JP7232632B2 - 多孔質シートの製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1においては、床の下張材が2層以上の軟質の発泡樹脂シートの積層体によって構成されている。これによって、歩行性と衝撃吸収性の両立を図っている。
特許文献2においては、床の下張材が連続気泡型ウレタンシートと不織布との積層体によって構成されている。これによって、遮音効果と接着性の向上を図っている。
さらには床に限らず、壁、屋根、その他各種設備における防音用多孔質シートは、省スペース化などのために薄肉化が求められることが多いが、薄肉にすると所要の防音性が得られない。
本発明は、かかる事情に鑑み、例えば床の下張材等に使われる多孔質シートにおいて、薄くても、高い防音性(吸音性、遮音性を含む)が得られるようにすることを目的とする。
当該特徴を有する多孔質シートによれば、高密度部と低密度部との面内分布によって音を効果的に吸収したり乱反射させたりできる。これによって、薄肉であっても高い防音性が発揮される。
ここで、みかけ密度とは、多孔質シートの樹脂部(実部)だけではなく気孔(内部空間)をも含んだ単位体積当たりの質量をいう。
これによって、音の乱反射効果が高まり、防音性を一層向上できる。
これによって、床の防音性と歩き心地を両立させることができる。
この場合、前記高密度部と低密度部との前記みかけ密度の比が1.1~5.0であることが好ましい。これによって、軽量床衝撃音を許容レベルにすることができる。
前記多孔質シートとなるべき実質的に均一なみかけ密度の発泡樹脂シートを用意し、前記発泡樹脂シートには、厚さ方向に突出する山部と前記厚さ方向に凹んだ谷部とが、前記厚さ方向と直交する面内に互い違いに分布されており、
加熱加圧装置によって、前記発泡樹脂シートを圧縮して平坦化するとともに加熱することを特徴とする。
これによって、前記発泡樹脂シートから前記多孔質シートを容易に製造することができる。
「実質的に均一なみかけ密度」とは、みかけ密度のばらつき(高密度部分と低密度部分との比)が1.1未満であることを言う。
図1は、建物の床1を示したものである。床1は、下地2と、下張材3と、床材4を備えている。コンクリート等の下地2の上に下張材3が敷設され、下張材3の上に好ましくはポリ塩化ビニル製の床材4が敷設されている。下地2と下張材3との間には接着層5が介在されている。下張材3と床材4との間には接着層6が介在されている。接着層5,6は、セメントその他の接着剤でもよく両面粘着テープでもよい。
床材4と下張材3とは、互いに別体になっていて別々に敷設されるのに限らず、互いに積層一体化されていて一体的に敷設されるようになっていてもよい。
前記発泡樹脂の気孔は、連続気泡でもよく、独立気泡でもよい。
前記発泡樹脂の材質は、発泡成形、プロファイル加工、熱プレス等の加工が可能な樹脂であれば特に限定はなく、例えばウレタン、メラミン、オレフィンなどの樹脂が挙げられる。加工性の観点からは、多孔質シートの材質は、ウレタンが好ましく、更に耐加水分解性の観点からは、エステル型ウレタンよりもエーテル型ウレタンが好ましい。
下張材3の厚さは、全域にわたって均一であり、好ましくは3mm~10mm程度である。3mmより小さいと、軽量床衝撃音を十分に低減できない。10mmより大きいと、歩き心地が悪くなる。
なお、高密度部3a及び低密度部3bの分布は、斜め格子状に限らず、三角格子状であってもよく、正方格子状であってもよく、その他のパターンになっていてもよい。
低密度部3bにおいては、高密度部3aよりも樹脂部の網目構造の破壊度又は圧縮度が小さく、気孔が高密度部3aよりも大きい(図6、図7参照)。
高密度部3aは、低密度部3bよりも硬い。
図4に示すように、下張材3となる発泡樹脂体30を用意する。発泡樹脂体30は、下張材3と同じ樹脂材質(例えばウレタン、メラミン、オレフィン)で構成され、厚肉のシート状になっている。
発泡樹脂体30の厚さは、下張材3の厚さの2倍以上である。発泡樹脂体30のみかけ密度は、全域にわたって実質的に均一であり、かつ低密度部3bの中心部よりも低密度である。発泡樹脂体30の全域にわたって同程度の大きさの気孔が均一に分布している(図5参照)。
プロファイル加工機7は、一対のロール7aと、カッター7bを有している。詳細な図示は省略するが、各ロール7aの外周面には、山部と谷部が設けられている。これら一対のロール7a間に発泡樹脂体30を通すことで、発泡樹脂体30を波形に圧縮変形させる。該変形された状態の発泡樹脂体30をカッター7bによって厚さ方向に2つの発泡樹脂シート31に分割する。
発泡樹脂シート31における最小厚さ(平坦な底面から谷部31bまでの厚さ)は、下張材3の厚さより大きい。発泡樹脂シート31のみかけ密度は、発泡樹脂体30のみかけ密度と等しく、全域にわたって実質的に均一であり、かつ低密度部3bの中心部よりも低密度である。
加圧力は、発泡樹脂シート31が所望の厚さまで圧縮され、かつ気泡がある程残る大きさに設定する。一対のプレス板8aの外周部どうし間にスペーサ8cを設け、該スペーサ8cの高さを調整することによって、発泡樹脂シート31の圧縮度を設定できる。
加熱温度は、好ましくは発泡樹脂シート31の樹脂材質が熱変形(熱塑性変形)を起こす温度範囲に設定する。
圧縮加熱時間は、発泡樹脂シート31が所望の厚さの平板形状まで熱塑性変形するための熱量を発泡樹脂シート31に過不足なく与え得る時間に設定する。
これによって、発泡樹脂シート31の気泡が圧縮又は破裂され、樹脂部が熱塑性変形して圧縮される。この結果、発泡樹脂シート31が薄肉の平板状に成形されるとともに全域にわたってみかけ密度が高くなる。しかも、山部31aが谷部31bよりも初期厚さが大きい部分だけ強く圧縮されることでみかけ密度がより高くなる。
このようにして、発泡樹脂シート31から下張材3が作製される。山部31aが高密度部3aとなり、谷部31bが低密度部3bとなる。
加熱加圧装置8における、発泡樹脂シート31を平らに成形する平坦化手段は、前記一対のプレス板8a,8aに限らず、一対の円筒状のロールやベルト式プレス等でもよい。ロールやベルト式プレスを用いることで、発泡樹脂シート31を搬送しながら連続的に成形できる。
下張材3(多孔質シート)よれば、厚みを薄くできる。かつ高密度部3aと低密度部3bとのパターンによって、薄くても、高い防音性(吸音性、遮音性)が得られる。特に、軽量床衝撃音を十分に低減することができる。更に、高密度部3aから低密度部3bへ向けて、みかけ密度が連続的に変化することによって、音の乱反射効果が高まり、防音性を一層向上できる。加えて、厚みを薄くするとともに適度な硬さの高密度部3aを適度な間隔で分布させることによって、歩き心地を良好にできる。この結果、下張材3の防音性と歩行性を両立させることができる。
例えば、高密度部3a及び低密度部3bの分布パターンは、規則的に限らず、不規則的であってもよい。
高密度部3aと低密度部3bとの間のみかけ密度の変化が不連続的であってもよい。
本発明の多孔質シートの用途は、床の下張材用に限らない。当該多孔質シートを建物の壁に設けることで、壁に吸音性を持たせたり、屋根材の裏面に積層することで屋根に雨音の低減効果を持たせたりしてもよい。更には建物以外の用途にも適用可能である。
<下張材(多孔質シート)の作製>
発泡樹脂体30として、エーテル型ポリウレタン(イノアック株式会社製ECS)を用意した。プロファイル加工機7によって前記発泡樹脂体30をプロファイル加工することによって、発泡樹脂シート31を製造した(図4参照)。
発泡樹脂シート31の底面から谷部31bの中心部までの厚さは10mmであった。
発泡樹脂シート31の底面から山部31aの中心部までの厚さは11mmであった。
隣接する山部31aどうし間の間隔(山部31aの配置ピッチ)は、30mmであった。
スペーサ8cの高さは、3mmであった。
加熱温度は、200℃であった。
圧縮加熱時間は、3分間であった。
これによって、高密度部3aと低密度部3bとのみかけ密度比が1.1、厚さ3mmの下張材3(多孔質シート)を作製した。
ポリ塩化ビニル製の床材4(田島ルーフィング株式会社製ビュージスタVSH-402)を50cm×60cmの大きさにカットするとともに、前記実施例1の下張材3を同じ大きさにカットして、前記床材4の裏面に実施例1の下張材3を両面テープ(大共株式会社製P-060)を介して貼付けた。
これら床材4と下張材3からなる床シートサンプルを、残響室の2階の床のコンクリート下地2上に両面テープ (大共株式会社製P-060)を介して貼付けた。下地2を構成するコンクリートスラブの厚さは200mmであった。
前記床シートサンプルについて、JIS A1418-1(2000)に準拠して残響室における軽量床衝撃音レベルLLを測定したところ、LL-50であった。LL-50以下が合格レベルである。
また、10人の評価者に床シートサンプル上を歩いてもらい、歩き心地の官能評価を行った。結果は合格レベルであった(表1)。
なお、表1において、「◎」は、10人中8人以上が歩行感が良いと判断したことを示す。「○」は、10人中6人若しくは7人が歩行感が良いと判断したことを示す。「△」は、10人中4人若しくは5人が歩行感が良いと判断したことを示す。ここまでが実用上問題がなく合格レベルである。「×」は、歩行感が良いと判断したのが10人中3人以下であることを示し、不合格レベルである。
加熱圧縮する前の発泡樹脂シート31の断面を図5に示す。実施例1の高密度部3aの断面を図6(a)に示し、低密度部3bの断面を図6(b)に示す。これら断面の写真はすべて同じ倍率及び照明条件で撮影したものであり、写真の上下方向はシート31,3の厚み方向と一致している。図6のスケールは図5と同じである。
図6(a)に示すように、実施例1の高密度部3aにおいては、低密度部3bよりも樹脂部の網目構造が厚さ方向(図6の上下)に圧縮されて、気孔が扁平、狭小または細小になっていた。図6(b)に示すように、低密度部3bにおいては、高密度部3aよりも樹脂部の網目構造の圧縮度が小さく、気孔が高密度部3aよりも平均して大きかった。
それ以外は実施例1と同様にして、厚さ3mmの下張材3(多孔質シート)を作製した。したがって、下張材3(多孔質シート)の高密度部3aと低密度部3bとのみかけ密度比は1.3であった。
さらに実施例1と同様にして床シートサンプル作製し、実施例1と同様の評価を行った。
軽量床衝撃音レベルは、LL-45であった。
歩き心地は、「○」であった。
それ以外は実施例1と同様にして、厚さ3mmの下張材3(多孔質シート)を作製した。したがって、下張材3(多孔質シート)の高密度部3aと低密度部3bとのみかけ密度比は3.3であった。
さらに実施例1と同様にして床シートサンプルを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
軽量床衝撃音レベルは、LL-45であった。
歩き心地は、「○」であった。
図7(a)に示すように、実施例3の高密度部3aにおいては、樹脂部の網目構造が圧潰され、気孔(セル)の膜が破壊されていた。
図7(b)に示すように、実施例3の低密度部3bにおいては、樹脂部の網目構造の圧潰は殆ど起きておらず、気孔が破壊されずに残っていた。
それ以外は実施例1と同様にして、厚さ3mmの下張材3(多孔質シート)を作製した。したがって、下張材3(多孔質シート)の高密度部3aと低密度部3bとのみかけ密度比は4.8であった。
さらに実施例1と同様にして床シートサンプルを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
軽量床衝撃音レベルは、LL-45であった。
歩き心地は、「◎」であった。
それ以外は実施例1と同様にして、厚さ3mmの下張材3(多孔質シート)を作製した。したがって、下張材3(多孔質シート)の高密度部3aと低密度部3bとのみかけ密度比は5.0であった。
さらに実施例1と同様にして床シートサンプルを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
軽量床衝撃音レベルは、LL-50であった。
歩き心地は、「◎」であった。
それ以外は実施例1と同様にして、下張材3(多孔質シート)を作製した。ただし、厚さは10mmとした。したがって、下張材3(多孔質シート)の高密度部3aと低密度部3bとのみかけ密度比は3.3であった。
さらに実施例1と同様にして床シートサンプルを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
軽量床衝撃音レベルは、LL-35であった。
歩き心地は、合格レベルの「△」であった。
比較例として、厚さ10mmの平板状の発泡樹脂シートを加熱圧縮することによって、厚さ3mmの下張材(多孔質シート)を作製した。したがって、下張材(多孔質シート)の全域にわたってみかけ密度が均一であり、高密度部と低密度部の区別は無かった。
さらに実施例1と同様にして床シートサンプルを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
軽量床衝撃音レベルは、LL-55であり、防音効果が実施例1~6より低かった。
歩き心地は、「○」であった。
比較例2として、厚さ30mmの平板状の発泡樹脂シートを加熱圧縮することによって、厚さ3mmの下張材(多孔質シート)を作製した。
さらに実施例1と同様にして床シートサンプルを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
軽量床衝撃音レベルは、LL-60であり、防音効果が比較例1よりも更に低下した。
歩き心地は、「◎」であった。
2 下地
3 下張材(多孔質シート)
3a 高密度部
3b 低密度部
4 床材
7 プロファイル加工機
8 加熱加圧装置
8a プレス板
8b ヒータ
8c スペーサ
30 発泡樹脂体
31 発泡樹脂シート
31a 山部
31b 谷部
Claims (4)
- 軟質平板状の発泡樹脂からなり、みかけ密度が相対的に高い高密度部と相対的に低い低密度部とが、厚さ方向と直交する面内に互い違いに分布されている多孔質シートを製造する方法であって、
前記多孔質シートとなるべき実質的に均一なみかけ密度の発泡樹脂シートを用意し、前記発泡樹脂シートには、厚さ方向に突出する山部と前記厚さ方向に凹んだ谷部とが、前記厚さ方向と直交する面内に互い違いに分布されており、
加熱加圧装置によって、前記発泡樹脂シートを圧縮して平坦化するとともに加熱することを特徴とする多孔質シートの製造方法。 - 前記多孔質シートの互いに隣接する高密度部と低密度部との間の前記みかけ密度の変化が連続的であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記多孔質シートが、床の下地と床材の間に敷設される下張材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記多孔質シートの前記高密度部の中心部と前記低密度部の中心部とのみかけ密度比が1.1~5.0であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
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