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JP7234626B2 - ポリビニルアルコール系フィルム及び薬剤包装体 - Google Patents

ポリビニルアルコール系フィルム及び薬剤包装体 Download PDF

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JP7234626B2 JP2018243784A JP2018243784A JP7234626B2 JP 7234626 B2 JP7234626 B2 JP 7234626B2 JP 2018243784 A JP2018243784 A JP 2018243784A JP 2018243784 A JP2018243784 A JP 2018243784A JP 7234626 B2 JP7234626 B2 JP 7234626B2
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Description

本発明は、ポリビニルアルコール系フィルム、及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、気泡欠点の少ないポリビニルアルコール系フィルム及びその製造方法に関する。
従来より、ポリビニルアルコール系フィルムは、透明性や染色性に優れたフィルムとして多くの用途に利用されており、光学用ポリビニルアルコール系フィルムとして偏光膜などに利用されている。かかる偏光膜は、液晶ディスプレイの基本構成要素として用いられており、近年では、高輝度、高精細な液晶テレビへとその使用が拡大されている。また、液晶テレビ以外でも、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピューター、プロジェクター、車載パネルなどに幅広く使用されている。かかる光学用ポリビニルアルコール系フィルムにおいて、液晶テレビなどの画面の薄型化や大型化にともない、表示欠点の少ない偏光膜が必要とされている。このような偏光膜を製造するためには、原反となるポリビニルアルコール系フィルムを改良する必要がある。
また、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度を調整したり、アニオン性官能基などをポリビニルアルコール分子鎖に導入(変性)することにより、水に溶解する水溶性を特徴とする水溶性フィルムとしても利用されている。具体的には、農薬や洗剤等の薬剤の包装(ユニット包装)用途、(水圧)転写用フィルム、ナプキン・紙おむつ等の生理用品、オストミーバッグ等の汚物処理用品、吸血シート等の医療用品、育苗シート・シードテープ・刺繍用基布等の一時的基材、等に用いられている。中でも、農薬や洗剤等の薬剤のユニット包装用途では、使用時に薬剤量を一々計量する手間が省けるうえ、手を汚したりすることもないという利点がある。かかるポリビニルアルコール系水溶性フィルムにおいて、液体洗剤のような液体製品に対する包装用途が拡大しており、液漏れ防止の観点から気泡欠点の少ない薬剤包装体が必要とされている。このような薬剤包装体を製造するためには、原反となるポリビニルアルコール系フィルムを改良する必要がある。
かかる光学用フィルム用途に用いるポリビニルアルコール系フィルムとしては、ポリビニルアルコール系樹脂に2種類以上の界面活性剤を含有したポリビニルアルコール系フィルム(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)等が知られている。
また、かかる水溶性フィルム用途に用いるポリビニルアルコール系フィルムとして、例えば、ポリビニルアルコール100重量部に対して、可塑剤5~30重量部、澱粉1~10重量部及び界面活性剤0.01~2重量部を配合してなる水溶性フィルム(例えば、特許文献3参照。)や、20℃における4重量%水溶液粘度が10~35mPa・s、平均ケン化度80.0~99.9モル%、アニオン性基変性量1~10モル%のアニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、可塑剤20~50重量部、フィラー2~30重量部、界面活性剤0.01~2.5重量部を含有してなる樹脂組成物からなる水溶性フィルム(例えば、特許文献4参照。)等が知られている。
特開2005-206809号公報 特開2005-206810号公報 特開2001-329130号公報 特開2004-161823号公報
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示のポリビニルアルコール系フィルムは、光学スジ、光学斑などが少なくブロッキング性に優れるものであるが、フィルム内に発生する気泡欠点対策としては不十分であり、例えば、偏光膜にした場合に表示欠点が発生するなどの品質面の問題が懸念され、さらなる改善が望まれるものであった。
また、上記特許文献3及び4に開示のポリビニルアルコール系フィルムは、水溶性、耐ブロッキング性、衝撃破裂強度に優れるものであるが、フィルム内に気泡欠点が生成しやすいことから、例えば、水溶性フィルムを用いて液体製品を包装して長期保管した場合の液漏れや包装用フィルムに印刷した場合の気泡欠点箇所でインク飛びによる外観不良が発生するなどの品質面の問題が懸念され、さらなる改善が望まれるものであった。
そこで、本発明ではこのような背景下において、気泡欠点の少ないポリビニルアルコール系フィルム、及びポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究した結果、ポリビニルアルコール系フィルムの構成成分と配合方法との関係を詳細に検討し、変性ポリビニルアルコール系樹脂に低級の1価アルコール成分を微量に含有したポリビニルアルコール系フィルムが、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、変性ポリビニルアルコール系樹脂(A)を主成分とするポリビニルアルコール系フィルムであって、炭素数1~3の1価アルコールを1~500ppm含有し、炭素数1~3の1価アルコールがメタノール、エタノールから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムに関するものである
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、気泡欠点が抑制されるため、偏光膜にした場合に表示欠点が少なく、また液体製品包装体にした場合の長期保管した時の液漏れ耐性に優れたものとなる。
以下、本発明について具体的に説明する。 本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、変性ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とし、炭素数1~3の1価アルコールを1~2000ppm含有することが必要である。
以下、ポリビニルアルコールを「PVA」、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とするフィルムを「PVA系フィルム」と略記することがある。
炭素数1~3の1価アルコールの含有量は、好ましくは、5~1000ppmであり、特に好ましくは10~500ppmである。かかる炭素数1~3の1価アルコール含有量が下限値未満であると、フィルム製造時の撹拌等により溶液内での大きな気泡が生成しやすく造膜までに消失せず残存したものがフィルムの気泡欠点となる。一方で、含有量が上限値を超えると、造膜後に高温で乾燥した時に低級アルコール成分が多量に気化することで微細な気泡が生成してフィルムの気泡欠点となり、本発明の目的を達成し得ない。
また、炭素数が4以上の1価アルコールでは、1価アルコールの水溶性が低く、親水性が不足することでPVA系樹脂水溶液の濁度や粘度安定性が低下する恐れがあり好ましくない。
かかる炭素数1~3の1価アルコールは、その構造内にエーテル結合を含んでもよく、例えば、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、シクロプロパノール、メトキシメタノール、エトキシメタノール、2-メトキシエタノールなどが挙げられる。
これらの中でも、安全性の点で、構造内にエーテル結合を含まない1価アルコールが好ましく、特には親水性の点からメタノール、エタノールが好ましく、更には環境有害性の点からエタノールが好ましい。
また、これらの1価アルコールは単独で用いることもできるし、もしくは2種以上を併せて用いることもできる。
上記のPVA系フィルムにおける炭素数1~3の1価アルコールの含有量は、動的ヘッドスペース装置を備えたガスクロマトグラフ/質量分析(GC/MS)によって定量的に測定されるものである。
具体的には、フィルム試料(約5mg)を動的ヘッドスペース装置にて120℃、60分の条件で1価アルコール成分を揮発させて、凝集装置により捕集したガス成分をGC/MS装置にて同定、定量を行う。GCのMSスペクトルより1価アルコール成分を同定して、各アルコール成分の検量線をもとにGCで得られたアバンダンス強度のピーク面積より揮発量を求めて、測定に供したフィルム試料重量から換算することで、PVA系フィルムにおける炭素数1~3の1価アルコールの含有量を求めることができる。
炭素数1~3の1価アルコールを2種以上併せて含有している場合には、検出された各アルコール含有量を合計した値を炭素数1~3の1価アルコールの含有量として算出することができる。
本発明のPVA系フィルムは、変性PVA系樹脂(A)を主成分とする。
ここで変性PVA系樹脂(A)を主成分とするとは、水溶性フィルム全体に対して、変性PVA系樹脂(A)を通常、50重量%以上、好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上含有することを意味する。
まず、本発明で用いられる変性PVA系樹脂(A)について説明する。
〔変性PVA系樹脂(A)〕
変性PVA系樹脂(A)とは、ビニルエステル系化合物を重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られるビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂に対して、共重合や後反応などで変性基を導入した樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とケン化されずに残存したビニルエステル構造単位に加え、共重合による不飽和単量体構造単位もしくは後反応による構造体単位から構成される。
上記ビニルエステル系化合物としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられるが、酢酸ビニルを用いることが好ましい。ビニルエステル系化合物は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
共重合による変性PVA系樹脂(共重合変性PVA系樹脂)としては、ビニルエステル系モノマーと、ビニルエステル系モノマーと共重合可能な不飽和単量体として、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1-(メタ)アクリルアミド-1,1-ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類及びそのアシル化物などの誘導体等との共重合により得られるものなどが挙げられる。
また、後反応による変性PVA系樹脂(後変性PVA系樹脂)としては、例えば、ジケテンとの反応によるアセトアセチル基を有するもの、エチレンオキサイドとの反応によるポリアルキレンオキサイド基を有するもの、エポキシ化合物等との反応によるヒドロキシアルキル基が有するもの、あるいは各種官能基を有するアルデヒド化合物などを、エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化等によってPVA樹脂と反応させて得られたものなどを挙げることができる。
また、変性PVA系樹脂(A)として、側鎖に一級水酸基を有するもので、例えば、側鎖の一級水酸基の数が、通常1~5個、好ましくは1~2個、特に好ましくは1個であるものも挙げられ、さらには、一級水酸基以外にも二級水酸基を有することが好ましい。かかる変性PVAとしては、例えば、側鎖にヒドロキシアルキル基を有する変性PVA系樹脂、側鎖に1,2-ジオール構造単位を有する変性PVA系樹脂等があげられる。側鎖に1,2-ジオール構造単位を有する変性PVA系樹脂は、例えば、(ア)酢酸ビニルと3,4-ジアセトキシ-1-ブテンとの共重合体をケン化する方法、(イ)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(ウ)酢酸ビニルと2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(エ)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により製造することができる。
上記、ビニルエステル系化合物と、ビニルエステル系化合物と共重合可能な不飽和単量体との共重合方法としては、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等、公知の重合方法を任意に用いることができるが、通常、メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等のアルコールを溶媒とする溶液重合法により行われる。
重合触媒としては、重合方法に応じて、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系触媒、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物触媒等の公知の重合触媒を適宜選択することができる。又、重合の反応温度は50℃~沸点程度の範囲から選択される。
ケン化は公知の方法で行うことができ、通常、得られた共重合体をアルコールに溶解してケン化触媒の存在下で行なわれる。アルコールとしてはメタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコール中の共重合体の濃度は、溶解率の観点から20~50重量%の範囲から選択される。
ケン化触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができ、酸触媒を用いることも可能である。ケン化触媒の使用量はビニルエステル系化合物に対して1~100ミリモル当量にすることが好ましい。
本発明で用いる変性PVA系樹脂(A)としては、溶解性の点で、アニオン性基変性PVA系樹脂を用いることが好ましい。アニオン性基の種類としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられるが、耐薬品性及び経時安定性の点で、カルボキシル基、スルホン酸基が好ましく、特にはカルボキシル基が好ましい。
上記カルボキシル基変性PVA系樹脂は、任意の方法で製造することができ、例えば、(I)カルボキシル基を有する不飽和単量体とビニルエステル系化合物を共重合した後にケン化する方法、(II)カルボキシル基を有するアルコールやアルデヒドあるいはチオール等を連鎖移動剤として共存させてビニルエステル系化合物を重合した後にケン化する方法等を挙げることができる。
(I)または(II)の方法におけるビニルエステル系化合物としては、前述のものを用いることができるが、酢酸ビニルを用いることが好ましい。
上記(I)の方法におけるカルボキシル基を有する不飽和単量体としては、エチレン性不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)、又はエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル(マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等)、又はエチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル(マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル等)〔但し、これらのジエステルは共重合体のケン化時に加水分解によりカルボキシル基に変化することが必要である〕、又はエチレン性不飽和カルボン酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)、あるいはエチレン性不飽和モノカルボン酸((メタ)アクリル酸、クロトン酸等)等の単量体、及びそれらの塩が挙げられる。
なかでも、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、マレイン酸塩、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、(メタ)アクリル酸等を用いることが好ましく、特には、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、マレイン酸塩、無水マレイン酸を用いることが好ましく、更にはマレイン酸モノアルキルエステルを用いることが好ましい。
上記(II)の方法においては、特に連鎖移動効果の大きいチオールに由来する化合物が有効であり、以下の化合物及びそれらの塩が挙げられる。
Figure 0007234626000001
Figure 0007234626000002
[但し、上記一般式(1)、(2)において、nは0~5の整数で、R1、R2、R3はそれぞれ水素原子又は低級アルキル基(置換基を含んでもよい)を示す。]
Figure 0007234626000003
[但し、上記一般式(3)において、nは0~20の整数である。]
具体的にはメルカプト酢酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトステアリン酸等が挙げられる。
なお、上記カルボキシル基を有する不飽和単量体、ビニルエステル系化合物以外に、その他の一般の単量体を、水溶性を損なわない範囲で含有させて重合を行なっても良く、これらの単量体としては、例えば、飽和カルボン酸のアリルエステル、α-オレフィン、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、その他、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニル等を用いることができる。
また、上記カルボキシル基変性PVA系樹脂の製造方法としては、上記方法に限らず、例えばポリビニルアルコール(部分ケン化物又は完全ケン化物)にジカルボン酸、アルデヒドカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸等の水酸基と反応性のある官能基をもつカルボキシル基含有化合物を後反応させる方法等も実施可能である。
また、スルホン酸基で変性されたスルホン酸変性PVA系樹脂を用いる場合は、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等の共重合成分を、ビニルエステル系化合物と共重合した後、ケン化する方法、ビニルスルホン酸もしくはその塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸もしくはその塩等をPVAにマイケル付加させる方法等により製造することができる。
本発明の変性PVA系樹脂(A)の平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは85~99.9モル%、更に好ましくは90~99.0モル%である。かかる平均ケン化度が小さすぎると、包装対象の薬剤のpHによっては経時的にフィルムの溶解性が低下する傾向がある。なお、平均ケン化度が大きすぎると製膜時の熱履歴により水への溶解性が大きく低下する傾向がある。
さらに、変性PVA系樹脂(A)として、アニオン性基変性PVA系樹脂を用いる場合には、その平均ケン化度は、85モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは88~99.9モル%、更に好ましくは90~99.5モル%、殊に好ましくは90~99.0モル%である。
また、本発明の変性PVA系樹脂(A)の20℃における4重量%水溶液粘度は10~50mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは15~45mPa・s、更に好ましくは20~40mPa・sである。かかる粘度が小さすぎると、包装材料としてのフィルムの機械的強度が低下する傾向があり、大きすぎると製膜時の水溶液粘度が高く生産性が低下する傾向がある。
上記の平均ケン化度は、JIS K 6726 3.5に準拠して測定され、4重量%水溶液粘度は、JIS K 6726 3.11.2に準じて測定される。
本発明の変性PVA系樹脂(A)の変性量は、1~20モル%であることが好ましく、特に好ましくは1.5~15モル%、更に好ましくは2~12モル%である。かかる変性量が少なすぎると、水に対する溶解性が低下する傾向があり、多すぎると樹脂の生産性が低下したり、生分解性が低下する傾向があり、また、ブロッキングを引き起こしやすくなる傾向がある。
本発明において、変性PVA系樹脂(A)として、アニオン性基変性PVA系樹脂を用いる場合には、上記アニオン性基変性PVA系樹脂の変性量は、1~10モル%であることが好ましく、特に好ましくは1.5~9モル%、更に好ましくは2~8モル%である。かかる変性量が少なすぎると、水に対する溶解性が低下する傾向があり、特に、薬剤包装体とした際に経時的にフィルムの溶解性が低下する傾向がある。また、変性量が多すぎると樹脂の生産性が低下したり、生分解性が低下する傾向があり、また、ブロッキングを引き起こしやすくなる傾向がある。
本発明において、溶解性や機械物性などのフィルム物性の観点から、変性PVA系樹脂(A)がPVA系フィルムの主成分であることが重要である。PVA系フィルム中の変性PVA系樹脂(A)の含有量は、35重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは50重量%以上、更に好ましくは60重量%以上である。かかる含有量が少なすぎると、水に対する溶解性やフィルムの機械物性が低下する傾向がある。かかる含有量の上限については、通常、液体洗剤包装体とした場合の経時的な形状安定性の点からは、99重量%以下、好ましくは95重量%以下、特に好ましくは90重量%以下である。
本発明において、上記の変性PVA系樹脂(A)はそれぞれ単独で用いることもできるし、また、変性PVA系樹脂同士を併用すること、未変性PVAと変性PVA系樹脂を併用すること、更に、ケン化度、粘度、変性種、変性量等が異なる2種以上を併用することなどもできる。
〔可塑剤(B)〕
本発明のPVA系フィルムにおいては、さらに可塑剤(B)を含有させることがフィルムに柔軟性や、成形容易性を付与する点で好ましい。可塑剤(B)は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、2種以上を併用することが、包装体として用いる場合のフィルム自身の強靭さや、特に液体洗剤を包装した際の包装体の経時的な形状安定性の点で好ましい。
かかる可塑剤(B)を2種以上併用する場合、融点が80℃以上である多価アルコール(B1)(以下、「可塑剤(B1)」と略記することがある。)、および融点が50℃以下である多価アルコール(B2)(以下、「可塑剤(B2)」と略記することがある。)の2種の可塑剤を用いることが、PVA系フィルム製造時や包装体製造時の強靭さ及び液体薬剤用の包装体とした際の経時的な形状安定性の点で好ましい。
上記の融点が80℃以上である多価アルコール(B1)、すなわち可塑剤(B1)としては、糖アルコール、単糖類、多糖類の多くが適用可能であるが、なかでも、例えば、サリチルアルコール(83℃)、カテコール(105℃)、レゾルシノール(110℃)、ヒドロキノン(172℃)、ビスフェノールA(158℃)、ビスフェノールF(162℃)、ネオペンチルグリコール(127℃)等の2価アルコール、フロログルシノール(218℃)等の3価アルコール、エリスリトール(121℃)、トレイトール(88℃)、ペンタエリスリトール(260℃)等の4価アルコール、キシリトール(92℃)、アラビトール(103℃)、フシトール(153℃)、グルコース(146℃)、フルクトース(104℃)等の5価アルコール、マンニトール(166℃)、ソルビトール(95℃)、イノシトール(225℃)等の6価アルコール、ラクチトール(146℃)、スクロース(186℃)、トレハロース(97℃)等の8価アルコール、マルチトール(145℃)等の9価以上のアルコールがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、上記( )内は、各化合物の融点を示す。
上記のなかでも、PVA系フィルムの引張強度の点で融点が85℃以上、特には90℃以上のものが好ましい。なお、融点の上限は通常300℃、特には200℃が好ましい。
更に、本発明では、可塑剤(B1)のなかでも、1分子中の水酸基の数が4個以上であることが変性PVA系樹脂(A)との相溶性の点で好ましく、特に好ましくは5~10個、更に好ましくは6~8個であり、具体的には、例えば、ソルビトール、スクロース、トレハロース等が好適なものとしてあげられる。
また、本発明においては、PVA系フィルムの張りの点で、可塑剤(B1)の分子量が150以上であることが好ましく、特に好ましくは160~500、更に好ましくは180~400であり、具体的には、例えば、ソルビトール、スクロース等が好適なものとしてあげられる。
一方、融点が50℃以下である多価アルコール(B2)、すなわち可塑剤(B2)としては、脂肪族系アルコールの多くが適用可能であり、例えば、好ましくはエチレングリコール(-13℃)、ジエチレングリコール(-11℃)、トリエチレングリコール(-7℃)、プロピレングリコール(-59℃)、テトラエチレングリコール(-5.6℃)、1,3-プロパンジオール(-27℃)、1,4-ブタンジオール(20℃)、1,6-ヘキサンジオール(40℃)、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール等の2価アルコール、グリセリン(18℃)、ジグリセリン、トリエタノールアミン(21℃)等の3価以上のアルコールがあげられる。そして、PVA系フィルムの柔軟性の点で融点が30℃以下、特には20℃以下のものが好ましい。なお、融点の下限は通常-80℃であり、好ましくは-10℃、特に好ましくは0℃である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、上記( )内は、各化合物の融点を示す。
更に、本発明では、可塑剤(B2)のなかでも、1分子中の水酸基の数が4個以下、特には3個以下であることが室温(25℃)近傍での柔軟性を制御しやすい点で好ましく、具体的には、例えば、グリセリン等が好適である。
また、本発明においては、可塑剤(B2)として、柔軟性を制御しやすい点で、分子量が100以下であることが好ましく、特には50~100、更には60~95であることが好ましく、具体的には、例えば、グリセリン等が好適である。
本発明においては、上記の可塑剤(B1)や(B2)以外の可塑剤(B3)を併用することもでき、かかる可塑剤(B3)としては、例えば、トリメチロールプロパン(58℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、カルビトール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類、ジブチルエーテル等のエーテル類、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸、クエン酸、アジピン酸等のカルボン酸類、シクロヘキサノン等のケトン類、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、イミダゾール化合物等のアミン類、アラニン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、システイン等のアミノ酸類等があげられる。
耐カール性に優れる点や強度と柔軟性のバランスが良い点からは、可塑剤(B1)と(B2)に加えて、さらに可塑剤(B3)として融点が50℃により大きく80℃未満である多価アルコールの3種類の可塑剤を用いることが好ましく、特には可塑剤(B3)としてトリメチロールプロパンを用いることが好ましい。
本発明において、可塑剤(B)の含有量は、変性PVA系樹脂(A)100重量部に対して、5重量部以上であることが好ましく、特に好ましくは5~70重量部、更に好ましくは8~60重量部、殊に好ましくは10~50重量部である。かかる可塑剤(B)の含有量が少なすぎると液体洗剤などの液体を包装して包装体とした場合に経時的な形状安定性が低下する傾向がある。なお、多すぎると機械強度が低下したり、ブロッキングが生じやすくなる傾向がある。
また、上記の可塑剤(B1)と可塑剤(B2)について、その含有重量割合(B1/B2)が0.1~5であることが好ましく、特に好ましくは0.2~4.5、更に好ましくは0.5~4、殊に好ましくは0.7~3である。かかる含有割合が小さすぎるとPVA系フィルムが柔らかくなり過ぎて、ブロッキングが生じやすくなる傾向があり、大きすぎるとPVA系フィルムが硬くなりすぎる傾向があり、低湿環境下で脆くなる傾向がある。
また、上記の可塑剤(B1)と可塑剤(B2)の含有量としては、変性PVA系樹脂(A)100重量部に対して、可塑剤(B1)が5~40重量部であることが好ましく、特に好ましくは8~30重量部、更に好ましくは10~25重量部であり、また可塑剤(B2)が5~40重量部であることが好ましく、特に好ましくは10~35重量部、更に好ましくは15~30重量部である。
かかる可塑剤(B1)が少なすぎるとPVA系フィルムが硬くなりすぎる傾向があり、多すぎるとPVA系フィルムが柔らかくなりすぎる傾向がある。また、可塑剤(B2)が少なすぎるとPVA系フィルムが硬くなりすぎる傾向があり、低湿環境下で脆くなる傾向があり、多すぎるとPVA系フィルムが柔らかくなり過ぎて、ブロッキングが生じやすくなる傾向がある。
更に、可塑剤(B)全体に対して、可塑剤(B1)及び可塑剤(B2)の合計量が70重量%以上であることが好ましく、特には80重量%以上、更には85重量%以上であることが好ましい。かかる可塑剤(B1)と(B2)の合計量が少なすぎると機械強度が低下する傾向がある。
また、上記の可塑剤(B1)と可塑剤(B2)に加えて、可塑剤(B3)を併用する場合において、可塑剤(B1)、(B2)、(B3)の相互の割合については、可塑剤(B1)、(B2)、(B3)の合計量に対する可塑剤(B3)の含有割合が、20重量%以下であることが好ましく、特には、成形容易性、耐ピンホール性および耐破袋性の点から0.5~18重量%であることが好ましく、更に好ましくは2~15重量%、殊に好ましくは4~13重量%である。可塑剤(B3)の含有割合が大きすぎると、常温時と高温時のフィルムの状態変化が大きくなり耐ピンホール性および耐破袋性が低下するおそれがある。
本発明においては、必要に応じて、更に、フィラー(C)や界面活性剤(D)等を含有させることができる。
〔フィラー(C)〕
上記フィラー(C)は、耐ブロッキング性の目的で含有されるものであり、有機フィラー(C1)や無機フィラー(C2)があげられるが、なかでも有機フィラー(C1)が好適に用いられる。また、包装体作製時の水シール性改良の点からは、有機フィラー(C1)と無機フィラー(C2)の両方を併用することが好ましい。
本発明で用いられる有機フィラー(C1)とは、有機化合物で構成された針状・棒状、層状、鱗片状、球状などの任意の形状からなる粒子状物質(1次粒子)、もしくはその粒子状物質の集合体(2次粒子)のことを示す。
かかる有機フィラー(C1)としては、主に高分子化合物の中から選択され、例えば、メラミン系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂の他、澱粉、ポリ乳酸等の生分解性樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、ポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、澱粉、等の生分解性樹脂が好ましく、特には変性PVA系樹脂(A)に対する分散性の点から澱粉が好ましい。
上記の澱粉としては、例えば、生澱粉(トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コムギ澱粉、キッサバ澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、モロコシ澱粉、コメ澱粉、マメ澱粉、クズ澱粉、ワラビ澱粉、ハス澱粉、ヒシ澱粉等)、物理的変性澱粉(α-澱粉、分別アミロース、湿熱処理澱粉等)、酵素変性澱粉(加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース等)、化学分解変性澱粉(酸処理澱粉、次亜塩素酸酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉等)、化学変性澱粉誘導体(エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン化澱粉、架橋澱粉等)等が挙げられる。なかでも入手の容易さや経済性の点から、生澱粉、とりわけトウモロコシ澱粉、コメ澱粉を用いることが好ましい。
有機フィラー(C1)の平均粒子径は、5~50μmであることが好ましく、特に好ましくは10~40μm、更に好ましくは15~35μmである。かかる平均粒子径が小さすぎるとフィルムのブロッキング性が高くなる傾向があり、大きすぎるとフィラー同士が凝集しやすくなり分散性が低下したり、フィルムを成形加工時に引き伸ばした際にピンホールとなる傾向がある。
なお、有機フィラー(C1)の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した値であり、得られた累計体積分布のD50値(累積50%の粒子径)より算出したものである。
本発明で用いられる無機フィラー(C2)とは、無機化合物で構成された針状・棒状、層状、鱗片状、球状などの任意の形状からなる粒子状物質(1次粒子)、もしくはその粒子状物質の集合体(2次粒子)のことを示す。
無機フィラー(C2)としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、珪藻土、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化亜鉛等の酸化物系無機化合物や、タルク、クレー、カオリン、雲母、アスベスト、石膏、グラファイト、ガラスバルーン、ガラスビーズ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ウイスカー状炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドーソナイト、ドロマイト、チタン酸カリウム、カーボンブラック、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、加工鉱物繊維、炭素繊維、炭素中空球、ベントナイト、モンモリロナイト、銅粉、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アルミニウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、クロム酸カリウム等が挙げられる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
なかでも、変性PVA系樹脂(A)との水素結合作用に優れ、水シール性の向上効果が高くなる点から、酸化物系無機化合物、タルクを用いることが好ましく、特に好ましくは酸化チタン、タルク、シリカを用いることが好ましく、更には、シリカを用いることが好ましい。
無機フィラー(C2)の平均粒子径は、1~20μmであることが好ましく、特に好ましくは2~15μm、更に好ましくは3~10μmである。かかる平均粒子径が小さすぎるとフィルムのブロッキング性が高くなる、フィルムの柔軟性や靭性が低下するなどの傾向があり、大きすぎると水シール性向上の作用効果が得られにくい傾向がある。
なお、無機フィラー(C2)の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した値であり、得られた累計体積分布のD50値(累積50%の粒子径)より算出したものである。
上記フィラー(C)の含有量は、変性PVA系樹脂(A)100重量部に対して1~30重量部であることが好ましく、特に好ましくは2~25重量部、更に好ましくは2.5~20重量部である。かかる含有割合が少なすぎるとブロッキング性が高くなる傾向があり、多すぎるとフィルムの柔軟性や靱性が低下する傾向がある。
有機フィラー(C1)と無機フィラー(C2)を併用する場合においては、有機フィラー(C1)と無機フィラー(C2)の含有比率(重量比)がC1/C2=2~15であることが好ましく、特に好ましくは3~13、更に好ましくは4~10である。無機フィラー(C2)に対する有機フィラー(C1)の含有量が小さすぎると、フィルムの柔軟性や靱性が低下して、良好な包装体が得られにくくなる傾向があり、無機フィラー(C2)に対する有機フィラー(C1)の含有量が大きすぎると水シール性が低下する傾向がある。
〔界面活性剤(D)〕
本発明で用いられる界面活性剤(D)としては、PVA系フィルム製造時のキャスト面からの剥離性改善の目的で含有されるものであり、通常、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が挙げられる。例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、製造安定性の点でポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルが好適である。
かかる界面活性剤(D)の含有量については、変性PVA系樹脂(A)100重量部に対して0.01~3重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.05~2.5重量部、更に好ましくは0.1~2重量部である。かかる含有量が少なすぎると製膜装置のキャスト面と製膜したPVA系フィルムとの剥離性が低下して生産性が低下する傾向があり、多すぎると水溶性フィルムを包装体とする場合に実施するシール時の接着強度が低下する等の不都合を生じる傾向がある。
なお、発明の目的を阻害しない範囲で、更に他の水溶性高分子(例えば、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)や、香料、防錆剤、着色剤、増量剤、消泡剤、紫外線吸収剤、流動パラフィン類、蛍光増白剤、苦味成分(例えば、安息香酸デナトニウム等)等を含有させることも可能である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
また、本発明においては、黄変抑制の点で酸化防止剤を配合することが好ましい。かかる酸化防止剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム等の亜硫酸塩、酒石酸、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、テコール、ロンガリット等が挙げられ、なかでも亜硫酸塩、特には亜硫酸ナトリウムが好ましい。かかる配合量は変性PVA系樹脂(A)100重量部に対して0.1~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.2~5重量部、更に好ましくは0.3~3重量部である。
<PVA系フィルムの製造>
本発明のPVA系フィルムは、下記の方法で製造することができる。
上記の変性PVA系樹脂(A)、好ましくは更に可塑剤(B)、必要に応じて更に、フィラー(C)及び界面活性剤(D)等を含有してなるPVA系樹脂組成物を得て、(I)変性ポリビニルアルコール系樹脂(A)を主成分とするポリビニルアルコール系樹脂組成物を溶解させてポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得る溶解工程、(II)前記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液に対して炭素数1~3の1価アルコールを0.001~5重量%含有させて製膜原料を調製する工程、(III)前記工程(II)で得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液(製膜原料)を用いて製膜する製膜工程、をこの順序で含有することを特徴とした製造方法によってPVA系フィルムとする。
PVA系フィルムの原料となる変性PVA系樹脂(A)は、重合工程、ケン化工程内の溶媒として低級アルコールが使用されることがあり、製造した変性PVA系樹脂(A)の中には少量のアルコール系溶媒が残存することがある。しかしながら、フィルム製造における溶解工程では、一般的にアルコール系溶媒の沸点より高い温度で長時間の溶解が行われることから、原料内に残存するアルコール系溶媒は揮発して系外に排出されるため、通常製造されたPVA系フィルムにはアルコール系溶媒が残存しない。
本発明においては、溶剤の効果について着目し、通常はアルコール系溶媒が消失して残存しない溶解後のPVA系水溶液に対して、敢えて1価アルコールを含有させて製膜することにより、フィルムの気泡発生を制御できることを新たに見出した。
以下、各工程について具体的に説明する。
〔[I]溶解工程〕
溶解工程では、上記PVA系樹脂組成物を水で溶解または分散して、PVA系樹脂水溶液を調製する。
なお、本発明において溶解工程はPVA系樹脂組成物が水に溶解または分散して未溶解物のない水溶液を得るまでの工程を示す。
上記PVA系樹脂組成物を水に溶解する際の溶解方法としては、通常、常温溶解、高温溶解、加圧溶解等が採用され、なかでも、未溶解物が少なく、生産性に優れる点から高温溶解、加圧溶解が好ましい。
溶解温度としては、高温溶解の場合には、通常80~100℃、好ましくは90~100℃であり、加圧溶解の場合には、通常80~130℃、好ましくは90~120℃である。
溶解時間としては、溶解温度、溶解時の圧力により適宜調整すればよいが、通常1~20時間、好ましくは2~15時間、更に好ましくは3~10時間である。溶解時間が短すぎると未溶解物が残る傾向にあり、長すぎると生産性が低下する傾向にある。
また、溶解工程において、撹拌翼としては、例えば、パドル、フルゾーン、マックスブレンド、ツイスター、アンカー、リボン、プロペラ等が挙げられる。
更に、溶解した後、得られたPVA系樹脂水溶液に対して脱泡処理が行われるが、かかる脱泡方法としては、例えば、静置脱泡、真空脱泡、二軸押出脱泡等が挙げられる。なかでも静置脱泡、二軸押出脱泡が好ましい。静置脱泡の温度としては、通常50~100℃、好ましくは70~95℃であり、脱泡時間は、通常2~30時間、好ましくは5~20時間である。
〔[II]炭素数1~3の1価アルコール配合工程〕
本発明のPVA系フィルムは、上記の溶解工程後、即ちPVA系樹脂組成物を溶解したPVA系樹脂水溶液を調製した後に、PVA系樹脂水溶液に対して、炭素数1~3の1価アルコールを0.001~5重量%含有させて製膜原料を調製し、ついで製膜の順序で製造することで得ることができる。
本発明では、溶解工程後のPVA系樹脂水溶液に対して炭素数1~3の1価アルコールを配合することが重要である。溶解工程以前に炭素数1~3の1価アルコールを配合させた場合には、溶解工程の過程においてアルコール系溶媒が揮発して系外に排出されるため、目的とするPVA系フィルムが得られない。また、アルコール系溶媒を含有したPVA系樹脂水溶液を高温で長時間溶解するには防爆型の反応容器が必要となることから、設備コスト面、安全面においても好ましくない。
かかる炭素数1~3の1価アルコールは、その構造内にエーテル結合を含んでもよく、例えば、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、シクロプロパノール、メトキシメタノール、エトキシメタノール、2-メトキシエタノールなどが挙げられる。炭素数が4以上の1価アルコールでは、1価アルコールの水溶性が低く、親水性が不足することでPVA系水溶液の濁度や粘度安定性が低下する恐れがあり好ましくない。
これらの中でも、安全性の点で、エーテル結合を含まない1価アルコールが好ましく、さらには、親水性が良好なメタノール、エタノールが好ましく、特には、環境有害性の点からエタノールが好ましい。
また、これらの1価アルコールは単独で用いることができるし、もしくは2種以上併せて用いることもできる。
かかるPVA系樹脂水溶液に対する炭素数1~3の1価アルコール含有量としては、0.001~5重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.01~3重量%、更に好ましくは0.1~2重量%である。かかる濃度が低すぎると溶液調製時における気泡発生を抑制する効果が得られない傾向があり、高すぎるとフィルム乾燥時に微細気泡が発生しやすくなる傾向がある。
製膜原料の固形分濃度は、10~50重量%であることが好ましく、特に好ましくは15~40重量%、更に好ましくは20~35重量%である。かかる濃度が低すぎるとフィルムの生産性が低下する傾向があり、高すぎると粘度が高くなりすぎ、製膜原料の脱泡に時間を要したり、フィルム製膜時にダイラインが発生したりする傾向がある。
〔[III]製膜工程〕
製膜工程では、溶解工程及び炭素数1~3の1価アルコール配合工程で調製した製膜原料を膜状に賦形し、必要に応じて乾燥処理を施すことで、水分率を15重量%以下にしたPVA系フィルムに調整する。
製膜に当たっては、例えば、溶融押出法や流延法等の方法を採用することができ、膜厚の精度の点で流延法が好ましい。
流延法を行うに際しては、例えば、上記製膜原料を、(i)アプリケーター、バーコーターなどを用いてギャップ間に通過させて金属表面等のキャスト面に流延する方法、(ii)T型スリットダイ等のスリットから吐出させ、エンドレスベルトやドラムロールの金属表面等のキャスト面に流延する方法、などにより製膜原料を流延した後に乾燥することにより本発明のPVA系フィルムを製造することができる。
T型スリットダイ等の製膜原料吐出部における製膜原料の温度は、60~98℃であることが好ましく、特に好ましくは70~95℃である。かかる温度が低すぎると製膜原料の粘度が増加してPVA系フィルムの生産性が低下する傾向があり、高すぎると発泡等が生じる傾向がある。
流延後、キャスト面上で製膜原料を乾燥させるのであるが、上記キャスト面の表面温度は、50~110℃であることが好ましく、特に好ましくは70~100℃である。かかる表面温度が低すぎると、乾燥不足でフィルムの含水率が高くなり、ブロッキングしやすくなる傾向があり、高すぎると製膜原料が発泡し、製膜不良となる傾向がある。
また、製膜時の乾燥においては、熱ロールによる乾燥、フローティングドライヤーを用いてフィルムに熱風を吹き付ける乾燥や遠赤外線装置、誘電加熱装置による乾燥等を併用することもできる。
上記の乾燥処理で製膜原料を水分率が15重量%以下になるまで乾燥した後、キャスト面から剥離すること(キャスト面から剥離後に更に熱ロールによる乾燥を行う場合は、乾燥熱ロールから剥離すること)でPVA系フィルムが得られる。キャスト面(または、乾燥熱ロール)から剥離されたPVA系フィルムは、10~35℃の環境下で冷却される。
本発明のPVA系フィルムの表面はプレーンであってもよいが、耐ブロッキング性、加工時の滑り性、製品同士の密着性軽減、及び外観の点から、PVA系フィルムの片面或いは両面にエンボス模様や微細凹凸模様、特殊彫刻柄等の凹凸加工を施しておくことも好ましい。
かかる凹凸加工に際しては、加工温度は、通常60~150℃であり、好ましくは80~140℃である。加工圧力は、通常2~8MPa、好ましくは3~7MPaである。加工時間は、上記加工圧力、製膜速度にもよるが、通常0.01~5秒であり、好ましくは0.1~3秒である。
また、必要に応じて、凹凸加工処理の後に、熱によるフィルムの意図しない延伸を防止するために、冷却処理を施してもよい。
〔その他工程〕
長尺形状のPVA系フィルムを製造する場合においては、上記の製膜工程の後で、巻取工程、包装、保管、輸送などが必要に応じて実施される。
巻取工程では、製膜工程でキャスト面等から剥離したPVA系フィルムを搬送して巻き取り、芯管(S1)に巻き取ることによりフィルムロールに調製する。得られたフィルムロールは、そのまま製品として供給することもできるが、好ましくは巻き取ったPVA系水溶性フィルムを所望のサイズ幅にスリットした後、フィルム幅に見合った長さの芯管(S2)に巻き取り直し、所望のサイズのフィルムロールとして供給することもできる。
PVA系フィルムを巻き取る芯管(S1)は円筒状のもので、その材質は金属、プラスチック等、適宜選択できるが、堅牢性、強度の点で金属であることが好ましい。
芯管(S1)の内径は、3~30cmが好ましく、より好ましくは10~20cmである。芯管(S1)の肉厚は、1~30mmが好ましく、より好ましくは2~25mmである。芯管(S1)の長さは、PVA系フィルムの幅より長くすることが必要で、フィルムロールの端部から1~50cm突出するようにするのが好ましい。
また、芯管(S2)は円筒状のもので、その材質は紙や金属、プラスチック等、適宜選択できるが、軽量化及び取扱いの点で紙であることが好ましい。
芯管(S2)の内径は、3~30cmが好ましく、より好ましくは10~20cmである。芯管(S2)の肉厚は、1~30mmが好ましく、より好ましくは3~25mmである。芯管(S2)の長さは、製品のPVA系フィルム幅と同等或いはそれ以上の長さのものであればよく、好ましくは同等~50cm長いものである。
芯管(S2)に巻き取る際には、PVA系フィルムは所望の幅にスリットされる。
かかるスリットに当たっては、シェア刃やレザー刃などを用いてスリットされるが、好ましくはシェア刃でスリットすることがスリット断面の平滑性の点で好ましい。
本発明において、上記PVA系フィルムの製造は、10~35℃、特には15~30℃の環境下にて行うことが好ましく、湿度については、通常70%RH以下であることが好ましい。
このようにして、本発明のPVA系フィルムを製造することができる。
本発明のPVA系フィルムの厚みは、好ましくは10~120μmであり、特に好ましくは30~110μm、更に好ましくは60~100μmである。かかる厚みが薄すぎるとフィルムの機械的強度が低下する傾向があり、厚すぎると水への溶解速度が遅くなる傾向があり、製膜効率も低下する傾向がある。
また、本発明のPVA系フィルムの幅は、好ましくは100~5000mmであり、特に好ましくは200~2000mm、更に好ましくは300~1000mmである。かかる幅が狭すぎると生産効率が低下する傾向があり、広すぎると弛みや膜厚の制御が困難になる傾向がある。
さらに、本発明のPVA系フィルムの長さとしては、用途等により適宜選択されるものであるが、好ましくは100~20000m、特に好ましくは800~15000m、更に好ましくは1000~10000mである。かかる長さが短すぎるとフィルムの切り替えに手間を要する傾向があり、長すぎると巻き締まりによる外観不良や重量が重くなりすぎる傾向がある。
また、上記PVA系フィルムの水分率は、1~12重量%であることが特に好ましく、更に好ましくは4~10重量%である。フィルムの水分率が低すぎるとフィルムが硬くなりすぎて、包装体とする際の成形性や包装体の耐衝撃性が低下する傾向があり、高すぎるとブロッキングが生じやすくなる傾向がある。
本発明のPVA系水溶性フィルムを芯管に巻き取って得られたフィルムロールは、水蒸気バリア性樹脂の包装フィルムで包装することが好ましく、かかる包装フィルムとしては特に限定されないが、透湿度が10g/m/日(JIS Z 0208に準じて測定)以下のものが使用可能である。具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデンコートポリブロピレン、ガラス蒸着ポリエステル、等の単層フィルム、あるいはこれらの積層フィルム、または割布、紙、不織布との積層フィルム等が挙げられる。積層フィルムとしては、例えば、ガラス蒸着ポリエステルとポリエチレンの積層フィルム、ポリ塩化ビニリデンコートポリブロピレンとポリエチレンの積層フィルム等が例示される。
かかるフィルムは、帯電防止処理しておくことも異物の混入を防ぐ点で好ましく、帯電防止剤はフィルムに練り込まれていても、表面にコーティングされていても良い。練り込みの場合は樹脂に対して0.01~5重量%程度、表面コーティングの場合は0.01~1g/m程度の帯電防止剤が使用される。
帯電防止剤としては、例えば、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、高級脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル等が使用される。
次に、フィルムロールを水蒸気バリア性樹脂の包装フィルムで包装した上から、更にアルミニウム素材からなる包装フィルムを包装することが好ましく、かかるフィルムとしては、アルミニウム箔、アルミニウム箔と耐湿性プラスチックフィルムの積層フィルム(例えばアルミニウム箔とポリエチレンフィルムの積層フィルム)、アルミニウム蒸着フィルムと耐湿性プラスチックフィルムの積層フィルム(例えばアルミニウム蒸着ポリエステルフィルムとポリエチレンフィルムの積層フィルム)、アルミナ蒸着フィルムと耐湿性プラスチックフィルムの積層フィルム(例えばアルミナ蒸着ポリエステルフィルムとポリエチレンフィルムの積層フィルム)等が挙げられ、本発明では特に、アルミニウム箔とポリオレフィンフィルムの積層フィルム、アルミニウム蒸着フィルムとポリオレフィンフィルムの積層フィルムが有用で、特には延伸ポリプロピレンフィルム/ポリエチレンフィルム/アルミニウム箔/ポリエチレンフィルムの構成よりなる積層フィルム、延伸ポリプロピレンフィルム/低密度ポリエチレンフィルム/アルミニウム箔の構成よりなる積層フィルム等が有用である。
包装に当たっては内側の水蒸気バリア性樹脂の包装フィルム、外側のアルミニウム素材からなる包装フィルムで順次包装を行い、幅方向に余った部分を芯管に押し込むことが好ましい。
フィルムロールには、端部の傷付きやゴミ等の異物の付着を防止するため、直接、あるいは包装の後、フィルムロールの両端部に芯管貫通孔をもつ保護パッドを装着させることができる。
保護パッドの形状は、フィルムロールにあわせて、円盤状のシート、フィルムが実用的である。保護効果を顕著にするため発泡体、織物状、不織布状等の緩衝機能を付加させるのが好ましい。また、湿度からフィルムロールを守るため乾燥剤を別途封入したり、前記保護パッドに積層又は混入したりしておくこともできる。保護パッドの素材はプラスチックが好ましく、その具体例としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
また、上記乾燥剤入りの保護パッドとしては、例えば、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブス、糖類、特に浸透圧の高い糖類、吸水性樹脂等の乾燥剤または吸水剤を天然セルロース類、合成セルロース類、ガラスクロス、不織布等の成形可能な材料に分散、含浸、塗布乾燥した吸湿層としたもの、これらの吸湿剤または吸水剤を上記の成形可能な材料やポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、テフロン(登録商標)フィルム等の熱可塑性樹脂フィルムでサンドイッチ状に挟んだりしたものが挙げられる。
市販されているシート状乾燥剤の例としては、アイディ社製の「アイディシート」や品川化成社製の「アローシート」、「ゼオシート」、ハイシート工業社製の「ハイシートドライ」等がある。
かかる手段によって包装されたフィルムロールは、芯管の両端突出部にブラケット(支持板)を設けたり、該両端突出部を架台に載置したりして支えられ、接地することなく、いわゆる宙に浮いた状態で保管や輸送が行われることが好ましい。フィルムの幅が比較的小さい場合はブラケットが使用され、フィルムの幅が比較的大きい場合は架台が使用される。
ブラケットはベニヤ板やプラスチック板からなるものであり、その大きさは通常ブラケットの4辺がフィルムロールの直径より大きいものである。
そして、前記フィルムロールの両端の芯管突出部に一対のブラケットを互いに向かい合うように直立して配置、嵌合させフィルムロールに設けられる。嵌合は、通常ブラケットの中央部に芯管直径よりやや大きめのくりぬき穴を設けたり、芯管が挿入し易いようにブラケットの上部から中心部までU字型にくりぬかれていてる。
ブラケットで支持されたフィルムロールは段ボール箱等のカートンに収納されて保管や輸送がされるが、収納時の作業を円滑にするため矩形のブラケットを使用するときはその四隅を切り落としておくことが好ましい。
また、上記一対のブラケットがぐらつかないように、両者を結束テープで固定するのが好ましく、そのときテープの移動や弛みが起こらないようにブラケットの側面(厚さ部分)にテープ幅と同程度のテープズレ防止溝を設けて置くのも実用的である。
包装したフィルムロールの保管または輸送にあたっては、極端な高温や低温、低湿度、高湿度条件を避けるのが望ましく、具体的には温度10~30℃、湿度40~75%RHであることが好ましい。
かくして得られる本発明のPVA系フィルムは気泡欠点が少ないことを特徴とすることから、表示欠点に対する要求が厳しい偏光膜用途(液晶テレビ、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピューター、プロジェクター、車載パネルなど)や、液体による穴開き耐性が要求される水溶性フィルム用途(農薬や洗剤等の薬剤のユニット包装用途、(水圧)転写用フィルム、ナプキン・紙おむつ等の生理用品、オストミーバッグ等の汚物処理用品、吸血シート等の医療用品、育苗シート・シードテープ・刺繍用基布等の一時的基材など)に有用である。
なかでも、本発明のPVA系フィルムは、変性ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とすることから、冷水溶解性に優れ、液体包装時の液漏れ耐性が良好であるため薬剤等の個包装用途(薬剤包装体)に有用である。
<薬剤包装体>
本発明の薬剤包装体は、本発明のPVA系フィルムで薬剤を内包してなる包装体である。
内包する薬剤としては、特に制限はなく、例えば、殺虫剤、殺菌剤、除草剤等の農薬、肥料、洗剤等が挙げられ、特に洗剤が好ましい。
薬剤の形状は、液体であっても固体であってもよく、液体の場合は、液状であり、固体の場合は、顆粒状、錠剤状、粉状等が挙げられる。薬剤は、水に溶解または分散させて用いる薬剤が好ましく、本発明においては、とりわけ液体洗剤を内包することが好ましい。
また、薬剤のpHは、アルカリ性、中性、酸性のいずれであっても良い。
上記薬剤包装体は、その表面は、通常平滑であることがあげられるが、耐ブロッキング性、加工時の滑り性、製品(包装体)同士の密着性軽減、及び外観の点から、包装体(PVA系フィルム)の外表面にエンボス模様や微細凹凸模様、特殊彫刻柄、等の凹凸加工が施されたものであってもよい。
以下、本発明の薬剤包装体の一例である液体洗剤包装体について述べる。
液体洗剤包装体は、保存の際には液体洗剤を内包した形状が保持されている。そして、使用時(洗濯時)には、包装体(PVA系フィルム)が水と接触することにより、包装体が溶解して内包されている液体洗剤が包装体から流出することとなる。
液体洗剤包装体の大きさは、通常長さ10~50mm、好ましくは20~40mmである。また、PVA系フィルムからなる包装体のフィルムの厚みは、通常10~120μm、好ましくは15~110μm、より好ましくは20~100μmである。内包される液体洗剤の量は、通常5~50mL、好ましくは10~40mLである。
本発明のPVA系フィルムを用いて、液体洗剤を包装して薬剤包装体とするに際しては、公知の方法を採用することができる。
例えば、2枚のPVA系フィルムを用いて貼り合わせることにより製造され、成型装置の下部にある金型の上に、フィルム(ボトムフィルム)を固定し、装置の上部にもフィルム(トップフィルム)を固定する。ボトムフィルムをドライヤーで加熱し、金型に真空成型し、その後、成型されたフィルムに液体洗剤を投入した後、トップフィルムとボトムフィルムを圧着する。圧着した後は真空を解放し、包装体を得ることができる。 フィルムの圧着方法としては、例えば、(1)熱シールする方法、(2)水シールする方法、(3)糊シールする方法などが挙げられ、なかでも(2)水シールする方法が汎用的で生産性に優れる点で好ましい。
液体洗剤としては制限はなく、アルカリ性、中性、酸性のいずれであってもよいが、フィルムの水溶性の点から、水に溶解又は分散させた時のpH値が6~14であることが好ましく、特には7~11が好ましい。なお、上記pH値は、JIS K 3362 8.3に準拠して測定される。また、水分量は、JIS K 3362 7.21.3に準じて測定される。
また、液体洗剤の水分量が15重量%以下であることが好ましく、特には0.1~10重量%、更には0.1~7重量%であるものが好ましく、PVA系フィルムがゲル化したり不溶化することがなく水溶性に優れることとなる。
液体薬剤は、流動性で、容器に合わせて形を変える液状の薬剤であれば、その粘度は特に限定されないが、好ましくは10~200mPa・sである。なお、かかる液体薬剤の粘度は、常温下におけるB型回転粘度計にて測定される。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない
限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
<実施例1>
変性PVA系樹脂(A)として、20℃における4%水溶液粘度22mPa・s、平均ケン化度94モル%、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量2.0モル%のカルボキシル基変性PVA(A1)を100部、可塑剤(B)としてソルビトール(b1)を20部及びグリセリン(b2)を20部、フィラー(C)として澱粉(平均粒子径20μm)を8部、界面活性剤(D)としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩を0.2部、及び水525部を混合し、90℃の条件で90分間撹拌を行って変性PVA系樹脂(A)を溶解させて、固形分濃度22%のPVA系樹脂水溶液を得た。上記のPVA系樹脂水溶液を80℃に温度調整したのち、上記のPVA系樹脂水溶液に対してエタノール2部(PVA系樹脂水溶液に対して0.3重量%)を添加して、撹拌機(アズワン社 MIX-ROTAR「MR-5」)を用いて30分間の撹拌混合を行った。ついで、エタノールを撹拌混合したPVA系樹脂水溶液を80℃に加温して30分静置保管した後、ギャップ740μmのアプリケーターを用いて表面温度を85℃に調整したクロムメッキ表面処理した金属板の上に流延した。流延したPVA系樹脂水溶液を温度85℃の金属板上で7分30秒間乾燥させた後、金属板から25mm/秒の速度で乾燥フィルムを剥離して、長さ20cm、幅15cm、厚み85μm、水分率5.8重量%のPVA系フィルムを得た。得られたPVA系フィルムのエタノール含有量を測定した結果、110ppmであった。
参考例1
実施例1においてエタノール添加量を15部(PVA系樹脂水溶液に対して2.2重量%)に変えた以外は同様にして、PVA系フィルムを得た。得られたPVA系フィルムのエタノール含有量を測定した結果、830ppmであった。
<比較例1>
実施例1において、エタノールを添加しなかった以外は同様にして、PVA系フィルムを得た。得られたPVA系フィルムのエタノール含有量を測定した結果、0ppmであった。
<比較例2>
実施例1において、エタノール添加量を40部(PVA系樹脂水溶液に対して5.6重量%)に変えた以外は同様にして、PVA系フィルムを得た。得られたPVA系フィルムのエタノール含有量を測定した結果、2200ppmであった。
<比較例3>
実施例1において、カルボキシル基変性PVA(A1)を4%水溶液粘度18mPa・s、平均ケン化度88モル%の未変性PVA(A2)に変えた以外は同様にして、PVA系フィルムを得た。得られたPVA系フィルムのエタノール含有量を測定した結果、120ppmであった。
上記実施例1、参考例1、比較例1,2,3で得られたPVA系フィルムを用いて、下記に示す方法に従って、フィルムの物性を測定し、評価した。結果を下記の表1に示す。
〔PVA系フィルムの水分率〕
(評価方法)
得られたPVA系フィルムから、幅方向中央部で5cm×5cmサイズの水分率測定用の試料を切り出した。切り出したフィルム試料について、フィルム重量(W)を電子天秤で秤量したのち、フィルム試料を水分率0.03%以下の脱水メタノール15ml(S)内に浸漬させて室温,1時間の条件でフィルム内の水分を抽出した。カールフィッシャー水分計(京都電子工業社製、「MKA-610」)を用いて、容量滴定法によって抽出液10ml(E)の水分量を測定し、以下の式からフィルム水分率(重量%)を算出した。
Figure 0007234626000004
F: カールフィッシャー試薬の力価(mg/ml)
V: 抽出液10mlの滴定に用いたカールフィッシャー試薬量(ml)
B: 脱水メタノール10mlの滴定に用いたカールフィッシャー試薬量(ml)
W: 5cm×5cmサイズにしたフィルム試料の重量(g)
E: カールフィッシャー測定に使用した抽出液の量(ml)
S: フィルム試料の水分抽出に使用した脱水メタノールの量(ml)
〔PVA系フィルムの炭素数1~3の1価アルコール含有量〕
(評価方法)
PVA系フィルムの炭素数1~3の1価アルコール含有量については、動的ヘッドスペース装置を備えたGC/MS分析を用いて以下に示した条件で測定した。
<動的ヘッドスペース条件>
・加熱脱着装置: TDS-3(ゲステル社製)
・試料量 : 約5mg
・加熱条件 : 120℃、60分
<GC/MS測定条件>
・GC部装置: Agilent 7890GC(アジレント・テクノロジー社製)
・カラム : DB-WAX(架橋PEGキャピラリーカラム)
・カラム温度: 40℃×5分 - 10℃/分 - 250℃×10分
・注入口温度: -150℃(捕集)→ 250℃
・キャリアーガス: ヘリウム
・カラム流量: 1.0mL/分
・スプリット比: 1/30
・MS部装置: Agilent 5977MSD(アジレント・テクノロジー社製)
・モード : SCANモード
〔フィルム乾燥後の気泡発生状態〕
(評価方法)
得られたPVA系フィルムから、幅方向中央部で5cm×5cmサイズの試料を切り出した。切り出したフィルム試料について、撹拌時に発生した気泡(長さ方向または幅方向の気泡径が250μm以上)と乾燥時に発生した小気泡(長さ方向または幅方向の気泡径が250μm未満)の残存状態についてデジタルマイクロスコープで観察して、5段階の評価基準で評価した。
(評価基準)
5: 気泡が認められず良好
4: 気泡径250μm未満の小気泡がわずかに存在(1個以上3個未満)
3: 気泡径250μm未満の小気泡が存在(3個以上10個未満)
2: 気泡径250μm以上の気泡のみ存在(1個以上)
もしくは、気泡径250μm未満の小気泡のみ多量に存在(10個以上)
1: 気泡径250μm以上の気泡が存在(1個以上)して、
なおかつ気泡径250μm未満の小気泡も存在(10個以上)
〔冷水溶解性〕
得られたPVA系フィルムを3cm×5cmのサイズにカットし、治具に固定した。次に、1リットルビーカーに水(1リットル)を入れ、スターラーにより撹拌(回転子長3cm、回転数750rpm)しながら水温を5℃に保ちつつ、治具に固定したPVA系フィルムをかかる水中に浸漬し、該フィルムが溶解するまでの時間(秒)を測定した。「溶解」の基準として直径1mm以上の不溶微粒子の分散が見られない場合を溶解とした。
〔薬剤包装体の評価〕
上記で得られたPVA系フィルムについて、Engel社製包装体製造機を用いて、下記の手順にて液体洗剤包装体を合計20個作製した。
即ち、装置の下部にある金型(縦41.5mm、横46.5mm、深さ20mm)の上に、TD(幅方向)を縦にしてフィルム(ボトムフィルム、サイズ:縦120mm×横150mm)を固定し、装置の上部にもMD(流れ方向)を横にしてフィルム(トップフィルム、サイズ:縦80mm×横120mm)を固定した。その後、ボトムフィルムを90℃の熱風を発生させるドライヤーで10秒間加熱し、ボトムフィルムを金型に真空成型した。次に、P&G社製パワージェルボールに包装された液体洗剤(含有成分の一部:グリセリン5.4%、プロピレングリコール22.6%、水分10.4%)を取り出して、成型されたフィルムに20mL投入した。続いて、トップフィルム全面に水を1.5g塗布して、トップフィルムとボトムフィルムを圧着し、30秒間圧着した後に、真空を解放し、液体洗剤包装体(2個)を得た。
(評価方法)
得られた薬剤包装体のうち液漏れが発生した検体数の割合を算出し、薬剤包装体の不良率(%)を求めた。
不良率(%)= 液漏れが発生した検体数 /20 ×100
なお、液漏れの発生した検体はいずれもフィルムの気泡欠点に起因する小孔発生による液漏れであり、水シール部分等から液漏れした検体はみられなかった。
Figure 0007234626000005
上記表1の結果より、実施例1のPVA系フィルムは、PVA系フィルムの炭素数1~3の1価アルコール含有量が特定条件を満足するものであるため、溶液調整時の気泡発生のみでなくフィルム乾燥時に発生する気泡発生が抑制されて、気泡欠点の少ないPVA系フィルムが得られることがわかる。そして、得られたPVA系フィルムを用いて作製した液体薬剤包装体の不良品(液漏れ)発生率が低く、良好な薬剤包装体が得られることがわかる。また、得られたPVA系フィルムは、5℃の冷水に対しても2分以内と短時間で溶解することから、冷水溶解性が要求される液体洗剤包装への適性が良好であることがわかる。
これに対して、PVA系フィルムの炭素数1~3の1価アルコール含有量が1ppmより少ない比較例1では、溶液調整後に気泡が発生しやすく、乾燥後のフィルムにも溶解時に発生した気泡が残存して気泡径250μm以上の気泡欠点が存在する結果となった。また、PVA系フィルムの炭素数1~3の1価アルコール含有量が2000ppmを超える比較例2では、溶解時における気泡発生は抑制されるものの、乾燥時の高温乾燥による気泡径250μm未満の小気泡が多量に存在する結果となった。このように、気泡欠点の発生したPVA系フィルムを用いて作製した薬剤包装体は、気泡欠点に起因する液漏れが発生し、薬剤包装体の生産性に劣るものであることがわかる。また、未変性PVAを用いた比較例3においては、実施例に対して冷水溶解性が十分でないものであった。
本発明のPVA系フィルムは気泡欠点が少ないことを特徴とすることから、表示欠点に対する要求が厳しい偏光膜用途(液晶テレビ、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピューター、プロジェクター、車載パネルなど)や、液体による穴開き耐性が要求される水溶性フィルム用途(農薬や洗剤等の薬剤のユニット包装用途、(水圧)転写用フィルム、ナプキン・紙おむつ等の生理用品、オストミーバッグ等の汚物処理用品、吸血シート等の医療用品、育苗シート・シードテープ・刺繍用基布等の一時的基材など)に有用である。
なかでも、本発明のPVA系フィルムは、変性ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とすることから、冷水溶解性に優れ、機械特性も液体製品包装時の液漏れ耐性が良好であるため薬剤等の個包装用途(薬剤包装体)に有用である。

Claims (5)

  1. 変性ポリビニルアルコール系樹脂(A)を主成分とするポリビニルアルコール系フィルムであって、炭素数1~3の1価アルコールを1~500ppm含有し、炭素数1~3の1価アルコールがメタノール、エタノールから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
  2. 変性ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  3. 請求項1または2記載のポリビニルアルコール系フィルムを張り合わせてなる包装体と、前記包装体に内包された薬剤とを含有することを特徴とする薬剤包装体。
  4. 薬剤が洗剤であることを特徴とする請求項3記載の薬剤包装体。
  5. 薬剤が液体洗剤であることを特徴とする請求項3または4記載の薬剤包装体。
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