以下、図面を参照してレーザ加工方法及びレーザ加工装置の一実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
実施形態に係るレーザ加工装置では、加工対象物にレーザ光を集光することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物に改質領域を形成する。そこで、まず、改質領域の形成について、図1~図6を参照して説明する。
図1に示されるように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される対象物である加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるための移動機構であるステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅、パルス波形等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の移動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
レーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿った改質領域が加工対象物1に形成される。なお、ここでは、レーザ光Lを相対的に移動させるためにステージ111を移動させたが、集光用レンズ105を移動させてもよいし、或いはこれらの両方を移動させてもよい。
加工対象物1としては、半導体材料で形成された半導体基板や圧電材料で形成された圧電基板等を含む板状の部材(例えば、基板、ウェハ等)が用いられる。図2に示されるように、加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示されるように、加工対象物1の内部に集光点(集光位置)Pを合わせた状態で、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4、図5及び図6に示されるように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1に形成され、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7が切断起点領域8となる。切断予定ライン5は、照射予定ラインに対応する。
集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、これらが組み合わされた3次元状であってもよいし、座標指定されたものであってもよい。切断予定ライン5は、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部、表面3又は裏面に形成されていればよい。改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面3、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。改質領域7を形成する際のレーザ光入射面は、加工対象物1の表面3に限定されるものではなく、加工対象物1の裏面であってもよい。
ちなみに、加工対象物1の内部に改質領域7を形成する場合には、レーザ光Lは、加工対象物1を透過すると共に、加工対象物1の内部に位置する集光点P近傍にて特に吸収される。これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。この場合、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一方、加工対象物1の表面3又は裏面に改質領域7を形成する場合には、レーザ光Lは、表面3又は裏面に位置する集光点P近傍にて特に吸収され、表面3又は裏面から溶融され除去されて、穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)。
改質領域7は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域7としては、例えば、溶融処理領域(一旦溶融後再固化した領域、溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくとも何れか一つを意味する)、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。更に、改質領域7としては、加工対象物1の材料において改質領域7の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある。加工対象物1の材料が単結晶シリコンである場合、改質領域7は、高転位密度領域ともいえる。
溶融処理領域、屈折率変化領域、改質領域7の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、及び、格子欠陥が形成された領域は、更に、それら領域の内部や改質領域7と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック)を内包している場合がある。内包される亀裂は、改質領域7の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1は、結晶構造を有する結晶材料からなる基板を含む。例えば加工対象物1は、窒化ガリウム(GaN)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、LiTaO3、及び、サファイア(Al2O3)の少なくとも何れかで形成された基板を含む。換言すると、加工対象物1は、例えば、窒化ガリウム基板、シリコン基板、SiC基板、LiTaO3基板、又はサファイア基板を含む。結晶材料は、異方性結晶及び等方性結晶の何れであってもよい。また、加工対象物1は、非結晶構造(非晶質構造)を有する非結晶材料からなる基板を含んでいてもよく、例えばガラス基板を含んでいてもよい。
実施形態では、切断予定ライン5に沿って改質スポット(加工痕)を複数形成することにより、改質領域7を形成することができる。この場合、複数の改質スポットが集まることによって改質領域7となる。改質スポットとは、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射:レーザショット)で形成される改質部分である。改質スポットとしては、クラックスポット、溶融処理スポット若しくは屈折率変化スポット、又はこれらの少なくとも1つが混在するもの等が挙げられる。改質スポットについては、要求される切断精度、要求される切断面の平坦性、加工対象物1の厚さ、種類、結晶方位等を考慮して、その大きさや発生する亀裂の長さを適宜制御することができる。また、実施形態では、切断予定ライン5に沿って、改質スポットを改質領域7として形成することができる。
[実施形態に係るレーザ加工装置]
次に、実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。以下の説明では、水平面内において互いに直交する方向をX軸方向及びY軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向とする。
[レーザ加工装置の全体構成]
図7に示されるように、レーザ加工装置200は、装置フレーム210と、第1移動機構(移動機構)220と、支持台230と、第2移動機構240と、を備えている。さらに、レーザ加工装置200は、レーザ出力部300と、レーザ集光部400と、制御部500と、を備えている。
第1移動機構220は、装置フレーム210に取り付けられている。第1移動機構220は、第1レールユニット221と、第2レールユニット222と、可動ベース223と、を有している。第1レールユニット221は、装置フレーム210に取り付けられている。第1レールユニット221には、Y軸方向に沿って延在する一対のレール221a,221bが設けられている。第2レールユニット222は、Y軸方向に沿って移動可能となるように、第1レールユニット221の一対のレール221a,221bに取り付けられている。第2レールユニット222には、X軸方向に沿って延在する一対のレール222a,222bが設けられている。可動ベース223は、X軸方向に沿って移動可能となるように、第2レールユニット222の一対のレール222a,222bに取り付けられている。可動ベース223は、Z軸方向に平行な軸線を中心線として回転可能である。
支持台230は、可動ベース223に取り付けられている。支持台230は、加工対象物1を支持する。加工対象物1は、例えば、シリコン等の半導体材料からなる基板の表面側に複数の機能素子(フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、又は回路として形成された回路素子等)がマトリックス状に形成されたものである。加工対象物1が支持台230に支持される際には、図8に示されるように、環状のフレーム11に張られたフィルム12上に、例えば加工対象物1の表面1a(複数の機能素子側の面)が貼付される。支持台230は、クランプによってフレーム11を保持すると共に真空チャックテーブルによってフィルム12を吸着することで、加工対象物1を支持する。支持台230上において、加工対象物1には、互いに平行な複数の切断予定ライン5a、及び互いに平行な複数の切断予定ライン5bが、隣り合う機能素子の間を通るように格子状に設定される。
図7に示されるように、支持台230は、第1移動機構220において第2レールユニット222が動作することで、Y軸方向に沿って移動させられる。また、支持台230は、第1移動機構220において可動ベース223が動作することで、X軸方向に沿って移動させられる。更に、支持台230は、第1移動機構220において可動ベース223が動作することで、Z軸方向に平行な軸線を中心線として回転させられる。このように、支持台230は、X軸方向及びY軸方向に沿って移動可能となり且つZ軸方向に平行な軸線を中心線として回転可能となるように、装置フレーム210に取り付けられている。
レーザ出力部300は、装置フレーム210に取り付けられている。レーザ集光部400は、第2移動機構240を介して装置フレーム210に取り付けられている。レーザ集光部400は、第2移動機構240が動作することで、Z軸方向に沿って移動させられる。このように、レーザ集光部400は、レーザ出力部300に対してZ軸方向に沿って移動可能となるように、装置フレーム210に取り付けられている。
制御部500は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等によって構成されている。制御部500は、レーザ加工装置200の各部の動作を制御する。
一例として、レーザ加工装置200では、次のように、各切断予定ライン5a,5b(図8参照)に沿って加工対象物1の内部に改質領域が形成される。
まず、加工対象物1の裏面1b(図8参照)がレーザ光入射面となるように、加工対象物1が支持台230に支持され、加工対象物1の各切断予定ライン5aがX軸方向に平行な方向に合わせられる。続いて、加工対象物1の内部において加工対象物1のレーザ光入射面から所定距離だけ離間した位置にレーザ光Lの集光点が位置するように、第2移動機構240によってレーザ集光部400が移動させられる。続いて、加工対象物1のレーザ光入射面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されつつ、各切断予定ライン5aに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられる。これにより、各切断予定ライン5aに沿って加工対象物1の内部に改質領域が形成される。
各切断予定ライン5aに沿っての改質領域の形成が終了すると、第1移動機構220によって支持台230が回転させられ、加工対象物1の各切断予定ライン5bがX軸方向に平行な方向に合わせられる。続いて、加工対象物1の内部において加工対象物1のレーザ光入射面から所定距離だけ離間した位置にレーザ光Lの集光点が位置するように、第2移動機構240によってレーザ集光部400が移動させられる。続いて、加工対象物1のレーザ光入射面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されつつ、各切断予定ライン5bに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられる。これにより、各切断予定ライン5bに沿って加工対象物1の内部に改質領域が形成される。
このように、レーザ加工装置200では、X軸方向に平行な方向が加工方向(レーザ光Lのスキャン方向)とされている。なお、各切断予定ライン5aに沿ったレーザ光Lの集光点の相対的な移動、及び各切断予定ライン5bに沿ったレーザ光Lの集光点の相対的な移動は、第1移動機構220によって支持台230がX軸方向に沿って移動させられることで、実施される。また、各切断予定ライン5a間におけるレーザ光Lの集光点の相対的な移動、及び各切断予定ライン5b間におけるレーザ光Lの集光点の相対的な移動は、第1移動機構220によって支持台230がY軸方向に沿って移動させられることで、実施される。
図9に示されるように、レーザ出力部300は、取付ベース301と、カバー302と、複数のミラー303,304と、を有している。更に、レーザ出力部300は、レーザ発振器(光源)310と、シャッタ320と、λ/2波長板ユニット330と、偏光板ユニット340と、ビームエキスパンダ350と、ミラーユニット360と、を有している。
取付ベース301は、複数のミラー303,304、レーザ発振器310、シャッタ320、λ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340、ビームエキスパンダ350及びミラーユニット360を支持している。複数のミラー303,304、レーザ発振器310、シャッタ320、λ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340、ビームエキスパンダ350及びミラーユニット360は、取付ベース301の主面301aに取り付けられている。取付ベース301は、板状の部材であり、装置フレーム210(図7参照)に対して着脱可能である。レーザ出力部300は、取付ベース301を介して装置フレーム210に取り付けられている。つまり、レーザ出力部300は、装置フレーム210に対して着脱可能である。
カバー302は、取付ベース301の主面301a上において、複数のミラー303,304、レーザ発振器310、シャッタ320、λ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340、ビームエキスパンダ350及びミラーユニット360を覆っている。カバー302は、取付ベース301に対して着脱可能である。
レーザ発振器310は、直線偏光のレーザ光LをX軸方向に沿ってパルス発振する。レーザ発振器310から出射されるレーザ光Lの波長は、500~550nm、1000~1150nm又は1300~1400nmのいずれかの波長帯に含まれる。500~550nmの波長帯のレーザ光Lは、例えばサファイアからなる基板に対する内部吸収型レーザ加工に適している。1000~1150nm及び1300~1400nmの各波長帯のレーザ光Lは、例えばシリコンからなる基板に対する内部吸収型レーザ加工に適している。レーザ発振器310から出射されるレーザ光Lの偏光方向は、例えば、Y軸方向に平行な方向である。レーザ発振器310から出射されたレーザ光Lは、ミラー303によって反射され、Y軸方向に沿ってシャッタ320に入射する。
レーザ発振器310では、次のように、レーザ光Lの出力のON/OFFが切り替えられる。レーザ発振器310が固体レーザで構成されている場合、共振器内に設けられたQスイッチ(AOM(音響光学変調器)、EOM(電気光学変調器)等)のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光Lの出力のON/OFFが高速に切り替えられる。レーザ発振器310がファイバレーザで構成されている場合、シードレーザ、アンプ(励起用)レーザを構成する半導体レーザの出力のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光Lの出力のON/OFFが高速に切り替えられる。レーザ発振器310が外部変調素子を用いている場合、共振器外に設けられた外部変調素子(AOM、EOM等)のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光Lの出力のON/OFFが高速に切り替えられる。
シャッタ320は、機械式の機構によってレーザ光Lの光路を開閉する。レーザ出力部300からのレーザ光Lの出力のON/OFFの切り替えは、上述したように、レーザ発振器310でのレーザ光Lの出力のON/OFFの切り替えによって実施されるが、シャッタ320が設けられていることで、例えばレーザ出力部300からレーザ光Lが不意に出射されることが防止される。シャッタ320を通過したレーザ光Lは、ミラー304によって反射され、X軸方向に沿ってλ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340に順次入射する。
λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340は、レーザ光Lの出力(光強度)を調整するアッテネータ550として機能する。また、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340は、レーザ光Lの偏光方向を調整する偏光方向調整部として機能する。λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340を順次通過したレーザ光Lは、X軸方向に沿ってビームエキスパンダ350に入射する。
ビームエキスパンダ350は、レーザ光Lの径を調整しつつ、レーザ光Lを平行化する。ビームエキスパンダ350を通過したレーザ光Lは、X軸方向に沿ってミラーユニット360に入射する。
ミラーユニット360は、支持ベース361と、複数のミラー362,363と、を有している。支持ベース361は、複数のミラー362,363を支持している。支持ベース361は、X軸方向及びY軸方向に沿って位置調整可能となるように、取付ベース301に取り付けられている。ミラー(第1ミラー)362は、ビームエキスパンダ350を通過したレーザ光LをY軸方向に反射する。ミラー362は、その反射面が例えばZ軸に平行な軸線回りに角度調整可能となるように、支持ベース361に取り付けられている。
ミラー(第2ミラー)363は、ミラー362によって反射されたレーザ光LをZ軸方向に反射する。ミラー363は、その反射面が例えばX軸に平行な軸線回りに角度調整可能となり且つY軸方向に沿って位置調整可能となるように、支持ベース361に取り付けられている。ミラー363によって反射されたレーザ光Lは、支持ベース361に形成された開口361aを通過し、Z軸方向に沿ってレーザ集光部400(図7参照)に入射する。つまり、レーザ出力部300によるレーザ光Lの出射方向は、レーザ集光部400の移動方向に一致している。上述したように、各ミラー362,363は、反射面の角度を調整するための機構を有している。
ミラーユニット360では、取付ベース301に対する支持ベース361の位置調整、支持ベース361に対するミラー363の位置調整、及び各ミラー362,363の反射面の角度調整が実施されることで、レーザ出力部300から出射されるレーザ光Lの光軸の位置及び角度がレーザ集光部400に対して合わされる。つまり、複数のミラー362,363は、レーザ出力部300から出射されるレーザ光Lの光軸を調整するための構成である。
図10に示されるように、レーザ集光部400は、筐体401を有している。筐体401は、Y軸方向を長手方向とする直方体状の形状を呈している。筐体401の一方の側面401eには、第2移動機構240が取り付けられている(図11及び図13参照)。筐体401には、ミラーユニット360の開口361aとZ軸方向において対向するように、円筒状の光入射部401aが設けられている。光入射部401aは、レーザ出力部300から出射されたレーザ光Lを筐体401内に入射させる。ミラーユニット360と光入射部401aとは、第2移動機構240によってレーザ集光部400がZ軸方向に沿って移動させられた際に互いに接触することがない距離だけ、互いに離間している。
図11及び図12に示されるように、レーザ集光部400は、ミラー402と、ダイクロイックミラー403と、を有している。更に、レーザ集光部400は、反射型空間光変調器410と、4fレンズユニット420と、集光レンズユニット(対物レンズ)430と、駆動機構440と、一対の測距センサ450と、を有している。
ミラー402は、光入射部401aとZ軸方向において対向するように、筐体401の底面401bに取り付けられている。ミラー402は、光入射部401aを介して筐体401内に入射したレーザ光LをXY平面に平行な方向に反射する。ミラー402には、レーザ出力部300のビームエキスパンダ350によって平行化されたレーザ光LがZ軸方向に沿って入射する。つまり、ミラー402には、レーザ光Lが平行光としてZ軸方向に沿って入射する。そのため、第2移動機構240によってレーザ集光部400がZ軸方向に沿って移動させられても、Z軸方向に沿ってミラー402に入射するレーザ光Lの状態は一定に維持される。ミラー402によって反射されたレーザ光Lは、反射型空間光変調器410に入射する。
反射型空間光変調器410は、反射面410aが筐体401内に臨んだ状態で、Y軸方向における筐体401の端部401cに取り付けられている。反射型空間光変調器410は、例えば反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)であり、レーザ光Lを変調しつつ、レーザ光LをY軸方向に反射する。反射型空間光変調器410によって変調されると共に反射されたレーザ光Lは、Y軸方向に沿って4fレンズユニット420に入射する。ここで、XY平面に平行な平面内において、反射型空間光変調器410に入射するレーザ光Lの光軸と、反射型空間光変調器410から出射されるレーザ光Lの光軸とがなす角度αは、鋭角(例えば、10~60°)とされている。つまり、レーザ光Lは、反射型空間光変調器410においてXY平面に沿って鋭角に反射される。これは、レーザ光Lの入射角及び反射角を抑えて回折効率の低下を抑制し、反射型空間光変調器410の性能を十分に発揮させるためである。なお、反射型空間光変調器410では、例えば、液晶が用いられた光変調層の厚さが数μm~数十μm程度と極めて薄いため、反射面410aは、光変調層の光入出射面と実質的に同じと捉えることができる。
4fレンズユニット420は、ホルダ421と、反射型空間光変調器410側のレンズ422と、集光レンズユニット430側のレンズ423と、スリット部材424と、を有している。ホルダ421は、一対のレンズ422,423及びスリット部材424を保持している。ホルダ421は、レーザ光Lの光軸に沿った方向における一対のレンズ422,423及びスリット部材424の互いの位置関係を一定に維持している。一対のレンズ422,423は、反射型空間光変調器410の反射面410aと集光レンズユニット430の入射瞳面(瞳面)430aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。
これにより、反射型空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの像(反射型空間光変調器410において変調されたレーザ光Lの像)が、集光レンズユニット430の入射瞳面430aに転像(結像)される。スリット部材424には、スリット424aが形成されている。スリット424aは、レンズ422とレンズ423との間であって、レンズ422の焦点面付近に位置している。反射型空間光変調器410によって変調されると共に反射されたレーザ光Lのうち不要な部分は、スリット部材424によって遮断される。4fレンズユニット420を通過したレーザ光Lは、Y軸方向に沿ってダイクロイックミラー403に入射する。
ダイクロイックミラー403は、レーザ光Lの大部分(例えば、95~99.5%)をZ軸方向に反射し、レーザ光Lの一部(例えば、0.5~5%)をY軸方向に沿って透過させる。レーザ光Lの大部分は、ダイクロイックミラー403においてZX平面に沿って直角に反射される。ダイクロイックミラー403によって反射されたレーザ光Lは、Z軸方向に沿って集光レンズユニット430に入射する。
集光レンズユニット430は、Y軸方向における筐体401の端部401d(端部401cの反対側の端部)に、駆動機構440を介して取り付けられている。集光レンズユニット430は、ホルダ431と、複数のレンズ432と、を有している。ホルダ431は、複数のレンズ432を保持している。複数のレンズ432は、支持台230に支持された加工対象物1(図7参照)に対してレーザ光Lを集光する。駆動機構440は、圧電素子の駆動力によって、集光レンズユニット430をZ軸方向に沿って移動させる。
一対の測距センサ450は、X軸方向において集光レンズユニット430の両側に位置するように、筐体401の端部401dに取り付けられている。各測距センサ450は、支持台230に支持された加工対象物1(図7参照)のレーザ光入射面に対して測距用の光(例えば、レーザ光)を出射し、当該レーザ光入射面によって反射された測距用の光を検出することで、加工対象物1のレーザ光入射面の変位データを取得する。なお、測距センサ450には、三角測距方式、レーザ共焦点方式、白色共焦点方式、分光干渉方式、非点収差方式等のセンサを利用することができる。
レーザ加工装置200では、上述したように、X軸方向に平行な方向が加工方向(レーザ光Lのスキャン方向)とされている。そのため、各切断予定ライン5a,5bに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられる際に、一対の測距センサ450のうち集光レンズユニット430に対して相対的に先行する測距センサ450が、各切断予定ライン5a,5bに沿った加工対象物1のレーザ光入射面の変位データを取得する。そして、加工対象物1のレーザ光入射面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されるように、駆動機構440が、測距センサ450によって取得された変位データに基づいて集光レンズユニット430をZ軸方向に沿って移動させる。
レーザ集光部400は、ビームスプリッタ461と、一対のレンズ462,463と、プロファイル取得用カメラ(強度分布取得部)464と、を有している。ビームスプリッタ461は、ダイクロイックミラー403を透過したレーザ光Lを反射成分と透過成分とに分ける。ビームスプリッタ461によって反射されたレーザ光Lは、Z軸方向に沿って一対のレンズ462,463及びプロファイル取得用カメラ464に順次入射する。一対のレンズ462,463は、集光レンズユニット430の入射瞳面430aとプロファイル取得用カメラ464の撮像面とが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。これにより、集光レンズユニット430の入射瞳面430aでのレーザ光Lの像が、プロファイル取得用カメラ464の撮像面に転像(結像)される。上述したように、集光レンズユニット430の入射瞳面430aでのレーザ光Lの像は、反射型空間光変調器410において変調されたレーザ光Lの像である。したがって、レーザ加工装置200では、プロファイル取得用カメラ464による撮像結果を監視することで、反射型空間光変調器410の動作状態を把握することができる。
更に、レーザ集光部400は、ビームスプリッタ471と、レンズ472と、レーザ光Lの光軸位置モニタ用のカメラ473と、を有している。ビームスプリッタ471は、ビームスプリッタ461を透過したレーザ光Lを反射成分と透過成分とに分ける。ビームスプリッタ471によって反射されたレーザ光Lは、Z軸方向に沿ってレンズ472及びカメラ473に順次入射する。レンズ472は、入射したレーザ光Lをカメラ473の撮像面上に集光する。レーザ加工装置200では、カメラ464及びカメラ473のそれぞれによる撮像結果を監視しつつ、ミラーユニット360において、取付ベース301に対する支持ベース361の位置調整、支持ベース361に対するミラー363の位置調整、及び各ミラー362,363の反射面の角度調整を実施することで(図9及び図10参照)、集光レンズユニット430に入射するレーザ光Lの光軸のずれ(集光レンズユニット430に対するレーザ光の強度分布の位置ずれ、及び集光レンズユニット430に対するレーザ光Lの光軸の角度ずれ)を補正することができる。
複数のビームスプリッタ461,471は、筐体401の端部401dからY軸方向に沿って延在する筒体404内に配置されている。一対のレンズ462,463は、Z軸方向に沿って筒体404上に立設された筒体405内に配置されており、プロファイル取得用カメラ464は、筒体405の端部に配置されている。レンズ472は、Z軸方向に沿って筒体404上に立設された筒体406内に配置されており、カメラ473は、筒体406の端部に配置されている。筒体405と筒体406とは、Y軸方向において互いに並設されている。なお、ビームスプリッタ471を透過したレーザ光Lは、筒体404の端部に設けられたダンパ等に吸収されるようにしてもよいし、或いは、適宜の用途で利用されるようにしてもよい。
図12及び図13に示されるように、レーザ集光部400は、可視光源481と、複数のレンズ482と、レチクル483と、ミラー484と、ハーフミラー485と、ビームスプリッタ486と、レンズ487と、観察カメラ488と、を有している。可視光源481は、Z軸方向に沿って可視光Vを出射する。複数のレンズ482は、可視光源481から出射された可視光Vを平行化する。レチクル483は、可視光Vに目盛り線を付与する。ミラー484は、複数のレンズ482によって平行化された可視光VをX軸方向に反射する。ハーフミラー485は、ミラー484によって反射された可視光Vを反射成分と透過成分とに分ける。ハーフミラー485によって反射された可視光Vは、Z軸方向に沿ってビームスプリッタ486及びダイクロイックミラー403を順次透過し、集光レンズユニット430を介して、支持台230に支持された加工対象物1(図7参照)に照射される。
加工対象物1に照射された可視光Vは、加工対象物1のレーザ光入射面によって反射され、集光レンズユニット430を介してダイクロイックミラー403に入射し、Z軸方向に沿ってダイクロイックミラー403を透過する。ビームスプリッタ486は、ダイクロイックミラー403を透過した可視光Vを反射成分と透過成分とに分ける。ビームスプリッタ486を透過した可視光Vは、ハーフミラー485を透過し、Z軸方向に沿ってレンズ487及び観察カメラ488に順次入射する。レンズ487は、入射した可視光Vを観察カメラ488の撮像面上に集光する。レーザ加工装置200では、観察カメラ488による撮像結果を観察することで、加工対象物1の状態を把握することができる。
ミラー484、ハーフミラー485及びビームスプリッタ486は、筐体401の端部401d上に取り付けられたホルダ407内に配置されている。複数のレンズ482及びレチクル483は、Z軸方向に沿ってホルダ407上に立設された筒体408内に配置されており、可視光源481は、筒体408の端部に配置されている。レンズ487は、Z軸方向に沿ってホルダ407上に立設された筒体409内に配置されており、観察カメラ488は、筒体409の端部に配置されている。筒体408と筒体409とは、X軸方向において互いに並設されている。なお、X軸方向に沿ってハーフミラー485を透過した可視光V、及びビームスプリッタ486によってX軸方向に反射された可視光Vは、それぞれ、ホルダ407の壁部に設けられたダンパ等に吸収されるようにしてもよいし、或いは、適宜の用途で利用されるようにしてもよい。
なお、ここでは、加工対象物1に照射されたレーザ光Lは、加工対象物1のレーザ光入射面によって反射され、集光レンズユニット430を介してダイクロイックミラー403、ビームスプリッタ486、ハーフミラー485を順次透過し、Z軸方向に沿ってレンズ487及び観察カメラ488に順次入射する。レンズ487は、入射したレーザ光Lを観察カメラ488の撮像面上に集光する。したがって、レーザ加工装置200では、後述するように、観察カメラ488による撮像結果を観察(例えば画像処理)することで、加工対象物1のレーザ光入射面におけるレーザ光Lの反射光量を取得することができる。
レーザ加工装置200では、レーザ出力部300の交換が想定されている。これは、加工対象物1の仕様、加工条件等に応じて、加工に適したレーザ光Lの波長が異なるからである。そのため、出射するレーザ光Lの波長が互いに異なる複数のレーザ出力部300が用意される。ここでは、出射するレーザ光Lの波長が500~550nmの波長帯に含まれるレーザ出力部300、出射するレーザ光Lの波長が1000~1150nmの波長帯に含まれるレーザ出力部300、及び出射するレーザ光Lの波長が1300~1400nmの波長帯に含まれるレーザ出力部300が用意される。
一方、レーザ加工装置200では、レーザ集光部400の交換が想定されていない。これは、レーザ集光部400がマルチ波長に対応している(互いに連続しない複数の波長帯に対応している)からである。具体的には、ミラー402、反射型空間光変調器410、4fレンズユニット420の一対のレンズ422,423、ダイクロイックミラー403、及び集光レンズユニット430のレンズ432等がマルチ波長に対応している。
ここでは、レーザ集光部400は、500~550nm、1000~1150nm及び1300~1400nmの波長帯に対応している。これは、レーザ集光部400の各構成に所定の誘電体多層膜をコーティングすること等、所望の光学性能が満足されるようにレーザ集光部400の各構成が設計されることで実現される。なお、レーザ出力部300において、λ/2波長板ユニット330はλ/2波長板を有しており、偏光板ユニット340は偏光板を有している。λ/2波長板及び偏光板は、波長依存性が高い光学素子である。そのため、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340は、波長帯ごとに異なる構成としてレーザ出力部300に設けられている。
[レーザ加工装置におけるレーザ光の光路及び偏光方向]
レーザ加工装置200では、支持台230に支持された加工対象物1に対して集光されるレーザ光Lの偏光方向は、図11に示されるように、X軸方向に平行な方向であり、加工方向(レーザ光Lのスキャン方向)に一致している。ここで、反射型空間光変調器410では、レーザ光LがP偏光として反射される。これは、反射型空間光変調器410の光変調層に液晶が用いられている場合において、反射型空間光変調器410に対して入出射するレーザ光Lの光軸を含む平面に平行な面内で液晶分子が傾斜するように、当該液晶が配向されているときには、偏波面の回転が抑制された状態でレーザ光Lに位相変調が施されるからである(例えば、特許第3878758号公報参照)。
一方、ダイクロイックミラー403では、レーザ光LがS偏光として反射される。これは、レーザ光LをP偏光として反射させるよりも、レーザ光LをS偏光として反射させたほうが、ダイクロイックミラー403をマルチ波長に対応させるための誘電体多層膜のコーティング数が減少する等、ダイクロイックミラー403の設計が容易となるからである。
したがって、レーザ集光部400では、ミラー402から反射型空間光変調器410及び4fレンズユニット420を介してダイクロイックミラー403に至る光路が、XY平面に沿うように設定されており、ダイクロイックミラー403から集光レンズユニット430に至る光路が、Z軸方向に沿うように設定されている。
図9に示されるように、レーザ出力部300では、レーザ光Lの光路がX軸方向又はY軸方向に沿うように設定されている。具体的には、レーザ発振器310からミラー303に至る光路、並びに、ミラー304からλ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340及びビームエキスパンダ350を介してミラーユニット360に至る光路が、X軸方向に沿うように設定されており、ミラー303からシャッタ320を介してミラー304に至る光路、及び、ミラーユニット360においてミラー362からミラー363に至る光路が、Y軸方向に沿うように設定されている。
ここで、Z軸方向に沿ってレーザ出力部300からレーザ集光部400に進行したレーザ光Lは、図11に示されるように、ミラー402によってXY平面に平行な方向に反射され、反射型空間光変調器410に入射する。このとき、XY平面に平行な平面内において、反射型空間光変調器410に入射するレーザ光Lの光軸と、反射型空間光変調器410から出射されるレーザ光Lの光軸とは、鋭角である角度αをなしている。一方、上述したように、レーザ出力部300では、レーザ光Lの光路がX軸方向又はY軸方向に沿うように設定されている。
したがって、レーザ出力部300において、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340を、レーザ光Lの出力を調整するアッテネータ550としてだけでなく、レーザ光Lの偏光方向を調整する偏光方向調整部としても機能させる必要がある。
[4fレンズユニット]
上述したように、4fレンズユニット420の一対のレンズ422,423は、反射型空間光変調器410の反射面410aと集光レンズユニット430の入射瞳面430aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。具体的には、図14に示されるように、反射型空間光変調器410側のレンズ422の中心と反射型空間光変調器410の反射面410aとの間の光路の距離がレンズ422の第1焦点距離f1となり、集光レンズユニット430側のレンズ423の中心と集光レンズユニット430の入射瞳面430aとの間の光路の距離がレンズ423の第2焦点距離f2となり、レンズ422の中心とレンズ423の中心との間の光路の距離が第1焦点距離f1と第2焦点距離f2との和(すなわち、f1+f2)となっている。反射型空間光変調器410から集光レンズユニット430に至る光路のうち一対のレンズ422,423間の光路は、一直線である。
レーザ加工装置200では、反射型空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの有効径を大きくする観点から、両側テレセントリック光学系の倍率Mが、0.5<M<1(縮小系)を満たしている。反射型空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの有効径が大きいほど、高精細な位相パターンでレーザ光Lが変調される。反射型空間光変調器410から集光レンズユニット430に至るレーザ光Lの光路が長くなるのを抑制するという観点では、0.6≦M≦0.95であることができる。ここで、(両側テレセントリック光学系の倍率M)=(集光レンズユニット430の入射瞳面430aでの像の大きさ)/(反射型空間光変調器410の反射面410aでの物体の大きさ)である。レーザ加工装置200の場合、両側テレセントリック光学系の倍率M、レンズ422の第1焦点距離f1及びレンズ423の第2焦点距離f2が、M=f2/f1を満たしている。
なお、反射型空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの有効径を小さくする観点から、両側テレセントリック光学系の倍率Mが、1<M<2(拡大系)を満たしていてもよい。反射型空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの有効径が小さいほど、ビームエキスパンダ350(図9参照)の倍率が小さくて済み、XY平面に平行な平面内において、反射型空間光変調器410に入射するレーザ光Lの光軸と、反射型空間光変調器410から出射されるレーザ光Lの光軸とがなす角度α(図11参照)が小さくなる。反射型空間光変調器410から集光レンズユニット430に至るレーザ光Lの光路が長くなるのを抑制するという観点では、1.05≦M≦1.7であることができる。
[反射型空間光変調器]
図15に示されるように、反射型空間光変調器410は、シリコン基板213、駆動回路層914、複数の画素電極214、誘電体多層膜ミラー等の反射膜215、配向膜999a、液晶層(変調層)216、配向膜999b、透明導電膜217、及びガラス基板等の透明基板218がこの順に積層されることで構成されている。
透明基板218は、表面218aを有している。表面218aは、上述したように、実質的に反射型空間光変調器410の反射面410aを構成しているとも捉えられるが、より具体的には、レーザ光Lが入射される入射面である。すなわち、透明基板218は、例えばガラス等の光透過性材料からなり、反射型空間光変調器410の表面218aから入射したレーザ光Lを、反射型空間光変調器410の内部へ透過する。透明導電膜217は、透明基板218の裏面上に形成されており、レーザ光Lを透過する導電性材料(例えばITO)からなる。
複数の画素電極214は、透明導電膜217に沿ってシリコン基板213上にマトリックス状に配列されている。各画素電極214は、例えばアルミニウム等の金属材料からなり、これらの表面214aは、平坦且つ滑らかに加工されている。表面214aは、透明基板218の表面218aから入射したレーザ光Lを、表面218aに向けて反射する。すなわち、反射型空間光変調器410は、レーザ光Lが入射される表面218aと、表面218aから入射したレーザ光Lを表面218aに向けて反射する表面214aと、を含む。複数の画素電極214は、駆動回路層914に設けられたアクティブ・マトリクス回路によって駆動される。
アクティブ・マトリクス回路は、複数の画素電極214とシリコン基板213との間に設けられており、反射型空間光変調器410から出力しようとする光像に応じて各画素電極214への印加電圧を制御する。このようなアクティブ・マトリクス回路は、例えば図示しないX軸方向に並んだ各画素列の印加電圧を制御する第1ドライバ回路と、Y軸方向に並んだ各画素列の印加電圧を制御する第2ドライバ回路とを有しており、制御部500によって双方のドライバ回路で指定された画素の画素電極214に所定電圧が印加されるように構成されている。
配向膜999a,999bは、液晶層216の両端面に配置されており、液晶分子群を一定方向に配列させる。配向膜999a,999bは、例えばポリイミド等の高分子材料からなり、液晶層216との接触面にラビング処理等が施されている。
液晶層216は、複数の画素電極214と透明導電膜217との間に配置されており、各画素電極214と透明導電膜217とにより形成される電界に応じてレーザ光Lを変調する。すなわち、駆動回路層914のアクティブ・マトリクス回路によって各画素電極214に電圧が印加されると、透明導電膜217と各画素電極214との間に電界が形成され、液晶層216に形成された電界の大きさに応じて液晶分子216aの配列方向が変化する。そして、レーザ光Lが透明基板218及び透明導電膜217を透過して液晶層216に入射すると、このレーザ光Lは、液晶層216を通過する間に液晶分子216aによって変調され、反射膜215において反射した後、再び液晶層216により変調されて、出射する。
このとき、制御部500により各画素電極214に印加される電圧が制御され、その電圧に応じて、液晶層216において透明導電膜217と各画素電極214とに挟まれた部分の屈折率が変化する(各画素に対応した位置の液晶層216の屈折率が変化する)。この屈折率の変化により、印加した電圧に応じて、レーザ光Lの位相を液晶層216の画素ごとに変化させることができる。つまり、ホログラムパターンに応じた位相変調を画素ごとに液晶層216によって付与することができる。
換言すると、変調を付与するホログラムパターンとしての変調パターンを、反射型空間光変調器410の液晶層216に表示させることができる。変調パターンに入射し透過するレーザ光Lは、その波面が調整され、そのレーザ光Lを構成する各光線において進行方向に直交する所定方向の成分の位相にずれが生じる。したがって、反射型空間光変調器410に表示させる変調パターンを適宜設定することにより、レーザ光Lが変調(例えば、レーザ光Lの強度、振幅、位相、偏光等が変調)可能となる。
さらに換言すれば、各画素電極214に印可する電圧に応じて、画素電極214の配列方向に沿って液晶層216に屈折率分布が発生し、レーザ光Lに位相変調を付与し得る位相パターンが液晶層216に表示される。すなわち、反射型空間光変調器410は、表面218aと表面214aとの間に配置され、位相パターンを表示してレーザ光Lを変調する液晶層(変調層)216を含む。
[レーザ加工方法及びレーザ加工装置の一実施形態]
引き続いて、以上のレーザ加工装置200を用いたレーザ加工方法の一実施形態について説明する。まず、本実施形態に係るレーザ加工方法の概要について説明する。このレーザ加工方法においては、加工対象物1の加工用レーザ光(例えばレーザ光L)の波長(以下、「第1波長」という)に対して、加工対象物1のレーザ光入射面の反射率が未知である場合であっても、適切な加工を行うことを可能とする。
そのために、このレーザ加工方法においては、まず、第1波長に対する反射率が既知である参照表面1Rbを有するリファレンスウェハ(参照物)1R(図8参照)に参照表面1Rb側から第1波長の測定用レーザ光(例えばレーザ光L)を照射することにより、測定用レーザ光の参照表面1Rbでの反射光量として参照光量を取得する(第1工程)。
続いて、同様の測定用のレーザ光Lを、加工対象物1のレーザ光入射面である裏面(第1表面)1b側から加工対象物1に照射することにより、測定用のレーザ光Lの裏面1bでの反射光量として第1光量を取得する(第2工程)。なお、第1工程及び第2工程の順序は逆であってもよい。続いて、第1工程及び前記第2工程の後に、リファレンスウェハ1Rの既知の反射率、参照光量、及び、第1光量に基づいて、第1波長に対する裏面1bの反射率を算出する(第3工程)。
そして、第3工程の後に、第3工程において算出された裏面1bの反射率に応じて、加工用のレーザ光Lの照射条件を調整すると共に、調整された照射条件下において加工用のレーザ光Lを裏面1b側から加工対象物1に照射することにより、加工対象物1の少なくとも内部に改質領域7を形成するレーザ加工を行う(第4工程)。
なお、図16に示されるように、また上述したように、このレーザ加工方法においては、加工対象物1の裏面1bをレーザ光入射面とする。また、一例として、第4工程においては、加工対象物1の厚さ方向(表面1aから裏面1bに向かう方向(Z軸方向))に異なる2つの位置にそれぞれ改質領域7a,7bを形成する。
図16の(a)の場合には、反射型空間光変調器410に提示する画像パターン(変調パターン)の制御によって、レーザ光Lをレーザ光L1,L2に分岐すると共に、レーザ光L1,L2のそれぞれを加工対象物1の厚さ方向の互いに異なる位置に集光させる。すなわち、レーザ光L1の集光点P1とレーザ光L2の集光点P2の集光点とをZ軸方向に異なる位置に生じさせる。これにより、一度のスキャンにより2列の改質領域7a,7bを形成することが可能である。以下では、この場合を、2焦点加工モードと称する場合がある。なお、ここでは、集光点P1と集光点P2とは、スキャン方向(X軸方向)についても互いに異なる位置とされている。Z軸方向における集光点P1と集光点P2との間の距離を距離Dvとし、X軸方向における集光点P1と集光点P2との間の距離をDhとする。
一方、図16の(b)の場合には、反射型空間光変調器410に提示する画像パターンの制御によって、レーザ光Lを複数に分岐することなく、Z軸方向の位置を変えて2回のスキャンを行うことにより、Z軸方向に互いに異なる位置に2列の改質領域7a,7bを形成する。すなわち、レーザ光Lの1つの集光点Pの相対移動により、複数列の改質領域7a,7bを形成する。以下では、この場合を、単焦点加工モードと称する場合がある。これらの2つの場合(モード)は、後述するように、レーザ光Lの出力値の上限や加工対象物1のレーザ光入射面(ここでは裏面1b)の反射率等に応じて選択され得る。
引き続いて、各工程の詳細について説明する。図17は、本実施形態に係るレーザ加工方法の第1工程を示すフローチャートである。図17に示されるように、第1工程においては、まず、レーザ加工装置200にリファレンスウェハ1Rをセットする(工程S101)。より具体的には、この工程S101においては、リファレンスウェハ1Rを、図8における加工対象物1と同様にして、環状のフレーム11及びフィルム12等を用いて支持台230により支持する。リファレンスウェハ1Rは、第1波長に対する反射率が既知である参照表面1Rbを有する。第1波長は、加工対象物1の加工に適した波長である。また、リファレンスウェハ1Rは、例えばSiウェハである。
続いて、観察照明をオンとする(工程S102)。より具体的には、この工程S102においては、可視光源481から可視光Vを出射することにより、可視光Vにより参照表面1Rbを照明する。このとき、上述したように、可視光Vにはレチクル483により目盛り線が付与される。
続いて、レチクル483を検出する(工程S103)。より具体的には、例えば、観察カメラ488により取得された可視光Vの反射光の画像からレチクル483による目盛り線を検出する。続いて、その検出結果に基づいて、レーザ集光部400のZ軸方向の位置を調整することにより、集光レンズユニット430のZ軸方向における焦点位置を補正する(工程S104)。続いて、レーザ光Lの集光点PがZ軸方向について参照表面1Rbに一致するように、工程S104における焦点位置補正の分だけ、レーザ集光部400をZ軸方向にシフトさせる(工程S105)。続いて、観察照明をオフとする(工程S106)。より具体的には、この工程S106においては、可視光源481からの可視光Vの出射を停止する。
続いて、アッテネータ550を設定する(工程S107)。ここでは、参照表面1Rbでの測定用のレーザ光Lの反射光が観察カメラ488に入射したときに、観察カメラ488の輝度が飽和しないように、且つ、リファレンスウェハ1Rの参照表面1Rbに損傷を与えないように、アッテネータ550によりレーザ光Lの出力を調整する。このように、この第1工程においては、測定用のレーザ光Lをリファレンスウェハ1Rに照射する前に、アッテネータ550により測定用のレーザ光Lの出力を調整する。続いて、加工モードを単焦点加工モードとする(工程S108)。ここでは、反射型空間光変調器410に入力する画像パターンを単焦点用のパターン(レーザ光Lの分岐が生じないパターン)とする。
続いて、レーザ出力部300をオンとし、リファレンスウェハ1Rの参照表面1Rbに対して測定用のレーザ光Lの照射を開始する(工程S109)。この状態において、アパーチャ、レーザ発振モード、及び、露光時間等の条件設定を行う(工程S110)。アパーチャの設定では、観察カメラ488のカメラ中央に輝度範囲を求める円(アパーチャ)を設定する。レーザ発振モードの設定では、レーザ発振器310の発振モードをパルスからCW(連続波)に変更する。ただし、パルス発振されたレーザ光の出力値が、リファレンスウェハ1Rの加工閾値を越えない場合には、発振モードはパルスであってもよい。また、発振モードをCWとする場合には、疑似CWでもよい。
このように、ここでは、工程S107におけるアッテネータ550での出力の調整、及び、工程S110での発振モードの変更等によって、加工用のレーザ光Lと共通の光源から測定用のレーザ光Lが生成され、且つ、加工用のレーザ光Lと同一の光軸により測定用のレーザ光Lをリファレンスウェハ1Rに照射する。
続いて、レーザ出力部300をオフとし、参照表面1Rbに対する測定用のレーザ光Lの照射を停止する(工程S111)。これにより、測定用のレーザ光Lの反射光が観察カメラ488に入射しない状態となる。続いて、このように、測定用のレーザ光Lの反射光が観察カメラ488に入力されていないときの観察カメラ488の画像に基づいて、バックグランドを取得する(工程S112)。
そして、レーザ出力部300を再びオンとし、参照表面1Rbに対する測定用のレーザ光Lの照射を開始する(工程S113)。これにより、測定用のレーザ光Lの参照表面1Rbでの反射光が観察カメラ488に入射することになる。その状態において、測定用のレーザ光Lの参照表面1Rbでの反射光を観察カメラ488により撮像することにより、第1画像を取得する(工程S114)。そして、第1画像の画像処理により、測定用のレーザ光Lの参照表面1Rbでの反射光の輝度値を取得する(工程S115)。このとき、工程S112において取得されたバックグランドによってバックグランド補正を行ってもよい。
ここでは、第1画像におけるアパーチャ(一部の領域)内の輝度値の総和を取得すると共に、露光時間により規格化することにより、測定用のレーザ光Lの参照表面1Rbでの反射光量として参照光量を取得する。すなわち、ここでは、参照光量Iref=(アパーチャ内の輝度値の総和)/(露光時間)の計算により、参照光量Irefを取得する。一例として、アパーチャ内の輝度値の総和が6.93×103であり、露光時間が0.5[ms]である場合、参照光量Irefは1.39×104[1/ms]となる。
図18は、本実施形態に係るレーザ加工方法の第2工程を示すフローチャートである。図18に示されるように、第2工程においては、まず、レーザ加工装置200にサンプルウェハ(加工対象物1)をセットする(工程S201)。より具体的には、この工程S201においては、図8に示されるように、環状のフレーム11及びフィルム12等を用いて支持台230により加工対象物1を支持する。加工対象物1は、例えば、ダイシングラインを含むウェハ表面に薄膜が形成されたSi等の半導体ウェハやガラスウェハである。
続いて、観察照明をオンとする(工程S202)。より具体的には、この工程S202においては、上述した工程S102と同様に、可視光源481から可視光Vを出射することにより、可視光Vにより裏面1bを照明する。続いて、上述した工程S103と同様に、レチクル483を検出する(工程S203)。続いて、その検出結果に基づいて、レーザ集光部400のZ軸方向の位置を調整することにより、集光レンズユニット430のZ軸方向における焦点位置を補正する(工程S204)。続いて、レーザ光Lの集光点PがZ軸方向について裏面1bに一致するように、工程S204における焦点位置補正の分だけ、レーザ集光部400をZ軸方向にシフトさせる(工程S205)。続いて、工程S106と同様に、観察照明をオフとする(工程S206)。
続いて、アッテネータ550を設定する(工程S207)。ここでは、第1工程に係る上記の工程S107と同一の設定値において、アッテネータ550によりレーザ光Lの出力を調整する。このように、この第2工程においても、測定用のレーザ光Lを加工対象物1に照射する前に、アッテネータ550により測定用のレーザ光Lの出力を調整する。続いて、上述した工程S108と同様に、加工モードを単焦点加工モードとする(工程S208)。
続いて、上述した工程S109と同様に、レーザ出力部300をオンとし、加工対象物1の裏面1bに対して測定用のレーザ光Lの照射を開始する(工程S209)。この状態において、アパーチャ、レーザ発振モード、及び、露光時間等の条件設定を行う(工程S210)。これらの条件設定は、上述した工程S110と同様に行うことができる。このように、ここでも、工程S207におけるアッテネータ550での出力の調整、及び、工程S210での発振モードの変更等によって、加工用のレーザ光Lと共通の光源から測定用のレーザ光Lが生成され、且つ、加工用のレーザ光Lと同一の光軸により測定用のレーザ光Lを加工対象物1に照射する。
続いて、レーザ出力部300をオフとし、裏面1bに対する測定用のレーザ光Lの照射を停止する(工程S211)。これにより、測定用のレーザ光Lの反射光が観察カメラ488に入射しない状態となる。続いて、このように、測定用のレーザ光Lの反射光が観察カメラ488に入力されていないときの観察カメラ488の画像に基づいて、バックグランドを取得する(工程S212)。
そして、レーザ出力部300を再びオンとし、裏面1bに対する測定用のレーザ光Lの照射を開始する(工程S213)。これにより、測定用のレーザ光Lの裏面1bでの反射光が観察カメラ488に入射することになる。その状態において、測定用のレーザ光Lの裏面1bでの反射光を観察カメラ488により撮像することにより、第2画像を取得する(工程S214)。そして、第2画像の画像処理により、測定用のレーザ光Lの裏面1bでの反射光の輝度値を取得する(工程S215)。このとき、工程S212において取得されたバックグランドを用いてバックグランド補正を行ってもよい。
ここでは、上述した工程S115と同様に、第2画像におけるアパーチャ(第1画像の一部の領域に対応する第2画像の領域)内の輝度値の総和を取得すると共に、露光時間により規格化することにより、測定用のレーザ光Lの裏面1bでの反射光量として第1光量を取得する。すなわち、ここでは、第1光量Is=(アパーチャ内の輝度値の総和)/(露光時間)の計算により、第1光量Isを取得する。一例として、アパーチャ内の輝度値の総和が9.06×103であり、露光時間が5[ms]である場合、第1光量Isは1.81×103[1/ms]となる。
図19は、本実施形態に係るレーザ加工方法の第3工程及び第4工程を示すフローチャートである。図19に示されるように、第3工程においては、まず、加工対象物1のレーザ光入射面である裏面1bの反射率を算出する(工程S301)。より具体的には、ここでは、第1工程及び第2工程の後に、リファレンスウェハ1Rの反射率Rref、参照光量Iref、及び、第1光量Isに基づいて、第1波長に対する裏面1bの反射率Rsを算出する。すなわち、裏面1bの反射率Rs=参照表面1Rbの反射率Rref×(第1光量Is/参照光量Iref)との計算を行う。一例として、反射率Refが31.4%であり、第1光量Isが1.81×103[1/ms]であり、参照光量Irefが1.39×104[1/ms]である場合、反射率Rsは、約4.1%と相対的に求められる。この相対値は、裏面1bの第1波長における屈折率1.5から計算した値である4.0%と実質的に等しい。
引き続いて、第4工程においては、上述したように、第3工程において算出された裏面1bの反射率Rsに応じて、加工用のレーザ光Lの照射条件を調整すると共に、調整された照射条件下において加工用のレーザ光Lを裏面1b側から加工対象物1に照射することにより、加工対象物1の少なくとも内部に改質領域7を形成する。
そのために、ここでは、まず、レーザ光Lの照射条件として、レーザ光Lの出力を算出する(工程S302)。より具体的には、2焦点加工モードにおいて、加工対象物1を加工する場合のアッテネータ550後段のレーザ光Lの出力Ls2を、リファレンスウェハ1Rを加工する場合のアッテネータ550後段のレーザ光Lの出力Lref2と、上記の反射率Rs及び反射率Rrefと、を用いて、出力Ls2=Lref2×(1-Rref)/(1-Rs)と求める(図16の(a)参照)。
続いて、算出された出力Ls2が、アッテネータ550の設定範囲内であるか否かの判定を行う(工程S303)。工程S303の判定の結果、出力Ls2がアッテネータ550の設定範囲内であれば(工程S303:YES)、アッテネータ550の設定値を出力Ls2が出力できるように設定する(工程S304)。すなわち、加工用のレーザ光Lの照射条件をアッテネータ550により調整する。
続いて、反射型空間光変調器410の設定により、2焦点加工モードのために加工用のレーザ光Lをレーザ光L1,L2に分岐するパターンを反射型空間光変調器410に表示させるようにする(工程S305)。続いて、第1工程における工程S102及び第2工程における工程S202と同様に、観察照明をオンとする(工程S306)。続いて、レーザ光L1の集光点P1及びレーザ光L2の集光点P2が、それぞれ、所望する加工深さとなるように、レーザ集光部400をZ軸方向に移動させる(工程S307)。そして、レーザ出力部300をオンとし、調整された照射条件下において加工用のレーザ光L1,L2を裏面1b側から加工対象物1に照射することにより、加工対象物1の少なくとも内部に改質領域7a,7bを形成するレーザ加工を行い(S308)、処理を終了する。
一方、工程S303の判定の結果、出力Ls2がアッテネータ550の設定範囲外である場合(工程S303:NO)、すなわち、2焦点加工モードにおいて、求められた出力Ls2がアッテネータ550を最大にしても設定できない場合には、加工モードを単焦点加工モード(図16の(b)参照)として、以降の工程を実施する。
すなわち、まず、第1工程における工程S102及び第2工程における工程S202と同様に、観察照明をオンとする(工程S309)。続いて、加工用のレーザ光Lの集光点Pを、1列目の改質領域7aの加工深さ(図16の(b)参照)に位置させ得るように、レーザ集光部400をZ軸方向に移動させる(工程S310)。続いて、1列目の改質領域7aの加工深さに1つの集光点Pが形成されるように、反射型空間光変調器410に変調パターンを入力する(工程S311)。
続いて、1列目の改質領域7aを形成するときのアッテネータ550の設定値を決定する(工程S312)。より具体的には、加工用のレーザ光Lのアッテネータ550後段の出力Ls1が、リファレンスウェハ1Rに対する1列目の改質領域7aの加工深さでのレーザ光Lの出力Lreflowerと、アッテネータ550から集光レンズユニット430までのエネルギー損失Loss1と、上記の反射率Rs及び反射率Rrefと、を用いて、出力Ls1=((Lreflower)/(1-Loss1))×((1-Rref)/(1-Rs))となるように(図16の(b)参照)、アッテネータ550の設定値を決定する。つまり、ここでは、アッテネータ550を用いて、裏面1bの反射率Rsに応じて、加工用のレーザ光Lの照射条件として出力を調整する。
そして、調整された照射条件下(出力)において加工用のレーザ光Lを裏面1b側から加工対象物1に照射することにより、加工対象物1の少なくとも内部に改質領域7aを形成するレーザ加工を行う(工程S313)。
続いて、加工用のレーザ光Lの集光点Pを、2列目の改質領域7bの加工深さ(図16の(b)参照)に位置させ得るように、レーザ集光部400をZ軸方向に移動させる(工程S314)。続いて、2列目の改質領域7bの加工深さに1つの集光点Pが形成されるように、反射型空間光変調器410に変調パターンを入力する(工程S315)。
続いて、2列目の改質領域7bを形成するときのアッテネータ550の設定値を決定する(工程S316)。より具体的には、加工用のレーザ光Lのアッテネータ550後段の出力Ls1が、リファレンスウェハ1Rに対する2列目の改質領域7bの加工深さでのレーザ光Lの出力Lrefupperと、アッテネータ550から集光レンズユニット430までのエネルギー損失Loss1と、上記の反射率Rs及び反射率Rrefと、を用いて、出力Ls1=((Lrefupper)/(1-Loss1))×((1-Rref)/(1-Rs))となるように(図16の(b)参照)、アッテネータ550の設定値を決定する。つまり、ここでは、アッテネータ550を用いて、裏面1bの反射率Rsに応じて、加工用のレーザ光Lの照射条件として出力を調整する。
そして、調整された照射条件下(出力)において加工用のレーザ光Lを裏面1b側から加工対象物1に照射することにより、加工対象物1の少なくとも内部に改質領域7bを形成するレーザ加工を行い(工程S313)、処理を終了する。
以上の各工程は、制御部500の制御のもとで行われてもよい。換言すれば、レーザ加工装置200は、各部の制御により上記の各工程を実行する制御部500を備えることができる。すなわち、制御部500は、少なくとも、第1波長のレーザ光Lを出力するレーザ発振器310と、レーザ光Lの反射光を撮像することにより画像を取得する観察カメラ488とを制御する。
より具体的には、制御部500は、上記の第1工程として、参照表面1Rb側からリファレンスウェハ1Rに第1波長の測定用のレーザ光Lを照射する第1処理(工程S113)と、第1処理の後に、測定用のレーザ光Lの参照表面1Rbでの反射光を観察カメラ488により撮像して第1画像を取得する第2処理(工程S114)と、第2処理の後に、第1画像の画像処理により、測定用のレーザ光Lの参照表面1Rbでの反射光量として参照光量Irefを取得す第3処理(工程S115)と、を実行する。
また、制御部500は、上記の第2工程として、測定用のレーザ光Lを裏面1b側から加工対象物1に照射する第4処理(工程S213)と、第4処理の後に、測定用のレーザ光Lの裏面1bでの反射光を観察カメラ488により撮像して第2画像を取得する第5処理(工程S214)と、第5処理の後に、第2画像の画像処理により、測定用のレーザ光Lの裏面1bでの反射光量として第1光量を取得する第6処理(工程S215)と、を実行する。
さらに、制御部500は、上記の第3工程及び第4工程として、第3処理及び第6処理の後に、リファレンスウェハ1Rの反射率Rref、参照光量Iref、及び、第1光量Isに基づいて、第1波長に対する裏面1bの反射率Rsを算出する第7処理(工程S301)と、第7処理の後に、第7処理において算出された裏面1bの反射率Rsに応じて、加工用のレーザ光Lの照射条件を調整する(工程S304,S312,S316)と共に、調整された照射条件下において加工用のレーザ光Lを裏面1b側から加工対象物1に照射することにより、加工対象物1の少なくとも内部に改質領域7a,7bを形成するレーザ加工を行う第8処理(工程S308,S313,S317)と、を実行する。
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ加工方法及びレーザ加工装置200においては、反射率が既知であるリファレンスウェハ1Rの参照表面1Rbに対して、第1波長の測定用のレーザ光Lを照射することにより、当該参照表面1Rbでの反射光量である参照光量Irefを取得する。これと共に、同様にして、加工対象物1の裏面1bでの測定用のレーザ光Lの反射光量である第1光量Isを取得する。その後、それらの反射光量及び反射率に基づいて、加工対象物1の裏面1bの反射率Rsを算出する。そして、算出された裏面1bの反射率Rsに応じて加工用のレーザ光Lの照射条件を調整する共に、調整された条件下において加工用のレーザ光Lを加工対象物1に照射してレーザ加工を行う。この結果、これらの方法及び装置によれば、加工対象物1のレーザ光入射面である裏面1bの反射率Rsにバラツキがあって未知であっても、それに依らずに適切な加工が可能となる。
また、本実施形態に係るレーザ加工方法においては、第1工程においては、加工用のレーザ光Lの光源であるレーザ発振器310と共通の光源から出力された測定用のレーザ光Lを、加工用のレーザ光Lと同一の光軸によりリファレンスウェハ1Rに照射する。また、第2工程においては、同様にして、加工用のレーザ光Lの光源であるレーザ発振器310と共通の光源から出力された測定用のレーザ光Lを、加工用のレーザ光Lと同一の光軸により加工対象物1に照射する。このため、実際の加工に用いる加工用のレーザ光Lの条件と測定用のレーザ光Lの条件との乖離が避けられ、高精度な反射率の算出、及び、より適切なレーザ加工が可能となる。また、当該方法に用いる装置(レーザ加工装置200)を簡略化・低コスト化可能である。
また、本実施形態に係るレーザ加工方法においては、第1工程においては、測定用のレーザ光Lをリファレンスウェハ1Rに照射する前に、アッテネータ550により測定用のレーザ光Lの出力を調整する。また、第2工程においては、測定用のレーザ光Lを加工対象物1に照射する前に、第1工程と同一の設定値においてアッテネータ550により測定用のレーザ光Lの出力を調整する。このため、参照表面1Rb及び裏面1bの損傷を避けられると共に、反射光の光量を取得するための手段(例えば観察カメラ488)の損傷を抑制できる。
また、本実施形態に係るレーザ加工方法においては、第1工程においては、測定用のレーザ光Lの参照表面1Rbでの反射光を観察カメラ488により撮像して得られる第1画像の画像処理により、参照光量Irefを取得する。また、第2工程においては、測定用のレーザ光Lの裏面1bでの反射光を観察カメラ488により撮像して得られる第2画像の画像処理により、第1光量Isを取得する。このため、観察カメラ488の画像面内における反射光量の取得を自動化することが可能となる。
また、本実施形態に係るレーザ加工方法においては、第1工程においては、第1画像のアパーチャ内における輝度値の総和を観察カメラ488の露光時間により規格化することにより参照光量Irefを取得する。また、第2工程においては、第1画像のアパーチャ内に対応する第2画像のアパーチャ内における輝度値の総和を観察カメラ488の露光時間により規格化することにより第1光量Isを取得する。このため、より適切な反射光量の取得が可能となる。
さらに、本実施形態に係るレーザ加工方法においては、第1工程及び第2工程においては、測定用のレーザ光Lの反射光が観察カメラ488に入力されていないときの画像に基づいてバックグランド補正を行ってもよい。この場合、より高精度な反射光量の取得が可能となる。
以上の実施形態は、本発明の一側面に係るレーザ加工方法及びレーザ加工装置の一実施形態について説明したものである。したがって、本発明の一側面に係るレーザ加工方法及びレーザ加工装置は、上述したものに限定されず、任意に変更したものとすることができる。
例えば、2焦点加工モードにおいては、必要に応じて、分岐されたレーザ光L1,L2の出力が設定値となっているか否かの確認が可能である。この点について詳細に説明する。まず、反射型空間光変調器410に対して、レーザ光Lを、出力比がN1:N2となるレーザ光L1,L2に分岐させるような画像パターンを入力する。これと共に、反射型空間光変調器410の制御により、レーザ光L1,L2の集光点P1,P2のZ軸方向の距離Dvを0とする(例えば、そのようなパターンを重畳する)。
続いて、観察カメラ488の輝度が飽和しないように、且つ、加工対象物1のレーザ光入射面である裏面1bに損傷を与えないように、アッテネータ550によりレーザ光Lの出力を調整する。このときのアッテネータ550の設定値は、例えば、工程S107においてリファレンスウェハ1Rに対して設定したものと同一にすることができる。
続いて、レーザ出力部300をオンとし、加工対象物1の裏面1bに対してレーザ光L1,L2の照射を開始する。この状態において、アパーチャ、レーザ発振モード、及び、露光時間等の条件設定を行う。これらの条件設定は、上述した工程S110,S210と同様に行うことができる。ただし、ここでは、アパーチャは、観察カメラ488の中央から距離Dh/2だけ離れた位置を中心とする2つの円状に設定される。また、露光時間の設定では、アパーチャ内の輝度値が小さい場合には露光時間を増加させると共に、アパーチャ内の輝度値が大きい場合、露光時間をそのまま維持する。
続いて、レーザ出力部300をオフとし、裏面1bに対するレーザ光L1,L2の照射を停止する。これにより、レーザ光L1,L2の反射光が観察カメラ488に入射しない状態となる。続いて、このように、レーザ光L1,L2の反射光が観察カメラ488に入力されていないときの観察カメラ488の画像に基づいて、バックグランドを取得する。
そして、レーザ出力部300を再びオンとし、裏面1bに対するレーザ光L1,L2の照射を開始する。これにより、レーザ光L1,L2の裏面1bでの反射光が観察カメラ488に入射することになる。その状態において、レーザ光L1,L2の裏面1bでの反射光を観察カメラ488により撮像することにより、第3画像を取得する。そして、第3画像の画像処理により、レーザ光L1,L2の裏面1bでの反射光の輝度値を取得する。このとき、工程S212において取得されたバックグランドを用いてバックグランド補正を行ってもよい。
ここでは、第3画像におけるレーザ光L1に対応するアパーチャ内の輝度値の総和を取得すると共に、露光時間により規格化することにより、レーザ光L1の裏面1bでの反射光量として第3光量Isrを取得する。同様に、第3画像におけるレーザ光L2に対応するアパーチャ内の輝度値の総和を取得すると共に、露光時間により規格化することにより、レーザ光L2の裏面1bでの反射光量として第4光量Islを取得する。
これにより、第3光量Isrと第4光量Islとの比(Isr:Isl)と出力比N1:N2との比較により出力比N1:N2(すなわち分割比)が設定どおりか否かを確認できる。
なお、以上の実施形態においては、参照物としてSiウェハであるリファレンスウェハ1Rを例示したが、参照物はSiに限らないし、ウェハ状であることにも限定されない。また、カメラとして、観察カメラ488を利用したが、別のカメラを利用することもできる。さらに2焦点加工モードを例示したが、2焦点に限らず任意の多焦点加工モードに応用可能である。
さらに、カメラのダイナミックレンジ対策として、次のような手法も考えられる。すなわち、上記実施形態においては、制御部500が、参照光量Irefと第1光量Isとを用いて、反射率Rref×(第1光量Is/参照光量Iref)との計算を行うことにより、反射率Rsを算出した。なお、参照光量Irefは、(アパーチャ内の輝度値の総和SVr)/(露光時間Tr)であり、第1光量Isは、(アパーチャ内の輝度値の総和SVs)/(露光時間Ts)である。
これに対して、参照光量Irefを取得する際のレーザ光Lのパワーを計測パワーPrとし、第1光量Isを取得する際のレーザ光Lのパワーを計測パワーPsとしたとき、反射率Rref×(計測パワーPr/計測パワーPs)×(第1光量Is/参照光量Iref)との計算により反射率Rsを算出することができる。これにより、カメラのダイナミックレンジに律速されていた計測可能な反射率のダイナミックレンジが拡大可能となる。