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JP7290431B2 - 積層セラミック電子部品 - Google Patents

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Description

本開示の実施形態は、積層セラミック電子部品に関する。
従来より、セラミック層と電極層とを交互に積み重ねた後、一体的に焼成して作製された積層型のセラミック電子部品が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2015-88550号公報
本実施形態の一態様に係る積層セラミック電子部品は、セラミック層と、電極層と、が交互に積層された積層体を備え、少なくとも1つの前記電極層が、導電性炭素材料とセラミック材料を含有する第1の電極部と、セラミック材料を含有する第2の電極部と、を有し、前記第1の電極部のうち20体積%以上は導電性炭素材料であり、30体積%以上はセラミック材料であり、前記第2の電極部のうちセラミック材料の含有率は30体積%以下であって、前記積層体の端部に、前記電極層が交互に電気的に接続された1対の外部電極を備え、前記積層体は、一方の前記外部電極と電気的に接続された前記電極層同士が、他方の前記外部電極と電気的に接続された前記電極層を介さずに対向する位置に存在する前記電極層および前記セラミック層からなるエンドマージン領域と、異なる前記外部電極と電気的に接続された前記電極層同士が対向する位置に存在する前記電極層および前記セラミック層からなる容量領域と、を有しており、少なくとも1つの前記電極層において、前記第1の電極部が前記エンドマージン領域に存在するとともに、前記第2の電極部が前記容量領域に存在する。
本実施形態に係る積層セラミック電子部品の部分断面斜視図である。 図1のA-A線断面図である。 積層セラミック電子部品の他の態様の断面図である。
図1は、本実施形態に係る積層セラミック電子部品100の部分断面斜視図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図3は、積層セラミック電子部品100の他の態様の断面図である。
本実施形態に係る積層セラミック電子部品100は、積層セラミックコンデンサ、積層型圧電素子、積層サーミスタ素子、積層チップコイル、セラミック多層基板など様々な電子部品に適用可能である。
図1等で例示するように、積層セラミック電子部品100は、セラミック層11と電極層12とが交互に積層された積層体10を備えている。図1等では、直方体形状である積層体10が例示されているが、積層体10はこのような形状に制限されない。例えば、積層体10の各面は曲面であってもよく、積層体10は全体として丸みを帯びた形状であってもよい。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。また、セラミック層11および電極層12の積層数は特に制限されず、20層以上であってもよい。
セラミック層11は、主成分としてBaTiO(チタン酸バリウム)、CaZrO(ジルコン酸カルシウム)、CaTiO(チタン酸カルシウム)、SrTiO(チタン酸ストロンチウム)等のセラミック材料を含有する。ここで、主成分とは、セラミック層11において最も含有割合(mol%)の高い化合物である。なお、セラミック層11の主成分は上記したセラミック材料のみに制限されるものではない。
セラミック層11の主成分としては、積層セラミック電子部品100の静電容量を高める観点から、高誘電率材料を使用してもよい。高誘電率材料の一例として、上記したセラミック材料を含むペロブスカイト型酸化物を使用してもよい。
セラミック層11は、上述した成分に加えてSiやMg、希土類元素等の種々の成分を含有してもよい。
セラミック層11の組成は、積層セラミック電子部品100を粉砕し、粉末状にしたセラミック層11に対してXRD(X線回折法)を用いることで分析することができる。
セラミック層11の厚みは特に制限されず、一層あたり0.5~100μm程度であってもよい。
電極層12は、少なくとも1種の導電材料を含有する。導電材料としては、種々の金属材料を使用してもよい。例えば、金属材料としては、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属、Pt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金)などの貴金属およびこれらを含む合金を使用してもよい。
電極層12は2種以上の導電材料を含有していてもよい。また、電極層12は異なる導電材料を含有する2つ以上の電極部が組み合わされた構成であってもよい。
電極層12の厚みは用途等に応じて適宜決定すればよく、0.1~100μm程度であってもよい。
積層セラミック電子部品100は、積層体10の端部に、電極層12が交互に電気的に接続された1対の外部電極20を備えていてもよい。より具体的には、図2に示すように、積層セラミック電子部品100は、外部電極20aと電気的に接続された電極層12aと、外部電極20bと電気的に接続された電極層12bとが、セラミック層11を介して交互に積層された構成であってもよい。また、積層セラミック電子部品100は、2対以上の外部電極20を備えていてもよい。なお、積層セラミック電子部品100が備える外部電極は上述したものに制限されず、電極層12との接続状態が異なる外部電極を備えていてもよい。
外部電極20には、種々の金属材料を使用してもよい。例えば、金属材料としては、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属、Pt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金)などの貴金属およびこれらを含む合金を使用してもよい。
ところで、積層セラミック電子部品100を配線基板に実装して使用する場合、基板実装時の熱的応力や、基板実装後の基板のたわみによる機械的応力、高温負荷環境における熱暴走等により、電極層12間にショートが発生する場合がある。ショートが発生した積層セラミック電子部品100には過電流が流れ、発煙や発火の可能性が生じる。また、ショートが発生した積層セラミック電子部品100は、多くの場合その機能を失う。
これに対して、図1等に示すように、本実施形態においては、少なくとも1つの電極層12が、第1の電極部13を有している。
第1の電極部13は、導電性炭素材料を含有している。このような構成により、第1の電極部13にはヒューズ機能が付与される。すなわち、電極層12間がショートし、積層セラミック電子部品100に過電流が流れた場合、第1の電極部13は過電流により焼き切れる。これにより、第1の電極部13がオープンとなり、過電流が遮断される。この結果、積層セラミック電子部品100が発煙および発火する可能性を低減することができる。さらに、第1の電極部13が焼き切れた後においても、その他の電極層12は正常に維持されるため、積層セラミック電子部品100の機能を維持することができる。
導電性炭素材料は例えば大気中で300℃~600℃で分解するため、導電性炭素材料を含有する第1の電極部13は、比較的低温で焼き切れさせることができる。この結果、過電流による積層セラミック電子部品100の温度上昇が低減されるため、発煙および発火の可能性を低減することができる。さらに、温度上昇に伴う積層セラミック電子部品100へのダメージを低減することができるため、第1の電極部13が焼き切れた後においても、積層セラミック電子部品100の機能が維持されやすい。
導電性炭素材料として、導電性ポリマー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーまたはグラファイト等を使用した場合、高い導電性を得ることができる。
電極層12における第1の電極部13の配置箇所は、第1の電極部13が上述したヒューズとして機能する箇所となる。すなわち、第1の電極部13が焼き切れることで、ショートした回路が絶縁され過電流が遮断されるように、第1の電極部13の配置箇所は決定される。このような配置である限り、電極層12における第1の電極部13の配置箇所は特に制限されない。したがって、第1の電極部13は電極層12の端部をなすよう配置されていてもよいし、中間部をなすよう配置されていてもよい。また、図1等に示すように、1つの電極層12全体が第1の電極部13により構成されていてもよい。第1の電極部13は外部電極20と直接接続されていてもよい。
第1の電極部13は、導電性炭素材料を20体積%以上含有していてもよく、40体積%以上、さらには60体積%以上含有していてもよい。このような構成によれば、第1の電極部13において10S/cm以上の高い導電率が得られる。
さらにこのような構成によれば、第1の電極部13における導電性炭素材料の有効面積が増加する。このため、第1の電極部13が容量領域16に配置される場合、積層セラミック電子部品100の静電容量を向上させることができる。容量領域16とは、図2に示すように、隣り合う電極層12a、12b同士が対向する領域であって、積層体10において静電容量を発生する領域である。
なお、第1の電極部13がヒューズとして機能するために必要となる導電性炭素材料の含有率は特に規定されないが、導電性炭素材料を20体積%以上かつ80体積%以下含有する場合、ヒューズとしての機能が発揮されやすい。すなわち、第1の電極部13が導電性炭素材料を20体積%以上かつ80体積%以下含有していると、過電流により第1の電極部13が焼き切れやすくなる。したがって、導電性炭素材料を20体積%以上かつ80体積%以下含有する第1の電極部13は少なくとも、ヒューズ機能を有していると判断してよい。
上述した内容に加えて、第1の電極部13がヒューズ機能を有することは、以下のように確認してもよい。まず、積層セラミック電子部品100を配線基板に実装し、直流電源にて積層セラミック電子部品100の定格電圧を超える電圧を印加する。このとき、印加電圧は定格電圧の5倍以上としてもよい。その後、積層体10に研磨処理を施し電極層12を含む断面を露出させ、第1の電極部13周辺の状態を目視する。このとき、第1の電極部13が電極層12間のショートにより焼き切れており、第1の電極部13が焼き切れることで、ショートした回路が絶縁状態となっている場合、第1の電極部13がヒューズ機能を有すると判断してもよい。
第1の電極部13は、導電性炭素材料に加えて、セラミック材料を含有していてもよい。典型的な第1の電極部13は、導電性炭素材料を20体積%以上含有し、必要に応じて
セラミック材料を含有し、空隙率が30体積%以下であるが、これに制限されるものではない。
第1の電極部13がセラミック材料を含有する場合、焼成時における、第1の電極部13とセラミック層11との収縮挙動が近付くため、それらの界面で発生するクラックを低減することができる。この結果、積層セラミック電子部品100の焼成工程におけるクラック発生を低減することができる。したがって、積層セラミック電子部品100の製造工程における不良の発生を低減することができる。
第1の電極部13は、セラミック材料を30体積%以上含有していてもよく、50体積%以上、さらには70体積%以上含有していてもよい。このような構成によれば、積層セラミック電子部品100の製造工程における不良の発生をさらに低減することができる。
一方で、例えば第1の電極部13を容量領域16に配置する場合等には、第1の電極部13におけるセラミック材料の含有率を30体積%以下としてもよく、20体積%以下、さらには10体積%以下としてもよい。このような構成によれば、第1の電極部13における導電性炭素材料の有効面積が低下し難く、積層セラミック電子部品100の静電容量が低下し難い。したがって、静電容量の低下を低減しつつ、積層セラミック電子部品100の製造工程における不良の発生を低減することができる。
このように、第1の電極部13における導電性炭素材料およびセラミック材料の含有率は、目的に応じて適宜設定すればよい。なお、第1の電極部13は、上述した成分に加えて金属材料等その他の成分を含有していてもよい。
第1の電極部13が含有するセラミック材料の主成分は、セラミック層11の主成分と同一組成であってもよい。このような構成によれば、焼成時における、第1の電極部13とセラミック層11との収縮挙動がより近付くため、それらの界面で発生するクラックをさらに低減することができる。したがって、積層セラミック電子部品100の製造工程における不良の発生をさらに低減することができる。
図2に示すように、積層セラミック電子部品100は、隣り合って積層された少なくとも1組の電極層12a、12bのそれぞれが、第1の電極部13を有する構成であってもよい。より具体的には、一方の外部電極20aと電気的に接続されている少なくとも1つの電極層12aと、当該電極層12aと隣り合って積層されており、他方の外部電極20bと電気的に接続されている少なくとも1つの電極層12bとの双方が、第1の電極層13を有する構成であってもよい。
このような構成によれば、電極層12a-電極層12b間がショートした際に、電極層12aまたは電極層12bどちらか少なくとも一方の第1の電極部13が、ヒューズとして正常に機能することで、過電流が遮断される。この結果、ヒューズの不良による積層セラミック電子部品100の故障の可能性を低減することができる。
図1および2に示すように、積層セラミック電子部品100は、すべての電極層12に第1の電極部13が配置された構成であってもよい。このような構成によれば、ヒューズの不良による積層セラミック電子部品100の故障の可能性をさらに低減することができる。
本実施形態においては、図3に示すように、第1の電極部13を有する少なくとも1つの電極層12が、金属材料を含有する第2の電極部14をさらに有していてもよい。換言すれば、少なくとも1つの電極層12は、第1の電極部13と、金属材料を含有する第2
の電極部14とが組み合わされた構成であってもよい。電極層12における、第1の電極部13および第2の電極部14の配置箇所は、第1の電極部13がヒューズとして機能する限り、特に制限されない。
導電性炭素材料を含有する第1の電極部13は、金属材料を含有する第2の電極部14と比べて等価直列抵抗(ESR)が高く、積層セラミック電子部品100内での損失(発熱)が発生しやすい。この結果、周囲のセラミック層11にダメージが与えられ、積層セラミック電子部品100の信頼性が低下する場合がある。
さらに、例えば30体積%以上のセラミック材料を含有する第1の電極部13が容量領域16に配置される場合には、第1の電極部13における導電性炭素材料の有効面積が低いため、積層セラミック電子部品100の静電容量が低下する場合がある。
これに対して、第1の電極部13を有する少なくとも1つの電極層12が、金属材料を含有する第2の電極部14をさらに有する構成であると、積層セラミック電子部品100の信頼性および静電容量を保ちながら、積層セラミック電子部品100にヒューズ機能を付すことが可能となる。
また、図3に示すように、積層セラミック電子部品100は、少なくとも1つの電極層12において、第1の電極部13がエンドマージン領域15に配置され、第2の電極部14が容量領域16に配置された構成であってもよい。
ここで、エンドマージン領域15とは、一方の外部電極20aと電気的に接続された電極層12a同士が、他方の外部電極20bと電気的に接続された電極層12bを介さずに対向する領域をいう。または、他方の外部電極20bと電気的に接続された電極層12b同士が、一方の外部電極20aと電気的に接続された電極層12aを介さずに対向する領域をいう。また、容量領域16とは、隣り合う電極層12a、12b同士が対向する領域をいう。
エンドマージン領域15は、積層セラミック電子部品100において、静電容量をほとんど発生しない領域である。このため、第1の電極部13をエンドマージン領域に配置することで、第1の電極部13の損失(発熱)により周囲のセラミック層11にダメージが与えられた場合も、積層セラミック電子部品100の静電容量の低下を低減することができる。
また、容量領域16は、積層セラミック電子部品100において、静電容量を発生する領域である。このため、第1の電極部13に比べて電気抵抗の低い第2の電極部14を容量領域16に配置することにより、容量領域16に存在するセラミック層11が受ける、損失(発熱)によるダメージを低減することができる。この結果、積層セラミック電子部品100の静電容量の低下を低減することができる。
さらに、図3に示すように、第1の電極部13がエンドマージン領域15のみに配置されていてもよい。このような構成によれば、積層セラミック電子部品100の静電容量の低下をさらに低減することができる。
第2の電極部14は、金属材料に加えて、セラミック材料を含有していてもよい。典型的な第2の電極部14は、金属材料を20体積%以上含有し、必要に応じてセラミック材料を含有し、空隙率が30体積%以下であるが、これに制限されるものではない。
第2の電極部14がセラミック材料を含有する場合、焼成時における、第2の電極部1
4とセラミック層11との収縮挙動が近付くため、それらの界面で発生するクラックを低減することができる。この結果、積層セラミック電子部品100の焼成工程におけるクラック発生を低減することができる。したがって、積層セラミック電子部品100の製造工程における不良の発生を低減することができる。
第2の電極部14は、セラミック材料を30体積%以上含有していてもよく、50体積%以上、さらには70体積%以上含有していてもよい。このような構成によれば、積層セラミック電子部品100の製造工程における不良の発生をさらに低減することができる。
一方で、例えば第2の電極部14を容量領域16に配置する場合等には、第2の電極部14におけるセラミック材料の含有率を30体積%以下としてもよい。このような構成によれば、第2の電極部14における金属材料の有効面積が低下し難く、積層セラミック電子部品100の静電容量が低下し難い。したがって、積層セラミック電子部品100の静電容量の低下を低減しつつ、積層セラミック電子部品100の製造工程における不良の発生を低減することができる。
このように、第2の電極部14における金属材料およびセラミック材料の含有率は、目的に応じて適宜設定すればよい。なお、第2の電極部14は、上述した成分に加えて導電性炭素材料等その他の成分を含有していてもよい。
電極層12(第1の電極部13、第2の電極部14)の組成は以下のようにして分析してもよい。
まず、積層体10に研磨処理を施し、電極層12を含む断面を露出させる。次に、露出させた断面に対してSEM(走査型電子顕微鏡)にてBEI(反射電子像)を撮影し、画像解析装置を用いて電極層12に占める導電性炭素材料またはセラミック材料の面積比率(面積%)を測定する。このとき撮影箇所は10箇所以上とし、その平均値を算出する。このようにして求めた面積割合(面積%)を、体積割合(体積%)として考慮してもよい。
次に、本実施形態に係る積層セラミック電子部品100の製造方法について、具体例を説明する。
はじめに、セラミック層11用ペーストを作製する。なお、以下で説明するセラミック層11用ペーストは、後述するセラミック層11用ペーストと、第1の電極部13用ペーストとの同時焼成に適したものとなる。ただし、本実施形態に使用されるセラミック層11用ペーストは、以下で説明するものに制限されない。
まず、一般式ABOで表されるペロブスカイト型酸化物の粉末を準備する。ペロブスカイト型酸化物としては、BaTiO(チタン酸バリウム)、CaZrO(ジルコン酸カルシウム)、CaTiO(チタン酸カルシウム)系、SrTiO(チタン酸ストロンチウム)等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
ペロブスカイト型酸化物の粉末としては、平均粒子径が50nm程度のナノ粉末を使用する。このような粉末としては、市販されているものを使用できる。なお、粉末の平均粒子径は、画像解析ソフトを使用して走査形電子顕微鏡(SEM)画像から測定することができる。
次に、準備したペロブスカイト型酸化物の一般式ABOについて、Aサイト元素の水酸化物A(OH)の粉末と、Bサイト元素の酸化物BOの粉末をさらに準備する。こ
こで、Aサイト元素の水酸化物A(OH)の粉末およびBサイト元素の酸化物BOの粉末は、市販されているものを使用することができる。なお、Aサイト元素の水酸化物A(OH)の粉末およびBサイト元素の酸化物BOの粉末の平均粒子径は、先に準備したペロブスカイト型酸化物の粉末と同等(50nm程度)としてもよい。
その後、0.1mol/LのAサイト元素の水酸化物A(OH)水溶液と、Bサイト元素の酸化物BOの粉末とを、1:1のモル比で混合することで、A(OH)/BO懸濁液を作製する。
次に、A(OH)/BO懸濁液と、先に準備したペロブスカイト型酸化物の粉末とを、重量比で1:4の割合で混合することで、セラミックペレットを作製する。混合には高せん断ミキサーを使用してもよい。ここで、高せん断ミキサーとは、ローターとステーターとを備えるミキサーであって、高速回転が可能なローターと、固定されたステーターとの間に精密なクリアランスを設けた状態でローターが回転することにより、高せん断作用が働くミキサーを意味する。混合時間は特に制限されない。
なお、セラミックペレットには上述した材料に加えて、SiやMg、希土類元素等その他の材料を添加してもよい。
次に、作製したセラミックペレットに、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルを混練して塗料化し、セラミック層11用ペーストを得る。
水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
次に、電極層12用ペーストを作製する。電極層12用ペーストは、第1の電極部13用ペーストと、必要に応じて第2の電極部14用ペーストとを備える。
第1の電極部13用ペーストは、導電性ポリマー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーまたはグラファイト等の導電性炭素材料と、有機ビヒクルとを混練して作製する。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
第2の電極部14用ペーストは、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属、あるいはPt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金と、有機ビヒクルとを混練して作製する。
第1の電極部13用ペーストおよび第2の電極部14用ペーストには、必要に応じてセラミック材料を添加してもよい。
次に、焼成後に積層体10となるグリーンチップを作製する。
ドクターブレード法またはダイコータ法等のシート成形法をセラミック層11用ペーストに用いて、セラミックグリーンシートを作製する。このグリーンシート表面に第1の電極部13用ペーストを所定パターンで、スクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷する
ことで電極層12を有するグリーンシートを作製する。なお、第1の電極部13に加えて第2の電極部14を有する電極層12を作製する場合は、第1の電極部13用ペーストまたは第2の電極部14用ペーストをセラミックグリーンシート表面に印刷した後、残りのペーストをインクジェット印刷等によりさらに印刷すればよい。次いで、電極層12を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得る。
次に、グリーンチップの焼成を行う。このとき、昇温速度は5℃/分~10℃/分、焼成温度は150℃~250℃、温度保持時間は0.5時間~4時間である。焼成雰囲気は大気中としてもよい。焼成後、大気中にて保持温度が150~200℃、保持時間が6~12時間の条件で、脱水処理を施す。
なお、焼成においては100~500MPa程度の圧力下で焼成を行ってもよい。このような方法によれば、焼成後のセラミック層11の密度が向上する。加圧方法としては熱間等方圧プレス(HIP)等が挙げられるが、これに制限されるものではない。
なお、グリーンチップの焼成後に、必要に応じてアニール処理を施してもよい。アニール処理の条件は、昇温速度を5℃/分~10℃/分、処理温度は700℃~900℃、温度保持時間は0.5時間~3時間としてもよい。雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることができる。
上述のようにして得られたセラミック層11は、理論密度に対して90%以上の密度を有し、積層セラミック電子部品100に適用可能なものとなる。
一方、例えばグリーンチップの焼成温度を1000℃以上とした場合、導電性炭素材料を含有する第1の電極部13は、焼成工程で焼失する場合がある。したがって、本実施形態の積層セラミック電子部品100の作製においては、グリーンチップの焼成温度を1000℃以下とする必要がある。また、上述したようにグリーンチップの焼成温度を250℃以下とすると、さらに信頼性の高い第1の電極部13を得ることができる。
次に、得られた積層体10に、例えばバレル研磨などにより端面研磨を施し、外部電極20用ペーストを塗布し、700~900℃で0.1~1時間程度加熱することで外部電極20を形成する。そして、必要に応じ、外部電極20表面に、めっき等により被覆層を形成する。外部電極20用ペーストは、上述した第2の電極部14用ペーストと同様にして作製すればよい。
このようにして製造された本実施形態の積層セラミック電子部品100は、ハンダ付等により配線基板等に実装され、各種電子機器等に使用される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
はじめに、試料No.1~5の積層セラミック電子部品を作製した。
まず、平均粒子径が50nmであるBaTiO(チタン酸バリウム)粉末を準備した
その後、0.1mol/LのBa(OH)水溶液と、TiO粉末とを、1:1のモル比で混合することで、Ba(OH)/TiO懸濁液を作製した。
次に、Ba(OH)/TiO懸濁液と、先に準備したBaTiO(チタン酸バリウム)粉末とを、重量比で1:4の割合で混合することで、セラミックペレットを作製した。混合には高せん断ミキサーを使用し、混合時間は5時間とした。
次いで、得られたセラミックペレットに、水系ビヒクルを添加し、ボールミルで混合してペースト化してセラミック層用ペーストを得た。
次に、カーボンナノチューブに、BaTiO(チタン酸バリウム)、エチルセルロース、ベンゾトリアゾールを添加し、3本ロールにより混練してペースト化して第1の電極部用ペーストを作製した。
次に、Ni粒子に、BaTiO(チタン酸バリウム)、テルピネオール、エチルセルロース、ベンゾトリアゾールを添加し、3本ロールにより混練してペースト化して第2の電極部用ペーストを作製した。
そして、作製したセラミック層用ペーストを用いて、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが15μmとなるようにグリーンシートを形成した。次いで、この上に第1の電極部用
ペーストおよび第2の電極部用ペーストを用いて、電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、電極層を有するグリーンシートを作製した。次いで、電極層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
その後、得られたグリーンチップについて、昇温速度が9℃/分、焼成温度が180℃、温度保持時間が3時間の条件で焼成を行った。焼成雰囲気は大気中とした。焼成後、大気中にて保持温度が200℃、保持時間が12時間の条件で、脱水処理および脱バインダ処理を施し、積層体となる焼結体を得た。なお、焼成については熱間等方圧プレス(HIP)にて300MPaの圧力下で実施した。
次いで、得られた焼結体にバレル研磨処理を施し、積層体の端面に電極層を十分に露出させた。外部電極としてNi外部電極を形成し、試料No.1~5の積層セラミック電子部品を得た。得られた各試料のサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、セラミック層の厚みを10μm、電極層の厚みを1.0μm、電極層に挟まれたセラミック層の数は50とした。
試料No.1~5の積層セラミック電子部品では、電極層の構成がそれぞれ異なっており、詳細を以下に示す。なお、それぞれの試料は複数の電極層を有しているが、1種類の試料が有する複数の電極層の構成は、すべて同一とした。
試料No.1は、電極層全体が第1の電極部で構成される。第1の電極部において、カーボンナノチューブの含有率は約20体積%、BaTiO(チタン酸バリウム)の含有率は約70体積%、空隙率は約10体積%である。
試料No.2は、電極層全体が第1の電極部で構成される。第1の電極部において、カーボンナノチューブの含有率は約40体積%、BaTiO(チタン酸バリウム)の含有
率は約50体積%、空隙率は約10体積%である。
試料No.3は、電極層全体が第1の電極部で構成される。第1の電極部において、カーボンナノチューブの含有率は約60体積%、BaTiO(チタン酸バリウム)の含有率は約30体積%、空隙率は約10体積%である。
試料No.4は、電極層全体が第1の電極部で構成される。第1の電極部において、カーボンナノチューブの含有率は約80体積%、BaTiO(チタン酸バリウム)の含有率は約10体積%、空隙率は約10体積%である。
試料No.5は、電極層が第1の電極部と第2の電極部との2つの電極部を有している。第1の電極部は積層体のエンドマージン領域のみに配置され、第1の電極部が1対の外部電極と交互に接続されている。なお、第1の電極部と第2の電極部の平均長さは約9:1の比率であり、平均幅および平均厚みは略同一である。第1の電極部において、カーボンナノチューブの含有率は約40体積%、BaTiO(チタン酸バリウム)の含有率は約50体積%、空隙率は約10体積%である。第2の電極部において、Ni(ニッケル)の含有率は約80体積%、BaTiO(チタン酸バリウム)の含有率は約10体積%、空隙率は約10体積%である。
次に、Ni(ニッケル)を電極層の主成分とし、導電性炭素材料を含有しない電極層のみを有する試料No.6の積層セラミック電子部品を上述した製造方法で作製した。この試料No.6の積層セラミック電子部品と、試料No.1~5の積層セラミック電子部品との違いは、電極層の構成のみである。なお、試料No.6が有する電極層では、Ni(ニッケル)の含有率を約80体積%、BaTiO(チタン酸バリウム)の含有率を約10体積%、空隙率を約10体積%とした。
作製した試料No.1~6の積層セラミック電子部品について以下の評価を行った。サンプル数は各試料について30個とした。
まず、各試料に対し、恒温槽とLCRメータを用いて、室温(25℃)で静電容量を測定した。このとき、周波数1.0kHz、測定電圧を1Vrmsとして測定し、その平均値を求めた。このとき、試料No.6の積層セラミック電子部品の静電容量を基準値(1.00)とし、試料No.1~5の積層セラミック電子部品の静電容量をその基準値に対する値に変換算出した。
次に、各試料をLFハンダにてガラスエポキシ基板に実装した後、一定のたわみ量(5mm)で配線基板を5秒間たわませた。その後、各試料に対して、125℃、相対湿度95%RH、1.2気圧の高温高湿槽内にて、定格電圧を印加し、1000時間の耐湿負荷加速試験を行った。試験終了後、各試料についてショート状態であるサンプル数をカウントした。ここで、絶縁抵抗値(IR値)が2桁以上低下したものをショート状態であると判断した。なお、第1の電極部がヒューズとして正常に機能した場合、電極層間が一旦ショートに至った後に、第1の電極部が焼き切れ過電流が遮断される。一方、第1の電極部がヒューズとして機能しなかった場合、電極層間がショートした後、絶縁復帰せずにショート状態が維持される。
その後、試料No.1~5については、ヒューズ(第1の電極部)が焼き切れたサンプル数をさらにカウントした。カウントにあたっては、試料No.1~5に研磨処理を施し電極層を含む断面を露出させ、ヒューズの状態を目視した。少なくとも1つのヒューズが焼き切れているサンプルを、ヒューズが焼き切れたサンプルとしてカウントした。
以上の結果を表1にまとめる。
Figure 0007290431000001
表1に示すように、電極層が第1の電極部を有する試料No.1~5では、ショート状態のサンプルが発生しなかった。なお、これらの試料No.1~5はすべて、第1の電極部がカーボンナノチューブを約20体積%以上含有していた。さらに、試料No.1~5はすべて、セラミック層の主成分と、第1の電極部が含有するセラミック材料とが同一組成(BaTiO)であった。
また、第1の電極部が約30体積%以上のBaTiO(チタン酸バリウム)を含有する試料No.1~3および5では、ヒューズが焼き切れたサンプル数が20個以下であった。一方、第1の電極部が約10体積%のBaTiO(チタン酸バリウム)を含有する試料No.4では、ヒューズが焼き切れたサンプル数が21個であった。また、ヒューズを有しておらず、電極層がBaTiO(チタン酸バリウム)を約10体積%含有する試料No.6では、ショート状態のサンプル数が21個発生した。これらを考慮すると、第1の電極部が約30体積%以上のBaTiO(チタン酸バリウム)を含有することで、積層セラミック電子部品にはショートが発生し難くなることが分かる。
また、試料No.1~3から、第1の電極部におけるカーボンナノチューブの含有率が高くになるにつれ、積層セラミック電子部品の静電容量が増加することが読み取れる。一方、カーボンナノチューブの含有率が80体積%と最も高い試料No.4では、試料No.1~3と比べて静電容量が低下していた。これは、試料No.4の第1の電極部におけるBaTiO(チタン酸バリウム)の含有率が試料No.1~3に比べて低いために、一部の電極層の焼成工程で不良が発生したものと考えられる。
また、第1の電極部がエンドマージン領域のみに配置された試料No.5では、Ni(ニッケル)を電極層の主成分とし、導電性炭素材料を含有しない電極層のみを有する試料No.6と比べても、静電容量が実質的に低下しなかった。
100・・・・・・積層セラミック電子部品
10・・・・・・・積層体
11・・・・・・・セラミック層
12・・・・・・・電極層
13・・・・・・・第1の電極部
14・・・・・・・第2の電極部
15・・・・・・・エンドマージン領域
16・・・・・・・容量領域
20・・・・・・・外部電極

Claims (7)

  1. セラミック層と、電極層と、が交互に積層された積層体を備え、
    少なくとも1つの前記電極層が、
    導電性炭素材料とセラミック材料を含有する第1の電極部と、
    セラミック材料を含有する第2の電極部と、を有し、
    前記第1の電極部のうち20体積%以上は導電性炭素材料であり、30体積%以上はセラミック材料であり、
    前記第2の電極部のうちセラミック材料の含有率は30体積%以下であって、
    前記積層体の端部に、前記電極層が交互に電気的に接続された1対の外部電極を備え、
    前記積層体は、一方の前記外部電極と電気的に接続された前記電極層同士が、他方の前記外部電極と電気的に接続された前記電極層を介さずに対向する位置に存在する前記電極層および前記セラミック層からなるエンドマージン領域と、
    異なる前記外部電極と電気的に接続された前記電極層同士が対向する位置に存在する前記電極層および前記セラミック層からなる容量領域と、を有しており、
    少なくとも1つの前記電極層において、前記第1の電極部が前記エンドマージン領域に存在するとともに、前記第2の電極部が前記容量領域に存在する、
    積層セラミック電子部品。
  2. 前記第1の電極部が含有する前記導電性炭素材料は、前記第1の電極部の80体積%以下である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
  3. 前記セラミック層の主成分と、前記第1の電極部が含有するセラミック材料と、が同一組成である、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
  4. 隣り合って積層された少なくとも1組の前記電極層のそれぞれが、前記第1の電極部を有している、請求項1乃至3のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
  5. 前記第2の電極部は、前記第1の電極部よりも電気抵抗が低い、請求項1乃至4のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
  6. 少なくとも1つの前記電極層において、前記第1の電極部が前記エンドマージン領域にのみ存在する、請求項1乃至5のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
  7. 前記導電性炭素材料は、導電性ポリマー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーまたはグラファイトである、請求項1乃至6のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
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