以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
<粘着クリーナーの構造>
図1は、一実施形態に係る粘着クリーナーにおける粘着テープロールを示す斜視図であり、図3は該粘着テープロールを構成する粘着テープの断面図である。粘着テープロール10は、テープ状(長尺帯状)の基材22の一方の面(第一面)22Aに粘着剤層30が形成された粘着テープ20を、その粘着剤層30が外側(ロールの外周側)を向くようにして、巻芯14の周囲にロール状に巻回してなる。図1には、説明の便宜のため、粘着テープ20の巻回外周端201から粘着テープロール10のほぼ一周分の長さを粘着テープロール10から引き出した状態を示している。ここで、基材22としては樹脂フィルムが用いられる。巻芯14としては、紙粉の発生防止の観点から、合成樹脂製や金属製等の、紙製以外の巻芯を好ましく採用し得る。また、巻芯14を使わずに粘着テープ20のみをロール状に巻回してなる、いわゆるコアレスタイプの粘着テープロールであってもよい。すなわち、本発明において、巻芯14はあくまでも任意的な構成要素である。
粘着テープロール10は、平滑な清掃対象面上を転動させる場合に、粘着テープロール10の外周において粘着剤層30の表面(粘着面)が清掃対象面に均一に接触するように構成されている。ここで、平滑な清掃対象面とは、例えばクッションフロアや有機系塗り床、ガラス板、樹脂板や樹脂フィルム、天然または合成皮革等の表面等のように平滑で緻密な(繊維質や多孔質ではない)表面をいい、絨毯、畳、コンクリート等の表面と対比される概念である。また、粘着面が平滑な清掃対象面に均一に接触するように構成されているとは、上記清掃対象面と粘着剤層の均一な接触を妨げるような意図的な段差(例えば、粘着剤層上に筋状に形成された剥離層、粘着剤層より突出するように形成されたスペーサ層等)が設けられていないことをいう。このように構成された粘着テープロール10によると、平滑な清掃対象面(例えば、クリーンルームの床面のような平坦面)を精度よくかつ効率よく清掃しやすい。
粘着テープ20は、粘着テープロール10の表面の性能(例えば、除去対象物の捕捉性能)が低下したら、粘着テープ20のうち粘着テープロール10の最外周の部分を巻回体から引き出して(巻き戻して)切り取ることにより、粘着テープロール10の表面に新しい粘着剤を露出させることができる。すなわち、上記引出しおよび切取りによって粘着テープロールの表面に露出させる粘着剤を更新することで性能を維持し得るように構成されている。かかる切取りの便宜のために、粘着テープ20には、粘着テープロール10のほぼ一周長毎に、切断用の切れ目24が設けられている。この切れ目24は、粘着テープ20の長手方向の一端を残部から切断しやすくするために用いられる切断手段であって、例えば、長孔や波形のスリットを並べたもの、ミシン目等の間欠スリット、等であり得る。
なお、図1に示す例では、切れ目24が粘着テープ20の幅方向(長手方向と直交する方向)に沿って設けられているが、幅方向に対して斜めに設けられていてもよい。切れ目の延びる方向は、一定であってもよく、途中で変わってもよい。例えば、粘着テープの幅の途中に、切れ目の延びる方向が直線的または曲線的に屈曲する箇所が一または二以上設けられていてもよい。また、図1に示す例では、粘着テープ20の幅全体を横断して切れ目24が設けられているが、粘着テープ20の幅の一方から途中まで延びて切断のきっかけを与えるように設けられた切れ目24であってもよい。
このように構成された粘着テープロール10は、例えば、図2に示すような治具50とともに、該治具50の回転部材52に取り付けられた形態の粘着クリーナー1として用いることができる。回転部材52は棒状であって、棒状の把持部材54の一端に回転自在に支持されている。粘着クリーナー1は、例えば、粘着テープロール10の巻回中心に設けられた空洞部(巻芯を有する態様では、該巻芯の空洞部であり得る。)に回転部材52を挿入することにより、粘着テープロール10が回転部材52と連動してロール周方向に回転するように構成されている。図2に示す粘着クリーナー1は、把持部材54の他端を掴んで粘着テープロール10の外周面を清掃対象物56の表面に押し付けつつ、該清掃対象物56の表面に沿って粘着テープロール10を転動させて使用される。上記空洞部に挿入される回転部材52は、粘着テープロール10の剛性の向上にも役立ち得る。
なお、粘着クリーナーを構成する治具の形態は、図2に示すものに限定されず、目的および用途に応じて種々の形態の治具を適用することができる。例えば、図2に示す形態では把持部材54が粘着テープロール10の径方向に延びているが、把持部材は、粘着テープロールの巻回軸に沿って延びていてもよく、上記巻回軸とのなす角が凡そ60度以下、または45度以下、または30度以下となる方向に延びていてもよい。また、この明細書により提供される粘着クリーナーは、図3に示すように治具と粘着テープロールとを含む形態に限定されず、粘着テープロールをそのまま粘着クリーナーとして用いるものであってもよい。すなわち、ここに開示される粘着テープロールは、粘着クリーナーとしても把握され得る。また、この明細書により提供される粘着クリーナーの概念には、必要に応じて適当な治具に交換可能または使い切りの形態で取り付けて粘着クリーナーを構成する粘着テープロール(詰め替え用粘着クリーナー)が含まれる。
<粘着クリーナーの特性>
(粘着力)
ここに開示される粘着クリーナーにおいて粘着テープロールを構成する粘着テープは、ABSに対する粘着力FAが3N/25mm以下である。このように粘着力FAが制限されていることにより、清掃対象面が平滑面(例えば、クリーンルームの床面)であっても、該清掃対象面に粘着面を均一に接触させつつ粘着テープロールをスムーズに転動させることができる。上記粘着力FAが強すぎると、粘着テープロールが清掃対象面に固着して転がせなくなる、巻戻し方向に転がす際に粘着テープが清掃対象面に貼り付いてレール引き現象を生じる、等の不都合が発生しやすくなる。
上記粘着力FAは、ABS板を被着体に用いて、JIS Z 0237に規定する180度剥離試験により測定される。粘着力FAは、具体的には次の手順で測定される。すなわち、粘着テープを幅25mm、長さ100~200mm程度の帯状にカットした試験片を用意する。上記試験片の粘着剤層側表面を、被着体としてのABS板に、2kgのローラーを一往復させて貼り付ける。これを23℃、50%RHの環境下に30分間保持した後、引張試験機を用い、JIS Z 0237に準拠して、23℃、RH50%の環境下、引張速度300mm/分の条件にて、180度剥離強度(N/25mm)を測定する。測定は2回以上(好ましくは3回以上)行い、それらの算術平均値を粘着力の値とする。引張試験機は特に限定されず、公知の引張試験機を用いることができる。例えば、島津製作所社製の「テンシロン」を用いて測定することができる。ABS板としては、新神戸電機社製のアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂板を用いるとよい。後述の実施例についても同様の方法が採用される。
いくつかの態様において、粘着力FAは、例えば2.5N/25mm以下であってよく、2N/25mm以下でもよく、1.5N/25mm以下でもよく、1N/25mm以下でもよく、0.5N/25mm以下でもよく、0.2N/25mm以下でもよく、0.1N/25mm以下または0.08N/25mm以下でもよい。粘着力FAの下限は特に制限されず、粘着剤層の表面が除去対象物を捕捉可能な程度のタックを有していればよい。通常は、粘着力FAが0.005N/25mm以上、0.01N/25mm以上または0.03N/25mm以上であることが、作業者に適度な手応えを与える観点から好ましい。粘着力FAは、粘着剤層の少なくとも表面部を構成する粘着剤の選択、粘着剤層の厚さ、粘着剤層の構造(例えば、後述するような二層構造等)等により調節することができる。
上記粘着テープのステンレス鋼板に対する粘着力FSは、特に限定されない。粘着力FSは、例えば2N/25mm以下であってよく、1N/25mm以下でもよく、0.5N/25mm以下でもよく、0.1N/25mm以下でもよく、0.05N/25mm以下または0.01N/25mm以下でもよく、0.01N/25mm未満でもよく、0.008N/25mm未満でもよい。粘着力FSの下限は特に制限されず、例えば0.001N/25mm以上であり得る。粘着力FSは、被着体としてステンレス鋼板(SUS304BA板)を使用する他は、ABS板に対する粘着力FAと同様にして測定される。後述の実施例についても同様の方法が採用される。
(投錨力FB)
ここに開示される粘着クリーナーを構成する粘着テープは、粘着剤層の基材に対する投錨力FBが12N/25mm以上であることが好ましい。樹脂フィルムを基材とする粘着テープでは、紙基材の場合とは異なり、粘着剤の基材への浸み込みを利用して投錨性を向上させることはできない。このため、粘着剤層の被着体(例えばABS板)に対する粘着力を抑制すると、該粘着剤層の基材(樹脂フィルム)への投錨性が不足しやすくなる。投錨性が不足すると、粘着剤層の縒れや剥がれによって、粘着剤層の段差や部分的に粘着剤が存在しない箇所が発生し得る。投錨力FBが12N/25mm以上であると、粘着剤層の縒れや剥がれに起因する清掃ムラを好適に抑制することができる。
上記投錨力FBは、上記粘着剤層の表面(粘着面)に別の粘着テープ(以下、測定用テープともいう。)の粘着面を圧着した後に引き剥がして、評価対象の粘着テープの投錨破壊(粘着剤層と基材との間での剥離)を意図的に誘発することにより測定される。より具体的には、以下の手順で投錨力FBは測定される。すなわち、幅25mmの帯状の測定用テープを用意する。評価対象の粘着テープの背面(粘着剤層とは反対側の表面)を適切な手段で適当な平板に固定し、23℃、50%RHの環境下において、上記粘着テープの粘着面に上記測定用テープの粘着面を、2kgのローラーを1往復させて圧着する。これを上記環境下に30分間保持した後、上記粘着力FAの測定と同様に引張速度300mm/分の条件にて測定用テープの180度剥離強度(N/25mm)を測定し、そのときの剥離形態を目視で観察する。その結果、評価対象の粘着テープの粘着剤層が測定用テープとともに基材から剥離(投錨破壊)した場合には、上記方法で観測された180度剥離強度を、評価対象の粘着剤層の基材に対する投錨力とする。評価対象の粘着シートの粘着剤層と基材との間以外の箇所で剥離(例えば、測定用テープの粘着剤層と評価対象の粘着テープの粘着剤層との界面での剥離(界面剥離)、評価対象の粘着テープの粘着剤層の内部での剥離(凝集破壊)等)または評価対象の粘着シートの基材の破壊(該基材の千切れ、厚み内部での破壊等)が生じた場合には、評価対象の粘着剤層の基材に対する投錨力は、少なくとも上記方法で観測された180度剥離強度よりは高いと評価することができる。
後述の実施例についても同様の方法が採用される。
いくつかの態様において、投錨力FBは、例えば15N/25mm以上であってよく、20N/25mm以上でもよく、25N/25mm以上でもよい。投錨力FBは、基本的には高いほどよく、上限は特に制限されないが、粘着力FAの抑制との両立を容易とする観点から、例えば70N/25mm以下であってよく、50N/25mm以下でもよい。
(巻戻し力)
ここに開示される粘着テープロールは、巻戻し力FW[N/25mm]が粘着力FA[N/25mm]の15%以上となるように構成されていることが好ましい。すなわち、FW/FAが15%以上であることが好ましい。このように構成することにより、平滑な清掃対象面への適用においてもレール引きの発生を効果的に防止することができる。レール引きの発生をよりよく抑制する観点から、FW/FAは、例えば30%以上であってよく、50%以上でもよく、100%以上でもよく、150%以上でもよい。FW/FAの上限は特に制限されず、例えば1000%以下であってよく、500%以下でもよい。
ここで、粘着テープロールの巻戻し力FWは、以下のようにして測定される。すなわち、23℃、50%RHの環境下において、測定対象の粘着テープロールを引張試験機にセットし、粘着テープの巻回外周端を引張試験機のチャックに装着して1000mm/分の速度(巻戻し速度)で引っ張ることにより、上記粘着テープロールを接線方向に巻き戻す。このとき観測される引張強度を粘着面の幅25mmあたりの値に換算することにより、巻戻し力FW[N/25mm]を求めることができる。この巻戻し力FWと上述した方法で測定される粘着力FAとからFW/FAを算出することができる。後述の実施例についても同様の方法が採用される。
ここに開示される粘着クリーナーは、粘着面の更新等のために粘着テープロールから粘着テープを意図的に引き出す際の作業性や、粘着剤層の基材背面への転移(転着)防止の観点から、巻戻し力FWが凡そ1N/25mmであることが好ましい。いくつかの態様において、巻戻し力FWは、例えば0.8N/25mm以下であってよく、0.6N/25mm以下でもよく、0.4N/25mm以下でもよく、0.3N/25mm以下でもよく、0.2N/25mm以下でもよい。また、粘着テープの巻きほどけを抑制する観点から、巻戻し力FWは、通常、0.01N/25mm以上であることが適当であり、0.05N/25mm以上または0.1N/25mm以上であってもよい。
<基材>
粘着テープの基材としては、各種の樹脂シートを用いることができる。ここでいう樹脂シートの概念には、非多孔質の樹脂フィルム(例えば、見掛けの体積に占める気泡の割合が3体積%以下、典型的には1体積%以下である樹脂フィルム)の他、発泡体シートが含まれる。上記樹脂フィルムの材料としては、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)(例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー)、アクリル樹脂等が例示される。アクリル樹脂としては、アクリロイル基を有するモノマーを多く(典型的には、重量基準で、メタクリロイル基を有するモノマーよりも多く)用いて合成されたもの、メタクリロイル基を有するモノマーを多く(典型的には、重量基準でアクリロイル基を有するモノマーよりも多く)用いて合成されたもののいずれも使用可能である。なお、ここでいうアクリル樹脂の概念には、一般にアクリルゴムと称されるものが包含され得る。上記発泡体シートの例としては、発泡ポリオレフィンシート(PE製発泡体シート、PP製発泡体シート等)、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリクロロプレンゴムシート等の樹脂発泡体シートが挙げられる。
基材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されていてもよい。複層構造の基材において、添加剤の配合の有無および配合量は、該基材を構成する各層の間で同一であってよく、異なっていてもよい。添加剤の配合割合は、通常は、当該添加剤が含まれる層の30重量%以下(例えば20重量%以下、典型的には10重量%以下)程度とすることが適当である。また、例えば基材に顔料(例えば白色顔料)を含ませる場合、その含有割合は、基材の強度や取扱い性と顔料の添加効果とのバランスを考慮して、通常、基材全体の0.1~10重量%(例えば1~8重量%、典型的には1~5重量%)程度とすることが適当である。
基材は、単層構造であってもよく、二以上の層が積層した複層構造であってもよい。例えば、単層または複層の樹脂フィルム、単層または複層の樹脂発泡体シート、樹脂発泡体シートと樹脂フィルムとが積層した構造の複合樹脂シート、等を好ましく用いることができる。単層構造の樹脂フィルムの好適例として、PETフィルム等のポリエステルフィルムや、PEフィルムやPPフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。複層構造の樹脂フィルムの好適例として、組成の異なる複数のポリオレフィン層が積層した樹脂フィルムや、PET層とポリオレフィン層とが積層した樹脂フィルム等が挙げられる。
基材の第一面は、粘着テープロールの外側を向く面であり、粘着剤層が設けられる面である。基材の第一面には、コロナ放電処理や下塗り剤の塗布等の表面処理が施されていてもよい。あるいは、基材の第一面に特段の表面処理が施されていなくてもよい。このことは生産性向上や環境負荷軽減の観点から有利となり得る。
基材の第二面は、粘着テープロールの内側を向く面であり、ロールの最外周より内側の粘着剤層が剥離可能に当接する面である。基材の第二面には、剥離処理剤の塗布等の、粘着テープロールの巻戻し力を調節するための表面処理が施されていてもよい。剥離処理剤としては、特に限定されず、例えば、シリコーン系剥離処理剤やフッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、その他の公知または慣用の剥離処理剤を、目的や用途に応じて用いることができる。
ここに開示される技術は、基材の第二面に上記のような剥離処理剤による処理が施されていない態様で好ましく実施することができる。例えば、第二面が低極性の樹脂材料(例えば、シリコーン樹脂がブレンドされたポリオレフィン樹脂、低密度ポリエチレンを含むポリオレフィン樹脂等)により構成された基材を使用することにより、上記剥離処理剤を必要とすることなく、適切な巻戻し力を示す粘着テープロールを好適に実現することができる。
基材の厚さは、目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。基材の厚さは、例えば10μm以上であってよく、25μm以上でもよく、35μm以上でもよく、40μm以上でもよく、50μm以上でもよい。基材の厚さが大きくなると、該基材の強度は向上する傾向にある。このことは、粘着テープをロールから引き出す際の千切れや裂けを防止する観点から有利となり得る。また、いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば200μm以下であってよく、150μm以下でもよく、100μm以下でもよく、80μm以下でもよい。基材の厚さが小さくなると、粘着テープロールの不使用時(保管中)において、粘着テープの巻きほどけ(すなわち、粘着テープの巻回外周端がその内周のロール表面から浮いて開いてくる事象)を抑制しやすくなる。
基材の幅(すなわち粘着テープの幅)は、目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。粘着クリーナーの使い勝手や処理効率の観点から、基材の幅は、通常、凡そ50mm以上とすることが適当であり、凡そ75mm以上が好ましい。いくつかの態様において、基材の幅は、例えば凡そ12cm以上であってよく、凡そ14cm以上であってもよい。また、基材の幅は、例えば凡そ100cm以下であってよく、凡そ70cm以下でもよく、凡そ50cm以下でもよく、凡そ40cm以下でもよく、凡そ35cm以下でもよく、凡そ30cm以下でもよく、凡そ25cm以下または凡そ20cm以下でもよい。
いくつかの態様において、上記基材としては、強度および柔軟性の観点から、ポリオレフィン層を含む単層または複層の樹脂シートを好ましく採用し得る。上記ポリオレフィン層は、α-オレフィンを主モノマー(モノマー成分のなかの主成分)とする重合体を主成分とする樹脂層である。上記ポリオレフィンの割合は、通常、ポリオレフィン層の50重量%以上であり、例えば80重量%以上、典型的には90~100重量%である。ポリオレフィンの具体例としては、エチレンを主モノマーとするもの(PE)、プロピレンを主モノマーとするもの(PP)等が挙げられる。上記PEは、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンと他のオレフィン(例えば、炭素原子数が3~10のα-オレフィンから選択される1種または2種以上)との共重合体であってもよく、エチレンとオレフィン以外のモノマー(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のエチレン性不飽和モノマーから選択される1種または2種以上)との共重合体であってもよい。また、上記PPは、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと他のオレフィン(例えば、炭素原子数が2または4~10のα-オレフィンから選択される1種または2種以上)との共重合体であってもよく、プロピレンとオレフィン以外のモノマーとの共重合体であってもよい。上記ポリオレフィン層は、このようなポリオレフィンの1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
上記ポリオレフィン層は、強度向上の観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)を含み得る。この明細書においてHDPEとは、典型的には、密度が0.940g/cm3以上のポリエチレンを指す。ポリオレフィン層におけるHDPEの含有割合は、強度(例えば引張強度)向上の観点から、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上(例えば30重量%以上、典型的には35重量%以上)であることがより好ましい。いくつかの態様において、ポリオレフィン層におけるHDPEの含有割合は、50重量%超であってよく、65重量%以上でもよく、80重量%以上でもよい。また、ポリオレフィン層におけるHDPEの含有割合は、100重量%であってもよく、段差への追従性や加工性等を考慮して100重量%未満であってもよい。いくつかの態様において、ポリオレフィン層におけるHDPEの含有割合は、例えば99重量%以下であってよく、97重量%以下でもよく、95重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、70重量%以下でもよく、60重量%以下でもよい。
上記ポリオレフィン層は、柔軟性向上の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)を含み得る。この明細書においてLDPEとは、典型的には、密度が0.940g/cm3未満のポリエチレンを指す。ここに開示されるLDPEは、例えば、エチレンモノマーを高圧法により重合して得られるLDPE、エチレンと炭素原子数が3~8のα-オレフィンモノマーとを低圧法により重合して得られるLDPE、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であって上記密度を有するもの、等であり得る。ここに開示される技術におけるLDPEの概念には、超低密度ポリエチレン(VLDPE)と称されるものや、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と称されるものが包含され得る。LDPEは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示される粘着クリーナーにおける粘着テープは、HDPEを含むポリオレフィン層(典型的にはPE層)を用いて構成された単層構造または二層以上の複層構造のポリオレフィンフィルムを基材として備える態様で好ましく実施され得る。上記ポリオレフィンフィルムにおけるHDPEの含有割合は、強度(例えば引張強度)向上の観点から、10重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上(例えば50重量%以上)としてもよく、70重量%以上(例えば85重量%以上)としてもよい。実質的にHDPEからなるポリオレフィンフィルム(例えば、HDPEの含有割合が99~100重量%であるポリオレフィンフィルム)を用いてもよい。あるいは、基材の柔軟性を考慮して、HDPEを95重量%以下(例えば90重量%以下、さらには75重量%以下)で含むポリオレフィンフィルムを用いてもよい。
ここに開示される粘着クリーナーにおける粘着テープは、HDPEとLDPEとを含むポリオレフィン層(典型的にはポリエチレンフィルム)を用いて構成された単層構造または二層以上の複層構造のポリオレフィンフィルムを基材として備える構成で好ましく実施され得る。このようなポリオレフィンフィルムを基材またはその構成要素として採用することにより、強度と柔軟性とを高度に両立することができる。上記ポリオレフィンフィルムにおけるHDPEとLDPEとの合計量は特に限定されないが、50重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には90~100重量%)であることが好ましい。ここに開示される技術はまた、上記ポリオレフィンフィルムがHDPEおよびLDPE以外の材料を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。HDPEとLDPEとを併用するポリオレフィンフィルムにおいて、HDPEとLDPEとの重量比は特に限定されないが、通常は10:90~90:10程度であり、好ましくは20:80~80:20(例えば30:70~70:30、典型的には35:65~65:35)である。
上記ポリオレフィン層は、ポリオレフィンに加えて、副成分としてポリオレフィン以外のポリマーを含んでいてもよい。ポリオレフィン以外のポリマーとしては、例えば、基材を構成し得る樹脂フィルムとして例示した各種ポリマー材料のうちポリオレフィン以外のものが挙げられる。ポリオレフィン以外のポリマーの他の例として、シリコーン樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂としては、成形性の観点から、熱可塑性のものが好ましい。例えば、シロキサンにシリカ等のキャリアを配合することでペレット状の形態に調製されたシリコーン樹脂を好ましく用いることができる。そのようなシリコーン樹脂の市販品として、例えば旭化成ワッカーシリコーン社製の商品名「GENIOPLAST PELLET S」が挙げられるが、これに限定されない。
ポリオレフィン層がポリオレフィン以外のポリマーを含有する場合におけるその含有量は、ポリオレフィン100重量部に対して100重量部未満とすることが適当であり、50重量部以下が好ましい。いくつかの態様において、ポリオレフィン100重量部に対するポリオレフィン以外のポリマーの含有量は、例えば30重量部以下であってもよく、10重量部以下でもよく、5重量部以下でもよく、1重量部以下でもよい。ここに開示される粘着クリーナーは、例えば、ポリオレフィンフィルムを基材とする粘着テープを備え、該ポリオレフィンフィルムの70~100重量%または80~95重量%がポリオレフィンである態様で好ましく実施され得る。
上記ポリオレフィンフィルムは、単層構造であってもよく、二以上の層が積層した複層構造であってもよい。例えば、HDPEを主ポリマー成分(重量基準でポリマー成分の50%超を占める成分)とするポリオレフィン層Hと、LLDPEおよびVLDPEの少なくとも一方を主ポリマー成分とするポリオレフィン層Lとが積層した複層(例えば二層)構造のポリオレフィンフィルムであってもよい。ポリオレフィン層LにおけるLLDPEとVLDPEとの合計含有量は、典型的には60重量%以上であり、好ましくは75重量%以上であり、90重量%以上であってもよい。通常は、強度や手切れ性の観点から、ポリオレフィン層Hの厚さをポリオレフィン層Lの厚さよりも大きくすることが好ましい。ポリオレフィン層Lの一好適例として、VLDPEを主ポリマー成分(典型的には、ポリマー成分の50重量%超、好ましくは75重量%以上、例えば90重量%以上を占める成分)とするVLDPE層が挙げられる。
上記ポリオレフィンフィルムの他の好適例として、ポリオレフィンを主ポリマー成分とし、副成分としてシリコーン樹脂(例えば、熱可塑性シリコーン樹脂)を含むポリオレフィン層L;および、HDPEを主ポリマー成分とし、シリコーン樹脂を実質的に含まないかポリオレフィン層Lに比べてシリコーン樹脂の含有率が低いポリオレフィン層H;が積層した複層(例えば二層)構造のポリオレフィンフィルムが挙げられる。通常は、強度や手切れ性の観点から、ポリオレフィン層Hの厚さをポリオレフィン層Lの厚さよりも大きくすることが好ましい。ここで、ポリオレフィン層Hがシリコーン樹脂を実質的に含まないとは、ポリオレフィン層Hにおけるシリコーン樹脂の含有量が3重量%未満(典型的には1重量%未満)であることをいい、シリコーン樹脂を含まない態様を含む概念である。ポリオレフィン層Lの主ポリマー成分であるポリオレフィンとしては、ポリエチレンが好ましく、なかでもHDPEが好ましい。ポリオレフィン層Lにおけるシリコーン樹脂の含有量は、例えば3重量%以上とすることができ、好適な巻戻し力をより実現しやすくする観点から、5重量%超とすることが有利であり、10重量%以上でもよく、15重量%以上でもよく、20重量%以上でもよい。また、粘着テープの巻きほどけを抑制しやすくする観点から、上記シリコーン樹脂の含有量は、通常、45重量%以下とすることが適当であり、40重量%以下とすることが好ましく、35重量%以下としてもよい。
上述したいずれかのポリオレフィン層Lは、基材の第二面を構成する層(背面層)であり得る。ここに開示される基材は、例えば図3に示すように、ポリオレフィン層Hからなる支持層122とポリオレフィン層Lからなる背面層124とが積層した構造の基材22であり得る。このように第二面がポリオレフィン層Lにより構成された基材には、該第二面の剥離処理を省略するかまたは剥離処理の程度を弱くしても適切な巻戻し力が得られやすいという利点がある。かかる利点を得るために好適なポリオレフィン層Lの一例として、VLDPE層が例示される。好適なポリオレフィン層Lの他の例として、HDPEを主ポリマー成分とし、適量の(例えば15~35重量%の)シリコーン樹脂を含むポリオレフィン層が挙げられる。このようにHDPEとシリコーン樹脂とを含むポリオレフィン層Lを背面層として有する基材は、巻戻し力の経時安定性等の点で有利なものとなり得る。
このように支持層と背面層とを含む複層構造(例えば二層構造)の基材において、背面層の厚さは、例えば1μm以上であってよく、背面層の成形性や耐久性の観点から、通常は2μm以上が好ましく、3μm以上でもよく、5μm以上でもよく、7μm以上でもよい。また、背面層の厚さは、例えば200μm程度であってもよく、基材の厚さが過度に大きくなることを避ける観点から、100μm以下が適当であり、50μm以下でもよく、20μm以下でもよく、15μm以下でもよく、12μm以下でもよい。なお、基材の第二面がポリオレフィン層Lにより構成される態様において、必要に応じて該ポリオレフィン層Lに適宜の表面処理(例えば剥離処理)を施すことは妨げられず、かかる態様もここに開示される技術に包含される。
ここに開示される技術において、基材またはその構成材料として用いられる樹脂フィルムは、バイオマス材料を用いて構成されていてもよい。ここでバイオマス材料とは、再生可能な有機資源由来の材料をいう。典型的には、太陽光と水と二酸化炭素とが存在すれば持続的な再生産が可能な生物資源(典型的には光合成を行う植物)に由来する材料のことをいう。したがって、採掘後の使用によって枯渇する化石資源に由来する材料(化石資源系材料)は除かれる。バイオマス材料は、例えば、上記再生可能な有機資源そのものであってもよく、上記有機資源(典型的には生物構成物質)を化学的にまたは生物学的に合成することにより得られる材料であってもよい。例えば、上記バイオマス材料は、サトウキビやトウモロコシ等の植物から得られる材料であり得る。具体的には、上記バイオマス材料は、サトウキビから生成するエタノールや、トウモロコシから生成する糖類から得られる材料であり得る。例えば、上述したHDPEとして、バイオマス材料であるHDPE(バイオマスHDPE)を利用することができる。同様に、例えば上述したLDPE、LLDPE、PP等についても、それぞれバイオマス材料であるもの(例えば、バイオマスLDPE)を利用することができる。
ここに開示される技術において用いられる基材は、少なくとも一方の表面が凹凸を有していてもよい。このような凹凸表面を有する基材(例えば、ポリオレフィンフィルム等の樹脂フィルムを含んで構成された基材)を用いることにより、粘着テープまたは該粘着テープを巻回してなる粘着テープロールにクッション性を付与することができる。粘着テープロールにクッション性を付与することにより、該粘着テープロールの外周に露出した粘着剤層面を清掃対象面に密着させやすくなり、清掃の精度が向上する傾向にある。
上記凹凸表面を有する基材は、少なくとも一方の表面に複数の凹部を有する基材であり得る。例えば、上記複数の凹部を基材の第二面(背面、すなわち粘着面に対向する面)に有する基材であり得る。上記複数の凹部は、基材の少なくとも一方の表面(例えば第二面)に、連続的または断続的な直線状に配列され得る。一態様において、上記複数の凹部の配列方向は、粘着テープの長手方向と交差する方向とすることができる。かかる構成の基材を備える粘着テープは、基材の凹部に沿って切断しやすく、素手による切断が容易である。上記凹部は、手切れ性の観点から、基材の長手方向に沿う一端から他端まで連なって配置されていることが好ましい。粘着テープの長手方向と凹部の配列方向とのなす角度は、例えば90±60度(すなわち、30度以上150度以下)とすることができ、好ましくは90±45度、より好ましくは90±30度、さらに好ましくは90±15度であり、90±5度としてもよい。好ましい一態様において、上記複数の凹部の配列方向は、粘着テープの長手方向と直交する方向(すなわち、上記角度が90度となる方向)であり得る。かかる態様の粘着テープは、幅方向への手切れ性に優れる。
図4を参照して、表面に凹凸を有する基材の好適例について説明する。図示するように、基材22の第二面(背面)22Bには複数の凹部126が形成されている。これら複数の凹部126は、上記表面において、直線状に連なって配置されている。図4の水平方向(X方向)は基材22の幅方向に対応しており、凹部126は基材22の幅方向(すなわち、長手方向と直交する方向)に沿って配列している。基材22の長手方向に対する複数の凹部126の配置としては、該長手方向に沿って配列する配置を好ましく採用し得る。すなわち、複数の凹部126は、基材の幅方向に沿う配列と、長手方向に沿う配列とによって、全体として格子状に配置されていてもよい。
上記基材の凹部における凹部底面の形状は、図4に示すような断面U字状であってもよく、断面V字状や断面矩形状であってもよく、これらの複合的または中間的な形状であってもよい。また、凹部の内面形状は、例えば、底面に向かって窄まる円錐状、四角錐台状、三角錐状、三角錐台状、円錐状、円錐台状等の錐形または錐形台状であってもよく、円柱状や多角柱状(例えば四角柱状、三角柱状)等の多角柱状であってもよく、球面状であってもよく、平坦な底面と球面状の側壁とを有する皿状であってもよく、これらの複合的または中間的な形状であってもよい。一態様において、凹部の内面形状を、少なくとも一部に曲面を含む形状とすることができる。かかる形状の凹部を有する基材は、粘着テープの手切れ性や長手方向における強度確保の点で有利となり得る。ここに開示される技術の一態様において、四角錐の角部および頂点が曲面化された内面形状を有する複数の凹部126を基材の第二面に有し、それらの凹部126が基材の幅方向および長手方向に沿って格子状に配置された構成を好ましく採用し得る。
上記凹部の深さD(最大深さ;図4において符号Dで示す長さ)は、手切れ性と強度とのバランスを考慮して、基材の厚さTSに対するDの比(D/TS)が0.2~0.8(例えば0.2~0.5)の範囲となるように設定することが好ましい。具体的には、上記凹部の深さDは、通常は10μm~160μm(例えば20μm~100μm)程度とすることが好ましい。また、凹部の幅(図4において符号W3で示す長さ)は、手切れ性と強度とのバランスを考慮して、50μm~500μm(例えば70μm~400μm、典型的には100μm~300μm)程度であることが好ましい。さらに、上記複数の凹部の間隔(図6において符号Lで示す長さ。隣りあう凹部の間隔でもあり得る。)は、手切れ性と凹部形成性とのバランスを考慮して、100μm~4000μm(例えば300~3000μm、典型的には500μm~2000μm)程度であることが好ましい。凹部の深さや幅、間隔は、電子顕微鏡観察により測定するとよい。
なお、図4には基材22の第二面22Bのみが凹凸を有する例を示しているが、これに限定されず、基材22の第一面22Aおよび第二面22Bの両方が凹凸を有していてもよく、基材22の第一面22Aのみが凹凸を有していてもよい。例えば、図4において、基材22の第一面22Aに、第二面22Bの凹部126の位置および形状を反映した凸部(図示せず)が形成されていてもよい。
また、上記実施形態においては、複数の凹部が直線状に連なって(連続して)配置されていたが、これに限定されない。例えば、複数の凹部が、波状、曲線状等の線状に連なって配置されていてもよい。手切れ性の観点からは直線状に連なる配置が好ましい。
上記基材の表面に凹部が形成されている場合、当該形成面における単位長さ(1cm)当たりの凹部の本数(複数の凹部が連続的または断続的に線状に連なって配置された列を1本とカウントする。)は、2~20本/cm(例えば2~15本/cm、典型的には5~15本/cm)であることが好ましい。
表面に凹凸を有する基材の作製方法は特に限定されない。例えば、溶融製膜法(Tダイ法、インフレーション法)、溶液製膜法等の公知または慣用の方法で樹脂フィルム(ポリオレフィンフィルム等)を作製し、続いて溶融または軟化状態の樹脂フィルムに凹凸表面を有する成形ロール等を押し当てて該凹凸表面の形状を樹脂フィルムに転写する方法や、あらかじめ成形された樹脂フィルムに凹凸表面を有するロール等を押し当てて該凹凸表面の形状を転写する形成する方法等を採用し得る。基材作製方法の一好適例として、Tダイ(T型ダイ)から押し出した樹脂フィルム(好適にはポリオレフィンフィルム)を、表面に凹凸形状を施した冷却成形ロール(エンボスロール)の表面に接触させる方法が挙げられる。なお、あらかじめ成形された樹脂フィルムの表面に凹凸を形成する場合には、形成された凹凸の変形を防ぐ観点から、延伸処理が施されていない樹脂フィルムを用いることが好ましい。
<粘着剤層>
ここに開示される粘着クリーナーにおいて、粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されない。上記粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いることができる。ここで、ゴム系粘着剤とは、ベースポリマーとしてゴム系ポリマーを含む粘着剤をいう。他の粘着剤についても同様である。なお、本明細書においてベースポリマーとは、ポリマー成分のなかの主成分(最も配合割合の高い成分)を指す。ここに開示される粘着剤に含まれるポリマー成分に占めるベースポリマーの割合は、固形分基準で、典型的には凡そ50重量%以上であり、通常は凡そ70重量%以上が適当であり、凡そ90重量%以上であってもよい。上記ベースポリマーの割合は、上限が100重量%であり、例えば凡そ99重量%以下であってもよい。
いくつかの態様において、粘着性能やコストの観点から、上記粘着剤としてゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。ゴム系粘着剤とアクリル系粘着剤とを混合(ブレンド)または積層により組み合わせて使用してもよい。ゴム系粘着剤およびアクリル系粘着剤の好ましい組成については後述する。
ここに開示される技術における粘着テープは、基材の第一面の全範囲(全面積)に亘って粘着剤層が形成されていてもよい。あるいは、例えば基材の一方の長辺または両方の長辺に沿って、粘着剤層が形成されていない非粘着部(ドライエッジ)を有してもよい。図1に示す例では、基材22の両長辺に沿ってドライエッジ202,204が設けられている。このようなドライエッジを設けることにより、例えば粘着テープロールの最外周に露出させる粘着剤を更新する際に、粘着テープの巻回外周端をつまみやすい、ロールから引き出した粘着テープを切り取りやすい、等の効果が実現され得る。
粘着剤層の形成幅、すなわち基材の第一面に粘着剤層が設けられる範囲の幅は、通常、凡そ50mm以上とすることが適当であり、凡そ70mm以上が好ましく、凡そ80mm以上でもよい。いくつかの態様において、上記粘着剤層の形成幅は、例えば凡そ10cm以上でもよく、凡そ12cm以上でもよい。また、上記粘着剤層の形成幅は、例えば凡そ98cm以下であってよく、凡そ68cm以下でもよく、凡そ48cm以下でもよく、凡そ39cm以下でもよく、凡そ34.5cm以下でもよく、凡そ29.5cm以下でもよく、凡そ24.5cm以下でもよい。上述のようなドライエッジを設ける場合、その幅は、例えば2mm~20mm程度であってよく、5mm~15mm程度でもよく、5mm~10mm程度でもよい。粘着剤層の形成幅が広くなると、粘着テープロールを1回通過(転動)させることにより清掃し得る範囲が広くなるため、清掃作業の効率は概して向上する。一方、粘着剤層の形成幅が広くなると清掃対象面上で粘着テープロールを転動させるために必要な力は大きくなる。したがって、粘着剤層の形成幅が比較的広い(例えば100mm以上の)粘着テープロールを備えた粘着クリーナーでは、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。
粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて設定することができる。粘着剤層の厚さは、例えば100μm以下であってよく、80μm以下が好ましく、65μm以下でもよく、55μm以下でもよく、45μm以下でもよい。また、粘着剤層の厚さは、通常、3μm以上であることが適当であり、6μm以上または8μm以上でもよい。いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば10μm以上であってよく、15μm以上でもよく、20μm以上でもよく、25μm以上でもよい。粘着剤層の厚さが大きくなると、粘着テープロールの外周において上記粘着剤層を清掃対象面に密着させやすくなり、清掃の精度が向上する傾向にある。
ここに開示される技術において、粘着剤層は、典型的には連続的に、好ましくは一様な厚さを有するように形成される。このような粘着剤層を有する粘着テープロールは、上記粘着剤層の表面を平滑な清掃対象面に均一に接触させやすいので好ましい。
上記粘着剤層は、単層構造であってもよく、二以上の層が積層した複層構造(例えば二層構造)であってもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層は、該粘着剤層の外表面を構成する表面層と、上記表面層と上記基材の第一面との間に配置されたアンカー層とが積層した構造であり得る。かかる構造の粘着剤層によると、清掃対象面に対する低粘着性と、基材に対する良好な投錨性とを高レベルで両立しやすい。
表面層とアンカー層とを有する粘着剤層において、表面層の厚さtsは、例えば1μm以上であってよく、通常は2μm以上が適当であり、5μm以上でもよく、7μm以上でもよく、好ましくは10μm以上であり、15μm以上でもよく、17μm以上でもよい。表面層の厚さtsが大きくなると、該表面層の性質が粘着面の特性(例えば、粘着力、巻戻し力、レール引き防止性等)によりよく反映される傾向にある。また、粘着剤層全体の厚さを抑制する観点から、いくつかの態様において、表面層の厚さtsは、例えば95μm以下であってよく、75μm以下でもよく、60μm以下でもよく、50μm以下でもよく、40μm以下でもよく、30μm以下または25μm以下でもよい。
表面層とアンカー層とを有する粘着剤層において、アンカー層taの厚さは、典型的には1μm以上であり、例えば2μm以上であってよく、通常は3μm以上が適当であり、5μm以上であることが好ましく、8μm以上でもよく、10μm以上でもよく、12μm以上でもよい。アンカー層の厚さtaが大きくなると、該アンカー層を利用して粘着剤層の基材への投錨性を高めやすくなる。また、粘着剤層全体の厚さを抑制する観点から、いくつかの態様において、アンカー層の厚さtaは、例えば70μm以下であってよく、50μm以下でもよく、35μm以下でもよく、25μm以下でもよく、18μm以下または12μm以下でもよい。
アンカー層の厚さtaに対する表面層の厚さtsの比、すなわちts/taは、例えば0.1以上であってよく、通常は0.25以上が適当であり、0.5以上でもよく、0.7以上でもよく、1.0以上または1.2以上でもよい。ts/taが大きくなると、表面層の性質が粘着面の特性によりよく反映される傾向にある。また、粘着面における低粘着性と基材に対する良好な投錨性とを好適に両立する観点から、ts/taは、例えば10以下であってよく、7以下でもよく、5以下または3以下でもよい。
好ましい一態様において、粘着剤層は、例えば図3に示すように、表面層32がアンカー層34をその上面から側端面にかけて連続的に被覆するように形成することができる。このように、粘着剤層30の外表面(すなわち粘着面)のみならず粘着剤層30の形成幅の両端(すなわち、粘着剤層30の両側端)においてもアンカー層34が表面層32で被覆された構成の粘着テープ20によると、アンカー層34を構成する粘着剤が圧力や経時により流動して粘着剤層30の両側端において表面層32からはみ出して外部に露出することを防ぎ、かかる露出に起因する不都合(例えば、巻戻し力や粘着力の経時上昇)を回避することができる。これにより粘着クリーナーの性能安定性を向上させることができる。アンカー層の厚さが3μm以上または5μm以上である態様では、アンカー層の側端面を表面層で覆うことが特に有意義である。
表面層とアンカー層とを含む粘着剤層において、表面層の構成材料として好ましく採用し得る粘着剤の例として、アクリル系粘着剤およびゴム系粘着剤が挙げられる。また、アンカー層の構成材料として好ましく採用し得る粘着剤の例として、ゴム系粘着剤が挙げられる。ここに開示される粘着クリーナーは、例えば、表面層がアクリル系粘着剤層であり、アンカー層がゴム系粘着剤である態様で好ましく実施され得る。
以下、ここに開示される粘着クリーナーに用いられ得るゴム系粘着剤およびアクリル系粘着剤についてより具体的に説明するが、本発明の範囲を限定する意図ではない。
<ゴム系粘着剤>
ゴム系粘着剤の例としては、天然ゴムやその変性物等の天然ゴム系重合体、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、結晶性ポリオレフィン-エチレン/ブチレン-結晶性ポリオレフィンブロック共重合体(CEBC)、およびスチレン-エチレン/ブチレン-結晶性ポリオレフィンブロック共重合体(SEBC)等のゴム系ポリマーの1種または2種以上をベースポリマーとする粘着剤が挙げられる。
ゴム系粘着剤の一好適例として、SISをベースポリマーとする粘着剤(SIS系粘着剤)が挙げられる。上記SIS系粘着剤は、ベースポリマーとしてのSISの他、例えば、粘着付与樹脂(タッキファイヤー)およびプロセスオイルを主要な成分として含有し得る。各成分の種類や配合比は、粘着テープロールの用途に応じて、所望の粘着性能が得られるように設定され得る。
上記粘着付与樹脂としては、一般的なロジン系、テルペン系、炭化水素系、エポキシ系、ポリアミド系、エラストマー系、フェノール系、ケトン系等の各種粘着付与樹脂を、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。特に限定するものではないが、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の配合量は、例えば凡そ50~200重量部程度とすることができ、通常は凡そ80~150重量部程度とすることが適当である。
上記プロセスオイルとしては、例えば、一般的なパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等のプロセスオイルを、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。特に限定するものではないが、ベースポリマー100重量部に対するプロセスオイルの配合量は、例えば凡そ50~200重量部程度とすることができ、通常は凡そ90~150重量部程度とすることが適当である。
上記ゴム系粘着剤(例えば、SIS系粘着剤)には、さらに、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤(顔料、染料など)等の各種添加剤が配合されていてもよい。これらの添加剤の種類や配合量は、一般的な粘着剤の分野における通常の種類および配合量と同様とすることができる。
<アクリル系粘着剤>
アクリル系粘着剤は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含む粘着剤である。ここでアクリル系ポリマーとは、一分子中に少なくともひとつの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(以下、これを「アクリル系モノマー」ということがある。)を主構成モノマー成分とするポリマーを指す。上記主構成モノマー成分とは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の総量のうち50重量%以上を占める成分をいう。上記モノマー成分の70重量%以上(例えば90重量%以上)がアクリル系モノマーであってもよい。なお、本明細書中において(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。同様に、本明細書中において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。
アクリル系ポリマーは、該ポリマーを構成するモノマー成分が2種以上のモノマーを含む場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体やグラフト共重合体等であってもよい。製造容易性や取扱い性の観点から好ましいアクリル系ポリマーとして、ランダム共重合体およびブロック共重合体が挙げられる。アクリル系ポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
好ましい一態様において、上記アクリル系ポリマーは、アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むモノマー原料から合成されたアクリル系ランダム共重合体を含む。アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数1~20の鎖状アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレート、すなわちC1-20アルキル(メタ)アクリレートを好ましく使用することができる。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、C1-12(例えばC2-10、典型的にはC4-8)アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n-ブチル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、n-ブチルアクリレート(BA)および2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)の一方または両方を用いることが好ましい。
アクリル系ランダム共重合体を構成する全モノマー成分に占める主モノマーの割合は、凡そ60重量%以上であることが好ましく、凡そ80重量%以上であることがより好ましく、凡そ90重量%以上であることがさらに好ましい。全モノマー成分に占める主モノマーの割合の上限は特に限定されないが、粘着剤の特性(粘着力、凝集力など)の調整を容易とする観点から、通常は凡そ99重量%以下(例えば凡そ98重量%以下、典型的には凡そ95重量%以下)とすることが好ましい。アクリル系ランダム共重合体は、実質的に主モノマーのみを重合したものであってもよい。
上記アクリル系ランダム共重合体を重合するために用いられるモノマー原料は、粘着剤の特性調節等を目的として、主モノマーに加えて、該主モノマーと共重合可能な副モノマーをさらに含んでもよい。そのような副モノマーの好適例として、官能基を有するモノマー(以下、官能基含有モノマーともいう。)が挙げられる。上記官能基含有モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入し、粘着剤の特性(粘着力、凝集力等)を調節しやすくする目的で添加され得る。上記官能基含有モノマーの例としては、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基(グリシジル基)含有モノマー、アルコキシ基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アクリル系ポリマーに架橋点を導入しやすく、また架橋密度を調節しやすいことから、カルボキシ基、水酸基およびエポキシ基の少なくともいずれかを有する官能基含有モノマーを好ましく採用し得る。なかでも好ましい官能基含有モノマーとして、カルボキシ基含有モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。水酸基含有モノマーの好適例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
上述のような官能基含有モノマーを用いる場合、アクリル系ポリマーを重合するための全モノマー成分中に上記官能基含有モノマー(好適にはカルボキシ基含有モノマー)が凡そ1~10重量%(例えば凡そ2~8重量%、典型的には凡そ3~7重量%)配合されていることが好ましい。
上記モノマー原料は、副モノマーとして、例えばアクリル系ポリマーの凝集力を高める等の目的で、上記官能基含有モノマー以外のモノマーを含んでもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α-メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記官能基含有モノマー以外の副モノマーの量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーを重合するための全モノマー成分中、凡そ20重量%以下(例えば2~20重量%程度、典型的には3~10重量%程度)とすることが好ましい。
アクリル系ポリマーの合成方法は特に限定されず、従来公知の溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の一般的な重合方法を適宜採用することができる。重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力等)、モノマー以外の使用成分(重合開始剤、界面活性剤等)を適宜選択して行うことができる。アクリル系ランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)は特に限定されず、例えば30×104~100×104程度であり得る。
好ましい他の一態様において、上記アクリル系ポリマーは、アクリル系ブロック共重合体を含む。上記アクリル系ブロック共重合体は、熱可塑性ポリマー(典型的には熱可塑性エラストマー)の性質を示すものであり得る。このようなアクリル系ブロック共重合体をベースポリマーとして含む粘着剤は、ホットメルト形式での塗工に適したものとなり得る。粘着剤層の形成にホットメルト型粘着剤を用いることは、生産性や環境負荷軽減の観点から好ましい。溶融粘度低減等の観点から、星形構造や分岐構造に比べて、直鎖構造のアクリル系ブロック共重合体が有利である。
上記アクリル系ブロック共重合体としては、例えば、少なくとも1つのアクリレートブロック(以下、Acブロックともいう。)と、少なくとも1つのメタクリレートブロック(以下、MAcブロックともいう。)とを1分子中に備えるものを好ましく採用し得る。上記Acブロックは、該Acブロックを構成する全モノマー単位のうち凡そ50重量%以上、好ましくは凡そ75重量%以上がアルキルアクリレートに由来するモノマー単位である。上記MAcブロックは、該MAcブロックを構成する全モノマー単位のうち凡そ50重量%以上、好ましくは凡そ75重量%以上がアルキルメタクリレートに由来するモノマー単位である。
Acブロックを構成するアルキルアクリレートの例としては、炭素原子数1~20のアルキル基をエステル末端に有するアルキルアクリレート(すなわち、C1-20アルキルアクリレート)が挙げられる。構成モノマー単位としてC4-14アルキルアクリレートを含むAcブロックが好ましく、C4-9アルキルアクリレートを含むAcブロックがより好ましい。C4-9アルキルアクリレートの好適例として、BA、2EHA、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート(IOA)、n-ノニルアクリレートおよびイソノニルアクリレート(INA)が挙げられる。例えば、BAおよび2EHAの少なくとも一方を含むAcブロックが好ましい。
好ましい一態様において、Acブロックを構成するモノマー単位のうちC4-14アルキルアクリレートの割合は、例えば50重量%以上であり、75重量%以上でもよく、実質的に100重量%(例えば、99重量%を超えて100重量%以下)でもよい。例えば、Acブロックを構成するモノマー単位が実質的にBA単独である構成、2EHA単独である構成、BAおよび2EHAの2種からなる構成等を好ましく採用し得る。Acブロックを構成するモノマー単位がBAと2EHAの両方を含む態様において、BAと2EHAとの重量比は特に限定されない。BA/2EHAの重量比は、例えば10/90~90/10、好ましくは80/20~20/80、より好ましくは30/70~70/30であり、60/40~40/60であってもよい。
MAcブロックを構成するアルキルメタクリレートとしては、C1-20(好ましくはC1-14)アルキルメタクリレートが挙げられる。MAcブロックを構成するモノマーのうちC1-4(好ましくはC1-3)アルキルメタクリレートの割合は、例えば凡そ50重量%以上であってよく、凡そ75重量%以上でもよく、実質的に100重量%(例えば、99重量%を超えて100重量%以下)でもよい。なかでも好ましいアルキルメタクリレートとして、メチルメタクリレート(MMA)およびエチルメタクリレート(EMA)が挙げられる。例えば、上記モノマー単位が実質的にMMA単独である構成、EMA単独である構成、MMAおよびEMAの2種からなる構成等を好ましく採用し得る。
一態様において、C6-12アルキルアクリレートとC2-5アルキルアクリレートとを20/80~80/20(より好ましくは30/70~70/30、さらに好ましくは40/60~60/40、例えば45/55~55/45)の重量比で含むモノマー単位から構成されたAcブロックを有するアクリル系ブロック共重合体を用いることができる。このようなアクリル系ブロック共重合体は、低温性能と凝集性とのバランスに優れたものとなり得る。例えば、2EHAとBAとを上記重量比で含むモノマー単位から構成されたAcブロックを有するアクリル系ブロック共重合体を好ましく使用し得る。上記Acブロックが2EHAおよびBAのみから構成されていてもよい。
アクリル系ブロック共重合体におけるAcブロック/MAcブロックの重量比は、特に限定されず、例えば4/96~90/10であってよく、7/93~70/30でもよく、10/90~50/50でもよく、15/85~40/60でもよく、15/85~25/75でもよい。2以上のMAcブロックを含むアクリル系ブロック共重合体では、それらのMAcブロックの合計重量とAcブロックとの重量比が上記範囲にあることが好ましい。2以上のAcブロックを含むアクリル系ブロック共重合体についても同様である。
なお、アクリル系ブロック共重合体を構成するモノマー単位の組成は、NMR測定の結果に基づいて把握することができる。上記NMR測定は、具体的には、例えばNMR装置としてブルカー・バイオスピン(Bruker Biospin)社製の「AVAVCEIII-600(with Cryo Probe)」を使用して、下記の条件で行うことができる。例えば、モノマー原料に含まれる2EHAとMMAとの重量比は、1H NMRスペクトルの4.0ppm(2EHA1)と3.6ppm(MMA1)とのピーク積分強度比に基づいて算出することができる。
[NMR測定条件]
観測周波数:1H;600MHz
フリップ角:30°
測定溶媒:CDCl3
測定温度:300K
化学シフト基準:測定溶媒(CDCl3,1H:7.25ppm)
アクリル系ブロック共重合体のMwは特に限定されず、3×104~30×104程度であり得る。上記Mwは、通常、3.5×104~25×104程度の範囲が好ましく、4×104~20×104(例えば4.5×104~15×104)の範囲がより好ましい。
なお、ここでいうアクリル系ブロック共重合体のMwは、当該共重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶かして調製したサンプルにつきゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行って求められる、ポリスチレン換算の値をいう。上記GPC測定は、具体的には、例えばGPC測定装置として東ソー社製の「HLC-8120GPC」を使用して、下記の条件で行うことができる。他のポリマーおよび後述するオリゴマーのMwも同様に測定することができる。
[GPC測定条件]
・カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM-H/HZ4000/HZ3000/HZ2000
・カラムサイズ:各6.0mmI.D.×150mm
・溶離液:THF
・流量:0.6mL/min
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度(測定温度):40℃
・サンプル濃度:約2.0g/L(THF溶液)
・サンプル注入量:20μL
アクリル系ブロック共重合体には、アルキル(メタ)アクリレート以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他モノマーとしては、アルコキシ基やエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、シアノ基、カルボキシ基、酸無水物基等の官能基を有するビニル化合物、酢酸ビニル等のビニルエステル類、スチレン等の芳香族ビニル化合物、N-ビニルピロリドン等のビニル基含有複素環化合物等を例示することができる。上記その他モノマーの含有量は、アクリル系ブロック共重合体を構成する全モノマー成分の凡そ20重量%以下であってよく、凡そ10重量%以下でもよく、凡そ5重量%以下でもよい。好ましい一態様では、アクリル系ブロック共重合体が上記その他モノマーを実質的に含有しない。例えば、上記その他モノマーの含有量が全モノマー成分の1重量%未満(典型的には0~0.5重量%)または検出限界以下であるアクリル系ブロック共重合体が好ましい。
このようなアクリル系ブロック共重合体は、公知の方法(例えば、特開2001-234146号公報、特開平11-323072号公報を参照)により容易に合成することができ、あるいは市販品を容易に入手することができる。上記市販品の例としては、クラレ社製の商品名「クラリティ」シリーズ(例えば、LA2140e,LA2250等の品番のもの)、カネカ社製の商品名「NABSTAR」等が挙げられる。
アクリル系ブロック共重合体は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、相対的にMwの高いアクリル系ブロック共重合体BHと、該アクリル系ブロック共重合体BHよりもMwの低いアクリル系ブロック共重合体BLとを適宜の重量比で用いることができる。例えば、Mwが5×104~20×104(例えば7×104~20×104)の範囲にあるBHと、Mwが3×104~8×104の範囲であってかつ上記BHのMwよりも低いBLとの組合せが好ましい。BHとBLとの重量比(BH/BL)は特に限定されず、例えば5/95~95/5の範囲とすることができ、10/90~90/10であってもよく、40/60~90/10であってもよく、55/45~90/10であってもよい。Mwの異なる2種以上のアクリル系ブロック共重合体を含むことや、各アクリル系ブロック共重合体のMwおよび重量比は、例えば、上述したGPC測定を通じて把握することができる。
(粘着付与剤)
アクリル系粘着剤には、必要に応じて粘着付与剤を含ませることができる。上記粘着付与剤としては、一般的なロジン系、テルペン系、炭化水素系、エポキシ系、ポリアミド系、エラストマー系、フェノール系、ケトン系等の各種粘着付与樹脂を、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の配合量は、例えば凡そ1重量部以上であってよく、凡そ5重量部以上でもよく、凡そ10重量部以上でもよい。また、低温特性の低下を避ける観点から、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、通常、凡そ50重量部以下が適当であり、凡そ30重量部以下でもよく、凡そ20重量部以下でもよい。粘着剤層が粘着付与剤を実質的に含有しなくてもよい。ここに開示される技術は、例えば、粘着剤層の少なくとも外表面(例えば、表面層とアンカー層とを含む粘着剤層における表面層)を構成する粘着剤は粘着付与剤を実質的に含有しない態様で好ましく実施することができる。
(オリゴマー)
アクリル系粘着剤は、粘度調整(例えば、溶融粘度の低下)、粘着特性の制御(例えば、粘着力の抑制)、粘着クリーナーの使用感(例えば、清掃対象面上を転動させる際の手応え)の改善等の目的で、任意成分としてオリゴマーを含有してもよい。かかるオリゴマーのMwは、特に限定されないが、典型的には凡そ30000以下である。一態様において、オリゴマーのMwは、凡そ20000以下であってよく、凡そ10000以下(例えば凡そ5000以下)であってもよい。また、オリゴマーのMwは、凡そ300以上であってよく、凡そ500以上(例えば凡そ800以上)であってもよい。
オリゴマーとしては、特に限定されず、公知のアクリル系オリゴマー、ウレタン系オリゴマー、アクリルウレタン系オリゴマー、シリコーンアクリル系オリゴマー、オルガノシロキサン系オリゴマー、ポリエステル系オリゴマー、ポリオレフィン系オリゴマー、ビニルエーテル系オリゴマー等を用いることができる。オリゴマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。使用するオリゴマーは、公知の方法により製造することができ、あるいは市販品を容易に入手することができる。
ベースポリマーとの相溶性の観点から、一態様において、アクリル系オリゴマーやアクリルウレタン系オリゴマー等の、アクリル系モノマーに由来する単量体単位を含むオリゴマーを好ましく採用し得る。かかるオリゴマーを構成するモノマー成分に占めるアクリル系モノマーの割合は、典型的には凡そ50重量%超であり、好ましくは凡そ70重量%以上、より好ましくは凡そ85重量%以上であり、凡そ90重量%以上でもよく、実質的に100重量%であってもよい。アクリル系オリゴマーは、アクリル系モノマーを主成分とするモノマー原料のランダム共重合体であり得る。
オリゴマーを用いる場合における使用量は、特に限定されない。一態様において、オリゴマーの使用量は、例えば、ベースポリマー100重量部当たり凡そ150重量部以下とすることができ、通常は凡そ100重量部以下(例えば凡そ80重量部以下)とすることが適当である。また、オリゴマーの使用量は、ベースポリマー100重量部当たり、例えば凡そ5重量部以上であってよく、凡そ8重量部以上であってもよく、凡そ20重量部以上または凡そ30重量部以上であってもよい。他の一態様において、オリゴマーの使用量は、ベースポリマー100重量部当たり、例えば凡そ25重量部以下であってよく、凡そ17重量部以下、凡そ12重量部以下、凡そ7重量部以下または凡そ2重量部以下でもよい。ここに開示される技術は、第二層を構成するアクリル系粘弾性材料が実質的にオリゴマーを含有しない態様でも好ましく実施することができる。例えば、ベースポリマー100重量部当たりのオリゴマー含有量が1重量部未満(典型的には0~0.5重量部)であってもよい。
なお、アクリル系粘着剤以外の粘着剤(例えば、ゴム系粘着剤)においても、必要に応じて上述のようなオリゴマーを含有させることができる。ここに開示される技術は、例えば、粘着剤層の少なくとも外表面(例えば、表面層とアンカー層とを含む粘着剤層における表面層)を構成する粘着剤がオリゴマーを含有する態様で実施することができる。
(可塑剤)
アクリル系粘着剤には、必要に応じて可塑剤を含有させることができる。可塑剤は、粘着力の抑制、溶融粘度の低下等に役立ち得る。可塑剤の例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル;トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル;セバシン酸エステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;エポキシ化脂肪酸オクチルエステル等のエポキシ化脂肪酸アルキルエステル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、それらのエチレンオキサイド付加物等の環状脂肪酸エステルおよびその誘導体;等が挙げられる。また、プロセスオイル等の軟化剤も可塑剤に包含される。可塑剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
可塑剤を用いる場合における使用量は、特に限定されない。一態様において、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、凡そ1重量部以上であってよく、凡そ5重量部以上でもよく、凡そ7重量部以上でもよく、凡そ10重量部以上でもよい。粘着テープの背面や清掃対象面への可塑剤の移行を防ぐ観点から、可塑剤の使用量は、通常、ベースポリマー100重量部に対して凡そ100重量部以下が適当であり、凡そ50重量部以下でもよく、凡そ30重量部以下でもよく、凡そ17重量部以下でもよく、凡そ12重量部以下でもよい。粘着剤が可塑剤を実質的に含有しなくてもよい。
なお、アクリル系粘着剤以外の粘着剤(例えば、ゴム系粘着剤)においても、必要に応じて上述のような可塑剤を含有させることができる。ここに開示される技術は、例えば、粘着剤層の少なくとも外表面(例えば、表面層とアンカー層とを含む粘着剤層における表面層)を構成する粘着剤が可塑剤を含有する態様で実施することができる。
(その他成分)
その他、ここに開示される技術における粘着剤層には、充填材(フィラー)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、顔料や染料のような着色剤等の、粘着剤の分野において公知の各種添加成分を必要に応じて配合することができる。これら必須成分ではない添加成分の種類や配合量は、この種の材料における通常の種類および配合量と同様とすればよい。
<粘着テープ>
上述した各種の粘着剤の形態は特に限定されず、例えば、加熱溶融状態で塗工されるホットメルト型、活性エネルギー線により硬化する活性エネルギー線硬化型、粘着成分が水中に分散している水分散型(典型的にはエマルション型)、粘着成分が有機溶剤に溶解している溶剤型等の、種々のタイプの粘着剤であり得る。ここでいう活性エネルギー線の例には、紫外線、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等が含まれる。活性エネルギー線硬化型粘着剤の一好適例として、光硬化型(例えば、紫外線硬化型)粘着剤が挙げられる。生産性や環境負荷軽減の観点から好ましい粘着剤として、ホットメルト型粘着剤および活性エネルギー線硬化型粘着剤が挙げられる。なかでもホットメルト型粘着剤が好ましい。二層以上の複層構造を有する粘着剤層(例えば、表面層とアンカー層とを含む粘着剤層)において、各層を構成する粘着剤層のタイプは、同じでもよく、異なってもよい。
基材の第一面に粘着剤層を設ける方法は特に限定されず、例えば、基材の第一面に粘着剤を直接塗工して粘着剤層を形成する方法(直接法)、適切な剥離面上に形成した粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)等を用いることができる。粘着剤の塗工には、ダイコーターやグラビアコーター等の、従来公知の塗工手段を用いることができる。粘着剤層の形成にホットメルト型粘着剤を使用する場合、該ホットメルト型粘着剤は、有機溶剤を実質的に含有しない加熱溶融液の形態で塗工され得る。
粘着剤層を構成する粘着剤は、必要に応じて架橋されていてもよい。架橋には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム等の有機金属塩や、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン系架橋剤等の、公知の架橋剤を使用することができる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は特に限定されない。一態様において、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、例えば凡そ0.01重量部以上、凡そ0.02重量部以上または凡そ0.05重量部以上とすることができ、また、凡そ10重量部以下または凡そ5重量部以下とすることができる。あるいは、粘着剤層は非架橋であってもよい。このことは簡便性等の観点から好ましい。
粘着テープの厚さは特に限定されず、目的に応じて設定することができる。粘着テープの厚さは、例えば15μm以上であってよく、30μm以上でもよく、45μm以上でもよく、60μm以上でもよく、75μm以上でもよい。粘着テープの厚さが大きくなると、粘着剤層の除去対象面への良好な密着性と粘着テープの強度とを好適に両立させやすくなる。また、粘着テープロールの小型軽量化または粘着テープの長尺化の観点から、粘着テープの厚さは、例えば250μm以下であってよく、200μm以下でもよく、150μm以下でもよく、130μm以下でもよく、120μm以下または110μm以下でもよい。
粘着テープを構成する基材の厚さTSに対する粘着剤層の厚さTAの比、すなわちTA/TSは、例えば0.1以上であってよく、通常は0.2以上が適当であり、0.3以上でもよく、0.5以上でもよい。粘着テープの厚さが同程度である場合、TA/TSが大きくなると、粘着剤層の除去対象面への密着性が向上し、除去対象物の捕捉性能が向上する傾向にある。いくつかの態様において、TA/TSは、0.75以上でもよく、1.0以上でもよい。また、上記密着性と粘着テープの強度とのバランスを考慮して、TA/TSは、通常、3以下が適当であり、2以下が好ましく、1.5以下でもよく、1.2以下でもよく、0.9以下または0.7以下でもよい。
<粘着テープロール>
特に限定するものではないが、粘着テープロールの直径は、例えば凡そ10mm以上であってよく、通常は20mm以上が適当であり、30mm以上でもよく、40mm以上でもよく、50mm以上でもよい。ここで粘着テープロールの直径とは、当該粘着テープロールの未使用時(すなわち、製品の使用開始前)における直径(外径)をいう。上記粘着テープロールの直径は、例えば凡そ200mm以下であってよく、操作性等の観点から、通常は凡そ150mm以下が適当であり、100mm以下でもよく、凡そ80mm以下でもよく、凡そ70mm以下でもよい。
上記粘着テープロールを構成する粘着テープの内周径は、例えば凡そ5mm以上であってよく、通常は凡そ10mm以上が適当であり、凡そ20mm以上でもよい。ここで、粘着テープの内周径とは、粘着テープの巻回開始端における巻回径をいい、粘着テープが巻芯に巻かれた形態の粘着テープロールでは該巻芯の外径と概ね一致する。上記粘着テープの内周径は、例えば凡そ180mm以下であってよく、凡そ130mm以下でもよく、凡そ90mm以下でもよく、凡そ70mm以下でもよく、凡そ60mm以下でもよい。
粘着テープロールにおける粘着テープの巻回厚さ(典型的には、粘着テープロールの直径と粘着テープの内周径との差の1/2に相当する。)は、典型的には1mm以上であり、例えば凡そ2.5mm以上であってよく、凡そ5mm以上でもよく、凡そ7mm以上でもよい。いくつかの態様において、粘着テープロールの使用開始時と使用終了時との使用感の違いを抑制する観点から、上記巻回厚さは、例えば凡そ50mm以下であってよく、凡そ30mm以下でもよく、凡そ20mm以下でもよく、凡そ15mm以下でもよく、凡そ12mm以下でもよい。なお、円筒状の粘着テープロールの幅(巻回軸方向の長さ)は、通常、上述した基材の幅と概ね同等である。ここに開示される技術は、このようなサイズで好ましく実施され得る。
粘着テープの面積を有効に利用する観点から、粘着剤層は、その形成幅内において連続的に形成されていることが好ましい。平滑な清掃対象面に対する均一接触性を高める観点から、粘着剤層の表面(粘着面)は平坦であることが好ましい。粘着剤層の表面が平坦であることは、該粘着剤層の表面を平滑な清掃対象面に対して均一に接触させる観点から有利である。このように構成された粘着テープロールによると、平滑な清掃対象面(例えば、クリーンルームの床面)を精度よくかつ効率よく清掃しやすい。
粘着テープには、粘着テープロールを外周側からみて視認できる模様が付されていてもよい。ここで模様とは、図形、記号、文字、これらの組合せ、これらと色彩との組合せ等を包含する意味である。いくつかの態様において、上記模様は、粘着テープの巻回外周端と、その巻回外周端に隣接する粘着テープロール表面との間で不整合が生じるように設けることができる。このような模様の不整合を生じさせることにより、粘着テープの巻回外周端を見つけやすくなるという効果が奏される。粘着テープの巻回外周端を見つけやすいことは、例えば、粘着テープロールの最外周に露出させる粘着剤を更新する際の作業効率の向上に役立ち得る。上記模様の態様は特に限定されず、例えば、粘着テープの長尺方向または長尺方向と交差する方向に、連続的または断続的に延びる線やドットであり得る。上記線は、直線、曲線、折れ線、波線等であり得る。上記線の太さは、一定であってもよく、規則的または不規則に変化していてもよい。また、上記模様の不整合は、例えば色彩の違いであってもよい。なお、粘着テープの巻回外周端を見つけやすくする方法としては、上述のように模様の不整合を利用する方法の他、例えば、上記切れ目に沿って粘着テープに模様(例えば、切れ目に沿って延びる着色線)を付す方法、切れ目の巻回内周側に模様を付す方法、切れ目を挟んで両側に模様(例えば、切れ目側を頂点として向かい合う三角形)を付す方法、等が挙げられ、特に限定されない。これらの方法を適宜組み合わせてもよい。
粘着テープには、粘着テープロールにおいて推奨される転動方向を示す標識が付されていてもよい。上記推奨される転動方向は、通常、粘着テープのうち粘着テープロールの最外周に位置する部分が、該粘着テープの巻回内周端側から巻回外周端に向かって順に清掃対象物に接触するように転動する方向である。上記標識は、意図する情報をユーザーに伝え得るものであれば特に限定されず、例えば矢印等の記号や指差しマーク等の図形でもよく、文字でもよく、これらの組合せでもよい。
ここに開示される粘着クリーナーの一態様では、図1,2に示すように、切れ目の巻回内周側に、巻回外周端を見つけやすくするとともに粘着テープのめくり方向を明示する矢印Aが、例えば基材への印刷により設けられている。矢印Aの形状、サイズ、配置、数等は、図1,2に示す例に限定されない。
ここに開示される粘着クリーナーは、各種の除去対象面の清掃(クリーニング)に適用することができる。なかでも、除去対象物を空中に巻き上げることなく粘着面で捕捉して除去することができ、かつ平滑な清掃対象面を精度および効率よく清掃し得るという特長を活かして、例えば半導体基板、半導体装置、プリント配線板等の電子機器およびその構成部品、医薬品、食品等の製造工場、試験設備、検査設備等において、床面、壁面、棚やテーブルの平滑面の清掃に好ましく用いられ得る。
なお、この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
(1) 基材と該基材の第一面に設けられた粘着剤層とを有する粘着テープが上記粘着剤層を外側に向けて巻回された粘着テープロールを備える粘着クリーナーであって、
上記基材は樹脂フィルムであり、
上記粘着テープロールは、平滑な清掃対象面上を転動させる場合に、該粘着テープロールの外周に露出した上記粘着剤層の表面が上記清掃対象面に均一に接触するように構成されており、
上記粘着テープは、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)樹脂に対する粘着力FAが3N/25mm以下であり、かつ
上記粘着剤層の上記基材に対する投錨力FBが12N/25mm以上である、粘着クリーナー。
(2) 上記粘着テープロールの巻戻し力FW[N/25mm]が上記粘着力FA[N/25mm]の15%以上である、上記(1)に記載の粘着クリーナー。
(3) 上記粘着テープロールの巻戻し力FW[N/25mm]は0.5N/25mm以下である、上記(1)および(2)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(4) 上記粘着剤層の厚さが10μm以上である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の粘着クリーナー
(5) 上記粘着剤層の幅が100mm以上である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(6) 上記粘着剤層を構成する粘着剤は、ホットメルト型粘着剤、活性エネルギー線硬化型粘着剤、水分散型粘着剤および溶剤型粘着剤から選択される、上記(1)~(5)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(7) 上記粘着剤層を構成する粘着剤は、ホットメルト型粘着剤および活性エネルギー線硬化型粘着剤から選択される、上記(6)に記載の粘着クリーナー。
(8) 上記基材はポリオレフィンフィルムである、上記(1)~(7)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(9) 上記基材は、単層構造または二層以上の複層構造のポリエチレンフィルムであ
る、上記(1)~(8)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(10) 上記基材の第二面は剥離処理が施されていない表面である、上記(1)~(9)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(11) 上記基材の厚さは50μm以上100μm以下である、上記(1)~(10)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(12) 上記基材の厚さTSに対する粘着剤層の厚さTAの比(TA/TS)が0.2以上0.5以下である、上記(1)~(11)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(13) 上記粘着剤層は、該粘着剤層の外表面を構成する表面層と、上記表面層と上記基材の第一面との間に配置されたアンカー層とが積層した構造を有する、上記(1)~(12)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(14) 上記アンカー層の厚さが5μm以上である、上記(13)に記載の粘着クリーナー。
(15) 上記表面層は、上記アンカー層の側端面を覆うように形成されている、上記(13)および(14)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(16) 上記表面層の厚さが10μm以上である、上記(13)~(15)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(17) 上記アンカー層の厚さtaに対する上記表面層の厚さtsの比(ts/ta)が0.5以上5以下である、上記(13)~(16)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(18) 上記表面層はアクリル系粘着剤により構成されており、
上記アンカー層はゴム系粘着剤により構成されている、上記(13)~(17)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<粘着テープロールの作製>
(例1)
アクリル系ポリマー100部と、アクリル系オリゴマー10部と、可塑剤10部とを加熱溶融状態で混合して、アクリル系粘着剤Aを調製した。上記アクリル系オリゴマーとしては、東亞合成株式会社製の「アルフォンUP1000」(無官能基タイプ、Mw約3000)を使用した。上記可塑剤としては、DIC株式会社製の商品名「モノサイザーW-242」(アジピン酸ジイソノニル)を使用した。上記アクリル系ポリマーとしては、ポリMMAブロック-ポリ2EHA/BAブロック-ポリMMAブロック(以下、「MMA-2EHA/BA-MMA」と表記することがある。)のトリブロック構造を有し、ポリ2EHA/BAブロックにおける2EHAとBAとの重量比(すなわち、重量基準の共重合比率)が50/50であり、ポリ2EHA/BAブロックの重量に対するポリMMAブロックの重量(2つのポリMMAブロックの合計重量)の比(MMA/(2EHA+BA))が18/82であるアクリル系ブロック共重合体を使用した。このアクリル系ブロック共重合体は、公知のリビングアニオン重合法により合成されたものであり、Mwは10×104、Mnは8.4×104であった。
また、ベースポリマーとしてのSIS100部と、粘着付与樹脂130部と、プロセスオイル100部とを加熱溶融状態で混合して、ゴム系粘着剤Bを調製した。SISとしては、日本ゼオン株式会社の商品名「クインタック3520」を使用した。粘着付与樹脂としては、JXTGエネルギー株式会社の商品名「T-REZ RC093」を使用した。プロセスオイルとしては、出光興産株式会社の商品名「ダイアナプロセスオイルNS-90S」を使用した。
基材としては、HDPEを主ポリマー成分とするポリオレフィン層Hからなる支持層と、HDPE70部に対してシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン社製の商品名「GENIOPLAST PELLET S」)30部を含むポリオレフィン層Lからなる背面層とが積層した複層構造を有し、背面側がエンボス加工された、幅160mm、厚さ70μmの長尺な帯状のポリオレフィンフィルムを使用した。上記ポリオレフィンフィルムは、ポリオレフィン層Hの構成材料およびポリオレフィン層Lの構成材料を45:10の重量比でTダイから押し出し、その背面側(ポリオレフィン層L側)を冷却成形ロールの表面に接触させることにより作製されたものである。なお、上記ポリオレフィン層Hは、約5重量%の白色顔料を含み、シリコーン樹脂を含まない。また、上記ポリオレフィンフィルムの背面には剥離処理は施されていない。
二つの線状の押出し口を有する押出しダイを備えた二軸押出機を用い、上流側の押出し口から上記ゴム系粘着剤(アンカー層用の粘着剤)を、下流側の押出し口から上記アクリル系粘着剤(表面層用の粘着剤)を、それぞれ溶融状態で押し出して、上記基材の第一面に連続的に塗工した。これにより、図2に示す粘着剤層30と同様の断面構造を有する粘着剤層を作製した。アンカー層32は、基材20の幅中央部に、幅148mmの帯状に形成した。アンカー層32の厚さTaは15μmとした。表面層34は、アンカー層32の上面に重なり、さらにアンカー層32の両側端を連続的に覆うように、幅150mmの帯状に形成した。アンカー層32と表面層34とが重なる部分における表面層34の厚さTsは15μmとし、粘着剤層30の全体の厚さは30μmとした。粘着剤層30の幅は表面層34の幅と同じ150mmであり、基材20の両側端から5mmは粘着剤層を有しないドライエッジとした。
上記構成の粘着テープを、粘着面を外側として、外径38mmの円筒状のHDPE製巻芯の周囲に約50周巻き付けて、サンプル1の粘着テープロール(例1の粘着クリーナー)を作製した。
(例2)
サンプル1に係る粘着テープロールの作製において、アンカー層の厚さが20μm、表面層の厚さが10μmとなるように、上記ゴム系粘着剤および上記アクリル系粘着剤の押出し速度を調節した。その他の点についてはサンプル1に係る粘着テープロールの作製と同様にして、サンプル2の粘着テープロールを作製した。
(例3)
サンプル1に係る粘着テープロールの作製において、上記ゴム系粘着剤は使用せず、上記アクリル系粘着剤のみを上記基材の幅中央部に帯状に塗工することにより、幅150mm、厚さ30μmの粘着剤層を形成した。これによりサンプル3の粘着テープロールを作製した。
(例4)
本例では、サンプル4として、市販の粘着テープロールを使用した。この粘着テープロールは、エンボス加工が施された厚さ110μmのポリプロピレンフィルム(基材)の片面に厚さ約17μmのゴム系粘着剤層を有する粘着テープが、樹脂製の巻芯の周囲に約56周巻回された構成を有する。
<測定および評価>
(粘着力FA)
上述した方法により、ABSに対する粘着力FAを測定した。結果を表1に示した。
(投錨力FB)
上述した方法により投錨力FBを測定した。測定にあたっては、評価対象の粘着テープの背面を、日東電工株式会社製の強粘着性両面テープ「No.5000NS」を用いて厚さ約2mmのステンレス鋼板に固定した。測定用テープとしては、日東電工株式会社製の強粘着性両面テープ「VR-5300」を使用した。結果を表1に示した。なお、表1において、剥離形態を示す欄の「界面」とは、上記測定用テープの粘着剤層と評価対象の粘着テープの粘着剤層との界面で剥離(界面剥離)が生じたことを示し、「投錨」とは、評価対象の粘着テープの粘着剤層が測定用テープとともに基材から剥離(投錨破壊)したことを示し、「材破」とは、評価対象の粘着テープが基材ごと千切れたことを示している。
(巻戻し力FW)
上述した方法により巻戻し力FWを測定した。結果を表1に示した。
(転がし容易性)
市販のクッションフロア(サンゲツ社製、グレード名「HM-1345」)の清掃対象面として、転がし容易性を評価した。図2に示す概略形状を有する治具50の回転部材52に各例に係る粘着テープロールを取り付け、約30m/分の速度で上記清掃対象面上を転がして往復させた。このときの転がしやすさを以下の3段階で評価した。結果を表1に示した。
P:粘着テープの清掃対象面への貼り付きが強く、粘着テープロールを清掃対象面に沿って継続的に転動させることが困難である(転がし容易性に乏しい)。
A:粘着テープロールを清掃対象面に沿って継続的に転動させることは可能だが、転動に要する力が大きく作業負担が大きい(実用上、許容可能な転がし容易性を有する)。
E:粘着テープロールを清掃対象物に沿ってスムーズに転動させることができる(転がし容易性に優れる)。
(レール引き防止性)
上記転がし容易性を評価する際に、レール引きが発生しなかった場合には「E」(レール引き防止性に優れる)、レール引きが発生した場合は「P」(レール引き防止性に乏しい)と評価した。結果を表1に示した。
表1に示されるように、例1、2の粘着クリーナーは、平滑なクッションフロアの表面に沿って粘着テープロールをスムーズに転動させることができ、清掃作業性に優れていた。一方、例4の粘着クリーナーでは粘着テープロールを転動させることが困難であり、また、巻戻し方向に転がすとレール引きが生じた。また、投錨力FBが低い例3の粘着クリーナーでは、粘着面を手でこすると粘着剤層に縒れが生じることが認められた。例1、2の粘着クリーナーの粘着面を同様に手でこすったところ、例3におけるような粘着剤層の縒れは生じないことが確認された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。