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JP7215321B2 - 人工光合成セル - Google Patents

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Description

本発明は、人工光合成セルに関する。
太陽光エネルギーを用いて水(HO)から水素(H)を、水(HO)と二酸化炭素(CO)から一酸化炭素(CO)、ギ酸(HCOOH)、メタノール(CHOH)などを合成する人工光合成の研究が極めて活発に行われている。後者の場合、HOは酸化されてCOに電子とプロトンを供給する。pH7付近ではHOの酸化電位は0.82V、還元電位は-0.41V(何れもNHE)である(非特許文献1参照)。また、COからCO,HCOOH,CHOHへの還元電位はそれぞれ-0.53V、-0.61V、-0.38Vである。したがって、酸化電位と還元電位の電位差は、1.20~1.43Vである。
人工光合成のための材料研究は、価電子帯上端が0.82Vよりも浅く、伝導帯下端が上記還元電位よりも深い位置にある半導体光触媒から始まった。しかし、バンドギャップが広いために太陽光スペクトルのごく一部しか利用できないので、単一光触媒材料に替わって、半導体pn接合を基にした太陽電池の正極、負極のそれぞれに酸化反応の触媒、還元反応の触媒を担持した、非特許文献2のFig.3(B)、非特許文献3のFig.2(A)に示されるような一体型人工光合成セルの研究が拡がりつつある(非特許文献2~4参照)。ただし、この場合、素子が水に浸漬されるので、後述するように(図2参照)、水の光吸収による損失が生じる。これを回避する方法の1つが、非特許文献5に示されるように、酸化電極と還元電極とを対向させた間に電解液を満たしたものと太陽電池を電気配線も含めてパッケージ化した対向型人工光合成セルである(非特許文献5参照)。
上記の通り、酸化電位と還元電位の電位差は1.20~1.43Vであり、実際に合成反応を生じさせるためには過電圧が必要であるため、約2.0~2.4Vの動作電圧が必要である(図1参照)。多接合太陽電池は複数の素子を直列接続したものであるから、高い電圧が得られる。非特許文献2~5では、3接合アモルファスシリコン系太陽電池が用いられている。しかし、3接合アモルファスシリコン系太陽電池の変換効率は最高でも14%であるため(非特許文献6参照)、これを用いた人工光合成の変換効率は最高でもこれのおよそ1/2程度に留まる。
S. N. Habisreutinger, L. Schmidt-Mende, and J. K. Stolarczyk, Angeandte Chemie Int. Ed. 52, 7372 (2013). S. Y. Reece, J. A. Hamel, K. Sung, T. D. Jarvi, A. J. Esswein, J. J. H. Pijpers, and D. G. Nocera, Science 334, 645 (2011). T. Arai, S. Sato, and T. Morikawa, Energy Environ. Sci. 8, 1998 (2015). S. Sato, T. Arai, and T. Morikawa, Nanotechnology 29, 034001 (2018). J.-P. Becker, B. Turan, V. Smirnov, K. Welter, F. Urbain, J. Wolff, S. Haas, and F. Finger, J. Mater. Chem. A 5, 4818 (2017). M. A. Green, Y. Hishikawa, E. D. Dunlop, D. H. Levi, J. Hohl-Ebinger, M. Yoshita, A. W. Y. Ho-Baillie, Prog. Photovolt: Res. Appl. 27, 3 (2018). W. Shockley and H. J. Queisser, J. Appl. Phys. 32, 510 (1961). L. C. Hirst and N. J. Ekins-Daukes, Prog. Photovolt. Res. Appl. 19, 286 (2011). P. Wurfel, J. Phys. C 15, 3967 (1982). National Renewable Energy Laboratoryホームページ「Reference Solar Spectral Irradiance: Air Mass 1.5」 S. Kedenburg, M. Vieweg, T. Gissibl, and H. Giessen, Opt. Mat. Express 2, 1588 (2012). F. Urbain, V. Smirnov, J.-P. Becker, A. Lambertz, F. Yang, J. Ziegler, B. Kaiser, W. J, U. Rau, and F. Finger, Energy Environ. Sci. 9, 145 (2016). G. E. Eperon, et al., Science 354, 861 (2016). B. Zhao, et al., Adv. Mater. 29, 1604744 (2017). J. H. Noh, et al., Nano Lett. 23, 1764 (2013). G. E. Eperon, et al., Energy Environ, Sci, 7, 982 (2014). J. Lopez-Garcia, et al., Thin Solid Films 517, 2240 (2009). J. Lopez-Garcia, et al., Solar Energy Mater. Solar Cells 94, 1263 (2010). J.-C. Park, et al., Opt. Mater. Express 6, 3541 (2016). M. Morihama, et al., Jpn. J. Appl. Phys 53, 04ER09 (2014). M. Umehara, et al., Solar Energy Mater. Solar Cells 134, 1 (2015). M. Umehara, et al., J. Alloys Compd. 689, 713 (2016). X. Zheng, et al., J. Alloys Compd. 738, 484 (2018).
本発明の目的は、人工光合成の変換効率を向上することができる、太陽電池を用いた人工光合成セルを提供することにある。
本発明は、バンドギャップが1.1~2.0eV/1.8~2.4eVの2接合薄膜太陽電池と、酸化反応用電極である正極と、還元反応用電極である負極と、を備え、動作電圧が2.0~2.4Vである、人工光合成セルである。
前記人工光合成セルにおいて、前記2接合薄膜太陽電池は、ボトムセルが、(FA1-xMA1-x’Csx+x’)(Pb1-ySn)I、0≦x+x’≦1、0≦y≦1の組成を有し、トップセルが、(FA1-xMA1-x’Csx+x’)(I1-zBr、0≦x+x’≦1、0.4≦z≦1の組成を有する有機無機ハイブリッドペロブスカイトを含んで構成される光電変換層を有することが好ましい。
前記人工光合成セルにおいて、前記2接合薄膜太陽電池は、ボトムセルが、Cu(In1-xGa)Se、0≦x≦1の組成を有し、トップセルが、Cu(In1-x’Alx’)Se、0.9≦x’≦1の組成を有するCIGS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することが好ましい。
前記人工光合成セルにおいて、前記2接合薄膜太陽電池は、ボトムセルが、CuZnSn(S1-xSe、0≦x≦1の組成を有し、トップセルが、CuZn(Sn1-x’Gex’)S、0.6≦x’≦1の組成を有するCGTS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することが好ましい。
前記人工光合成セルにおいて、前記2接合薄膜太陽電池は、ボトムセルが、CuZn(Sn1-xGe)S、0≦x≦0.8の組成を有し、トップセルが、CuZn(Sn1-x’Gex’)S、0.6≦x’≦1、ただしx’<xの組成を有するCGTS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することが好ましい。
前記人工光合成セルにおいて、前記2接合薄膜太陽電池は、ボトムセルが、CuZn(Sn1-xGe)Se、0.3≦x≦1.0の組成を有し、トップセルが、CuZn(Sn1-x’Gex’)S、0.6≦x’≦1の組成を有するCGTS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することが好ましい。
前記人工光合成セルにおいて、前記2接合薄膜太陽電池は、ボトムセルが、Cu(Sn1-xGe)S、0.3≦x≦1.0の組成を有し、トップセルが、CuZn(Sn1-x’Gex’)S、0.6≦x’≦1の組成を有するCGTS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することが好ましい。
本発明により、変換効率を向上することができる、太陽電池を用いた人工光合成セルを提供することができる。
(a)IrOxアノード/Ptの電流密度-電位曲線、(b)Ru錯体+カーボンペーパーカソード/Ptの電流密度-電位曲線、(c)IrOxアノード/Ru錯体+カーボンペーパーカソードの電流-電圧曲線を示すグラフである。 (a)水の吸収係数、(b)水深1cmおよび10cmまでの光透過率を示すグラフである。 薄膜多結晶2接合素子の特性に与えるトップセル、ボトムセルのバンドギャップ(εg1,εg2)の影響を示す図である。 薄膜多結晶2接合素子の特性を示すグラフである。(a)~(j)はそれぞれ表7に示されるバンドギャップの素子の結果である。 本発明の実施の形態に係る対向型の人工光合成セルの一例の概略構成を示す図である。 本発明の実施の形態に係る一体型の人工光合成セルの一例の概略構成を示す図である。 本発明の実施の形態に係る相互貫入電極を用いた一体型の人工光合成セルの一例の概略構成を示す図である。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施の形態に係る人工光合成セルは、バンドギャップが1.1~2.0eV/1.8~2.4eVの2接合薄膜太陽電池と、酸化反応用電極である正極と、還元反応用電極である負極と、を備える。
本実施形態に係る人工光合成セルは、人工光合成反応に必要な電位差を確保しながら大電流を取り出すことができるので、人工光合成の変換効率が向上する。これは、適切なバンドギャップをもつ材料を用いて太陽電池を構成することにより、酸化電極および還元電極と組み合わせたときの動作点が太陽電池の最大出力動作点におおよそ一致するためである。
本実施形態に係る人工光合成セルにおいて、2接合薄膜太陽電池は、ボトムセルが、(FA1-xMA1-x’Csx+x’)(Pb1-ySn)I、0≦x+x’≦1、0≦y≦1の組成(バンドギャップ1.2~1.8eV)を有し、トップセルが、(FA1-xMA1-x’Csx+x’)(I1-zBr、0≦x+x’≦1、0.4≦z≦1の組成(バンドギャップ1.8~2.3eV)を有する有機無機ハイブリッドペロブスカイトを含んで構成される光電変換層を有することが好ましい(組成については、非特許文献13~16参照)。
本実施形態に係る人工光合成セルにおいて、2接合薄膜太陽電池は、ボトムセルが、Cu(In1-xGa)Se、0≦x≦1の組成(バンドギャップ1.0~1.6eV)を有し、トップセルが、Cu(In1-x’Alx’)Se、0.9≦x’≦1の組成(バンドギャップ1.8~2.0eV)を有するCIGS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することが好ましい(組成については、非特許文献17~19参照)。
本実施形態に係る人工光合成セルにおいて、2接合薄膜太陽電池は、ボトムセルが、CuZnSn(S1-xSe、0≦x≦1の組成(バンドギャップ1.3~1.5eV)を有し、トップセルが、CuZn(Sn1-x’Gex’)S、0.6≦x’≦1の組成(バンドギャップ1.8~2.1eV)を有するCGTS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することが好ましい(組成については、非特許文献20~23参照)。
前記人工光合成セルにおいて、前記2接合薄膜太陽電池は、ボトムセルが、CuZn(Sn1-xGe)S、0≦x≦0.8の組成(バンドギャップ1.5~2.0eV)を有し、トップセルが、CuZn(Sn1-x’Gex’)S、0.6≦x’≦1、ただしx’<xの組成(バンドギャップ1.8~2.1eV)を有するCGTS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することが好ましい(組成については、非特許文献20~23参照)。
前記人工光合成セルにおいて、前記2接合薄膜太陽電池は、ボトムセルが、CuZn(Sn1-xGe)Se、0.3≦x≦1.0の組成(バンドギャップ1.1~1.35eV)を有し、トップセルが、CuZn(Sn1-x’Gex’)S、0.6≦x’≦1の組成(バンドギャップ1.8~2.1eV)を有するCGTS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することが好ましい(組成については、非特許文献20~23参照)。
前記人工光合成セルにおいて、前記2接合薄膜太陽電池は、ボトムセルが、Cu(Sn1-xGe)S、0.3≦x≦1.0の組成(バンドギャップ1.1~1.7eV)を有し、トップセルが、CuZn(Sn1-x’Gex’)S、0.6≦x’≦1の組成(バンドギャップ1.8~2.1eV)を有するCGTS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することが好ましい(組成については、非特許文献20~23参照)。
本実施形態に係る人工光合成セルの構成は、バンドギャップが1.1~2.0eV/1.8~2.4eVの上記2接合薄膜太陽電池と、酸化反応用電極である正極と、還元反応用電極である負極と、を備えるものであればよく、特に限定されない。本実施形態に係る人工光合成セルは、例えば、バンドギャップが1.1~2.0eV/1.8~2.4eVの上記2接合薄膜太陽電池と;酸化反応用電極である正極と、還元反応用電極である負極と、を有する電気化学反応装置と;を備える。
本実施形態に係る人工光合成セルは、例えば、図5に示すように、収容部18内に正極(アノード電極)12と負極(カソード電極)14とを対向させた間の流路16に電解液を満たした電気化学反応装置と、負極(カソード電極)14に隣接して配置した2接合薄膜太陽電池10とを電気配線も含めてパッケージ化した対向型の人工光合成セル1である。本実施形態に係る人工光合成セルは、例えば、図6に示すように、2接合薄膜太陽電池10の両面にそれぞれ正極(アノード電極)12、負極(カソード電極)14を備える一体型の人工光合成セル3とし、容器内の電解液に浸漬して用いられる方式としてもよい。また、本実施形態に係る人工光合成セルは、例えば、図7に示すように、2接合薄膜太陽電池10の片面に正極(アノード電極)12と負極(カソード電極)14との相互貫入電極を設けて、それが容器20内の電解液(水)中あるいは電解液(水)面(例えば、セルが電解液(水)面に浮かんでいて、2接合薄膜太陽電池10は電解液(水)に浸漬されていないが、正極(アノード電極)12と負極(カソード電極)14は電解液(水)に接している。)にある人工光合成セル5としてもよい。
図5の人工光合成セル1を例に以下、説明する。人工光合成セル1の電気化学反応装置は、例えば、収容部18内に例えば板状の部材である正極(アノード電極)12と負極(カソード電極)14とが離間されて対向する位置に配置され、アノード電極12とカソード電極14との間に、二酸化炭素等の反応基質を含む電解液が流れる流路16を有する。アノード電極12とカソード電極14は電線等が接続され、適切な電位に保持される。
電気化学反応装置は、アノード電極12とカソード電極14との間の流路16に二酸化炭素等の反応基質を含む電解液が導入されることによって機能する。アノード電極12においては、例えば、水(HO)が酸化されて酸素(1/2O)が得られる。カソード電極14においては、例えば二酸化炭素が還元されてギ酸(HOOOH)等が生成される。
還元反応用電極である負極(カソード電極)14は、還元反応によって物質を還元するために利用される電極である。カソード電極14は、例えば、基板上に順に形成される導電層および導電体層を含んで構成される。
基板は、電極を構造的に支持する部材である。基板は、特に材料が限定されるものではないが、例えば、ガラス基板等が挙げられる。基板は、例えば、金属または半導体を含むものとしてもよい。基板として用いられる金属は、特に限定されるものではないが、例えば、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)等が挙げられる。基板として用いられる半導体は、特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)、シリコン(Si)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タンタル(Ta)等が挙げられる。基板を金属または半導体を含むものとした場合、導電層および導電体層と基板との間には絶縁層を形成することが好ましい。絶縁層は、特に限定されるものではないが、半導体の酸化物、窒化物や樹脂等が挙げられる。金属基板と導電層および導電体層とが電気的に直接接続されている構成としてもよい。
基板は、高比表面積を有する等の点から、カーボン材料を含んで構成されてもよい。カーボン材料は、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンクロス、カーボンペーパー等が挙げられる。
導電層は、カソード電極14における集電を効果的にするために設けられる。導電層は、特に限定されるものではないが、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電層等が挙げられる。特に、熱的および化学的な安定性を考慮すると、フッ素ドープ酸化錫(FTO)を用いることが好適である。
導電体層は、還元触媒機能を有する材料を含む導電体を含んで構成される。導電体は、カーボン材料(C)を含む材料を含んで構成することができる。カーボン材料の構造体の単体のサイズが1nm以上1μm以下であることが好適である。カーボン材料は、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびグラファイトの少なくとも1つ等が挙げられる。グラフェンおよびグラファイトであればサイズが1nm以上1μm以下であることが好適である。カーボンナノチューブであれば直径が1nm以上40nm以下であることが好適である。導電体は、例えば、エタノール等の液体に混ぜ合わせたカーボン材料をスプレーで塗布し、加熱することによって形成することができる。スプレーの代わりに、スピンコートによって塗布してもよい。また、スピンコートを用いず、直接溶液を滴下して乾かして塗布してもよい。
還元触媒機能を有する材料として、錯体触媒等を用いることができる。錯体触媒は、例えば、ルテニウム錯体とすることが好適である。錯体触媒は、例えば、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)(MeCN)Cl]、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)Cl]、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)(CHCN)Cl]等が挙げられる。
錯体触媒による修飾は、例えば、錯体をアセトニトリル(MeCN)溶液に溶解した液を導電体層の導電体の上に塗布することで作製することができる。また、錯体触媒による修飾は、電解重合法により行うこともできる。例えば、作用極として導電体層の導電体の電極、対極にフッ素含有酸化スズ(FTO)で被覆したガラス基板、参照電極にAg/Ag電極を用い、錯体触媒を含む電解液中においてAg/Ag電極に対して負電圧となるようにカソード電流を流した後、Ag/Ag電極に対して正電位となるようにアノード電流を流すことにより導電体層の導電体上を錯体触媒で修飾することができる。電解質の溶液には、例えば、アセトニトリル(MeCN)、電解質には、例えば、Tetrabutylammoniumperchlorate(TBAP)を用いることができる。
このように形成された導電体層は、カソード電極14を構成する導電層上に担持、塗布または貼付される。これにより、基板上に、順に導電層および導電体層を有するカソード電極14が形成される。
酸化反応用電極である正極(アノード電極)12は、酸化反応によって物質を酸化するために利用される電極である。アノード電極12は、例えば、基板上に順に形成される導電層および酸化触媒層を含んで構成される。
基板は、電極を構造的に支持する部材である。基板は、カソード電極14に用いられる基板と同様の材料とすることができる。
導電層は、アノード電極12における集電を効果的にするために設けられる。導電層は、特に限定されるものではないが、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられる。特に、熱的および化学的な安定性を考慮すると、フッ素ドープ酸化錫(FTO)を用いることが好適である。
酸化触媒層は、酸化触媒機能を有する材料を含んで構成される。酸化触媒機能を有する材料は、例えば、酸化イリジウム(IrOx)を含む材料等が挙げられる。酸化イリジウムは、ナノコロイド溶液として導電層の表面上に担持することができる(T.Arai et.al, Energy Environ. Sci 8, 1998 (2015)参照)。
例えば、酸化イリジウム(IrOx)のナノコロイドを合成する。次に、2mMの塩化イリジウム酸(IV)カリウム(KIrCl)水溶液50mLに10wt%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を加えてpH13に調整した黄色溶液を、ホットスターラを用いて90℃で20分加熱する。これによって得られた青色溶液を氷水で1時間冷却する。そして、冷やした溶液(20mL)に3M硝酸(HNO)を滴下してpH1に調整し、80分撹拌し、酸化イリジウム(IrOx)のナノコロイド水溶液を得る。さらに、この溶液に1.5wt%NaOH水溶液(1~2mL)を滴下してpH12に調整する。このようにして得られた酸化イリジウム(IrOx)のナノコロイド水溶液を、導電層上にpH12で塗布し、乾燥炉内において60℃で40分間保持して乾燥させる。乾燥後、析出した塩を超純水で洗浄し、アノード電極を形成することができる。なお、酸化イリジウム(IrOx)のナノコロイド水溶液の塗布および乾燥を複数回繰り返してもよい。
電解液に含まれる反応基質は、例えば、炭素化合物が挙げられ、例えば、二酸化炭素(CO)とすることができる。また、電解液は、リン酸緩衝水溶液やホウ酸緩衝水溶液とすることが好適である。具体的な構成例では、例えば、二酸化炭素(CO)飽和リン酸緩衝液のタンクを設け、ポンプによってこの溶液を負極と正極の表面に供給し、還元反応によって生じたギ酸(HCOOH)や酸素(O)等を外部の燃料タンクに回収する。
収容部18は、アノード電極12およびカソード電極14を支持するとともに、電解液が流れる流路16を構成する部材である。収容部18は、電気化学反応装置をセルとして構成するために必要な機械的な強度を備える材料で構成される。例えば、収容部は、金属、プラスチック等によって構成することができる。
アノード電極12とカソード電極14との間にセパレータを備えてもよい。セパレータは、液体と気体を分離し、プロトンを移動可能とする材料のものであればよく、特に制限はないが、例えば、固体高分子電解膜であるナフィオン(登録商標)等を使用することができる。
アノード電極12とカソード電極14との間に上記2接合薄膜太陽電池を接続することによって適切なバイアス電圧を印加した状態とすればよい。バイアス電圧を印加する手段として太陽電池を用いることにより、電気化学反応装置と、電気化学反応装置のアノード電極12およびカソード電極14に供給される電力を生成する太陽電池と、を備える人工光合成セルとすることができる。2接合薄膜太陽電池10は、例えば、電気化学反応装置のアノード電極12およびカソード電極14に隣接して配置することができる。例えば、図5に示すように、電気化学反応装置のカソード電極14の背面に2接合薄膜太陽電池10を配置し、2接合薄膜太陽電池10の正極をアノード電極12に接続し、2接合薄膜太陽電池10の負極をカソード電極14に接続すればよい。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
アノード電極/カソード電極の電流-電圧特性の実験結果と、2接合薄膜太陽電池(実施例)および3接合アモルファスシリコン系太陽電池(比較例)の電流-電圧特性モデルを用いて、これらを組み合わせて水上または水中にて使用したときの動作電流を計算し、太陽電池材料のバンドギャップの最適値を求めた。この際、AM1.5G太陽光スペクトルを用い、水中使用の場合については水による光吸収を考慮した。
対向型セルでは、アモルファスシリコン系3接合素子の電流密度(電圧2.0Vにおいて動作電流6.5mA/cm、以下同様)に比べて、2接合薄膜太陽電池(バンドギャップ1.42/1.96eV,動作電流13.6mA/cm)を用いると、より大きい動作電流が得られた。
一体型セルでは、アモルファスシリコン系3接合素子の電流密度(水深1,10cm、電圧2.0Vにおいてそれぞれ動作電流6.4,5.9mA/cm、以下同様)に比べて、2接合薄膜太陽電池(水深1cmにてバンドギャップ1.42/1.97eV,動作電流13.5mA/cm;水深10cmにてバンドギャップ1.42/2.01eV,動作電流12.7mA/cm)を用いると、より大きい動作電流が得られた。
計算方法と結果の詳細は、以下の通りである。
有機無機ハイブリッドペロブスカイト、CdS、CuInSe(CIGS系)などを用いた太陽電池では20%前後の高い変換効率が得られている。そこで、これら材料を用いた2接合太陽電池を用いて人工光合成セルを構成することを想定し、太陽電池材料の適切なバンドギャップと、その際に得られる反応電流を求めた。
[計算方法]
上記の通り、人工光合成の動作のためには約2.0~2.4Vの電圧が必要である。図1にその例を示す。図1(a),1(b)はそれぞれIrOxアノード、Ru錯体+カーボンペーパー+カーボンナノチューブカソードを、Pt対極と組み合わせて、0.4Mリン酸バッファー電解液にCOをバブリングした中で測定した電流密度-電位曲線である。これらを、直流電源を介して両者を接続したときの電流密度(J)-電圧(V)曲線に換算した結果が図1(c)である。これを用いて、電圧が2.0~2.4Vの範囲でなるべく大電流が得られるような光電荷分離素子の構成を求める。非特許文献2,3,5のセルの何れの場合も、太陽電池とアノード/カソードの面積は等しいことが前提である。これらが等しくない場合については最後に述べる。
理想的な単接合太陽電池のJ-Vは、以下の式(1)により表される(非特許文献7,8参照)。
Figure 0007215321000001
(1)
ここで、εは素子中の光吸収材料のバンドギャップ、nsun(ε)は太陽光の単位光子エネルギーあたりの光子数、Tは温度である。q,h,c,kはそれぞれ電荷素量、プランク定数、真空中の光速度、ボルツマン定数である。右辺第1項は光吸収によるキャリアの発生を表し、バンドギャップ以上のエネルギーをもつ光子はすべて吸収されキャリア発生につながることが仮定されている。素子に電圧が印加されるとLEDとして動作するので発光が生じ、これは太陽光発電の目的にとっては損失となることを表したものが第2項である。ここには、熱平衡状態にある黒体からの輻射を表すプランクの法則を、半導体、電圧印加の場合に拡張した、一般化されたプランクの法則が用いられている(非特許文献9参照)。素子の電力密度Pは、P=J×Vであり、Vの関数としてのPの最大値と入射光エネルギーとの比が変換効率ηである。式(1)には、発電機構の中から原理的に解消することができない発光(輻射再結合)による損失のみが考慮されているので、この式から得られる変換効率は「radiative limit」と呼ばれる。
実際には、輻射再結合以外の様々な損失があり、さらにバンドギャップよりも高エネルギーの光子であっても一部は発電層に吸収されない(反射および透過)。これらの素子の特性を低下させる現実的な影響を以下のようにして取り入れる。式(1)中のボーズ・アインシュタイン分布関数をボルツマン分布関数により近似し、さらにkT<<εの関係を用いると、式(1)は次の式(2)のように近似される。
Figure 0007215321000002
(2)
現実的な素子の動作を表すために、次の表式(3)を用いる。
Figure 0007215321000003
(3)
式(3)の右辺第1項中のAは、吸収光子数が理想的な場合よりも少ないことを表す。第2項中のBは、非輻射過程を含めた再結合損失の大きさを表す比例係数である。Tは再結合損失の電圧依存性を決める仮想温度であり、通常ダイオードの特性を示すn値に相当する。2接合素子の特性は、ボトムセル、トップセルのバンドギャップをそれぞれεg1,εg2とすると、
Figure 0007215321000004
(4a)
Figure 0007215321000005
(4b)
より求められる。
薄膜太陽電池の特性を表すため、式(3),(4)にA=0.92,B=5,T=500Kを代入して計算した。太陽光スペクトルと強度には標準条件であるAM1.5G,100mW/cmを用いた(非特許文献10参照)。計算結果を、変換効率が世界最高値の素子の特性と合わせて表1にまとめる(非特許文献6参照)。両者がおおよそ一致することを確認したので、このA,B,Tを用いて2接合太陽電池の特性を計算した。表1に、薄膜太陽電池の変換効率の最高値およびそのときの特性(各欄の上段)と(非特許文献6参照)、式(3)(A=0.92,B=5,T=500K)により求められる特性(各欄の下段)の比較を示す。
Figure 0007215321000006
非特許文献2のFig.3(B)、非特許文献3のFig.2(A)のような一体型セルは、上記の通り水中にて用いられるので、水による太陽光の吸収を考慮しなければならない。図2(a)は水の吸収スペクトルである(非特許文献11参照)。波長700nm以下の可視光はほとんど吸収されないが、700nm以上では吸収の影響が顕著になる。水中を透過して一体型セルに達する透過率は水深によって変化する。ここでは小型の素子を極力浅い場所に設置した場合、および1m程度の大型の素子を、多少傾いたり風を受けたりしても水面下となるように設置した場合を想定し、それぞれ水深1cm,10cmに設定し、AM1.5G,100mW/cmスペクトルに図2(b)の透過率(水深1cmおよび水深10cmまでの光透過率)をかけた値を式(3),(4)のnsun(ε)に用いた。
これまでに一体型セル、対向型セルに用いられたアモルファスシリコン系3接合素子の場合は(非特許文献1~5参照)、実際に得られる特性と「radiative limit」の特性との差がさらに大きい。最大出力となる電圧が2Vを超えるアモルファスシリコン/アモルファスシリコン/微結晶シリコン3接合素子の特性が非特許文献12のFig.4,6に示されている。この場合、キャリアの拡散長が結晶に比べて短いことから各接合の厚さが制約される。その結果、長波長側の光吸収率が徐々に低下するので、量子効率も低下する。本来は、各接合の特性を表すようなJ-V特性の式を導出し、それに基づいて水の光吸収の影響を計算するべきである。ただし、アモルファス太陽電池の場合、pin構造により形成される電位差によって生じるキャリアのドリフトの効果が大きいため、そのJ-V特性は式(3)により表すことができない。一方、非特許文献12のFig.4に示される量子効率スペクトルをもつ素子をそのまま水中にて用いれば、入射光の長波長成分が水により吸収される影響によりボトムセルの電流のみが低下するため、電流整合条件が成り立たなくなるので効率が大きく低下するものの、この低下はトップ、ボトムセルの厚さを調整すれば容易に解消される。そこで、水上に設置された場合の電流値Jは非特許文献12のFig.6に示されるJ-V特性から読み取り、水中の場合については、図2(b)の水の光透過率と非特許文献12のFig.4の量子効率スペクトルから吸収光子数を求め、これにJが比例すると仮定して近似値を求めた。
[結果および考察]
以下に変換効率および電流値の計算結果と、バンドギャップの最適値を示す。対向型セルに用いられ、水の光吸収の影響がない場合の素子の設置状態を、水中に設置される一体型セルの場合との対比を表すために、水上、あるいは水深0cmと呼ぶことにする。
<比較例>
(アモルファスシリコン系3接合素子)
アモルファスシリコン系3接合素子を最適化した場合に得られる特性を表2にまとめる。変換効率η(電力密度Pの最大値と入射光強度との比。入射光エネルギーが100mW/cmであるため、η(%)の数値がそのままPの最大値(mW/cm)に一致する。)、および人工光合成用光電荷分離素子の性能の目安である、電圧V=2.0,2.2,2.4Vにおける電流密度Jを示す。表2の空欄は電流密度Jが負になることを示す。
変換効率ηは、η=13.6%である。V=2Vにおける電流密度JはJ=6.5mA/cmであるものの、V=2.2VではJ=2.9mA/cmにまで低下し、さらにV=2.4Vを得ることはできない。
Figure 0007215321000007
<実施例>
(2接合薄膜太陽電池)
次に、2接合素子を用いてV=2.0~2.4Vを得るための条件を考える。先に示したA=0.92,B=5,Tv=500Kを用いた2接合素子の計算結果を図3に示す。図3は、薄膜多結晶2接合素子の特性に与えるトップセル、ボトムセルのバンドギャップ(εg1,εg2)の影響を示す。等高線は変換効率(η)1%あるいは電流密度(J)1mA/cm毎に描かれており、最も内側の等高線のη,Jの値が図中に示されている。図4には、薄膜多結晶2接合素子の特性を示す。(a)~(j)はそれぞれ表3に示されるバンドギャップの素子の結果である。表3には、薄膜多結晶2接合素子の特性を示す。バンドギャップは、表中の*の項目の値が最大となるようそれぞれ最適化された。表3の空欄は電流密度Jが負になることを示す。
図3(a)には水上にある素子の変換効率ηがボトムセル、トップセルのバンドギャップεg1,εg2の関数として示されている。図の対角線に近い等高線の尾根が、ボトムセルとトップセルの電流整合条件、すなわち発生する電流密度が一致する条件、近似的には、両者により吸収される光子数が一致する条件である。右下の領域はεg1>εg2であるため、入射光は全てトップセルにより吸収されボトムセルに達しないので発電しない。ηの最高値はη=28.7%であり、εg1=1.12eV,εg2=1.74Vのときに得られる(表3)。このときのJ-V曲線(図4(a))からわかるように、短絡電流密度は19.7mA/cmである。
非特許文献5のような対向型セルに用いることを想定し、水の光吸収の影響がない場合のV=2.0~2.4Vにおける電流密度Jを計算した結果が図3(b)~(d)である。各VについてJが最大となるようなバンドギャップの組み合わせと、そのときのJおよび電力密度Pを表3にまとめる。それぞれについてのJ-V曲線は図4に示されている。図3(b)~(d)において、開放端電圧が2Vに満たない場合には、J=0として表示されている。εg2が大きい領域でJがεg1に依存しないのは、Jがεg2によって制限されるからである。左下は開放端電圧がV=2.0~2.4Vに満たない領域である。V=2.0Vにおける電流密度Jが最大となるのは、εg1=1.42eV,εg2=1.96V、すなわち先に示したηが最大となるように最適化された場合よりもそれぞれ0.2~0.3eV大きいときであり、その最大値はJ=13.6mA/cmである。これはアモルファスシリコン系3接合素子を用いた場合の6.5mA/cmの2倍以上の値である。このときの太陽電池の変換効率は27.2%であり、図3(a)に示されている変換効率が最大になるように最適化したときの値(28.7%)よりも低いが、人工光合成反応に用いる際にはこちらの方がふさわしいと言える。V=2.2,2.4VについてのJの計算結果がそれぞれ図3(c),3(d)である。Jの最大値はそれぞれJ=11.6,9.9mA/cmであり、アモルファスシリコン系3接合素子の場合ほど大きくは低下しないので、アモルファスシリコン系3接合素子に比べた優位性はより大きい。
非特許文献2のFig.3(B)、非特許文献3のFig.2(A)のような一体型セルに用いられる場合を想定した、水深1cmにある場合の結果が図3(e)~(g)、表3、および図4である。表3に示されるように、水上使用に対して最適化されたボトムセルのバンドギャップは1.42/1.65eV(873~751nm)であるから、そのまま用いても水の光吸収の影響は小さい。そのため、水深1cmの場合のバンドギャップの最適値もその特性もほとんど変わらず、アモルファスシリコン系3接合素子に比べて優れた特性が維持される。
水深10cmにある場合の結果は、図3(h)~(j)、表3、および図4に示されている。この場合は、長波長光の水による吸収の影響が現れるので、水上および水深1cmの場合と比べて電流整合の条件が変化し、バンドギャップの最適値が大きく、Jは小さくなる。ただし、Jの低下量(10cm/0cmの比)はアモルファスシリコン系3接合素子よりも小さいので、優位性はさらに大きいと言える。
Figure 0007215321000008
ここまでは太陽電池とアノード/カソードの面積が等しい場合について検討した。アノード/カソードの活性に応じて両者の面積比を変更したり、また、図7に、相互貫入電極を用いた一体型人工光合成セルを示すが、図7のように太陽電池の片面にアノード/カソードの相互貫入電極を設けて、水中あるいは水面(セルが水面に浮かんでいて、太陽電池は水に浸漬されていないが、アノード、カソードは水に接している。)にあるものとしてもよい。この場合も、アノード-カソードの電位差の要件は面積が等しい場合と同じであるから、3接合アモルファスシリコン系太陽電池に替えて、適切なバンドギャップをもつ2接合薄膜太陽電池を用いることにより、大きい動作電流を得ることができる。
以上の通り、実施例により、人工光合成の変換効率を向上することができる、太陽電池を用いた人工光合成セルが得られることがわかった。
1,3,5 人工光合成セル、10 2接合薄膜太陽電池、12 正極(アノード電極)、14 負極(カソード電極)、16 流路、18 収容部、20 容器。

Claims (7)

  1. バンドギャップが1.1~2.0eV/1.8~2.4eVの2接合薄膜太陽電池と、酸化反応用電極である正極と、還元反応用電極である負極と、を備え
    動作電圧が2.0~2.4Vであることを特徴とする人工光合成セル。
  2. 請求項1に記載の人工光合成セルであって、
    前記2接合薄膜太陽電池は、
    ボトムセルが、(FA1-xMA1-x’Csx+x’)(Pb1-ySn)I、0≦x+x’≦1、0≦y≦1の組成を有し、
    トップセルが、(FA1-xMA1-x’Csx+x’)(I1-zBr、0≦x+x’≦1、0.4≦z≦1の組成を有する有機無機ハイブリッドペロブスカイトを含んで構成される光電変換層を有することを特徴とする人工光合成セル。
  3. 請求項1に記載の人工光合成セルであって、
    前記2接合薄膜太陽電池は、
    ボトムセルが、Cu(In1-xGa)Se、0≦x≦1の組成を有し、
    トップセルが、Cu(In1-x’Alx’)Se、0.9≦x’≦1の組成を有するCIGS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することを特徴とする人工光合成セル。
  4. 請求項1に記載の人工光合成セルであって、
    前記2接合薄膜太陽電池は、
    ボトムセルが、CuZnSn(S1-xSe、0≦x≦1の組成を有し、
    トップセルが、CuZn(Sn1-x’Gex’)S、0.6≦x’≦1の組成を有するCGTS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することを特徴とする人工光合成セル。
  5. 請求項1に記載の人工光合成セルであって、
    前記2接合薄膜太陽電池は、
    ボトムセルが、CuZn(Sn1-xGe)S、0≦x≦0.8の組成を有し、
    トップセルが、CuZn(Sn1-x’Gex’)S、0.6≦x’≦1、ただしx’<xの組成を有するCGTS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することを特徴とする人工光合成セル。
  6. 請求項1に記載の人工光合成セルであって、
    前記2接合薄膜太陽電池は、
    ボトムセルが、CuZn(Sn1-xGe)Se、0.3≦x≦1.0の組成を有し、
    トップセルが、CuZn(Sn1-x’Gex’)S、0.6≦x’≦1の組成を有するCGTS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することを特徴とする人工光合成セル。
  7. 請求項1に記載の人工光合成セルであって、
    前記2接合薄膜太陽電池は、
    ボトムセルが、Cu(Sn1-xGe)S、0.3≦x≦1.0の組成を有し、
    トップセルが、CuZn(Sn1-x’Gex’)S、0.6≦x’≦1の組成を有するCGTS系化合物を含んで構成される光電変換層を有することを特徴とする人工光合成セル。
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