JP7289816B2 - カバーテープおよび電子部品包装体 - Google Patents
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Description
具体的には、キャリアテープに形成された電子部品収納用の凹部に、電子部品(半導体チップ等)を入れ、その後、そのキャリアテープの上面に、カバーテープをヒートシールして電子部品を封入する。そして、それをリール状に巻き取って運搬/保管する。このようにすることで、運搬/保管中の電子部品の汚染を防ぐことができる。
電子部品包装用のカバーテープであって、
当該カバーテープは、基材層と、前記基材層の片面側に設けられた単層のシーラント層とを備え、
前記基材層と前記シーラント層の間には少なくとも1層の中間層があり、
前記中間層は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含み、
前記基材層は、樹脂としてポリエステル系樹脂のみを含み、
前記シーラント層は、帯電防止剤を含み、前記帯電防止剤は、金属含有フィラーを含み、前記金属含有フィラーは、金属酸化物粒子を含み、
前記中間層と前記シーラント層とは直接接しており、
前記シーラント層は、当該カバーテープの最表面に設けられており、前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出している、カバーテープ
が提供される。
電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、前記カバーテープとを備え、
前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体
が提供される。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本明細書において、「ポリエチレン」は、エチレンの単独重合体、エチレンと5mol%以下のα-オレフィレン単量体との共重合体、およびエチレンと官能基に炭素、酸素、および水素原子だけを持つ1mol%以下の非オレフィン単量体との共重合体を含む。
図1は、本実施形態の電子部品包装用のカバーテープ10(単に「カバーテープ10」とも表記する)の一例を、模式的に表したものである。
図1に示されるように、カバーテープ10は、基材層1と、基材層1の片面側に設けられたシーラント層3とを備え、さらに、基材層1とシーラント層3との間に、少なくとも1層の中間層2がある。
カバーテープ10は、基材層1と、中間層2と、シーラント層3とがこの順に積層したものということもできる。
シーラント層3は、通常、カバーテープ10の最表面に存在し、カバーテープ10の一方の面を構成している。これにより後述するキャリアテープ20に密着することができる。
基材層1と、中間層2と、シーラント層3とは、通常、ともに略同じ幅と長さで、切れ目や分断なく存在している。
密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンは、比較的低密度であることにより、(結晶部が少なく分子が動きやすくなり)他成分と混ざりやすくなったり、溶剤が浸透して溶けやすかったりすると考えられる。そうすると、カバーテープ10の製造において中間層2の片面側にシーラント層3を設ける場合(具体的には、中間層2の片面側に、シーラント層3形成用の塗布液を塗布する場合)、その塗布液により中間層2中のポリエチレンの一部が溶解したり、層間の樹脂が絡み合ったりするなどし、中間層2とシーラント層3が界面で「適度に混ざる」と考えられる。これにより、中間層2とシーラント層3の間の剥離強度が大きくなると考えられる(念のため述べておくと、カバーテープ10をキャリアテープから剥離する際には、好ましくは中間層2とシーラント層3の間で剥離がなされる)。
また、詳細は不明であるが、おそらく、中間層2とシーラント層3が界面で「適度に混ざる」結果として、シーラント層3の塗布不良(カバーテープ10へのシワの発生など)が低減される傾向がある。また、後述する中間層2の60℃におけるタック力T60も関係している可能性がある。
基材層1を構成する材料は特に限定されない。典型的には、カバーテープ10を作製するとき、キャリアテープに対してカバーテープ10を接着するとき、外力が加わったとき等に十分に耐えうる程度の機械的強度が得られる材料が好ましい。また、キャリアテープにカバーテープ10を接着する際の熱に耐えうる程度の耐熱性を有する材料が好ましい。
基材層1を構成する材料の形態は、加工の容易性の点で、フィルム状であることが好ましい。
基材層1は、滑材や帯電防止剤などの添加剤を含んでもよい。
基材層1を形成するために用いられるフィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、一軸方向又は二軸方向に延伸されたフィルムであってもよい。カバーテープ10の機械的強度を一層向上させる観点からは、一軸方向又は二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
基材層1の厚さが50μm以下であることで、カバーテープ10の剛性が大きくなりすぎない。これにより、シール後のキャリアテープに対して捻り応力がかかった場合でも、カバーテープ10がキャリアテープの変形に追従しやすい。よって、カバーテープ10がキャリアテープから意図せず剥離してしまうことを抑制することができる。
基材層1の厚さが5μm以上であることで、カバーテープ10の機械的強度を十分良好なものとすることができる。よって、例えばキャリアテープからカバーテープ10を高速で剥離する場合でも、カバーテープ10が破断してしまうことを抑制することができる。
こうすることで、カバーテープ10とキャリアテープとからなる電子部品包装体において、電子部品が正しく収容されているか否かを検査できる程度に必要な透明性を確保することができる。言い換えると、基材層1の全光線透過率を80%以上とすることにより、カバーテープ10とキャリアテープとからなる包装体の内部に収容した電子部品を、外部から視認して確認しやすくなる。
全光線透過率は、JIS-K-7361に準じて測定することが可能である。
中間層2は、基材層1とシーラント層3の間に位置する。中間層2が存在することで、カバーテープ10のクッション性、耐衝撃性などを高めることができる。
密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンとしては、例えば、超低密度ポリエチレンなどとして市場に流通しているものを挙げることができる。より具体的には、日本ポリエチレン株式会社のメタロセンプラストマー「カーネル」(商標)などを挙げることができる。
適度な融点を有するポリエチレンを用いることで、カバーテープ10の製造時、および/または、キャリアテープとカバーテープ10とのヒートシール時に、ポリエチレンが融解しやすくなると考えられる。その結果、中間層2とシーラント層3との間がより強く密着し、剥離強度が一層高まると考えられる。
また、詳細は不明であるが、60℃以上の融点を有するポリエチレンを用いることで、カバーテープ10をキャリアテープにヒートシールした直後の温かい状態で搬送する場合の振動などによる剥離を抑えやすい。カバーテープ10はキャリアテープに連続的にヒートシールされ、そしてヒートシール時の熱が残ったままリールに巻かれ、そして搬送される場合がある。カバーテープ10を用いて電子部品を包装することで、このような場合の剥離を抑えやすい。
ポリエチレンとして市販品を用いる場合、融点はカタログ値を採用することができる。カタログ値が不明な市販のポリエチレン樹脂、または市販ではないポリエチレン樹脂を用いる場合、融点は、JIS K 7121に規定された方法により、DSC(示差走査熱量計)を用いて測定可能である。
密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンのメルトフローレートは、好ましくは0.5~20g/10min、より好ましくは1~15g/10minである。適当なメルトフローレートを有するポリエチレンを用いることで、例えばヒートシール性を一層高めることができる。
メルトフローレートは、通常、190℃/2.16kgの条件で測定される。
中間層2が多層構成である場合の好ましい態様として、図2に示される態様が挙げられる。図2のカバーテープ10においては、基材層1とシーラント層3の間には、基材層1に近いほうから、第一中間層2Aと、第一中間層2Aとは異なる第二中間層2Bとがある。そして、好ましくは、第二中間層2Bが、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含む。
第一中間層2Aは、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含んでもよいし、含まなくてもよい。コスト観点からは、第一中間層2Aは、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含まないことが好ましい。
通常は、第二中間層2Bが含むポリエチレンの密度のほうが、第一中間層2Aが含むポリエチレンの密度よりも小さい。
念のため述べておくと、中間層2は、他の樹脂を含まなくてもよい。
中間層2が単層である場合、中間層2中の、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンの含有量は、例えば50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
中間層2が多層である場合、シーラント層3に最も近接する層中の、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンの含有量は、例えば50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
t2/t1を0.2以上に設計することで、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを十分な量用いることができる。そして、剥離強度を十分に大きくすることができる。また、t2の割合が増えると中間層2全体としての引張弾性率が下がるため、コート工程やシール工程での熱によるテープのカールを抑制することができる。
t2/t1を5以下に設計することで、比較的低密度である第二中間層2Bの厚みt2が相対的に小さくなる。このことにより、カバーテープの全体としての強度低下が抑えられ、剥離時の切れが抑えられる傾向がある。また、t2/t1を5以下に設計することは、コスト面でも好ましい。
中間層2の厚さ(中間層2が複数層からなる場合は合計厚み)は、カバーテープ10全体のクッション性を向上させる観点から、好ましくは10~50μm、さらに好ましくは15~45μmである。
「中間層2のタック力」とは、シーラント層3を設けずに中間層2が露出しているカバーテープの、中間層2の露出面のタック力を、タッキング試験機を用いて測定することで求めることができる。
製造工程でシーラント層3と中間層2を同時に設ける等により、シーラント層3と中間層2を同時に有するカバーテープのみが得られる場合は、例えば、シーラント層3にキャリアテープ用シートをヒートシールし、その後、ヒートシールされたキャリアテープ用シートを、シーラント層3とともに剥離することでシーラント層3を丁寧に除去し、そして中間層2を露出させる。このようにして中間層2を露出させることで、タック力を測定することができる。この際、キャリアテープ用シートとしては、例えば住友ベークライト株式会社製の導電ポリスチレンキャリアテープ「CEL-E980A」などを挙げることができる。
中間層2の60℃におけるタック力T60がある程度大きいことにより、カバーテープ10の製造の際に加えられる熱(例えば、シーラント層3を塗布により設ける場合には、塗布溶液を乾燥させる際の加熱)によって、中間層2が含む樹脂の一部がシーラント層3に流れやすくなる。換言すると、T60が大きいことにより、カバーテープ10の製造の際、中間層2とシーラント層3が界面で「適度に混ざる」と考えられる。これにより、中間層2とシーラント層3の間の剥離強度が大きくなると考えられる。
(念のため述べておくと、カバーテープ10をキャリアテープから剥離する際には、中間層2とシーラント層3の間で剥離がなされる。)
シーラント層3は、ヒートシールによりカバーテープ10をキャリアテープにヒートシール可能なもの(熱により適度に融解するもの)である限り、特に限定されない。
中間層2との相性などの点で、シーラント層3は、好ましくは、(A)スチレン系樹脂および/または(B)(メタ)アクリル系樹脂を含む。
以下、これら樹脂について説明する。
(A)スチレン系樹脂中のスチレン含有率は15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。一方、(A)スチレン系樹脂中のスチレン含有率は、シーラント層3の密着性を保持する観点から、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下である。
カバーテープ10においては、シーラント層3のスチレン含有率を、上記下限値以上とすることにより、中間層2とシーラント層3との密着性がより向上し、剥離強度が一層向上する。メカニズムの詳細は明らかではないが、中間層2とシーラント層3との親和性が向上するためと推測される。
上記で、スチレン含有率とは、(A)スチレン系樹脂に含まれるスチレン由来の構造単位の割合(質量%)をいう。(A)スチレン系樹脂が2種以上の共重合体を含むとき、それぞれが有するスチレン含有率の平均値が、(A)スチレン系樹脂のスチレン含有率となる。
スチレン系樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、剥離強度を効果的に向上させる観点から、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体および/またはスチレン-オレフィン共重合体が好ましく用いられる。
スチレン-オレフィン共重合体の重合様式に制限はないが、カバーテープ10とキャリアテープ20との剥離強度の向上の観点から、スチレン-オレフィン共重合体は好ましくはブロック共重合体である。
MFRを上記下限値以上とすることにより、剥離強度を向上させやすくなる。
MFRを上記上限値以下とすることにより、作業性が良好となり、高い剥離強度が安定的に得られる。
(A)スチレン系樹脂のMFRは、200℃、5kgの条件でJIS-K-7210に準じて測定される。
成分(B)の(メタ)アクリル系樹脂は、(B-1)(メタ)アクリル酸に由来する構造単位、および/または、(B-2)(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む重合体のことをいう。
成分(B-1)の(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
成分(B-2)の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、および(メタ)アクリル酸エチルヘキシル等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
(B)(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を、例えば5質量%以上含み、好ましくは10質量%以上含み、より好ましくは15質量%以上含む。
(A)スチレン系樹脂と(B)(メタ)アクリル系樹脂とを併用する場合、(B)(メタ)アクリル系樹脂の含有量に対する、(A)スチレン系樹脂の含有量[(A)/(B)](質量比)は、0.015以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましい。一方、[(A)/(B)](質量比)は、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。
(A)/(B)を上記数値範囲とすることで、カバーテープ10の剥離性と密着性のバランスを一層向上させることができる。
シーラント層3は、帯電防止剤を含んでもよい。これにより、帯電防止能を向上させることができる。
帯電防止剤としては、例えば、リチウムイオンを含むものが挙げられる。リチウムイオンが樹脂中に存在する高分子型帯電防止剤を用いることができる。これにより、優れた帯電防止性能が持続的に安定して発揮される。
リチウムイオンは、例えば、リチウム塩のような形で帯電防止剤に含有させることができる。このリチウム塩としては、塩化リチウム、フッ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、メタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸リチウム等が挙げられる。
リチウムイオンを含まない帯電防止剤としては、例えば、以下を挙げることができる。
・ポリエーテル構造を含むポリマー(例えば、ポリエーテルエステルアミドなどのポリアミド系コポリマー、ポリオレフィンとポリエーテルのブロックポリマー、ポリエチレンエーテル及びグリコールからなるポリマーなど)、カリウムアイオノマーなどのカルボン酸塩基含有ポリマー、第4級アンモニウム塩基含有コポリマーなど。
・酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属含有フィラー(金属酸化物粒子など)。
・ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)、ポリアセチレン、ポリアニリン等の導電性ポリマー。
・導電カーボン。
金属含有フィラー(金属酸化物粒子など)の一次粒子径は、例えば顕微鏡画像から知ることができる。
また、帯電防止剤の含有量は、シーラント層3全体に対して、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。帯電防止剤はしばしば高価である。よって、帯電防止剤の含有量をこのようにすることで、カバーテープ10作製のコスト低減につながる。
シーラント層3は、粘着付与剤を含んでもよい。
粘着付与剤としては、石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂、クマロン・インデン樹脂等が挙げられる。中でも、電子部品の付着しにくさ、キャリアテープに対するヒートシール性、ガスバリア性などから、石油樹脂とスチレン樹脂が好適である。
石油樹脂系の粘着付与剤としては、脂肪族系の石油樹脂、芳香族系の石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系の石油樹脂等が挙げられる。市販品としては、荒川化学工業社の水素化石油樹脂、商品名「アルコン」シリーズなどがある。
シーラント層3が粘着付与剤を含む場合、シーラント層3全体に対する粘着付与剤の含有量の下限値は、キャリアテープとのシール強度を好適なものとする観点から、好ましくは0.5質量%より多く、より好ましくは1質量%以上である。
また、シーラント層全体に対する粘着付与剤の含有量の上限値は、電子部品の付着しにくさや、キャリアテープに対するヒートシール性などの観点から、例えば5質量%以下、具体的には4質量%以下である。
シーラント層3は、その特性を損なわない範囲で、上記成分のほか、アンチブロッキング剤、スリップ剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、界面活性剤、無機フィラー等の任意の添加剤を含んでいてもよい。かつ/または、シーラント層3の表面には、これらのコーティング処理が施されていてもよい。
シーラント層3の厚みが0.005μm以上であることで、十二分なシール性を担保することができる。また、捻じりによりシール層にクラックが発生し脱落することも抑制できる。
シーラント層3の厚みが5μm以下であることで、カバーテープ10の剛性が高くなりすぎない。これにより、シール後のキャリアテープに対して捻り応力がかかった場合でも、カバーテープ10がキャリアテープの変形に追従しやすい。よって、カバーテープ10がキャリアテープから意図せず剥離してしまうことを抑制することができる。
また、シーラント層3の厚みが2μm以下であることで、ヒートシール時に溶融した樹脂の「染み出し」が抑えられるという利点もある。
カバーテープ10は、基材層1、中間層2(単層または多層)およびシーラント層3以外に任意の層を備えていてもよい。
例えば、カバーテープ10は、基材層1と中間層2の間に接着層を備えていてもよい。こうすることで、カバーテープの機械的強度を向上させることができる。
カバーテープ10の製造方法は限定されない。例えば、公知の押出法、ラミネート法、塗布法などを適用することで、カバーテープ10を製造することができる。
(1)中間層2に相当するフィルムを準備する。中間層2が多層である場合には、例えば多層押出機(Tダイ)で製膜する。
(2)基材層1に相当するフィルム(PETフィルム等)を準備する。このフィルムにはコロナ処理等の表面処理を施してもよい。
(3)(2)で準備した基材層1に相当するフィルムの片面(コロナ処理を施した場合にはその処理面)に接着材料を塗り、基材層1に相当するフィルムを貼り合わせる。つまり、ドライラミネート法により、基材層1と中間層2とを備える多層フィルムを構成する。この際の接着材料としては、上述の接着層を形成するための材料を挙げることができる。
(4)(3)の多層フィルムの、中間層2が露出している面に、バーコーター等を用いて、シーラント層3形成用の塗布液を塗布する。そして、塗布された塗布液中の溶剤を乾燥させる。このようにしてシーラント層3を設けることができる。塗布液は、上述の、(A)スチレン系樹脂、(B)(メタ)アクリル系樹脂などを、何らかの溶剤に溶解または分散させたものであることができる。塗布液の不揮発成分濃度は、シーラント層3の所望の厚み等に応じて適宜調整すればよい。
(5)必要に応じ、得られた多層フィルムを、適当な長さおよび幅に裁断する。
図3は、電子部品包装体100を模式的に示した図である。
上述のカバーテープ10と、電子部品がポケット21(凹部)に収容されたキャリアテープ20とにより、電子部品包装体100が構成されている。
まず、キャリアテープ20のポケット21内に電子部品を収容する。
次に、キャリアテープ20のポケット21の開口部全面を覆うように、キャリアテープ20の表面にカバーテープ10をヒートシール法により接着する。この際、カバーテープ10におけるシーラント層3がキャリアテープ20と接するようにする(つまり、図3におけるカバーテープ10の「裏面」がシーラント層3となるようにしてヒートシールを行う)。こうすることで、電子部品が密封収容された構造体(電子部品包装体100)が得られる。
ヒートシールの具体的なやり方や条件は、カバーテープ10がキャリアテープ20に十分強く接着する限り特に限定されない。典型的には、公知のテーピングマシンを用い、温度100~240℃、荷重0.1~10kgf(0.98~98N)、時間0.0001~1秒の範囲内で行うことができる。
上述のカバーテープ10を、これら材料で構成されたキャリアテープ20にヒートシールして電子部品包装体とすることで、高い剥離強度を実現することができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
電子部品包装用のカバーテープであって、
当該カバーテープは、基材層と、前記基材層の片面側に設けられたシーラント層とを備え、
前記基材層と前記シーラント層の間には少なくとも1層の中間層があり、
前記中間層は、密度が0.890~0.912g/cm 3 であるポリエチレンを含む、カバーテープ。
2.
1.に記載のカバーテープであって、
前記ポリエチレンの融点が、60~104℃である、カバーテープ。
3.
1.または2.に記載のカバーテープであって、
前記シーラント層は、スチレン系樹脂および/または(メタ)アクリル系樹脂を含む、カバーテープ。
4.
1.~3.のいずれか1つに記載のカバーテープであって、
前記基材層は、ポリエステル樹脂を含む、カバーテープ。
5.
1.~4.のいずれか1つに記載のカバーテープであって、
前記シーラント層は、帯電防止剤を含む、カバーテープ。
6.
電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、1.~5.のいずれか1つに記載のカバーテープとを備え、
前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。
(基材層)
膜厚12μmの二軸延伸ポリエステル(PET)フィルム(東洋紡績株式会社、商品名:6140)
カーネルKC573(日本ポリエチレン株式会社製、密度0.910g/cm3のポリエチレン、融点102℃)
カーネルKF260T(日本ポリエチレン株式会社製、密度0.901g/cm3のポリエチレン、融点93℃、MFR(190℃、2.16kg):2g/10分))
ユメリット4540F(宇部丸善ポリエチレン製、0.913g/cm3のポリエチレン、99、114℃、MFR(190℃、2.16kg):4g/10分))
ペトロセン203(東ソー社製、密度0.919g/cm3のポリエチレン、融点115℃)
トーヨースチロールMS-750(東洋スチレン株式会社製、スチレン・メタクリレート共重合樹脂)
H850N(東洋スチレン社製、HIPS(ハイインパクトポリスチレン))
カーネルKC452T(日本ポリエチレン株式会社製、密度0.888g/cm3のポリエチレン、融点55℃)
タフテックP2000(旭化成社製、水添スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン含有率(ポリスチレン比率):67質量%)
以下の配合1および配合2の、シーラント層形成用塗布液を調製した。
配合1:
ポリ(メタ)アクリル酸誘導体(大日本インキ社製「A450A」) 40質量%
帯電防止剤(酸化錫、三菱マテリアル社製「T-1」) 60質量%
配合2:
スチレン系樹脂(スチレンブタジエン共重合体、タフテックH1517、スチレン含有率43質量%)13.3質量%
ポリ(メタ)アクリル酸誘導体(大日本インキ社製「A450A」) 26.7質量%
帯電防止剤(酸化錫、三菱マテリアル社製「T-1」) 60質量%
以下のような手順でカバーテープを製造した。
(1)Tダイ法により、中間層に相当するフィルムを200℃で製膜した。中間層が2層以上からなる場合は、共押出多層Tダイ法を採用した。
(2)基材層に相当するポリエステルフィルムの片面にコロナ処理を施し、そのコロナ処理面に、ドライラミネート用接着剤(三井化学株式会社製、タケラックA-520)をコートした。
(3)(1)で製膜した中間層に相当するフィルムと、(2)で準備したポリエステルフィルムとを、ドライラミネートして接合した。これにより、中間層と基材層を有する多層フィルムを得た。
(4)(3)で得られた多層フィルムの中間層側にコロナ処理を施した。
(5)得られた積層フィルムの中間層側の面上に、表1に示されるシーラント層形成用塗布液(配合1または配合2)50質量%とテトラヒドロフラン50質量%とを混合した混合液を、グラビアコーティング法により塗布し、70℃で乾燥させてシーラント層を形成した。塗布量は、最終的なシーラント層の厚みが表1に記載の厚みになるように調整した。
まず、製造されたカバーテープのシーラント層側と、導電ポリスチレンキャリアテープ(住友ベークライト社製「CEL-E980A」)を、条件150℃、0.5MPa、1秒でヒートシールした。その後、手剥離にてヒートシールされたキャリアテープ用シートをシーラント層とともに剥離し、シーラント層3を丁寧に除去した。このようにして中間層を露出させた。
・プローブ径:5mmφ
・プローブ温度:60℃
・プローブがカバーテープを押し付ける荷重:2500gf
・押し付けを継続する時間:20秒
・プローブを引きはがす速度:10mm/s
剥離強度の評価は、JIS C 0806-3に準拠する剥離試験に従って行った。
具体的には、まず、カバーテープを、幅9.5mmに裁断した。裁断したカバーテープを、幅12mmの寸法のキャリアテープ(導電ポリスチレンキャリアテープ、住友ベークライト社製の「CEL-E980A」)に、ヒートシール温度180℃、アイロンサイズ0.4mm巾×32mm長、2列・4度打ち、荷重1kg、シール時間100ミリ秒の条件でヒートシール機を用いてヒートシールした。これにより剥離強度測定用のサンプルを得た。
得られたサンプルを用いて、剥離速度300mm/min、剥離角度170°、剥離時間10秒の条件でカバーテープをキャリアテープから剥離した。この際の剥離強度(単位:gf)を測定した。後掲の表には、10秒の測定における剥離強度の平均値を記載した。
上記の剥離強度の測定後のサンプルの外観を目視で観察した。シーラント層と中間層の間できれいに剥がれていたものを〇(良好)、外観が汚かったり、糸引きが生じたり、シーラント層と中間層の間で剥がれずに第一中間層と第二中間層の間で剥がれたりしていたもの(「デラミ」が発生していたもの)を×(不良)と評価した。後掲の表において、×のものについては、どのような不良が発生したかも併記した。
得られた各カバーテープのシーラント層を観察した。そして、シワが全く確認されなかったものを○(良い)、ヒートシール性や剥離性に影響が出る程度のシワが確認されたものを×(悪い)と評価した。
まず、<評価:剥離強度の測定>の(サンプル作成)のようにして、試験用の複合体を得た。これを、80℃オーブン中に3時間静置した。その後、オーブンからサンプルを取り出した。そして、ヒートシール部の剥がれがないかどうかを確認した。ヒートシール部の剥がれが認められなかった場合を○(良好)、ヒートシール部の剥がれが認められた場合を×(不良)と評価した。
下表において、メルトフローレートの測定条件は、明記のない場合、190℃/2.1kgである。
実施例1および5において、メルトフローレートは、中間層に用いられている2種の樹脂の混合物の値を記載している。
一方、中間層がポリエチレン樹脂を含まない場合や、中間層が低密度すぎる/高密度すぎるポリエチレンを含む場合には、実施例に比べて小さな剥離強度しか得られなかった。
2 中間層
2A 第一中間層
2B 第二中間層
3 シーラント層
10 カバーテープ
20 キャリアテープ
21 ポケット
100 電子部品包装体
Claims (4)
- 電子部品包装用のカバーテープであって、
当該カバーテープは、基材層と、前記基材層の片面側に設けられた単層のシーラント層とを備え、
前記基材層と前記シーラント層の間には少なくとも1層の中間層があり、
前記中間層は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含み、
前記基材層は、樹脂としてポリエステル系樹脂のみを含み、
前記シーラント層は、帯電防止剤を含み、前記帯電防止剤は、金属含有フィラーを含み、前記金属含有フィラーは、金属酸化物粒子を含み、
前記中間層と前記シーラント層とは直接接しており、
前記シーラント層は、当該カバーテープの最表面に設けられており、前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出している、カバーテープ。 - 請求項1に記載のカバーテープであって、
前記ポリエチレンの融点が、60~104℃である、カバーテープ。 - 請求項1または2に記載のカバーテープであって、
前記シーラント層は、スチレン系樹脂および/または(メタ)アクリル系樹脂を含む、カバーテープ。 - 電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、請求項1~3のいずれか1項に記載のカバーテープとを備え、
前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。
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