JP7270362B2 - 水系塗材組成物及びこれを使用した外壁の無目地仕上げ工法 - Google Patents
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本発明のアクリル樹脂系エマルジョンには、アクリル酸エステル系共重合樹脂、酢酸ビニル・アクリル酸エステル系共重合樹脂、シリコン変性アクリル樹脂等のアクリル樹脂系エマルジョンを使用することができる。アクリル樹脂とするアクリル系単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、n-アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、等を使用することが出来る。他の不飽和単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、及びクロトン酸等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミドや、マレインアミド等のアミド基含有単量体;2-アミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と活性水素原子を有するエチレン性不飽和単量体との反応により得られるエポキシ基含有単量体やオリゴノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、及び3-(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体;その他、酢酸ビニル、塩化ビニル、更には、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート等を使用することが出来る。
本発明に使用する充填材は、平均粒径D50(重量による積算50%の粒径)が100μm未満のものを言い、組成物の粘度や塗付性の調整を目的として配合し、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、硅砂粉等が使用でき、重質炭酸カルシウムが安価でコスト的負担を軽減させることが出来る。充填材の配合量は塗材組成物全体に対して3~20重量%、好ましくは5~12重量%であり、3重量%未満では下地の色が透けるなどの隠蔽性が不足し、20重量%超では塗材粘度が高くなって塗付作業性が不良となる。3重量%未満では色調によっては隠蔽性が低下する場合があり、12重量%超では冬季等の低温度下では塗付作業性が低下する傾向にある。
本発明に使用する充填材は、平均粒径D50(重量による積算50%の粒径)が100μm以上のものを言い、仕上がり表面に凹凸を付与することを目的として配合されるが、平均粒径が100μm以上であればその粒子径は任意に選択することができ、例えば硅砂,ガラス,シリカ,タルク,重質炭酸カルシウムなどが使用可能である市販の平均粒径が200μmの重質炭酸カルシウムとしてはK-250(商品名,旭鉱末(株)製)がある。骨材(B)の配合量は組成物全体に対して20~40重量%であり20重量%未満では意匠性(塗材の凹凸感)が不足し、40重量%超では作業性が低下する。
顔料には、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(弁柄)、クロム酸鉛、黄鉛、黄色酸化鉄等の無機系顔料等が使用できるが、中でも酸化チタンは下地の隠蔽性に優れ、白色であるため主たる顔料として使用することが出来る。
増粘剤は、鏝塗り作業性や保水性の向上を目的として配合し、水溶性セルロースエーテル、ウレタン変性ポリエーテル、ポリカルボン酸等が使用できる。水溶性セルロースエーテルとしてはhiメトローズ90SH15000(信越化学株式会社製、商品名)がある。増粘剤の配合量は組成物全体100重量部に対して0.1~5.0重量部が好ましく、0.1重量部未満では十分な増粘効果が得られず塗材の凹凸模様が不十分となり、5.0重量部超では塗付作業性が低下する。
成膜助剤には、エマルジョンのポリマー粒子の融着を促進し、ポリマーによる均一な皮膜を形成させることを目的で配合し、エチレングリコールジエチルエーテル、ベンジルアルコール、ブチルセロソルブ、エステルアルコール等を使用することが出来る。成膜助剤の配合量は組成物全体100重量部に対して0.5~10重量部が好ましく、0.5重量部未満では低温での成膜が不十分となる場合があり、10重量部超では塗材の表面に汚れが付着し易くなる場合がある。
本発明に使用する無機中空フィラーは、本水系塗材組成物が塗付されて乾燥硬化した塗膜に断熱性を付与すると共に、複数枚の外壁材の側端部が突き合わされた状態で下地に装着されることによって形成された、略直線状の突き合わせ部分の隙間の真上に本組成物を塗付しても、目痩せを生じることなく、また該隙間が外壁材の温度変化や振動によって伸縮しても、その動きに追随可能な可撓性を付与することを目的として配合される。本発明においては、無機中空フィラーによって、単に断熱性を付与するだけでなく、上記可撓性を塗膜に付与することによって、外壁材(一般的にはサイディング材という)が縦横に下地に貼着されて形成された大面積の外壁を、隙間が無く、上記隙間部分でクラック等の不具合が生じない大きな一枚の外壁とすることに大きな特徴がある。
本発明に使用するビニロン繊維は、下地とした外壁材が熱や振動によって大きく動いた際に、上記隙間の上に塗付された本組成物にクラック等が生じることを防止することを目的として配合する。ビニロン繊維は長さが2~7mmのものを使用し、長さが2mm未満では塗膜にクラックが発生する場合があり、7mm超では塗材を下地に塗付する際の作業性が低下する。ビニロン繊維の繊度は組成物のクラック等が生じることを防止できれば一般的な繊維状であれば特に制限はなく、0.5~6dtexのビニロン繊維を使用することができる。
表1の配合に従って、配合A乃至配合Eの水系塗材組成物を作製した。表1において、アクリル樹脂系エマルジョンはアクロナールPS743(固形分:54~56%、樹脂のガラス転移温度:30℃、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの共重合体、BASF社製、商品名)を使用し、充填剤は硅砂粉#300(平均粒径25μm、株式会社トウチュウ製、商品名)を使用し、骨材は、東北硅砂7号(比重1.5、平均粒径150μm、東北硅砂株式会社製、商品名)を使用し、顔料には酸化チタンR-820(石原産業株式会社製、商品名)を使用し、増粘剤は水溶性セルロースエーテルhiメトローズ90SH-15000(信越化学株式会社製、商品名)を、成膜助剤はテキサノールCS-12(チッソ株式会社製、商品名)を、無機中空フィラーAは平均粒径が1.2mmで嵩比重が0.4g/ccのガラス発泡体JF-215(商品名、アイカ工業社製)を、無機中空フィラーBは平均粒径が300μmで嵩比重0.2g/ccの火山性細粒ガラス質凝灰岩の球状発泡体JF-216(商品名、アイカ工業社製)を、ビニロン繊維は、長さ4mm、繊度2.0dtexのビニロン繊維JF-214(商品名、アイカ工業社製)を使用した。この他には消泡剤及び分散剤を添加したが、これらは水系塗材用の市販品より適宜選択されるものを使用することが出来る。これらの原料を均一に混合分散させ、配合A乃至配合Eの水系塗材組成物とした。
実施例1は表1の塗材配合Aの水系塗材組成物を使用して、下地に3.5mm厚みに2回塗付して計7.0mm厚みとした。実施例2は、実施例1の塗膜にさらに遮熱性を有する砂壁状塗料組成物 アイカジョリパットJQ-810(商品名、アイカ工業社製、特許第5721935号公報の段落0042表1に示される実施例1の酸化チタンR-820を、赤外線遮蔽酸化チタンJR-1000(テイカ社製、平均粒子径1.0μm)に置き換えたもの)を0.2~0.4kg/m2で2回塗付した。実施例3は塗材配合Aの水系塗材組成物を使用して、下地に2.5mm厚みに2回塗付して計5.0mm厚みとして、さらに実施例2と同様に遮熱性を有する砂壁状塗料組成物 アイカジョリパットJQ-810を0.2~0.4kg/m2で2回塗付した。比較例1は塗材配合Bの水系塗材組成物を使用して下地に3.5mm厚みに2回塗付して計7.0mm厚みとし、比較例2は塗材配合Cの水系塗材組成物を使用して下地に3.5mm厚みに2回塗付して計7.0mm厚みとし、比較例3は塗材配合Dの水系塗材組成物を使用して下地に3.5mm厚みに2回塗付して計7.0mm厚みとした。比較例4は塗材配合Eの水系塗材組成物を使用して2mm厚みに塗付した。
900mm角のJISA5430規定のフレキシブルボードを垂直に設置し、実施例又は比較例の塗膜を作成する際に、水系塗材組成物を剣先ゴテで凹凸の差を付けながら塗付厚みが2~5mmと成るようにして扇型の柄をつける。その際に剣先ゴテをスムーズに移動させることが出来るものを○、剣先ゴテが多少移動させにくいものを△、剣先ゴテが明らかに移動させにくいものを×と評価した。
900mm角のJISA5430規定のフレキシブルボードを垂直に設置し、実施例又は比較例の塗膜を作成する際に、水系塗材組成物を剣先ゴテで凹凸の差を付けながら塗付厚みが2~5mmと成るようにして扇型の柄をつけ、そのまま乾燥させる。硬化後、つけた柄がそのままの状態を保っているものを○、柄に崩れ(ダレ、レベリング)が多少ある場合は△、明らかな崩れがある場合を×と評価した。
300mm角のJISA5430既定のフレキシブルボードを下地として、実施例又は比較例の各塗膜を作製し23℃湿度50%RHで14日間養生し試験体とする。該試験体を水平に保持し、その中央真上25cmに投光器NT-200(200ワット、日動工業社製)を設置し、該投光機の光を塗膜表面に当て、30分後の塗膜表面温度及び塗膜裏面(フレキシルブルボードに接している塗膜面)温度を測定し、塗膜表面温度及び塗膜裏面温度の差が15℃以上である場合を、断熱性有り、と評価し、15℃未満を、断熱性無し、と評価した。
下地としてJISA5430規定のフレキシブルボード(100×100mm厚さ10mm)を使用し、当該下地2枚の木口同士を突き付け、その裏面を養生テープで仮止めする。下地のオモテ面にシーラーとして溶剤塩化ゴム系下塗り材(JS-410、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布して、4時間以上乾燥させた後、実施例又は比較例の塗膜を作製し、気温23℃湿度50%RHで14日間養生して試験体とした。その後裏面の仮止めの養生テープをはがし、インストロン万能試験機にて、試験体の両端を2mm/分で引張り、突きつけ部にピンホールが発生した距離が1.8mm以上を○、1.8mm未満を×と評価した。
下地としてJISA5430規定のフレキシブルボード(100×100mm厚さ10mm)を使用し、当該下地2枚の木口同士を10mm開けて目地とし、該目地に1成分形ポリウレタンシーリングを充填し23℃7日間養生し、実施例又は比較例の塗付下地とする。該塗付下地のオモテ面にシーラーとして溶剤塩化ゴム系下塗り材(JS-410、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布して、4時間以上乾燥させた後、実施例又は比較例の塗膜を作製し、気温23℃湿度50%RHで14日間養生して試験体とした。その後、インストロン万能試験機にて、試験体の両端を2mm/分で引張、目地部分にピンホールが発生した距離が3.0mm以上を○、3.0mm未満を×と評価した。
下地としてJISA5430規定のフレキシブルボード(200×150mm厚さ8mm)を使用し、当該下地2枚の150mm部分の木口同士を10mm開けて目地とし、該目地に1成分形ポリウレタンシーリングを充填し23℃7日間養生し、実施例又は比較例の塗付下地とする。該塗付下地のオモテ面にシーラーとして溶剤塩化ゴム系下塗り材(JS-410、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布して、4時間以上乾燥させた後、実施例又は比較例の塗膜を作製し、気温23℃湿度50%RHで14日間養生して試験体とした。
試験体は上記[耐疲労性(引張後に伸縮)]の試験体と同様とし、試験方法は同様にJISA1436「建築用皮膜材料の下地不連続部における耐疲労性試験方法 5.試験方法」に準拠し、試験体を長手方向に0.1mm圧縮してムーブメントの開始点とした。次に、該開始点から0.1mm引っ張って開始点に戻すという伸縮を20℃にて500回、次に60℃で500回、次に-20℃で500回行い、これで塗膜に異常が観察されない場合は、前記開始点よりさらに0.2mm引っ張って開始点に戻すという伸縮を同様に20℃、60℃、-20℃でそれぞれ500回行う。これらを順次繰り返して、異常が無ければ開始点からの引っ張り距離を順次0.1mmプラスして伸縮を繰り返すという試験を継続し、開始点からの引っ張り長さが0.3mmで各温度での伸縮後に塗膜に異常が無いものを○と評価した。
Claims (6)
- アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、無機中空フィラーと、長さ2~7mmのビニロン繊維と、水と、から成り、組成物全体100重量部に対して、無機中空フィラーは20~30重量部、ビニロン繊維は0.2~0.4重量部、アクリル樹脂系エマルジョン中の樹脂固形分は5~20重量部であり、塗付厚み2~5mmで塗付して凹凸模様から成る意匠性を付与することが可能であることを特徴とする水系塗材組成物。
- 前記無機中空フィラーは、火山性細粒ガラス質凝灰岩の球状発泡体とガラス発泡体とから成ることを特徴とする請求項1記載の水系塗材組成物。
- 前記無機中空フィラーは、平均粒径が200~400μmの火山性細粒ガラス質凝灰岩の球状発泡体と、平均粒径が1.0~1.4mmのガラス発泡体とから成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水系塗材組成物。
- 複数の外壁材を、互いにその側端部を突き合わせて下地に装着し、該側端部の突き合わせ部分の表面に請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水系塗材組成物を塗付して無目地仕上げとする外壁の無目地仕上げ工法であって、突き合わせ部分の表面に必要によりシーラーを塗付し、次に請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水系塗材組成物を塗付厚み2~5mmで塗付して突き合わせ部分の不陸を調整し、次に請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水系塗材組成物を塗付厚み2~5mmで塗付して仕上げることを特徴とする外壁の無目地仕上げ工法。
- さらに砂壁状塗料組成物を塗付することを特徴とする請求項4に記載の外壁の無目地仕上げ工法。
- 砂壁状塗料組成物は遮熱性を有することを特徴とする請求項5記載の外壁の無目地仕上げ工法。
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