JP7251923B2 - 眼科組成物およびそれに摩擦低減作用を付与する方法 - Google Patents
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Description
眼部における摩擦を低減するための方法については、これまで充分に検討されていないのが現状である。
[1]K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)と、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを含有する、眼科組成物。
[2]上記(A)成分の含有量が0.001~10w/v%である、[1]に記載の眼科組成物。
[3]上記(A)成分が、ポリビニルピロリドンK90である、[1]または[2]に記載の眼科組成物。
[4]上記(B)成分がビグアニド系殺菌剤である、[1]~[3]のいずれかに記載の眼科組成物。
[5]上記(C)成分が、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ムコ多糖、セルロース誘導体およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の眼科組成物。
[6]さらに、非イオン界面活性剤、エデト酸およびその塩、無機塩類、並びにテルペノイドからなる群より選択される少なくとも1種(D)を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の眼科組成物。
[7]眼科組成物に、K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)と、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを含有させることを含む、眼科組成物に摩擦を低減させる作用を付与する方法。
本明細書において、特に記載のない限り、略記「POE」はポリオキシエチレンを意味する。
本明細書において、特に記載のない限り、略記「POP」はポリオキシプロピレンを意味する。
上記K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)とは、非イオン性の水溶性ポリマーであって、毛細管粘度計によって測定される相対粘度値(25℃)を下記の式(1)に適用して算出される粘性特性値(K値)が、40以上であるものをいう。
K=(1.5logηrel-1)/(0.15+0.003c)+[300clogηrel+(c+1.5clogηrel)2]1/2/(0.15c+0.003c2) …(1)
ηrel:ポリビニルピロリドン水溶液の水に対する相対粘度
c:ポリビニルピロリドン水溶液中のポリビニルピロリドン濃度(%)
本実施形態に係る眼科組成物においては、上記(A)成分および後述する(C)成分とともに、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)を含有する。
上記ビグアニド系殺菌剤とは、構造式中に、式:-NH-C(=NH)-NH-C(=NH)-NH-で表されるビグアニド基を少なくとも1つ有する化合物であり、ビグアニド基を少なくとも1つ有するモノマー、該モノマーから構成されるポリマー、およびそれらの塩形態の化合物として公知の殺菌剤であり、公知の方法により製造してもよく市販品として入手することもできる。
ビグアニド系殺菌剤の塩として具体的には、塩酸ポリヘキサニド(塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド)、塩酸アレキシジン、グルコン酸クロルヘキシジンがあげられ、塩酸ポリヘキサニド、グルコン酸クロルヘキシジンが好ましく、塩酸ポリヘキサニドがさらに好ましい。
上記トロメタモールは、式:C4H11NO3で示される公知化合物であり、公知の方法により合成してもよく、市販品として入手することもできる。
本実施形態に係る眼科組成物においては、上記(A)成分および上記(B)成分とともに、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)を含有する。
上記アミノ酸類とは、分子内にアミノ基とカルボキシ基もしくはスルホ基とを有する化合物またはその誘導体を意味する。具体的には、アミノ酸、ムコ多糖およびそれらの誘導体、並びにそれらの塩が例示される。アミノ酸、ムコ多糖およびそれらの誘導体の塩は、医薬上、薬理学的にまたは生理学的に許容される塩を含む。アミノ酸、ムコ多糖およびそれらの誘導体の塩としては、例えば、有機酸との塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等)等]、無機酸との塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等が例示でき、化合物によって適宜選択される。なかでも、無機塩基との塩が好ましく、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩がより好ましい。アミノ酸類のうち、アミノ酸およびその塩としては、例えば、グリシン、アラニン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ吉草酸等のモノアミノモノカルボン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等のモノアミノジカルボン酸およびそれらの塩;アルギニン、リジン等のジアミノモノカルボン酸およびそれらの塩;アミノエチルスルホン酸(タウリン)等の誘導体およびそれらの塩があげられる。アミノ酸およびその塩としては、L体、D体、DL体のいずれであってもよく、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウムおよびL-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム等量混合物等が例示される。また、アミノ酸類のうち、ムコ多糖およびその塩としては、例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸等およびそれらの塩があげられる。
アミノ酸類がヒアルロン酸およびその塩である場合には、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、ヒアルロン酸およびその塩の総含有量が、0.001~0.5w/v%であることが好ましく、0.01~0.3w/v%であることがより好ましく、0.05~0.1w/v%であることがさらに好ましい。
アミノ酸類がヒアルロン酸およびその塩である場合には、(A)成分に対するヒアルロン酸およびその塩の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、ヒアルロン酸およびその塩の総含有量が、0.001~500質量部であることが好ましく、0.01~100質量部であることがより好ましく、0.1~50質量部であることがさらに好ましい。
上記増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(完全または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30)、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体[メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)(2208、2906、2910等)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロースまたはそれらの塩等]、アラビアゴム、トラガント、デキストラン(40、70等)等が例示でき、好ましくはポリビニルアルコール(完全または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30)、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体、デキストラン(70)であり、より好ましくは、セルロース誘導体であり、さらに好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、さらにより好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910であり、特に好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース2906である。これらの増粘剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
また、本実施形態に係る眼科組成物には、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、さらに、非イオン界面活性剤、エデト酸およびその塩、無機塩類、並びにテルペノイドからなる群より選択される少なくとも1種(D)を含有させることが好ましい。
上記非イオン界面活性剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。非イオン界面活性剤として、具体的には、例えば、モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、POEソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60)、POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油5、POE硬化ヒマシ油10、POE硬化ヒマシ油20、POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60、POE硬化ヒマシ油100等のPOE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油3、POEヒマシ油4、POEヒマシ油6、POEヒマシ油7、POEヒマシ油10、POEヒマシ油13.5、POEヒマシ油17、POEヒマシ油20、POEヒマシ油25、POEヒマシ油30、POEヒマシ油35、POEヒマシ油50等のPOEヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(9E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(23E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(32E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.、ステアリン酸ポリオキシル40)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(75E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(140E.O.、ステアリン酸ポリオキシル140)等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール、POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(54)POP(39)グリコール(ポロクサマー235)、POE(160)POP(30)グリコール(ポロクサマー188)、POE(42)POP(67)グリコール(ポロクサマー403)、POE(120)POP(40)グリコール(ポロクサマー237)、POE(200)POP(70)グリコール等のPOE-POPブロックコポリマー、ポロキサミン等のエチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物、POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル、POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル等があげられる。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
上記エデト酸(エチレンジアミン四酢酸、EDTA)は、式:C10H16N2O8で示される公知化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
また、エデト酸の塩としては、例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム等のアルカリ金属類があげられ、水和物としては例えばエデト酸二ナトリウムの2水和物等のエデト酸ナトリウム水和物があげられる。
これらのなかでもエデト酸二ナトリウム2水和物が好ましく用いられる。
上記無機塩類としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等があげられる。なかでも、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウムが好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウムがより好ましい。
テルペノイドとしては、例えば、メントール(l-メントール、dl-メントール等)、メントン、カンフル(d-カンフル、dl-カンフル等)、ボルネオール(d-ボルネオール、dl-ボルネオール等)、ゲラニオール、シネオール、シトラール、リナロール、アネトール、リモネン、オイゲノール等があげられる。これらはd体、l体またはdl体のいずれでもよいが、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、l-メントール、d-カンフル、dl-カンフル、d-ボルネオール、dl-ボルネオール、ゲラニオールを用いることが好ましい。なかでもl-メントール、d-カンフル、dl-カンフル、ゲラニオールが好ましく、l-メントールがさらに好ましい。また、前記テルペノイドは、精油に含有した状態で使用することもでき、好ましい精油は、ハッカ油、ペパーミント油、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油等である。これらのテルペノイドは、1種または2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本実施形態に係る眼科組成物は、本発明による効果をより一層高めるために、さらに緩衝剤を含有することが好ましい。これにより、本発明の効果をより一層顕著に発揮できる。緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤等があげられる。これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸またはその塩(ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸またはその塩(リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸またはその塩(炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸またはその塩(クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。酢酸緩衝剤としては、酢酸またはその塩(酢酸アルカリ金属塩、酢酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。また、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤または酢酸緩衝剤として、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩または酢酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸またはその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸またはその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸またはその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸またはその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸またはその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等)等が例示できる。これらの緩衝剤のなかでも、ホウ酸緩衝剤(例えば、ホウ酸とホウ砂の組合せ等)、リン酸緩衝剤(例えば、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムの組合せ等)が好ましく、ホウ酸緩衝剤がさらに好ましい。
抗ヒスタミン剤:例えば、イプロヘプチン、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、塩酸オロパタジン、塩酸レボカバスチン等。
抗アレルギー剤:例えば、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、ペミロラストカリウム、アシタザノラスト等。
ステロイド剤:例えば、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド等。
充血除去剤:例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピン等。
消炎剤:例えば、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、プラノプロフェン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、リゾチーム、甘草等。
収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
ビタミン類:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール等。
局所麻酔剤:例えば、リドカイン等。
その他:例えば、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム等。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン、ブドウ糖等。
糖アルコール:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
安定化剤:例えば、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等。
陰イオン界面活性剤:例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸等。
(B)成分以外の防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩化亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール等。
pH調節剤:例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸、リン酸、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム等。
油類:例えば、ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、オリーブ油等の植物油、スクワラン等の動物油、流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油等。
そして、本実施形態に係る眼科組成物とすることにより、眼部における摩擦の低減効果が期待できる。
一般に、コンタクトを装着することによる涙液の流動性の低下や、加齢等による涙液の質の低下等により、眼部が貧栄養の状態に晒されることから、角膜の細胞生存割合が低下する可能性があるが、本実施形態に係る眼科組成物を用いると、角膜細胞の生存割合が顕著に上昇(角膜細胞が賦活化)するようになる。
また、一般に、コンタクトを装着して眼部が低酸素状態になり、その後コンタクトレンズを外した際や、睡眠からの覚醒時には、過剰量の酸素の影響により、角結膜上において酸化ストレスが発生し、炎症、角膜障害等が生じる傾向があるが、本実施形態に係る眼科組成物を用いると、低酸素暴露後の酸化ストレスによって生じる炎症、角膜障害を低減させることができる。
炎症が生じると、IL-6が放出されることから、IL-6遺伝子の発現量を計測することにより、低酸素暴露後の酸化ストレスによる炎症の程度を測定することができる。
また、ムチンは涙液や眼表面の恒常性維持に重要であるが、酸化ストレスによって角膜表面のムチン発現が減少することが報告されている。ムチン発現に関わる遺伝子であるMUC1の発現量を指標として、低酸素暴露後の酸化ストレスによって生じる角膜障害を評価することができる。
一方、低酸素暴露後の酸化ストレスによる角膜に対するダメージの発生に伴い、種々の抗酸化因子が分泌され、酸化ストレスを低減させる。GSTp-1(抗酸化因子の発現に関する遺伝子の1つ)、HMOX-1(抗酸化因子の発現に関する遺伝子の1つ)等の抗酸化因子に起因する遺伝子を計測することにより、低酸素暴露後における酸化ストレスに対する耐性を測定することができる。
したがって、本発明の一実施形態として、K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)と、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを含有する眼科組成物からなる、摩擦の低減剤(好ましくは、コンタクトレンズ装用中の摩擦の低減剤)が提供される。
後記の表1~19における各成分量の単位は、全て「w/v%」である。また、表1~7、15~19における「適量」は、所定のpHを得る量を示す。
ソフトコンタクトレンズ(製品名:プロクリアワンデー(オマフィルコンA(omafilconA))、米国食品医薬品局(FDA)基準によるソフトコンタクトレンズ分類:グループII、クーパービジョン社製)1枚を、リン酸緩衝生理食塩水(塩化ナトリウム:0.83w/v%、リン酸水素ナトリウム12水和物:0.5993w/v%、リン酸二水素ナトリウム2水和物:0.0528w/v%)ですすぎ、表面に付着した余分な液を拭き取った後に、下記の表1に示す処方の各製剤中に10秒間浸漬させた。その後、摩擦感テスター(Tribomaster TL201Ts、トリニティラボ社製)の接触子にソフトコンタクトレンズを接着させた。一方、生理食塩水に1時間浸漬した人工皮革を摩擦感テスターの移動テーブルに張り付け、人工皮革上に生理食塩水4mLを、接触子が移動しうる全面に充分に行き渡るように広げた。つぎに測定ユニットに20gの錘を装着した。ソフトコンタクトレンズを接着させた接触子を、測定ユニットに取り付け、1秒あたり100回、20秒間測定を行った。測定開始後5~20秒の測定結果から得られた摩擦係数の平均値を算出し、その製剤の摩擦係数(μk)とした。
下記の式(7)に従い、対応する比較例(比較例1-1(基準))の摩擦係数を1とした場合の、他の処方例、すなわち、比較例1-2~1-7および実施例1-1、1-2の摩擦係数の割合を算出した。その結果を、下記の表1および2に併せて示す。
摩擦係数割合=各処方例における摩擦係数/対応する比較例の摩擦係数 …(7)
処方例として、下記表3~5に示す処方を用いたこと、対応する比較例を比較例2-1としたこと以外は、試験例1と同じ方法で、対応する比較例(比較例2-1(基準))の摩擦係数を1とした場合の、他の処方例の摩擦係数の割合を求めた。その結果を下記表3~5に併せて示す。
処方例として、下記表6に示す処方を用いたこと、対応する比較例を、比較例3-1としたこと以外は、試験例1と同じ方法で、対応する比較例(比較例3-1(基準))の摩擦係数を1とした場合の、他の処方例の摩擦係数の割合を求めた。その結果を下記表6に併せて示す。
処方例として、下記表7に示す処方を用いたこと、対応する比較例を比較例4-1としたこと以外は、試験例1と同じ方法で、対応する比較例(比較例4-1(基準))の摩擦係数を1とした場合の、他の処方例の摩擦係数の割合を求めた。その結果を下記表7に併せて示す。
下記表8および9に記載の処方に従い、各試験液(眼科組成物)を調製した。
96ウェルプレートに、不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)を2×104個/ウェルとなるように播種し、コンフルエントになるまで培養を行った。培地を除去した後に、各試験液を、100μLずつ添加し、37℃で24時間インキュベートした。同時に、各試験液に替えて、Bufferのみのものを準備し、コントロールとした。その後、Cell-counting kit-8を用いて、コントロールに対する各試験液の細胞生存率(%)を求めた。次いで、下記式(8)を用いて、対応する比較例(比較例5-1(基準))の細胞生存率を1とした場合の、他の処方例、すなわち、比較例5-2、5-3、実施例5-1、5-2の各試験液の細胞生存割合を算出した。その結果を下記表8および9に併せて示す。
細胞生存割合=各試験液の細胞生存率/対応する比較例の細胞生存率 …(8)
以上の結果より、本発明の眼科組成物を使用することで、細胞生存割合が顕著に上昇することから、貧栄養の状態に晒された場合においても細胞生存割合の低下が軽減されており、すなわち、角膜細胞が賦活化されていることが確認された。
試験液を、下記表10および11に記載のものに変更したこと、対応する比較例として、比較例6-1(基準)を用いたこと以外は、試験例5と同様の方法で、各処方における細胞生存割合を算出した。
下記表12および13に記載の処方に従い、各試験液(眼科組成物)を調製した。
6ウェルプレートに、不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)を播種し、DMEM/F12培地(DMEM/F12培地470mLに対し、Antibiotic-antimycotic 100× 5mL、DMSO 2.5mL、EGF 0.5mL、Insulin 0.6mLおよびFBS 25mLを添加したもの)中コンフルエントになるまで培養を行った。各試験液を各ウェルに2mLずつ添加し、アネロパック・ケンキ(三菱ガス化学社製)を使用した低酸素条件下で、37℃で6時間インキュベートを行った。その後、QIAshredder & RNase Mini Kit(QIAGEN社製)を使用して細胞よりRNAを抽出し、SuperScript II(Life technologies社製)を使用してcRNAに逆転写した後、ABI QuantStudio RealTime PCR(Thermo Fisher社製)にて、q-PCRを行い、リアルタイムPCR法における立ち上がりサイクル数(Ct)値を計測した。対応する比較例に対する、IL-6遺伝子の相対的発現比を、下記式(9)を用いて求めた。内部標準として、18S遺伝子(House Keeping遺伝子)を用いた。下記に示す(A)~(C)成分を含有しない対象例(ブランク)のIL-6遺伝子発現量を1として、他の処方例のIL-6遺伝子の発現比を算出した。結果を下記表12および13に併せて示す。
比較例7-1と実施例7-1における対応する比較例は、対象例である。
また、実施例7-2の試験液では、さらにMUC1換算値、GSTp-1換算値について、顕著に上昇する傾向が確認された(対象例を1としたときの換算値は、MUC1:1.23、GSTp-1:1.13)。MUC1は、ムチンの発現、GSTp-1は抗酸化因子の発現に関与する遺伝子の一つであり、これらの換算値が上昇することは、低酸素時における角膜に対するダメージが軽減し、酸化ストレス発生時に角膜の保護に働く遺伝子の産生促進につながると考えられる。
6ウェルプレートの代わりに12ウェルプレートを用いたこと、処方例を下記表14のものを用いた以外は、試験例7と同様の手順で実施した。対応する比較例は、比較例8-1(基準)とした。結果を下記表14に併せて示す。
下記表15に記載の処方に従い、各水性組成物(コンタクトレンズ装着点眼液)を調製し、これを被験液とした。各被験液は、13mL容量のポリエチレンテレフタレート製点眼容器に13mL充填した。充填後、容器にポリエチレン製ノズルを装着した。
普段からソフトコンタクトレンズを装用している、健常者4名を被験者とし、右目に実施例9-1を、左目に比較例9-1を、直接コンタクトレンズの凹面(内側、角膜と接触する面)に片方のレンズにつき1滴ずつ滴下した後に、コンタクトレンズを装着した。
コンタクトレンズを装用してから8時間後に、0~100のメモリを付した10cmの直線を用いた「VAS法(Visual Analog Scale)」で目の諸症状(瞬目時のこする感じ、瞬目のしにくさ、目の異物感、コンタクトレンズが貼り付く感じ、目の乾き、目の疲れ、目のかすみ)に対する改善効果を評価した。スコアが低いほど、それらの症状が感じられず、目の状態として好ましいことを示している。
別日に、同じ被験者が、右目に比較例9-1、左目に実施例9-1を、滴下したこと以外は、上記と同様の方法で評価を行った。
各被験液を使用した場合のスコアを全て平均し、各被験液の平均VASスコア値とした。
各被験液のスコアを用いて、比較例9-1に対する実施例9-1の、各項目におけるスコア低下率(%)を、症状改善率(%)として、下記式(10)を用いて算出した。その結果を下記表15に併せて示す。
症状改善率(スコア低下率)(%)={(比較例9-1の被験液の平均VASスコア値-実施例9-1の被験液の平均VASスコア値)/比較例1の被験液の平均VASスコア値}×100 …(10)
加えて、ポリビニルピロリドンK90、塩酸ポリヘキサニド、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合することにより、目のかわき、目の疲れ、目のかすみが改善されることが確認された。
下記表16~19に記載の処方で、常法により点眼剤(製剤例1~9)、コンタクトレンズ(CL)用点眼剤(製剤例10~23)、コンタクトレンズ装着点眼液(製剤例24~26)を調製する。
表16~19における各成分量の単位は、全て「w/v%」である。
また、同様にして、上記製剤例1~26のそれぞれ全く同じ組成の製剤を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の容器に収容し、ポリブチレンテレフタレート(PBT)製のノズルを装着した(製剤例1”~26”)。
Claims (2)
- K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)と、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを含有し、前記(C)成分がコンドロイチン硫酸又はその塩である眼科組成物からなる、摩擦の低減剤(但し、ポリビニル系水溶性高分子化合物と、ムコ多糖類、ポリリン酸及びポリリン酸塩から選ばれる化合物とを含有する、コンタクトレンズ洗浄用組成物を除く。)。
- 前記摩擦が、コンタクトレンズ装用中の摩擦である、請求項1に記載の摩擦の低減剤。
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