1.第1実施形態
回転電機用ロータの第1実施形態について、当該回転電機用ロータが車両用駆動装置に適用される場合を例に説明する。なお、以下の実施形態では、第2回転電機MG2に備えられる第2ロータ24が「回転電機用ロータ」に相当する。従って、以下では、第2ロータコア24Aが「ロータコア」に相当し、第2ロータ軸26が「ロータ軸」に相当する。
以下の説明では、鉛直方向V(図4参照)は、回転電機の使用状態での鉛直方向、すなわち、回転電機をその使用状態での向きに配置した場合の鉛直方向を意味する。本実施形態では、回転電機は車両用駆動装置に設けられるため、鉛直方向Vは、当該車両用駆動装置が車両に搭載された状態での鉛直方向と一致する。そして、「上側」及び「下側」は、この鉛直方向Vにおける上側及び下側を意味する。また、以下の説明における各部材についての方向は、それらが回転電機が設けられる装置(本実施形態では、車両用駆動装置)に組み付けられた状態での方向を表す。なお、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を意味する。この概念には、2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態や、2つの回転要素が1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態が含まれる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれてもよい。但し、遊星歯車機構の各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該遊星歯車機構が備える3つの回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
また、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。
〔車両用駆動装置の概略的構成〕
車両用駆動装置1の概略的構成について説明する。車両用駆動装置1は、駆動力源(車輪Wの駆動力源)の駆動力を、車輪Wに駆動連結される出力部材4に伝達させて車両を走行させる装置である。車両用駆動装置1は、車輪Wの駆動力源として回転電機(ここでは、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2)を備えている。また、図3に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置1は、車輪Wの駆動力源として内燃機関EGに駆動連結される入力部材3を備えている。すなわち、この車両用駆動装置1は、内燃機関EG及び回転電機(MG1,MG2)の双方を備える車両(ハイブリッド車両)を駆動するための駆動装置(ハイブリッド車両用駆動装置)である。具体的には、この車両用駆動装置1は、いわゆる2モータスプリットタイプのハイブリッド車両用駆動装置である。なお、内燃機関EGは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等)である。
車両用駆動装置1は、第1回転電機MG1と第2回転電機MG2とを備えている。本実施形態では、図1に示すように、第1回転電機MG1と第2回転電機MG2とは、ケース30に収容されている。ケース30には、車両用駆動装置1が備える他の装置或いは機構も収容されている。本実施形態では、車両用駆動装置1は、図3に示すように、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2に加えて、入力部材3、出力部材4、遊星歯車機構PG、カウンタギヤ機構CG、出力用差動歯車装置DF、第1オイルポンプOP1、及び第2オイルポンプOP2を備えており、これらの入力部材3、出力部材4、遊星歯車機構PG、カウンタギヤ機構CG、出力用差動歯車装置DF、第1オイルポンプOP1、及び第2オイルポンプOP2も、ケース30に収容されている。
図3及び図4に示すように、第1回転電機MG1、入力部材3、遊星歯車機構PG、及び第2オイルポンプOP2が第1軸A1上に配置され、第2回転電機MG2が第2軸A2上に配置され、出力部材4及び出力用差動歯車装置DFが第3軸A3上に配置され、カウンタギヤ機構CGが第4軸A4上に配置され、第1オイルポンプOP1が第5軸A5上に配置されている。これらの第1軸A1、第2軸A2、第3軸A3、第4軸A4、及び第5軸A5は、互いに異なる軸であって、互いに平行に配置される軸(仮想軸)である。以下では、これらの各軸(A1~A5)に平行な方向(すなわち、各軸の間で共通した軸方向)を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側(すなわち、軸方向Lにおける軸方向第1側L1とは反対側)を「軸方向第2側L2」とする。本実施形態では、車両用駆動装置1は、軸方向Lが水平面に沿う向きで車両に搭載される。また、本実施形態では、車両用駆動装置1は、軸方向Lが車両の左右方向に沿う向きで車両に搭載される。
図1に示すように、第1回転電機MG1は、第1ステータ11と、第1ステータ11に対して回転自在に支持される第1ロータ14と、を備えている。第1ステータ11は、ケース30に固定される第1ステータコア12と、第1コイルエンド部13と、を備えている。第1ステータコア12にはコイルが巻装されており、第1コイルエンド部13は、第1ステータコア12から軸方向Lに突出するコイルの部分である。第1ステータ11は、第1ステータコア12に対して軸方向Lの両側に、第1コイルエンド部13を備えている。第1ロータ14は、第1ロータ軸16に固定されており、第1ロータ軸16と一体的に回転する。本実施形態では、第1回転電機MG1は永久磁石型回転電機(ここでは、埋込型永久磁石同期モータ)であり、第1ロータ14は、第1ロータコア14Aと、第1ロータコア14Aの内部に埋め込まれた第1永久磁石M1とを有している。また、本実施形態では、第1回転電機MG1はインナロータ型の回転電機であり、第1ロータ14は、第1ステータコア12に対して径方向(第1軸A1を基準とする径方向)の内側に配置されている。
図1に示すように、第2回転電機MG2は、第2ステータ21と、第2ステータ21に対して回転自在に支持される第2ロータ24と、を備えている。第2ステータ21は、ケース30に固定される第2ステータコア22と、第2コイルエンド部23と、を備えている。第2ステータコア22にはコイルが巻装されており、第2コイルエンド部23は、第2ステータコア22から軸方向Lに突出するコイルの部分である。第2ステータ21は、第2ステータコア22に対して軸方向Lの両側に、第2コイルエンド部23を備えている。第2ロータ24は、第2ロータコア24Aと、第2ロータコア24Aの径方向内側を貫通して第2ロータコア24Aに連結され、軸方向Lに沿って延びる筒状の第2ロータ軸26と、を備えている。第2ロータ24は、第2ロータ軸26に固定されており、第2ロータ軸26と一体的に回転する。本実施形態では、第2回転電機MG2は永久磁石型回転電機(ここでは、埋込型永久磁石同期モータ)であり、第2ロータ24は、第2ロータコア24Aの内部に埋め込まれた第2永久磁石M2を有している。また、本実施形態では、第2回転電機MG2はインナロータ型の回転電機であり、第2ロータ24は、第2ステータコア22に対して径方向(第2軸A2を基準とする径方向)の内側に配置されている。
遊星歯車機構PGは、第1回転電機MG1に駆動連結される第1回転要素67と、出力部材4に駆動連結される第2回転要素68と、入力部材3に駆動連結される第3回転要素69と、を有している。本実施形態では、第1回転要素67は、第1回転電機MG1(第1ロータ軸16)と一体的に回転するように連結され、第2回転要素68は、カウンタギヤ機構CGの後述する第1ギヤ61に噛み合う分配出力ギヤ64と、一体的に回転するように連結され、第3回転要素69は、入力部材3と一体的に回転するように連結されている。ここで、入力部材3は、内燃機関EG(クランクシャフト等の出力軸)に駆動連結される部材(本実施形態では、軸部材)である。入力部材3は、内燃機関EGと一体的に回転するように連結され、或いは、ダンパやクラッチなどの他の部材を介して内燃機関EGに連結される。また、出力部材4は、車輪Wに駆動連結される部材である。本実施形態では、出力部材4を、車輪Wと一体的に回転する部材としている。すなわち、出力用差動歯車装置DFにおける車輪Wと一体的に回転する部材(例えば、サイドギヤ)、或いは、出力用差動歯車装置DFと車輪Wとを連結するドライブシャフトを構成する部材を、出力部材4としている。
本実施形態では、遊星歯車機構PGは、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。そして、本実施形態では、第1回転要素67はサンギヤであり、第2回転要素68はリングギヤであり、第3回転要素69はキャリヤである。よって、遊星歯車機構PGは、第3回転要素69に伝達される内燃機関EGのトルクを、第1回転要素67と第2回転要素68とに分配(すなわち、第1回転電機MG1と出力部材4とに分配)するように構成される。
カウンタギヤ機構CGは、上述した分配出力ギヤ64に噛み合う第1ギヤ61と、出力用差動歯車装置DFの差動入力ギヤ65に噛み合う第2ギヤ62と、第1ギヤ61と第2ギヤ62とを連結する連結軸63と、を備えている。本実施形態では、第1ギヤ61には、第2回転電機MG2の出力ギヤ60も噛み合っている。出力ギヤ60は、第2回転電機MG2のトルクを出力するためのギヤであり、第2ロータ軸26と一体的に回転するように連結されている。
出力用差動歯車装置DFは、差動入力ギヤ65に入力されるトルクを、左右一対の出力部材4に分配して(すなわち、左右一対の車輪Wに分配して)伝達する。出力用差動歯車装置DFは、例えば、傘歯車式又は遊星歯車式の差動歯車機構を用いて構成される。
本実施形態に係る車両用駆動装置1は上記のように構成されるため、内燃機関EGのトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させる無段変速走行モードの実行中は、第1回転電機MG1は、第1回転要素67に分配されるトルクに対する反力トルクを出力する。この際、第1回転電機MG1は、基本的にジェネレータとして機能して、第1回転要素67に分配されるトルクによって発電する。また、無段変速走行モードの実行中は、第2回転要素68には、内燃機関EGのトルクに対して減衰されたトルクが車輪Wの駆動用のトルクとして分配され、第2回転電機MG2は、必要に応じて、車輪要求トルク(車輪Wに伝達されることが要求されるトルク)に対する不足分を補うようにトルクを出力する。また、第2回転電機MG2のトルクのみを車輪Wに伝達させて車両を走行させる電動走行モードの実行中は、内燃機関EGは、基本的に、燃料供給が停止された停止状態とされ、第1回転電機MG1は、基本的に、空転する状態(ゼロトルク制御により出力トルクがゼロとなるように制御された状態)とされる。
車両用駆動装置1は、第2回転電機MG2の駆動力を出力部材4に伝達する駆動伝達機構2を備えている。本実施形態では、駆動伝達機構2は、カウンタギヤ機構CG及び出力用差動歯車装置DFを備えている。そして、本実施形態では、図4に示すように、第2回転電機MG2は、軸方向Lに沿った軸方向L視で、カウンタギヤ機構CGと重複するように配置されている。ここでは、第2回転電機MG2は、軸方向L視でカウンタギヤ機構CGが配置される第4軸A4と重複するように配置されている。なお、図4では、各ギヤについては基準ピッチ円を示し、第1回転電機MG1については第1ステータ11の外形(第1ステータコア12の外形)を示し、第2回転電機MG2については第2ステータ21の外形(第2ステータコア22の外形)を示している。
本実施形態では、図1に示すように、カウンタギヤ機構CGは、第2回転電機MG2に対して軸方向Lにおける軸方向第1側L1とは反対側(軸方向第2側L2)に配置されている。具体的には、ケース30は、第2回転電機MG2に対して軸方向第1側L1に配置される第1壁部31と、第2回転電機MG2に対して軸方向第2側L2に配置される第2壁部32と、を備えている。第1壁部31及び第2壁部32は、いずれも第2ロータ軸26を支持する支持壁である。そして、カウンタギヤ機構CGは、第2壁部32に対して軸方向第2側L2に配置されている。ここでは、第1壁部31は、第2回転電機MG2に対して軸方向第1側L1に隣接して配置され、第2壁部32は、第2回転電機MG2に対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。なお、本実施形態では、第1壁部31は、ケース30における周壁部(軸方向L視で第2回転電機MG2等を囲む筒状の壁部)とは別部材であり、当該周壁部の軸方向第1側L1の開口部を覆うように軸方向第1側L1から接合されている。すなわち、本実施形態では、第1壁部31はカバー部材(具体的には、周壁部における内燃機関EGが配置される側とは反対側の開口部を覆うリヤカバー)である。
図3に示すように、車両用駆動装置1は、第2回転電機MG2とは別軸に配置される第1オイルポンプOP1を備えている。図示は省略するが、ケース30の内部には、油を貯留する油貯留部が形成されており、図5に示すように、第1オイルポンプOP1は、第1ストレーナST1を介して油貯留部の油を吸引する。図3に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置1は、更に、第2オイルポンプOP2を備えている。本実施形態では、第2オイルポンプOP2は、第1回転電機MG1と同軸に配置されている。図5に示すように、第2オイルポンプOP2は、第2ストレーナST2を介して油貯留部の油を吸引する。第1ストレーナST1や第2ストレーナST2は、油に含まれる異物を除去するための濾過器である。
本実施形態では、第1オイルポンプOP1は、駆動伝達機構2の回転により駆動される。具体的には、第1オイルポンプOP1は、駆動伝達機構2が備える回転部材であって、車輪Wと分離不可能に駆動連結される回転部材(すなわち、常に車輪Wに連動して回転する回転部材)の回転により駆動されるように構成されている。よって、車両が走行している状態では、無段変速走行モードの実行中であるか電動走行モードの実行中であるかにかかわらず(すなわち、内燃機関EGの停止中であっても)、第1オイルポンプOP1を駆動することができる。ここで、駆動伝達機構2は、第2回転電機MG2の駆動力を出力部材4に伝達する機構である。そのため、第2ロータ軸26と第1オイルポンプOP1とは、駆動伝達機構2を介して規定の回転速度比で常に同期して回転するように駆動連結されている。従って、第1オイルポンプOP1は、第2ロータ軸26に駆動連結されて当該第2ロータ軸26の回転によって駆動されるとも言える。本実施形態では、図3に示すように、第1オイルポンプOP1は、出力用差動歯車装置DFの差動入力ギヤ65の回転により駆動されるように構成されている。具体的には、第1オイルポンプOP1の駆動軸である第1ポンプ駆動軸53aには、ポンプ駆動ギヤ66が設けられている。そして、ポンプ駆動ギヤ66が差動入力ギヤ65に噛み合うことで、第1オイルポンプOP1が差動入力ギヤ65の回転により駆動される。但し、このような構成に限定されることなく、ポンプ駆動ギヤ66が、駆動伝達機構2が備える差動入力ギヤ65以外のギヤ(本実施形態では、出力ギヤ60、第1ギヤ61、又は第2ギヤ62)に噛み合う構成であってもよい。
本実施形態では、第2オイルポンプOP2は、入力部材3の回転により駆動される。言い換えると、第2オイルポンプOP2は、内燃機関EGに駆動連結されて当該内燃機関EGの駆動力により駆動される。具体的には、第2オイルポンプOP2の駆動軸である第2ポンプ駆動軸53bが、入力部材3と一体的に回転するように連結されている。なお、図2に示すように、第2ポンプ駆動軸53bは、第2オイルポンプOP2のポンプロータ54と一体的に回転するように連結されている。よって、車両が走行しているか否かにかかわらず、内燃機関EGの回転中には、当該内燃機関EGの駆動力(トルク)により第2オイルポンプOP2を駆動することができる。なお、第1オイルポンプOP1及び第2オイルポンプOP2の少なくとも一方を、ポンプの駆動のための専用の電動モータにより駆動される電動オイルポンプとすることも可能である。
〔油の流通構造〕
次に、車両用駆動装置1の内部を流れる油の流通構造について説明する。車両用駆動装置1は、以下に述べる油の流通構造を備えることで、第2ロータ軸26の筒状の内周面Fによって囲まれた内周部26Iに油を供給し、この内周部26Iから、第2ロータ軸26に対して径方向外側に配置される第2ロータコア24Aや潤滑対象とされる被潤滑部Hに油を供給することが可能となっている。本実施形態では、車両用駆動装置1は、油供給部Sに油を供給するオイルポンプOPを備えている。本例では、このオイルポンプOPには、ロータ軸26に駆動連結されてロータ軸26の回転により駆動される第1オイルポンプOP1と、内燃機関EGに駆動連結されて内燃機関EGの駆動により駆動される第2オイルポンプOP2と、が含まれている。また、本実施形態では、被潤滑部Hは、第2ロータ軸26を回転可能に支持する軸受B(後述する第1軸受B1)である。つまり、以下に述べるように、車両用駆動装置1は、第1オイルポンプOP1と、供給油路90と、第1油路91と、上述の内周部26Iによって構成された第2油路92と、第3油路93とを備えることで、第1オイルポンプOP1が吐出した油によって第2回転電機MG2の冷却と軸受Bの潤滑とを可能としている。また、本実施形態では、車両用駆動装置1は、更に第4油路94を備えることで、第1オイルポンプOP1が吐出した油によって第1回転電機MG1への油の供給も可能としている。本実施形態では、車両用駆動装置1は、更にオイルクーラOCを備えている。
図5に示すように、供給油路90は、第1オイルポンプOP1の吐出口である第1吐出口52aに接続されている。なお、図5では、供給油路90を示す線分を、他の油路を示す線分よりも太くしている。また、図5では、各油路において油の流れる方向を矢印で示している。本実施形態では、供給油路90は、上流側から順に、第1吐出油路81と、合流油路83と、下流側油路84とを備えている。具体的には、第1吐出油路81の上流側端部は、第1吐出口52aに接続され、第1吐出油路81の下流側端部は、合流油路83の上流側端部に接続されている。また、合流油路83の下流側端部は、下流側油路84の上流側端部に接続され、下流側油路84の下流側端部は、第1油路91の上流側端部(後述する第1流入部91a)に接続されている。よって、第1オイルポンプOP1が吐出した油は、第1吐出油路81、合流油路83、及び下流側油路84を順に流通して、第1油路91に供給される。なお、第1吐出油路81には、上流側へ向かう油の流通を規制する第1逆止弁51aが設けられている。
上述したように、本実施形態では、車両用駆動装置1は、第1オイルポンプOP1に加えて第2オイルポンプOP2を備えている。そして、本実施形態では、第2オイルポンプOP2の吐出口である第2吐出口52bには、第2吐出油路82の上流側端部が接続され、第2吐出油路82の下流側端部は、合流油路83の上流側端部に接続されている。すなわち、合流油路83は、第1吐出油路81と第2吐出油路82とが合流して形成される油路である。第2吐出油路82には、上流側へ向かう油の流通を規制する第2逆止弁51bが設けられている。
図5に示すように、本実施形態では、供給油路90にオイルクーラOCが設けられている。オイルクーラOCは、油を冷却する熱交換器である。オイルクーラOCは、例えば、水冷式又は空冷式のオイルクーラとされる。本実施形態では、オイルクーラOCは、合流油路83に設けられている。また、合流油路83におけるオイルクーラOCよりも上流側の部分には、油圧が過剰となった場合に油の一部を排出して合流油路83の油圧を調整するリリーフバルブRV(本実施形態では、2つのリリーフバルブRV)が設けられている。
図2に示すように、第1油路91は、第2ステータ21に対して鉛直方向V(図4参照)の上側に配置されている。そして、第1油路91は、供給油路90(本実施形態では、下流側油路84)に接続される第1流入部91aと、第1流入部91aよりも軸方向第1側L1に形成されて、第2ステータ21へ向けて油を吐出する第1吐出孔91bと、第1吐出孔91bよりも軸方向第1側L1に形成された排出部91cと、を有している。これにより、供給油路90から第1油路91に供給された油を第1吐出孔91bから第2ステータ21へ向けて吐出して、第2ステータ21を冷却することが可能となっている。
第1油路91は、鉛直方向V視で第2ステータ21と重複するように配置されている。
そして、図2に示すように、本実施形態では、第1油路91は、鉛直方向V視で軸方向第1側L1の第2コイルエンド部23と重複する位置に設けられる第1吐出孔91bと、鉛直方向V視で軸方向第2側L2の第2コイルエンド部23と重複する位置に設けられる第1吐出孔91bと、鉛直方向V視で第2ステータコア22と重複する位置に設けられる第1吐出孔91bと、を有している。これにより、重力を利用した比較的簡素な構成で、第1吐出孔91bから吐出した油を第2ステータ21に供給することが可能となっている。
第1油路91は、第1流入部91aと排出部91cとを両端部とする油路であり、排出部91cは、第1流入部91aよりも軸方向第1側L1に配置される。第1油路91は、第1流入部91aから排出部91cまで軸方向第1側L1に向かって一様に延びるように形成されている。すなわち、図1に各油路において油の流れる方向を矢印で示すように、第1油路91には、軸方向第1側L1に向かう油の流れが形成される。
図1に示すように、第2油路92は、第2回転電機MG2の第2ロータ24が固定されている第2ロータ軸26の内部に形成される油路である。第2ロータ軸26は、軸方向Lに延びる筒状部材により構成されており、第2ロータ軸26の内周面Fに囲まれる空間によって、軸方向Lに延びる第2油路92が形成されている。すなわち、上述のように、第2油路92は、第2ロータ軸26の内周面Fにより囲まれた内周部26Iによって構成されている。更に、本実施形態では、第2ロータ軸26は、第1筒状部材26Aと第2筒状部材26Bとを備えている。第1筒状部材26Aは、第2筒状部材26Bに対して軸方向第1側L1に配置されている。図1に示すように、第1筒状部材26Aの軸方向第2側L2の端部と第2筒状部材26Bの軸方向第1側L1の端部とが連結している。本実施形態では、第2筒状部材26Bの軸方向第1側L1の端部が、第1筒状部材26Aの軸方向第2側L2の端部の径方向内側において、当該第1筒状部材26Aの内周面に嵌合(スプライン嵌合)することにより、第1筒状部材26Aと第2筒状部材26Bとが一体回転するように連結されている。本実施形態では、第2ロータ軸26における第1筒状部材26Aの内部に第2油路92(内周部26I)が形成され、第2筒状部材26Bの内部に後述する第7油路97が形成されている。
図1及び図6に示すように、第2ロータ軸26は、その筒状の内周面Fに開口する開口部72Aを有すると共に径方向(第2軸A2を基準とする径方向)に沿って延在する径方向油路72を備えている。本実施形態では、径方向油路72は、第2ロータ軸26を径方向に貫通するように形成され、当該第2ロータ軸26の内周面Fと外周面とを連通している。
第2ロータコア24Aの内部には、第2ロータ内油路25が形成されている。詳細は省略するが、第2ロータ内油路25は、軸方向Lに延びる軸方向油路と、径方向に延びて第2ロータコア24Aの内周面と軸方向油路とを連通する径方向油路と、を備えている。これにより、第2油路92内の油を径方向油路72から第2ロータ内油路25に供給して、第2ロータコア24Aを冷却することが可能となっている。そして、第2ロータ内油路25に供給された油と第2ロータコア24Aとの熱交換により、第2ロータコア24A、特に第2ロータコア24Aに埋め込まれた第2永久磁石M2の冷却を図ることが可能となっている。また、本実施形態では、第2ロータ内油路25の上記軸方向油路は、第2ロータコア24Aにおける軸方向Lの両端部に開口するように形成されており、第2ロータコア24Aを冷却した後の油を第2コイルエンド部23に対して径方向の内側から供給して、第2コイルエンド部23を冷却することも可能となっている。
本実施形態では、車両用駆動装置1は、第1油路91の排出部91cと第2油路92とを接続する第3油路93を備えている。そして、第3油路93は、ケース30における第2回転電機MG2に対して軸方向第1側L1に配置される第1壁部31に沿って設けられている。すなわち、第3油路93の少なくとも一部は第1壁部31に沿って設けられ、本実施形態では、第3油路93における上流側端部と下流側端部とを除く部分が、第1壁部31に沿って設けられている。このように第3油路93を第1壁部31に沿って設けることで、第3油路93が設けられる部分(すなわち、第2回転電機MG2が配置される部分)における車両用駆動装置1の軸方向Lの大型化を抑制しつつ、第1オイルポンプOP1から吐出された油を第2油路92に供給するための第3油路93を設けることが可能となっている。
本実施形態では、更に、図1及び図2に示すように、供給油路90における第1流入部91aに接続される部分である接続部90aが、ケース30における第2回転電機MG2に対して軸方向第2側L2に配置される第2壁部32に沿って設けられている。接続部90aは、供給油路90(本実施形態では、下流側油路84)における下流側端部を含む部分であり、接続部90aにおける少なくとも一部が、第2壁部32に沿って設けられている。
図1に示すように、本実施形態では、第3油路93は、第1壁部31の内部に形成されている。なお、第3油路93の少なくとも一部が、第1壁部31の外側に形成される構成(例えば、第1壁部31に対して軸方向第2側L2から取り付けられる管状部材の内部に形成される構成)とすることもできる。また、本実施形態では、第1壁部31は、軸方向第2側L2に突出する筒状に形成されると共に軸方向第2側L2の開口部が第2ロータ軸26の内部に配置される第2接続部34bを有しており、この第2接続部34bの内周面に囲まれる空間によって、第3油路93の下流側端部が形成されている。これにより、第3油路93の下流側端部と第2油路92の軸方向第1側L1の端部とが接続されている。
なお、後述する内周部26I(第2油路92)に油を供給するための第1供給部S1は、第3油路93の下流側端部に形成されている。
本実施形態では、車両用駆動装置1は、第1回転電機MG1を冷却するための油が流れる第4油路94を更に備えている。図5に示すように、第4油路94は、供給油路90におけるオイルクーラOCよりも下流側の部分から分岐するように形成されている。これにより、第1油路91及び第2油路92だけでなく第4油路94に対しても、オイルクーラOCによる冷却後の油を供給することが可能となっている。
図2に示すように、第4油路94は、第1ステータ11に対して鉛直方向V(図4参照)の上側に配置されている。そして、第4油路94は、供給油路90の中間部分(本実施形態では、合流油路83の下流側端部、言い換えれば、下流側油路84の上流側端部)に接続される第2流入部94aと、第2流入部94aよりも軸方向第1側L1に形成されて、第1ステータ11へ向けて油を吐出する第2吐出孔94bと、を有している。これにより、供給油路90から第4油路94に供給された油を第2吐出孔94bから第1ステータ11へ向けて吐出して、第1ステータ11を冷却することが可能となっている。
第4油路94は、鉛直方向V視で第1ステータ11と重複するように配置されている。
そして、図2に示すように、本実施形態では、第4油路94は、鉛直方向V視で軸方向第1側L1の第1コイルエンド部13と重複する位置に設けられる第2吐出孔94bと、鉛直方向V視で軸方向第2側L2の第1コイルエンド部13と重複する位置に設けられる第2吐出孔94bと、鉛直方向V視で第1ステータコア12と重複する位置に設けられる第2吐出孔94bと、を有している。これにより、重力を利用した比較的簡素な構成で、第2吐出孔94bから吐出した油を第1ステータ11に供給することが可能となっている。
図2及び図5に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置1は、第5油路95を更に備えている。図2に示すように、第5油路95は、第2ポンプ駆動軸53bの内部に形成される油路である。第2ポンプ駆動軸53bは、軸方向Lに延びる筒状部材により構成されており、第2ポンプ駆動軸53bの内周面に囲まれる空間によって、軸方向Lに延びる第5油路95が形成されている。図5に示すように、第5油路95は、第2吐出油路82における第2逆止弁51bよりも上流側の部分から分岐するように形成されている。なお、第2吐出油路82から第5油路95に流入する油量は、第2オリフィス50bによって制御される。
第5油路95には、軸方向第2側L2へ向かう油の流れが形成される。そして、図5に示すように、第5油路95内の油は、第1回転電機MG1(第1ロータ14)に対して冷却のために供給されると共に、遊星歯車機構PGに対して潤滑のために供給される。具体的には、図2に示すように、第1ロータ軸16は、軸方向Lに延びる筒状部材により構成されており、第2ポンプ駆動軸53bは、第1ロータ軸16の内周面に囲まれる空間に配置されている。そして、第2ポンプ駆動軸53bは、第2ポンプ駆動軸53bの内周面と外周面とを連通する第2油孔73を備えている。第2油孔73は、第2ポンプ駆動軸53bの筒状部を径方向(第1軸A1を基準とする径方向。以下、本段落において同様。)に貫通するように形成されている。また、第1ロータ軸16は、第1ロータ軸16の内周面と外周面とを連通する第1油孔71を備えている。第1油孔71は、第1ロータ軸16の筒状部を径方向に貫通するように形成されている。そして、第1ロータコア14Aの内部には、第1ロータ内油路15が形成されている。詳細は省略するが、第1ロータ内油路15は、軸方向Lに延びる軸方向油路と、径方向に延びて第1ロータコア14Aの内周面と軸方向油路とを連通する径方向油路と、を備えている。
これにより、第5油路95内の油を第2油孔73から第1ロータ軸16の内周面に供給すると共に、第1ロータ軸16の内周面に供給された油を第1油孔71から第1ロータ内油路15に供給して、第1ロータコア14Aを冷却することが可能となっている。そして、第1ロータ内油路15に供給された油と第1ロータコア14Aとの熱交換により、第1ロータコア14A、特に第1ロータコア14Aに埋め込まれた第1永久磁石M1の冷却を図ることが可能となっている。また、本実施形態では、第1ロータ内油路15の上記軸方向油路は、第1ロータコア14Aにおける軸方向Lの両端部に開口するように形成されており、第1ロータ14を冷却した後の油を第1コイルエンド部13に対して径方向(第1軸A1を基準とする径方向)の内側から供給して、第1コイルエンド部13を冷却することも可能となっている。また、第5油路95内の油は、入力部材3の内部に形成された油路に流入した後、入力部材3に形成された第4油孔74(図1及び図2参照)から、遊星歯車機構PG等に対して潤滑のために供給される。
図5に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置1は、第6油路96を更に備えている。第6油路96は、第1吐出油路81における第1逆止弁51aよりも上流側の部分から分岐するように形成されている。そして、第6油路96内の油は、カウンタギヤ機構CG及び出力用差動歯車装置DFに対して潤滑のために供給される。なお、第1吐出油路81から第6油路96に流入する油量は、第1オリフィス50aによって制御される。
図1及び図5に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置1は、第7油路97を更に備えている。第7油路97は、第2ロータ軸26を構成する第2筒状部材26Bの内部に形成されている。第7油路97には、軸方向第1側L1へ向かう油の流れが形成される。本実施形態では、図4に示すように、車両用駆動装置1は、出力部材4(図3参照)によって(本例では、差動入力ギヤ65によって)掻き上げられた油を貯留するキャッチタンクCTを、ケース30内の上部に備えている。そして、キャッチタンクCTに貯留された油が軸方向第2側L2から第7油路97に流入することによって、軸方向第1側L1に向かう油の流れが第7油路97に形成される。そして、図示するように、第7油路97の下流側端部と第2油路92の軸方向第2側L2の端部とが接続されている。従って、第7油路97を軸方向第1側L1に向かって流れる油は、第2油路92(内周部26I)へと供給される。なお、後述する内周部26I(第2油路92)に油を供給するための第2供給部S2は、第7油路97の下流側端部に形成されている。
図1及び図2に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置1は、管状の第1油流通管41、管状の第2油流通管42、及び管状の第3油流通管43を備えている。そして、第1油流通管41の内部に第4油路94が形成され、第2油流通管42の内部に第1油路91が形成され、第3油流通管43の内部に下流側油路84が形成されている。図1に示すように、本実施形態では、第1壁部31は、軸方向第2側L2に突出する筒状に形成された第1接続部34aを有しており、この第1接続部34aの内周面に囲まれる空間によって、第3油路93の上流側端部が形成されている。そして、第2油流通管42は、排出部91cが第1接続部34aに接続されるように配置されており、これにより、第1油路91の下流側端部(排出部91c)と第3油路93の上流側端部とが第1接続部34aにおいて接続されている。なお、第2油流通管42は、両端部が軸方向Lの異なる位置に配置されるように(例えば、軸方向Lに沿って)配置されており、第2油流通管42の軸方向第1側L1の開口部によって、第1油路91の排出部91cが形成されている。また、上述した第1吐出孔91bは、第2油流通管42の筒状部を貫通するように形成されている。
図2に示すように、本実施形態では、第2壁部32は、軸方向Lに延びる筒状に形成された第3接続部34cを備えている。そして、第2油流通管42の軸方向第2側L2の端部が、第3接続部34cの内周面に対して軸方向第1側L1から嵌合し、第3油流通管43の端部が、第3接続部34cの内周面に対して軸方向第2側L2から嵌合している。これにより、下流側油路84の下流側端部と第1油路91の上流側端部(第1流入部91a)とが第3接続部34cにおいて接続されている。なお、第1油路91の第1流入部91aは、第2油流通管42の軸方向第2側L2の開口部によって形成されている。
図2に示すように、本実施形態では、第2壁部32は、軸方向Lに延びる筒状に形成された第4接続部34dを備えている。そして、第1油流通管41の軸方向第2側L2の端部が、第4接続部34dの内周面に対して軸方向第1側L1から嵌合し、第3油流通管43の端部(第3接続部34cに接続される側とは反対側の端部)が、第4接続部34dの内周面に対して軸方向第2側L2から嵌合している。また、合流油路83の下流側端部は、第4接続部34dの内周面に開口するように形成されている。これにより、合流油路83の下流側端部と、下流側油路84の上流側端部と、第4油路94の上流側端部(第2流入部94a)とが、第4接続部34dにおいて接続されている。なお、第1油流通管41は、両端部が軸方向Lの異なる位置に配置されるように(例えば、軸方向Lに沿って)配置されており、第1油流通管41の軸方向第2側L2の開口部によって、第4油路94の第2流入部94aが形成されている。また、上述した第2吐出孔94bは、第1油流通管41の筒状部を貫通するように形成されている。
〔走行モードと油の流れ〕
次に、車両用駆動装置1が複数の走行モードを実行中のそれぞれの場合における、車両用駆動装置1内の油の流れについて説明する。
車両用駆動装置1は、少なくとも内燃機関EGを動力源として走行するハイブリッド走行モード(HV走行モード)と、内燃機関EG、第1回転電機MG1、及び第2回転電機MG2のうち、第2回転電機MG2のみを動力源として走行する電動走行モード(EV走行モード)と、を実行可能に構成されている。
図3に示すように、第2オイルポンプOP2は、入力部材3を介して内燃機関EGに連結されている。従って、車両用駆動装置1がHV走行モードを実行中(車両がHV走行モードで走行中)には、内燃機関EGの駆動により第2オイルポンプOP2が駆動されると共に、出力部材4及び第2回転電機MG2の回転により第1オイルポンプOP1が駆動される。ここで、第1オイルポンプOP1によって吐出された油は、供給油路90に供給されると共に、第6油路96を介して、カウンタギヤ機構CG及び出力用差動歯車装置DFへ潤滑のために供給される。第2オイルポンプOP2によって吐出された油は、第2吐出油路82を介して供給油路90に供給される。通常、HV走行モードを実行中は、第1オイルポンプOP1の吐出圧よりも第2オイルポンプOP2の吐出圧の方が高いため、第1オイルポンプOP1によって吐出された油は、主に第6油路96に供給される。
そのため、HV走行モードでは、主に、第2オイルポンプOP2から吐出された油が、第3油路93を介して軸方向第1側L1から第2油路92(内周部26I)に供給される。このようして第2油路92(内周部26I)に供給される油は、供給油路90を流れる過程でオイルクーラOCによって冷却されるため、第2回転電機MG2を冷却するための冷却油として好適に用いることができる。更に、車両用駆動装置1がHV走行モードを実行中には、出力部材4の回転に伴い差動入力ギヤ65による油の掻き上げが行われる。このように掻き上げられた油は、キャッチタンクCTに貯留され、第7油路97を介して軸方向第2側L2から第2油路92(内周部26I)に供給される。従って、車両用駆動装置1がHV走行モードを実行中には、第2油路92(内周部26I)に対して、軸方向Lの両側から油が供給されるため、比較的多量の油が第2油路92(内周部26I)に供給される。
一方、車両用駆動装置1がEV走行モードを実行中(車両がEV走行モードで走行中)には、出力部材4の回転に伴い差動入力ギヤ65による油の掻き上げが行われる。このように掻き上げられた油は、キャッチタンクCTに貯留され、第7油路97を介して軸方向第2側L2から第2油路92(内周部26I)に供給される。ここで、車両用駆動装置1がEV走行モードを実行中には、差動入力ギヤ65による油の掻き上げが行われる他にも、出力部材4及び第2回転電機MG2の回転により第1オイルポンプOP1が駆動される。しかし、例えば車両が低速で走行している場合には、出力部材4の回転速度も低くなり、第1オイルポンプOP1によって吐出される油の量は比較的少なくなる。更に、第1オイルポンプOP1によって吐出された油は、第6油路96を介して、カウンタギヤ機構CG及び出力用差動歯車装置DFへ潤滑のために供給される。
そのため、EV走行モードでは、主に、キャッチタンクCTから第7油路97を介して、第2油路92(内周部26I)に対して軸方向第2側L2から油が供給される。すなわち、EV走行モードでは、第2油路92(内周部26I)に対して軸方向第1側L1からの油の供給はなく(或いは少なく)、主に軸方向第2側L2から、比較的少量の油が第2油路92(内周部26I)に供給される。
〔回転電機用ロータの詳細構成〕
次に、回転電機用ロータ、ここでは、第2回転電機MG2の第2ロータ24の詳細構成について説明する。
上述のように、第2ロータ24は、第2ロータコア24Aと筒状の第2ロータ軸26とを備えており、第2ロータ軸26は、軸方向Lに沿って並ぶと共に互いに連結する第1筒状部材26Aと第2筒状部材26Bとを備えている。図1に示すように、本実施形態では、第2ロータ軸26は、4つの軸受Bによってケース30に対して回転可能に支持されている。そして、本実施形態では、第1軸受B1が、第2ロータコア24Aに対する軸方向第1側L1に配置された潤滑対象である被潤滑部Hとされている。また、第2軸受B2は、第2ロータコア24Aに対する軸方向第2側L2に配置されている。この第2軸受B2についても、潤滑対象とされることが好ましい。図示の例では、第1筒状部材26Aが、第2ロータコア24Aに対して軸方向第1側L1において第1軸受B1により支持されており、第2ロータコア24Aに対して軸方向第2側L2において第2軸受B2により支持されている。また、第2筒状部材26Bが、出力ギヤ60に対して軸方向第1側L1において第3軸受B3により支持されており、出力ギヤ60に対して軸方向第2側L2において第4軸受B4により支持されている。
本実施形態では、第1壁部31は、軸方向第2側L2に突出する筒状の第1ボス部31Aを有している。第1軸受B1は、第1ボス部31Aの内周面により支持されていると共に、第2ロータ軸26(ここでは、第1筒状部材26A)の外周面を支持している。この第1軸受B1は、上記のとおり、第2ロータコア24Aに対する軸方向第1側L1において第2ロータ軸26を回転可能に支持している。本実施形態では、上述のように、第1軸受B1が「被潤滑部H」に相当する。
また本実施形態では、第2壁部32は、軸方向第1側L1に突出する筒状の第2ボス部32Aを有している。第2軸受B2は、第2ボス部32Aの内周面により支持されていると共に、第2ロータ軸26(ここでは、第1筒状部材26A)の外周面を支持している。
本実施形態では、第2壁部32は、第2ボス部32Aに加えて、軸方向第2側L2に突出する筒状の第3ボス部32Bを有している。図示の例では、第3ボス部32Bは、第2ボス部32Aと一体的に形成されており、第2ボス部32Aと第3ボス部32Bとは、軸方向Lに沿って互いに反対側に突出している。第3軸受B3は、第3ボス部32Bの内周面により支持されていると共に、第2ロータ軸26(ここでは、第2筒状部材26B)の外周面を支持している。
本実施形態では、ケース30は、第1壁部31及び第2壁部32に加えて、第3壁部33を備えている。第3壁部33は、ケース30におけるカウンタギヤ機構CG及び第2ロータ軸26(第2筒状部材26B)に対して軸方向第2側L2に配置されている。図示の例では、第2壁部32と第3壁部33との軸方向Lの間に、第2ロータ軸26における第2筒状部材26Bの大部分が収容されている。なお、上述のカウンタギヤ機構CGも、第2壁部32と第3壁部33との軸方向Lの間に収容されている。そして、本実施形態では、第3壁部33は、軸方向第1側L1に突出する筒状の第4ボス部33Aを有している。
第4軸受B4は、第4ボス部33Aの内周面により支持されていると共に、第2ロータ軸26(ここでは、第2筒状部材26B)の外周面を支持している。
図1及び図6に示すように、第2ロータ24は、第2ロータ軸26に油を供給する油供給部Sを備えている。上述のように、第2ロータ軸26は、その筒状の内周面Fにより囲まれた内周部26Iを備えており、油供給部Sは、この内周部26Iに油を供給する。なお、上述のように、内周部26Iは、第2油路92を構成している。
本実施形態では、油供給部Sは、第1供給部S1と第2供給部S2とを備えている。第1供給部S1は、第2ロータ軸26の軸方向第1側L1の端部から内周部26Iに油を供給する。第2供給部S2は、第2ロータ軸26の軸方向第2側L2の端部から内周部26Iに油を供給する。ここでは、第1供給部S1は、第3油路93の下流側端部に形成されており、図5に示すように、第1オイルポンプOP1から吐出された油、及び、第2オイルポンプOP2から吐出された油が、第1供給部S1から内周部26Iに供給される。また、第2供給部S2は、第7油路97の下流側端部に形成されており、図5に示すように、キャッチタンクCTからの油(出力部材4の回転に伴い掻き上げられた油)が、第2供給部S2から内周部26Iに供給される。
図1及び図6に示すように、第2ロータ24は、第1軸受B1に油を供給する潤滑油路75を備えている。本実施形態では、潤滑油路75は、第2ロータ軸26(第1筒状部材26A)の軸方向第1側L1の端部の開口部分と、当該第2ロータ軸26の軸方向第1側L1の端部とケース30の第1壁部31の軸方向第2側L2の面との間の軸端外側空間と、によって形成されている。ここでは、軸端外側空間は、第1壁部31と第2ロータ軸26と第1軸受B1とにより囲まれた空間となっている。後述するように、第2ロータ軸26の内部には堰部D(第1堰部D1)が形成されており、潤滑油路75は、堰部D(第1堰部D1)よりも軸方向第1側L1に配置される。第2ロータ軸26における堰部D(第1堰部D1)より軸方向第1側L1に流出した油は、潤滑油路75を通って第1軸受B1に導かれ、第1軸受B1を潤滑する。
図6に示すように、第2ロータ軸26は、内周面Fに開口する開口部72Aを有すると共に径方向(第2軸A2を基準とする径方向、以下、〔回転電機用ロータの詳細構成〕を説明する段落において同様。)に沿って延在する径方向油路72を備えている。開口部72Aは、径方向油路72における径方向内側の端部に形成されている。そして、径方向油路72における径方向外側の端部は、第2ロータ軸26の外周面に開口している。本実施形態では、第2ロータ軸26は、周方向に分散して複数の径方向油路72を備えており、開口部72Aは、内周面Fにおいて周方向に沿って複数形成されている。図示の例では、複数の開口部72Aは、軸方向Lの同じ位置において周方向に沿って一列に並んで配置されている。そして、内周部26Iに供給された油は、開口部72Aから径方向油路72に入り、当該径方向油路72を通って第2ロータコア24Aに導かれ、第2ロータコア24Aを冷却する。
図6に示すように、第2ロータ軸26は、内周面Fから径方向内側に突出すると共に内周面Fに沿って周方向に延在するように配置された環状の第1堰部D1を備えている。第1堰部D1は、開口部72Aよりも軸方向第1側L1に配置されている。そして、油供給部S(第1供給部S1)は、内周部26Iにおける第1堰部D1よりも軸方向第2側L2に油を供給するように構成されている。このため、図示の例では、第1供給部S1は、第1堰部D1よりも軸方向第2側L2に開口するように設けられている。本実施形態では、第1堰部D1は、第2ロータ軸26(第1筒状部材26A)とは別部材によって構成され、第2ロータ軸26に対して径方向内側に圧入されることで第2ロータ軸26の内部に取り付けられている。但し、このような構成に限定されることなく、第1堰部D1は、例えば鋳造等により、第2ロータ軸26(第1筒状部材26A)と一体的に成形されるものであってもよい。或いは、第1堰部D1は、切削加工等により成形されてもよい。
本実施形態では、第2ロータ軸26は、開口部72Aよりも軸方向第2側L2に配置されて、内周面Fから径方向内側に突出すると共に内周面Fに沿って周方向に延在するように配置された環状の第2堰部D2を更に備えている。第1堰部D1と第2堰部D2とにより、軸方向Lにおける両者の間が、油を貯留する軸内貯留部となっている。そして、開口部72Aは、この軸内貯留部に開口するように配置されている。従って、第1堰部D1と第2堰部D2との間の軸内貯留部に貯留された油を、第2ロータ軸26の回転に伴う遠心力等によって、効率的に開口部72Aに流入させることができる。よって、当該軸内貯留部に油が貯留されている状態では、第2ロータコア24Aを冷却するために必要とされる量の油を、開口部72Aから径方向油路72を介して第2ロータコア24Aに供給することが可能となっている。本実施形態では、第2堰部D2は、上述のように第1筒状部材26Aと第2筒状部材26Bとがスプライン嵌合するためのスプライン嵌合部に設けられた段差部によって構成されている。但し、このような構成に限定されることなく、第2堰部D2は、スプライン嵌合部とは関係の無い単なる段差部によって構成されていてもよい。
或いは、第2堰部D2は、第1堰部D1と同様に、第2ロータ軸26の内周面Fに取り付けられた環状部材であってもよい。
このような構成により、内周部26Iに油を貯留でき、第2ロータコア24Aを冷却するために十分な量の油を径方向油路72に供給することが可能となっている。一方、上述のように、第1軸受B1に油を供給するための潤滑油路75は、第1堰部D1よりも軸方向第1側L1に配置されている。そのため、第1堰部D1によって堰き止められた油は、第1堰部D1よりも軸方向第1側L1に流れにくくなっており、第1軸受B1の潤滑が十分に行われない場合がある。
そこで、図6に示すように、第2ロータ24は、内周面F又は堰部Dに設けられ、内周部26Iにおける堰部Dよりも軸方向第1側L1の部分と堰部Dよりも軸方向第2側L2の部分とを連通する軸方向連通路LGrを備えている。本実施形態では、軸方向連通路LGrは、内周面Fに設けられて、径方向外側に窪むと共に、堰部Dに対して径方向外側を通って軸方向Lに延びるように形成されている。そして、軸方向連通路LGrは、潤滑油路75に連通している。本実施形態では、軸方向連通路LGrは、第1堰部D1に対して径方向外側を通って第1堰部D1に対して軸方向第2側L2から軸方向第1側L1まで延在し、潤滑油路75に連通している。これにより、内周部26Iに供給された油は、第1堰部D1よりも軸方向第2側L2において軸方向連通路LGrに流入し、当該軸方向連通路LGrを軸方向第1側L1に向かって流れて、第1堰部D1よりも軸方向第1側L1に配置された潤滑油路75に流入する。そして、潤滑油路75に流入した油は、第1軸受B1に供給され、当該第1軸受B1を潤滑する。従って、この構成によれば、径方向油路72と潤滑油路75との双方に油を供給でき、第2ロータコア24Aの冷却と第1軸受B1の潤滑との双方を適切に行うことができる。本実施形態では、軸方向連通路LGrは、第1堰部D1よりも軸方向第2側L2の部分から第2ロータ軸26の軸方向第1側L1の端部まで連続的に形成されている。
本実施形態では、軸方向連通路LGrは、内周面Fの周方向に複数本並んで配置されている。本例では、図7に示すように、軸方向連通路LGrは、周方向に並んで等間隔(90°間隔)に4本配置されている。図示の例では、軸方向連通路LGrのそれぞれは、軸方向L視において、矩形状の断面を有する溝状に形成されている。なお、軸方向連通路LGrの断面形状はこれには限定されず、円弧状や各種の多角形状等、様々な形状の溝状とすることができる。これにより、第2ロータ軸26の回転方向の位置に関わらず、軸方向連通路LGrによって油を第1堰部D1よりも軸方向第1側L1に導くことができる。但し、上記のような構成に限定されることなく、複数本の軸方向連通路LGrは、周方向の配置間隔が、不均等となるように配置されていてもよい。また、軸方向連通路LGrの本数は任意であり、1~3本、或いは、5本以上であってもよい。図8には、内周部26Iを180°の範囲で周方向に展開した展開図が示されており、4本の軸方向連通路LGrのうち2本の軸方向連通路LGrが示されている。
図6及び図8に示すように、本実施形態では、軸方向連通路LGrの軸方向第2側L2の端部は、開口部72Aよりも軸方向第2側L2に配置されている。これにより、開口部72Aよりも軸方向第2側L2の油が、開口部72Aに入る前に軸方向連通路LGrに入り易くなる。そのため、車両用駆動装置1がEV走行モードを実行している場合等、内周部26Iに供給される油の量が少ない場合にも、軸方向連通路LGrに優先的に油が供給されることになる。従って、内周部26Iに供給される油の量が少ない場合にも、第1軸受B1を適切に潤滑することができる。なお、軸方向連通路LGrの軸方向第2側L2の端部は、第2堰部D2よりも軸方向第1側L1に配置されている。
図6及び図8に示すように、本実施形態では、軸方向Lの同じ位置において、軸方向連通路LGrと開口部72Aとの周方向の位置が異なるように、軸方向連通路LGr及び開口部72Aが配置されている。具体的には、周方向において隣り合う一対の開口部72Aの間に軸方向連通路LGrが配置されるように、複数の軸方向連通路LGr及び複数の開口部72Aが配置されている。この構成によれば、軸方向連通路LGrに一旦入った油が、開口部72Aに流入することがないため、軸方向連通路LGrと径方向油路72とに油を適切に分配することができる。従って、第2ロータコア24Aの冷却と第1軸受B1の潤滑との双方を適切に行うことが可能となる。
以上のように、本実施形態の構成によれば、第1供給部S1(第3油路93)又は第2供給部S2(第7油路97)から内周部26I(第2油路92)に供給された油を、一定量、第1堰部D1と第2堰部D2との間の内周部26Iに留めておくことができる。例えば、車両用駆動装置1がEV走行モードを実行中には、内周部26Iへの油の供給は、上述のように、第2供給部S2(第7油路97)から供給されるものが大部分を占めることになり、内周部26Iへの油の供給量は比較的少量となる。このような場合にも、軸方向連通路LGrを介して潤滑油路75に優先的に油を流すことができ、第1軸受B1の潤滑のための油を適切に確保することができる。一方、例えば、車両用駆動装置1がHV走行モードを実行中には、内周部26Iへの油の供給は、上述のように、第1供給部S1(第3油路93)及び第2供給部S2(第7油路97)の双方から行われ、内周部26Iへの油の供給量は比較的多量となる。この場合、内周部26Iにおいて軸方向連通路LGrを流れる油の量よりも、内周部26Iに供給される油の方が多くなり、その結果、油は第1堰部D1と第2堰部D2との間の内周部26Iに貯留される。このように貯留された油は、第2ロータ軸26の回転に伴う遠心力等によって、効率的に径方向油路72に供給される。従って、このような場合には、第1軸受B1の潤滑と、第2ロータコア24Aの冷却との双方を適切に行うことができる。
2.第2実施形態
次に、回転電機用ロータの第2実施形態について説明する。以下では、上記の第1実施形態と異なる点について主に説明する。特に説明しない点については、上記の第1実施形態と同様である。
図9には、本実施形態に係る回転電機用ロータ(第2ロータ24)の内周部26Iを、180°の範囲で周方向に展開した展開図が示されている。
図9に示すように、本実施形態では、第2ロータ24は、内周面Fに設けられて、周方向に延びる周方向溝CGrを備えている。図示の例では、周方向溝CGrは、軸方向Lに対して直交するように、周方向に延びている。そして、本実施形態では、周方向溝CGrは、内周面Fにおける周方向の全域に亘って連続的に設けられている。但し、このような構成に限定されることなく、周方向溝CGrは、内周面Fにおける周方向の一部の領域に設けられていてもよいし、断続的に設けられていてもよい。
本実施形態では、周方向溝CGrは、開口部72Aよりも軸方向第2側L2に配置され、軸方向連通路LGrと接続されている。周方向溝CGrに案内された油は、軸方向連通路LGrに案内される。従って、本構成によれば、周方向溝CGrよりも軸方向第2側L2に供給される油が、開口部72Aに入る前に周方向溝CGrに入り、そこから軸方向連通路LGrに導かれる。そのため、周方向溝CGrよりも軸方向第2側L2の油を、径方向油路72よりも優先して軸方向連通路LGrに案内することができる。従って、車両用駆動装置1がEV走行モードを実行している場合等、内周部26Iに供給される油の量が少ない場合にも、第1軸受B1を適切に潤滑することができる。
ここで、周方向溝CGrが、少なくとも2本の軸方向連通路LGrに接続されていると好適である。本実施形態では、全ての軸方向連通路LGr(4本の軸方向連通路LGr)に、周方向溝CGrが接続されている。これにより、内周部26Iに供給される油の量が少ない場合にも、軸方向連通路LGrに油を供給し易くなり、第1軸受B1をより確実に潤滑することができる。
3.その他の実施形態
次に、回転電機用ロータのその他の実施形態について説明する。
(1)上記の各実施形態では、軸方向連通路LGrの軸方向第2側L2の端部が、開口部72Aよりも軸方向第2側L2に配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば図10に示すように、軸方向連通路LGrの軸方向第2側L2の端部は、開口部72Aよりも軸方向第1側L1に配置されていてもよく、或いは、軸方向Lにおける開口部72Aと同じ位置に配置されていてもよい(図示省略)。
(2)上記の各実施形態では、軸方向連通路LGrが、第1堰部D1よりも軸方向第2側L2の部分から第2ロータ軸26の軸方向第1側L1の端部まで連続的に形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、軸方向連通路LGrは、第1堰部D1よりも軸方向第1側L1と第1堰部D1よりも軸方向第2側L2とに亘って延在していればよく、例えば図11に示すように、径方向視で第1堰部D1と重複する領域及びその軸方向Lの両側の領域のみに形成されていてもよい。この場合、軸方向連通路LGrにおける軸方向第1側L1の端部から第1軸受B1(図6参照)にかけて、潤滑油路75が形成される。
(3)上記の各実施形態では、軸方向連通路LGrが軸方向Lに沿って真っすぐ延在し、軸方向Lの同じ位置において、軸方向連通路LGrと開口部72Aとの周方向の位置が異なるように、複数の軸方向連通路LGr及び複数の開口部72Aが配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、軸方向連通路LGrは、軸方向Lに対して傾斜する方向に延在していてもよい。この場合、軸方向Lの異なる位置(軸方向Lにおいて離れた位置)では、軸方向連通路LGrと開口部72Aとの周方向の位置は同じとなるように、複数の軸方向連通路LGr及び複数の開口部72Aが配置されていてもよい。
(4)上記の各実施形態では、軸方向連通路LGrが、第2ロータ軸26の内周面Fに設けられて、径方向外側に窪むと共に軸方向Lに延びている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、軸方向連通路LGrは、例えば図12~図16に示すように、堰部D(第1堰部D1)に設けられていても良い。この場合において、軸方向連通路LGrは、堰部D(第1堰部D1)を軸方向Lに貫通するように、溝状又は孔状とされると良い。ここで、図13~図16は、ロータ軸26を軸方向Lに直交する面で切断した場合の軸直交断面図を示している。例えば、軸方向連通路LGrは、図12及び図13に示すように、堰部D(第1堰部D1)の外周面に設けられ、径方向内側に窪むと共に軸方向Lに延びるように形成された溝状とすることができる。図示の例では、軸方向連通路LGrは、軸方向L視において、径方向外側が開放された円弧状の断面を有する溝状に形成されている。また、図14に示すように、軸方向連通路LGrは、軸方向L視において、径方向外側が開放された矩形状の断面を有する溝状に形成されていても良い。或いは、軸方向連通路LGrは、図15に示すように、堰部D(第1堰部D1)の径方向における中間部分において軸方向Lに貫通する貫通孔状とすることもできる。図示の例では、軸方向連通路LGrは、軸方向L視において、円形の断面を有する孔状に形成されている。なお、貫通孔状の軸方向連通路LGrの断面形状はこれには限定されず、各種の多角形状(三角形状や四角形状等)や楕円形状等の各種形状とされていても良い(図示省略)。なお、図13~図15では、軸方向連通路LGrが、堰部D(第1堰部D1)に、周方向に間隔を空けて2本設けられた構成を例示している。しかし、このような構成に限定されることなく、軸方向連通路LGrは、図16に示すように、堰部D(第1堰部D1)に、周方向に間隔を空けて3本以上設けられていても良い。或いは、堰部D(第1堰部D1)に1本のみ設けられていても良い(図示省略)。
(5)上記の各実施形態では、被潤滑部Hがロータ軸26を回転可能に支持する軸受B(第1軸受B)である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、車両用駆動装置における潤滑対象となる各種の部位が被潤滑部Hとなり得る。好ましくは、被潤滑部Hは、各部材同士が摺動する部分であり、例えば、ギヤ機構の噛み合い部や軸受等とされる。
(6)上記の各実施形態では、第2ロータ軸26が、第1堰部D1と第2堰部D2との双方を備えた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2ロータ軸26は、少なくとも第1堰部D1を備えていればよい。
(7)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
4.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した回転電機用ロータ及び当該回転電機用ロータを備えた車両用駆動装置の概要について説明する。
回転電機用ロータ(24)は、ロータコア(24A)と、前記ロータコア(24A)の径方向内側を貫通して前記ロータコア(24A)に連結され、軸方向(L)に沿って延びる筒状のロータ軸(26)と、前記ロータ軸(26)に油を供給する油供給部(S)と、前記軸方向(L)の一方側を軸方向第1側(L1)とし、前記軸方向(L)の他方側を軸方向第2側(L2)として、ロータコア(24A)に対する前記軸方向第1側(L1)に配置された潤滑対象である被潤滑部(H)と、前記被潤滑部(H)に油を供給する潤滑油路(75)と、を備え、前記ロータ軸(26)は、その筒状の内周面(F)により囲まれた内周部(26I)と、前記内周面(F)に開口する開口部(72A)を有すると共に径方向に沿って延在する径方向油路(72)と、前記開口部(72A)よりも前記軸方向第1側(L1)に配置されて、前記内周面(F)から径方向内側に突出すると共に前記内周面(F)に沿って周方向に延在するように配置された環状の堰部(D)と、軸方向連通路(LGr)と、を備え、前記油供給部(S)は、前記内周部(26I)における前記堰部(D)よりも前記軸方向第2側(L2)に油を供給し、前記潤滑油路(75)は、前記堰部(D)よりも前記軸方向第1側(L1)に配置され、前記軸方向連通路(LGr)は、前記内周面(F)又は前記堰部(D)に設けられ、前記内周部(26I)における前記堰部(D)よりも前記軸方向第1側(L1)の部分と前記堰部(D)よりも前記軸方向第2側(L2)の部分とを連通すると共に、前記潤滑油路(75)に連通している。
本構成によれば、ロータ軸(26)の内周部(26I)に供給された油を、堰部(D)によって内周部(26I)に留めておくことができる。そのため、ロータ軸(26)の内周面(F)に開口する開口部(72A)を介して径方向油路(72)に油を適切に供給でき、ロータ軸(26)の径方向外側に配置されたロータコア(24A)の冷却を適切に行うことが可能となる。また、本構成によれば、内周部(26I)における堰部(D)よりも軸方向第1側(L1)の部分と堰部(D)よりも軸方向第2側(L2)の部分とを連通する軸方向連通路(LGr)により、内周部(26I)における堰部(D)よりも軸方向第2側(L2)の領域から堰部(D)よりも軸方向第1側(L1)の潤滑油路(75)に油を供給することができる。従って、ロータコア(24A)に対する軸方向第1側(L1)に配置される被潤滑部(H)にも適切に油を供給することができ、当該被潤滑部(H)の潤滑を適切に行うことが可能となる。
ここで、前記被潤滑部(H)が、前記ロータ軸(26)を回転可能に支持する軸受(B)であると好適である。
本構成によれば、潤滑油路(75)に供給される油によって、ロータ軸(26)を支持する軸受(B)を適切に潤滑することが可能となる。
また、前記軸方向連通路(LGr)の前記軸方向第2側(L2)の端部は、前記開口部(72A)よりも前記軸方向第2側(L2)に配置されていると好適である。
本構成によれば、開口部(72A)よりも軸方向第2側(L2)の油を軸方向連通路(LGr)に供給し易い。従って、内周部(26I)に供給される油量が少ない場合であっても軸方向連通路(LGr)に油を供給でき、被潤滑部(H)を適切に潤滑することができる。
また、軸方向(L)の同じ位置において、前記軸方向連通路(LGr)と前記開口部(72A)との周方向の位置が異なると好適である。
本構成によれば、軸方向連通路(LGr)を流れる油が開口部(72A)を介して径方向油路(72)に流れることがない。従って、軸方向連通路(LGr)を流れる油と径方向油路(72)に流れる油とを分けることができる。よって、開口部(72A)を介した径方向油路(72)への油の供給と軸方向連通路(LGr)を介した潤滑油路(75)への油の供給との双方を、適切に行うことができる。
ここで、前記軸方向連通路(LGr)は、前記内周面(F)に設けられ、径方向外側に窪むと共に、前記堰部(D)に対して径方向外側を通って前記軸方向(L)に延びるように形成されていると好適である。
本構成によれば、軸方向連通路(LGr)により、内周部(26I)における堰部(D)よりも軸方向第1側(L1)の部分と堰部(D)よりも軸方向第2側(L2)の部分とを適切に連通することができる。従って、内周部(26I)における堰部(D)よりも軸方向第2側(L2)の領域から堰部(D)よりも軸方向第1側(L1)の潤滑油路(75)に油を供給することができる。
また、前記内周面(F)に設けられて、周方向に延びる周方向溝(CGr)を更に備え、前記周方向溝(CGr)は、前記開口部(72A)よりも前記軸方向第2側(L2)に配置され、前記軸方向連通路(LGr)と接続されていると好適である。
本構成によれば、開口部(72A)よりも軸方向第2側(L2)の油を軸方向連通路(LGr)に供給し易い。従って、内周部(26I)に供給される油量が少ない場合であっても軸方向連通路(LGr)に油を供給でき、被潤滑部(H)を適切に潤滑することができる。
また、前記軸方向連通路(LGr)が、前記内周面(F)の周方向に複数本並んで配置され、前記周方向溝(CGr)が、少なくとも2本の前記軸方向連通路(LGr)に接続されていると好適である。
本構成によれば、開口部(72A)よりも軸方向第2側(L2)の油を軸方向連通路(LGr)に更に供給し易くなる。従って、内周部(26I)に供給される油量が少ない場合であっても軸方向連通路(LGr)に十分な量の油を供給でき、被潤滑部(H)を適切に潤滑することができる。
ここで、前記軸方向連通路(LGr)は、前記堰部(D)を前記軸方向(L)に貫通するように形成されていると好適である。
本構成によれば、軸方向連通路(LGr)により、内周部(26I)における堰部(D)よりも軸方向第1側(L1)の部分と堰部(D)よりも軸方向第2側(L2)の部分とを適切に連通することができる。従って、内周部(26I)における堰部(D)よりも軸方向第2側(L2)の領域から堰部(D)よりも軸方向第1側(L1)の潤滑油路(75)に油を供給することができる。
また、前記油供給部(S)は、第1供給部(S1)と第2供給部(S2)とを備え、前記第1供給部(S1)は、前記ロータ軸(26)の前記軸方向第1側(L1)の端部から前記内周部(26I)に油を供給し、前記第2供給部(S2)は、前記ロータ軸(26)の前記軸方向第2側(L2)の端部から前記内周部(26I)に油を供給すると好適である。
本構成によれば、内周部(26I)への油の供給をより適切に行い易くなる。また、第1供給部(S1)と第2供給部(S2)とがそれぞれ別の油圧回路に接続された構成とすることにより、回転電機の動作状態等に応じて内周部(26I)への油の供給状態を異ならせることも可能となる。
また、前記堰部(D)が、第1堰部(D1)であり、前記開口部(72A)よりも前記軸方向第2側(L2)に配置されて、前記内周面(F)から径方向内側に突出すると共に前記内周面(F)に沿って周方向に延在するように配置された環状の第2堰部(D2)を更に備えると好適である。
本構成によれば、内周部(26I)に適切に油を貯留することができる。従って、径方向油路(72)への油の供給と潤滑油路(75)への油の供給との双方を適切に行うことが可能となる。
ここで、車両用駆動装置(1)は、
上記構成の回転電機用ロータ(24)を備えた回転電機(MG2)と、前記油供給部(S)に油を供給するオイルポンプ(OP)と、を備え、前記オイルポンプ(OP)は、前記ロータ軸(26)に駆動連結されて前記ロータ軸(26)の回転により駆動される第1オイルポンプ(OP1)を含む。
本構成によれば、ロータ軸(26)が回転することによって、油供給部(S)に油が供給される。そのため本構成によれば、ロータ軸(26)の回転に伴って油による潤滑が必要となる被潤滑部(H)に対して、潤滑油としての油を適切に供給することができる。従って、回転電機(MG2)を動力源として車輪(W)を回転させて車両が走行する場合には、当該走行中にオイルポンプ(OP)を駆動して内周部(26I)に油を供給することができる。
また、上記構成の車両用駆動装置(1)は、
車輪(W)の駆動力源として内燃機関(EG)及び前記回転電機(MG2)を備え、
前記オイルポンプ(OP)は、前記内燃機関(EG)に駆動連結されて前記内燃機関(EG)の駆動により駆動される第2オイルポンプ(OP2)を含むと好適である。
本構成によれば、少なくとも内燃機関(EG)を動力源として車輪(W)を回転させて車両が走行する場合に、第2オイルポンプ(OP2)を駆動することができ、当該第2オイルポンプ(OP2)によって内周部(26I)に油を供給することができる。また、内燃機関(EG)を動力源とした車両の走行中にロータ軸(26)が回転するように構成されている場合には、上記のように少なくとも内燃機関(EG)を動力源として車両が走行する場合に、第1オイルポンプ(OP1)と第2オイルポンプ(OP2)との双方を駆動することができ、内周部(26I)への油の供給量を多くすることが可能となる。