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JP7258619B2 - 鋼板連続焼鈍設備及び焼鈍鋼板の製造方法 - Google Patents

鋼板連続焼鈍設備及び焼鈍鋼板の製造方法 Download PDF

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JP7258619B2
JP7258619B2 JP2019057391A JP2019057391A JP7258619B2 JP 7258619 B2 JP7258619 B2 JP 7258619B2 JP 2019057391 A JP2019057391 A JP 2019057391A JP 2019057391 A JP2019057391 A JP 2019057391A JP 7258619 B2 JP7258619 B2 JP 7258619B2
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Description

本発明は、鋼板連続焼鈍設備及び焼鈍鋼板の製造方法に関する。
近年、自動車の燃費向上及び衝突安全性向上の両立の観点から、自動車の車体には軽量化かつ高強度化が求められている。このため、車体材料として、高い引張強度及び優れた深絞り性を有し、かつ薄肉化が図られている高強度鋼板が用いられている。また、例えば特に高い衝突安全性が要求される部品においては、高強度化及び薄肉化に加え、強度と延性とのバランス、高い降伏比及び優れた穴広げ性が求められる。このように高強度鋼板であっても、使用される場所により所望される特性が異なる。
このような所望の特性を有する高強度鋼板の製造方法としては、急速冷却技術を用いたものが公知である(例えば特開2015-38234号公報参照)。この従来の高強度鋼板の製造方法では、鋼板を連続焼鈍処理する際に、加熱された鋼板を急冷し、急冷された鋼板を加熱して鋼板の表面温度を一定温度に維持し、さらにこの鋼板を急冷する。この従来の高強度鋼板の製造方法を用いることで、生産性や品質を低下させることなく、所望の特性を有する鋼帯を安定的に製造することができるとされている。
従来の高強度鋼板の製造方法では、上記急速冷却技術として水冷による急速冷却装置を有する鋼板連続焼鈍設備が用いられている。ところが、高強度鋼板として、防錆性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板が用いられることがあるが、水冷を行うと表面に酸化膜が形成され、鋼板をめっきすることが難しくなる。このため、高強度なめっき鋼板を製造する場合には、水冷による急速冷却装置を有さない他の鋼板連続焼鈍設備が必要となる。
このため、1つの設備で多岐にわたる個々の要求に応じた多種類の高強度鋼板やめっき鋼板を製造できる鋼板連続焼鈍設備が求められている。
特開2015-38234号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、1つの設備で多岐にわたる個々の要求に応じた多種類の高強度鋼板やめっき鋼板を製造できる鋼板連続焼鈍設備の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明は、鋼板を加熱する加熱帯と、上記加熱帯を通過した鋼板を徐冷する徐冷帯と、上記徐冷帯を通過した鋼板を冷却する冷却帯と、上記冷却帯を通過した鋼板を再度加熱する再加熱帯とを有する鋼板の連続焼鈍設備であって、上記冷却帯及び上記再加熱帯の間に、上記冷却帯を通過した鋼板を徐冷又は保温する徐冷保温帯と、上記徐冷保温帯を通過した鋼板を再度冷却する再冷却帯とを有する。
当該鋼板連続焼鈍設備は、加熱帯、徐冷帯、冷却帯及び再加熱帯をこの順に備えるので、軟質の鋼板から高強度鋼板まで多種類の鋼板を製造することができる。また、当該鋼板連続焼鈍設備は、冷却帯と再加熱帯との間に、徐冷保温帯と再冷却帯とをこの順に備える。この熱処理を行うことで、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイト、不安定なオーステナイトが混在した鋼組織を得ることができる。当該鋼板連続焼鈍設備は、これらの混在割合を制御することで、引張強度、延性、降伏比、穴拡げ性及び深絞り性等のバランスを高いレベルで調整することができる。さらに、当該鋼板連続焼鈍設備では、水冷による急冷を行う必要がないので、めっき鋼板を製造することもできる。従って、当該鋼板連続焼鈍設備を用いることで、1つの設備で多岐にわたる個々の要求に応じた多種類の高強度鋼板やめっき鋼板を製造できる。
上記徐冷帯、上記冷却帯及び上記再冷却帯が、上記鋼板の冷却手段として、ガスジェット冷却装置を備えるとよい。ガスジェット冷却装置は、窒素と水素との混合気体を用いて冷却を行うことができる。このため、上記冷却手段をガスジェット冷却装置とすることで、鋼板表面の酸化を抑止しつつ、冷却を行うことができる。従って、めっき鋼板を製造する際に不めっきが発生することを抑止できる。
上記徐冷保温帯が、上記鋼板の冷却速度を上記冷却帯の冷却速度より弱めるための加熱手段として、インダクションヒータ又は間接加熱方式ヒータを備えるとよい。このように上記加熱手段として、インダクションヒータ又は間接加熱方式ヒータを用いることで、鋼板表面の酸化を抑止しつつ、鋼板の徐冷又は保温を行うことができる。従って、めっき鋼板を製造する際に不めっきが発生することを抑止できる。
上記徐冷保温帯の搬送方向の長さとしては、上記冷却帯の搬送方向の長さの3倍以上8倍以下が好ましい。上記徐冷保温帯の搬送方向の長さを上記範囲内とすることで、上記徐冷保温帯で形成されるベイナイト量が適量に制御されるので、強度と延性とのバランスに優れた鋼板が得られる。
上記徐冷保温帯の搬送方向の長さとしては、上記徐冷帯の搬送方向の長さの0.7倍以上2倍以下が好ましい。上記徐冷保温帯の搬送方向の長さを上記範囲内とすることで、上記徐冷保温帯で形成されるベイナイト量が適量に制御されるので、強度と延性とのバランスに優れた鋼板が得られる。
上記徐冷保温帯の搬送方向の長さとしては、30m以上が好ましい。このように上記徐冷保温帯の搬送方向の長さを上記下限以上とすることで、上記徐冷保温帯で形成されるベイナイト量を確保しつつ、鋼板の搬送速度を向上できるので、製造効率を高めることができる。
上記課題を解決するためになされた別の本発明の焼鈍鋼板の製造方法は、鋼板を加熱する工程と、上記加熱工程後の鋼板を徐冷する工程と、上記徐冷工程後の鋼板を冷却する工程と、上記冷却工程後の鋼板を徐冷保温する工程と、上記徐冷保温工程後の鋼板を再冷却する工程と、上記再冷却工程後の鋼板を再加熱する工程とを備え、本発明の鋼板連続焼鈍設備を用い、上記加熱工程での加熱帯の雰囲気が、水素及び水蒸気を含み、上記加熱工程での鋼板表面の温度をT(K)、上記加熱帯での露点をDP(K)及び気体定数をR(=8.3144598JK-1mol-1)とするとき、上記加熱工程で、加熱する際の雰囲気の露点を-15℃以上15℃以下とし、上記雰囲気の水素濃度H(体積%)を下記式(1)を満たすようにする。
Figure 0007258619000001
当該焼鈍鋼板の製造方法は、本発明の鋼板連続焼鈍設備を用いることで、1つの設備で多岐にわたる個々の要求に応じた多種類の高強度鋼板やめっき鋼板を製造できる。また、加熱工程で、露点を上記範囲内とし、水素濃度を上記式(1)を満たすように加熱するので、加熱帯内で鉄箔が鋼板や加熱帯内の機器表面及び壁面に付着し難く、鋼板の品質不良の発生を抑止できる。
ここで、「徐冷」とは、冷却速度20℃/s以下で徐々に冷却することを指し、「冷却」とは、冷却速度20℃/s超で徐冷よりも速く冷却することを指す。また、「搬送方向の長さ」とは、徐冷帯、冷却帯及び再冷却帯においては、強制的な冷却を行っている区域、例えばガスジェット冷却装置を用いている場合であればガスジェットが鋼板に吹き付けられている区域を鋼板が通過する長さを指す。また、徐冷保温帯においては、冷却帯の区域の出口から再冷却帯の区域の入口までの区域の長さを指す。なお、各区域において、鋼板がロールにより折り返されながら送給されることがあるが、このような場合「搬送方向の長さ」は、折り返しも含む全搬送長である。
以上説明したように、本発明の鋼板連続焼鈍設備は、1つの設備で多岐にわたる個々の要求に応じた多種類の高強度鋼板やめっき鋼板を製造できる。
本発明の一実施形態に係る鋼板連続焼鈍設備の構成を示す模式図である。
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の鋼板連続焼鈍設備及び焼鈍鋼板の製造方法について説明する。
[鋼板連続焼鈍設備]
図1に示す鋼板連続焼鈍設備は、鋼板Mを加熱する加熱帯1と、加熱帯1を通過した鋼板Mを徐冷する徐冷帯2と、徐冷帯2を通過した鋼板Mを冷却する冷却帯3と、冷却帯3を通過した鋼板Mを再度加熱する再加熱帯4とを有する鋼板Mの連続焼鈍設備である。また、当該鋼板連続焼鈍設備は、冷却帯3及び再加熱帯4の間に、冷却帯3を通過した鋼板Mを徐冷又は保温する徐冷保温帯5と、徐冷保温帯5を通過した鋼板Mを再度冷却する再冷却帯6とを有する。さらに、当該鋼板連続焼鈍設備は、加熱帯1及び徐冷帯2の間に、加熱帯1を通過した鋼板Mの温度を維持する均熱帯7を有する。
<鋼板>
当該鋼板連続焼鈍設備に装入される鋼板Mは、例えば熱間圧延後に冷間圧延することで製造される薄い鋼板であり、鋼板Mの平均厚さとしては、例えば0.5mm以上2.5mm以下である。
鋼板Mには、要求される特性に応じて、C、Si、Mn、P、S、Al等の元素が適量含まれる。鋼板Mの残部は、鉄及び不可避的不純物である。
当該鋼板連続焼鈍設備では、鋼板Mは、加熱帯1、均熱帯7、徐冷帯2、冷却帯3、徐冷保温帯5、再冷却帯6、再加熱帯4の順に搬送される。なお、図1の白抜き矢印は、鋼板Mの搬送方向を示している。
鋼板Mの搬送速度は特に限定されないが、鋼板Mの搬送速度の下限としては、20mpm(m/min)が好ましく、30mpmがより好ましい。一方、鋼板Mの搬送速度の上限としては、100mpmが好ましく、60mpmがより好ましい。鋼板Mの搬送速度が上記下限未満であると、製造効率が低下するおそれがある。逆に、鋼板Mの搬送速度が上記上限を超えると、例えば徐冷帯2等の冷却速度が規定されている処理帯では必要な処理を完了させるため処理帯の長さを長くする必要が生じる等、設備やランニングコストが上昇するおそれがある。
以下、鋼板Mの通過順に各処理帯について説明する。
<加熱帯>
加熱帯1では、鋼板Mを加熱する。
加熱帯1の加熱手段としては、特に限定されないが、インダクションヒータや直火加熱方式の加熱手段等を用いることができる。
加熱帯1での鋼板Mの平均加熱速度は、特に限定されないが、例えば1℃/s以上20℃/s以下とできる。上記平均加熱速度が上記下限未満であると、所望の温度となるまでに時間を要するため、製造効率が低下するおそれがある。逆に、上記平均加熱速度が上記上限を超えると、加熱するための設備やランニングコストが上昇するおそれがある。
加熱帯1での鋼板Mの加熱温度(加熱の終了温度)としては、焼鈍後に所望の特性の鋼板Mが得られるように適宜決定され、通常650℃超である。また、上記加熱温度は、Ac1点×0.8+Ac3点×0.2以上Ac3点未満の温度であることが好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、焼鈍後の鋼板Mの強度及び延性のバランスがとれないおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限以上であると、焼鈍後の鋼板Mの延性が低下するおそれがある。なお、Ac1点とは、加熱により鋼板Mの組織がフェライト+セメンタイトからオーステナイトへ変態開始する温度であり、Ac3点とは、加熱により鋼板Mの組織がフェライトからオーステナイトへ変態完了する温度である。
<均熱帯>
均熱帯7では、加熱帯1を通過した鋼板Mの温度を維持する。
加熱された鋼板Mは高温であり、その温度を維持するためには加熱を行うことが好ましい。この加熱手段としては、加熱帯1と同様の手段を用いるとよい。
均熱帯7を鋼板Mが通過する時間(処理時間)としては、1秒以上1800秒以下が好ましい。上記処理時間が上記下限未満であると、鋼板Mの組織の変態が十分に完了しないおそれがある。逆に、上記処理時間が上記上限を超えると、製造効率が低下するおそれがある。
<徐冷帯>
徐冷帯2では、均熱帯7を通過した鋼板Mを徐冷する。
徐冷帯2は、鋼板Mの冷却手段として、図1に示すようにガスジェット冷却装置2aを備えることが好ましい。ガスジェット冷却装置2aは、窒素と水素との混合気体を用いて冷却を行うことができる。このため、上記冷却手段をガスジェット冷却装置2aとすることで、鋼板M表面の酸化を抑止しつつ、徐冷を行うことができる。従って、めっき鋼板を製造する際に不めっきが発生することを抑止できる。
徐冷帯2での鋼板Mの平均冷却速度としては、徐冷(冷却速度20℃/s以下)である限り特に限定されないが、例えば0.1℃/s以上10℃/s以下とされる。上記平均冷却速度が上記下限未満であると、製造効率が低下するおそれや、鋼板Mが高温の余熱下に曝される時間が長くなり、鋼板Mの組織の変態が進み過ぎるおそれがある。逆に、上記平均冷却速度が上記上限を超えると、鋼板Mに冷却による熱歪みが発生するおそれがある。
徐冷帯2での鋼板Mの冷却温度(徐冷の終了温度)としては、650℃以上800℃以下が好ましい。上記冷却温度が上記下限未満であると、徐冷帯2では冷却速度が遅いため、鋼板Mが高温の余熱下に曝される時間が長くなり、鋼板Mの組織の変態が進み過ぎるおそれがある。逆に、上記冷却温度が上記上限を超えると、徐冷帯2に続く冷却帯3で鋼板Mに冷却による熱歪みが発生するおそれがある。
<冷却帯>
冷却帯3は、徐冷帯2を通過した鋼板Mを冷却する。
冷却帯3は、鋼板Mの冷却手段として、図1に示すようにガスジェット冷却装置3aを備えることが好ましい。ガスジェット冷却装置3aは、窒素と水素との混合気体を用いて冷却を行うことができる。このため、上記冷却手段をガスジェット冷却装置3aとすることで、鋼板M表面の酸化を抑止しつつ、冷却を行うことができる。従って、めっき鋼板を製造する際に不めっきが発生することを抑止できる。
冷却帯3での鋼板Mの平均冷却速度としては、30℃/s以上200℃/s未満が好ましい。上記平均冷却速度が上記下限未満であると、鋼板Mに過剰なフェライトが形成されるおそれがある。逆に、上記平均冷却速度が上記上限以上であると、鋼板Mに冷却による熱歪みが発生するおそれがある。また、冷却帯3では鋼板Mを急冷することが好ましく、所望の温度までの冷却時間が30秒以下、好ましくは20秒以下となるように平均冷却速度を決定するとよい。
冷却帯3での鋼板Mの冷却温度(冷却の終了温度)の下限としては、300℃が好ましく、340℃がより好ましい。一方、上記冷却温度の上限としては、500℃が好ましく、460℃がより好ましい。上記冷却温度が上記下限未満であると、鋼板M中の炭素濃化領域が小さくなり、粗大な残留オーステナイトを確保できないため、焼鈍後の鋼板Mの深絞り性が低下するおそれがある。逆に、上記冷却温度が上記上限を超えると、鋼板M中の炭素濃化領域が大きくなり、残留オーステナイトや、マルテンサイトとオーステナイトとの複合組織(MA)が粗大になり過ぎるため、穴広げ率が低下するおそれがある。
<徐冷保温帯>
徐冷保温帯5では、冷却帯3を通過した鋼板Mを徐冷する。
徐冷保温帯5では、冷却帯3で急冷された鋼板Mの冷却速度を20℃/s以下の冷却速度に制御する必要がある。このため、徐冷保温帯5では、少なくともその前半で鋼板Mを加熱し、冷却速度を低減することが好ましい。徐冷保温帯5は、鋼板Mの冷却速度を冷却帯3の冷却速度より弱めるための加熱手段として、図1に示すインダクションヒータ5a又は間接加熱方式ヒータを備えるとよい。このように上記加熱手段として、インダクションヒータ5a又は間接加熱方式ヒータを用いることで、鋼板M表面の酸化を抑止しつつ、鋼板Mの徐冷又は保温を行うことができる。従って、めっき鋼板を製造する際に不めっきが発生することを抑止できる。
徐冷保温帯5での鋼板Mの平均冷却速度の上限としては、10℃/sが好ましく、3℃/sがより好ましい。上記平均冷却速度を上記上限以下とすることで、鋼板M内に部分的にベイナイトを形成することができる。その周囲には炭素濃化領域が形成され、この領域が再冷却帯6及び再加熱帯4で冷却及び加熱されることで、粗大な残留オーステナイトが形成できる。この粗大な残留オーステナイトにより、焼鈍後の鋼板Mの深絞り性や延性を高めることができる。一方、上記平均冷却速度の下限としては、特に限定されず、0℃/s、つまり保温(鋼板Mの温度を維持)してもよい。
徐冷保温帯5を鋼板Mが通過する時間(処理時間)の下限としては、10秒が好ましく、50秒がより好ましい。一方、上記処理時間の上限としては、300秒が好ましく、60秒がより好ましい。上記処理時間が上記下限未満であると、上述のベイナイトの形成が不十分となり、焼鈍後の鋼板Mの深絞り性や延性が低下するおそれがある。逆に、上記処理時間が上記上限を超えると、ベイナイトの形成により再冷却帯6及び再加熱帯4で形成が促進される残留オーステナイトが粗大になり過ぎ、穴広げ率や引張強度が低下するおそれがある。
徐冷保持帯5での鋼板Mの冷却温度(徐冷又は保温の終了温度)の下限としては、300℃が好ましく、340℃がより好ましい。一方、上記冷却温度の上限としては、500℃が好ましく、460℃がより好ましい。上記冷却温度が上記下限未満であると、鋼板M中の炭素濃化領域が小さくなり、粗大な残留オーステナイトを確保できないため、焼鈍後の鋼板Mの深絞り性が低下するおそれがある。逆に、上記冷却温度が上記上限を超えると、鋼板M中の炭素濃化領域が大きくなり、残留オーステナイトが粗大になり過ぎるため、穴広げ率が低下するおそれがある。
徐冷保温帯5の搬送方向の長さの下限としては、冷却帯3の搬送方向の長さの3倍が好ましく、3.5倍がより好ましい。一方、徐冷保温帯5の搬送方向の長さの上限としては、冷却帯3の搬送方向の長さの8倍が好ましく、7倍がより好ましい。徐冷保温帯5の搬送方向の長さが上記下限未満であると、焼鈍後の鋼板Mの延性が低下するおそれがある。逆に、徐冷保温帯5の搬送方向の長さが上記上限を超えると、焼鈍後の鋼板Mの引張強度が低下するおそれがある。つまり、徐冷保温帯5の搬送方向の長さを上記範囲内とすることで、徐冷保温帯5で形成されるベイナイト量が適量に制御されるので、強度と延性とのバランスに優れた鋼板Mが得られる。
また、徐冷保温帯5の搬送方向の長さの下限としては、徐冷帯2の搬送方向の長さの0.7倍が好ましく、0.8倍がより好ましい。一方、徐冷保温帯5の搬送方向の長さの上限としては、徐冷帯2の搬送方向の長さの2倍が好ましく、1.9倍がより好ましい。徐冷保温帯5の搬送方向の長さが上記下限未満であると、焼鈍後の鋼板Mの延性が低下するおそれがある。逆に、徐冷保温帯5の搬送方向の長さが上記上限を超えると、焼鈍後の鋼板Mの引張強度が低下するおそれがある。つまり、徐冷保温帯5の搬送方向の長さを上記範囲内とすることで、徐冷保温帯5で形成されるベイナイト量が適量に制御されるので、強度と延性とのバランスに優れた鋼板Mが得られる。
さらに、徐冷保温帯5の搬送方向の長さの下限としては、30mが好ましく、50mがより好ましい。このように徐冷保温帯5の搬送方向の長さを上記下限以上とすることで、徐冷保温帯5で形成されるベイナイト量を確保しつつ、鋼板Mの搬送速度を向上できるので、製造効率を高めることができる。
<再冷却帯>
再冷却帯6では、徐冷保温帯5を通過した鋼板Mを冷却する。
再冷却帯6は、鋼板Mの冷却手段として、図1に示すようにガスジェット冷却装置6aを備えることが好ましい。ガスジェット冷却装置6aは、窒素と水素との混合気体を用いて冷却を行うことができる。このため、上記冷却手段をガスジェット冷却装置6aとすることで、鋼板M表面の酸化を抑止しつつ、冷却を行うことができる。従って、めっき鋼板を製造する際に不めっきが発生することを抑止できる。
再冷却帯6での鋼板Mの平均冷却速度としては、30℃/s以上が好ましい。上記平均冷却速度が上記下限未満であると、徐冷保温帯5で形成された炭素濃化領域が、冷却中に不必要に大きくなり、残留オーステナイトが粗大になり過ぎるため、穴広げ率が低下するおそれがある。一方、上記平均冷却速度の上限は特に限定されないが、設備やランニングコストの観点から200℃/s未満とされる。
再冷却帯6での鋼板Mの冷却温度(冷却の終了温度)の下限としては、100℃が好ましく、140℃がより好ましい。一方、上記冷却温度の上限としては、300℃が好ましく、260℃がより好ましい。再冷却帯6での冷却温度は、主にマルテンサイトに変態せずに残存する残留オーステナイトの量に影響する。上記冷却温度が上記下限未満であると、残留オーステナイト量が不十分となるおそれがある。残留オーステナイト量が不十分であると、引張強度(TS)は高くなるものの、全伸び(EL)が大きく低下し易く、そのバランス(TS×EL)が悪化し易い。逆に、上記冷却温度が上記上限を超えると、残留オーステナイト量が過剰となるおそれがある。残留オーステナイト量が過剰であると、穴広げ率が低下し易い。
<再加熱帯>
再加熱帯4では、再冷却帯6を通過した鋼板Mを加熱する。
再加熱帯4の加熱手段としては、加熱帯1と同様の手段を用いることができる。
再加熱帯4での鋼板Mの平均加熱速度は、特に限定されないが、例えば1℃/s以上20℃/s以下とできる。上記平均加熱速度が上記下限未満であると、所望の温度となるまでに時間を要するため、製造効率が低下するおそれがある。逆に、上記平均加熱速度が上記上限を超えると、加熱するための設備やランニングコストが上昇するおそれがある。
再加熱帯4での鋼板Mの加熱温度(加熱の終了温度)の下限としては、300℃が好ましく、340℃がより好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、500℃が好ましく、460℃がより好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、炭素が十分に拡散せず、残留オーステナイト量が不十分となる。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、炭素がセメンタイトとして析出し易くなり、残留オーステナイト量が不十分となる。このため、いずれの場合においても、焼鈍後の鋼板Mの引張強度と全伸びとのバランス(TS×EL)が悪化するおそれや穴広げ率が低下するおそれがある。
なお、再加熱帯4を通過した鋼板Mは、例えば過時効処理が行われた後に、2℃/s以上20℃/s以下の冷却速度で200℃以下まで冷却される。
<利点>
当該鋼板連続焼鈍設備は、加熱帯1、徐冷帯2、冷却帯3及び再加熱帯4をこの順に備えるので、軟質の鋼板から高強度鋼板まで多種類の鋼板を製造することができる。また、当該鋼板連続焼鈍設備は、冷却帯3と再加熱帯4との間に、徐冷保温帯5と再冷却帯6とをこの順に備える。この熱処理を行うことで、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイト、不安定なオーステナイトが混在した鋼組織を得ることができる。当該鋼板連続焼鈍設備は、これらの混在割合を制御することで、引張強度、延性、降伏比、穴拡げ性及び深絞り性等のバランスを高いレベルで調整することができる。さらに、当該鋼板連続焼鈍設備では、水冷による急冷を行う必要がないので、めっき鋼板を製造することもできる。従って、当該鋼板連続焼鈍設備を用いることで、1つの設備で多岐にわたる個々の要求に応じた多種類の高強度鋼板やめっき鋼板を製造できる。
[焼鈍鋼板の製造方法]
本発明の一実施形態に係る焼鈍鋼板の製造方法は、加熱工程と、徐冷工程と、冷却工程と、徐冷保温工程と、再冷却工程と、再加熱工程とを備える。当該焼鈍鋼板の製造方法は、図1に示す本発明の鋼板連続焼鈍設備を用いて行うことができる。
<加熱工程>
上記加熱工程では鋼板Mを加熱する。この加熱工程は、当該鋼板連続焼鈍設備の加熱帯1で行うことができる。
加熱帯1の雰囲気は、水素及び水蒸気を含む。上記雰囲気の水素及び水蒸気以外の成分は不活性ガスが好ましく、中でも安価な窒素がより好ましい。
また、鋼板Mの脱炭を促進や鋼板表面の性質を制御するため雰囲気の露点が制御される。上記露点の下限としては、-15℃であり、-10℃がより好ましい。一方、上記露点の上限としては、15℃であり、10℃がより好ましい。上記露点が上記下限未満であると、鋼板Mの脱炭促進効果や鋼板M表面の性質の制御性が不足するおそれがある。逆に、上記露点が上記上限を超えると、加熱帯1内で鉄箔が鋼板Mや加熱帯内の機器表面及び壁面に付着し易くなり、鋼板Mの品質不良の発生が十分に抑止できないおそれがある。
また、加熱帯1での鋼板表面の温度をT(K)、露点をDP(K)及び気体定数をR(=8.3144598JK-1mol-1)とするとき、上記雰囲気の水素濃度H(体積%)を下記式(1)を満たすようにする。
Figure 0007258619000002
上記雰囲気の水素濃度Hが上記式(1)を満たさないと、加熱帯1内で鉄箔が鋼板Mや加熱帯1内の機器表面及び壁面に付着し易くなるおそれがある。本発明者らは、加熱帯1内で鉄箔が発生するメカニズムについて以下のように推察している。まず、露点が比較的高い状態において水素濃度が低い雰囲気に鋼板Mが置かれると鋼板Mが酸化され、その酸化物が剥離される。この酸化物が加熱帯1の雰囲気で還元されると鉄箔となり鋼板Mや加熱帯1内の機器表面及び壁面に付着する。以上の推論から、本発明者らは、加熱帯1を鋼板Mが酸化され難い雰囲気とすることで加熱帯1内で鉄箔が減少すると予測した。そして、熱力学的平衡条件とラボ実験結果とから、鉄箔が減少する水素濃度を導出し、上記式(1)を得るに至った。
当該焼鈍鋼板の製造方法は、種々の高強度鋼板やめっき鋼板の製造に用いることができるが、上述のように鉄箔が鋼板に付着することを抑止できるので、中でもめっき鋼板の製造に好適である。つまり、当該焼鈍鋼板の製造方法は、鉄箔の鋼板への付着によるめっき剥がれや不めっきを効果的に抑止できる。また、当該焼鈍鋼板の製造方法は、鉄箔の加熱加熱帯1内の機器表面及び壁面への付着も抑止できるので、加熱帯1内の清掃時間を削減できる。従って、当該焼鈍鋼板の製造方法により、焼鈍鋼板の製造効率も高めることができる。
なお、上記加熱工程における平均加熱速度及び加熱温度は、上述の当該鋼板連続焼鈍設備の加熱帯1で述べた通りとできる。
<徐冷工程>
上記徐冷工程では、上記加熱工程後の鋼板Mを徐冷する。この徐冷工程は、当該鋼板連続焼鈍設備の均熱帯7及び徐冷帯2で行うことができる。つまり、上記徐冷工程では、鋼板Mの温度を一定時間の間高温に保った後、その温度を下げる。
均熱帯7や徐冷帯2の雰囲気は、加熱帯1の雰囲気と同様としてもよいが、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気など他の雰囲気とすることもできる。このうち、均熱帯7は、高温であるため、加熱帯1の雰囲気と同様とすることが好ましい。均熱帯7を加熱帯1の雰囲気と同様とすることで、より確実に鉄箔の鋼板や加熱帯1内の機器表面および壁面への付着を抑止できる。
なお、上記徐冷工程における諸条件は、上述の当該鋼板連続焼鈍設備の均熱体7及び徐冷帯2で述べた通りとできる。
<冷却工程>
上記冷却工程では、上記徐冷工程後の鋼板Mを冷却する。この冷却工程は、当該鋼板連続焼鈍設備の冷却帯3で行うことができる。上記冷却工程における冷却速度及び冷却温度は、上述の当該鋼板連続焼鈍設備の冷却帯3で述べた通りとできる。
<徐冷保温工程>
上記徐冷保温工程では、上記冷却工程後の鋼板Mを徐冷保温する。この徐冷保温工程は、当該鋼板連続焼鈍設備の徐冷保温帯5で行うことができる。上記徐冷保温工程における平均冷却速度、処理時間及び冷却温度は、上述の当該鋼板連続焼鈍設備の徐冷保温帯5で述べた通りとできる。
<再冷却帯工程>
上記再冷却工程は、上記徐冷保温工程後の鋼板Mを再冷却する。この再冷却工程は、当該鋼板連続焼鈍設備の再冷却帯6で行うことができる。上記再冷却工程における平均冷却速度及び冷却温度は、上述の当該鋼板連続焼鈍設備の再冷却帯6で述べた通りとできる。
<再加熱工程>
上記再加熱工程は、上記再冷却工程後の鋼板Mを再加熱する。この再加熱工程は、当該鋼板連続焼鈍設備の再加熱帯4で行うことができる。上記再加熱工程における平均加熱速度、加熱温度及び加熱後の冷却は、上述の当該鋼板連続焼鈍設備の再加熱帯4で述べた通りとできる。
<利点>
当該焼鈍鋼板の製造方法は、本発明の鋼板連続焼鈍設備を用いることで、1つの設備で多岐にわたる個々の要求に応じた多種類の高強度鋼板やめっき鋼板を製造できる。また、加熱工程で、露点を上記範囲内とし、水素濃度を下記式(1)を満たすように加熱するので、加熱帯内で鉄箔が鋼板Mや加熱帯1内の機器表面及び壁面に付着し難く、鋼板Mの品質不良の発生を抑止できる。
Figure 0007258619000003
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
当該鋼板連続焼鈍設備は、上記処理帯に加えて、他の処理帯を含んでもよい。例えば当該鋼板連続焼鈍設備は、再冷却帯及び再加熱帯の間に、上記冷却帯を通過した鋼板の温度を維持する保温帯を有してもよい。上記保温帯で鋼板の温度を維持する時間としては、例えば1秒以上600秒以下とできる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[鋼板連続焼鈍設備]
本発明の鋼板連続焼鈍設備の効果を調べるべく、以下の評価を行った。
<原板の準備>
焼鈍を行う前の鋼板(原板)を以下の手順で準備した。まず、表1に示す成分組成(残部は鉄及び不可避的不純物)を有する鋳造材を真空溶製で製造した後、この鋳造材を熱間鍛造で平均厚さ30mmとした。次に、この鋳造材に熱間圧延を施した。この熱間圧延では、鋳造材を1200℃に加熱した後、多段圧延により平均厚さ2.5mmとした。この時、熱間圧延の終了温度は880℃とした。その後、得られた鋳造材を600℃まで30℃/sの冷却速度で冷却を行い、600℃に加熱した炉に30分間装入した後、炉冷して熱延鋼板を得た。さらに、この熱延鋼板に対し、酸洗を施して表面のスケールを除去した後、冷間圧延を施して平均厚さ1.4mmの冷延鋼板を得て、これを原板とした。
Figure 0007258619000004
<焼鈍処理>
この原板を図1に示す構成の鋼板連続焼鈍設備を用いて熱処理を行い、No.1~No.4の焼鈍後の鋼板を得た。各処理帯での条件を表2に示す。また、各実施例で、冷却帯の搬送方向の長さ及び徐冷帯の搬送方向の長さをそれぞれ基準とした場合の徐冷保温帯の搬送方向の長さの比を、表3に示す。なお、再加熱帯を通過した焼鈍後の鋼板は、400℃で400秒間の過時効処理を行った後に、冷却した。
Figure 0007258619000005
表2において、各処理帯の開始温度は明記していないが、鋼板は処理帯を連続して通過しながら処理されるため、各処理帯の開始温度は、直前の処理帯の終了温度と等しい。
<測定>
No.1~No.4の鋼板に対して、降伏強度YS、引張強度TS、均一伸びuEL、全伸びEL及び穴広げ率λを測定した。結果を表3に示す。
降伏強度YS、引張強度TS、均一伸びuEL、全伸びELは、引張試験により測定した。具体的には、No.1~No.4の鋼板から圧延方向に対して垂直な方向が長手方向となるようにJIS-Z2241(2011)で規定される5号試験片を採取した。この試験片を用い、引張試験機にてJIS-Z2241(2011)の条件で引張試験を行い、降伏強度YS、引張強度TS、均一伸びuEL、全伸びELを求めた。なお、表3のTS×ELは、上記引張強度TS及び全伸びELの積として算出した。
穴広げ率λは、日本鉄鋼連盟規格JFS-T1001に従って求めた。詳細には、試験片に直径d0(d0=10mm)の打ち抜き穴を開け、先端角度が60°のポンチをこの打ち抜き穴に押し込み、発生した亀裂が試験片の板厚を貫通した時点の打ち抜き穴の直径dを測定し、下記式(2)より求めた。
λ(%)={(d-d0)/d0}×100 ・・・(2)
Figure 0007258619000006
表3の結果から、例えばNo.1~No.4のTSは780MPa以上であり、強度に優れると判断できる。また、No.1~No.4のELは12%以上であり、延性に優れると判断できる。さらに、No.1~No.4のλは50%以上であり、プレス成形性等の加工性に優れていると判断できる。このように本発明の鋼板連続焼鈍設備は、緒特性のバランスを高いレベルで調整することができることが分かる。
さらに詳細に見ると、No.2及びNo.3の鋼材は、No.1の鋼材に比べてELに優れ、No.4の鋼材に比べてTSに優れる。つまり、徐冷保温帯の搬送方向の長さを冷却帯の搬送方向の長さの3倍以上8倍以下とすることで、さらに強度と延性とのバランスに優れた鋼材を得られることが分かる。
[焼鈍鋼板の製造方法]
本発明の焼鈍鋼板の製造方法の効果を調べるべく、試験装置による実験により以下の評価を行った。
<原板の準備>
焼鈍を行う前の鋼板(原板)を鋼板連続焼鈍設備の評価で述べた原板の準備と同様の手順で準備した。なお、用意した鋼板の組成は、表4に示す。
Figure 0007258619000007
<加熱工程>
この原板を表5に示す条件で、本発明の鋼板連続焼鈍設備を用いて加熱工程を行い、No.5~No.7の鋼板を得た。
なお、まず加熱帯及び均熱帯の雰囲気が表5に示す条件で安定するまで時間調整を行った後、鋼板を加熱しつつ加熱帯を通過させ、鋼板表面の温度が950℃となったところで、温度一定に1時間保ったまま均熱帯を通過させた。その後、鋼板の表面性状を維持する目的で、窒素雰囲気中で冷却した。
<酸化膜厚の測定>
このようにして得られた鋼板について、厚さ方向に切断した断面をSEM(Scanning Electron Microscope、走査電子顕微鏡)で5000倍に拡大して表面の酸化膜を観察した。その結果、No.5及びNo.7の鋼板では酸化膜が観察されなかったのに対し、No.6の鋼板では平均膜厚2.1μmの酸化膜が観察された。なお、酸化膜の平均膜厚は、SEMの画像で断面に沿って1μm間隔で連続する12箇所での厚さを測定し、最大値と最小値とを除く10点を平均して算出した。
Figure 0007258619000008
表5において、「式(1)右辺」は、下記式(1)の右辺の計算式を計算した値である。
Figure 0007258619000009
表5の結果から、水素濃度が上記式(1)を満たすNo.5及びNo.7では、酸化膜厚が0μmであり、加熱帯で鋼板が酸化されていないことが分かる。一方、No.6では水素濃度が上記式(1)を満たさないため、鋼板が酸化されている。以上の結果から、加熱する際の雰囲気の露点を-15℃以上15℃以下とし、上記雰囲気の水素濃度H(体積%)を上記式(1)を満たすようにすることで、鋼板が酸化されることを抑止できることが分かる。
以上説明したように、本発明の鋼板連続焼鈍設備は、1つの設備で多岐にわたる個々の要求に応じた多種類の高強度鋼板やめっき鋼板を製造できる。
1 加熱帯
2 徐冷帯
2a ガスジェット冷却装置
3 冷却帯
3a ガスジェット冷却装置
4 再加熱帯
5 徐冷保温帯
5a インダクションヒータ
6 再冷却帯
6a ガスジェット冷却装置
7 均熱帯
M 鋼板

Claims (5)

  1. 鋼板を加熱する加熱帯と、上記加熱帯を通過した鋼板を徐冷する徐冷帯と、上記徐冷帯を通過した鋼板を冷却する冷却帯と、上記冷却帯を通過した鋼板を再度加熱する再加熱帯とを有する鋼板の連続焼鈍設備であって、
    上記冷却帯及び上記再加熱帯の間に、
    上記冷却帯を通過した鋼板を徐冷又は保温する徐冷保温帯と、
    上記徐冷保温帯を通過した鋼板を再度冷却する再冷却帯と
    を有し、
    上記徐冷帯、上記冷却帯及び上記再冷却帯が、上記鋼板の冷却手段として、ガスジェット冷却装置を備え、
    上記徐冷保温帯が、上記鋼板の冷却速度を上記冷却帯の冷却速度より弱めるための加熱手段として、インダクションヒータ又は間接加熱方式ヒータを備え、
    徐冷帯及び徐冷保温帯における鋼板の平均冷却速度が20℃/s以下であり、冷却帯及び再冷却帯における鋼板の平均冷却速度が20℃/s超である鋼板連続焼鈍設備。
  2. 上記徐冷保温帯の搬送方向の長さが、上記冷却帯の搬送方向の長さの3倍以上8倍以下である請求項1に記載の鋼板連続焼鈍設備。
  3. 上記徐冷保温帯の搬送方向の長さが、上記徐冷帯の搬送方向の長さの0.7倍以上2倍以下である請求項1又は請求項2に記載の鋼板連続焼鈍設備。
  4. 上記徐冷保温帯の搬送方向の長さが、30m以上である請求項2又は請求項3に記載の鋼板連続焼鈍設備。
  5. 鋼板を加熱する工程と、
    上記加熱工程後の鋼板を徐冷する工程と、
    上記徐冷工程後の鋼板を冷却する工程と、
    上記冷却工程後の鋼板を徐冷保温する工程と、
    上記徐冷保温工程後の鋼板を再冷却する工程と、
    上記再冷却工程後の鋼板を再加熱する工程と
    を備え、
    請求項1に記載の鋼板連続焼鈍設備を用い、
    上記加熱工程での加熱帯の雰囲気が、水素及び水蒸気を含み、
    上記加熱工程での鋼板表面の温度をT(K)、上記加熱帯での露点をDP(K)及び気体定数をR(=8.3144598JK-1mol-1)とするとき、上記加熱工程で、加熱する際の雰囲気の露点を-15℃以上15℃以下とし、上記雰囲気の水素濃度H(体積%)を下記式(1)を満たすようにする焼鈍鋼板の製造方法。
    Figure 0007258619000010
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