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JP7275464B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、空気入りタイヤに関する。
トラックやバス等の車輌に装着される空気入りタイヤにおいて、耐摩耗性と低燃費性を両立させるために、トレッドゴムを、トレッド面をなすキャップゴム層と、その半径方向内側に配されるベースゴム層との二層構造で構成することが知られている。キャップゴム層には耐摩耗性に優れるゴムが用いられ、ベースゴム層には損失正接tanδが低い低発熱性のゴムが用いられる。
例えば、特許文献1には、トレッド部の中で最も発熱が大きいショルダー部において、低発熱性のベースゴム層の占める割合を高めるとともに、トレッド中央領域ではキャップゴム層の厚さをショルダー部でのキャップゴム層の厚さよりも大きくし、これにより耐摩耗性と低燃費性を両立させることが記載されている。
特許文献2には、トレッドショルダー部におけるリブティアーを防止するために、ベルトのタイヤ軸方向外端を覆う部分のベースゴム層のボリュームを小さくし、ショルダーリブの略全体をキャップゴム層で構成することが開示されている。
特開2007-137411号公報 特開2017-210077号公報
しかしながら、特許文献1のようにショルダー部におけるベースゴム層の占める割合が高すぎると、ショルダー部における摩耗量が多い摩耗形態である場合に、摩耗によりベースゴム層が早期に露出しやすい。ベースゴム層は、一般に摩耗が早く、外傷に弱いため、ベースゴム層が露出してしまうと、早期にタイヤ交換しなければならなくなる。また、ショルダー部に設けられたラグ溝が深い場合に、ベースゴム層がラグ溝に露出し、路面の凹凸や石を噛んだときにベースゴム層の露出部分を起点にクラックが発生しやすくなる。
一方、特許文献2のようにベースゴム層のボリュームが小さいと、低発熱性のベースゴム層による低燃費性の効果が損なわれる。
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、低燃費性を改善しつつ、ベースゴム層の早期露出を防ぐことができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、トレッド部に設けられたトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ半径方向内側に設けられた複数のベルトからなるベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、
前記トレッドゴムは、路面と接触するトレッド面を備えるキャップゴム層と、前記キャップゴム層のタイヤ半径方向内側に配されたベースゴム層とからなり、
前記ベルト層は、幅が最大である最大幅ベルトと、タイヤ半径方向において最も外側に配される最外ベルトとを備え、
前記キャップゴム層と前記ベースゴム層との界面と前記最外ベルトのタイヤ軸方向外端からタイヤ軸方向に延びる最外ベルト横基準線との交点が、前記最大幅ベルトのタイヤ軸方向外端から前記トレッド面に延びる法線と前記最外ベルト横基準線との交点よりも、タイヤ軸方向内側にあり、
前記キャップゴム層は、そのタイヤ軸方向外端部が、前記ベースゴム層のタイヤ軸方向外端部を覆いかつ当該ベースゴム層のタイヤ軸方向外端よりもタイヤ半径方向内側で終端し、前記ベースゴム層のタイヤ軸方向外端が前記トレッド面の端よりもタイヤ軸方向外側にあることを特徴とする。
本明細書では、特に断らない限り、空気入りタイヤの各部の寸法等は、空気入りタイヤを正規リムに装着して50kPaを充填した状態で測定される値である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"MeasuringRim"である。
本実施形態によれば、ベースゴム層のタイヤ軸方向外端をトレッド面の端よりもタイヤ軸方向外側に設定したことにより、ベースゴム層のボリュームを確保することができる。また、キャップゴム層とベースゴム層との界面を、最大幅ベルトの外端からトレッド面に延びる法線と最外ベルト横基準線との交点よりも内側に設定したことにより、ベースゴム層を露出しにくくすることができる。そのため、低燃費性を改善しつつ、ベースゴム層の早期露出を防ぐことができる。
一実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面を示す半断面図 図1の要部拡大図
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示す一実施形態に係る空気入りタイヤ10は、接地面をなすトレッド部12と、左右一対のビード部と、トレッド部12とビード部との間に介在する左右一対のサイドウォール部14とからなる。本実施形態に係る空気入りタイヤ10は、トラックやバス等に装着される重荷重用空気入りタイヤである。
図中、符号CLは、タイヤ軸方向中心に相当するタイヤ赤道面を示す。この例では、空気入りタイヤ10は、タイヤ赤道面CLに関して左右対称である。
ここで、タイヤ軸方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図において符号WDに示す。タイヤ軸方向WD内側とはタイヤ赤道面CLに近づく方向であり、タイヤ軸方向WD外側とはタイヤ赤道面CLから離れる方向である。また、タイヤ半径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図において符号RDで示す。タイヤ半径方向RD内側とはタイヤ回転軸に近づく方向であり、タイヤ半径方向RD外側とはタイヤ回転軸から離れる方向である。タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心とした円周上の方向である。
空気入りタイヤ10は、一対のビード部間に跨がってトロイダル状に延びるカーカス層16を備える。カーカス層16は、トレッド部12から両側のサイドウォール部14を経てビード部に至り、ビード部において係止される。カーカス層16は、スチールコード等のカーカスコードをタイヤ周方向に対して実質上直角になるように配列しゴムで被覆してなる少なくとも1枚のカーカスプライからなる。
トレッド部12には、カーカス層16のタイヤ半径方向RD外側にベルト層18が設けられるとともに、ベルト層18のタイヤ半径方向RD外側にトレッドゴム20が積層されている。
ベルト層18は、トレッドゴム20のタイヤ半径方向RD内側に設けられた複数のベルト22,24,26から構成されている。ベルト22,24,26は、スチールコード等のベルトコードをタイヤ周方向に対して例えば10°~35°の傾斜した角度で配列しゴムで被覆してなる。この例では、ベルト層18は、タイヤ半径方向RD内側から順に、第1ベルト22、第2ベルト24及び第3ベルト26との3枚のベルトを持つ三層構造である。
第1ベルト22は、タイヤ半径方向RDにおいて最も内側に配される最内ベルト(以下、「最内ベルト22」という。)である。第2ベルト24は、3枚のベルトのうち、幅(ベルト幅、即ちベルトのタイヤ軸方向WDにおける寸法)が最大である最大幅ベルト(以下、「最大幅ベルト24」という。)である。第3ベルト26は、タイヤ半径方向RDにおいて最も外側に配される最外ベルト(以下、「最外ベルト26」という。)である。
最大幅ベルト24の幅は特に限定されず、例えば、トレッド幅TWの0.80~0.95倍でもよい。最内ベルト22及び最外ベルト26の幅も特に限定されず、例えば、最大幅ベルト24の幅の0.80~0.95倍でもよい。
ベルト層18は、その両端部がカーカス層16から次第に離隔されるように、当該両端部のタイヤ半径方向RD内側に断面三角形状のベルトクッションゴム28が設けられている。また、最大幅ベルト24と最外ベルト26との間にも、両者の両端部がタイヤ軸方向WD外方ほど次第に離隔されるように、断面三角形状の最外ベルト下ゴム30が設けられている。
トレッドゴム20は、路面と接触するトレッド面32を備えるキャップゴム層34と、該キャップゴム層34のタイヤ径方向RD内側に配されたベースゴム層36とからなる二層構造をなす。
トレッド面32は、接地面をなすトレッド部12の外周面である。トレッド部12は、トレッド面32と左右一対の側面38とを有することで、タイヤ半径方向RD外向きに凸な形状を呈している。トレッド部12(詳細にはキャップゴム層34)の半径方向外側面がトレッド面32であり、該トレッド面32の端(タイヤ軸方向外端)32Aからタイヤ半径方向RD内向きに絶壁状に延在するタイヤ軸方向外側面(所謂バットレス面)が側面38(以下、「タイヤ外側面38」という。)である。トレッド面32の端32Aがトレッド接地端である。上記トレッド幅TWは、トレッド面32のタイヤ軸方向寸法であり、両側の端32A間の距離である。
キャップゴム層34は、そのタイヤ軸方向外端部34Aが、ベースゴム層36のタイヤ軸方向外端部36Aを覆い、かつ、当該ベースゴム層36のタイヤ軸方向外端36A1よりもタイヤ半径方向RD内側で終端している。すなわち、キャップゴム層34のタイヤ軸方向外端34A1は、ベースゴム層36のタイヤ軸方向外端36A1よりも、タイヤ軸方向WD外側かつタイヤ半径方向RD内側に位置している。これにより、ベースゴム層36は、その全幅がキャップゴム層34により覆われており、タイヤ外側面38には露出していない。なお、ベースゴム層36のタイヤ軸方向外端部36Aは、最大幅ベルト24のタイヤ軸方向外端24Aを覆い、当該外端24Aのタイヤ軸方向WD外側において後述する最大幅ベルト横基準線56(図2参照)をタイヤ半径方向RD内方に越えて終端している。
カーカス層16の外側かつサイドウォール部14に配されるサイドウォールゴム40は、そのタイヤ半径方向外端部40Aが、トレッドゴム20(詳細にはキャップゴム層34)のタイヤ軸方向外端部34Aを覆ってトレッド部12まで延在している。そのため、トレッド部12の上記側面38は、トレッド面32の端32Aに隣接する部分がキャップゴム層34で形成されるとともに、その半径方向内側に隣接する部分がサイドウォールゴム40で形成されている。
ここで、ベースゴム層36には、キャップゴム層34よりも損失正接tanδが小さいゴムが用いられる。例えば、ベースゴム層36にはtanδが0.04~0.12の範囲内のゴムを用いてもよく、キャップゴム層34にはtanδが0.10~0.22の範囲内のゴムを用いてもよい。
また、キャップゴム層34には、ベースゴム層36よりも硬度の高いゴムが用いられる。例えば、キャップゴム層34には硬度が60~70の範囲内のゴムを用いてもよく、ベースゴム層36には硬度が55~62の範囲内のゴムを用いてもよい。
このようにベースゴム層36に低発熱のゴムを用いることにより、低燃費性を向上することができるとともに、ベルト層18の端部近傍での発熱を抑制してベルト層18の耐久性を向上させることができる。また、キャップゴム層34には摩耗しにくいゴム、カットチップに強いゴムを用いることにより、耐摩耗性、外傷性(耐クラック性)を向上することができる。
本明細書において、ゴムのtanδは、粘弾性スペクトロメータを用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%、動歪1%として測定される値である。また、ゴム硬度は、JIS K6253-1-2012 3.2デュロメータ硬さ(durometer hardness)であり、一般ゴム(中硬さ)用のタイプAデュロメータを用いて、23℃の雰囲気下で測定される。
トレッド面32には、タイヤ周方向に延びる複数(この例では3本)の周方向主溝42が設けられ、それにより複数の陸部が区画されている。タイヤ軸方向WDの最外側に配される周方向主溝42よりもタイヤ軸方向WD外側の陸部であるトレッドショルダー部44には、タイヤ軸方向WDに延びるラグ溝46がタイヤ周方向に間隔をあけて設けられている。ラグ溝46は、一端がトレッド面32の端32Aにおいて開口し、他端がトレッドショルダー部44内で終端する横溝である。
なお、符号48は、タイヤ内面の全体に設けられた耐空気透過層であるインナーライナーを示している。
本実施形態に係る空気入りタイヤ10では、図1及び図2に示す正規リム組み状態のタイヤ軸方向断面において、以下のようにトレッド部12の各部の配置・寸法等が設定されている。ここで、タイヤ軸方向断面とは、タイヤ軸方向WDに沿う断面であり、タイヤ子午線方向断面ということもできる。また、正規リム組み状態とは、上記の通り、空気入りタイヤ10を正規リムに装着して50kPaの内圧を充填した状態である。
(1)キャップゴム層34とベースゴム層36との界面50と最外ベルト26のタイヤ軸方向外端26Aからタイヤ軸方向WDに延びる最外ベルト横基準線52との交点Pが、最大幅ベルト24のタイヤ軸方向外端24Aからトレッド面32に延びる法線54と最外ベルト横基準線52との交点Qよりも、タイヤ軸方向内側にある。
ここで、最外ベルト横基準線52は、上記タイヤ軸方向外端26Aの厚さ中心からタイヤ軸方向WDに平行に延びる直線である。また、法線54は、上記タイヤ軸方向外端24Aの厚さ中心を通る、トレッド面32上の一点における法線であり、トレッド面32の端32Aよりもタイヤ軸方向WD内側でトレッド面32と直角に交差する。交点Pは、界面50と最外ベルト横基準線52との交点であり、交点Qは、法線54と最外ベルト横基準線52との交点である。
上記(1)のように、最外ベルト横基準線52上において交点Pを交点Qよりもタイヤ軸方向WD内側に設定したことにより、トレッドショルダー部44(特にそのタイヤ軸方向WD外寄り部分)においてキャップゴム層34とベースゴム層36との界面50が低くなる。そのため、トレッドショルダー部44における摩耗量が多い摩耗形態である場合であっても、ベースゴム層36の早期の露出を防ぐことができ、耐摩耗性を向上することができる。また、タイヤショルダー部44に設けられたラグ溝46が深い場合でも、ベースゴム層36がラグ溝46に露出しにくく、ラグ溝46でのクラックの発生を抑制することができる。
(2)ベースゴム層36のタイヤ軸方向外端36A1がトレッド面32の端32Aよりもタイヤ軸方向WD外側にある。すなわち、ベースゴム層36の外端36A1がトレッド接地端32Aのタイヤ軸方向位置Eよりもタイヤ軸方向WD外側にある。
このようにベースゴム層36の外端36A1をトレッド接地端32Aよりもタイヤ軸方向WD外側に設定したことにより、キャップゴム層34とベースゴム層36との界面50をトレッドショルダー部44において低く抑えながら、ベースゴム層36のボリュームを確保することができる。そのため、ベースゴム層36の早期露出を防ぎながら、低燃費性を改善することができる。
(3)最大幅ベルト24のタイヤ軸方向外端24Aからタイヤ軸方向WDに延びる最大幅ベルト横基準線56上において、ベースゴム層36の厚さLaと最大幅ベルト24のタイヤ軸方向外端24Aからタイヤ外側面38までの距離Ltとの比La/Ltが0.10~0.50である。ここで、最大幅ベルト横基準線56は、上記タイヤ軸方向外端24Aの厚さ中心からタイヤ軸方向WDに平行に延びる直線である。
La/Ltが0.10以上であることにより、ベースゴム層36による低発熱性を高めて低燃費性及び耐久性の向上に有利である。また、La/Ltが0.50以下であることにより、ベースゴム層36の早期露出の抑制効果を高めることができる。より好ましくは、La/Ltの下限は0.20以上であり、上限は0.40以下、0.35以下、又は0.30以下である。
(4)最外ベルト横基準線52上において、ベースゴム層36の厚さKaと最外ベルト26のタイヤ軸方向外端26Aからタイヤ外側面38までの距離Ktとの比Ka/Ktが0.10~0.45である。
Ka/Ktが0.10以上であることにより、ベースゴム層36による低発熱性を高めて低燃費性及び耐久性の向上に有利である。また、Ka/Ktが0.45以下であることにより、ベースゴム層36の早期露出の抑制効果を高めることができる。より好ましくは、Ka/Ktの下限は0.20以上であり、上限は0.40以下、0.35以下、又は0.30以下である。
(5)上記法線54上において、ベースゴム層36の厚さTaと最大幅ベルト24のタイヤ軸方向外端24Aからトレッド面32までの距離Ttとの比Ta/Ttが0.10~0.30である。
Ta/Ttが0.10以上であることにより、ベースゴム層36による低発熱性を高めて低燃費性及び耐久性の向上に有利である。また、Ta/Ttが0.30以下であることにより、ベースゴム層36の早期露出の抑制効果を高めることができる。より好ましくは、Ta/Ttの下限は0.15以上であり、上限は0.25以下である。
(6)キャップゴム層34の厚さがトレッドショルダー部44で増加し始める起点となる界面50の変化点Rのタイヤ軸方向位置Fが、最外ベルト26のタイヤ軸方向外端26Aから当該最外ベルト幅BW(図1参照)の2.5%の距離の範囲内にある。
ここでいうキャップゴム層34の厚さとは、キャップゴム層34のタイヤ半径方向RDでの厚さであり、トレッド面32と界面50とのタイヤ半径方向RDでの距離である(溝部分以外での厚さ)。また、最外ベルト幅BWとは、最外ベルト26のタイヤ軸方向WDの両端間の距離(タイヤ軸方向距離)である。
界面50の変化点Rとは、タイヤ軸方向WD外方に向かってキャップゴム層34の厚さが増加し始める点である。すなわち、トレッドショルダー部44において、界面50の曲率が変化することにより、キャップゴム層34の厚さが、タイヤ軸方向WD外方に向かって一定の値から大きくなり始める点があり、この曲率が変化する点が変化点Rである。従って、変化点Rは曲率変化点ということもできる。そのため、変化点Rのタイヤ軸方向WD内側ではキャップゴム層34の厚さが一定であり、変化点Rのタイヤ軸方向WD外側ではトレッド接地端32Aに至るまでタイヤ軸方向WD外方ほどキャップゴム層34の厚さが大きくなる。
上記(6)は、変化点Rのタイヤ軸方向位置Fが、最外ベルト26のタイヤ軸方向外端26Aとほぼ一致していることを意味している。即ち、当該外端26Aのタイヤ軸方向位置を中心として、最外ベルト26の幅である最外ベルト幅BWの±2.5%の範囲内に、変化点Rのタイヤ軸方向位置Fが設定されている。このように設定することにより、ベースゴム層36の早期露出抑制と低燃費性改善とを両立しやすくなる。
(7)上記界面50の変化点Rのタイヤ軸方向位置Fが、最内ベルト22のタイヤ軸方向外端22Aよりもタイヤ軸方向WD外側にある。これにより、ベースゴム層36のボリュームを大きくして低発熱性を高めることができる。
タイヤサイズ:225/70R19.5の重荷重用空気入りラジアルタイヤについて実施例及び比較例を行った。実施例及び比較例の各タイヤについて、基本的な構成は上記実施形態で説明した通りであり、下記表1に示すように各諸元を設定してタイヤを試作した。なお、全ての実施例及び比較例において、キャップゴム層34にはtanδが0.15かつゴム硬度が65のゴムを使用し、ベースゴム層36にはtanδが0.08かつゴム硬度が59のゴムを使用した。各試作タイヤについて、低燃費性、耐クラック性、耐久性及び耐摩耗性を評価した。評価方法は以下の通りである。
・低燃費性:リムサイズ(6.75×19.5)、内圧(760kPa)、縦荷重(15.0kN)、速度(80km/h)の条件にて、転がり抵抗を測定し、転がり抵抗の逆数について比較例2の値を100とする指数で評価した。指数が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低燃費性が優れている。
・耐クラック性:リムサイズ(6.75×19.5)、内圧(760kPa)、縦荷重(17.7kN)、速度(40km/h)の条件にて、ドラム上を走行させ、ラグ溝にクラックが発生するまでの走行時間を比較例2の値を100とする指数で評価した。指数が大きいほど走行時間が長く、耐クラック性が優れている。
・耐久性:リムサイズ(6.75×19.5)、内圧(760kPa)、縦荷重(26.5kN)、速度(40km/h)の条件にて、ドラム上を走行させ、トレッド部に損傷が発生するまでの走行時間を比較例2の値を100とする指数で評価した。指数が大きいほど走行時間が長く、耐久性に優れている。
・耐摩耗性:リムサイズ(6.75×19.5)、内圧(760kPa)の条件にて、タイヤ1本当たりの荷重が17.7kNとなるように荷を積載したトラックに装着して20万kmを走行させた。そして溝深さを測定して摩耗量を求め、その平均値の逆数を比較例2の値を100とする指数で評価した。指数が大きいほど摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れている。

Figure 0007275464000001
結果は、表1に示す通りである。比較例2では、ベースゴム層36のタイヤ軸方向外端36A1がトレッド接地端32Aよりもタイヤ軸方向WD内側にある。そのため、比較例2では、低発熱性であるベースゴム層36のボリュームが小さく、低発熱性に劣ることから、低燃費性と耐久性に劣っていた。比較例1では、最外ベルト横基準線52と界面50との交点Pが最外ベルト横基準線52と法線54との交点Qよりもタイヤ軸方向WD外側にある。そのため、比較例1では、低燃費性及び耐久性には優れるものの、トレッドゴム20の摩耗によりベースゴム層36が早期に露出してしまい、耐クラック性と耐摩耗性に劣っていた。
これに対し、実施例1~9では、ベースゴム層36のタイヤ軸方向外端36A1がトレッド接地端32Aよりもタイヤ軸方向WD外側にあり、かつ、最外ベルト横基準線52と界面50との交点Pが最外ベルト横基準線52と法線54との交点Qよりもタイヤ軸方向WD内側にある。そのため、実施例1~9では、比較例2に対し、ベースゴム層36のボリュームを大きくすることで低燃費性と耐久性を改善することができた。また、ベースゴム層36の早期摩耗を抑えることができ、比較例1に比べて、耐クラック性及び耐摩耗性の悪化を抑えることができた。そのため、低燃費性、耐クラック性、耐久性及び耐摩耗性をバランスよく改善することができた。
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
10…空気入りタイヤ、12…トレッド部、18…ベルト層、20…トレッドゴム、22…最内ベルト、22A…タイヤ軸方向外端、24…最大幅ベルト、24A…タイヤ軸方向外端、26…最外ベルト、26A…タイヤ軸方向外端、32…トレッド面、32A…トレッド面の端、34…キャップゴム層、34A…キャップゴム層のタイヤ軸方向外端部、36…ベースゴム層、36A…ベースゴム層のタイヤ軸方向外端部、36A1…ベースゴム層のタイヤ軸方向外端、38…タイヤ外側面、44…トレッドシュルダー部、50…界面、52…最外ベルト横基準線、54…法線、56…最大幅ベルト横基準線、WD…タイヤ軸方向、RD…タイヤ半径方向、BW…最外ベルト幅、P…界面と最外ベルト横基準線との交点、Q…法線と最外ベルト横基準線との交点、R…界面の変化点

Claims (4)

  1. トレッド部に設けられたトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ半径方向内側に設けられた複数のベルトからなるベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、
    前記トレッドゴムは、路面と接触するトレッド面を備えるキャップゴム層と、前記キャップゴム層のタイヤ半径方向内側に配されたベースゴム層とからなり、
    前記ベルト層は、幅が最大である最大幅ベルトと、タイヤ半径方向において最も外側に配される最外ベルトとを備え、
    前記キャップゴム層と前記ベースゴム層との界面と前記最外ベルトのタイヤ軸方向外端からタイヤ軸方向に延びる最外ベルト横基準線との交点が、前記最大幅ベルトのタイヤ軸方向外端から前記トレッド面に延びる法線と前記最外ベルト横基準線との交点よりも、タイヤ軸方向内側にあり、
    前記キャップゴム層は、そのタイヤ軸方向外端部が、前記ベースゴム層のタイヤ軸方向外端部を覆いかつ当該ベースゴム層のタイヤ軸方向外端よりもタイヤ半径方向内側で終端し、前記ベースゴム層のタイヤ軸方向外端が前記トレッド面の端よりもタイヤ軸方向外側にあり、
    前記最大幅ベルトのタイヤ軸方向外端からタイヤ軸方向に延びる最大幅ベルト横基準線上において、前記ベースゴム層の厚さLaと前記最大幅ベルトのタイヤ軸方向外端からタイヤ外側面までの距離Ltとの比La/Ltが0.10~0.50である、
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. トレッド部に設けられたトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ半径方向内側に設けられた複数のベルトからなるベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、
    前記トレッドゴムは、路面と接触するトレッド面を備えるキャップゴム層と、前記キャップゴム層のタイヤ半径方向内側に配されたベースゴム層とからなり、
    前記ベルト層は、幅が最大である最大幅ベルトと、タイヤ半径方向において最も外側に配される最外ベルトとを備え、
    前記キャップゴム層と前記ベースゴム層との界面と前記最外ベルトのタイヤ軸方向外端からタイヤ軸方向に延びる最外ベルト横基準線との交点が、前記最大幅ベルトのタイヤ軸方向外端から前記トレッド面に延びる法線と前記最外ベルト横基準線との交点よりも、タイヤ軸方向内側にあり、
    前記キャップゴム層は、そのタイヤ軸方向外端部が、前記ベースゴム層のタイヤ軸方向外端部を覆いかつ当該ベースゴム層のタイヤ軸方向外端よりもタイヤ半径方向内側で終端し、前記ベースゴム層のタイヤ軸方向外端が前記トレッド面の端よりもタイヤ軸方向外側にあり、
    前記最外ベルト横基準線上において、前記ベースゴム層の厚さKaと前記最外ベルトのタイヤ軸方向外端からタイヤ外側面までの距離Ktとの比Ka/Ktが0.10~0.45である、
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  3. トレッド部に設けられたトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ半径方向内側に設けられた複数のベルトからなるベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、
    前記トレッドゴムは、路面と接触するトレッド面を備えるキャップゴム層と、前記キャップゴム層のタイヤ半径方向内側に配されたベースゴム層とからなり、
    前記ベルト層は、幅が最大である最大幅ベルトと、タイヤ半径方向において最も外側に配される最外ベルトとを備え、
    前記キャップゴム層と前記ベースゴム層との界面と前記最外ベルトのタイヤ軸方向外端からタイヤ軸方向に延びる最外ベルト横基準線との交点が、前記最大幅ベルトのタイヤ軸方向外端から前記トレッド面に延びる法線と前記最外ベルト横基準線との交点よりも、タイヤ軸方向内側にあり、
    前記キャップゴム層は、そのタイヤ軸方向外端部が、前記ベースゴム層のタイヤ軸方向外端部を覆いかつ当該ベースゴム層のタイヤ軸方向外端よりもタイヤ半径方向内側で終端し、前記ベースゴム層のタイヤ軸方向外端が前記トレッド面の端よりもタイヤ軸方向外側にあり、
    前記法線上において、前記ベースゴム層の厚さTaと前記最大幅ベルトのタイヤ軸方向外端から前記トレッド面までの距離Ttとの比Ta/Ttが0.10~0.30である、
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  4. トレッド部に設けられたトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ半径方向内側に設けられた複数のベルトからなるベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、
    前記トレッドゴムは、路面と接触するトレッド面を備えるキャップゴム層と、前記キャップゴム層のタイヤ半径方向内側に配されたベースゴム層とからなり、
    前記ベルト層は、幅が最大である最大幅ベルトと、タイヤ半径方向において最も外側に配される最外ベルトとを備え、
    前記キャップゴム層と前記ベースゴム層との界面と前記最外ベルトのタイヤ軸方向外端からタイヤ軸方向に延びる最外ベルト横基準線との交点が、前記最大幅ベルトのタイヤ軸方向外端から前記トレッド面に延びる法線と前記最外ベルト横基準線との交点よりも、タイヤ軸方向内側にあり、
    前記キャップゴム層は、そのタイヤ軸方向外端部が、前記ベースゴム層のタイヤ軸方向外端部を覆いかつ当該ベースゴム層のタイヤ軸方向外端よりもタイヤ半径方向内側で終端し、前記ベースゴム層のタイヤ軸方向外端が前記トレッド面の端よりもタイヤ軸方向外側にあり、
    前記キャップゴム層の厚さがトレッドショルダー部で増加し始める起点となる前記界面の変化点のタイヤ軸方向位置が、前記最外ベルトのタイヤ軸方向外端から当該最外ベルト幅の2.5%の距離の範囲内にある、
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
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