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JP7204776B2 - シリコンベースの時計用バネの製作方法 - Google Patents

シリコンベースの時計用バネの製作方法 Download PDF

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JP7204776B2 JP2020556962A JP2020556962A JP7204776B2 JP 7204776 B2 JP7204776 B2 JP 7204776B2 JP 2020556962 A JP2020556962 A JP 2020556962A JP 2020556962 A JP2020556962 A JP 2020556962A JP 7204776 B2 JP7204776 B2 JP 7204776B2
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Description

本発明は、シリコンベースの時計用バネ、詳細には腕時計又は懐中時計用バネを製作する方法に関する。
シリコンは、好都合な特性、特に低密度、高い耐腐食性、非磁性、及び微細加工技術による機械加工適合性により、機械的時計製造において貴重な材料である。従って、シリコンは、ひげぜんまい、テンプ、可撓性案内部材を備えた振動子、アンクル、及びガンギ車を製作するために使用される。
しかしながら、シリコンは、機械的強度が低いという欠点、及び、鋭い縁部を残し、部品の側面上に波紋の(ホタテ貝様の)平坦性欠陥並びに結晶単位格子の欠陥をもたらす、一般的に機械加工するために使用されるエッチング方法、すなわちディープ反応性イオンエッチング(DRIE)によって一層悪化する欠点を有する。この低い機械的強度は、ムーブメントへの取り付け時の構成要素の取り扱いにとって又は時計が衝撃を受ける場合に問題がある。実際には、この構成要素は簡単に壊れる可能性がある。この問題を解決するために、シリコン製の時計構成要素は、一般に、国際公開第2007/000271号に記載されているように、厚さが自然酸化物よりも非常に厚い酸化シリコンコーティングで強化される。このコーティングは、一般に、最終構成要素上に残るが、欧州特許第2277822号に教示される技術では、これは実質的に機械的強度に影響を与えることなく除去することができる。
バネの場合、機械的強度は、その機能を達成するために作動時に壊れることなく弾性的に変形することができるレベルであることも必要である。テンプに適合することが意図されたひげぜんまい、又は枢動軸無しの振動子の可撓性案内部材に関して、作動応力は比較的小さく最大でも数百MPaであり、酸化シリコン層がもたらす機械的強度は、理論的には十分となり得る。しかしながら、作動時の振動数(4Hz、10Hz、あるいは50Hz)を考慮すると、繰り返し数が高く、疲労破壊のリスクをもたらす可能性がある。主ぜんまい、特に香箱バネ又は何らかのハンマーバネ又はロッカーバネなどの他のバネに関して、作動時に受ける応力は非常に高く、数GPaのレベルであり、酸化シリコンで被覆した場合でも生産材料としてのシリコンの選択と不適合である。従って、この種のバネに関して、鋼、ニッケル-リン合金、Nivaflex(登録商標)(約3.7GPaの弾性限界のCo、Ni、Cr、及びFeをベースとした合金)、金属ガラス(スイス特許第698962号及びスイス特許第704391号参照)、又は複合材料、金属/ダイアモンド材料、又は半金属/ダイアモンド(本出願人のスイス特許第706020号参照)などの、高弾性限界の材料が選択又は提案されている。
シリコン上に酸化シリコン層を形成する代替案は、スイス特許第702431号に記載されている。これは、縁部に丸みをつけ、DRIEでもたらされた側面の平坦性欠陥を軽減するために還元性雰囲気中で構成要素のアニーリングを行うことで構成される。この方法は、作動時に高レベルの応力を吸収することが意図されたバネには適切ではなく、最適な疲労強度を提供しない。
国際公開第2007/000271号 欧州特許第2277822号 スイス特許第698962号 スイス特許第704391号 スイス特許第706020号 スイス特許第702431号
本発明は、シリコンベースの時計用バネが作動時に耐えることができる応力の最大レベル及び/又は当該時計用バネの疲労強度を実質的に増大させることを目的としている。
このため、本発明の第1の実施形態によれば、時計用バネを製作する方法は、
a)シリコンに基づいて、時計用バネの所望の形状を有するか又は時計用バネの所望の形状を有する部分を備える要素を製作するステップと、
b)要素を熱酸化するステップと、
c)要素を脱酸するステップと、
d)要素を還元性雰囲気内でアニーリングするステップと、
e)要素上に酸化シリコン層を形成するステップと、
を含むことが提案される。
本発明の第2の実施形態によれば、時計用バネを製作する方法は、
a)シリコンに基づいて、時計用バネの所望の形状を有するか又は時計用バネの所望の形状を有する部分を備える要素を製作するステップと、
b)要素を還元性雰囲気内でアニーリングするステップと、
c)要素を熱酸化するステップと、
d)要素を脱酸するステップと、
e)要素上に酸化シリコン層を形成するステップと、
を含むことが提案される。
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことで明らかになるはずである。
本発明の1つの特定の実施形態による製作方法のそれぞれのステップを示す図である。 3つの異なるケースで得られた見掛けの破壊応力値を示す、ボックスプロットによるグラフである。 本発明による方法で製作された香箱バネの上から見た図であり、香箱バネは、香箱の中に導入される前の弛んだ状態で示されている。 本発明による方法で製作されたハンマーバネの上から見た図である。
図1を参照すると、本発明によるシリコンベースの時計用バネを製作する方法の特定の実施形態は、ステップE1からE5を含む。
第1のステップE1は、好ましくはディープ反応性イオンエッチング(DRIE)によって、シリコンウェハ内に、時計用バネの所望の形状及び実質的に所望の寸法を有する要素、又は時計用バネの所望の形状及び実質的に所望の寸法を有する部分を備えた要素をエッチングすることを含む。
シリコンは、単結晶、多結晶、又は非結晶質とすることができる。多結晶シリコンは、全ての物理的特性の等方性を得るには好ましいであろう。さらに、本発明で用いるシリコンは、ドープすることができ又はドープしなくてもよい。シリコンの代わりに、特に、要素は、シリコンオンインシュレータ基材(SOI基材)の中にエッチングすることで、1又は2以上の酸化シリコンの薄い中間層で分離されたシリコンの厚い層を含む複合材料から製作することができる。
本方法の第2のステップE2は、要素を600℃から1300℃の間、好ましくは800℃から1200℃の間の温度で熱酸化させて、酸化シリコン(SiO2)層で覆うことを含む。この酸化シリコン層の厚さは、典型的には0.5μmと数μmとの間、好ましくは0.5から5μmの間、より好ましくは1から5μmの間、例えば1から3μmの間である。この酸化シリコン層は、成長によって形成され、シリコンは消費され、シリコンと酸化シリコンとの間の界面をもたらし、シリコンの表面欠陥を再処理して軽減する。
第3のステップE3において、例えば、ウェットエッチング、気相エッチング、又はドライエッチングによって酸化シリコン層を除去する。
第4のステップE4において、引用により本出願に組み込まれているスイス特許第702431号に記載されたアニーリング処理を要素に施す。このアニーリング処理(熱アニーリング)は、好ましくは、厳密に50Torrより大きい、100Torrより大きい、及び大気圧(760Torr)以下で、しかしほぼ大気圧程度で、及び好ましくは800℃から1300℃の間の温度の還元性雰囲気の中で行われる。アニーリング処理は、数分から数時間持続することができる。還元性雰囲気は、主として又は完全に水素から形成することができる。また、これはアルゴン、窒素、又は他の不活性ガスを含むこともできる。このアニーリング処理は、シリコン原子の移動を引き起こし、シリコン原子は、表面の凸部から離れて凹部に集まり、結果的に縁部に丸みをつけ、エッチングプロセスによって側面上に残った波紋及び他の欠陥を軽減する。
本方法の第5のステップE5において、要素上に機械的強度を高めることができる酸化シリコン(SiO2)層を形成する。この酸化シリコン層は、ステップE2と同じように熱酸化によって、又は堆積によって、特に物理気相成長(PVD)又は化学気相成長(CVD)によって形成することができる。好ましくは、酸化シリコン層は、要素の表面の全て又はほぼ全てに形成される。酸化シリコン層の厚さは、一般的には0.5μmから数μmの間、好ましくは、0.5から5μmの間、より好ましくは1から5μmの間、例えば、1から3μmの間である。
この要素は、典型的に、単一シリコンウェハの中に製作された要素のバッチの一部を形成する。本方法の最後のステップにおいて、バッチの或る要素と他の要素は、ウェハから切り離される。本発明により完成した時計用バネは、切り離された要素そのもの又はこの要素の一部とすることができる。
予想外に、酸化-脱酸(ステップE2及びE3)、アニーリング(ステップE4)、及び酸化シリコン層の形成(ステップE5)は、互いに非常に相補的であり、得られた全体的効果は、これらのステップを組み合わせることで期待できる効果を非常に明確に超えることが分かっている。
図2は、様々なケースでの数十の試験片に対して測定した屈曲下での見掛けの破壊応力を示す。
-ケース1:試験片をDRIE(ステップE1)だけで製作した。
-ケース2:試験片をDRIEで製作して約3μmの厚さの酸化シリコン層で被覆した(ステップE1及びE5だけ)。これらの試験片は、ケース1と同様に同じシリコンウェハから製作した。
-ケース3:試験片を本発明による方法(ステップE1からE5)で製作した。ステップE5で形成された酸化シリコン層の厚さは約3μm。これらの試験片は、ケース1及び2と同様に同じシリコンウェハから製作した。
本発明による方法で得られた試験片の屈曲下での見掛けの破壊応力は、非常に大きい。この応力は、平均で5GPa程度、ほぼ6GPaの値に達することができ、最小値は3GPaよりも大きい。シリコンは脆弱な材料なので、その見掛けの破壊応力又は破壊限界は、その弾性限界と一致する。その結果として、通常動作時に、より高性能の合金から又は金属ガラスから製作されたバネのように、大きな力を及ぼすことができるシリコン製バネを製作することができる。
例示的に、図3は、巻かれると機械エネルギーを蓄積して、歯車列又は時計機構を作動させるためにエネルギーを漸進的に解放することが意図された、主ぜんまい、より詳細には香箱バネを示す。本発明による方法で製作された当該バネは、弾性限界の二乗の弾性係数に対する比率(σ2/E)によって決まる、優れたエネルギー蓄積能力を有することができる。この主ぜんまいは、図3では香箱の外側にあるときの弛んだ状態で示されており、スイス特許第705368号に記載されているように、エネルギーの蓄積及び解放に対して追加の機能を果たす部分、例えばボス又はクランプとしての機能を果たす部分を備えることができる。
図4はハンマーバネを示し、ハンマーバネの端部は、クロノグラフカウンターをリセットするようにハンマーを作動させるために、ハンマーが保持するピン上で作動することが意図されている。このようなハンマーバネ又は他のバネの場合、本発明による方法で得られた屈曲下での非常に高い見掛けの破壊応力は、通常動作時に及ぼされた同じ力に関して、鋼又はニッケル-リンなどのより一般的な材料で製作されたバネに対して、バネの寸法を小さくすのに役立つ。
本発明による方法は、テンプに装着されるひげぜんまい、又は国際公開第2017/055983号に記載された振動子の別個の交差したストリップを備える可撓性部材などの振動子の枢動軸無しの可撓性案内部材等の中強度の力を加えるが高周波で使用される、時計用バネの疲労強度を高めるためにも利用することができることに留意されたい。
実際には、本発明による方法で実行される処理の優れた相補性は、関係する物理現象に起因することが分かる。酸化-脱酸は、表面欠陥に最も影響を受けるシリコンの厚さ部分を除去する。アニーリングは、材料内の原子を再配置する。酸化シリコン層の形成は、圧縮応力をシリコン表面に導く。その結果、得られた時計用バネは、高品質である。初期破壊部をもたらす可能性があるチッピング及び他の欠陥は、著しく低減されるか又は排除さえされる。表面粗さは、滑らかにされる。DRIEによってもたらされた要素の側面上の波紋又は表面欠陥は、軽減されるか又は排除さえされる。縁部は丸くなり、これにより応力集中が低減される。
本発明による方法は、上記以外の時計用バネ、例えば、ロッカーバネ、レバーバネ、歯止めバネ、ジャンパーバネに適用することができる。
本発明の他の実施形態において、ステップE4(アニーリング)は、ステップE2(熱酸化)の前に実行される。

Claims (16)

  1. 時計用バネを製作する方法であって、
    a)シリコンに基づいて、前記時計用バネの所望の形状を有するか又は前記時計用バネの所望の形状を有する部分を備える要素を製作するステップと、
    b)前記要素を熱酸化するステップと、
    c)前記要素を脱酸するステップと、
    d)前記要素を還元性雰囲気内でアニーリングするステップと、
    e)前記要素上に酸化シリコン層を形成するステップと、
    を含む方法。
  2. 時計用バネを製作する方法であって、
    a)シリコンに基づいて、前記時計用バネの所望の形状を有するか又は前記時計用バネの所望の形状を有する部分を備える要素を製作するステップと、
    b)前記要素を還元性雰囲気内でアニーリングするステップと、
    c)前記要素を熱酸化するステップと、
    d)前記要素を脱酸するステップと、
    e)前記要素上に酸化シリコン層を形成するステップと、
    を含む方法。
  3. 前記ステップa)は、エッチング工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記ステップa)は、ディープ反応性イオンエッチング工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 前記熱酸化ステップは、600℃から1300℃の間の温度で行われる、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記熱酸化ステップは、800℃から1200℃の間の温度で行われる、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  7. 前記脱酸ステップは、エッチング工程を含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記アニーリングステップは、厳密に50Torrより大きい圧力で実行される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記アニーリングステップは、厳密に100Torrより大きい圧力で実行される、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
  10. 前記アニーリングステップは、大気圧以下の圧力で実行される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記アニーリングステップは、800℃から1300℃の間の温度で実行される、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記還元性雰囲気は、水素を含有する、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
  13. 前記還元性雰囲気は、不活性ガスも含有する、請求項12に記載の方法。
  14. 前記ステップe)は、熱酸化によって実行される、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
  15. 前記シリコンは、単結晶又は多結晶である、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
  16. 前記時計用バネは、主ぜんまい、ハンマーバネ、レバーバネ、ロッカーバネ、歯止めバネ、ジャンパーバネ、ひげぜんまい、又は可撓性案内部材である、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
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