以下に、本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダの構成を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1がモータ200に取り付けられた状態を示す斜視図である。以下、XYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な左右方向に対応し、Y軸方向は水平な前後方向に対応し、Z軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向及びZ軸方向はそれぞれX軸方向に直交する。X軸方向は左方向あるいは右方向と、Y軸方向は前方向あるいは後方向と、Z軸方向は上方向あるいは下方向と表記することがある。図1では、Z軸方向で上から視た状態を平面視と、Y軸方向で前から視た状態を正面視と、X軸方向で左右から視た状態を側面視という。このような方向の表記はアブソリュートエンコーダ100-1の使用姿勢を制限するものではなく、アブソリュートエンコーダ100-1は任意の姿勢で使用されうる。なお、図面において歯部形状は省略している。
図2は、図1に示されるケース115から蓋部116が取り外された状態を示す斜視図である。図3は、図2に示すアブソリュートエンコーダ100-1から基板120及び基板取付ねじ122が取り外された状態を示す斜視図である。図4は、基板120の底面図である。図5は、図3に示すアブソリュートエンコーダ100-1の平面図である。図6は、アブソリュートエンコーダ100-1を、モータ軸201の中心を通り、X-Z平面に平行な面で切断した状態の断面図である。ただし、第2副軸ギア138及び磁気センサ90は表示している。図7は、アブソリュートエンコーダ100-1を第1中間ギア102の中心線に垂直で、第1副軸ギア105の中心を通る平面で切断した断面図である。図7ではケース115及び蓋部116の記載が省略されている。図8は、アブソリュートエンコーダ100-1を第2副軸ギア138の中心及び第2中間ギア133の中心を通るZ軸方向に平行な平面で切断した状態を略右側方から視た断面図である。また図8では、ケース115及び蓋部116の記載が省略されている。
以下では、図1から図8を参照してアブソリュートエンコーダ100-1の構成について詳細に説明する。アブソリュートエンコーダ100-1は、モータ200の主軸の複数回転にわたる回転量を特定して出力するアブソリュート型のエンコーダである。モータ200は、一例として、ステッピングモータ、DCブラシレスモータであってもよい。一例として、モータ200は、波動歯車装置などの減速機構を介して産業用などのロボットを駆動する駆動源として適用されてもよい。モータ200のモータ軸201は、モータ200のZ軸方向の両側に突出している。アブソリュートエンコーダ100-1は、モータ軸201の回転量をデジタル信号として出力する。なお、モータ軸201は主軸の一例である。
アブソリュートエンコーダ100-1は、モータ200のZ軸方向の端部に設けられている。アブソリュートエンコーダ100-1の形状に特別な制限はないが、実施の形態では、アブソリュートエンコーダ100-1は、平面視で略矩形状を有し、正面視及び側面視で主軸の延伸方向(以下、軸方向という。実施の形態1で、軸方向はZ軸方向に平行な方向である。)に薄い横長の矩形状を有する。つまり、アブソリュートエンコーダ100-1はZ軸方向に偏平な直方体形状を有する。
アブソリュートエンコーダ100-1は、内部構造を収容する中空角筒状のケース115を備える。ケース115は、少なくとも主軸と中間回転体とを包囲する複数(例えば4つ)の外壁部115a、外壁部115b、外壁部115c及び外壁部115dを含む。ケース115の外壁部115a、外壁部115b、外壁部115c及び外壁部115dの端部に、蓋部116が固定されている。蓋部116は、平面視で略矩形状を有し、軸方向に薄い板状の部材である。
外壁部115a、外壁部115b、外壁部115c及び外壁部115dは、この順でそれぞれ連結されている。外壁部115a及び外壁部115cは、互いに平行に設けられる。外壁部115b及び外壁部115dは、外壁部115a及び外壁部115cの側端部に架け渡され、互いに平行に設けられる。この例では、外壁部115a及び外壁部115cは、平面視においてX軸方向に延伸し、外壁部115b及び外壁部115dは、平面視においてY軸方向に延伸している。
アブソリュートエンコーダ100-1は、メインベース110、ケース115、蓋部116、基板120、板バネ111、及び複数のねじ164を含む。メインベース110は、各回転体及び各歯車を軸支する基台である。メインベース110は、基部110aと、複数(例えば4個)の支柱141と、軸106、軸134、軸139を含む。
メインベース110の基部110aは、アブソリュートエンコーダ100-1のモータ200側に面する板状の部分であり、X軸方向及びY軸方向に延在する。メインベース110の基部110aには、中空角筒状のケース115が、複数(例えば3個)のねじ164によって固定される。
メインベース110に配設される支柱141は、基部110aから軸方向でモータ200から遠ざかる方向に突出する略円柱状の部分であり、基板120を支持する。支柱141の突出端には、基板120が、基板取付ねじ122を用いて固定される。図2では、基板120がエンコーダ内部を覆うように設けられている様子が示されている。基板120は、平面視で略矩形状を有し、軸方向に薄い板状のプリント配線基板である。基板120には、主に磁気センサ50、磁気センサ40、磁気センサ90及びマイコン121が実装されている。
またアブソリュートエンコーダ100-1は、主軸ギア101、ウォームギア部101c、ウォームホイール部102a、第1中間ギア102、第1ウォームギア部102b、ウォームホイール部105a、第1副軸ギア105、第2ウォームギア部102h、及びウォームホイール部133aを含む。またアブソリュートエンコーダ100-1は、第2中間ギア133、第4駆動歯車部133d、第4従動歯車部138a、第2副軸ギア138、永久磁石8、永久磁石9、永久磁石17、磁気センサ50、磁気センサ40、磁気センサ90、及びマイコン121を含む。
主軸ギア101は、モータ軸201の回転に従って回転し、モータ軸201の回転をウォームギア部101cに伝える。図6に示すように、主軸ギア101は、モータ軸201の外周に嵌合する第1筒状部101aと、ウォームギア部101cが形成される円盤部101bと、永久磁石9を保持する磁石保持部101dとを含む。磁石保持部101dは、円盤部101bの中央部、第1筒状部101aの上端面に設けられる円筒状の凹部形状を有する。第1筒状部101aと、円盤部101bと、磁石保持部101dとは、各中心軸が略一致するように一体に形成される。主軸ギア101は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。主軸ギア101は、例えばポリアセタール樹脂から形成されている。
ウォームギア部101cは、ウォームホイール部102aを駆動する第1駆動歯車の一例である。特に、ウォームギア部101cは、円盤部101bの外周に形成される条数=1のウォームギアである。ウォームギア部101cの回転軸線はモータ軸201の軸方向に延伸している。
図5に示すように、第1中間ギア102は、主軸ギア101の回転を、ウォームホイール部105a及び第2中間ギア133に伝えるギア部である。第1中間ギア102は、軸104によって基部110aに略平行に伸びる回転軸線Laの周りに軸支されている。第1中間ギア102は、その回転軸線Laの方向に延伸する略円筒形状の部材である。第1中間ギア102は、基部102cと、ウォームホイール部102aが形成される第1筒部102dと、第1ウォームギア部102bが形成される第2筒部102eと、第2ウォームギア部102hが形成される第3筒部102fとを含み、内部に貫通孔が形成され、この貫通孔に軸104が挿通されている。この軸104をメインベース110の基部110aに設けられた支持部110b及び支持部110cに形成された孔に挿通することで、第1中間ギア102を軸支している。また、軸104の支持部110b及び支持部110cより外側に突出した両端付近にはそれぞれ溝が設けられ、この溝に軸104の抜け止めのための止め輪107、及び止め輪108とが嵌め合わされ、軸104が抜ける事を防いでいる。
外壁部115aは、第1中間ギア102のモータ軸201とは反対側に設けられる。外壁部115cは、外壁部115aと平行に、第1中間ギア102のモータ軸201が配置される側に設けられる。第1中間ギア102は、その回転軸線Laが任意の方向に向くように配置されてもよい。第1中間ギア102の回転軸線Laは、平面視において、第1中間ギア102のモータ軸201とは反対側に設けられる外壁部115aの延伸方向に対して、5°から30°の範囲で傾斜して設けられてもよい。図5の例では第1中間ギア102の回転軸線Laは外壁部115aの延伸方向に対して20°傾斜している。換言すると、ケース115は、平面視において、第1中間ギア102の回転軸線Laに対して5°から30°の範囲で傾斜した方向に延在する外壁部115aを含んでいる。図5の例では、外壁部115aの延在方向と第1中間ギア102の回転軸線Laとの傾斜Dsは20°に設定されている。
実施の形態1では、第1中間ギア102の基部102cは円筒形状を有し、第1筒部102d、第2筒部102e、及び第3筒部102fは基部102cより大径の円筒形状を有する。また、第1中間ギア102の中央には貫通孔が形成されている。基部102cと、第1筒部102dと、第2筒部102eと、第3筒部102fと、貫通孔とは、各中心軸が略一致するように一体に形成される。第2筒部102e、第1筒部102d、及び第3筒部102fは、この順で互いに離れた位置に配置される。第1中間ギア102は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。実施の形態1では、第1中間ギア102は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
支持部110b及び支持部110cのそれぞれは、メインベース110の基部110aの一部を切り起こすことにより、基部110aからZ軸正方向に突き出る突形状の部材であり、第1中間ギア102の軸104が挿通する孔が形成されている。また、軸104の支持部110b及び支持部110cより飛び出た両端付近には溝が設けられ、この溝に軸104の抜け止めの為の止め輪107、及び止め輪108とが嵌め合わされ、軸104が抜ける事を防いでいる。このように構成されることによって、第1中間ギア102は回転軸線Laにおいて回転可能に支持される。
板バネ111について説明する。第1中間ギア102は、第1ウォームギア部102b及び第2ウォームギア部102hが各ウォームホイールを駆動することにより、第1中間ギア102の軸方向Tdに反力が作用し、軸方向Tdの位置が変動することがある。そこで、実施の形態1では、第1中間ギア102に付勢力を付与する板バネ111が設けられている。板バネ111は、第1中間ギア102の回転軸線La方向の付勢力を第1中間ギア102に付与することにより、軸方向Tdの位置変動を抑制する。板バネ111は、メインベース110の基部110aに取付けられる取付部111bと、取付部111bから延出して半球型突起102gに接触する摺動部111aと、を含む。取付部111bと、摺動部111aとは薄板状のスプリング材から形成され、摺動部111aの根元が途中で取付部111bに対して略直角に折曲げられている。このように板バネ111が第1中間ギア102の半球型突起102gに直接当接し押圧することで、第1中間ギア102を軸方向Tdに付勢する。また、メインベース110の支持部110cには第1中間ギア102の摺動部102iが当接し摺動する。これにより、第1中間ギア102の軸方向Tdの位置の変動を抑えることが可能となる。
実施の形態1では、第1副軸ギア105のウォームホイール部105aとかみ合った第1ウォームギア部102bが回転することによって第1副軸ギア105のウォームホイール部105aから第1中間ギア102が受ける反力の向きは、第2中間ギア133のウォームホイール部133aとかみ合った第2ウォームギア部102hが回転することによって第2中間ギア133のウォームホイール部133aから第1中間ギア102が受ける反力の向きとは逆に設定されている。つまり、各反力の第1中間ギア102の軸方向Tdの成分が互いに逆向きになるように、各ウォームギアの歯形状が設定されている。具体的には、各ウォームギアにおける歯の傾斜方向が、それぞれが第1中間ギア102に与える反力の軸方向Tdの成分の向きが互いに逆向きになるように設定されている。この場合、各ウォームギアから第1中間ギア102が受ける反力の軸方向Td成分の方向が同じ場合に比べて軸方向Tdの合成反力が小さくなるので、それに応じて板バネ111の付勢力を小さくすることが可能になる。これにより、第1中間ギア102の回転抵抗が減少して円滑に回転することができる。
上記の方法は主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのかみ合いによる摺動抵抗が比較的小さく、主軸ギア101の回転により第1中間ギア102に与える軸方向Tdの力が、第1副軸ギア105のウォームホイール部105aと、第2中間ギア133のウォームホイール部133aとから、第1中間ギア102が受ける反力に比べて比較的小さい場合に有効であるが、主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのかみ合いの摺動抵抗が比較的大きい場合には、下記の方法が有効となる。
図5において、主軸ギア101が右回転する場合、主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのかみ合いによる摺動抵抗によって、第1中間ギア102には軸方向Tdに対して右の力が働き、第1中間ギア102は右方向に移動しようとする。この時、上記に述べたような手法によって、第1中間ギア102の両端のウォームギアにより発生する軸方向Tdの力を相殺するように設定されていた場合、前述のような主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのかみ合いによる摺動抵抗によって、第1中間ギア102に働く右方向の力が相対的に大きくなる。この第1中間ギア102に働く右方向の力に抗して、第1中間ギア102が右方向に動く事を阻止する為には板バネ111の押圧力を大きくしなければならない。それにより、板バネ111の摺動部111aと、摺動部111aに当接し押圧されている第1中間ギア102の半球型突起102gとの摺動抵抗と、半球型突起102gの第1中間ギア102の逆方向端部に位置する摺動部102iと支持部110cとの摺動抵抗とが増え、第1中間ギア102の回転抵抗が大きくなる。
主軸ギア101が右回転した時に、第1副軸ギア105のウォームホイール部105aとかみ合った第1ウォームギア部102bが回転することによって、第1副軸ギア105のウォームホイール部105aから第1中間ギア102が受ける反力の向きと、第2中間ギア133のウォームホイール部133aとかみ合った第2ウォームギア部102hが回転することによって、第2中間ギア133のウォームホイール部133aから第1中間ギア102が受ける反力の向きを、双方ともに、第1中間ギア102を軸方向Tdに対して左に動かそうとする方向の力に設定することによって、前述の主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのかみ合いによる摺動抵抗によって、第1中間ギア102に働く右方向の力を小さくすることが可能となる。この事により板バネ111によって第1中間ギア102に与える付勢力を小さくすることが出来る。これにより第1中間ギア102の回転抵抗が減少して円滑に回転することができる。
一方、主軸ギア101が左回転した場合には、主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのかみ合いによる摺動抵抗によって、第1中間ギア102には軸方向Tdに対して左の力が働き、第1中間ギア102は左に動こうとする。この時、第1中間ギア102の両端にある第1ウォームギア部102b及び第2ウォームギア部102hが受ける反力は、ともに第1中間ギア102を右に動かそうとする力になる。よって、この場合にも、第1中間ギア102に働く左方向の力を小さくすることが可能となる。板バネ111によって第1中間ギア102に与える付勢力は、常に軸方向Tdに対して左向きの力なので、上記3箇所のギアのかみ合いによる第1中間ギア102に働く左方向の力が小さくなることによって、第1中間ギア102に加わる総合的な左向きの力も小さくなる。これにより、第1中間ギア102の図中左端の摺動部102iと、メインベース110の基部110aに設けられた支持部110cとの摺動による回転抵抗を小さくすることが出来る。
図5において、ウォームホイール部102aは、主軸ギア101のウォームギア部101cとかみ合う第1従動歯車の一例である。ウォームホイール部102aは、第1筒部102dの外周に形成される歯数=20のウォームホイールである。ウォームギア部101c及びウォームホイール部102aは第1ウォーム変速機構を構成する。ウォームホイール部102aの回転軸線はモータ軸201の軸方向に垂直な方向に延伸している。
主軸ギア101のウォームギア部101cの条数が1であり、第1中間ギア102のウォームホイール部102aの歯数が20である場合には、減速比は20である。すなわち、主軸ギア101が20回転すると第1中間ギア102は20÷20=1回転する。
第1ウォームギア部102bは、ウォームホイール部105aを駆動する第2駆動歯車の一例であり、かつ、第1中間ギア102のギア部である。特に、第1ウォームギア部102bは、第2筒部102eの外周に形成される条数=5のウォームギアである。第1ウォームギア部102bの回転軸線はモータ軸201の軸方向に垂直な方向に延伸している。
図5及び図7において、第1副軸ギア105は、モータ軸201の回転に従い、減速されて永久磁石8と一体となって回転する。第1副軸ギア105は、メインベース110の基部110aから略垂直に突出する軸106により軸支される円筒形状の軸受部105bと、ウォームホイール部105aが形成される円盤部105cと、永久磁石8を保持する保持部105dと、を含む平面視で略円形状の部材である。
図7において、円盤部105cは、軸受部105bの外周から半径方向に張出す円板形状を有する。実施の形態1では、円盤部105cは、軸受部105bの基部110aから遠い方の端部に寄った位置に設けられている。保持部105dは、円盤部105cの軸方向で基部110aから遠い方の端面に設けられる円筒状の凹部形状を有する。軸受部105bと、円盤部105cと、保持部105dと、は各中心軸が略一致するように一体に形成される。第1副軸ギア105は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。実施の形態1では、第1副軸ギア105は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
ウォームホイール部105aは、第1ウォームギア部102bがかみ合う第2従動歯車の一例である。特に、ウォームホイール部105aは、円盤部105cの外周に形成される歯数=25の歯車である。第1ウォームギア部102b及びウォームホイール部105aは第2ウォーム変速機構を構成する。ウォームホイール部105aの回転軸線はモータ軸201の軸方向に平行な方向に延伸している。
第1中間ギア102の第1ウォームギア部102bの条数が5であり、第1副軸ギア105のウォームホイール部105aの歯数が25である場合には、減速比は5である。すなわち、第1中間ギア102が5回転すると、第1副軸ギア105は1回転する。従って、主軸ギア101が100回転すると第1中間ギア102は100÷20=5回転し、第1副軸ギア105は5÷5=1回転する。第1副軸ギア105は永久磁石8と一体となって回転するので、主軸ギア101が100回転すると永久磁石8は1回転する。つまり、磁気センサ50は、主軸ギア101の100回転分の回転量を特定することができる。
このように構成されたアブソリュートエンコーダ100-1は、主軸ギア101の回転量を特定することができる。一例として、主軸ギア101が1回転したとき、第1副軸ギア105及び永久磁石8は1/100回転、すなわち3.6°回転する。このため、第1副軸ギア105の回転角度が3.6°以下であれば、主軸ギア101は1回転以内の回転量であると特定することができる。
図5において、第2ウォームギア部102hは、ウォームホイール部133aを駆動する第3駆動歯車の一例であり、かつ、第1中間ギア102のギア部である。特に、第2ウォームギア部102hは、第3筒部102fの外周に形成される条数=1のウォームギアである。第2ウォームギア部102hの回転軸線はモータ軸201の軸方向に垂直な方向に延伸している。
図5において、第2中間ギア133は、モータ軸201の回転に従って回転し、モータ軸201の回転を減速して第2副軸ギア138に伝える円盤状のギア部である。第2中間ギア133は、第2ウォームギア部102hと、第2副軸ギア138に設けられる第4従動歯車部138aとの間に設けられる。第4従動歯車部138aは、第4駆動歯車部133dとかみ合う。第2中間ギア133は、第3駆動歯車の第2ウォームギア部102hとかみ合うウォームホイール部133aと、第4従動歯車部138aを駆動する第4駆動歯車部133dとを有する。第2中間ギア133は、例えば、ポリアセタール樹脂で形成されている。第2中間ギア133は、平面視で略円形状の部材である。第2中間ギア133は、メインベース110の基部110aに軸支される軸受部133bと、ウォームホイール部133aが形成される張出部133cと、を含む。
図5において、第2中間ギア133を備えることにより、その分、後述する第2副軸ギア138を第2ウォームギア部102hから遠ざけた位置に配置することができる。このため、永久磁石9、永久磁石17の間の距離を長くして互いの漏れ磁束の影響を減らすことができる。また、第2中間ギア133を備えることにより、その分減速比を設定できる範囲が拡がり設計の自由度が向上する。
図8において、張出部133cは、軸受部133bの外周から半径方向に張出す円板形状を有する。実施の形態1では、張出部133cは、軸受部133bのメインベース110の基部110aから遠い方の端部に寄った位置に設けられている。第4駆動歯車部133dは、軸受部133bの張出部133cより基部110a側の領域の外周に形成される。軸受部133bと、張出部133cと、は各中心軸が略一致するように一体に形成される。
ウォームホイール部133aは、第2ウォームギア部102hにかみ合わされる第2中間ギア133のギア部である。特に、ウォームホイール部133aは、張出部133cの外周に形成される歯数=30のウォームホイールである。第2ウォームギア部102h及びウォームホイール部133aは第3ウォーム変速機構を構成する。ウォームホイール部133aの回転軸線はモータ軸201の軸方向に平行な方向に延伸している。
第1中間ギア102の第2ウォームギア部102hの条数が1であり、第2中間ギア133のウォームホイール部133aの歯数が30である場合には、減速比は30である。すなわち、第1中間ギア102が30回転すると、第2中間ギア133は1回転する。従って、主軸ギア101が600回転すると第1中間ギア102は600÷20=30回転し、第2中間ギア133は30÷30=1回転する。
第4駆動歯車部133dは、第4従動歯車部138aを駆動する伝達要素である。第4駆動歯車部133dは、主軸ギア101の第1副軸ギア105側とは反対側に設けられ、ウォームホイール部133aの回転に従って回転する。第4駆動歯車部133dは、軸受部133bの外周に形成される歯数=24の平歯車である。
図8において、第2副軸ギア138は、モータ軸201の回転に従って回転し、モータ軸201の回転を減速して永久磁石17に伝える、平面視で円形状のギア部である。第2副軸ギア138は、メインベース110の基部110aから略垂直に伸びる回転軸線周りに軸支されている。第2副軸ギア138は、メインベース110の基部110aに軸支される軸受部138bと、第4従動歯車部138aが形成される張出部138cと、永久磁石17を保持する磁石保持部138dと、を含む。軸受部138bは、メインベース110の基部110aから突出する軸139を、隙間を介して環囲する円筒形状を有する。
張出部138cは、軸受部138bの外周から半径方向に張出す円板形状を有する。実施の形態1では、張出部138cは、軸受部138bのメインベース110の基部110aに寄った位置に設けられている。磁石保持部138dは、軸受部138bの軸方向で基部110aから遠い方の端面に設けられる円筒状の凹部形状を有する。軸受部138bと、張出部138cと、磁石保持部138dと、は各中心軸が略一致するように一体に形成される。第2副軸ギア138は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。実施の形態1では、第2副軸ギア138は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
第4従動歯車部138aは、第4駆動歯車部133dに駆動される伝達要素である。第4従動歯車部138a及び第4駆動歯車部133dは、減速機構を構成する。特に、第4従動歯車部138aは、張出部138cの外周に形成される歯数=40の平歯車である。
第4駆動歯車部133dの歯数が24で、第4従動歯車部138aの歯数が40である場合は、減速比は40/24=5/3である。主軸ギア101が1000回転すると第1中間ギア102は1000÷20=50回転し、第2中間ギア133は50÷30=5/3回転する。従って、第2副軸ギア138は5/3÷5/3=1回転する。第2副軸ギア138は永久磁石17と一体となって回転するので、主軸ギア101が1000回転すると永久磁石17は1回転する。つまり、磁気センサ90は、主軸ギア101の1000回転分の回転量を特定することができる。
図5~図8において、永久磁石9は第1永久磁石であり、永久磁石8は第2永久磁石であり、永久磁石17は第3永久磁石である。永久磁石8、永久磁石9及び永久磁石17のそれぞれ(以下、各永久磁石と表記する)は軸方向に偏平な略円柱形状を有する。各永久磁石は、例えばフェライト系、Nd(ネオジム)-Fe(鉄)-B(ホウ素)系などの磁性材料から形成される。各永久磁石は、例えば樹脂バインダを含むゴム磁石、あるいは、ボンド磁石であってもよい。各永久磁石には磁極が設けられる。各永久磁石の磁化方向に制限はないが、実施の形態1では、図37、図38に示すように2極の磁極が各永久磁石の磁気センサに対向する端面に設けられている。各永久磁石の回転方向の磁束密度分布は台形波形状であってもよく、正弦波状や矩形波形状であってもよい。
各永久磁石は、各回転体の端部に形成された凹部に一部または全部が収容され、例えば接着やカシメ、圧入等により固定される。永久磁石8は第1副軸ギア105の保持部105dに接着固定されている。永久磁石9は、主軸ギア101の磁石保持部101dに接着固定されている。永久磁石17は、第2副軸ギア138の磁石保持部138dに接着固定されている。
各永久磁石の間の距離が短いと、互いに隣り合うマグネットの漏れ磁束の影響により磁気センサの検出誤差が大きくなる。そこで図5の例では、平面視において、永久磁石9と永久磁石8は、ケース115の外壁部115aに対して傾斜する見通し線Lm上に離隔して配置されている。見通し線Lmは、永久磁石8と永久磁石9とを結ぶ仮想線に等しい。永久磁石9と永久磁石17は、ケース115の外壁部115aに対して傾斜する見通し線Ln上に離して配置されている。見通し線Lnは、永久磁石17と永久磁石9とを結ぶ仮想線に等しい。実施例1においては、見通し線Lm、Lnを外壁部115aに対して傾斜させて設けているため、見通し線Lm、Lnが外壁部115aに平行な場合に比べて、各永久磁石の間の距離を長くすることができる。
磁気センサ50、磁気センサ40及び磁気センサ90のそれぞれ(以下、各磁気センサと表記する)は、各回転体の1回転に対応する0°~360°の範囲の絶対的な回転角を検知するセンサである。各磁気センサは検知した回転角に応じた信号(例えばデジタル信号)をマイコン121に出力する。各磁気センサは、一旦通電を停止して再通電をした場合にも、通電停止前と同じ回転角を出力する。このためバックアップ電源を備えない構成が可能である。
各磁気センサは、図4に示すように、基板120のメインベース110の基部110a側の面にはんだ付けや接着などの方法により同一平面上に固定されている。磁気センサ40は、主軸ギア101に設けた永久磁石9の端面と、一定の隙間を介して対向する位置になるように、基板120に固定される。磁気センサ40は、永久磁石9から発生する磁束の変化に対応する主軸ギア101の回転角度を検出する第1角度センサである。磁気センサ50は、第1副軸ギア105に設けた永久磁石8の端面と、一定の隙間を介して対向する位置になるように、基板120に固定される。磁気センサ50は、永久磁石8から発生する磁束の変化に対応する第1副軸ギア105の回転角度を検出する第2角度センサである。磁気センサ90は、第2副軸ギア138に設けた永久磁石17の端面と、一定の隙間を介して対向する位置になるように、基板120に固定される。磁気センサ90は、永久磁石17から発生する磁束の変化に対応する第2副軸ギア138の回転角度を検出する第3角度センサである。
各磁気センサには比較的分解能が高い磁気式角度センサを使用してもよい。磁気式角度センサは、それぞれの回転体の軸方向において、各永久磁石の磁極を含む端面と、一定の隙間を介して対向配置され、これら磁極の回転に基づいて対向する回転体の回転角を特定してデジタル信号を出力する。磁気式角度センサは、一例として、磁極を検知する検知素子と、この検知素子の出力に基づいてデジタル信号を出力する演算回路と、を含む。検知素子は、例えばホールエレメントやGMR(Giant Magneto Resistive)エレメントなどの磁界検知要素を複数(例えば4つ)含んでもよい。
演算回路は、例えば複数の検知素子の出力の差や比をキーとしてルックアップテーブルを用いてテーブル処理によって回転角を特定するようにしてもよい。この検知素子と演算回路とは一つのICチップ上に集積されてもよい。このICチップは薄型の直方体形状の外形を有する樹脂中に埋め込まれてもよい。各磁気センサは、不図示の配線部材を介して検知した各回転体の回転角に対応するデジタル信号である角度信号をマイコン121に出力する。例えば、各磁気センサは各回転体の回転角を複数ビット(例えば7ビット)のデジタル信号として出力する。
図9は、本発明の実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1が備えるマイコン121の機能構成を示す図である。マイコン121は、基板120のメインベース110の基部110a側の面にはんだ付けや接着などの方法により固定されている。マイコン121は、CPUで構成され、磁気センサ40、磁気センサ50及び磁気センサ90のそれぞれから出力される回転角度を表すデジタル信号を取得し、主軸ギア101の回転量を演算する。図9に示すマイコン121の各ブロックは、マイコン121としてのCPUがプログラムを実行することによって実現されるファンクション(機能)を表したものである。マイコン121の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。従って、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
マイコン121は、回転角取得部121p、回転角取得部121q、回転角取得部121r、テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び出力部121eを備える。回転角取得部121qは、磁気センサ40から出力された信号をもとに主軸ギア101の回転角度を示す角度情報である回転角度Aqを取得する。回転角取得部121pは、磁気センサ50から出力された信号をもとに第1副軸ギア105の回転角度を示す角度情報である回転角度Apを取得する。回転角取得部121rは、磁気センサ90で検知された第2副軸ギア138の回転角度を示す角度情報である回転角度Arを取得する。
テーブル処理部121bは、回転角度Apと、回転角度Apに対応する主軸ギア101の回転数とを格納した第1対応関係テーブルを参照して、取得した回転角度Apに対応する主軸ギア101の回転数を特定する。また、テーブル処理部121bは、回転角度Arと、回転角度Arに対応する主軸ギア101の回転数とを格納した第2対応関係テーブルを参照して、取得した回転角度Arに対応する主軸ギア101の回転数を特定する。
回転量特定部121cは、テーブル処理部121bによって特定された主軸ギア101の回転数と、取得した回転角度Aqとに応じて、主軸ギア101の複数回転にわたる第1回転量を特定する。出力部121eは、回転量特定部121cによって特定された主軸ギア101の複数回転にわたる回転量を、当該回転量を示す情報に変換して出力する。
このように構成された実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1の作用・効果を説明する。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1は、モータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、モータ軸201の回転に従って回転するウォームギア部101cと、ウォームギア部101cとかみ合うウォームホイール部102aと、ウォームホイール部102aの回転に従って回転する第1ウォームギア部102bと、第1ウォームギア部102bとかみ合うウォームホイール部105aと、ウォームホイール部105aの回転に従って回転する第1副軸ギア105と、第1副軸ギア105と一体に回転する永久磁石8と、永久磁石8の回転角を検知する磁気センサ50と、を備えている。この構成によれば、磁気センサ50の検知結果に応じてモータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定することができる。ウォームギア部101cと、ウォームギア部101cとかみ合うウォームホイール部102aとを含む第1ウォーム変速機構と、第1ウォームギア部102bと、第1ウォームギア部102bとかみ合うウォームホイール部105aとを含む第2ウォーム変速機構と、を備えるため、アブソリュートエンコーダ100-1は屈曲した伝達経路を構成して薄型化することができる。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1は、モータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、モータ軸201の回転に伴い第1減速比で回転する第1中間ギア102と、第1中間ギア102の回転に伴い第2減速比で回転する第1副軸ギア105と、第1副軸ギア105と一体に回転する永久磁石8と、永久磁石8の回転角を検知する磁気センサ50と、を備え、モータ軸201の回転軸線は、第1中間ギア102の回転軸線に対してねじれの位置にあり、第1副軸ギア105の回転軸線と平行に設定されている。この構成によれば、磁気センサ50の検知結果に応じてモータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定することができる。第1中間ギア102の回転軸線が、モータ軸201及び第1副軸ギア105の回転軸線に対してねじれの位置にあり正面視で直交するため、アブソリュートエンコーダ100-1は屈曲した伝達経路を構成して薄型化することができる。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1は、モータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、第1ウォーム変速機構を含み、モータ軸201の回転に伴い永久磁石8を回転させる減速機構と、永久磁石8の磁極に応じて永久磁石8の回転角を検知する磁気センサ50と、を備え、モータ軸201の回転軸線は、永久磁石8の回転軸線と平行に設定されている。この構成によれば、磁気センサ50の検知結果に応じてモータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定することができる。第1ウォーム変速機構を含み、モータ軸201の回転軸線と永久磁石8の回転軸線とが平行に設定されるため、アブソリュートエンコーダ100-1は屈曲した伝達経路を構成して薄型化することができる。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1は、モータ軸201の回転角を検知する磁気センサ40を備えている。この構成によれば、磁気センサ40の検知結果に応じてモータ軸201の回転角を特定することができる。磁気センサ40を備えない場合に比べて、アブソリュートエンコーダ100-1は特定可能なモータ軸201の回転角の分解能を向上することができる。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1では、ウォームホイール部102aの回転に従って回転する第2ウォームギア部102hと、第2ウォームギア部102hとかみ合うウォームホイール部133aと、ウォームホイール部133aの回転に従って回転する第2副軸ギア138と、第2副軸ギア138と一体に回転する永久磁石17と、永久磁石17の回転角を検知する磁気センサ90と、を備えている。この構成によれば、磁気センサ90の検知結果に応じてモータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定することができる。磁気センサ90を備えない場合に比べて、アブソリュートエンコーダ100-1は特定可能なモータ軸201の回転量の範囲を大きくすることができる。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1では、第1ウォームギア部102b及び第2ウォームギア部102hが設けられる第1中間ギア102を備え、第1ウォームギア部102bが回転することによって第1中間ギア102が受ける反力の向きは、第2ウォームギア部102hが回転することによって第1中間ギア102が受ける反力の向きとは逆に設定されている。この構成によれば、反力の方向が同じ場合に比べて両反力の合成反力を小さくすることができる。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1では、ウォームホイール部102aの外径はウォームギア部101cの外径より小さく設定されている。この構成によれば、ウォームホイール部102aの外径が大きい場合に比べて、薄型化が容易である。
ここで、例えば、主軸ギア101と第1副軸ギア105が互いに隣接して配置される場合、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれで発生した磁束の一部が、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれに対応していない磁気センサに影響を与える、いわゆる磁気干渉について述べる。
図32は、主軸ギア101(主軸ギア1)に設けられた永久磁石9の磁束を磁気センサ40で検出した波形(A)と、第1副軸ギア105(副軸ギア5)に設けられた永久磁石8の磁束を磁気センサ50で検出した波形(B)と、永久磁石8の一部の磁束が漏れ磁束として永久磁石9の磁束に重畳した状態を磁気センサ40で検出した磁気干渉波形(C)との概念を表した図である。縦軸は磁束を表し、横軸は主軸ギア101の回転角度を表す。このように、磁気センサ40においては、(A)の波形を検出することが望ましいところ、磁気干渉が発生した場合は、(C)に示すような波形となり、正確な波形を検出する事ができなくなる。
同様に、図33は、第1副軸ギア105(副軸ギア5)に設けられた永久磁石8の磁束を磁気センサ50で検出した波形(A)と、主軸ギア101(主軸ギア1)に設けられた永久磁石9の磁束を磁気センサ40で検出した波形(B)と、永久磁石9の一部の磁束が漏れ磁束として永久磁石8の磁束に重畳した状態を磁気センサ50で検出した磁気干渉波形(C)との概念を表した図である。縦軸は磁束を表し、横軸は第1副軸ギア105の回転角度を表す。このように、磁気センサ50においては、(A)の波形を検出することが望ましいところ、磁気干渉が発生した場合は、(C)に示すような波形となり、正確な波形を検出する事ができなくなる。また、主軸ギア101と第2副軸ギア138においても、図33(C)と同様に磁気干渉が発生するおそれがある。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1は、第1中間ギア102のモータ軸201とは反対側に配置される外壁部115aを含むケース115を備え、平面視において、第1中間ギア102の回転軸線Laは外壁部115aの延在方向に対して20°で傾斜している。この構成によれば、第1中間ギア102の回転軸線Laが傾斜していない場合に比べて、各永久磁石の配置直線の外壁部115aに対する傾斜を大きくすることができる。そのため、各永久磁石の間の距離を大きくすることができる。このように、それぞれの永久磁石間の距離を大きくすることによって、永久磁石8、永久磁石9及び永久磁石17のそれぞれで発生した磁束の一部が、永久磁石8、永久磁石9及び永久磁石17のそれぞれに対応していない磁気センサに影響を与える磁気干渉の発生を低減できる。例えば、第1副軸ギア105に設けられた永久磁石8で発生した磁束の変化を検出する事を本来の目的として設けられた磁気センサ50に、主軸ギア101に設けられた永久磁石9で発生した磁束の一部が、漏れ磁束として干渉することを低減できる。また、永久磁石9で発生した磁束の変化を検出する事を本来の目的として設けられた磁気センサ40に、第1副軸ギア105に設けられた永久磁石8で発生した磁束の一部が漏れ磁束として干渉することを低減できる。そのため、隣り合うマグネットの漏れ磁束の影響を低減することができる。
また実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1では、第2角度センサとモータ200との間、又は第3角度センサとモータ200との間に、鉄などの磁性体で構成される板状の部材であるメインベース110の基部110aが設けられている。すなわちモータ200から漏れ出た磁束に対して、基部110aが磁気シールドとして機能する。従って、モータ200から漏れ出た磁束が磁気センサ40などに到達し難くなる。その結果、基部110aが例えば透磁率が低い、アルミニウムなどの非磁性体で構成されている場合に比べて、磁気センサによるギアの回転角度又は回転量の検出精度の低下を低減できる。
ここで、主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとの間のバックラッシュは、主軸ギア101の回転を第1中間ギア102へ円滑に伝達するために不可欠である反面、その値が大きくなるほど回転角度の検出精度を低下させる要因になり得る。従って、バックラッシュは適切な値に設定する必要があり、従来では、例えば工具顕微鏡などを利用した手作業によるバックラッシュ調整が行われていた。しかしながら、アブソリュートエンコーダ100-1の寸法が小さくなる程、バックラッシュ調整は煩雑になる傾向がある。特に、実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1の寸法は、従来技術に比べて、ギアのサイズがより一層小さいため、アブソリュートエンコーダ100-1では、例えば0.01mm単位でのバックラッシュの調整が必要不可欠となり、熟練者であってもバックラッシュの調整に数時間要する場合がある。このようなことを鑑みて、アブソリュートエンコーダ100-1が備える基部110aは、以下のように構成することが望ましい。
図10は、実施の形態1の変形例に係るアブソリュートエンコーダ100-1が備えるメインベース110の基部110aを示す図である。以下では、メインベース110の基部110aを、単に基部110aと称する場合がある。基部110aの四辺は、Y-Z平面に平行な第1辺301と、第1辺301と平行な第2辺302と、X-Z平面に平行で第1辺301に隣接する第3辺303と、第3辺303と平行な第4辺304とにより構成される。第1辺301は、メインベース110のX軸正方向側に設けられる辺である。第2辺302は、メインベース110のX軸負方向側に設けられる辺である。第3辺303は、メインベース110のY軸正方向側に設けられる辺である。第4辺304は、メインベース110のY軸負方向側に設けられる辺である。基部110aには、開口部10-1と、一対の凹部150とが設けられる。開口部10-1は、基部110aをZ軸方向に貫通する穴である。開口部10-1には、開口部10-1を形作る壁面がウォームギア部101cと向き合うように、主軸ギア101が設けられる。
「AX」は、図3などに示されるモータ軸201の中心軸であり、当該中心軸は主軸ギア101の中心軸に等しい。一対の凹部150は、開口部10-1に貫通する主軸ギア101を挟むように、基部110aに設けられる。一対の凹部150の内の一方は、第3辺303に設けられており、第3辺303から中心軸AXに向かって窪む。一対の凹部150の内の他方は、第4辺304に設けられており、第4辺304から中心軸AXに向かって窪む。一対の凹部150のそれぞれは、2つの傾斜面151と、2つの傾斜面151が交わる頂部である谷部152とを有する。傾斜面151は、谷部152と第3辺303との間の壁面、又は谷部152と第4辺304との間の壁面である。
一点鎖線「VL」は、一対の凹部150のそれぞれの谷部152を結ぶ仮想直線である。一対の凹部150は、設計上、基部110aを平面視で見るとき、モータ軸201の中心軸AXが仮想直線VL上に位置するように設けられる。また、仮想直線VLは第1中間ギア102の回転軸線Laと直交する。すなわち、仮想直線VLは、モータ軸201の中心軸AXを通り、かつ、モータ軸201の中心軸AX及び第1中間ギア102の回転軸線Laと直交する線である。仮想直線VLと凹部150の傾斜面151とが成す角度θ1は、例えば45°である。基部110aでは、中心軸AXが仮想直線VL上に設けられる。
次に、図11から図13を参照し、図10に示される基部110aを用いたバックラッシュの調整方法を説明する。図11は、図10に示される主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのバックラッシュの調整方法を説明するためのフローチャートである。図12は、仮想直線VL上に配置される治具500及び治具600を示す図である。図13は、一対の凹部150にそれぞれ治具500及び治具600が嵌め込まれた状態を示す図である。なお、図12に示す凹部150の傾斜面151の角度θ1よりも、治具500及び治具600のそれぞれの先端の角度θ2の方が小さく形成されている。
バックラッシュを調整するときには、まず不図示のバックラッシュ調整治具本体に、モータ200が設置される(ステップS1)。ステップS1では、主軸ギア101のみ取り付けられたモータ200が、バックラッシュ調整治具本体に設置される。この時,調整治具のバックラッシュ調整方向が、モータ軸201の中心軸AXを通る仮想直線VLの方向になるように、モータの設置角度が図5で示す傾斜Dsだけ、バックラッシュ調整治具本体に角度をもって設置される。
その後、開口部10-1に主軸ギア101が挿入されるようにして、メインベース110の基部110aがモータ200に載置され、基部110aとモータ200の対向する面が密着される。この状態で、基部110aに形成された孔にねじが挿通され、基部110aがモータ200へ仮止めされる(ステップS2)。仮止めされた基部110aは、モータ200に対してX-Y平面上に移動可能である。
次に図13に示すように、基部110aが、仮想直線VL上に設けられる治具500の凸部501と治具600の凸部601とによって挟まれる(ステップS3)。治具500には、基部110aに設けられる一方の凹部150に嵌まり込む形状の凸部501が設けられている。凸部501の先端は、基部110aの第3辺303と向き合うように、仮想直線VL上に配置される。仮想直線VL上には、治具500と対を成して基部110aを挟み込む治具600が設けられる。治具600には、基部110aに設けられる他方の凹部150に嵌まり込む形状の凸部601が設けられている。凸部601の先端は、基部110aの第4辺304と向き合うように、仮想直線VL上に配置される。このように配置された治具500は、凸部501のR面取り加工が施された先端R2が、凹部150の谷部152の傾斜面151に接し、尚且つ、治具600の凸部601の先端R2が、凹部150の谷部152の傾斜面151に接するまで、仮想直線VL上に移動される。こうして、治具500と治具600によってメインベース110の基部110aは治具によって挟まれ、メインベース110と治具500及び治具600は一体となって移動可能となる(ステップS4)。なお、凹部150の谷部152の底はR面取り加工が施されており、凹部150の谷部152の底のR加工をR1とし、凸部501の先端のR加工をR2とした場合、R1の方がR2よりも小さい寸法となっている。
つぎに、治具700(治具500及び治具600)に挟まれて一体となったメインベース110の基部110aを、仮想直線VLと直交する方向、つまり図13に示す回転軸線La方向に調整し、モータ軸201の中心軸AXと仮想直線VLを一致させる。これにより、仮想直線VLと直交する方向における基部110aの位置が決まる(ステップ4)。
次に、治具700は、メインベース110に備えられた第1中間ギア102のウォームホイール部102aが主軸ギア101のウォームギア部101cと接触するまで仮想直線VL方向に移動される。これにより、主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとは、ギア同士のバックラッシュが無い、いわゆる底突き状態となる(ステップS5)。
このとき、中心軸AXと、治具500の凸部501の先端と、治具600の凸部601の先端と、一対の凹部150のそれぞれの谷部152とが、仮想直線VL上には配列された状態となる。
次に、治具700によって挟まれた基部110aが、治具600から治具500に向かう方向に微小な距離ずつ移動されることにより、バックラッシュ調整が行われる(ステップS6)。バックラッシュの調整が完了したとき、基部110aに形成された孔にねじが増し締めされることにより、バックラッシュ調整が完了する(ステップS7)。
以上に説明したように、板状部材である基部110aは、主軸ギア101のウォームギア部101cが貫通する開口部10-1と一対の凹部150とを有し、中心軸AXが、一対の凹部150のそれぞれの谷部152を結ぶ仮想直線VL上に設けられる。この構成により、バックラッシュ調整用の治具を利用して、例えば0.01mm単位でのバックラッシュの調整を容易に行うことが可能となる。従って、工具顕微鏡などを利用してバックラッシュ調整を行う必要がなくなる。特に、前述したバックラッシュ調整治具本体を、上記の手順に従って数値制御することにより、バックラッシュ調整治具本体にモータ200及び基部110aをセットするだけで、自動的にバックラッシュ調整を行うことも可能になる。その結果、アブソリュートエンコーダ100-1の製造時間が大幅に短縮される。また、工具顕微鏡などを利用してバックラッシュ調整が行われる場合に比べて、バックラッシュ調整量のばらつきが抑制されるため、アブソリュートエンコーダ100-1の品質の変動が抑制される。従って、アブソリュートエンコーダ100-1の歩留まりが向上し、アブソリュートエンコーダ100-1の製造コストを低減可能である。
<実施の形態2>
図14は、本発明の実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100-2がモータ200に取り付けられた状態を示す斜視図である。以下、実施の形態1と同様に、XYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な左右方向に対応し、Y軸方向は水平な前後方向に対応し、Z軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向及びZ軸方向はそれぞれX軸方向に直交する。X軸方向は左方向あるいは右方向と、Y軸方向は前方向あるいは後方向と、Z軸方向は上方向あるいは下方向と表記することがある。図14では、Z軸方向で上から視た状態を平面視と、Y軸方向で前から視た状態を正面視と、X軸方向で左右から視た状態を側面視という。このような方向の表記はアブソリュートエンコーダ100-2の使用姿勢を制限するものではなく、アブソリュートエンコーダ100-2は任意の姿勢で使用されうる。図14では、アブソリュートエンコーダ100-2のケース15の内側に設けられる部品が透過的に示される。なお、図面において歯部形状は省略している。
図15は、図14に示されるアブソリュートエンコーダ100-2からケース15及び取付ねじ16が取り外された状態を示す斜視図である。図15では、基板20の下面20-1に設けられる複数の部品が透過的に示される。図16は、図15に示されるアブソリュートエンコーダ100-2から基板20及び基板取付ねじ13が取り外された状態を示す斜視図である。図17は、図16に示されるアブソリュートエンコーダ100-2がモータ200に取り付けられた状態の斜視図から、モータ200及びねじ14が取り外された状態を示す斜視図である。図18は、図17に示されるメインベース10、中間ギア2などを平面視した状態を示す図である。図18には、アブソリュートエンコーダ100-2が備える複数の部品の内、主要な部品の配置が示される。図19は、図18に示されるアブソリュートエンコーダ100-2を、中間ギア2の中心を通り、かつ、X-Y平面に平行な面で切断した断面図である。
図20は、図19に示されるベアリング3が中間ギア2から外された状態を示す拡大部分断面図である。図20では、ベアリング3と中間ギア2に形成される圧入部2dとの配置関係を分かり易くするため、ベアリング3が、中間ギア2の圧入部2dから離れている。また図20では、ベアリング3とメインベース10の基部60に設けられる壁部80との配置関係を分かり易くするため、ベアリング3が、壁部80から離れている。
図21は、図18に示される主軸ギア1の中心を通り、中間ギア2の中心線に垂直な平面で図15に示されるアブソリュートエンコーダ100-2を切断した断面図である。ただし、基板20と磁気センサ40は断面にしていない。図21には、主軸ギア1への永久磁石9の取り付け状態と、モータ軸201への主軸ギア1の取り付け状態とが示される。また図21には、主軸ギア1のウォームギア部1dと中間ギア2のウォームホイール部2aとがかみ合っている状態が示される。図21によれば、主軸ギア1に設けられた永久磁石9の上面9aが、磁気センサ40からZ軸方向に一定距離離れた位置に存在していることが分かる。
図22は、図19に示される副軸ギア5の中心を通り、中間ギア2の中心線に垂直な平面で図15に示されるアブソリュートエンコーダ100-2を切断した断面図である。ただし、基板20と磁気センサ50は断面にしていない。図22には、ウォームホイール部5aとウォームギア部2bとがかみ合っている状態が示される。また図22には、マグネットホルダ6の軸部6bが2つのベアリング7で保持された状態と、マグネットホルダ6への永久磁石8の保持状態とが示される。また図22には、マグネットホルダ6に設けられるヘッド6cの径方向外側の表面が、ウォームギア部2bの歯先円から離れている状態が示される。また図22によれば、マグネットホルダ6に設けられた永久磁石8の表面8aが、磁気センサ50からZ軸方向に一定距離離れた位置に存在していることが分かる。また図22には、メインベース10のベアリングホルダー部10dの断面形状が示される。
図23は、図16に示される複数の部品の内、中間ギア2が除かれた状態を示す斜視図である。図24は、図23に示される壁部70からねじ12が取り外された状態と、ねじ12が取り外された後の板バネ11の状態と、板バネ11に向き合う板バネ取付面10eが設けられた壁部70とを示す斜視図である。ただし、モータ200と主軸ギア1は表示していない。
図25は、図18に示される基板位置決めピン10gの中心と、基板位置決めピン10jの中心とを通り、Z軸方向に平行な面で図15に示されるアブソリュートエンコーダ100-2を切断した断面図である。ただし、磁気センサ40は断面にしていない。
図26は、図15に示される基板20を下面20-1側から見た図である。図27は、図14の状態からモータ200を取り除き、メインベース10の下面10-2側から見た図である。メインベース10の下面10-2は、図24に示されるメインベース10の上面側とは反対側の面である。メインベース10の下面10-2は、モータ200と向き合う面でもある。図28は、図14に示されるケース15の斜視図である。
図29は、図16に示される基板位置決めピン10gの中心と、基板位置決めピン10jの中心とを通るZ軸方向に平行な面で図14に示されるアブソリュートエンコーダ100-2を切断した断面図である。ただし、モータ200と主軸ギア1及び、磁気センサ40は断面にしていない。図29では、ケース15に設けられたツメ15aが、メインベース10に設けられた凹部10aaに掛け合わされた状態と、ケース15に設けられたツメ15bが、メインベース10に設けられた凹部10abに掛け合わされた状態とが示される。図30は、図22に示される永久磁石8、マグネットホルダ6、副軸ギア5及びベアリング7の分解斜視図である。図31は、図21に示される永久磁石9、主軸ギア1及びモータ軸201の分解斜視図である。
以下では、図14から図31を参照してアブソリュートエンコーダ100-2の構成について詳細に説明する。アブソリュートエンコーダ100-2は、主軸ギア1、中間ギア2、ベアリング3、軸4、副軸ギア5、マグネットホルダ6、ベアリング7、永久磁石8、永久磁石9、メインベース10、板バネ11、ねじ12、基板取付ねじ13、及びねじ14、ケース15、取付ねじ16、基板20、マイコン21、双方向性ドライバ22、ラインドライバ23、コネクタ24、磁気センサ40、及び磁気センサ50を備える。
モータ200は、例えば、ステッピングモータ、DCブラシレスモータなどである。モータ200は、例えば、波動歯車装置などの減速機構を介して産業用などのロボットを駆動する駆動源として用いられるものである。モータ200はモータ軸201を備える。図21に示すように、モータ軸201の一端は、モータ200の筐体202からZ軸正方向に突き出ている。また、図14に示すように、モータ軸201の他端は、モータ200の筐体202からZ軸負方向に突き出ている。また、モータ軸201は主軸の一例である。
平面視したモータ200の外形形状は、例えば、正方形状である。モータ200の外形を構成する4つの辺のそれぞれの長さは、例えば、25mmである。モータ200の外形を構成する4つの辺の内、第1辺と、第1辺と平行な第2辺とは、互いにY軸と平行である。また、4つの辺の内、第1辺に隣接する第3辺と、第3辺と平行な第4辺とは、互いにX軸と平行である。また、モータ200に設けられるアブソリュートエンコーダ100-2は、平面視で25mm角のモータ200の外形形状に合わせて、25mm角である。
次に、アブソリュートエンコーダ100-2が備える複数の部品のそれぞれについて説明する。
図21に示すように、主軸ギア1は、モータ軸201と同軸に設けられる筒状部材である。主軸ギア1は、筒状の第1筒状部1aと、第1筒状部1aと同軸に第1筒状部1aのZ軸正方向側に設けられる筒状の第2筒状部1bとを備える。また主軸ギア1は、第2筒状部1bの径方向内側に設けられる第1筒状部1aと第2筒状部1bをつなぐ連通部1cと、第2筒状部1bの径方向外側に設けられるウォームギア部1dとを備える。このように連通部1cを形成することで、連通部1cが、モータ軸201へ主軸ギア1を圧入する際の空気の逃げ道として機能する。連通部1cの内径は、第1筒状部1aの内径及び第2筒状部1bの内径よりも小さい。連通部1cのZ軸負方向の端面である底面1eと、第1筒状部1aの内周面とに囲まれる空間は、主軸ギア1をモータ軸201の端部に固定するための圧入部1fである。圧入部1fは、第1筒状部1aのZ軸負方向側の端部からZ軸正方向側に向かって窪む窪みである。圧入部1fには、モータ軸201が圧入され、主軸ギア1はモータ軸201と一体となって回転する。ウォームギア部1dは、主軸ギア1のギア部である。
連通部1cのZ軸正方向の端面である底面1gと、第2筒状部1bの内周面とに囲まれる空間は、永久磁石9を固定するための磁石保持部1hである。磁石保持部1hは、第2筒状部1bのZ軸正方向側の端部からZ軸負方向側に向かって窪む窪みである。磁石保持部1hには、永久磁石9が圧入されている。磁石保持部1hに圧入された永久磁石9は、外周面が第2筒状部1bの内周面に接し、下面9bが底面1gに接する。これにより、永久磁石9の軸方向の位置決めがなされると共に、軸方向と直交する方向の位置決めがなされる。永久磁石9の軸方向は、モータ軸201の中心軸方向に等しい。
図17から図19、及び図21に示すように、ウォームギア部1dは、螺旋状に形成された歯部により構成され、中間ギア2のウォームホイール部2aとかみ合う。ウォームホイール部2aは中間ギア2のギア部である。図21では歯部の形状の図示が省略されている。ウォームギア部1dは、例えば、ポリアセタール樹脂で形成されている。ウォームギア部1dは、第1駆動歯車の一例である。
図17から図20などに示すように、中間ギア2は、メインベース10の上面上で、軸4により軸支されている。中間ギア2の中心軸は、X-Y平面に平行である。また中間ギア2の中心軸は、平面視でX軸及びY軸のそれぞれとは平行ではない。すなわち、中間ギア2の中心軸方向は、X軸及びY軸のそれぞれが伸びる方向に対して斜めである。中間ギア2の中心軸方向が、X軸及びY軸のそれぞれが伸びる方向に対して斜めであることは、中間ギア2の中心軸がメインベース10の四辺に対して斜めに伸びていることを意味する。図17及び図18に示すように、メインベース10の四辺は、Y-Z平面に平行な第1辺301と、第1辺301と平行な第2辺302と、X-Z平面に平行で第1辺301に隣接する第3辺303と、第3辺303と平行な第4辺304とにより構成される。第1辺301は、メインベース10のX軸正方向側に設けられる辺である。第2辺302は、メインベース10のX軸負方向側に設けられる辺である。第3辺303は、メインベース10のY軸正方向側に設けられる辺である。第4辺304は、メインベース10のY軸負方向側に設けられる辺である。
アブソリュートエンコーダ100-2を平面視した寸法は、一例として25mm角のモータ200の寸法に合わせられている。そのため、X-Y平面に平行に配置される中間ギア2が、メインベース10の四辺に対して斜めに伸びるように設けられることによって、水平方向へのアブソリュートエンコーダ100-2の寸法を、小さくすることができる。水平方向は、モータ軸201の中心軸と直交する方向に等しく、またX-Y平面と平行な方向に等しい。
図16から図20などに示すように、中間ギア2は、ウォームホイール部2a、ウォームギア部2b、軸受部2c、圧入部2d、摺動部2e、底面2f、及び貫通孔2gを有する。中間ギア2は、中心軸に沿って貫通する貫通孔2gの内部に、軸4が挿通される円筒状の部材である。貫通孔2gは、中間ギア2の内周面によって囲まれる空間である。中間ギア2は、金属、樹脂などで一体的に成型された部材であり、ここでは一例として、ポリアセタール樹脂で形成されている。
ウォームホイール部2aは、主軸ギア1のウォームギア部1dがかみ合う歯車である。ウォームホイール部2aは、第1従動歯車の一例であり、かつ、中間ギア2のギア部である。ウォームホイール部2aは、中間ギア2の軸方向において、中間ギア2の軸方向の中央寄りの箇所に設けられている。またウォームホイール部2aは、中間ギア2の円筒部の外周部に設けられる複数の歯によって構成される。
ウォームホイール部2aの外径は、ウォームギア部1dの外径よりも小さい。ウォームホイール部2aの中心軸は、メインベース10の上面と平行であるため、ウォームホイール部2aの外径が小さくなることにより、アブソリュートエンコーダ100-2のZ軸方向(高さ方向)における小型化が可能である。
ウォームギア部2bは、螺旋状に形成された歯部によって構成され、ウォームホイール部2aと同軸上に隣接して設けられる。またウォームギア部2bは、中間ギア2の円筒部の外周部に設けられている。ウォームギア部2bが、副軸ギア5に設けられたウォームホイール部5aとかみ合うことによって、中間ギア2の回転力が副軸ギア5に伝達される。ウォームギア部2bは、第2駆動歯車の一例であり、かつ、中間ギア2のギア部である。ウォームホイール部5aは、副軸ギア5のギア部である。ウォームホイール部5aの中心線とウォームギア部2bの中心線とは、ウォームホイール部5aの中心線に垂直、かつ、ウォームギア部2bの中心線に垂直な方向から見たとき、互いに直交している。
ウォームギア部2bの外径は、アブソリュートエンコーダ100-2のZ軸方向(高さ方向)における小型化を可能にするために、可能な範囲で小さい値に設定されている。
図19に示すように、軸受部2cは、中間ギア2の圧入部2d側とは反対側、すなわち中間ギア2の摺動部2e側において、中間ギア2の径方向内側の内周面に設けられている。軸受部2cには軸4が摺動可能に挿通され、中間ギア2は、軸4に回転可能に支持されている。
圧入部2dは、ウォームギア部2bの内側において、中間ギア2の端面から中間ギア2の軸方向Tdの中央に向かって窪む窪みであり、貫通孔2gに連通している。圧入部2dは、貫通孔2gの端部の開口径を大きくした部分と解釈することもできる。圧入部2dには、ベアリング3の外輪3aが圧入され、固定されている。
図17から図19、図23、図24などに示すように、中間ギア2の摺動部2eは、中間ギア2の一端側、すなわち中間ギア2の軸方向Tdにおけるウォームギア部2b側とは反対側に設けられる。中間ギア2の摺動部2eは、板バネ11の摺動部11aに当接する。板バネ11は、弾性部材の一例であり、例えば金属製である。板バネ11の摺動部11aは、板バネ11の基部11dから二股状に分かれた2つの分岐体で構成される。板バネ11の基部11dは、板バネ11の全体の内、取付部11bと摺動部11aとの間に設けられる板状の部材である。
板バネ11の摺動部11aを構成する2つの分岐体の間には、軸4の直径より大きな隙間が形成されている。そのため、2つの分岐体は軸4を跨ぎ、軸4と接触しないように板バネ11の取付部11bが、メインベース10の壁部72に配設された板バネ取付面10eへ、ねじ12によって固定される。
板バネ11の摺動部11aは、中間ギア2が組み付けられた後に中間ギア2の摺動部2eと向き合う位置に設けられる。中間ギア2の摺動部2eは、板バネ11の摺動部11aに当接し押圧されることによって、軸4の中心軸に沿って、軸4の一端4a側から軸4の他端4b側に向かう方向に付勢される。この状態で中間ギア2が回転したとき、中間ギア2の摺動部2eは、板バネ11の摺動部11aと当接しながら摺動する。
中間ギア2の底面2fは、圧入部2dの隣に位置しており、ベアリング3の外輪3aの側面3cと接する。外輪3aは、外輪3aの側面3cが底面2fに接するまで、圧入部2dに圧入される。
中間ギア2の貫通孔2gは、軸受部2cから圧入部2dに向かって、中間ギア2の中心軸に沿って貫通しており、軸4と同軸上に配置されている。貫通孔2gの内径は、軸4の外径よりも大きいため、貫通孔2gと軸4の外周面との間には空間が確保されている。
図19及び図20に示すように、ベアリング3は、外輪3a、内輪3b、側面3c、及び側面3dを有する。ベアリング3の側面3cは、図19に矢印で示す軸4の軸方向Tdにおける外輪3aの側面であり、ベアリング3の側面3dは、当該方向における内輪3bの側面である。なお、本発明の実施の形態においては、中間ギア2または軸4の(中心)軸方向についてTdと記す。
ベアリング3の外輪3aは、圧入部2dに圧入されて固定されており、側面3cは、底面2fに接して固定されている。内輪3bの内側には軸4が挿入されている。図19に示すように内輪3bの側面3dは、メインベース10の壁部80の当接面10cに当接している。当接面10cは、中間ギア2の軸方向Tdの位置を規定している。前述のように、中間ギア2は、板バネ11によって、軸4の一端4aから軸4の他端4b側に向かう軸方向Tdに付勢されているため、中間ギア2の底面2fに接しているベアリング3の外輪3aの側面3cも同方向に付勢されている。これにより、ベアリング3の内輪3bも同方向に付勢されて、ベアリング3の内輪3bの側面3dが壁部80の当接面10cに当接する。その結果、付勢力が壁部80の当接面10cに伝えられ、中間ギア2は、軸4の軸方向Tdに安定して支持される。付勢力の詳細については後述する。
ベアリング3の外輪3aは、内輪3bに対して回転自在に設けられている。このため、中間ギア2は、図19に示される中間ギア2の軸受部2cとベアリング3との2箇所で、軸4によって回転自在に支持されている。なお軸4は、例えば、ステンレス鋼で形成される。
図19に示すように、壁部70及び壁部80は、軸4を介して中間ギア2を回転自在に保持する保持部の一例である。壁部80は、壁部70と対をなすように、基部60の上面に一体的に設けられ、基部60の上面からZ軸正方向に伸びる。壁部80は、平面視で、基部60の上面全体の内、X軸方向の中央よりも第2辺302側、かつ、Y軸方向の中央よりも第3辺303側の領域に設けられる。また壁部80は、当該領域の内、第2辺302寄りの位置に設けられると共に、Y軸方向の中央寄りに設けられる。壁部70、壁部80及び軸4は、中間ギア2を回転自在に保持する保持部として機能する。軸4は、円柱状の部材であり、一端4aと他端4bを有する。軸4の他端4bは、メインベース10の壁部80に形成された孔10bに圧入された上で、固定されている。一方、軸4の一端4aは、壁部70に形成された孔10aに挿入された上で位置決めされていればよく、軸4の一端4aが孔10aへ圧入される必要はない。このように軸4の一端4aが孔10aに圧入ではなく挿入されることによって、軸4の一端4aが孔10aに圧入される場合に比べて、軸4の組み立てが容易になる。
図18などに示すように、アブソリュートエンコーダ100-2では、副軸ギア5は、中間ギア2の主軸ギア1側とは反対側に設けられている。例えば、副軸ギア5は、メインベース10の四辺に囲まれる領域の内、メインベース10の角部に近い領域に配置される。当該角部は、例えば、図18に示される第2辺302と第3辺303とが交わる部分である。このように、副軸ギア5と主軸ギア1とは、メインベース10上の限られた領域を利用して、中間ギア2を挟むように配置されている。これにより、副軸ギア5と主軸ギア1とが中間ギア2を挟むことなく互いに隣接して配置される場合に比べて、副軸ギア5から主軸ギア1までの距離を広げることが可能となる。
磁気センサ40は、主軸ギア1と共に回転する永久磁石9の回転による永久磁石9が発生する磁束の変化を検出することにより、対応する主軸ギア1の回転角度を検出する事が出来る。一方、磁気センサ50は、副軸ギア5と共に回転する永久磁石8の回転による永久磁石8が発生する磁束の変化を検出することにより、対応する副軸ギア5の回転角度を検出する事が出来る。
ここで、例えば、主軸ギア1と副軸ギア5が互いに隣接して配置される場合、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれで発生した磁束の一部が、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれに対応していない磁気センサに影響を与える、いわゆる磁気干渉について述べる。
図32は、主軸ギア1を回転した時に、主軸ギア1に設けられた永久磁石9の磁束を磁気センサ40で検出した波形(A)と、副軸ギア5に設けられた永久磁石8の磁束を磁気センサ50で検出した波形(B)と、永久磁石8の一部の磁束が漏れ磁束として永久磁石9の磁束に重畳した状態を磁気センサ40で検出した磁気干渉波形(C)との概念を表した図である。縦軸は磁束を表し、横軸は主軸ギア1の回転角度を表す。このように、磁気センサ40においては、(A)の波形を検出することが望ましいところ、磁気干渉が発生した場合は、(C)に示すような波形となり、正確な波形を検出する事ができなくなる。
同様に、図33は、主軸ギア1を回転した時に、副軸ギア5に設けられた永久磁石8の磁束を磁気センサ50で検出した波形(A)と、主軸ギア1に設けられた永久磁石9の磁束を磁気センサ40で検出した波形(B)と、永久磁石9の一部の磁束が漏れ磁束として永久磁石8の磁束に重畳した状態を磁気センサ50で検出した磁気干渉波形(C)との概念を表した図である。縦軸は磁束を表し、横軸は副軸ギア5の回転角度を表す。このように、磁気センサ50においては、(A)の波形を検出することが望ましいところ、磁気干渉が発生した場合は、(C)に示すような波形となり、正確な波形を検出する事ができなくなる。
従って、実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100-2によれば、主軸ギア1及び永久磁石9と、副軸ギア5及び永久磁石8とが、中間ギア2を挟んで互いに距離をおいて配置されていることから、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれで発生した磁束の一部が、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれに対応していない磁気センサに影響を与える磁気干渉の発生を低減できる。例えば、副軸ギア5に設けられた永久磁石8で発生した磁束の変化を検出する事を本来の目的として設けられた磁気センサ50に、主軸ギア1に設けられた永久磁石9で発生した磁束の一部が、漏れ磁束として干渉することを低減できる。また、永久磁石9で発生した磁束の変化を検出する事を本来の目的として設けられた磁気センサ40に、副軸ギア5に設けられた永久磁石8で発生した磁束の一部が漏れ磁束として干渉することを低減できる。
このように、実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100-2によれば、アブソリュートエンコーダ100-2を平面視したときの寸法を相対的に小さくしながら、磁気センサ50による副軸ギア5の回転角度又は回転量の検出精度の低下を防ぐことができる。またアブソリュートエンコーダ100-2によれば、アブソリュートエンコーダ100-2を平面視したときの寸法を相対的に小さくしながら、磁気センサ40による主軸ギア1の回転角度又は回転量の検出精度の低下を防ぐことができる。
図22に示すように、副軸ギア5は、マグネットホルダ6の軸部6bに圧入されて固定される円筒状の部材である。副軸ギア5は、ウォームホイール部5aと貫通孔5bとを有する。副軸ギア5は、金属又は樹脂で一体的に成型された部材であり、ここでは一例として、ポリアセタール樹脂で形成されている。
ウォームホイール部5aは、ウォームギア部2bがかみ合う歯車である。ウォームホイール部5aは、第2従動歯車の一例である。ウォームホイール部5aは、副軸ギア5の円筒部の外周部に設けられる複数の歯によって構成される。図17において、中間ギア2が回転することによって、中間ギア2の回転力は、ウォームギア部2bとウォームホイール部5aを介して、副軸ギア5に伝達される。
貫通孔5bは、円筒状の副軸ギア5の中心軸に沿って貫通する孔である。貫通孔5bには、マグネットホルダ6の軸部6bが圧入され、副軸ギア5はマグネットホルダ6と一体となって回転する。
図22、及び図30に示すように、マグネットホルダ6は、マグネット保持部6a、軸部6b、及びヘッド6cを有する。マグネットホルダ6は、金属又は樹脂で一体的に成型された部材であり、ここでは一例として、非磁性のステンレス鋼で形成されている。
メインベース10に形成されたベアリングホルダー部10dの内周面10dcに、2つのベアリング7の外輪7aが圧入されている。なお、2つのベアリング7のそれぞれは、外輪7a及び内輪7bを有している。
マグネットホルダ6の軸部6bは円柱状の部材であり、副軸ギア5の貫通孔5bに圧入され、軸部6bの下部は、2つのベアリング7の内輪7bに挿入されている。よって、マグネットホルダ6は、2つのベアリング7によってメインベース10に対して軸支され、副軸ギア5と一体となって回転する。
また、マグネットホルダ6の上端にはヘッド6cが設けられる。ヘッド6cは、有底円筒状の部材である。ヘッド6cにはマグネット保持部6aが形成される。マグネット保持部6aは、ヘッド6cの上端面から下方向側に向かって窪む窪みである。マグネット保持部6aに配置された永久磁石8の外周面は、ヘッド6cの内周面に接する。これにより、ヘッド6cのマグネット保持部6aに永久磁石8が固定される。
メインベース10に形成されたベアリングホルダー部10dに配設された2つのベアリング7によってマグネットホルダ6の軸部6bが軸支されることで、マグネットホルダ6の傾きを防止することができる。よって、2つのベアリング7は、軸部6bの軸方向においてできるだけ距離を離して配置すると、よりマグネットホルダ6の傾きを防止する効果が望める。
図22に示すように、ベアリングホルダー部10dの上部10dbは、ベアリングホルダー部10d全体の内、Z軸方向におけるベアリングホルダー部10dの上側領域である。ベアリングホルダー部10dの上部10dbの内側には、1つのベアリング7が設けられている。また、ベアリングホルダー部10dの下部10daは、ベアリングホルダー部10d全体の内、Z軸方向におけるベアリングホルダー部10dの下側領域である。ベアリングホルダー部10dの下部10daの内側には、1つのベアリング7が設けられている。
図22に示すように、モータ200の筐体202の一部には、切り欠き部202aが設けられている。切り欠き部202aは、Z軸負方向側に向かって窪む窪みである。メインベース10には、ベアリングホルダー部10dの下部10daが突出して設けられているため、モータ200の筐体202に切り欠き部202aを設けることによって、互いの干渉を防いでいる。ベアリングホルダー部10dの下部10daは、ベアリングホルダー部10d全体の内、Z軸方向におけるベアリングホルダー部10dの下側領域である。ベアリングホルダー部10dの下部10daの内側には、1つのベアリング7が設けられている。このように、モータ200の筐体202に切り欠き部202aを設けることによって、切り欠き部202aが設けられていない場合に比べ、2つのベアリング7のZ軸方向の距離を離して設置することを可能としている。また、ベアリングホルダー部10dの上部10dbは、ベアリングホルダー部10d全体の内、Z軸方向におけるベアリングホルダー部10dの上側領域である。
マグネットホルダ6の軸部6bの軸方向において、よりマグネット保持部6a及び永久磁石8に近い位置にベアリング7を設置すると、マグネットホルダ6及び永久磁石8の回転時の軸ブレを低減することができる。一方、ベアリングホルダー部10dの上部10dbの外径は中間ギア2に近接していることから、ベアリングホルダー部10dの上部10dbに斜面を形成することで中間ギア2の歯先円との干渉を避けつつ、よりマグネット保持部6a及び永久磁石8に近い位置にベアリング7を設置することを可能としている。
磁気センサ40は、主軸ギア1と共に回転する永久磁石9の回転による永久磁石9が発生する磁束の変化を検出することにより、対応する主軸ギア1の回転角度を検出する事が出来る。一方、磁気センサ50は、副軸ギア5と共に回転する永久磁石8の回転による永久磁石8が発生する磁束の変化を検出することにより、対応する副軸ギア5の回転角度を検出する事が出来る。
図22、図30に示すように永久磁石8は、表面8aを有する。永久磁石8は略円柱状であり、永久磁石8の中心軸MC1(永久磁石8の中心を表す軸、又は、磁極の境界の中心を通る軸)は、マグネットホルダ6の中心軸HC1、副軸ギア5の中心軸GC1及びベアリング7の中心軸BCと一致している。永久磁石8の表面8aは、磁気センサ50の表面50aから一定距離を隔てて、向き合っている。このように各中心軸を一致させることで、より高精度に回転角又は回転量を検出することが可能となる。
なお、本実施形態においては、図30に示すように、永久磁石8の2つの磁極(N/S)は、永久磁石8の中心軸MC1に対して垂直な平面(X-Y平面)内で隣り合うように形成される。すなわち、中心軸MC1において、永久磁石8の回転中心と磁極の境界の中心が一致することが望ましい。これにより、さらに回転角又は回転量の検出精度が向上する。
図21、図31に示すように、永久磁石9は、主軸ギア1の磁石保持部1hの内部に圧入される略円柱状の永久磁石であり、上面9a及び下面9bを有する。上面9aは、磁気センサ40の表面40aから一定距離を隔てて、向き合っている。下面9bは、主軸ギア1の磁石保持部1hの底面1gと接し、主軸ギア1の中心軸GC2方向における位置(Z軸方向における位置)を規定する。永久磁石9の中心軸MC2(永久磁石9の中心を表す軸、又は、磁極の境界の中心を通る軸)は、主軸ギア1の中心軸GC2及びモータ軸201の中心軸RCと一致している。このように各中心軸を一致させることで、より高精度に回転角又は回転量を検出することが可能となる。
なお、本実施形態においては、図31に示すように、永久磁石9の2つの磁極(N/S)は、永久磁石9の中心軸MC2に対して垂直な平面(X-Y平面)内で隣り合うように形成されることが望ましい。これにより、さらに回転角又は回転量の検出精度が向上する。
なお、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれは、例えばフェライト系、Nd(ネオジム)-Fe(鉄)-B(ホウ素)系などの磁性材料から形成される。永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれは、例えば樹脂バインダを含むゴム磁石、ボンド磁石などであってもよい。
図26には、基板20に形成される複数の貫通孔である位置決め孔20a、位置決め孔20b、孔20c、孔20d、及び孔20eが示される。位置決め孔20aを形作る壁面の形状は、例えば円である。位置決め孔20bを形作る壁面の形状は、例えば楕円である。孔20c、孔20d、及び孔20eのそれぞれは、図15に示す基板取付ねじ13によって、基板20を、メインベース10へ固定するための貫通孔である。孔20c、孔20d及び孔20eのそれぞれを形作る壁面の形状は、例えば円である。孔20c、孔20d及び孔20eのそれぞれを形作る壁面の直径は、基板取付ねじ13の雄ねじ部の直径よりも大きく、かつ、基板取付ねじ13の頭部の直径よりも小さい。
図16から図19、図23から図25などに示すように、メインベース10は、孔10a、孔10b、当接面10c、ベアリングホルダー部10d、板バネ取付面10e、基部60、壁部70、壁部80、開口部10-1、及びねじ孔10fを有する。メインベース10は、基板位置決めピン10g、基板位置決めピン10j、先端部10h、先端部10k、柱10m、柱10q、柱10s、ねじ孔10u、ねじ孔10v、及びねじ孔10wを有する。基板位置決めピン10g、基板位置決めピン10j、柱10m、柱10q、及び柱10sは、柱状部材の一例である。メインベース10からZ軸方向に伸びる基板位置決めピン10gの先端部10hと、基板位置決めピン10gの基部10g1との間には、段差部10iが形成されている。基板位置決めピン10gの先端部10hが、基板20に形成される位置決め孔20aに挿入されたとき、基板20の下面20-1と段差部10iとの間には、隙間が形成される。同様に、メインベース10からZ軸方向に伸びる基板位置決めピン10jの先端部10kと、基板位置決めピン10jの基部10j1との間には、段差部10lが形成されている。基板位置決めピン10jの先端部10kが、基板20に形成される位置決め孔20bに挿入されたとき、基板20の下面20-1と段差部10lとの間には、隙間が形成される。このように、2本の基板位置決めピン10g,10jを用いた場合、基板20のZ軸方向と直交する方向の位置は規定される。しかしながら、段差部10i及び段差部10lのそれぞれから基板20までの間に隙間が形成されるため、2本の基板位置決めピン10g,10jによっては、基板20のZ軸方向の位置が規定されることはない。
メインベース10の基部60は、例えば、一体的に成型されたアルミダイキャストの部材であり、平面視で略正方形の板状の部材である。基部60は、プレート部の一例である。基部60は、モータ200の上面に取り付けられる。
図16に示す開口部10-1は、基部60を厚さ方向(Z軸方向)に貫通している。開口部10-1には、主軸ギア1が挿通される。開口部10-1は、第1貫通孔の一例である。
図17、図18、図23、図24などに示すように、壁部70は、壁部71及び壁部72を有する。壁部70は、軸4を支持すると共に板バネ11を固定する機能を有する。壁部71は、基部60の上面に一体的に設けられ、基部60からZ軸正方向に伸びる。壁部70は、平面視で、基部60の上面全体の内、X軸方向の中央よりも第1辺301側、かつ、Y軸方向の中央よりも第4辺304側の領域に設けられる。壁部71は、X軸正方向側に位置する取付面10adと、X軸方向に貫通するねじ孔10aeとを有する。図14、図27、及び図28に示すように、取付ねじ16が、ケース15の孔15dに挿通され、ねじ孔10aeにねじ留めされることによって、壁部71の取付面10adにケース15の内面が当接し固定される。
図18に示すように、壁部72は、平面視で、基部60の上面全体の内、X軸方向の中央よりも第1辺301側、かつ、Y軸方向の中央よりも第3辺303側の領域に設けられる。壁部72は、壁部71に接続されると共に、壁部71から第3辺303の中央付近に向かって伸びる。壁部72の第3辺303側の端部は、柱10sに接続される。壁部72に接続される柱10sは、メインベース10のX軸方向の中央寄りの位置に設けられると共に、メインベース10の第3辺303寄りの位置に設けられる。このように、壁部72は、壁部71から柱10sに向かって伸びる。すなわち、壁部72は、平面視で、X軸及びY軸のそれぞれに対して、斜めの方向に伸びる。
図24に示すように、板バネ11の取付部11bに形成された孔11cにねじ12が挿通され、メインベース10の壁部72に形成されたねじ孔10fへ、ねじ留めされる。これにより、板バネ11の取付部11bが、壁部72に形成された板バネ取付面10eに当接して、板バネ11が壁部72に固定される。壁部72は、板バネ11が固定される固定部として機能する。この時、図18及び図19に示すように、軸4が挿入された中間ギア2の摺動部2eには、板バネ11の摺動部11aが当接する。
図19に示される取付角度θについて説明する。主軸ギア1のウォームギア部1dは、ウォームホイール部2aにかみ合わされているため、主軸ギア1のウォームギア部1dの回転に伴って、中間ギア2には、軸4の他端4bから軸4の一端4aに向かう方向、又は、軸4の一端4aから軸4の他端4bに向かう方向に、第1スラスト力が発生する。さらに、ウォームギア部2bの、副軸ギア5のウォームホイール部5aへのかみ合いによっても、中間ギア2には、軸4の他端4bから軸4の一端4aに向かう方向、又は、軸4の一端4aから軸4の他端4bに向かう方向に、第2スラスト力が発生する。このように、第1スラスト力及び第2スラスト力が発生した場合でも、主軸ギア1のウォームギア部1dの回転量を副軸ギア5のウォームホイール部5aへ正確に伝達するためには、軸4の軸方向Tdへの中間ギア2の移動を抑制する必要がある。板バネ11は、軸4の一端4aから軸4の他端4bに向かう方向に、中間ギア2に付勢力を与える。板バネ11により発生する付勢力は、軸4の他端4bから軸4の一端4aに向かう方向の第1スラスト力と第2スラスト力とを合計した力よりも、高い値に設定されている。
図19において、取付角度θは、軸4に中間ギア2が挿入されていない状態で、メインベース10の壁部72へ固定された板バネ11の基部11dと、軸4の一端4aが挿入される壁部72の孔10aが形成された面の中間ギア2側の側面73とが成す角度に等しい。なお、本実施の形態における側面73と軸4は直交する角度となっているが、この限りでなくとも良い。この取付角度θは、中間ギア2を軸4へ組み込んだ際、中間ギア2の摺動部2eに板バネ11の摺動部11aが当接して板バネ11が所定量たわむことで、中間ギア2に対して軸4の軸方向Tdへの付勢力を適切に与えるような角度に設定されている。よって、板バネ11が軸4の一端4a側から軸4の他端4b側に向かう方向へ中間ギア2を付勢することによって、軸4の他端4bから軸4の一端4aに向かう方向の第1スラスト力と第2スラスト力とを合計した力による中間ギア2の移動が抑制される。その結果、副軸ギア5の回転精度の低下を防ぐことができる。なお、付勢力が大きくなるほど、図19に示される中間ギア2が回転する際の摺動抵抗が増加してしまう。そのため、中間ギア2が回転する際の摺動抵抗を必要最小限にしながら、スラスト力による中間ギア2の移動を抑制できるような充分な付勢力が発生するように、取付角度θを適切な値に設定することが望ましい。このように取付角度θを適切な値に設定するためには、板バネ11が取り付けられる板バネ取付面10eの面精度を高めると共に、壁部70の基部60への取付角度の誤差を小さくする必要がある。
実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100-2では、メインベース10がアルミダイキャストで形成されているため、例えば板金によって、個別に製作された基部60と壁部70とが互いに組み合わされる場合に比べて、壁部70の基部60への取付角度の誤差を小さくでき、板バネ取付面10eの面精度が高くなる。その結果、板バネ11の壁部72への取付角度θの誤差が小さくなり、付勢力の管理が容易化される。
図23に示すように、メインベース10は、3本のねじ14が、メインベース10に形成された3箇所の孔に挿通され、モータ200に形成されたねじ孔にねじ留めされることによって固定される。メインベース10からZ軸正方向に伸びる柱10q、柱10m及び柱10sのZ軸正方向先端側には、それぞれ、ねじ孔10v、ねじ孔10u及びねじ孔10wが形成される。各々のねじ孔10v、ねじ孔10u及びねじ孔10wには、図15に示す基板20に形成される孔20c、孔20e及び孔20dへ挿通された基板取付ねじ13がそれぞれねじ留めされる。これにより、柱10q、柱10m及び柱10sのそれぞれの上端面10r、上端面10p及び上端面10tが、図25に示す基板20の下面20-1と接する。基板20の下面20-1は、基板20が有するZ軸方向の2つの基板面の内、メインベース10と向き合う面である。その結果、基板20のZ軸方向の位置が規定される。
図14、図27から図29などに示されるように、ケース15は、上面部15-1、第1側面部15A、第2側面部15B、第3側面部15C、及び第4側面部15Dを備え、一面が開口している箱形状の部材である。ケース15は、例えば樹脂製であり、一体成型された部材である。上面部15-1は、箱形状の部材の底部に相当する。上面部15-1は、図15に示される基板20の上面20-2と向き合う面である。基板20の上面20-2は、基板20の下面20-1側とは反対側の基板面である。第1側面部15Aは、上面部15-1のX軸正方向側の辺部から、Z軸負方向に伸びる板状部材である。第2側面部15Bは、上面部15-1のX軸負方向側の辺部から、Z軸負方向に伸びる板状部材である。第3側面部15Cは、上面部15-1のY軸負方向側の辺部から、Z軸負方向に伸びる板状部材である。第4側面部15Dは、上面部15-1のY軸正方向側の辺部から、Z軸負方向に伸びる板状部材である。ケース15を平面視した形状は、モータ200を平面視した形状に対応した矩形状である。ケース15の内側の空間には、アブソリュートエンコーダ100-2が備える複数の部品が収容される。
図28に示すように、ケース15は、ツメ15a、ツメ15b、ツメ15c、孔15d、凹部15e、凹部15f、凹部15g、コネクタケース部15h、及び開口部15iを有する。ツメ15aは、第4側面部15DのZ軸負方向の端部寄りに設けられる。ツメ15aは、第3側面部15Cと向き合うように、第4側面部15DからY軸負方向に伸びる。ツメ15aは、図27に示すメインベース10に設けられた凹部10aaに掛け合わされる。ツメ15bは、第3側面部15CのZ軸負方向の端部寄りに設けられる。ツメ15bは、第4側面部15Dと向き合うように、第3側面部15CからY軸正方向に伸びる。ツメ15bは、図27に示すメインベース10に設けられた凹部10abに掛け合わされる。ツメ15cは、第2側面部15BのZ軸負方向の端部寄りに設けられる。ツメ15cは、第1側面部15Aと向き合うように、第2側面部15BからX軸負方向に伸びる。ツメ15cは、図27に示すメインベース10に設けられた凹部10acに掛け合わされる。
図28に示される凹部15e、凹部15f及び凹部15gは、図15に示される3つの基板取付ねじ13のそれぞれの頭部との干渉を避けるために、ケース15の上面5-1の一部がZ軸正方向に向かって窪むように形成された窪みである。
コネクタケース部15hは、図15に示されるコネクタ24を覆うために、ケース15の上面5-1の一部がZ軸正方向に向かって窪むように形成された窪みである。平面視したときのコネクタケース部15hの底面の形状は、長方形である。コネクタケース部15hは、上面5-1の内、X軸方向の中央よりも第1側面部15A側、かつ、Y軸方向の中央付近の領域に設けられる。またコネクタケース部15hは、当該領域の内、第1側面部15A寄りの部分に設けられる。
開口部15iは、コネクタケース部15hの底面と第1側面部15Aとの間に形成される。コネクタケース部15hの底面と向き合うように、図15に示されるコネクタ24が配置される。コネクタ24は、例えば、雌型コネクタであり、コネクタ24には、外部配線の一端に設けられる雄型コネクタが挿入される。当該雄型コネクタは、図28に示す開口部15iを介して、コネクタケース部15hに配置されたコネクタ24に挿入される。これにより、コネクタ24に設けられる導電性端子に、外部配線の一端に設けられる雄型コネクタの導電性端子が電気的に接続される。その結果、外部配線の他端に接続される外部装置とコネクタ24とが電気的に接続され、アブソリュートエンコーダ100-2と外部装置との間で信号の伝送が可能となる。
また、コネクタケース部15hが第1側面部15A寄りの位置に設けられることによって、図15に示すように、コネクタ24を平面視したときの位置は、モータ200を平面視したときのコネクタ400の位置と等しくなる。このようにアブソリュートエンコーダ100-2を構成することによって、コネクタ24に設けられる導電性ピンに電気的に接続される外部配線が引き出される位置を、コネクタ400に設けられる導電性ピンに電気的に接続される外部配線が引き出される位置に近づけることができる。従って、これらの外部配線を、アブソリュートエンコーダ100-2とモータ200との近くで、1つに束ねることができ、このようにした束ねられた配線群を、外部機器まで引き回すことが容易になる。
図26に示すように、基板20の下面20-1には、磁気センサ40、磁気センサ50、マイコン21、双方向性ドライバ22、及びラインドライバ23が設けられる。基板20の下面20-1は、磁気センサ40及び磁気センサ50のマウント面である。前述したように、基板20の下面20-1には、柱10qの上端面10r、柱10mの上端面10p、及び柱10sの上端面10tが接する。そして、図17に示すように、柱10q、柱10m及び柱10sは、メインベース10を平面視したときの互いの離隔距離の差が小さくなるように、メインベース10に設けられている。例えば、柱10qは、メインベース10のY軸方向の中央付近において、第2辺302寄りに設けられる。柱10qは壁部80と一体化されている。柱10mは、第1辺301と第4辺304とが交わる角部の近くに設けられる。柱10sは、メインベース10のX軸方向の中央付近において、第3辺303寄りに設けられる。柱10sは壁部70及び基板位置決めピン10gと一体化されている。このように、柱10q、柱10m及び柱10sが設けられることによって、基板20に設けられた磁気センサ40及び磁気センサ50のそれぞれのZ軸方向の位置を正確に規定できる。なお、柱10q、柱10m及び柱10sは、メインベース10においてX-Y平面方向において、それぞれできるだけ離れた場所に形成すると、基板20の位置をより安定して保持することができる。
実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100-2では、メインベース10がダイキャストで形成されている。そのため、例えば板金によってメインベース10の基部60を製作し、柱10q、柱10m、柱10s、基板位置決めピン10g、基板位置決めピン10j、壁部70、壁部80などを個別に製作して組み立てた場合に比べて、各部品間の位置精度が向上する。また、製作時の部品点数が少なくなることによって、アブソリュートエンコーダ100-2の構造を簡素化でき、組立が容易となって製造時間を短縮することができ、アブソリュートエンコーダ100-2の信頼性を高めることができる。
磁気センサ40は、主軸角度センサの一例である。磁気センサ40は、永久磁石9の真上に所定の間隔を隔てて配置されている。磁気センサ40は、主軸ギア1と共に回転する永久磁石9の回転による永久磁石9から発生する磁束の変化を検出することにより、対応する主軸ギア1の回転角度を検出及び特定し、特定した回転角度を示す角度情報を、デジタル信号として出力する。
磁気センサ50は、角度センサの一例である。また、副軸ギア5は、第2従動歯車であるウォームホイール部5aの回転に従って回転する回転体である。磁気センサ50は、永久磁石8の真上に所定の間隔を隔てて配置されている。磁気センサ50は、副軸ギア5と共に回転する永久磁石8の回転による永久磁石8から発生する磁束の変化を検出することにより、対応する副軸ギア5の回転角度を検出及び特定し、特定した回転角度を示す角度情報を、デジタル信号として出力する。
磁気センサ40及び磁気センサ50のそれぞれは、例えば、磁束の変化を検知する検知素子と、この検知素子の出力に基づいて回転角度を表すデジタル信号を出力する演算回路と、を備える。検知素子は、例えばホールエレメント、GMR(Giant Magneto Resistive)エレメントなどの磁界検知要素を複数組み合わせたものでもよい。磁界検知要素の数量は例えば4つである。
主軸ギア1のウォームギア部1dの条数が4であり、中間ギア2のウォームホイール部2aの歯数が20である場合には、減速比は5である。すなわち、主軸ギア1が5回転すると中間ギア2は1回転する。また、中間ギア2のウォームギア部2bの条数が1であり、副軸ギア5のウォームホイール部5aの歯数が18である場合には、減速比は18である。すなわち、中間ギア2が18回転すると副軸ギア5は1回転する。従って、主軸ギア1が90回転すると、中間ギア2は90÷5=18回転し、副軸ギア5は18÷18=1回転する。
主軸ギア1と副軸ギア5には、それぞれ一体となって回転する永久磁石9及び8が設けられている。そのため、それぞれに対応した磁気センサ40及び磁気センサ50が、主軸ギア1と副軸ギア5の回転角度を検出することにより、モータ軸201の回転量を特定できる。主軸ギア1が1回転すると、副軸ギア5は、1/90回転、すなわち4°回転する。このため、副軸ギア5の回転角度が4度未満の場合、主軸ギア1の回転量は1回転未満であり、副軸ギア5の回転角度が4度以上8度未満のとき、主軸ギア1の回転量は1回転以上かつ2回転未満である。このようにアブソリュートエンコーダ100-2では、副軸ギア5の回転角度に応じて主軸ギア1の回転数を特定できる。特にアブソリュートエンコーダ100-2は、ウォームギア部1dとウォームホイール部2aとの減速比と、ウォームギア部2bとウォームホイール部5aとの減速比とを利用することにより、主軸ギア1の回転数が複数回転であっても、主軸ギア1の回転数を特定できる。
マイコン21、双方向性ドライバ22、ラインドライバ23、及びコネクタ24は、基板20に実装されている。マイコン21、双方向性ドライバ22、ラインドライバ23、及びコネクタ24は、基板20上のパターン配線によって電気的に接続されている。
マイコン21は、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)で構成され、磁気センサ40及び磁気センサ50のそれぞれから出力される回転角度を表すデジタル信号を取得し、主軸ギア1の回転量を演算する。
双方向性ドライバ22は、コネクタ24に接続される外部装置との間で双方向の通信を行う。双方向性ドライバ22は、操作信号などのデータを差動信号に変換して外部装置との間で通信を行う。ラインドライバ23は、回転量を表すデータを差動信号に変換し、差動信号をコネクタ24に接続される外部装置にリアルタイムで出力する。コネクタ24には、外部装置のコネクタが接続される。
図34は、本発明の実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100-2が備えるマイコン21の機能構成を示す図である。図34に示すマイコン21の各ブロックは、マイコン21としてのCPUがプログラムを実行することによって実現されるファンクション(機能)を表したものである。
マイコン21は、回転角取得部21p、回転角取得部21q、テーブル処理部21b、回転量特定部21c、及び出力部21eを備える。回転角取得部21qは、磁気センサ40から出力された信号をもとに主軸ギア1の回転角度Aqを取得する。回転角度Aqは、主軸ギア1の回転角度を示す角度情報である。回転角取得部21pは、磁気センサ50から出力された信号をもとに副軸ギア5の回転角度Apを取得する。回転角度Apは、副軸ギア5の回転角度を示す角度情報である。テーブル処理部21bは、回転角度Apと、回転角度Apに対応する主軸ギア1の回転数とを格納した対応関係テーブルを参照して、取得した回転角度Apに対応する主軸ギア1の回転数を特定する。回転量特定部21cは、テーブル処理部21bによって特定された主軸ギア1の回転数と、取得した回転角度Aqとに応じて主軸ギア1の複数回転にわたる回転量を特定する。出力部21eは、特定された主軸ギア1の複数回転にわたる回転量を、当該回転量を示す情報に変換して出力する。
以上に説明したように、実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100-2では、図18などに示すように、副軸ギア5が中間ギア2の主軸ギア1側とは反対側に設けられているため、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれに対応していない磁気センサに影響を与える磁気干渉の発生を低減できる。このように、アブソリュートエンコーダ100-2は、磁気干渉の発生を低減できる構造を採用することによって、アブソリュートエンコーダ100-2を平面視したときの寸法を相対的に小さくできる。従って、アブソリュートエンコーダ100-2の小型化を図りながら、磁気センサ40及び磁気センサ50のそれぞれによる磁束の検出精度の低下を防ぐことができる。
また実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100-2では、メインベース10の上面と平行に配置される中間ギア2が、メインベース10の四辺に対して斜めに伸びており、さらに中間ギア2に対して主軸ギア1と副軸ギア5とが、互いに中間ギア2の反対側に設けられている。このため、メインベース10の上面の全体領域の内、一部の狭い領域に主軸ギア1、中間ギア2、及び副軸ギア5を配置でき、水平方向に対するアブソリュートエンコーダ100-2の寸法を小さくできる。
また、実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100-2では、ウォームホイール部2aの外径と、ウォームギア部2bの外径とは、可能な範囲で小さな値に設定されている。これにより、アブソリュートエンコーダ100-2のZ軸方向(高さ方向)における寸法を小さくできる。
このように、実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100-2によれば、主軸ギア1の回転量の検出精度の低下を防ぎながら、Z軸方向の寸法と、Z軸方向と直交する方向の寸法とを小さくできるという効果を奏する。
また、実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100-2では、壁部80及び壁部72のそれぞれに固定又は挿入された軸4に対して、中間ギア2が軸支、すなわち回転可能に支持されているが、中間ギア2を軸支できれば、中間ギア2の支持方法はこれに限定されない。
例えばアブソリュートエンコーダ100-2は、軸4の一端4aが壁部72に形成された孔10aに挿入され、軸4の他端4bが壁部80に形成された孔10bに圧入で固定されるように構成される。さらに、アブソリュートエンコーダ100-2は、ベアリング3の外輪3aが中間ギア2に形成される圧入部2dに圧入で固定され、ベアリング3の内輪3bに軸4が圧入で固定されるように構成してもよい。これにより、軸4に固定された中間ギア2の軸方向Tdへの移動が制限される。このようにアブソリュートエンコーダ100-2を構成した場合でも、中間ギア2が軸4に軸支される。さらに、壁部72及び壁部80によって軸4の軸方向Tdへの移動が制限されると共に、軸4に固定されるベアリング3の内輪3bによって中間ギア2の軸方向への移動も制限される。従って、板バネ11が不要になる。
他にも、例えばアブソリュートエンコーダ100-2は、図19に示すベアリング3を用いずに、軸4に中間ギア2が固定された状態で、壁部72及び壁部80の少なくとも一方に設けられた不図示のベアリングによって、軸4が軸支されるように構成してもよい。
不図示のベアリングの外輪が壁部72又は壁部80に固定され、内輪に軸4の一端4a又は他端4bが挿入される場合、軸4に中間ギア2が固定され、軸4は不図示のベアリングに軸支されていることから、軸4と中間ギア2は一体となって回転することが可能となる。この場合、軸4はベアリングの内輪に固定されてはおらず、内輪に挿入されているだけなので、軸4は中間ギア2と共に軸方向Tdへ移動可能になっている。その為、中間ギア2を軸方向Tdへ付勢し、位置を規定するための板バネ11が必要となる。
あるいは、不図示のベアリングの外輪が壁部72又は壁部80に固定され、不図示の内輪に軸4の一端4a又は他端4bが圧入されてもよい。この時、軸4に固定された中間ギア2の軸方向Tdへの移動が制限される。そのため、不図示のベアリングによって軸4に固定される中間ギア2が回転可能に支持されるだけでなく、軸4の軸方向Tdへの移動が制限されるため、中間ギア2の軸方向Tdへの移動も制限される。従って、板バネ11が不要になる。
図21に示すように、本来、磁気センサ40は主軸ギア1と共に回転する永久磁石9からの磁束の変化を検出して主軸ギア1の回転角度を検出及び特定する。また、図22に示すように、磁気センサ50は副軸ギア5と共に回転する永久磁石8の磁束の変化を検出し、副軸ギア5の回転角度を検出及び特定する。実施の形態2のアブソリュートエンコーダ100-2は、今まで述べたように、磁気干渉の発生を低減できる構造を採用することによって、磁気センサ40への永久磁石8からの磁束の影響を低減出来る。また、磁気センサ50への永久磁石9からの磁束の影響を低減出来る。つまり、主軸ギア1と副軸ギア5のお互いの磁気干渉による回転の検出精度の低下を防ぐことが出来る。
図14で示すのは、アブソリュートエンコーダ100-2がモータ200に取り付けられた状態であるが、モータ200には、内部に永久磁石及び駆動用のコイルが内蔵されている。従って、モータ200はモータ軸201が回転していない場合でも、磁束を発生している。またモータ200に外部から駆動信号を与えてモータ軸201を回転させた場合、さらに発生する磁束が増加する。このモータ200から発生する磁束によって、アブソリュートエンコーダ100-2の内部に設けられた磁気センサ40及び磁気センサ50に悪影響を与え、検出精度の低下が起きる場合がある。このようなモータ200からの不要な磁束の影響がある場合、メインベース10を鉄などの強磁性体で構成すると、上述のモータ200からの磁束の影響を低減する事が可能となる。
図35は、実施の形態2の第1変形例に係るアブソリュートエンコーダ100-2が備えるメインベース10の基部60を示す図である。図35に示される基部60には、図10に示される基部110aと同様に、開口部10-1と一対の凹部150とが設けられる。これにより、アブソリュートエンコーダ100-2の製造時間が大幅に短縮される。またアブソリュートエンコーダ100-2の歩留まりが向上して、アブソリュートエンコーダ100-2の製造コストを低減可能である。
なお、図35に示される基部60には凹部150が設けられているが、基部60には、凹部150の代わりに、凸部を設けてもよい。図36は、実施の形態2の第2変形例に係るアブソリュートエンコーダ100-2が備えるメインベース10の基部60を示す図である。図36に示される基部60には、図35に示される一対の凹部150の代わりに、一対の凸部160が設けられる。一対の凸部160は、開口部10-1に貫通する主軸ギア1を挟むように、基部60に設けられる。一対の凸部160の内の一方は、第3辺303に設けられており、中心軸AXから第3辺303に向かって突き出る突起である。一対の凸部160の内の他方は、第4辺304に設けられており、中心軸AXから第4辺304に向かって突き出る突起である。一対の凸部160のそれぞれは、2つの傾斜面161と、2つの傾斜面161が交わる頂部である峰部162とを有する。傾斜面161は、峰部162と第3辺303との間の壁面、又は峰部162と第4辺304との間の壁面である。中間ギア2の回転軸線Laと仮想直線VLは直交しており、仮想直線VLと凸部160の傾斜面161とが成す角度θは、例えば45°である。
このような凸部160が設けられた基部60を利用してバックラッシュ調整が行われる場合、図12に示される治具500には、凸部501の代わりに凹部が設けられ、治具600には、凸部601の代わりに凹部が設けられる。
図36に示される基部60を利用することにより、例えば図35に示される凹部150の近くに、マグネットホルダ6などが設けられている場合でも、マグネットホルダ6などへの治具500又は治具600の干渉を抑制できる。一方、図35に示される基部60を利用することにより、図36に示される基部60に比べて、平面視した基部60の表面積が小さくなり、アブソリュートエンコーダ100-2を小型化できる。
なお、図36に示される一対の凸部160は、実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100-1の基部110aに設けることも可能である。また、図35又は図36に示される基部60は、永久磁石が用いられる磁石式エンコーダ以外にも、誘導コイルを使用したコイル式エンコーダ、受光素子を使用した光学式エンコーダなどにも利用可能である。また、図35又は図36に示される基部60は、主軸ギア1の中心軸が中間ギア2の中心軸と直交する減速機構を備えたエンコーダ以外にも、主軸ギア1の中心軸が中間ギア2の中心軸と平行な減速機構を備えたエンコーダにも利用可能である。
図10、図35又は図36に示される基部110a、60が利用されることにより、アブソリュートエンコーダ100-1,100-2の小型化を図りながら、バックラッシュの微調整が容易化される。従って、図10、図35又は図36に示される基部110a、60は、主軸ギア101、1の中心軸が第1中間ギア102、中間ギア2の中心軸と直交する減速機構を備えたアブソリュートエンコーダ100-1,100-2に対して有用である。
以上に説明したようにアブソリュートエンコーダ100-1,100-2は、治具が嵌まる一対の嵌合部である凹部150又は凸部160を有する基部110a、60を備えることにより、バックラッシュ調整用治具を利用してバックラッシュの微調整を容易に行うことが可能となる。
図37は、実施の形態1,2のアブソリュートエンコーダ100-1,100-2に適用可能な永久磁石9Aを示す図である。図38は、実施の形態1,2のアブソリュートエンコーダ100-1,100-2に適用可能な永久磁石9Bを示す図である。図37には、第1構成例に係る永久磁石9Aが示される。永久磁石9Aでは、第1極性の第1磁極部分Nと、第1極性とは異なる第2極性の第2磁極部分Sとが、永久磁石9Aの径方向D1に配列されている。図38には、第2構成例に係る永久磁石9Bが示される。永久磁石9Bでは、永久磁石9Bの中央を境に、図中左半分に第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとが永久磁石9Bの図中軸方向D2に配列され、一方、図中右半分には、左半分とは上下逆方向に第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとが永久磁石9の図中軸方向D2に配列されている。図37及び図38に示される矢印「DM」は着磁方向を表す。
永久磁石9Aと永久磁石9Bは、何れも実施の形態1,2のアブソリュートエンコーダ100-1,100-2の永久磁石9として利用可能である。但し、永久磁石9Bでは、複数の磁力線によって形成される磁場が、永久磁石9Aに発生する磁場に比べて、軸方向D2に広がるように分布する。これに対して、永久磁石9Aでは、複数の磁力線によって形成される磁場が、永久磁石9Bに発生する磁場に比べて、径方向D1に広がるように分布する。そのため、実施の形態1,2のアブソリュートエンコーダ100-1,100-2に永久磁石9Aが用いられる場合、永久磁石9Aの径方向外側に広がるように発生する磁場によって、前述した他の磁気センサに磁束が影響する磁気干渉が発生し易くなる。
実施の形態1,2の各変形例に係るアブソリュートエンコーダ100-1,100-2は、永久磁石9Bが永久磁石9として利用された場合、永久磁石9Aが利用された場合に比べて、永久磁石9から発生する漏れ磁束が、磁気センサ50に流れ込むことが少なくなる。また、永久磁石9Bが永久磁石8として利用された場合、永久磁石9Aが利用された場合に比べて、永久磁石8から発生する漏れ磁束が、磁気センサ40に流れ込むことが少なくなる。その結果、副軸ギア5又は主軸ギア1の回転角度又は回転量の検出精度の低下を低減できる。また、回転角度又は回転量の検出精度の低下を低減できる分、アブソリュートエンコーダ100-1,100-2のより一層の小型化を図ることができる。
なお、実施の形態1のアブソリュートエンコーダ100-1は、永久磁石8及びマグネットホルダ6のそれぞれの中心軸が、図30に示される永久磁石8及びマグネットホルダ6と同様に互いに一致するように構成される。また、実施の形態1のアブソリュートエンコーダ100-1は、永久磁石17及び第2副軸ギア138のそれぞれの中心軸が、図30に示される永久磁石8及びマグネットホルダ6と同様に互いに一致するように構成される。また、実施の形態1のアブソリュートエンコーダ100-1は、永久磁石9及び主軸ギア1のそれぞれの中心軸が、図31に示される永久磁石9及び主軸ギア1と同様に互いに一致するように構成される。この構成により、実施の形態1のアブソリュートエンコーダ100-1は、より高精度に回転角又は回転量を検出することが可能となる。
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。