JP7222824B2 - 壁高欄の補強方法及び補強構造 - Google Patents
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このようなコンクリートの壁高欄は、経年による劣化が生じたり、コンクリート床板に生じる振動が繰り返し伝達されること等によってひび割れを生じたりすることがある。劣化が生じた壁高欄は、鋼板を添接する方法、高強度の繊維からなるシートを貼り付ける方法等によって補修又は補強することが提案されており、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されるものがある。
特許文献1に記載されているように壁高欄の側面に鋼板又は高強度繊維のシート等を貼り付ける補修では、鉄筋の腐食による劣化等に対しては有効であるが、壁高欄の下端部に作用する曲げモーメントに対しては有効な補強とすることができない。つまり、壁高欄の下端部の内側で曲げモーメントによる引張応力度が発生するときに、この引張応力度を抑制する部材を有効に付加することが難しい。
また、この補強方法では、厚さの小さい既存の壁高欄に切削する緊張材挿通孔を上方に貫通させることなく、切削長さを小さく抑えるとともに、切削した先端部で緊張材を確実に定着することが可能となる。
とする。
さらに、緊張材の下端部は増厚コンクリートによって確実に定着されるとともに、増厚コンクリートによって片持ち状に張り出したコンクリート床版の先端部及び壁高欄の下部の断面を増大し、大きな剛性を有する構造とすることができる。
図1は、本発明の補強方法を適用することができる壁高欄の一例を示す断面図である。
この壁高欄1は鉄道の高架橋に設けられたものであり、コンクリート床版2の両側縁部に立ち上げられ、鉄道路線の方向に連続するコンクリートの壁体となっている。上記コンクリート床版2は、鉄道路線の軸線方向に設けられた主桁3及び該主桁3とほぼ直角方向に設けられた横桁4と一体に形成されており、主桁3及び横桁4がコンクリートの支柱5によって支持されている。
この壁高欄1は、鉄筋コンクリート構造となっており、コンクリート床版2の上面に連続してコンクリートを打ち足すことによって形成され、コンクリート床板2から壁高欄1にわたって連続する鉄筋6が配置されている。コンクリート床版2から所定の高さまでは増厚部1aとなっており、所定の高さ以上の標準部1bより壁厚が増大されている。
なお、緊張材11はPC鋼材を用いることもできるが、緊張力を導入するときの伸び量が大きく、腐食が生じない非金属繊維を用いるものが望ましい。
コンクリート床版2の下面の緊張材挿通孔12が開口する部分は、増厚コンクリート13にシース18が埋め込まれ、緊張材挿通孔は増厚コンクリート13を貫通して増厚コンクリート13の下面に開口するものとなっている。また、増厚コンクリート内のシース18が配置された位置の周囲には、らせん状の補強筋19が配置されている。
一方、緊張材の上端部及び下端部には周面に凸部を設けておき、定着長を短くすることもできる。
まず、壁高欄1の下端部又はその他の位置にひび割れが生じていたり、コンクリート床板2と壁高欄1との打ち継ぎ目に目開きが生じていたりするときには、エポキシ樹脂等の注入を行う。
その後、図3に示すように、片持ち状に張り出したコンクリート床版2の先端部分で、下面から上方の壁高欄1に向けて、緊張材挿通孔12を穿設する。穿孔には、例えばコアドリルを用い、壁高欄1に配置された鉄筋7を切断しないように行う。また、鉄筋7の切断を回避するために、流体の噴流によって穿孔する方法を採用することもできる。本例では、壁高欄1の厚さが160mmとなっており、壁高欄1の外壁面に沿って配置された鉄筋7と内壁面に沿って配置された鉄筋7との間に70mmの切削が可能な部分がある。緊張材挿通孔12は、壁高欄1の厚さ中心に沿って50mmの径で切削している。また、高さが2.4mの壁高欄1に対して、緊張材挿通孔12の上端の位置を壁高欄1の下端から1.5mの高さの位置としている。この切削深さは、緊張材11の上端部を壁高欄1のコンクリートに定着し、下部の補強が必要な範囲に緊張力の導入が可能となるように、緊張材11の必要定着長を考慮して定めることができる。
スリーブ22は、図4(b)に示すように鋼からなる管状の部材であり、外周面には雄ネジが切削されている。そして管状となった内側には緊張材の端部が挿入され、スリーブ22の内周面と緊張材11との間にモルタル23又は合成樹脂が充填されている。硬化したモルタル23又は合成樹脂の付着力によりスリーブ22と緊張材11とが一体となっている。
なお、無収縮モルタルに代えて、セメント系のグラウト材、合成樹脂、樹脂モルタル等を充填材として緊張材11の定着に用いることもできる。
緊張材11に緊張力が導入された状態を維持しながら、図6(b)に示すように緊張材挿通孔12が増厚コンクリート13の下面で開口している部分にグラウト注入管29を装着するとともに緊張材挿通孔12の開口を塞ぐ。また、緊張材挿通孔12の上部における定着部分の下側には、グラウト排出管30をあらかじめ設置しておく。このグラウト排出管30は間詰部材16を嵌め入れて定着部分に無収縮モルタル14を充填する前に定着部形成穴15から間詰部材16の下側に挿入しておいたものである。
壁高欄1の下端部に作用する曲げモーメントは、片持ち状に張り出したコンクリート床版2の先端部に伝達される。したがって、コンクリート床版2の先端部は、壁高欄1の下端部と同等もしくはそれ以上の耐力を備えていることが望ましく、壁高欄1の補強にともなってコンクリート床版2の補強が必要となるときに、本実施形態の補強構造を採用することができるものである。
上記床板緊張材31の緊張力によりコンクリート床板2の先端部分に水平方向の圧縮応力度が導入され、コンクリート床板2の先端部が曲げモーメントに対して補強される。
なお、コンクリート床板2に設けられる床版定着部形成穴33は、図7に示す例ではコンクリート床板2の下側から床板緊張材挿通孔32に連通するように設けられているが、コンクリート床板2の上面から切削して設けられるものであってもよい。
この実施形態でも、図2~図6までに示す実施形態と同様に、コンクリート床版2の下面から壁高欄1内に及ぶ緊張材挿通孔12を穿設する。そして、この緊張材挿通孔12に緊張材41を挿入し、上端部を定着部形成穴15から充填された無収縮モルタル14によって壁高欄1に定着する。
この実施形態で用いられる上記緊張材41は、下端部にスリーブ42が固着されたものであるが、図8(a)に示すように上端部が壁高欄1に定着された状態でスリーブ42の一部がコンクリート床版2の下面から突き出す長さに設定されている。
図10に示す例は、定着部形成穴61として、緊張材62の定着長の全域を壁高欄1の外壁面から緊張材が配置される深さまで開削するものである。そして、緊張材挿通孔63は上端が上記定着部形成穴61に連通するように設けられる。緊張材62はコンクリート床版の下側から挿入され、緊張材挿通孔63から上端部が定着部形成穴61内に突き出すように配置される。定着部形成穴61内に充填する充填材は無収縮モルタル、無収縮コンクリート等を用いることができ、定着部形成穴61内に突き出した緊張材62を埋め込むように充填される。定着部形成穴61内に充填されて硬化した無収縮モルタル等との付着によって緊張材が壁高欄に定着されるものである。
例えば、上記実施の形態では、鉄道の高架橋に設けられた壁高欄を補強するものであるが、道路橋に設けられた壁高欄についても適用することができる。また、鉄筋コンクリートの高架橋に限定されるものではなく、プレストレストコンクリートからなる長支間の橋梁に設けられた壁高欄、鋼桁上にコンクリート床版を支持した橋梁の壁高欄等についても適用することができる。
さらに、説明した実施の形態では、緊張材の上端部は壁高欄の高さの中位において定着するものとしているが、壁高欄の補強が必要となる範囲等に応じて定着する位置は適宜に選択することができる。
11:緊張材, 12:緊張材挿通孔, 13:増厚コンクリート, 14:無収縮モルタル, 15:定着部形成穴, 16:間詰部材, 17:補強シート, 18:シース, 19:らせん状の補強筋, 20:グラウト材, 21:アラミド繊維を織ったシート, 22:スリーブ, 23:モルタル, 24:ジャッキ, 25:緊張用ロッド, 26:第1のジャッキチェア, 27:第2のジャッキチェア, 28:ナット, 29:グラウト注入管, 30:グラウト排出管,
31:床版緊張材, 32:床板緊張材挿通孔, 33:床版定着部形成穴, 34:無収縮モルタル, 35:グラウト材,
41:緊張材, 42:スリーブ, 43:支圧板, 44:ナット, 45:緊張用ロッド, 46:ジャッキチェア, 47:ジャッキ, 48:グラウト注入管, 49:グラウト材, 50:グラウト排出管, 51:増厚コンクリート, 52:アラミド繊維を織ったシート,
61:定着部形成穴, 62:緊張材, 63:緊張材挿通孔,
71:定着部形成穴, 72:緊張材, 73:緊張材挿通孔
Claims (7)
- コンクリート床版の側部が片持ち状に張り出した橋梁又は高架橋に設けられ、前記コンクリート床版の側縁に沿って立ち上げられた鉄筋コンクリートからなる壁高欄の補強方法であって、
片持ち状に張り出した前記コンクリート床版の下側から上方へ前記壁高欄内に至る緊張材挿通孔を穿設する工程と、
前記壁高欄の側面から前記緊張材挿通孔の上部と連通する定着部形成穴を切削する工程と、
前記緊張材挿通孔に緊張材を挿通するとともに、前記定着部形成穴に充填する充填材又は/及び前記定着部形成穴内から前記緊張材挿通孔の上部に充填する充填材で、前記緊張材の上端部を前記壁高欄に定着する工程と、
前記コンクリート床版の下側で前記緊張材の下端部を緊張し、前記コンクリート床版又は該コンクリート床版に固定された部材に定着する工程と、を含むことを特徴とする壁高欄の補強方法。 - 前記緊張材は、軸線方向に連続する複数のアラミド繊維、炭素繊維、鉱物繊維又はガラス繊維を主材料とする棒状の部材であることを特徴とする請求項1に記載の壁高欄の補強方法。
- 前記定着部形成穴は、前記緊張材挿通孔の上端が該定着部形成穴内に開放されるように形成し、
前記緊張材の上端部を前記壁高欄に定着する工程は、
前記緊張材挿通孔から前記定着部形成穴内に前記緊張材の上端部を突き出し、
前記定着部形成穴内に未硬化のコンクリート又はモルタルを埋め戻し、硬化したコンクリート又はモルタルに埋め込んで前記緊張材の上端部を定着することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁高欄の補強方法。 - 前記緊張材の上端部の前記壁高欄に定着された範囲の側方を覆うように前記壁高欄の内壁面及び外壁面に、2方向又は3方向に連続する繊維を織ったシート又は金属板を貼り付ける工程を含むことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の壁高欄の補強方法。
- 前記コンクリート床版の先端部の下側から前記壁高欄の下端部の外側に連続し、該コンクリート床版及び該壁高欄と密着して厚さを増大する増厚コンクリートを打設する工程と、
緊張力を導入した前記緊張材の下端部を、緊張力の全部又は一部が伝達されるように前記増厚コンクリートに結合する工程と、を含むことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の壁高欄の補強方法。 - 前記コンクリート床版の先端から該コンクリート床版内に至る床版緊張材挿通孔を穿設する工程と、
前記コンクリート床版の上面又は下面から前記床版緊張材挿通孔の最深部と連通する床版定着部形成穴を切削する工程と、
前記床版緊張材挿通孔に床版緊張材を挿入するとともに、前記床版緊張材の先端部を前記コンクリート床版に定着する工程と、
前記コンクリート床版の先端部で前記床版緊張材を緊張し、該コンクリート床版又は該コンクリート床版に固定された部材に定着する工程と、を含むことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の壁高欄の補強方法。 - コンクリート床版の側部が片持ち状に張り出した橋梁又は高架橋に設けられ、前記コンクリート床版の側縁に沿って立ち上げられた鉄筋コンクリートからなる壁高欄の補強構造であって、
片持ち状に張り出した前記コンクリート床版の下側から上方へ前記壁高欄内に至る緊張材挿通孔が形成され、
該緊張材挿通孔に挿入された緊張材の上端部が、前記壁高欄の側面から前記緊張材挿通孔の上部と連通するように形成された定着部形成穴に充填された充填材又は/及び前記緊張材挿通孔の上部に充填された充填材によって前記壁高欄に定着され、
前記コンクリート床版の下側では、前記緊張材に緊張力が導入された状態で、該緊張材の下端部が前記コンクリート床版又は/及び該コンクリート床版の下側に密接するように打設された増厚コンクリートに定着されており、
前記増厚コンクリートは、片持ち状に張り出した前記コンクリート床版の下側から連続し、該コンクリート床版の先端面及び前記壁高欄の外壁面の下部を覆うように形成されていることを特徴とする壁高欄の補強構造。
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