JP7211204B2 - 車両用近接空調ユニット - Google Patents
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Description
このため、電気自動車に搭載される空調装置においては、電気モータの動力源である自動車用電池を電熱ヒータの動力源としても用いるのが一般的である。しかし、走行用の電動モータ及び暖房用の電熱ヒータの動力源として同じ自動車用電池を用いることで、例えば厳寒期等の暖房に必要なエネルギ量が大きい場合、大きなエネルギを空調装置に費やすことで車両の走行可能な距離が短くなる問題がある。この面において、電気自動車はエンジン車に比べて不利といい得る。エンジンと電気モータとを併用したハイブリッド車についても同様である。
特許文献1には、車両用の空調装置において、乗員の手のひら等に選択的に空気を吹き付ける技術が紹介されている。特許文献1には、当該空調装置によると、乗員が不自然な着座姿勢をとることなく容易に手等の局所部位に空気を送風できる旨が説明されている。
このように、車室内において乗員に近接した部分だけに空調を行うことで、車室全体の空調を行う場合に比べてエネルギの使用量を低減できる可能性がある。
以下、本明細書において、このように車室内において乗員に近接した部分だけに空調を行う技術を近接空調と称する場合がある。
車両の座席の側方に配置されている筐体と、
温度調整器とブロワとを具備し前記筐体の内部に配置されている温度調整ユニットと、
前記筐体の内部に配置され、前記温度調整ユニットを経た空気が導入される導入口と、前記筐体の表面に露出し前記座席を向く吹出口と、前記導入口と前記吹出口とを連絡する流路部と、を有するダクトと、を具備し、
前記吹出口の上端は、前記座席の座面よりも上方に配置され、
前記座席の前後方向において、前記吹出口における長手方向の一端部は他端部よりも前側に位置し、
前記温度調整ユニットは、前記吹出口における前記長手方向の両端部の間に配置されている、車両用近接空調ユニットである。
しかし、本発明の発明者は、近接空調用の空調装置を当該HVACシステムに組み込むことが、本発明の目的である、効率の良く省エネルギで空調を行うことを困難にしていると考えた。
このようなHVACシステムでは、空調機能を一つに集約させる都合上、温度調整ユニットと空調空気の吹出口とが大きく離れる場合が生じる。温度調整ユニットと吹出口との距離が大きくなればなる程、空調空気の熱損失やダクトの圧力損失が大きくなるために、冷暖房の効率が悪くなり、空調に必要なエネルギが増大する。
既述した特許文献1の実施例においても、近接空調用の温度調整ユニットを、HVACシステムと思しき空調ユニットから流用している。
背中に関しては、座席の背もたれに覆われ、場合によってはシートヒータで暖められる。このため乗員は、背中よりも大腿部において、より寒さや暖かさを知覚し易いと考えられる。本発明の車両用近接空調ユニットでは、上記したように、空調空気を乗員の大腿部に集中して、かつ、当該大腿部の全体にわたって吹き付けることができる。このことにより、本発明の車両用近接空調ユニットによると、温度調整ユニットで生成した比較的少量の熱によって、乗員が快適な温度であると知覚するように、効率の良い空調を行うことが可能である。
なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施形態中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
このうち筐体は、その内部に温度調整ユニットおよびダクトを収容し、車両における座席の側方に配置される。さらに、筐体はその表面に露出しかつ座席を向く吹出口を有する。当該吹出口の上端は、座席の座面よりも上方に配置される。
このため筐体は、内部にダクトおよび温度調整ユニットを収容可能な内部空間を有し、少なくとも一部が車両室内において座席の座面よりも上側にあれば良いといい得る。
さらに、筐体は、運転席と助手席との間に配置されても良いし、後部座席の間に配置されても良い。場合によっては、筐体は、何れか一つの座席のみの側方、例えば座席とドアとの間等に配置されても良い。
温度調整器は特に限定されず、暖房及び/又は冷房に使用可能なものであれば良い。例えば、温度調整器としては、電熱ヒータや熱電素子、ヒートポンプ等の、温熱及び/又は冷熱を生じ得る一般的なものを使用できる。筐体の小型化を図ることを考慮すると、小型の温度調整器を用いるのが好ましく、例えば、電熱ヒータや、ペルチェ素子による加熱・冷却装置等を好ましく用い得る。
温度調整ユニットは、ダクトと離れて配置しても良いが、温度調整ユニットで生成された空調空気を損失なく流路部に導入するためには、導入口と温度調整ユニットとの距離は近い方が好ましく、両者の距離は無いのが特に好ましい。ダクトにおける導入口側の部分の内部に温度調整ユニットを配置することでも、温度調整ユニットで生成された空調空気を損失なく流路部に導入することができる。
また、「座席の前後方向」は、「座席の向き」と捉えることもでき、座席に着座し乗員の臀部と膝とをむすぶ方向と一致する。当該乗員の膝側が座席の前側であり、臀部側が座席の後側である。本発明の車両用近接空調ユニットにおける座席の前後方向は、車両の進行方向と同じであっても良いし、異なっていても良い。後述する実施例の車両用近接空調ユニットにおいては、座席の前後方向と車両の進行方向とは一致するが、例えば複数の座席が車両進行方向に対して横向きに並ぶ場合等、前後方向が車両進行方向と一致しない場合もある。この場合には、車両の進行方向と略直交する方向が座席の前後方向となる。
吹出口の長手方向の実際の長さは、150mm以上であるのが好ましく、170mm以上であるのがより好ましく、200mm以上であるのが特に好ましい。
上記した吹出口の上端と座面との上下方向の距離のより好ましい範囲として、70mm以上、100mm以上、150mm以上の各範囲を挙げることができる。当該吹出口の上端と座面との上下方向の距離に特に上限はないが、好ましい範囲として、250mm以下、230mm以下、200mm以下の各範囲を挙げることができる。
実施例1の車両用近接空調ユニットは、車両のセンターコンソールボックスと一体化されたものである。実施例1の車両用近接空調ユニットを模式的に表す説明図を図1~図3に示す。実施例1の車両用近接空調ユニットにおける吹出口、ダクトおよび温度調節ユニットの位置関係を模式的に表す説明図を図4に示す。吹出口を模式的に表す説明図を図5に示す。なお、図1は実施例1の車両用近接空調ユニットを上側から見た様子を表し、図2は実施例1の車両用近接空調ユニットを助手席側から見た様子を表し、図3は実施例1の車両用近接空調ユニットの断面を後側から見た様子を表す。また、図4は実施例1の車両用近接空調ユニットにおける吹出口、ダクトおよび温度調節ユニットを助手席側から見た様子を表す。図5は、吹出口を構成する各部材を分解した様子を表す。以下、上、下とは鉛直方向における上、下を指し、前、後、左、右とは車両進行方向における前、後、左、右を意味するものとする。
図1に示すように、実施例1の車両用近接空調ユニット1は、車両のセンターコンソールボックス90と一体化されて運転席91と助手席92との間に配置されている。なお、運転席91は第2座席と言い換えても良く、助手席92は第1座席と言い換えても良い。
ドリンクホルダ6は、当該頂開口23oに挿入され、頂壁23における当該頂開口23oの周縁部に一体化されている。ドリンクホルダ6は上方に開口するケース状をなす。ドリンクホルダ6の周壁6wは、筐体2の内部空間29に露出する。
第1吹出口41は助手席92の座面93よりも上方に配置され、その長手方向を前後方向に向けている。運転席91および助手席92は車両進行方向を向いており、運転席91の前後方向および助手席92の前後方向は、車両の進行方向と一致する。したがって、実施例1の車両用近接空調ユニット1における第1吹出口41は、その長手方向を車両進行方向における前後方向に向けるともいい得る。
さらに、第1吹出口41の上端41uは、助手席92における座面93の上方に配置されている。第1吹出口41の上端41uと助手席92の座面93との上下方向の距離は約150mmであり、第1吹出口41の下端41lと助手席92の座面93との上下方向の距離は約140mmである。
実施例1の車両用近接空調ユニット1においては、第1吹出口41と助手席92とが近接し、第1吹出口41から助手席92に向けて、より詳しくは、助手席92に着座した乗員96の大腿部96tに向けて、空調空気が吹き出す。このため、実施例1の車両用近接空調ユニット1によると、効率良い空調が可能である。
効率良く空調を行うためには、第1吹出口41と助手席92との左右方向の距離L3は短い方が良い。第1吹出口41と助手席92との距離L3の好ましい範囲として、5cm以下、3cm以下、2cm以下の各範囲を例示できる。
例えば、図4に示す断面、すなわち、第1ダクト4を第1吹出口41の長手方向に平行にかつ第1ダクト4の軸方向に沿って切断した断面において、第1導入流路部43の外周は、第1吹出口41の長手方向に対して、交差角70~110°で交差するのが好ましく、交差角80~100°で交差するのがより好ましく、交差角85~95°で交差するのがさらに好ましい。勿論、第1導入流路部43の外周は、第1吹出口41の長手方向に対して、直交するのが特に好ましい。第1吹出流路部44の外周についても同様に、第1吹出口41の長手方向に対して、交差角70~110°で交差するのが好ましく、交差角80~100°で交差するのがより好ましく、交差角85~95°で交差するのがさらに好ましく、直交するのが特に好ましい。
なお、実施例1の車両用近接空調ユニット1において、ガイドフィン部材4gの内側開口4inの開口径は約8~40mmであり、隣り合う当該内側開口4inの距離は約2~15mmである。また、多孔板4pの外側開口4ouの開口径は約2~6mmであり、隣り合う当該外側開口4ouの距離は約5~10mmである。
干渉リブ4rは、第1流路部42を流通する空調空気を、第1吹出口41における長手方向の全体に分配する機能を有する。当該干渉リブ4rを有することで、実施例1の車両用近接空調ユニット1では、比較的少量の空調空気を効率良く乗員96に吹き付けることができる。このことによっても、実施例1の車両用近接空調ユニット1によると、省エネルギで効率の良い空調が可能である。
第2導入口50は、第1導入口40の右側において、温度調整ユニット3の上側に配置され、温度調整器30に対面する。第2吹出口51は、筐体2の右側壁22に固定されるとともに当該右側壁22の上端と頂壁23との隙間に露出する。
第2ダクト5における各部分の形状は第1ダクト4における該当部分の形状と同様である。したがって、第2ダクト5は第1ダクト4と同様の効果を奏する。
なお、ここでいう「ドリンクホルダ6との距離がほぼない部分」とは、「ドリンクホルダ6との距離が1mm以下の部分」と言い換えることもできる。また、第1ダクト4の軸方向断面とは、図3に例示されるように、第1導入口40および第1吹出口41を含むように第1ダクト4をその軸線方向に切断した断面を意味する。第2ダクト5についても同様である。
同様に、二つの吸入ダクト80、81の他方である第2吸入ダクト80は運転席91側のサイドドアd1に配置され、当該第2吸入ダクト80の第2吸入口80oは、第2吹出口51に対面し、第2吹出口51が吹き出した空調空気を吸入する。したがって、運転席91に着座した乗員96の大腿部96tの上方でも、空調空気は筐体2側からサイドドアd1側に円滑に流通し、乗員96の大腿部96tには適度に温度調整された空調空気が連続的に供給される。
このように、実施例1の車両用近接空調ユニット1は、吸入ダクト80、81を備えることによって、乗員96の大腿部96tをより効率的に暖め得る。吸入ダクト80、81により、乗員96の大腿部96t付近に空調空気のエアカーテンが形成されるともいい得る。
実施例2の車両用近接空調ユニットは、第1ダクト及び第2ダクトの形状以外は、実施例1の車両用近接空調ユニットと概略同じである。
実施例2の車両用近接空調ユニットを模式的に表す説明図を図6に示す。なお、図6は実施例2の車両用近接空調ユニットの断面を後側から見た様子を表す。
なお、第2ダクト5も同様の第2側壁隣接部59を有するため、運転席91の近傍に関しても同様に、空調空気による空調だけでなく、第2ダクト5の排熱による空調が行われる。
このように、実施例2の車両用近接空調ユニット1によっても、省エネルギで効率の良い空調を行うことが可能である。
実施例2の車両用近接空調ユニット1における干渉リブ4rもまた、実施例1の車両用近接空調ユニット1における干渉リブ4rと同様に、第1流路部42や第2流路部52を流通する空調空気を、第1吹出口41や第2吹出口51における長手方向の全体に分配する機能を有する。したがって、実施例2の車両用近接空調ユニット1においても、当該干渉リブ4rの作用によって、比較的少量の空調空気を効率良く乗員96に吹き付けることができる。
実施例3の車両用近接空調ユニットは、二つの温度調整ユニットを有すること、および、当該二つの温度調整ユニットに対応して第1ダクト及び第2ダクトの形状を変更したこと以外は、実施例2の車両用近接空調ユニットと概略同じである。
実施例3の車両用近接空調ユニットを模式的に表す説明図を図7に示す。図7は実施例3の車両用近接空調ユニットの断面を後側から見た様子を表す。
第1ダクト4は、第1導入口40側に位置し第1温度調整ユニット35の上側部分を外側から覆う第1カバー部4cと、当該第1カバー部4cに連続する第1ダクト本体4amとで構成されている。第1ダクト本体4amにおける第1カバー部4c側の端部は、実質的に、第1ダクト4の第1導入口40といい得る。したがって、実施例3の車両用近接空調ユニット1においても、第1導入口40は第1温度調整ユニット35よりも空気流れの下流側に配置され、当該第1導入口40には空調空気が導入されるといい得る。
同様に、第2ダクト5の第2導入口50は、第2温度調整ユニット36よりも空気流れの下流側に配置されている。第1ダクト4および第2ダクト5は上下に延びる略I字の筒状をなす。
また、実施例3の車両用近接空調ユニット1では、第1ダクト4と第2ダクト5とを別々に配置することで、車両用近接空調ユニット1を省スペース化できるため、筐体2の内部空間29を有効利用できる利点もある。
3:温度調整ユニット 4:ダクト(第1ダクト)
5:ダクト(第2ダクト) 6:ドリンクホルダ
21:筐体の座席側の側壁(左側壁) 22:筐体の座席側の側壁(右側壁)
29:筐体の内部空間 30:温度調整器
30a:温度調整器(第1温度調整器) 30b:温度調整器(第2温度調整器)
31:ブロワ 31a:ブロワ(第1ブロワ)
31b:ブロワ(第2ブロワ)
35:温度調整ユニット(第1温度調整ユニット)
36:温度調整ユニット(第2温度調整ユニット)
40:導入口(第1導入口) 41:吹出口(第1吹出口)
42:流路部(第1流路部) 48:ホルダ隣接部(第1ホルダ隣接部)
49:壁側隣接部(第1側壁隣接部) 50:導入口(第2導入口)
51:吹出口(第2吹出口) 52:流路部(第2流路部)
58:ホルダ隣接部(第2ホルダ隣接部) 59:壁側隣接部(第2側壁隣接部)
91:座席(第2座席、運転席) 92:座席(第1座席、助手席)
93:座面 96:乗員
96t:大腿部
Claims (5)
- 車両の座席の側方に配置されている筐体と、
温度調整器とブロワとを具備し前記筐体の内部に配置されている温度調整ユニットと、
前記筐体の内部に配置され、前記温度調整ユニットを経た空気が導入される導入口と、前記筐体の表面に露出し前記座席を向く吹出口と、前記導入口と前記吹出口とを連絡する流路部と、を有するダクトと、を具備し、
前記吹出口の上端は、前記座席の座面よりも上方に配置され、
前記座席の前後方向において、前記吹出口における長手方向の一端部は他端部よりも前側に位置し、
前記温度調整ユニットは、前記吹出口における前記長手方向の両端部の間に配置され、
前記筐体は、ケース状をなすドリンクホルダを有し、
前記ダクトは、前記流路部の一部を外側から区画し前記ドリンクホルダの高さ方向に延びる流路壁部分と、前記ドリンクホルダの外側に隣接するホルダ隣接部と、を有し、
前記流路壁部分は前記ホルダ隣接部の一部を含む、車両用近接空調ユニット。 - 車両の座席の側方に配置されている筐体と、
温度調整器とブロワとを具備し前記筐体の内部に配置されている温度調整ユニットと、
前記筐体の内部に配置され、前記温度調整ユニットを経た空気が導入される導入口と、前記筐体の表面に露出し前記座席を向く吹出口と、前記導入口と前記吹出口とを連絡する流路部と、を有するダクトと、を具備し、
前記吹出口の上端は、前記座席の座面よりも上方に配置され、
前記座席の前後方向において、前記吹出口における長手方向の一端部は他端部よりも前側に位置し、
前記温度調整ユニットは、前記吹出口における前記長手方向の両端部の間に配置され、
前記ダクトは、前記筐体における前記座席側の側壁に沿って上下に延びる側壁隣接部を有し、
前記側壁隣接部は、前記吹出口と同じ方向を向く、車両用近接空調ユニット。 - 前記筐体は、ケース状をなすドリンクホルダを有し、
前記ダクトは、前記ドリンクホルダの外側に隣接するホルダ隣接部を有する、請求項2に記載の車両用近接空調ユニット。 - 前記導入口の流路断面積は前記吹出口の流路断面積よりも小さい、請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用近接空調ユニット。
- 前記筐体は、第1座席および第2座席の間に配置され、
前記温度調整ユニットは、
第1温度調整器と第1ブロワとを有する第1温度調整ユニットと、
第2温度調整器と第2ブロワとを有する第2温度調整ユニットとを具備し、
前記ダクトは、
前記第1温度調整ユニットを経た空気が導入される第1導入口と、前記筐体の表面に露出し前記第1座席を向く第1吹出口と、前記第1導入口と前記第1吹出口とを連絡する第1流路部と、を有する第1ダクトと、
前記第2温度調整ユニットを経た空気が導入される第2導入口と、前記筐体の表面に露出し前記第2座席を向く第2吹出口と、前記第2導入口と前記第2吹出口とを連絡する第2流路部と、を有する第2ダクトと、を具備する、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車両用近接空調ユニット。
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