ところで、特許文献1に記載の容器は、略板状の側壁部に透孔を設けることのみで持ち手部を構成しており、比較的重い物品が容器に収容されている場合等においては、持ち手部を手で掴んで持ち運ぶ場合に、手への負担が大きくなることが懸念される。また、容器のネスティング状態において、上側の容器の透孔の外方側が下側の容器の側壁部で閉塞されたり、下側の容器の透孔の内方側が上側の容器の側壁部で閉塞されたりする場合には、透孔に指先を挿入させることが不可能なだけではなく、透孔の上縁部に指先を掛けることも困難となり、持ち手部が上手く機能しなくなってしまうおそれがある。
本発明は、上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、持ち易さの向上を図ることのできる容器を提供することにある。
以下、上記課題等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
手段1.平面視略矩形状の底壁構成部と、前記底壁構成部の各側辺部からそれぞれ上方に延出する側壁部とを備え、内側に物品を収容可能な収容空間を有する容器において、
前記側壁部は、当該側壁部の内面を構成する内面構成壁部の上縁部を含む部位を外方に変位、又は、変形させるようにして設けられた張出し部と、前記張出し部の下縁部から内方に突出する把持部とを備えるとともに、前記把持部の下方に隣接して前記内面構成壁部を貫通する透孔が設けられており、
前記把持部の外縁部側が前記張出し部と連結されており、
前記把持部は、前記内面構成壁部よりも外方に位置する前記張出し部の下縁部から内方に突出して設けられ、
前記把持部と、前記張出し部とが連結される境界部は、断面略円弧状、または、平面取り形状をなしていることを特徴とする容器。
手段1によれば、作業者が透孔に指を差し入れて透孔の上方部位(持ち手部)を把持可能な構成において、透孔の上縁部を構成する把持部は、内面構成壁部よりも外方に位置する張出し部の下縁部から内方に突出して設けられている。このため、例えば、側壁部(内面構成壁部)に単に透孔を設けただけで、その上方部位を持ち手部として把持する構成に比べ、持ち手部のうち指を下側から掛けられる持ち手部の下面の面積を増やすことができる。従って、容器を持ち上げる手に対して局所的に荷重が付加されることを抑止することができ、手への負担軽減等を図ることができる。結果として、容器の持ち易さの向上を図ることができ、持ち手部を把持して容器を運搬等する場合の作業性の向上等を図ることができる。また、握る手に当接する部位から極力角部をなくすことができ、容器を持ち易くするといった作用効果がより一層奏される。
尚、例えば、側壁部の上辺部から外方に延出する上フランジ部を備える場合であって、上フランジ部のうち張出し部に対応する部位は、内面構成壁部の上縁部が外方に変位又は変形させられていることに伴って切欠かれたような形状とされる場合には、例えば、張出し部を設けることなく、側壁部(内面構成壁部)に透孔を設けるとともに、該透孔の上縁部から外方に突出して上フランジ部の下面と対向する把持部を設けるといった構成に比べ、容器を成形する金型構造の簡素化等を図ることができる。加えて、把持部の外縁部側が張出し部と連結されていることから、把持部の外縁部側の強度を高めることができ、把持部の下面に指を掛けて容器を持ち上げる等した場合に把持部が変形及び損傷する等の事態を防止することができる。
手段2.下側の容器の前記収容空間に対し上側の容器を挿入させるようにして容器同士を積み重ねる容器のネスティングが可能に構成され、
前記把持部の内側端縁は、前記内面構成壁部の内面と面一、又は、前記内面構成壁部の内面よりも外方に位置していることを特徴とする手段1に記載の容器。
手段2によれば、容器をネスティングすることで、運搬効率、及び、保管効率の向上等を図ることができる。さらに、把持部がネスティングの妨げになることを回避することができ、より効率よくネスティングを行うことができる上、把持部の損傷を抑止することができる。
尚、「容器のネスティング状態において、上側の容器の前記側壁部の下辺部は、下側の容器の前記透孔の下縁部よりも下方に位置していること」としてもよい。この場合、ネスティング効率の向上(ネスティング状態とされた複数の容器の高さを極力低くして、搬送効率等を向上させる)が図られる。さらに、当該構成を採用する場合、容器のネスティング状態において、下側の容器の透孔の内方側が上側の容器の側壁部で閉塞されるが、上記手段1に記載のように、透孔の上方に隣接して(透孔の上縁部に連続して)把持部が設けられていることにより、下側の容器の透孔に挿通させようとした指が上側の容器の側壁部に突き当たったとしても、所定の面積を有する下側の容器の把持部の下面に指先を掛けて、ネスティングされた複数の容器を持ち上げることができる。
また、「容器のネスティング状態において、上側の容器の前記透孔の下縁部は、下側の容器の前記側壁部の上辺部よりも下方に位置していること」としてもよいし、さらに、「容器のネスティング状態において、上側の容器の前記透孔の上縁部(前記把持部の下面)は、下側の容器の前記側壁部の上辺部よりも下方に位置していること」としてもよい。この場合、より一層のネスティング効率の向上が図られる。また、当該構成を採用する場合、容器のネスティング状態において、上側の容器の透孔の少なくとも下部が下側の容器の内側に収容されるが、上記手段1に記載のように、透孔の上方位置に張出し部が設けられることで、上側の容器の内方側から上側の容器の透孔を介して下側の容器の張出し部の内面が臨める位置関係とすることができ、上側の容器の把持部の下方(上側の容器の把持部と、下側の容器の把持部との間)に作業者の指先を挿入可能なスペースを確保することが可能となる。従って、ネスティング状態にある容器のうち上側の容器を1つずつ取出す場合に、上側の容器の内側から透孔を介して、上側の容器の透孔の上縁部、及び、把持部の下面に指先を掛けて、上側の容器を持ち上げることができる。
但し、「容器のネスティング状態において、上側の容器の前記把持部と、下側の容器の前記把持部とは上下に離間していること」とする。これにより、上側の容器の把持部と、下側の容器の把持部との間に指先を挿入可能なスペースを確実に確保することができる。
手段3.前記張出し部の側縁部から内方に突出する側板部を備えるとともに、該側板部が前記内面構成壁部と連結され、
前記把持部は、前記張出し部の下縁部から内方に突出して前記内面構成壁部と連結されていることを特徴とする手段1又は2に記載の容器。
手段4.前記把持部の下面側は、当該把持部が設けられた前記側壁部の横幅方向において、前記把持部の中央部が下方に突出するようにして湾曲していることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の容器。
手段4によれば、把持部の下面形状を、手を自然に握った場合の指の並びに合わせた形状とすることができ、透孔を介して透孔の上方部位(持ち手部)をより持ち易くすることができる。
手段5.前記内面構成壁部の上縁部から外方に延出する上フランジ部を備え、
前記上フランジ部のうち少なくとも前記張出し部の上縁部から外方に延出する部位に関し、当該上フランジ部は、基部と、該基部から外方に向けて下方に傾斜する傾斜部とを備えるとともに、前記基部と前記傾斜部との境界部が断面略円弧状をなしていることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の容器。
手段5によれば、透孔に指先を挿入して透孔の上方部位(持ち手部)を握る手に当接する部位から極力角部をなくすとともに、手との当接面積を増やすことができる。従って、容器を持ち易くするといった作用効果がより一層奏される。
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1、図2等に示すように、容器1は、平面視略矩形状の底壁構成部2と、底壁構成部2の相対する一対の長側辺部からそれぞれ上方に延出する長辺側側壁部3と、底壁構成部2の相対する一対の短側辺部からそれぞれ上方に延出する短辺側側壁部4とを備え、内側に物品を収容可能な収容空間5を有している。本実施形態の長辺側側壁部3、及び、短辺側側壁部4は、上方に向けて容器1の外方に傾斜して延びている。これにより、図6等に示すように、下側の容器1の収容空間5に対し上側の容器1を挿入させるようにして容器1同士を積み重ねること(ネスティング)が可能に構成されている。また、容器1は、ポリプロピレンによって一体的に形成されている。
図1、図5等に示すように、各短辺側側壁部4は、短辺側側壁部4の内面を構成する内面構成壁部11の上縁部を含む部位を外方に変形させるようにして設けられた水平断面略円弧状の張出し部12と、張出し部12の下縁部から内方に突出して内面構成壁部11と連結される把持部13とを備えている。張出し部12は、短辺側側壁部4の横幅方向中央部を含む範囲において、短辺側側壁部4の上辺部の長さの1/3程度の長さの範囲に設けられている。さらに、把持部13の下方に隣接して内面構成壁部11を貫通する透孔14が設けられている。本実施形態では、作業者が透孔14に指を差し入れて透孔14の上方部位(以下、「持ち手部15」と称する)を把持可能(例えば、内面構成壁部11の上縁部に親指の付け根を掛けるとともに、把持部13の下面側に人差し指、中指、薬指の第1関節又は第2関節を掛けることが可能)となっている。
尚、本実施形態では、内面構成壁部11のうち、把持部13の下方に隣接する部位、及び、把持部13の上方部位は切欠かれており、内面構成壁部11のうち把持部13と連結された部位は、把持部13の厚みと同じであって、上面及び下面が把持部13の上面及び下面と面一である。このため、内面構成壁部11のうち把持部13と連結された部位を把持部13の一部として捉えることも可能であり、その場合には、把持部13の内側端縁が、内面構成壁部11の内面と面一となる。
加えて、図5に示すように、把持部13と、張出し部12との境界部は断面略円弧状をなしている。さらに、図4に示すように、把持部13の下面側は、当該把持部13が設けられた短辺側側壁部4の横幅方向において、把持部13の中央部が下方に突出するようにして湾曲している。このため、透孔14の上縁部についても、横幅方向中央部が下方に突出するようにして湾曲し、また、透孔14の下縁部についても、透孔14の横幅方向中央部の上下幅が短くならないように、横幅方向中央部が下方に突出するようにして湾曲している。尚、透孔14の上縁部、及び、下縁部と、側縁部との境界部は円弧状に形成されている。また、図5に示すように、透孔14の下縁部から外方に比較的小さく突出する縁突部16が設けられている。
また、図1、図3等に示すように、容器1は、長辺側側壁部3、及び、短辺側側壁部4の上辺部から外方に延出する上フランジ部17を備えている。短辺側側壁部4に対応しては、上フランジ部17は内面構成壁部11の上縁部から外方に延出し、特に、張出し部12に対応しては、図5に示すように、上フランジ部17は張出し部12の上縁部から外方に延出している。
さらに、上フランジ部17は、長辺側側壁部3、及び、短辺側側壁部4の上辺部(内面構成壁部11の上縁部)から外方に延出する基部18と、基部18の外縁部から外方に向けて基部18に比べて下方に大きく傾斜する傾斜部19とを備え、基部18と、傾斜部19との境界部が断面略円弧状をなしている。基部18の外縁部は、張出し部12の外面よりも外方に位置しており、上フランジ部17のうち張出し部12に対応する部位に関しても、基部18、及び、傾斜部19を備えている。
図1等に示すように、各長辺側側壁部3の上辺部の中央部を含む部位には、上フランジ部17を上方により大きく突出させるようにして制限突部21が設けられている。各制限突部21の裏面側には、制限突部21と、長辺側側壁部3の外面との間を連結する一対の制限リブ22が設けられ、制限リブ22の下縁部は、上フランジ部17の外縁部(下端部)よりも下方、かつ、透孔14よりも上方に位置している。図6に示すように、容器1をネスティングした場合には、上側の容器1の制限リブ22が、下側の容器1の制限突部21の上面に当接し、下側の容器1に対する上側の容器1のそれ以上の挿入が規制されるようになっている。
また、図7に示すように、本実施形態では、容器1のネスティング状態において、上側の容器1の透孔14の上縁部は、下側の容器1の短辺側側壁部4の上辺部とほぼ同じ高さ(上側の容器1の透孔14の上縁部の方が若干高い)となっている。尚、図2等に示すように、上フランジ部17の裏面側においても、各長辺側側壁部3の両側部付近、及び、各短辺側側壁部4の両側部付近に対応して、上フランジ部17と、長辺側側壁部3、又は、短辺側側壁部4との間を連結する補強リブ23が設けられている。
また、図8等に示すように、各長辺側側壁部3の制限突部21の両端部には、略コ字状のハンドル24を回動可能に連結する連結部25が設けられている。そして、ハンドル24の一端部を一方の長辺側側壁部3の連結部25と連結し、ハンドル24の他端部を他方の長辺側側壁部3の連結部25と連結することで、ハンドル24が長辺側側壁部3に連結される。また、ハンドル24は一対で取付けられ、一対のハンドル24を起立させて互いに当接させることが可能である。
さらに、ハンドル24を寝かせた状態では、ハンドル24は、長辺側側壁部3、及び、短辺側側壁部4の上辺部に当接して支持される。寝かせ位置にあるハンドル24は、制限突部21の上面よりも若干下方に位置している(寝かせ位置とされたハンドル24のうち上方を向いている側面部の一部又は全部を制限突部21の上面を同じ高さとしてもよい)。加えて、ハンドル24を寝かせた状態では、ハンドル24は、長辺側側壁部3、及び、短辺側側壁部4の上辺部に沿って延在し、特に、張出し部12に対応する部位については、張出し部12の形状に対応して湾曲形状をなしている。このため、ハンドル24を寝かせた状態とすれば、ハンドル24を取付けた状態であっても容器1をネスティング可能である上、把持部13の上方がハンドル24で閉塞されないようになっている。尚、ハンドル24は断面略楕円形状をなしており(寝かせ位置とした場合に側壁部3、4の上辺部に当接する部位については平坦面としてもよい)、持ち手部15とともにハンドル24を握って容器1を持ち上げることも可能である。
また、図1等に示すように、長辺側側壁部3の制限突部21の下方位置には、店名等が記載される情報部26が設けられている。さらに、図2に示すように、底壁構成部2の下面側には、底壁構成部2の外周に沿って下方に突出する矩形枠状の支持枠部27と、支持枠部27の内側において支持枠部27の間を連結する支持補強部28とが設けられている。底壁構成部2の4隅と、中央部とに対応して、支持枠部27、及び、支持補強部28が下方に突出しており、当該部位が床面等の設置面に当接して支持されるようになっている。尚、図7に示すように、容器1のネスティング状態において、上側の容器1の支持枠部27、及び、支持補強部28は、下側の容器1の底壁構成部2から上方に離間している。加えて、図1等に示すように、長辺側側壁部3、短辺側側壁部4、及び、底壁構成部2には、矩形状の開口部が行列状に設けられており、軽量化等が図られている。
以上詳述したように、本実施形態によれば、作業者が透孔14に指を差し入れて透孔14の上方部位(持ち手部15)を把持可能な構成において、透孔14の上縁部を構成する把持部13は、内面構成壁部11よりも外方に位置する張出し部12の下縁部から内方に突出して設けられている(図5参照)。このため、例えば、短辺側側壁部4(内面構成壁部11)に単に透孔を設けただけで、その上方部位を持ち手部として把持する構成に比べ、持ち手部15のうち指を下側から掛けられる持ち手部15の下面の面積を増やすことができる。従って、容器1を持ち上げる手に対して局所的に荷重が付加されることを抑止することができ、手への負担軽減等を図ることができる。結果として、容器1の持ち易さの向上を図ることができ、持ち手部15を把持して容器1を運搬等する場合の作業性の向上等を図ることができる。
尚、例えば、張出し部12を設けることなく、短辺側側壁部4(内面構成壁部11)に透孔を設けるとともに、該透孔の上縁部から外方に突出して上フランジ部の下面と対向する把持部を設けるといった構成に比べ、容器1(特に、上フランジ部17と、把持部との間の部分)を成形する金型構造の簡素化等を図ることができる。加えて、把持部13の外縁部側が張出し部12と連結されていることから、把持部13の外縁部側の強度を高めることができ、把持部13の下面に指を掛けて容器1を持ち上げる等した場合に把持部13が変形及び損傷する等の事態を防止することができる。
また、容器1はネスティング可能に構成され、物品を収容していない容器1の運搬効率、及び、保管効率の向上等を図ることができる。さらに、把持部13の内側端縁は、内面構成壁部11の内面よりも外方に位置している(又は、面一である)。このため、把持部13がネスティングの妨げになることを回避することができ、より効率よく(上側の容器1の下側の容器1への挿入長をより深くして)ネスティングを行うことができる上、把持部13の損傷を抑止することができる。
また、容器1のネスティング状態において、上側の容器1の透孔14の下縁部は、下側の容器1の短辺側側壁部4の上辺部よりも下方に位置している(図7参照)。これにより、ネスティング効率の向上(ネスティング状態とされた複数の容器1の高さを極力低くして、搬送効率等を向上させる)が図られる。さらに、容器1のネスティング状態において、下側の容器1の透孔14の内方側が上側の容器1の短辺側側壁部4(内面構成壁部11)で閉塞されるが、上記のように、透孔14の上方に隣接して(透孔14の上縁部に連続して)把持部13が設けられていることにより、下側の容器1の透孔14に挿通させようとした指が上側の容器1の短辺側側壁部4に突き当たったとしても、所定の面積を有する下側の容器1の把持部13の下面に指先を掛けて、ネスティングされた複数の容器1を持ち上げることができる。
加えて、本実施形態では、容器1のネスティング状態において、上側の容器1の透孔14の上縁部が、下側の容器1の短辺側側壁部4の上辺部とほぼ同じ高さとなっており、上側の容器1の透孔14の大部分が下側の容器1の内側に収容される。この点、上記のように、透孔14の上方位置に張出し部12が設けられていることにより、上側の容器1の内方側から、上側の容器1の透孔14を介して下側の容器1の張出し部12の内面が臨める位置関係となる。このため、上側の容器1の把持部13の下方(上側の容器1の把持部13と、下側の容器1の把持部13との間)に作業者の指先を挿入可能なスペースを確保することができる。従って、ネスティング状態にある容器1のうち上側の容器1を1つずつ取出す場合に、上側の容器1の内側から透孔14を介して、上側の容器1の透孔14の上縁部、及び、把持部13の下面に指先を掛けて、上側の容器1を持ち上げることができる。
また、張出し部12は、当該張出し部12が設けられた短辺側側壁部4の横幅方向において中央部を含む範囲に設けられており、短辺側側壁部4のうち各側辺部を含む部位は、張出し部12が設けられていない部位となっている。つまり、容器1をネスティングした場合、下側の容器1の短辺側側壁部4(内面構成壁部11)の内面によって、上側の容器1の(容器1の長手幅方向における)外方側への変位が規制されることとなるが、上記のように短辺側側壁部4の横幅方向において張出し部12が設けられていない部位を設けることで、短辺側側壁部4(内面構成壁部11)の内面が短辺側側壁部4の上辺部にまで略面一に延在する部位を設けることができる。このため、容器1のネスティングに際し、上側の容器1の短辺側側壁部4の外面を、下側の容器1の短辺側側壁部4の上辺部から当該短辺側側壁部4の内面に沿わせつつ、上側の容器1を下側の容器1に挿入させることができ、上側の容器1の下面が、下側の容器1の把持部13の上面と対向して当接する位置まで相対変位してしまうといった事態を回避することができる。従って、容器1のネスティングを行う際等の作業性の向上等を図ることができる。
さらに、把持部13の下面側は、当該把持部13が設けられた短辺側側壁部4の横幅方向において、把持部13の中央部が下方に突出するようにして湾曲している。このため、把持部13の下面形状を、手を自然に握った場合の指の並びに合わせた形状とすることができ、透孔14を介して透孔14の上方部位(持ち手部15)をより持ち易くすることができる。
加えて、把持部13と、張出し部12との境界部は断面略円弧状をなしている。さらに、張出し部12の上縁部から外方に延出する上フランジ部17は、張出し部12の上縁部から外方に延出する基部18と、基部18の外縁部から外方に向けて基部18よりも下方に大きく傾斜する傾斜部19とを備え、基部18と傾斜部19との境界部が断面略円弧状をなしている。このため、透孔14に指先を挿入して透孔14の上方部位(持ち手部15)を握る手に当接する部位から極力角部をなくすとともに、手との当接面積を増やすことができる。従って、容器1を持ち易くするといった作用効果がより一層奏される。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態では、ネスティングが可能な容器1に具体化されているが、例えば、ネスティング、及び、スタッキング(物品を収容した容器の段積み)の両方が可能な容器に適用することも可能である。例えば、図9~図11に示す容器31は、側壁部32、33の上辺部から外方に突出する上フランジ部34と、側壁部32、33の外面から突出する支持部35と、側壁部32、33の内面側に設けられた受容部36とを備えている。
図10、図11に示すように、下側の容器31に対して上側の容器31を水平に180度回転させた向きで上下に積み重ねることで、上側の容器31の支持部35が、下側の容器31の受容部36に挿入されて、容器31のネスティングが行われるようになっている。その一方で、容器31同士を同じ向きで上下に積み重ねることで、上側の容器31の支持部35は、下側の容器31の受容部36に挿入されず、長辺側側壁部32の上フランジ部34の上面に当接して支持されたり、受容部36に隣接して受容部36の底面よりも上方に底面が位置するようにして設けられたスタッキング用受容部37に挿入され、その底面に当接して支持されたりして、スタッキングが行われるようになっている。
また、図9~図11の容器31に関しても、短辺側側壁部33の内面を構成する内面構成壁部38の上縁部中央部を含む部位を外方に変位させるようにして設けられた張出し部39と、張出し部39の下縁部から内方に突出して内面構成壁部38に連結される把持部40と、把持部40の下方に隣接して内面構成壁部38を貫通する透孔41とが設けられている。このように、把持部40が設けられることによって、透孔41の上方部位(持ち手部42)の下面に相当する部位の面積を極力広く確保することができ、持ち手部42を持って容器31を持ち運び易くすることができる。尚、図9等に示す容器31の張出し部39は、内面構成壁部38の上縁部を含む部位を外方に変位させるようにして略平板状に構成されており、張出し部39の側縁部から内方に突出して内面構成壁部38と連結される側板部43が設けられている。また、容器31には上記実施形態に記載されたようなハンドルを取付けられないようになっている。
さらに、容器31のネスティング状態では、下側の容器31の透孔41の内方側が、上側の容器31の短辺側側壁部33で閉塞されているが、該透孔41に指先を挿入させなくても、下側の容器31の把持部40の下面に指を掛けて、ネスティングされた容器31をまとめて持ち運ぶことができる。
(b)ネスティング状態において、上側の容器1を下側の容器1の収容空間5にどの程度挿入させるかについても適宜変更可能である。例えば、容器1のネスティング状態において、上側の容器1の透孔14の上縁部(把持部13の下面)を、下側の容器1の短辺側側壁部4の上辺部よりも下方に位置させることとしてもよい。すなわち、上記実施形態のように、張出し部12が設けられることで、上側の容器1の把持部13の下面を、下側の容器1の張出し部12の内側に挿入させるようにして、上側の容器1の把持部13を下側の容器1の内側に挿入させることが可能となる。
尚、ネスティングされた容器1から上段の容器1を1つずつ取出す作業を行う場合に、上段の容器1の収容空間5から、当該上段の容器1の透孔14を介して、当該上段の容器1の把持部13の下面に指を掛けて、当該上段の容器1を持ち上げるといった使い方をする場合には、容器1のネスティング状態において、上段の容器1の把持部13と、下段の容器1の把持部13との間に空間(指先を差し入れ可能なだけの空間)が形成されていることとする(上記例では制限突部21及び制限リブ22により確実に確保される)。尚、ネスティングが不可能な容器(スタッキングは可能でも不可能でもよい)に具体化することも可能である。
(c)上記実施形態では、把持部13の内側端縁が内面構成壁部11と連結されているが、内面構成壁部11のうち把持部13と連結される部位が省略され、把持部13の内側端縁が内面構成壁部11の内面よりも外方に位置したり、把持部13の内側端縁が内面構成壁部11の内面よりも内方に位置したりするように構成してもよい。但し、把持部13が内面構成壁部11よりも内方に突出してしまうと、容器1のネスティングを行う際に上側の容器1の下面側が下側の容器の把持部13に引っ掛かる等の事態を招くおそれがあるため、把持部13の内側端縁は、内面構成壁部11の内面と面一、又は、外方側に位置するように構成することが望ましい。尚、張出し部12の内面と、把持部13の上面との間を斜めに連結する補強用のリブを設けることとしてもよい。
(d)上記実施形態では、張出し部12に対応していない部位に設けられた上フランジ部17に関しても、基部18と、傾斜部19とを備えて、基部18と、傾斜部19との境界部が断面略円弧状をなしているが、張出し部12に対応する部位のみがそのように構成されることとしてもよい。また、上フランジ部17のうち張出し部12に対応する部位に関しても、上フランジ部17の基部18と傾斜部19との境界部が断面略円弧状に構成されていなくてもよいし、上フランジ部17が外端縁まで一直線状に構成されていてもよい。さらに、張出し部12に対応する部位には上フランジ部17が設けられない構成(上フランジ部17の外縁部が、張出し部12の外面と面一)としてもよい。この場合、把持部13の下面を持ち手とする作用効果がより顕著に奏される。尚、上フランジ部17の全体を省略することも可能である。
また、把持部13の下面を短辺側側壁部4の横幅方向において平坦に形成してもよいし、把持部13と張出し部12との境界部を平面取り形状としてもよい。加えて、上記実施形態では特に言及していないが、透孔14の上縁部の内端部側、上フランジ部17の外端縁、及び、張出し部12と上フランジ部17との境界部を面取り形状としてもよい。
(e)上記実施形態では、短辺側側壁部4に張出し部12、把持部13、及び、透孔14が設けられているが、かかる構成に代えて、又は、加えて、長辺側側壁部3に張出し部12、把持部13、及び、透孔14が設けられるように構成してもよい。また、上記実施形態では、容器1はポリプロピレンにより構成されているが、ポリエチレン、PET、ポリアミド等その他の樹脂材料により構成されることとしてもよい。