ギヤ17Dは4速段用の入力ギヤ16Dに噛み合っている。
出力ギヤ17A、17Bは、前進用出力軸12に図示しないニードルベアリングを介して相対回転自在に設けられている。出力ギヤ17Cから出力ギヤ17Fおよびファイナルドライブギヤ17Gは、前進用出力軸12に固定されており、前進用出力軸12と一体で回転する。
1速段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16Aおよび出力ギヤ17Aを介して前進用出力軸12に伝達される。2速段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16Bおよび出力ギヤ17Bを介して前進用出力軸12に伝達される。
出力ギヤ17Aと出力ギヤ17Bの間において前進用出力軸12上には第1の同期装置18が設けられている。
シフト操作によって1速段にシフトされると、第1の同期装置18は、1速段の出力ギヤ17Aを前進用出力軸12に連結する。シフト操作によって2速段にシフトされると、第1の同期装置18は、2速段用の出力ギヤ17Bを前進用出力軸12に連結する。このように、シフト操作によって1速段または2速段にシフトされると、出力ギヤ17Aまたは出力ギヤ17Bは、前進用出力軸12と一体で回転する。
入力ギヤ16Cと入力ギヤ16Dの間において入力軸11上には第2の同期装置19が設けられている。
シフト操作によって3速段にシフトされると、第2の同期装置19は、入力ギヤ16Cを入力軸11に連結する。シフト操作によって4速段にシフトされると、第2の同期装置19は、入力ギヤ16Dを入力軸11に連結する。このように、シフト操作によって3速段または4速段にシフトされると、入力ギヤ16Cまたは入力ギヤ16Dが入力軸11と一体で回転する。
3速段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16Cおよび出力ギヤ17Cを介して前進用出力軸12に伝達される。4速段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16Dおよび出力ギヤ17Dを介して前進用出力軸12に伝達される。
このように入力軸11上に設けられた第2の同期装置19は、入力ギヤ16Cと出力ギヤ17Cからなる1つの変速ギヤ組と、入力ギヤ16Dと出力ギヤ17Dからなる1つの変速ギヤ組との中から1つの変速ギヤ組を選択し、入力軸11から選択された変速ギヤ組を介して前進用出力軸12に動力を伝達させる。
入力ギヤ16Eと入力ギヤ16Fの間において入力軸11上には第3の同期装置20が設けられている。
シフト操作によって5速段にシフトされると、第3の同期装置20は、入力ギヤ16Eを入力軸11に連結する。シフト操作によって6速段にシフトされると、第3の同期装置20は、入力ギヤ16Fを入力軸11に連結する。このように、シフト操作によって5速段または6速段にシフトされると、入力ギヤ16Eまたは入力ギヤ16Fが入力軸11と一体で回転する。
5速段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16Eおよび出力ギヤ17Eを介して前進用出力軸12に伝達される。6速段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16Fおよび出力ギヤ17Fを介して前進用出力軸12に伝達される。
このように入力軸11上に設けられた第3の同期装置20は、入力ギヤ16Eと出力ギヤ17Eからなる1つの変速ギヤ組と、入力ギヤ16Fと出力ギヤ17Fからなる1つの変速ギヤ組との中から1つの変速ギヤ組を選択し、入力軸11から選択された変速ギヤ組を介して前進用出力軸12に動力を伝達させる。
入力ギヤ16Dと出力ギヤ17Dからなる変速ギヤ組と、入力ギヤ16Eおよび出力ギヤ17Eからなる変速ギヤ組とは、入力軸11の軸方向において第2の同期装置19と第3の同期装置20との間に隣接して設置されている。
後進用出力軸13にはリバースギヤ22Aおよび後進用のファイナルドライブギヤ22Bが設けられている。リバースギヤ22Aは、後進用出力軸13に図示しないニードルベアリングを介して相対回転自在に設けられており、出力ギヤ17Aに噛み合っている。ファイナルドライブギヤ22Bは、後進用出力軸13に固定されており、後進用出力軸13と一体で回転する。
後進用出力軸13には第4の同期装置21が設けられている。シフト操作によって後進段にシフトされると、第4の同期装置21は、リバースギヤ22Aを後進用出力軸13に連結する。これにより、リバースギヤ22Aは、後進用出力軸13と一体で回転する。
後進段においては、エンジン8の動力が入力軸11から入力ギヤ16A、前進用出力軸12と相対回転する出力ギヤ17Aおよびリバースギヤ22Aを介して後進用出力軸13に伝達される。
前進用のファイナルドライブギヤ17Gおよび後進用のファイナルドライブギヤ22Bは、ディファレンシャル装置15のファイナルドリブンギヤ15Aに噛み合っている。これにより、前進用出力軸12の動力および後進用出力軸13の動力は、前進用のファイナルドライブギヤ17Gまたは後進用のファイナルドライブギヤ22Bを経てディファレンシャル装置15に伝達される。
ディファレンシャル装置15は、ファイナルドリブンギヤ15Aと、ファイナルドリブンギヤ15Aが外周部に取付けられたデフケース15Bと、デフケース15Bに内蔵された差動機構15Cとを有する。
デフケース15Bの左右の端部には図示しない筒状部が設けられており、この筒状部には、左のドライブシャフト24Lと右のドライブシャフト24Rとのそれぞれの一端部が挿通されている。
左右のドライブシャフト24L、24Rの一端部は、差動機構15Cに連結されており、左右のドライブシャフト24L、24Rの他端部は、それぞれ図示しない左右の駆動輪に連結されている。ディファレンシャル装置15は、エンジン8の動力を差動機構15Cによって左右のドライブシャフト24L、24Rに分配して駆動輪に伝達する。ファイナルドリブンギヤ15Aは、回転軸心15aを中心に回転する。
本実施例の入力軸11、前進用出力軸12、入力ギヤ16Aから入力ギヤ16Fおよび出力ギヤ17Aから出力ギヤ17Fは、変速機構61を構成する。
終減速機構14は、前進用のファイナルドライブギヤ17Gおよびファイナルドリブンギヤ15Aから構成されている。
図1、図2において、モータ32は、モータケース32Aと、モータケース32Aに回転自在に支持されたモータ軸32Bとを有する。モータケース32Aの内部にはいずれも図示しないロータと、コイルが巻き付けられたステータが収容されており、モータ軸32Bは、ロータと一体に設けられている。
モータ32において、コイルに三相交流が供給されることにより、周方向に回転する回転磁界を発生する。ステータは、発生した磁束をロータに鎖交させることにより、モータ軸32Bと一体のロータを回転駆動させる。
図1において、変速機ケース5は、後述するレフトケース7の膨出部7Hとカバー部材27とから形成される内部空間に、減速機構33(図3参照)を収容している。
図3において、減速機構33は、モータ32のモータ軸32Bに設けられた第1のドライブギヤ34と、第1の中間軸35と、第2の中間軸36と、前進用出力軸12に設けられた4速段用の出力ギヤ17Dとを備えている。
第1の中間軸35には第1のドリブンギヤ35Aおよび第2のドライブギヤ35Bが設けられている。第2の中間軸36には第2のドリブンギヤ36Aおよび第3のドライブギヤ36Bが設けられている。
第1のドリブンギヤ35Aは、第1のドライブギヤ34の直径よりも大径に形成されており、第1のドライブギヤ34に噛み合っている。
第2のドライブギヤ35Bは、第1のドリブンギヤ35Aおよび第2のドリブンギヤ36Aの直径よりも小径に形成されており、第2のドリブンギヤ36Aに噛み合っている。
第3のドライブギヤ36Bは、第2のドリブンギヤ36Aの直径と同一径で、かつ、4速段用の出力ギヤ17Dの直径よりも大径に形成されており、4速段用の出力ギヤ17Dに噛み合っている。なお、互いに噛み合うギヤ対において、大径のギヤは小径のギヤより歯数が多く形成されている。
第1のドライブギヤ34および第1のドリブンギヤ35Aは、モータ軸32Bと第1の中間軸35とを連結する第1の減速ギヤ対37を構成する。第2のドライブギヤ35Bおよび第2のドリブンギヤ36Aは、第1の中間軸35と第2の中間軸36とを連結しており、第2の減速ギヤ対38を構成している。第3のドライブギヤ36Bおよび出力ギヤ17Dは、第2の中間軸36と前進用出力軸12とを連結しており、第3の減速ギヤ対39を構成している。
このように減速機構33は、モータ32から前進用出力軸12に動力を伝達する動力伝達経路上に第1の中間軸35と第2の中間軸36とを有する。そして、減速機構33は、ドライブギヤ34、35B、36Bおよびドリブンギヤ35A、36Aの直径および歯数が任意の減速比となるように設定されることにより、モータ32の動力を減速して前進用出力軸12に伝達する。
レフトケース7は、その左端部に上方に膨出する膨出部7Hを有する。膨出部7Hによって、レフトケース7の左端部の開口は上方に拡大されている。膨出部7Hは、減速機構33の収容空間を形成するケース部分であって、その左側に減速機構33が配置される。
図1、図2において、カバー部材27は、ボルト23B(図1参照)によってレフトケース7の左端部のフランジ部7Kに接合(締結)されており、膨出部7Hの部分も含めレフトケース7の左端部の開口を閉塞している。つまり、膨出部7Hは、その左側に配置されるカバー部材27とで左右から減速機構33を収容する減速機構収容部25を形成する。
図1、図2において、膨出部7Hの上端部には、そのエンジン8側(右側)にモータ取付部29Cが設けられている。モータ取付部29Cは、円形のフランジ状に形成されており、モータ32の外径、すなわち、モータケース32Aの外径と同等の外径を有する。
モータ取付部29Cの外周部には複数の締結部29mが設けられており、締結部29mは、モータ取付部29Cの外周部に沿って配置されている。締結部29mは、締結用のボルト23Cが挿通されるボス部として形成されている。締結部29mにはボルト23Cが挿通され、ボルト23Cがモータケース32Aに形成された図示しないねじ穴に締め付け固定されることにより、モータ32がモータ取付部29Cに締結される。
モータ取付部29Cは右方向に向くモータ取付面を有し、モータ取付部29Cに取付けられたモータ32はモータ軸32Bが車両の左右方向に沿う様に配置される。そして、モータ32は、変速機ケース5の外部の上方に露出した状態で、レフトケース7の左側部分に形成された膨出部7Hから右方向に延びる様に配置されている。
図1、図2に示すように、変速機ケース5にはフロントブラケット46Aおよびリヤブラケット46Bが設けられている。フロントブラケット46Aは、モータ32とライトケース6とを連結しており、モータ32をライトケース6に支持している。
リヤブラケット46Bは、モータ32とライトケース6とを連結しており、モータ32をライトケース6に支持している。このように、モータ32は、変速機ケース5の外部に配置され、軸方向の一端部(左端部)がモータ取付部29Cに取付けられ、軸方向の反対側(他端部、右端部)がライトケース6に連結されている。
モータ32の後方にはコネクタ32Cが設けられており、コネクタ32Cにはモータ32を駆動するための電力を供給するパワーケーブル(図示省略)が接続されている。
図1、図2に示すように、本実施例では、モータ32は、モータ32の他端側(右端部)から径方向外方に突出しモータ32が用いる電力を受け入れる受電部32Dと、受電部32Dの左側面(モータ32の一端側となる面)にモータ32の一端側を向いて設けられたコネクタ32Cとを有している。
コネクタ32Cは、モータ32の一端側を向いて設けられているので、着脱方向がモータ軸32Bに沿った方向となり、パワーケーブルをモータ32に沿わせて配索することができる。
レフトケース本体部7Gの上面における膨出部7Hの前方には、マウント取付部31が形成されている。マウント取付部31は、レフトケース7の左端部で入力軸11の上方に形成され、上方に立設された複数のマウント取付ボス31Aから31Eを有している。マウント取付ボス31Aから31Eには、車体2に固定された図示しないマウント装置が締結されており、駆動装置4は、マウント装置を介して車体2に弾性的に支持されている。また、マウント取付部31は、その剛性確保のため、複数のマウント取付ボス31Aから31Eを相互に連結する複数のリブ51から56を有する。
モータ32は、車両の前後方向でマウント取付部31よりも後側においてレフトケース7の上部に設定されている。エンジン8は、前述のマウント装置とは異なるエンジン用の図示しないマウント装置を介して車体2に弾性的に支持されている。
図1に示すように、本実施例では、変速機構61を収容する変速機構収容部62を、ライトケース6、レフトケース7およびカバー部材27で形成している。モータ32は変速機構収容部62より上方に配置されている。また、図2に示すように、変速機ケース5は、エンジン8に近い側から配置されたライトケース6、レフトケース7およびカバー部材27を有している。
図1において、車体2の前端部より後方かつ、駆動装置4の前方には、ラジエータ73が配置されており、ラジエータ73は、上下方向に延びている。車両1の前突時は、図5に示すように、ラジエータ73は、駆動装置4に当接する位置まで後方に変位し、ラジエータ73から駆動装置4には後方への荷重Fが作用する。
図1、図2において、駆動装置4はシフトユニット41を備えており、このシフトユニット41は、車両の前後方向でモータ32よりも前側となるレフトケース7の上面に設置されている。車両1の平面視において、モータ32とシフトユニット41は、後述するマウント取付部31に近づくように、マウント取付部31に近接配置されている。
つまり、モータ32とシフトユニット41は、マウント取付部31の前後に設置されている。詳細には、マウント取付部31と膨出部7Hは、レフトケース7の左端部にて前後に並んで形成されており、シフトユニット41は、マウント取付部31の右側から前方に渡り、車両の前方に延びる様に配置されている。
シフトユニット41は、変速機構61のシフト操作およびクラッチ10のクラッチ操作を作動油の油圧により行う油圧アクチュエータである。ここで、シフト操作とは、変速機構61の変速段を切換える操作をいい、クラッチ操作とは、クラッチ10を係合(接続)または開放(切断)する操作をいう。
シフトユニット41は、シフト操作およびクラッチ操作を行う複数の機能部品として、油圧を発生するオイルポンプ49Aと、オイルポンプ49Aを駆動するモータ49Bと、バルブユニット44と、油圧を蓄圧する筒状のアキュムレータ47と、作動油を貯留するリザーバタンク50等を有している。また、シフトユニット41は、機能部品が一体に取付けられる平板状のベースプレート43を、変速機ケース5の上面に有しており、ベースプレート43は、複数の機能部品が一体化される土台としての機能と、その内部に形成された油路により各機能部品との間で作動油を流通させる機能とを有している。バルブユニット44は、車両の前後方向で、シフトユニット41全体の中で後側に配置され、車両の左右方向で、モータ32と同じ位置に配置されている。
これらの機能部品を有するシフトユニット41は、部品点数も多く比較的重量がある装置である。特に、バルブユニット44は、多数のソレノイドバルブが取付けられ、かつ、その内部に複雑な油路やシリンダ等の油圧作動機構を有するので重量がある部品となっている。また、ベースプレート43も、シフトユニット41の多数の構成部品が取付けられ、これらの多数の構成部品をレフトケース7に取付ける比較的厚い金属製のプレートであって、重量がある部品となっている。
図1に仮想線で示すように、レフトケース7にはシフトアンドセレクト軸42が収容されている。シフトアンドセレクト軸42は、レフトケース7に対して軸心方向に移動自在、かつ回転自在となっており、その上方に配置されたシフトユニット41によって操作される。
つまり、シフトアンドセレクト軸42は、バルブユニット44に内蔵されたシリンダ等の油圧作動機構で操作され、シフトアンドセレクト軸42の軸方向の上方にバルブユニット44が配置されている。
シフトユニット41は、運転者によって操作される図示しないシフトレバーがドライブレンジにシフトされた状態あるいはリバースレンジにシフトされた状態において、例えば、予めスロットル開度と車速とがパラメータとして設定された変速マップに基づいて、シフトアンドセレクト軸42を操作する。
シフトアンドセレクト軸42は、その軸が上下方向に沿う様に延びて、入力軸11の前側に配置され、いずれも図示しないシフトヨーク、シフタ軸およびシフトフォーク等からなる変速操作機構を介して第1の同期装置18から第4の同期装置21を操作して変速段の制御を行う。なお、シフトユニット41は、油圧機構やモータ機構等によってシフトアンドセレクト軸42を操作するが、駆動方式は、これら油圧機構やモータ機構等に限定されるものではない。
図1、図2に示すように、シフトユニット41のベースプレート43は、変速機ケース5の上面に固定されており、変速機ケース5の上面の前端部からその後方のマウント取付ボス31Aから31Eの側方を横切って、膨出部7Hの前側の壁面の近傍まで延びている。
ベースプレート43は、変速機ケース5の前面5Aよりも前方に突出する突出部43Aを有している。突出部43Aは、変速機ケース5の上面に固定されているベースプレート43の本体部分に対してオーバーハングの状態となっている。
また、ベースプレート43は、突出部43Aから下方に延びアキュムレータ47が前面側に取り付けられるアキュムレータ取付部43Bを有している。アキュムレータ取付部43Bは、下方に膨出する楕円の筒状に形成されており、アキュムレータ47は、アキュムレータ取付部43Bの左側面に水平方向から取付けられている。アキュムレータ取付部43Bは、突出部43Aの突出方向に直交する平面をアキュムレータ47より前方に有する。言い換えれば、アキュムレータ取付部43Bの前面は平面状に形成されている。
前述のリザーバタンク50はベースプレート43の突出部43Aの上面に取付けられている。ベースプレート43の突出部43A、アキュムレータ取付部43Bおよびリザーバタンク50は、変速機ケース5の前面5Aよりも前方に突出しており、シフトユニット41の突出部41Aを構成している。リザーバタンク50は、荷重を受けても直ちに破損することなく変形可能な樹脂等からなる。
図5において、シフトユニット41は、油圧によりクラッチ10(図3参照)を接続状態と切断状態とに切り換えるクラッチ操作装置70を有している。クラッチ操作装置70は、作動油が流通するクラッチパイプ71を突出部41Aの前方に有している。クラッチパイプ71は、アキュムレータ取付部43Bの前面に接続されている。したがって、クラッチパイプ71とアキュムレータ取付部43Bとの接続部72は、アキュムレータ取付部43Bの前面に配置されている。
また、クラッチ操作装置70は、本体部としてのクラッチシリンダ10Aを有しており、クラッチシリンダ10Aは、クラッチパイプ71を介して供給された作動油の油圧をクラッチ10に作用させる。クラッチシリンダ10Aは、CSC(コンセントリック・スレイブ・シリンダ)式の油圧シリンダからなる。
ベースプレート43の前面を構成するアキュムレータ取付部43Bの前面には、締結ボス43Cが設けられており、この締結ボス43Cは、支持ブラケット48をベースプレート43に固定するボルト74が締結される。締結ボス43Cは、接続部72に近接して配置され、かつ、接続部72の前端よりも前方に延びている。また、上下方向において、締結ボス43Cは、接続部72よりも下方に配置されている。
ここで、本実施例のように、クラッチパイプ71をアキュムレータ取付部43Bの前面まで延ばし、アキュムレータ取付部43Bの前面に接続部72を配置した理由は、仮に、接続部72を前突時の荷重から保護することを優先してアキュムレータ取付部43Bの後方等の奥まった位置に配置した場合、接続部72における整備性、組付性、アクセス性を損なうおそれがあるからである。
一方で、シフトユニット41は、突出部41Aにおいて変速機ケース5の前面5Aよりも前方に突出しており、変速機ケース5に対してオーバーハングの状態で固定されているため、突出部41Aが車体2の振動等によって振動し易く、その振動の荷重がベースプレート43を介して変速機ケース5にも伝達されるおそれがある。そこで、本実施例の駆動装置4は、シフトユニット41を保護でき、かつ変速機ケース5の剛性を確保できるように、支持ブラケット48によってシフトユニット41を変速機ケース5に支持させている。
駆動装置4は支持ブラケット48を備えており、この支持ブラケット48は、ベースプレート43のアキュムレータ取付部43Bの前面と、変速機ケース5の側壁状の前面5Aとを連結している。これにより、支持ブラケット48は、シフトユニット41を支持している。
図4において、支持ブラケット48は、金属等の平板をクランク形状又はZ字の形状に形成したものであり、アキュムレータ取付部43Bの前面に固定される第1部分48Aと、変速機ケース5の前面5Aに固定される第3部分48Cと、これらの第1部分48Aと第3部分48Cとを接続する第2部分48Bとを有している。第1部分48Aと第3部分48Cとは平行に配置されている。第2部分48Bは、第1部分48Aおよび第3部分48Cに対して鈍角で連続している。言い換えれば、支持ブラケット48は、第1部分48Aと第2部分48Bとの間で屈曲しており、第2部分48Bと第3部分48Cとの間で屈曲している。
第1部分48Aにはボルト挿通孔48Dが形成されており、このボルト挿通孔48Dにボルト74(図6参照)を挿通して締結ボス43C(図7参照)に締結することにより、第1部分48Aがアキュムレータ取付部43Bに固定される。
第3部分48Cにはボルト挿通孔48Eが形成されており、このボルト挿通孔48Eにボルト75(図6参照)を締結孔5B(図7参照)に締結することにより、第3部分48Cが変速機ケース5の前面5Aに固定される。
支持ブラケット48の左端部には、剛性の確保のために全体にわたってフランジ部48Fが設けられている。フランジ部48Fは、支持ブラケット48の本体部分に対して直交する方向に延伸しており、この延伸方向への支持ブラケット48への曲げ応力を受け持っている。
図5、図6、図7に示すように、本実施例では、支持ブラケット48は、クラッチ操作装置70を構成するクラッチパイプ71の前方であって、クラッチパイプ71とアキュムレータ取付部43Bとの接続部72を前方から覆う位置に配置されている。ここで、接続部72を前方から覆う位置とは、前方から見て支持ブラケット48の背後に接続部72が隠れる位置をいう。
本実施例の駆動装置4によれば、シフトユニット41は、変速機ケース5の前面5Aよりも前方に突出する突出部41Aを有し、シフトユニット41は、油圧によりクラッチ10を接続状態と切断状態とに切り換えるクラッチ操作装置70を有し、クラッチ操作装置70は、作動油が流通するクラッチパイプ71を突出部41Aの前方に有している。
そして、駆動装置4は、シフトユニット41の前面と変速機ケース5の前面5Aとを連結し、シフトユニット41を支持する支持ブラケット48を備えており、支持ブラケット48は、クラッチパイプ71の前方に配置されている。
このように、クラッチ操作装置70のクラッチパイプ71は、クラッチ10の切り換えを行う作動油が流通する重要部品であり、破損しないように保護する必要がある。上記構成によれば、シフトユニット41の前面と変速機ケース5の前面5Aとを連結する支持ブラケット48が、クラッチ操作装置70のクラッチパイプ71の前方に配置されているので、支持ブラケット48は、車両走行中の路面からの飛び石や、エンジンルーム2A内の他の部品との接触による破損からクラッチパイプ71を保護することができる。また、支持ブラケット48は、シフトユニット41の前面と変速機ケース5の前面5Aとを連結することによりシフトユニット41を支持しているので、駆動装置4の剛性を確保することができる。
また、支持ブラケット48が単独で、クラッチ操作装置70を保護する保護機能と、駆動装置4の剛性を確保する剛性確保機能とを果たすことができるので、保護機能を果たす部材と剛性確保機能を果たす部材とを別部品として用意および取付けする必要がなくなり、部品点数および重量を削減することができる。この結果、シフトユニットを保護でき、かつ変速機ケースの剛性を確保できる。
本実施例の駆動装置4によれば、シフトユニット41は、シフト操作およびクラッチ操作を行う複数の機能部品と、機能部品が一体に取付けられる平板状のベースプレート43と、を変速機ケース5の上面に有しており、ベースプレート43は、突出部43Aから下方に延び機能部品としてのアキュムレータ47が取付けられるアキュムレータ取付部43Bを有している。また、クラッチパイプ71は、アキュムレータ取付部43Bの前面に接続されている。そして、支持ブラケット48は、クラッチ操作装置70の前方に配置され、アキュムレータ取付部43Bの前面と変速機ケース5の前面5Aとを連結している。
このように、シフトユニット41の台座として機能するベースプレート43に支持ブラケット48を設けたので、より確実にベースプレート43の振動を抑制できる。また、支持ブラケット48は、ベースプレート43が固定されている変速機ケース5の上面ではなく、変速機ケース5の前面5Aとシフトユニット41の前面とを連結しているので、ベースプレート43が変速機ケース5の前面5Aから突出してオーバーハングの状態になっていることによる振動の発生を効果的に抑制できる。
本実施例の駆動装置4によれば、アキュムレータ取付部43Bには、突出部43Aの下方で筒状のアキュムレータ47が水平方向から取付けられ、アキュムレータ取付部43Bは、突出部43Aの突出方向に直交する平面をアキュムレータ47より前方に有する。
これにより、アキュムレータ取付部43Bの平面がアキュムレータ47より前方に配置されるので、車両1の前突時にラジエータ73が後方に変位した際に、ラジエータ73からの荷重がアキュムレータ47に直接作用することを防止できる。また、アキュムレータ取付部43Bは、突出部43Aの突出方向に直交する平面を有するので、この平面にクラッチパイプ71との接続部72を配置することができる。
本実施例の駆動装置4によれば、クラッチ操作装置70は、クラッチパイプ71を介して供給された作動油の油圧をクラッチ10に作用させる本体部としてのクラッチシリンダ10Aを有し、クラッチパイプ71とアキュムレータ取付部43Bとの接続部72を前方から覆う位置に支持ブラケット48が配置されている。
これにより、特に破損が生じやすい、ベースプレート43とクラッチパイプ71との接続部72を、支持ブラケット48により前方から覆うことにより、小石等の飛来物からも保護することができる。また、仮にクラッチパイプ71が接続部72から抜けて脱落しそうになっても、支持ブラケット48によりクラッチパイプ71が保持されるので、クラッチパイプ71の脱落防止効果も奏することができる。
本実施例の駆動装置4によれば、ベースプレート43の前面に、支持ブラケット48をベースプレート43に固定するボルト74が締結される締結ボス43Cが設けられ、締結ボス43Cは、接続部72に近接して配置され、かつ、接続部72の前端よりも前方に延びている。
これにより、車両の前突時に、駆動装置4の前方に配置されたラジエータ73等は、クラッチパイプ71の接続部72に接触するより先に締結ボス43Cに接触し、接触による荷重F(図5参照)を締結ボス43Cが受けることができる。このため、接続部72に荷重Fが作用することを防止でき、荷重Fによる破損から接続部72を保護することができる。
本実施例の駆動装置4によれば、上下方向において、締結ボス43Cは、接続部72よりも下方に配置されている。
これにより、締結ボス43Cよりも上方に接続部72が配置されることになり、接続部72にその上方から工具等を到達させることができ、ベースプレート43に対するクラッチパイプ71の接続作業を上方からし易くできる。
(第2実施例)
図8、図9は、本発明の第2実施例に係る車両用変速機を示す図である。第2実施例は、前後方向における支持ブラケット48、リザーバタンク50およびベースプレート43の位置関係が第1実施例と異なる。
図8、図9に示すように、支持ブラケット48の前面、リザーバタンク50の前面、およびベースプレート43の前面が同一平面上に配置されるように構成してもよい。ここで、リザーバタンク50の前面は、支持ブラケット48の前面およびベースプレート43の前面と共通の同一平面に沿って延びる広い面積を有する平面状に形成されている。
これにより、車両の前突によりラジエータ73が後方に変位した場合であっても、ラジエータ73が、広い平面を有するリザーバタンク50の前面と支持ブラケット48の前面とに当接し、ラジエータ73からの荷重F(図9参照)をリザーバタンク50と支持ブラケット48とに分散させることができる。また、リザーバタンク50は、樹脂等からなり、荷重を受けても破損することなく変形することができる。このため、クラッチ操作装置70の破損を防止できる。
(第3実施例)
図10は、本発明の第3実施例に係る車両用変速機を示す図である。第3実施例は、上下方向における締結ボス43Cと接続部72との位置関係が第1実施例および第2実施例と異なる。
図10に示すように、上下方向において、締結ボス43Cは、接続部72よりも上方に配置されている。
これにより、支持ブラケット48と締結ボス43Cと突出部41Aとによって接続部72が取り囲まれるため、上方から接続部72に向かう異物等を締結ボス43Cにより遮ることができ、接続部72の保護機能を向上させることができる。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。