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JP7221020B2 - 太陽光選択吸収体 - Google Patents

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Description

本発明は、太陽光選択吸収層が基板上に積層された太陽光選択吸収体に関する。
かかる太陽光選択吸収体は、太陽光を効率良く吸収して、被加熱物を加熱するための高温度の熱を得られるものである。尚、被加熱部としては、例えば、発電用の蒸気を生成する蒸気生成用熱交換部がある。
かかる太陽光選択吸収体として、太陽光選択吸収層がβ‐FeSiの層を備える形態に構成されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1においては、一例として、石英ガラスからなる基板の温度を600℃に設定し、当該基板の上に、金属モリブデン(Mo)の層とFeSiの層とを順次成膜することが記載されている。
ちなみに、600℃の基板上にFeSiの層を成膜すると、当該FeSiの層が、β‐FeSiの層として成膜されることが記載されている。
特開2015‐138638号公報
従来の太陽光選択吸収体は、太陽光選択吸収層がβ‐FeSiの層を備えるものであるから、β‐FeSiの層が酸化により劣化する虞があるため、大気の存在する環境では長時間使用できないものであり、大気の存在する環境下で長時間に亘って使用できる太陽光選択吸収体が要望されている。
すなわち、太陽光選択吸収体は、大気中や真空中で使用されることがあり、大気中での使用において、β‐FeSiの層が酸化により劣化する虞があることは勿論であり、真空中であっても、真空中に残存する大気(酸素)により、β‐FeSiの層が酸化により劣化する虞がある。
つまり、大気の存在する環境下での使用とは、大気中や大気(酸素)が残存する真空中での使用を意味し、大気の存在する環境下で長時間に亘って使用できる太陽光選択吸収体が要望されている。
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、太陽光を効率良く吸収しながらも、大気の存在する環境下で長時間に亘って使用できる太陽光選択吸収体を提供する点にある。
本発明の太陽光選択吸収体は、太陽光選択吸収層が基板上に積層されたものであって、その特徴構成は、
前記太陽光選択吸収層が、透明酸化物としての酸化アルミニウム、五酸化タンタル、二酸化ケイ素、五酸化ニオブ、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ハフニウムのいずれかにて形成される共鳴用透明酸化物層を前記太陽光選択吸収層と前記基板との積層方向に沿って並ぶ一対の白金層の間に位置させるMIM積層部を備える吸収制御部、及び、透明酸化物にて形成される入射用透明酸化物層の順に前記基板に近い側に位置させる形態で、前記吸収制御部及び前記入射用透明酸化物層を積層した状態に構成され、
前記共鳴用透明酸化物層の厚さが、4μm以下の波長を共鳴波長とする厚さである点にある。
すなわち、太陽光選択吸収層が、MIM積層部を備える吸収制御部及び入射用透明酸化物層の順に吸収制御部を基板に近い側に位置させる形態で、吸収制御部及び入射用透明酸化物層を積層した状態に構成されるものであるから、太陽光を含む光が、入射用透明酸化物層を透過して、MIM積層部を備える吸収制御部に入射されると、当該入射した光(太陽光を含む光)が吸収制御部にて吸収されて、熱エネルギーが発生することになる。
そして、その発生した熱エネルギーにより、基板が高温状態に加熱されることになり、高温状態になった基板からの熱にて被加熱物を加熱することができる。
吸収制御部のMIM積層部における基板に隣接する白金層が、MIM積層部を備える吸収制御部に入射した光(太陽光を含む光)が基板の存在側に透過することを抑制するから、吸収制御部による光の吸収を良好に行わせることができる。
また、高温状態になる基板が輻射光を発することになるが、吸収制御部のMIM積層部における基板に隣接する白金層が、基板の輻射光を遮蔽して、基板の輻射光が吸収制御部の内部に透過すること(換言すれば放熱すること)を抑制することになる。
また、白金よりも屈折率が小さくかつ空気よりも屈折率が大きな入射用透明酸化物層が、吸収制御部における当該入射用透明酸化物層の存在側に隣接する白金層に隣接して位置するから、入射用透明酸化物層の存在側に位置する白金層の反射率が低減されて、入射用透明酸化物層を透過した光を吸収制御部に適切に入射させることができる。
そして、吸収制御部が備えるMIM積層部は、太陽光選択吸収層と基板との積層方向に沿って並ぶ一対の白金層の間に共鳴用透明酸化物層を位置させるものであり、且つ、共鳴用透明酸化物層の厚さが、4μm以下の波長を共鳴波長とする厚さであるから、入射用透明酸化物層を透過して吸収制御部に入射された光(太陽光を含む光)のうちの4μm以下の波長(つまり、太陽光を含む中赤外光以下の狭帯域の波長)の光が、共鳴作用により効率良く吸収されることになり、その結果、高温状態の大きな熱エネルギーを得られる太陽光の吸収が促進されることにより、大きな熱エネルギーが発生することになる。
説明を加えると、MIMは、metal insulator metalを意味するものであって、MIM積層部は、吸収制御部に入射された光(太陽光を含む光)のうちの4μm以下の波長(つまり、太陽光を含む中赤外光以下の狭帯域の波長)の光を、太陽光選択吸収層と基板との積層方向に沿って並ぶ白金層の間(共鳴用透明酸化物層内)で繰り返し反射させながら、4μm以下の波長の光を白金層に吸収させることを繰り返すことになり、太陽光を含む4μm以下の波長の光が、吸収制御部に効率良く吸収されることになるのであり、その結果、大きな熱エネルギーを得られる太陽光の吸収が促進されることにより、高温状態の大きな熱エネルギーが発生することになる。
これに対して、吸収制御部に入射された光(太陽光を含む光)のうちの4μmよりも大きな波長の光は、共鳴作用により吸収が促進されることが少ない状態となるから、低温状態の熱エネルギーしか得ることができない4μmよりも大きな波長の光の吸収が抑えられることになる。
その結果、高温状態の大きな熱エネルギーを得ることができる太陽光を含む4μm以下の波長の光の吸収を促進して、高温状態の大きな熱エネルギーを適切に得られるのに対して、低温状態の熱エネルギーしか得ることができない4μmよりも大きな波長の光の吸収を抑えて、当該光の吸収による熱輻射(放熱)を抑制できる。
ちなみに、低温状態の熱エネルギーしか得ることができない4μmよりも大きな波長の光の吸収を抑えて、当該光の吸収による熱輻射(放熱)を抑制できるものであるから、高温状態の大きな熱エネルギーが発生することを促進できるばかりでなく、そのように高温状態の大きな熱エネルギーを発生する状態に温まり易く、また、その状態から冷めにくいともいえる。
尚、MIM積層部に備えさせる複数の白金層のうちの基板に隣接する白金層は、吸収制御部に入射した光(太陽光を含む光)が基板の存在側に透過することを抑制し、かつ、基板の輻射光が吸収制御部の内部に透過することを抑制する必要があるのに対して、他の白金層は、入射用透明酸化物層を透過して吸収制御部に入射した光の一部を透過させる必要があるから、複数の白金層のうちの基板に隣接する白金層の厚さ(膜厚)が、他の白金層の厚さ(膜厚)よりも大きく形成されることになる。
このように、太陽光選択吸収体は、低温状態の熱エネルギーしか得ることができない4μmよりも大きな波長の光の吸収を抑えながら、高温状態の大きな熱エネルギーを得ることができる太陽光を含む4μm以下の波長の光を効率よく吸収できるものであるが、加えて、大気の存在する環境下で長時間に亘って使用しても、吸収制御部及び基板が酸化により劣化することが抑制されることにより、光学特性を長時間維持できるのとなる。
つまり、MIM積層部の白金層は、白金にて形成されるものであり、白金は、標準酸化ギブスエネルギーがあらゆる温度域で正に大きく、空気中では酸化しないものであるから、空気中に設置しても、酸化により劣化することがない。
また、入射用透明酸化物層及び共鳴用透明酸化物層が、空気中の酸素が基板に向けて透過することを抑制するため、基板が酸化される材料にて形成される場合であっても、長時間に亘って、基板が酸化により劣化することが抑制されることになる。
したがって、太陽光選択吸収体は、大気の存在する環境下で長時間に亘って使用しても、光学特性を長時間維持できるものとなる。
ちなみに、基板に隣接する白金層を形成する白金は、高温に加熱されると、基板上を流動して凝集する虞があるが、共鳴用透明酸化物層が、白金の動きを抑制する作用を発揮することになり、また、共鳴用透明酸化物層に対して入射用透明酸化物層の存在側に隣接する白金層を形成する白金は、高温に加熱されると、共鳴用透明酸化物層上を流動して凝集する虞があるが、入射用透明酸化物層が、白金の動きを抑制する作用を発揮することになるから、白金の凝集を抑制できるため、この点からも、太陽光選択吸収層は、光学特性を長時間維持できるのとなる。
要するに、本発明の特徴構成によれば、太陽光を効率良く吸収しながらも、大気の存在する環境下で長時間に亘って使用できる太陽光選択吸収体を提供できる。
本発明の太陽光選択吸収体の更なる特徴構成は、前記吸収制御部が、前記MIM積層部を複数備える形態に構成されている点にある。
すなわち、太陽光選択吸収層と基板との積層方向に沿って並ぶ一対の白金層の間に共鳴用透明酸化物層を位置させるMIM積層部が、複数備えられているから、共鳴作用による吸収が十分に発揮されて、4μm以下の波長の光の吸収を適切に促進させることができる。
ちなみに、複数のMIM積層部が備えられるとは、太陽光選択吸収層と基板との積層方向に沿って並ぶ白金層を3つ以上設け、それら白金層における隣接するもの同士の間に、共鳴用透明酸化物層を位置させる形態を意味するものである。
尚、例えば、太陽光選択吸収層と基板との積層方向に沿って並ぶ白金層を3つ設け、それら白金層における隣接するもの同士の間に、共鳴用透明酸化物層を位置させる形態、つまり、2つのMIM積層部を備えさせる形態においては、太陽光を含む光が、隣接する白金層の間で反射されることに加えて、太陽光選択吸収層と基板との積層方向における両端に位置する白金層の間でも反射されながら吸収されることになる。
つまり、太陽光選択吸収層と基板との積層方向に沿って3つ以上の白金層が設けられる場合には、隣接する白金層同士の間で太陽光を含む光を繰り返し反射させることに加えて、他の白金層を挟む形態で位置する白金層同士の間でも、太陽光を含む光を繰り返し反射させる作用が発揮されることになる。
なお、複数のMIM積層部を備えさせる場合においては、MIM積層部の夫々の共鳴周波数を変えることにより、吸収が促進される4μm以下の波長の光として、波長が0.8μm以上で2.5μm未満の近赤外光及び波長が2.5μm以上で4μm以下の中赤外光に加えて、例えば、波長が0.4μm以上で0.8μm未満の可視光やさらには、波長が0.4μm未満の紫外光を、吸収が促進される光とすることができるものとなる。
要するに、本発明の太陽光選択吸収体の更なる特徴構成によれば、4μm以下の波長の光の吸収を適切に促進させることができる。
本発明の太陽光選択吸収体の更なる特徴構成は、前記基板と前記吸収制御部における前記基板に隣接する前記白金層との間に、基板用密着層が積層されている点にある。
すなわち、基板と吸収制御部における基板に隣接する白金層との間に、基板用密着層が積層されているから、吸収制御部及び基板が高温状態になった際に、吸収制御部が基板から剥がれることを抑制することができる。
つまり、基板の熱膨張率と複数の薄い膜を積層した吸収制御部の熱膨張率とが異なるため、吸収制御部及び基板が高温状態になった際に、吸収制御部が基板から剥がれる虞があるが、基板と吸収制御部における基板に隣接する白金層との密着性を、基板用密着層にて高めることにより、吸収制御部が基板から剥がれることを抑制できる。
要するに、本発明の太陽光選択吸収体の更なる特徴構成によれば、吸収制御部が基板から剥がれることを抑制できる。
本発明の太陽光選択吸収体の更なる特徴構成は、前記MIM積層部における前記白金層と前記共鳴用透明酸化物層との間、及び、前記入射用透明酸化物層と前記吸収制御部における前記入射用透明酸化物層に隣接する前記白金層との間の夫々に、白金用密着層が積層されている点にある。
すなわち、白金用密着層が、MIM積層部における白金層と共鳴用透明酸化物層との間、及び、入射用透明酸化物層と吸収制御部における入射用透明酸化物層に隣接する白金層との間に設けられているから、吸収制御部及び基板が高温状態になった際に、MIM積層部における白金層が流動して凝集することを抑制でき、また、熱膨張率の差によって、白金層と共鳴用透明酸化物層とが剥がれることや、入射用透明酸化物層と白金層とが剥がれることを抑制できる。
つまり、白金と透明酸化物との密着性が低いため、吸収制御部及び基板が高温状態になった際に、共鳴用透明酸化物層に隣接する白金層や入射用透明酸化物層に隣接する白金層が流動して凝集する虞があるが、白金用密着層が積層されて、共鳴用透明酸化物層に隣接する白金層の共鳴用透明酸化物層に対する密着性や、入射用透明酸化物層に隣接する白金層の入射用透明酸化物層に対する密着性が高められることにより、吸収制御部及び基板が高温状態になった際に、MIM積層部における白金層が流動して凝集することを抑制でき、また、白金層と共鳴用透明酸化物層とが剥がれることや、入射用透明酸化物層と白金層とが剥がれることを抑制できるのである。
要するに、本発明の太陽光選択吸収体の更なる特徴構成によれば、吸収制御部及び基板が高温状態になった際に、MIM積層部における白金層が流動して凝集することを抑制でき、また、白金層と共鳴用透明酸化物層とが剥がれることや、入射用透明酸化物層と白金層とが剥がれることを抑制できる。
本発明の太陽光選択吸収体の更なる特徴構成は、前記基板用密着層及び前記白金用密着層が、チタンにて形成される点にある。
すなわち、チタンは、基板に隣接する白金層の基板に対する密着性や、共鳴用透明酸化物層に隣接する白金層の共鳴用透明酸化物層に対する密着性や、入射用透明酸化物層に隣接する白金層の入射用透明酸化物層に対する密着性を良好に高めることができ、しかも、融点が1668℃と高いものであるから、吸収制御部及び基板が高温状態になった際に、MIM積層部における白金層が流動して凝集することを適切に抑制できる。
ちなみに、基板用密着層及び白金用密着層を形成するチタンは、大気の存在する環境下での太陽光選択吸収体の使用によって、徐々に酸化されて酸化チタンに変化することがある。換言すれば、大気の存在する環境下で太陽光選択吸収体が長時間に亘って使用されると、基板用密着層及び白金用密着層が、酸化チタンにて形成されていると見做すことができる。
但し、基板用密着層及び白金用密着層を形成するチタンは、全てが酸化チタンに変化するのではなく、白金層に密着する箇所のチタンは、酸化されることなく、白金層に密着するチタンの状態(金属状態)を継続することになる。
尚、チタンにて形成される基板用密着層及び白金用密着層は、光透過性を備えるように薄膜状態に形成されることになり、そして、そのように薄膜状態に形成されたチタンが酸化チタンに変化することになるが、酸化チタンは、透明性を備えるものであるから、チタンが酸化チタンに変化しても、太陽光選択吸収層の性能に悪影響を与えることはない。
要するに、本発明の太陽光選択吸収体の更なる特徴構成によれば、吸収制御部及び基板が高温状態になった際に、MIM積層部における白金層が流動して凝集することを適切に抑制できる。
本発明の太陽光選択吸収体の更なる特徴構成は、前記共鳴用透明酸化物層及び前記入射用透明酸化物層を形成する透明酸化物が、酸化アルミニウム又は酸化チタンである点にある。
すなわち、酸化アルミニウム又は酸化チタンは酸素拡散係数が小さいものであるから、入射用透明酸化物層及び共鳴用透明酸化物層を形成する透明酸化物として、酸化アルミニウム又は酸化チタンを用いることにより、大気中の酸素が透過することを適切に抑制して、基板が酸化される材料にて形成される場合であっても、基板における吸収制御部が積層される側の面が酸化により劣化することを適切に回避できる。
要するに、本発明の太陽光選択吸収体の更なる特徴構成によれば、基板における吸収制御部が積層される側の面が酸化により劣化することを適切に回避できる。
太陽光選択吸収体の基本構成を示す図 太陽光選択吸収体の基本構成における構造例を示す表 太陽光選択吸収体の構造例と吸収スペクトルの関係を示すグラフ 太陽光選択吸収体の基本構成における別形態を示す図 太陽光選択吸収体の別形態と吸収スペクトルの関係を示すグラフ 透明酸化物の種別と吸収スペクトルの関係を示すグラフ 太陽光選択吸収体の具体構成を示す図 白金用密着層の変化を示す図 白金用密着層の厚さと吸収スペクトルの関係を示すグラフ 太陽光選択吸収体の経時変化と吸収スペクトルの関係を示すグラフ 第1白金層の厚さと吸収スペクトルとの関係を示すグラフ 第2白金層の厚さと吸収スペクトルとの関係を示すグラフ 第2白金層の厚さと吸収スペクトルとの関係を示すグラフ 共鳴用透明酸化物層の厚さと吸収スペクトルとの関係を示すグラフ 共鳴用透明酸化物層の厚さと吸収スペクトルとの関係を示すグラフ 参考例の太陽光選択吸収体を示す図 吸収スペクトルと太陽光スペクトルとの関係を示すグラフ 吸収スペクトルと黒体の輻射スペクトルとの関係を示すグラフ 集光倍率と平衡温度との関係を示す表 10倍集光時の温度と吸収エネルギーとの関係を示すグラフ
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔太陽光選択吸収体の基本構成〕
図1は太陽光選択吸収体Qの基本構成を示すものであって、太陽光選択吸収体Qは、太陽光選択吸収層Nが基板Kに積層された形態に構成されている。
太陽光選択吸収層Nが、吸収制御部Na及び透明酸化物にて形成される入射用透明酸化物層Nbの順に基板Kに近い側に位置させる形態で、吸収制御部Na及び入射用透明酸化物層Nbを積層した状態に構成されている。
吸収制御部Naが、透明酸化物にて形成される共鳴用透明酸化物層Rを、太陽光選択吸収層Nと基板Kとの積層方向に沿って並ぶ一対の白金層Pの間に位置させるMIM積層部Mを備える形態に構成されている。
共鳴用透明酸化物層Rの厚さが、4μm以下の波長を共鳴波長とする厚さに設定されている。
図1に示す太陽光選択吸収体Qの基本構成においては、吸収制御部Naが、1つのMIM積層部Mを備えている。
つまり、太陽光選択吸収体Qの基本構成においては、MIM積層部Mを構成する白金層P、共鳴用透明酸化物層R、及び、白金層P、並びに、入射用透明酸化物層Nbが、この記載順に、基板Kの上部に順次積層されている。
尚、以下の記載において、MIM積層部Mにおける基板Kに隣接する白金層Pを、第1白金層P1と呼称し、MIM積層部Mにおける入射用透明酸化物層Nbに隣接する白金層Pを、第2白金層P2と呼称する。
そして、太陽光を含む入射光Hが入射用透明酸化物層Nbを通して入射することにより、吸収制御部Naが4μm以下の狭帯域の波長を吸収することにより、基板Kを高温状態(例えば、250~800℃)に加熱して、基板Kに隣接位置する被加熱物Dを加熱するように構成されている。尚、被加熱物Dとしては、例えば、発電用の蒸気を生成する蒸気生成用熱交換部や太陽熱温水器の加熱管等がある。
説明を加えると、吸収制御部Naにおける光の吸収において、太陽光を含む入射光Hのうちの、4μm以下の狭帯域の波長(例えば、波長が0.8μm以上で2.5μm未満の近赤外光及び波長が2.5μm以上で4μm以下の中赤外光を含む狭帯域の波長)の光の吸収が共鳴作用により促進され、かつ、4μmよりも大きな波長(つまり、遠赤外光)の光の吸収が抑制されるように構成されている。
つまり、太陽光を含む入射光Hが入射用透明酸化物層Nbを通して吸収制御部Naに入射されると、吸収制御部Naが備えるMIM積層部Mにおける白金層P(第1白金層P1及び第2白金層P2)が、入射された光を吸収することになり、その吸収率は、図3に示すように、4μm以下の波長においては、短波長に向けて漸増する傾向となり、4μmよりも大きな波長において低い値を維持することになる。
そして、MIM積層部Mが備える共鳴用透明酸化物層Rの厚さが、4μm以下の波長を共鳴波長とする厚さであるから、MIM積層部Mの白金層P(第1白金層P1及び第2白金層P2)が吸収する光のうちの4μm以下の波長(つまり、中赤外光以下の狭帯域の波長)の吸収が共鳴作用により促進される結果、吸収制御部Naが、4μm以下の狭帯域の波長(例えば、波長が0.8μm以上で2.5μm未満の近赤外光及び波長が2.5μm以上で4μm以下の中赤外光を含む狭帯域の波長)の光に対して大きな吸収率を有し、4μmよりも大きな波長(つまり、遠赤外光)の光に対して小さな吸収率を有するものとなる。
すなわち、MIMは、metal insulator metalを意味するものであって、MIM積層部Mは、吸収制御部Naに入射された光のうちの4μm以下の波長の光を、共鳴作用により吸収を促進させた状態で、白金層P(第1白金層P1及び第2白金層P2)に吸収させることになる。
つまり、吸収制御部Naに入射された光のうちの4μm以下の波長の光が、太陽光選択吸収層Nと基板Kとの積層方向に沿って並ぶ一対の白金層P(第1白金層P1及び第2白金層P2)の間で繰り返し反射しながら、白金層P(第1白金層P1及び第2白金層P2)に繰り返し吸収されることになるため、4μm以下の狭帯域の波長の光の吸収率が増大することになる。
これに対して、吸収制御部Naに入射された光のうちの4μmよりも大きな波長の光の吸収は、共鳴作用により促進されることが少ない状態で吸収されるため、4μmよりも大きな波長(つまり、遠赤外光)の光に対する吸収率が小さいものとなる。
ところで、吸収制御部Naが入射された光のうちの4μmよりも大きな波長の光を吸収して高温状態になることにより、それに伴って高温状態になる基板Kからは、輻射光が放射されるが、その輻射光の吸収制御部Naへの透過が、第1白金層P1にて遮蔽されることになり、また、第1白金層P1が、吸収制御部Naが入射された光が基板K側に透過して、基板Kに吸収されることを遮蔽することになる。換言すれば、第1白金層P1の厚さは、基板Kからの輻射光を遮蔽し、且つ、吸収制御部Naに入射された光が基板K側に透過することを遮蔽できる厚さである。
また、入射用透明酸化物層Nbが白金より屈折率が大きくかつ空気よりも屈折率が小さなものであるから、入射用透明酸化物層Nbの存在側に位置する白金層P(第2白金層P2)の反射率が低減されることになり、入射光Hを入射用透明酸化物層Nbを通して吸収制御部Naに良好に入射させることができる。
尚、MIM積層部Mに備えさせる白金層P(第1白金層P1及び第2白金層P2)のうちの基板Kに隣接する白金層P(第1白金層P1)は、上述の如く、基板Kの輻射光を遮蔽しかつ吸収制御部Naに入射された光が基板K側に透過することを遮蔽する厚さ(膜厚)にする必要があり、これに対して、他の白金層P(第2白金層P2)は、吸収制御部Naに入射された光一部を透過させる必要があるから、基板Kに隣接する白金層P(第1白金層P1)が、他の白金層P(第2白金層P2)よりも厚く形成されることになる。
ちなみに、本発明の太陽光選択吸収体Qは、「4μm以下の吸収率が大きくなり、0.8μmから4μmの間(近赤外~中赤外域)の吸収率の最大値が90%以上となり、一方で、4μm以上の遠赤外域の吸収ピークは小さく、吸収率のピークを持たない」という構成(以下、適正構成と呼称)を備えることが望ましいものである。
〔基本構成の構造例の説明〕
次に、太陽光選択吸収体Qの基本構成における構造例を説明する。以下に説明する構造例は、入射用透明酸化物層Nb及び共鳴用透明酸化物層Rを形成する透明酸化物がアルミナ(Al)である。尚、基板Kは任意のものを使用できるが、基板Kの詳細は後述する。
以下に説明する構造例は、図2の表に示すように、構造1~構造4の4例である。尚、図2の表においては、基板Kを層No1、第1白金層P1を層No2、共鳴用透明酸化物層Rを層No3、第2白金層P2を層No4、入射用透明酸化物層Nbを層No5と記載する。
構造1~構造4の太陽光選択吸収体Qは、図3に示すように、波長が0.8μm以上で2.5μm未満の近赤外光及び波長が2.5μm以上で4μm以下の中赤外光を含む狭帯域の波長の光に対して大きな吸収率を有し、4μmよりも大きな波長(つまり、遠赤外光)に対して小さな吸収率を有する。
そして、層No3の共鳴用透明酸化物層Rの膜厚(厚さ)が薄い場合は、共鳴周波数が短波長化するので吸収率のピーク位置が短波長側になり、層No3の共鳴用透明酸化物層Rの膜厚(厚さ)が厚い場合は、共鳴周波数が長波長化するので、吸収率のピーク位置が長波長に移動する傾向となる。
また、層No4の第2白金層P2の膜厚(厚さ)が厚い場合は、吸収率のスペクトルのピークが狭帯域化し、層No4の第2白金層P2の膜厚(厚さ)が薄い場合は、吸収率のスペクトルのピークが広帯域化する傾向となる。
さらに、層No5の入射用透明酸化物層Nbの膜厚(厚さ)が厚くなるほど、吸収率のスペクトルが長波長側に移動する傾向となる。
太陽光選択吸収体Qを上述の適正構成とする場合には、第1白金層P1の膜厚(厚さ)の好適範囲は、例えば、10nm以上であり、第2白金層P2の膜厚(厚さ)の好適範囲は、例えば、1.5nm以上18nm以下である。
以下、第1白金層P1及び第2白金層P2の膜厚(厚さ)の好適範囲について説明を加える。
図11は、構造2の太陽光選択吸収体Qにおいて、第1白金層P1の膜厚(厚さ)と吸収率と関係を例示する。第1白金層P1の膜厚(厚さ)を5~150nmまで変えた場合において、第1白金層P1の膜厚(厚さ)が、5nmの場合には、吸収率のピークが90%を超えないが、10nmの場合には、吸収率のピークが90%を超えることになる。
また、第1白金層P1の膜厚(厚さ)を厚くしていくと、だんだん輻射スペクトルが変化しなくなり、膜厚(厚さ)が60nmあたりから、ほぼ、輻射スペクトルが固定される。このように、第1白金層P1の膜厚(厚さ)の規定に上限は存在しない。
以上の結果により、第1白金層P1の膜厚(厚さ)の好適な範囲は、例えば、10nm以上である。
図12は、第2白金層P2の膜厚(厚さ)と吸収率との関係を例示する。ただし、図12は、第1白金層P1の厚さを150nm、共鳴用透明酸化物層R1の厚さを140nm、放射用透明酸化物層Nbの厚さを75nmとした場合において、第2白金層P2の膜厚(厚さ)を、1nm、1.5nm、6nmに変化させたときの吸収スペクトルを例示する。
第2白金層P2の膜厚が、1.5nmよりも厚いと吸収率のピークが90%を超えるが、それより薄くなると、輻射率のピークが90%を超えなくなる。
図13は、第2白金層P2の膜厚(厚さ)と吸収率との関係を例示する。ただし、図13は、第1白金層P1の厚さを150nm、第1共鳴用透明酸化物層R1の厚さを140nm、放射用透明酸化物層Nbの厚さを100nmとした場合において、第2白金層P2の膜厚(厚さ)を、6nm、15nm、18nm、25nmに変化させたときの吸収スペクトルである。
第2白金層P2の膜厚が、19nmのときに吸収率のピークが90%となり、19nmよりも厚くなると、吸収率のピークが小さくなる。
以上の結果により、第2白金層P2の膜厚(厚さ)の好適範囲は、例えば、1.5nm以上18nm以下である。
太陽光選択吸収体Qを上述した適正構成とする場合において、4μm以下の波長を共鳴波長とする共鳴用透明酸化物層Rの厚さ(膜厚)の好適範囲は、透明酸化物がアルミナ(酸化アルミニウム)(Al)であるときには、60nm以上1050nm以下である。
以下、アルミナ(Al)で形成される共鳴用透明酸化物層Rの厚さ(膜厚)の好適範囲について説明を加える。


図14は、共鳴用透明酸化物層Rの厚さ(膜厚)と太陽光選択吸収体Qの吸収率との関係を示すものである。ただし、図14は、第1白金層P1の厚さを150nm、第2白金層P2の厚さを6.6nm、放射用透明酸化物層Nbの厚さを94nmとした場合において、共鳴用透明酸化物層Rの膜厚(厚さ)を、40nm、60nm、80nm、100nmに変化させたときの輻射スペクトルを例示する。
この図14より、吸収率がピークとなる800nmの吸収率が90%以上となる共鳴用透明酸化物層Rの膜厚(厚さ)の下限は、60nmであることが分かる。
図15は、共鳴用透明酸化物層Rの厚さ(膜厚)と太陽光選択吸収体Qの吸収率との関係を示す。ただし、図15は、第1白金層P1の厚さを150nm、第2白金層P2の厚さを10nm、放射用透明酸化物層Nbの厚さを100nmとした場合において、共鳴用透明酸化物層Rの膜厚(厚さ)を、800nm、1050nm、1200nmに変化させたときの輻射スペクトルを例示する。
この図15より、共鳴用透明酸化物層Rの膜厚(厚さ)が1050nmよりも厚くなると、4000nmよりも長波域(遠赤外域)に吸収率のピークがでることが分かる。
以上の結果、4μm以下の波長を共鳴波長とする共鳴用透明酸化物層Rの厚さ(膜厚)の好適範囲は、透明酸化物がアルミナ(Al)であるときには、60nm以上1050nm以下である。
ところで、共鳴用透明酸化物層Rの厚さ(膜厚)の好適範囲は、透明酸化物の屈折率により変化する。
好適範囲の下限は、
(材料毎の膜厚の下限(単位:nm))=-30.4n+108となる。なお、nは材料毎の屈折率である。
また、好適範囲の上限は、
(材料毎の膜厚の上限(単位:nm))=-600n+2030となる。なお、nは材料毎の屈折率である。
ちなみに、太陽光選択吸収体Qを上述した適正構成とする場合において、層No5の放射用透明酸化物層Nbの膜厚(厚さ)の好適な範囲は、例えば、50nm以上500nm以下である。
尚、図3には、上述の如く、白金(白金のみ)の輻射スペクトルを示しているが、この白金(白金のみ)の輻射スペクトルと構造1~構造4の輻射スペクトルを対比することにより、近赤外~中赤外域で吸収率が増大していること、吸収率の大きな部分と小さな部分のコントラストが増加していることがわかる。
〔基本構成の別形態〕
上述した基本構成においては、吸収制御部Naが、1つのMIM積層部Mを備える場合を例示したが、吸収制御部Naが、複数のMIM積層部Mを備えるようにしてもよい。
尚、複数のMIM積層部Mが備えられるとは、太陽光選択吸収層Nと基板Kとの積層方向に沿って並ぶ白金層Pを3つ以上設け、それら白金層Pにおける隣接するもの同士の間に、共鳴用透明酸化物層Rを位置させる形態を意味するものである。
図4は、吸収制御部Naが2つのMIM積層部Mを備える場合を例示し、以下、例示する太陽光選択吸収体Qを構造5と呼称する。
構造5は、白金層Pとして、基板Kに隣接する第1白金層P1、入射用透明酸化物層Nbに隣接する第2白金層P2、及び、第1白金層P1と第2白金層P2の間に位置する第3白金層P3を備えている。
また、共鳴用透明酸化物層Rとして、第1白金層P1と第3白金層P3の間に位置する第1共鳴用透明酸化物層R1、及び、第2白金層P2と第3白金層P3の間に位置する第2共鳴用透明酸化物層R2とを備えている。
構造5は、入射用透明酸化物層Nb及び共鳴用透明酸化物層Rを形成する透明酸化物がアルミナ(Al)である。尚、基板Kは任意のものを使用できるが、基板Kの詳細は後述する。
そして、第1白金層P1、第3白金層P3、及び、第1共鳴用透明酸化物層R1からひとつのMIM積層部Mが構成され、第2白金層P2、第3白金層P3、及び、第2共鳴用透明酸化物層R2からひとつのMIM積層部Mが構成されることになり、その結果、吸収制御部Naが2つのMIM積層部Mを備えることになる。
構造5において、第1白金層P1の厚さを150nm、第1共鳴用透明酸化物層R1の厚さを65nm、第3白金層P3の厚さを8nm、第2共鳴用透明酸化物層R2の厚さを145nm、第2白金層P2の厚さを5nm、入射用透明酸化物層Nbの厚さを72nmとした場合の吸収スペクトルを、図5に示す。
尚、図5には、上述した構造1の吸収スペクトルを併記する。
構造5においては、2つのMIM積層部Mの共鳴周波数を変えているため、図5に示すように、波長が0.4μm以上で0.8μm未満の可視光の波長でも共鳴できることになり、吸収制御部Naに入射された光のうちの吸収が促進される4μm以下の波長の光として、波長が0.8μm以上で2.5μm未満の近赤外光及び波長が2.5μm以上で4μm以下の中赤外光に加えて、波長が0.4μm以上で0.8μm未満の可視光や、波長が0.4μm未満の紫外光が含まれることになる。
〔透明酸化物の種別について〕
太陽光選択吸収体Qの上記基本構成及び基本構成の別形態においては、入射用透明酸化物層Nb及び共鳴用透明酸化物層Rを形成する透明酸化物がアルミナ(Al)である場合を例示したが、透明酸化物としては、五酸化タンタル(Ta)、二酸化ケイ素(SiO)、五酸化ニオブ(Nb)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化チタン(TiO)、酸化ハフニウム(HfO)等を使用できる。
尚、アルミナ(Al)及び酸化チタン(TiO)は酸素拡散係数が小さいものであるから、放射用透明酸化物層Nb及び共鳴用透明酸化物層Rを形成する透明酸化物として特に好ましい。
図6には、上述の基本構成において、透明酸化物を異ならせた場合の輻射スペクトルを例示する。つまり、第1白金層P1の厚さを150nm、共鳴用透明酸化物層Rの厚さを120nm、第2白金層P2の厚さを8nm、入射用透明酸化物層Nbの厚さを120nmとした場合において、入射用透明酸化物層Nb及び共鳴用透明酸化物層Rを形成する透明酸化物を異ならせた場合の吸収スペクトルを例示する。
図6に示すように、入射用透明酸化物層Nb及び共鳴用透明酸化物層Rを形成する透明酸化物として、五酸化タンタル(Ta)、二酸化ケイ素(SiO)、五酸化ニオブ(Nb)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化チタン(TiO)、酸化ハフニウム(HfO)を用いても、4μm以下の波長の光の吸収を促進することができる。
〔太陽光選択吸収体の具体構成〕
太陽光選択吸収体Qの具体構成としては、図7に示すように、基板Kと吸収制御部Naにおける基板Kに隣接する白金層P(第1白金層P1)との間に、基板用密着層S1が積層され、また、MIM積層部Mにおける白金層P(第1白金層P1及び第2白金層P2)と共鳴用透明酸化物層Rとの間、及び、入射用透明酸化物層Nbと吸収制御部Naにおける入射用透明酸化物層Nbに隣接する白金層P(第2白金層P2)との間の夫々に、白金用密着層S2が積層されている構成である。
すなわち、基板Kと吸収制御部Naにおける基板Kに隣接する白金層P(第1白金層P1)との間に、基板用密着層S1が積層されているから、吸収制御部Naが基板Kにて加熱された際に、吸収制御部Naが基板Kから剥がれることが抑制される。
つまり、基板Kの熱膨張率と複数の薄い膜を積層した吸収制御部Naの熱膨張率とは大きく異なるため、吸収制御部Naが基板Kにて加熱された際に、吸収制御部Naが基板Kから剥がれる虞があるが、基板Kと吸収制御部Naにおける基板Kに隣接する白金層P(第1白金層P1)とが、基板用密着層S1にて密着性を高められていることにより、吸収制御部Naが基板Kから剥がれることが抑制される。
また、白金用密着層S2が、MIM積層部Mにおける白金層P(第1白金層P1及び第2白金層P2)と共鳴用透明酸化物層Rとの間、及び、入射用透明酸化物層Nbと吸収制御部Naにおける入射用透明酸化物層Nbに隣接する白金層P(第2白金層P2)との間に設けられているから、吸収制御部Naが基板Kにて高温状態に加熱された際に、MIM積層部Mにおける白金層P(第1白金層P1及び第2白金層P2)が流動して凝集することが抑制され、さらには、白金層Pと共鳴用透明酸化物層Rとが剥離することや、白金層Pと入射用透明酸化物層Nbとが剥離することが抑制される。
つまり、白金と透明酸化物との密着性が低いため、吸収制御部Naや基板Kが高温状態になった際に、共鳴用透明酸化物層Rに隣接する白金層Pや入射用透明酸化物層Nbに隣接する白金層Pが流動して凝集する虞があるが、白金用密着層S2が積層されることにより、共鳴用透明酸化物層Rに隣接する白金層Pの共鳴用透明酸化物層Rに対する密着性や、入射用透明酸化物層Nbに隣接する白金層Pの入射用透明酸化物層Nbに対する密着性が高められることにより、吸収制御部Naが基板Kにて高温状態に加熱された際に、MIM積層部Mにおける白金層Pが流動して凝集することが抑制され、さらには、熱膨張率の差により、白金層Pと共鳴用透明酸化物層Rとが剥離することや、白金層Pと入射用透明酸化物層Nbとが剥離することが抑制される。
基板用密着層S1及び白金用密着層S2を形成する材料としては、チタン(Ti)やクロム(Cr)が、融点及び密着性の観点から優れている。特に、チタン(Ti)が望ましい。以下、基板用密着層S1及び白金用密着層S2がチタン(Ti)にて形成されているものとして説明する。
すなわち、チタン(Ti)は、基板Kに隣接する白金層P(第1白金層P1)の基板Kに対する密着性や、共鳴用透明酸化物層Rに隣接する白金層P(第1白金層P1及び第2白金層P2)の共鳴用透明酸化物層Rに対する密着性や、入射用透明酸化物層Nbに隣接する白金層P(第2白金層P2)の入射用透明酸化物層Nbに対する密着性を良好に高めることができ、しかも、融点が1668℃と高いものであるから、吸収制御部Naや基板Kにて高温状態になった際に、MIM積層部Mにおける白金層P(第1白金層P1及び第2白金層P2)が流動して凝集することを適切に抑制できる。
〔基板用密着層の厚さ〕
基板用密着層S1は高温状態になると、4μmよりも大きな波長(つまり、遠赤外光)の輻射光を放射することになるが、基板用密着層S1から放射される輻射光が、第1白金層P1によって遮蔽されるから、この点に関しては、基板用密着層S1の厚さ(膜厚)は厚くても問題ない。
但し、基板用密着層S1が厚すぎると、吸収制御部Naや基板Kが高温状態になった際に、チタン(Ti)が熱で動き回り、第1白金層P1の共鳴用透明酸化物層Rの存在側の表面に出てくる現象を発生する虞がある。このような現象が生じると、吸収制御部Naの熱輻射制御構造が崩れるので熱輻射の制御が難しくなる。
また、基板用密着層S1が薄すぎると、複数の薄膜を備える吸収制御部Naの熱膨張率と基板Kの熱膨張率の違いに対応できなくなり、吸収制御部Naや基板Kが高温状態になった際に、吸収制御部Naが基板Kから剥がれる虞がある。
このような観点に鑑みると、基板用密着層S1の膜厚(チタンの膜厚)は、2nm以上15nm以下が望ましい。
〔白金用密着層の厚さ〕
白金用密着層S2の厚さ(膜厚)は、光学性および耐久性のふたつの観点で設定する必要がある。
すなわち、白金用密着層S2の厚さ(膜厚)が厚過ぎると光学的によくない。つまり、白金用密着層S2は高温状態になると、4μmよりも大きな波長(つまり、遠赤外光)の輻射光を放射することになるから、白金用密着層S2の厚さ(膜厚)が厚過ぎると、白金用密着層S2からの輻射光の強度が大きくなって、吸収制御部Naの吸収率が、4μmよりも大きな波長(つまり、遠赤外光)において、小さな吸収率となることに対して悪影響を与える。
また、白金用密着層S2の厚さ(膜厚)が厚過ぎると、光を遮蔽するものとなるから、白金用密着層S2の厚さ(膜厚)が厚過ぎるのは避ける必要がある。
但し、白金用密着層S2は、基板Kと薄膜とを密着させるのではなく、薄膜同士を密着させるものであるから、基板用密着層S1よりも薄くても密着効果が出る。
このような観点を鑑みると、白金用密着層S2の厚さ(膜厚)は、0.1nm以上10nm以下が望ましい。
図9は、白金用密着層S2の厚さ(膜厚)と太陽光選択吸収体Qの吸収率との関係を示すものである。
尚、図9は、基板用密着層S1の厚さを7nm、第1白金層P1の厚さを150nm、共鳴用透明酸化物層Rの厚さを120nm、第2白金層P2の厚さを6nm、入射用透明酸化物層Nbの厚さを120nmとする場合において、白金用密着層S2の厚さ(膜厚)を変化させたものである。
この図9を考察すると、白金用密着層S2の厚さ(膜厚)が厚くなるほど、4μmよりも長波長側の遠赤外光の吸収率が増加することがわかる。
〔チタンの酸化について〕
基板用密着層S1及び白金用密着層S2を形成するチタン(Ti)は、大気の存在する環境下における太陽光選択吸収体Qの使用によって、徐々に酸化されて酸化チタン(TiO)に変化する可能性が高い。換言すれば、大気の存在する環境下において長時間に亘り太陽光選択吸収体Qが使用された状態においては、基板用密着層S1及び白金用密着層S2が、酸化チタン(TiO)にて形成されていると見做すことができる。
但し、図8に示すように、白金用密着層S2を形成するチタンは、全てが酸化チタンに変化するのではなく、白金層P(第2白金層P2)に密着する箇所のチタンは、酸化されることなく、白金層P(第2白金層P2)に密着するチタンの状態(金属状態)を継続することになる。
図示は省略するが、基板用密着層S1を形成するチタンも、全てが酸化チタンに変化するのではなく、白金層P(第1白金層P1)に密着する箇所のチタンは、酸化されることなく、白金層P(第1白金層P1)に密着するチタンの状態(金属状態)を継続することになる。
つまり、基板用密着層S1及び白金用密着層S2を形成するチタンは、全てが酸化チタンに変化するのではなく、白金層Pに密着する箇所のチタンは、酸化されることなく、白金層Pに密着するチタンの状態を継続することになり、基板用密着層S1及び白金用密着層S2としての機能を継続することになる。
説明を加えると、白金(Pt)は、標準酸化ギブスエネルギー変化が、+200k/mol/Oであることから、酸素と反応しない(化学反応は、ギブスエネルギー変化がマイナスになる方向に進む。ギブスエネルギー変化が正であるということは、反応しないということである。)。このことは、酸化物を白金(Pt)の密着層とすることは、結合エネルギーの関係で難しいことを意味する。このことから、チタンが酸化によって酸化チタンに変化すると、白金(Pt)の密着層として働かなくなる心配があるが、実際には、チタンが酸化しても、白金(Pt)との界面のチタンは白金との結合手を維持しているため、基板用密着層S1及び白金用密着層S2としての機能を継続することになる。
ちなみに、チタンにて形成される基板用密着層S1及び白金用密着層S2は、光透過性を備えるように薄膜状態に形成されることになり、そして、薄膜状態に形成されたチタンが酸化チタンに変化することになるが、酸化チタンは、透明性を備えるものであるから、チタンが酸化チタンに変化しても、太陽光選択吸収層Nの性能に悪影響を与えることはない。
尚、基板用密着層S1及び白金用密着層S2を形成する材料が酸化することを考慮すると、クロム(Cr)は酸化すると黒色になるので、酸化すると黒色になるクロムは、吸収制御の観点で密着層としては不適であり、酸化すると透明となる酸化チタン(TiO)を形成するチタン(Ti)は吸収制御の観点で優れている。
ところで、白金用密着層S2のチタン(Ti)が経時的に酸化するのであれば、白金用密着層S2が厚くても、いずれは図8の厚さ(膜厚)が薄い場合の熱輻射に近づくと考えられる。しかし、厚さ(膜厚)が厚い場合、吸収制御部Naや基板Kが高温状態になった際に、チタン(Ti)が熱で動き回り、第2白金層P2の表面に出てくる現象を発生する虞がある。このような現象が生じると、吸収制御部Naの吸収制御構造が崩れるので光の吸収制御が難しくなる。特に、第2白金層P2の白金は薄いため、チタン(Ti)の動きが吸収制御構造の崩れに大きく影響を与える。
従って、白金用密着層S2の厚さ(膜厚)はサブnm程度(1nm以下程度)にするのが望ましい。
〔太陽光選択吸収体の経時変化について〕
図10は、実際に作製した太陽光選択吸収体Qを大気中で800℃に加熱して使用したときの吸収スペクトルの経時的変化を示すものである。
ちなみに、図10は、基板Kにサファイアを用い、基板用密着層S1の厚さを7nm、第1白金層P1の厚さを150nm、共鳴用透明酸化物層Rの厚さを120nm、第2白金層P2の厚さを6nm、入射用透明酸化物層Nbの厚さを120nmとし、白金用密着層S2の厚さを0.5nmとしたときの太陽光選択吸収体Qの吸収スペクトルを例示するものである。
なお、図16に示すように、基板K、基板用密着層S1、第1白金層P1、白金用密着層S2、共鳴用透明酸化物層R、第2白金層P2を備えさせるものの、第2白金層P2における入射用透明酸化物層Nbの存在側の表面に対する白金用密着層S2、及び、入射用透明酸化物層Nbを省略すると、加熱の過程で、第2白金層P2の白金(Pt)が凝集し、光を散乱するようになり、入射光Hを適切に入射できないものとなった。
図10に示すように、120時間(5日間)加熱した吸収スペクトルと、24時間(1日間)加熱した吸収スペクトルは略同じである。
成膜直後の吸収スペクトルと、24時間、120時間加熱後の吸収スペクトルとが異なるが、その理由は、加熱により、アルミナ(Al)や白金(Pt)の結晶性が高まったことが原因と考えられる。
理論値(計算値)の吸収スペクトルは、結晶性の高いアルミナ(Al)の光学定数を用いて計算したものである。
成膜直後の吸収スペクトルは、理論値(計算値)の吸収スペクトルと乖離しているが、加熱後の吸収スペクトルは、理論値(計算値)の吸収スペクトルと極めて近い値となっているので、加熱によって、アルミナ(Al)や白金(Pt)の結晶性が高まることで、アルミナ(Al)や白金(Pt)の光学定数が理論値に近づいたものと考えられる。
上記の結果の通り、本発明の太陽光選択吸収体Qは、大気中(大気の存在する環境下)において800℃程度に昇温した状態でも用いることができる太陽光選択吸収体である。
尚、本発明の太陽光選択吸収体Qの構成材料の融点は、白金(Pt)が、1768℃、アルミナ(Al)が、2072℃、チタン(Ti)が、1668℃、酸化チタン(TiO)が、1843℃であり、基板Kの融点にもよるが、本発明の太陽光選択吸収体Qの太陽光選択吸収層Nは、1400℃程度の温度まで耐久する。
〔基板について〕
高温状態になる基板Kの熱輻射光が、第1白金層P1にて遮蔽されて、吸収制御部Naへ透過しない点に鑑みると、基板Kの材料(母材)としては、石英(SiO)、サファイア、ステンレス鋼(SUS)、カンタル、ニクロム、アルミニウム、シリコン等、様々な材料を用いることができる。
酸化物系の材料の基板Kを用いる場合は特に問題ないが、金属系の材料の基板Kを用いる場合は、大気中で加熱して使用する場合には、基板Kの酸化劣化が問題となってくるが、共鳴用透明酸化物層R及び入射用透明酸化物層Nbが存在することによって、上述の通り、基板Kにおける太陽光選択吸収層Nの存在側の表面の酸化劣化が防止されることになる。
尚、基板Kにおける太陽光選択吸収層Nの存在側の表面は、乱反射しない程度の鏡面に形成されることになる。
〔基板用密着層の変形例〕
基板用密着層S1は、上述の如く、チタン(Ti)にて構成されるが、基板Kを形成する材料の種類によって、その構成を少し変更する必要がある。
基板Kを形成する材料が、サファイアあるいはアルミナ(Al)の場合には、基板用密着層S1は、上述の如く、チタン(Ti)のみにて構成する。
基板Kを形成する材料が、石英(SiO)の場合には、基板用密着層S1は、チタン(Ti)のみでもよく、また、チタン(Ti)とアルミナ(Al)との積層構造にしてもよい。つまり、第1白金層P1/チタン(Ti)/アルミナ(Al)(30nm)/基板Kの順に積層した構成にしてもよい。
基板Kを構成する材料が、ステンレス鋼(SUS)、カンタル、ニクロム、アルミニウム、シリコンの場合には、第1白金層P1/チタン(Ti)/アルミナ(Al)(30nm)/基板Kの順に積層した構成、あるいは、第1白金層P1/チタン(Ti)/アルミナ(Al)(30nm)/酸化ハフニウム(HfO)/基板Kの順に積層した構成にするとよい。
つまり、基板Kが金属や半導体の場合は、第1白金層P1/チタン(Ti)が基板Kと反応し、合金化して、輻射制御できなくなる虞がある。従って、合金化を防止する観点から酸化物の層を基板Kとチタン(Ti)の間に入れるのが良い。
〔太陽光選択吸収体の考察〕
図17に、構造5の太陽光選択吸収体Qの吸収スペクトルと太陽光スペクトルを示す。
この図から、構造5の太陽光選択吸収体Qは、太陽光スペクトルの全波長帯域に対して概ね80%以上の光吸収率を有することがわかる。
図18に、構造5の太陽光選択吸収体Qの吸収スペクトルと、127℃、427℃、577℃における黒体の輻射スペクトルを示す。尚、127℃の黒体の輻射スペクトルは、427℃、577℃における黒体の輻射スペクトルに対して小さいため、見易くするために、10倍した値を記載する。
この図から、127℃、427℃、577℃における黒体の輻射スペクトルは、構造5の太陽光選択吸収体Qの吸収スペクトルのピーク波長付近の輻射率が低いことがわかる。なお、キルヒホッフの法則により、吸収率と輻射率は等しい。
したがって、図17及び図18に基づいて、本発明の太陽光選択吸収体Qは、太陽光を含む4μm以下の波長の光をよく吸収する一方で、4μmよりも大きな波長の光の熱輻射による熱(エネルギー)の放射は少ないものであること、つまりは、冷めにくく温まり易い太陽光選択吸収体Qであることがわかる。
図19に、黒体と構造5の太陽光選択吸収体Qとにおける集光倍率と加熱温度(平衡温度)との関係をまとめた表を記載する。図14の表は、黒体と構造5の太陽光選択吸収体Qを、真空中及び大気中において、太陽光を含む光を直接照射する場合、10倍に集光して照射する場合、及び、50倍に集光して照射する場合の夫々における加熱温度(平衡温度)を記載したものである。
加熱温度(平衡温度)の計算は下記の通りである。
加熱温度における利用可能な光吸収エネルギーPa(T)は、下記式(1)にて表すことができる。
Pa(T)=Ps‐Pr(T)・・・(1)
Psは、吸収した光エネルギー(太陽光を含む光のエネルギー)、Pr(T)は、加熱温度における太陽光選択吸収体Qからの熱輻射である。なお、大気中の温度計算は、外気温27℃、無風状態の仮定で行っている。
そして、Pa(T)=0となる加熱温度が平衡温度であり、図14の表2に示す加熱温度の値は、この平衡温度である。
図19の表により、太陽光を含む光を黒体で吸収するよりも、構造5の太陽光選択吸収体Qで吸収したほうが高温まで加熱できることがわかる。
また、本発明の太陽光選択吸収体Qは、大気中(大気の存在する環境下)において使用した場合も同様の効果を発揮する。尚、一般的な太陽光選択吸収材料は、高温に加熱されると酸化によって性能が劣化する。それに対し、本発明の太陽光選択吸収体Qは、先にも述べた通り酸化劣化しない。従って、本発明の太陽光選択吸収体Qは大気中(大気の存在する環境下)でも利用することができる。
図20に、真空中において、黒体と構造5の太陽光選択吸収体Qとに太陽光を含む光を10倍集光して照射した際における加熱温度と加熱温度ごとの光吸収エネルギーPaとの関係を示す。
この図からわかるように、低温時は、太陽光をすべて吸収できる黒体の方が太陽光選択吸収体Qよりも利用可能な光吸収エネルギーPaが大きい。つまり、太陽光選択吸収体Qは、黒体よりも太陽光スペクトルの吸収率が小さいために低温時は黒体の方が利用可能な光吸収エネルギーPaが大きい。
しかしながら、本発明の太陽光選択吸収体Qは熱輻射による放熱ロスが黒体輻射と比較して小さいために、高温時に利用できる光吸収エネルギーPaが黒体と比較して大きい。
例えば太陽熱発電は、低温でも250℃、高温では、800℃という温度が求められる。このような高温で高い効率を得るには、黒体を用いる場合には、高い集光率が必要となる。本発明の太陽光選択吸収体Qの場合には、低い集光率で高い温度を得ることができる。
また、本発明の太陽光選択吸収体Qの場合には、水を加熱して蒸気を生成する際において、太陽光を含む光を集光せずとも大気中で100℃以上の蒸気をつくることもできる。
ところで、光吸収に白金層Pを用いる場合においては、基板Kの上部に、基板用密着層S1、白金層P、白金用密着層S2、入射用透明酸化物層Nbを順次積層する形態で太陽光を選択吸収する吸収体を構成することができるが、当該吸収体よりも本発明の太陽光選択吸収体Qは、太陽光スペクトルの吸収率を十分に高めて高温の加熱温Dを得ることができるものである。
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、基板Kにおける太陽光選択吸収層Nが積層される側の面とは反対側の裏面が酸化しても、基板Kの厚さが厚ければ、太陽光選択吸収層Nに悪影響を与えることが無い点に鑑みて、基板Kにおける太陽光選択吸収層Nが積層される側の面とは反対側の裏面を、露出させる状態としたが、当該裏面に、酸化を抑制する酸化防止膜を積層するようにしてもよい。
(2)上記実施形態では、吸収制御部Naが、MIM積層部Mを1つ備える場合や2つ備える場合を例示したが、吸収制御部Naが、MIM積層部Mを3つ以上備える形態で実施してもよい。
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
K 基板
N 太陽光選択吸収層
Na 吸収制御部
Nb 入射用透明酸化物層
M MIM積層部
P 白金層
R 共鳴用透明酸化物層
S1 基板用密着層
S2 白金用密着層

Claims (6)

  1. 太陽光選択吸収層が基板上に積層された太陽光選択吸収体であって、
    前記太陽光選択吸収層が、透明酸化物としての酸化アルミニウム、五酸化タンタル、二酸化ケイ素、五酸化ニオブ、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ハフニウムのいずれかにて形成される共鳴用透明酸化物層を前記太陽光選択吸収層と前記基板との積層方向に沿って並ぶ一対の白金層の間に位置させるMIM積層部を備える吸収制御部、及び、透明酸化物にて形成される入射用透明酸化物層の順に前記基板に近い側に位置させる形態で、前記吸収制御部及び前記入射用透明酸化物層を積層した状態に構成され、
    前記共鳴用透明酸化物層の厚さが、4μm以下の波長を共鳴波長とする厚さである太陽光選択吸収体。
  2. 前記吸収制御部が、前記MIM積層部を複数備える形態に構成されている請求項1に記載の太陽光選択吸収体。
  3. 前記基板と前記吸収制御部における前記基板に隣接する前記白金層との間に、基板用密着層が積層されている請求項1又は2に記載の太陽光選択吸収体。
  4. 前記MIM積層部における前記白金層と前記共鳴用透明酸化物層との間、及び、前記入射用透明酸化物層と前記吸収制御部における前記入射用透明酸化物層に隣接する前記白金層との間の夫々に、白金用密着層が積層されている請求項3に記載の太陽光選択吸収体。
  5. 前記基板用密着層及び前記白金用密着層が、チタンにて形成される請求項4に記載の太陽光選択吸収体。
  6. 前記共鳴用透明酸化物層及び前記入射用透明酸化物層を形成する透明酸化物が、酸化アルミニウム又は酸化チタンである請求項1~5のいずれか1項に記載の太陽光選択吸収体。
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