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JP7251923B2 - 眼科組成物およびそれに摩擦低減作用を付与する方法 - Google Patents

眼科組成物およびそれに摩擦低減作用を付与する方法 Download PDF

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Description

本発明は、眼科組成物およびそれに摩擦低減作用を付与する方法に関する。
ポリビニルピロリドンは、眼科組成物の分野において、例えば溶解補助剤等として、使用されている(特許文献1)。
眼部においては、瞼、角膜、結膜の間で瞬き等の運動が加わった場合に摩擦が発生し、これが、角結膜や、涙液膜、眼瞼部の異常の原因の一つになるといわれている。また、特にコンタクトレンズを装用している場合であれば、コンタクトレンズとこれらの組織間においても摩擦が発生し、この摩擦がコンタクトレンズの装用感の悪化につながると考えられる。
眼部における摩擦を低減するための方法については、これまで充分に検討されていないのが現状である。
特開平1-294620号公報
本発明は、眼部における摩擦を低減させる眼科組成物を提供することをその目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、眼科組成物の成分として、ポリビニルピロリドンのなかでも、K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)を選択し、これに、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを組合せることによって、得られる眼科組成物は、意外にも、眼部における摩擦を顕著に低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1]K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)と、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを含有する、眼科組成物。
[2]上記(A)成分の含有量が0.001~10w/v%である、[1]に記載の眼科組成物。
[3]上記(A)成分が、ポリビニルピロリドンK90である、[1]または[2]に記載の眼科組成物。
[4]上記(B)成分がビグアニド系殺菌剤である、[1]~[3]のいずれかに記載の眼科組成物。
[5]上記(C)成分が、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ムコ多糖、セルロース誘導体およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の眼科組成物。
[6]さらに、非イオン界面活性剤、エデト酸およびその塩、無機塩類、並びにテルペノイドからなる群より選択される少なくとも1種(D)を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の眼科組成物。
[7]眼科組成物に、K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)と、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを含有させることを含む、眼科組成物に摩擦を低減させる作用を付与する方法。
本発明の眼科組成物は、K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)と、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを含有することにより、眼部における摩擦を低減させることができる。
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限るものではない。
本明細書において、含有量の単位である「w/v%」は、容積に対する質量の割合を示すものであり、「g/100mL」と同義である。
本明細書において、特に記載のない限り、略記「POE」はポリオキシエチレンを意味する。
本明細書において、特に記載のない限り、略記「POP」はポリオキシプロピレンを意味する。
本実施形態に係る眼科組成物は、K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)と、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを含有する。以下、順に説明する。
<(A)成分>
上記K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)とは、非イオン性の水溶性ポリマーであって、毛細管粘度計によって測定される相対粘度値(25℃)を下記の式(1)に適用して算出される粘性特性値(K値)が、40以上であるものをいう。
〔式〕
K=(1.5logηrel-1)/(0.15+0.003c)+[300clogηrel+(c+1.5clogηrel21/2/(0.15c+0.003c2) …(1)
ηrel:ポリビニルピロリドン水溶液の水に対する相対粘度
c:ポリビニルピロリドン水溶液中のポリビニルピロリドン濃度(%)
K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)としては、例えば、ポリビニルピロリドンK40、ポリビニルピロリドンK50、ポリビニルピロリドンK60、ポリビニルピロリドンK80、ポリビニルピロリドンK85、ポリビニルピロリドンK90、ポリビニルピロリドンK120等があげられる。
これらのなかでも、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、K値が50以上のポリビニルピロリドンが好ましく、K値が70以上のポリビニルピロリドンがより好ましく、K値が90以上のポリビニルピロリドンがさらに好ましく、K値が90~120であるポリビニルピロリドンがさらにより好ましい。なかでも、ポリビニルピロリドンK90が特に好ましく用いられる。ここで、K値は、第十六改正日本薬局方「ポビドン」のK値に関する記載に準じて、表示K値の90~108%であることから、例えば、「K90」とは、上記の式(1)に適用して算出される粘性特性値(K値)が81.0~97.2の範囲にあるものをいう。
なお、上記ポリビニルピロリドンK90は、公知の方法により合成してもよいが、アイフタクトK-90(第一工業製薬社製)、コリドンK90(BASFジャパン社製)、プラスドンK90(アイエスピー・ジャパン社製)、ポビドンK90(DSP五協フード&ケミカル社製)等の市販品を用いてもよい。そして、これらは、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、上記(A)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、(A)成分の総含有量が、0.001~10w/v%であることが好ましく、0.005~5.0w/v%であることがより好ましく、0.01~3.0w/v%であることがさらに好ましく、0.03~1.0w/v%であることが特に好ましい。上記(A)成分の含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から好適である。また、0.001~0.5w/v%、なかでも0.002~0.4w/v%、さらに0.003~0.3w/v%、特に0.005~0.1w/v%も好適に用いられる。
<(B)成分>
本実施形態に係る眼科組成物においては、上記(A)成分および後述する(C)成分とともに、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)を含有する。
〈ビグアニド系殺菌剤〉
上記ビグアニド系殺菌剤とは、構造式中に、式:-NH-C(=NH)-NH-C(=NH)-NH-で表されるビグアニド基を少なくとも1つ有する化合物であり、ビグアニド基を少なくとも1つ有するモノマー、該モノマーから構成されるポリマー、およびそれらの塩形態の化合物として公知の殺菌剤であり、公知の方法により製造してもよく市販品として入手することもできる。
本実施形態で用いられるビグアニド系殺菌剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば特に制限されないが、例えば、下記一般式(2)、(3)、(4)および(5)で示される化合物が例示される。これらの化合物については、塩の形態であってもよい。
Figure 0007251923000001
上記一般式(2)および(3)中、nは、1以上の整数、好ましくは1~500の整数、より好ましくは1~100の整数、さらに好ましくは1~40の整数、特に好ましくは10~13の整数である。
本実施形態に用いられるビグアニド系殺菌剤として、具体的には、ヘキサメチレンビグアニドおよびそのポリマー(即ち、ポリヘキサメチレンビグアニド(略記:PHMB)、ポリヘキサニド)、クロルヘキシジン、アレキシジン、ヘキセチジン等があげられ、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、好ましくはヘキサメチレンビグアニドおよびそのポリマー、より好ましくはヘキサメチレンビグアニドのポリマーが例示される。
本実施形態で用いられるビグアニド系殺菌剤の塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば特に制限されない。本実施形態で用いられるビグアニド系殺菌剤の塩として、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、ホウ酸、リン酸、硝酸等の無機酸塩;酢酸、グルコン酸、マレイン酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸塩;メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩等があげられ、無機酸塩が好ましく、塩酸塩がより好ましい。
ビグアニド系殺菌剤の塩として具体的には、塩酸ポリヘキサニド(塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド)、塩酸アレキシジン、グルコン酸クロルヘキシジンがあげられ、塩酸ポリヘキサニド、グルコン酸クロルヘキシジンが好ましく、塩酸ポリヘキサニドがさらに好ましい。
そして、上記ビグアニド系殺菌剤の含有量は、特に限定されるものではないが、その種類、併用する成分および含有量等に応じて適宜設定される。ビグアニド系殺菌剤の含有量としては、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、ビグアニド系殺菌剤の含有量が、通常0.0000001~0.1w/v%であり、0.000001~0.01w/v%であることが好ましく、0.00001~0.001w/v%であることがより好ましく、0.00001~0.00015w/v%であることがさらにより好ましく、0.00002~0.0001w/v%であることが特に好ましい。
本発明の実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対するビグアニド系殺菌剤の含有比率は特に限定されず、(A)成分およびビグアニド系抗菌剤の種類、他の配合成分の種類および含有量、眼科組成物の用途および製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対するビグアニド系殺菌剤の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、ビグアニド系殺菌剤の総含有量が、0.000001~1質量部であることが好ましく、0.000005~0.5質量部であることがより好ましく、0.00001~0.1質量部であることがさらに好ましく、0.00005~0.01質量部であることがさらにより好ましい。
〈トロメタモール〉
上記トロメタモールは、式:C411NO3で示される公知化合物であり、公知の方法により合成してもよく、市販品として入手することもできる。
本実施形態に係る眼科組成物におけるトロメタモールの含有量は、特に限定されるものではないが、その種類、併用する成分および含有量等に応じて適宜設定される。トロメタモールの含有量としては、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、トロメタモールの含有量が、0.001~20w/v%であることが好ましく、0.005~10w/v%であることがより好ましく、0.01~5w/v%であることがさらに好ましく、0.05~1w/v%であることがさらにより好ましく、0.05~0.5w/v%であることが特に好ましい。また、トロメタモールの含有量としては、0.2w/v%以下であることも好ましい形態としてあげられる。
本発明の実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対するトロメタモールの含有比率は特に限定されず、(A)成分の種類、他の配合成分の種類および含有量、眼科組成物の用途および製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対するトロメタモールの含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、トロメタモールの総含有量が、0.005~500質量部であることが好ましく、0.01~100質量部であることがより好ましく、0.05~50質量部であることがさらに好ましく、0.1~20質量部であることがさらにより好ましい。
これら(B)成分のビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールは、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。(B)成分のなかでも、摩擦低減率の点から、ビグアニド系殺菌剤であることが好ましく、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサニドであることがより好ましく、塩酸ポリヘキサニドであることがさらに好ましい。また、別の観点から、塩酸ポリヘキサニド、グルコン酸クロルヘキシジン、トロメタモールであることが好ましいこともある。
(B)成分の含有量としては、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、(B)成分の含有量が、通常0.0000001~20w/v%であり、0.000001~5w/v%であることが好ましく、0.00001~1w/v%であることがより好ましく、0.00002~0.5w/v%であることがさらに好ましい。
本発明の実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対する(B)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分および(B)成分の種類、他の配合成分の種類および含有量、眼科組成物の用途および製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(B)成分の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(B)成分の総含有量が、0.000001~500質量部であることが好ましく、0.000005~100質量部であることがより好ましく、0.00001~50質量部であることがさらに好ましく、0.00005~20質量部であることがさらにより好ましい。
<(C)成分>
本実施形態に係る眼科組成物においては、上記(A)成分および上記(B)成分とともに、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)を含有する。
〈アミノ酸類〉
上記アミノ酸類とは、分子内にアミノ基とカルボキシ基もしくはスルホ基とを有する化合物またはその誘導体を意味する。具体的には、アミノ酸、ムコ多糖およびそれらの誘導体、並びにそれらの塩が例示される。アミノ酸、ムコ多糖およびそれらの誘導体の塩は、医薬上、薬理学的にまたは生理学的に許容される塩を含む。アミノ酸、ムコ多糖およびそれらの誘導体の塩としては、例えば、有機酸との塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等)等]、無機酸との塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等が例示でき、化合物によって適宜選択される。なかでも、無機塩基との塩が好ましく、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩がより好ましい。アミノ酸類のうち、アミノ酸およびその塩としては、例えば、グリシン、アラニン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ吉草酸等のモノアミノモノカルボン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等のモノアミノジカルボン酸およびそれらの塩;アルギニン、リジン等のジアミノモノカルボン酸およびそれらの塩;アミノエチルスルホン酸(タウリン)等の誘導体およびそれらの塩があげられる。アミノ酸およびその塩としては、L体、D体、DL体のいずれであってもよく、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウムおよびL-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム等量混合物等が例示される。また、アミノ酸類のうち、ムコ多糖およびその塩としては、例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸等およびそれらの塩があげられる。
このようなアミノ酸類のなかでも、特に、L-アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ムコ多糖およびそれらの塩が好ましく、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム等量混合物、アミノエチルスルホン酸、ムコ多糖がより好ましく、なかでもムコ多糖がさらに好ましく、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムがさらにより好ましく、コンドロイチン硫酸ナトリウムがとりわけ好ましい。また、別の観点から、L-アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸およびそれらの塩が好ましくL-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム等量混合物、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムがより好ましく、L-アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムがさらに好ましい。
上記アミノ酸類の含有量は特に限定されず、アミノ酸類の種類、併用する(A)成分、(B)成分の種類および含有量等に応じて適宜設定される。アミノ酸類の含有量としては、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、アミノ酸類の総含有量が、0.0001~10w/v%であることが好ましく、0.0005~5w/v%であることがより好ましく、0.001~4w/v%であることがさらに好ましく、0.01~3w/v%であることがさらにより好ましく、0.1~2.5w/v%であることが特に好ましい。また、アミノ酸類の含有量としては2w/v%以下も好ましい形態としてあげられる。上記アミノ酸類の含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、好適である。
アミノ酸類がコンドロイチン硫酸およびその塩である場合には、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、コンドロイチン硫酸およびその塩の総含有量が、0.01~5w/v%であることが好ましく、0.05~3w/v%であることがより好ましく、0.1~1w/v%であることがさらに好ましい。
アミノ酸類がヒアルロン酸およびその塩である場合には、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、ヒアルロン酸およびその塩の総含有量が、0.001~0.5w/v%であることが好ましく、0.01~0.3w/v%であることがより好ましく、0.05~0.1w/v%であることがさらに好ましい。
本発明の実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対するアミノ酸類の含有比率は特に限定されず、(A)成分およびアミノ酸類の種類、他の配合成分の種類および含有量、眼科組成物の用途および製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対するアミノ酸類の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、アミノ酸類の総含有量が、0.00005~500質量部であることが好ましく、0.0001~100質量部であることがより好ましく、0.0005~50質量部であることがさらに好ましく、0.001~10質量部であることがさらにより好ましい。
アミノ酸類がコンドロイチン硫酸およびその塩である場合には、(A)成分に対するコンドロイチン硫酸およびその塩の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、コンドロイチン硫酸およびその塩の総含有量が、0.01~500質量部であることが好ましく、0.05~100質量部であることがより好ましく、0.1~50質量部であることがさらに好ましい。
アミノ酸類がヒアルロン酸およびその塩である場合には、(A)成分に対するヒアルロン酸およびその塩の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、ヒアルロン酸およびその塩の総含有量が、0.001~500質量部であることが好ましく、0.01~100質量部であることがより好ましく、0.1~50質量部であることがさらに好ましい。
〈増粘剤〉
上記増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(完全または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30)、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体[メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)(2208、2906、2910等)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロースまたはそれらの塩等]、アラビアゴム、トラガント、デキストラン(40、70等)等が例示でき、好ましくはポリビニルアルコール(完全または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30)、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体、デキストラン(70)であり、より好ましくは、セルロース誘導体であり、さらに好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、さらにより好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910であり、特に好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース2906である。これらの増粘剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
上記増粘剤を含有する場合、その含有量は、増粘剤の種類、他の含有成分の種類および含有量等に応じて適宜設定される。増粘剤の含有量としては、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、増粘剤の総含有量が、0.0001~5w/v%であることが好ましく、0.001~3w/v%であることがより好ましく、0.005~1.5w/v%であることがさらに好ましく、0.01~1w/v%であることが特に好ましい。
本発明の実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対する増粘剤の含有比率は特に限定されず、(A)成分および増粘剤の種類、他の配合成分の種類および含有量、眼科組成物の用途および製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する増粘剤の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、増粘剤の総含有量が、0.001~500質量部であることが好ましく、0.005~100質量部であることがより好ましく、0.01~50質量部であることがさらに好ましく、0.05~10質量部であることがさらにより好ましい。
上記増粘剤を含有する場合、その含有量は、(C)成分の種類、他の含有成分の種類および含有量等に応じて適宜設定される。(C)成分の含有量としては、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、(C)成分の総含有量が、0.0001~10w/v%であることが好ましく、0.0005~5w/v%であることがより好ましく、0.001~3w/v%であることがさらに好ましく、0.01~2w/v%であることがさらにより好ましく、0.1~1w/v%であることが特に好ましい。
本発明の実施形態に係る眼科組成物における、(A)成分に対する増粘剤の含有比率は特に限定されず、(A)成分および(C)成分の種類、他の配合成分の種類および含有量、眼科組成物の用途および製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(C)成分の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、増粘剤の総含有量が、0.00005~500質量部であることが好ましく、0.0001~100質量部であることがより好ましく、0.0005~50質量部であることがさらに好ましく、0.001~10質量部であることがさらにより好ましい。
<(D)成分>
また、本実施形態に係る眼科組成物には、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、さらに、非イオン界面活性剤、エデト酸およびその塩、無機塩類、並びにテルペノイドからなる群より選択される少なくとも1種(D)を含有させることが好ましい。
〈非イオン界面活性剤〉
上記非イオン界面活性剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。非イオン界面活性剤として、具体的には、例えば、モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、POEソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60)、POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油5、POE硬化ヒマシ油10、POE硬化ヒマシ油20、POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60、POE硬化ヒマシ油100等のPOE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油3、POEヒマシ油4、POEヒマシ油6、POEヒマシ油7、POEヒマシ油10、POEヒマシ油13.5、POEヒマシ油17、POEヒマシ油20、POEヒマシ油25、POEヒマシ油30、POEヒマシ油35、POEヒマシ油50等のPOEヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(9E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(23E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(32E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.、ステアリン酸ポリオキシル40)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(75E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(140E.O.、ステアリン酸ポリオキシル140)等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール、POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(54)POP(39)グリコール(ポロクサマー235)、POE(160)POP(30)グリコール(ポロクサマー188)、POE(42)POP(67)グリコール(ポロクサマー403)、POE(120)POP(40)グリコール(ポロクサマー237)、POE(200)POP(70)グリコール等のPOE-POPブロックコポリマー、ポロキサミン等のエチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物、POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル、POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル等があげられる。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
本実施形態に係る眼科組成物には、HLB値が10未満の非イオン界面活性剤を1種以上組み合わせることがより好ましい。
HLB値が10未満の非イオン界面活性剤としては、例えば、POE硬化ヒマシ油5、POE硬化ヒマシ油10等の酸化エチレンの平均付加モル数が20未満であるPOE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油3、POEヒマシ油4、POEヒマシ油6、POEヒマシ油7、POEヒマシ油10、POEヒマシ油13.5、POEヒマシ油17、POEヒマシ油20等の酸化エチレンの平均付加モル数が23未満であるPOEヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)等の酸化エチレンの平均付加モル数が7未満であるモノステアリン酸ポリエチレングリコールをあげることができ、なかでも、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、酸化エチレンの平均付加モル数が20未満であるPOE硬化ヒマシ油、酸化エチレンの平均付加モル数が23未満であるPOEヒマシ油が好ましく、酸化エチレンの平均付加モル数が23未満であるPOEヒマシ油がより好ましく、POEヒマシ油3、POEヒマシ油10がさらに好ましい。
上記非イオン界面活性剤を含有する場合、その含有量は、用いる非イオン界面活性剤の種類、他の配合成分の種類および含有量、眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定されるが、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準に、非イオン界面活性剤の総含有量が、0.001~3w/v%であることが好ましく、0.005~2w/v%であることがより好ましく、0.01~1w/v%であることがさらに好ましく、0.05~1w/v%であることが特に好ましい。
〈エデト酸およびその塩〉
上記エデト酸(エチレンジアミン四酢酸、EDTA)は、式:C101628で示される公知化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
また、エデト酸の塩としては、例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム等のアルカリ金属類があげられ、水和物としては例えばエデト酸二ナトリウムの2水和物等のエデト酸ナトリウム水和物があげられる。
これらのなかでもエデト酸二ナトリウム2水和物が好ましく用いられる。
上記エデト酸およびその塩の少なくとも1種を含有する場合、その含有量は、エデト酸およびその塩の種類、他の含有成分の種類および含有量等に応じて適宜設定される。エデト酸およびその塩の少なくとも1種の含有量としては、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、エデト酸およびその塩の少なくとも1種の総含有量が、0.001~1w/v%であることが好ましく、0.005~0.5w/v%であることがより好ましく、0.01~0.1w/v%であることがさらに好ましい。
〈無機塩類〉
上記無機塩類としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等があげられる。なかでも、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウムが好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウムがより好ましい。
上記無機塩類を含有する場合、その含有量は、無機塩類の種類、他の含有成分の種類および含有量等に応じて適宜設定される。無機塩類の含有量としては、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、無機塩類の総含有量が、0.0001~5w/v%であることが好ましく、0.001~3w/v%であることがより好ましく、0.005~1w/v%であることがさらに好ましい。
〈テルペノイド〉
テルペノイドとしては、例えば、メントール(l-メントール、dl-メントール等)、メントン、カンフル(d-カンフル、dl-カンフル等)、ボルネオール(d-ボルネオール、dl-ボルネオール等)、ゲラニオール、シネオール、シトラール、リナロール、アネトール、リモネン、オイゲノール等があげられる。これらはd体、l体またはdl体のいずれでもよいが、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、l-メントール、d-カンフル、dl-カンフル、d-ボルネオール、dl-ボルネオール、ゲラニオールを用いることが好ましい。なかでもl-メントール、d-カンフル、dl-カンフル、ゲラニオールが好ましく、l-メントールがさらに好ましい。また、前記テルペノイドは、精油に含有した状態で使用することもでき、好ましい精油は、ハッカ油、ペパーミント油、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油等である。これらのテルペノイドは、1種または2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記テルペノイドの含有量は特に限定されず、テルペノイドの種類、他の配合成分の種類および含有量等に応じて適宜設定される。テルペノイドの含有量としては、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、テルペノイドの総含有量が、0.00001~0.3w/v%であることが好ましく、0.0001~0.1w/v%であることがより好ましく、0.0005~0.05w/v%であることがさらに好ましく、0.001~0.02w/v%であることが特に好ましい。上記テルペノイドの含有量は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、好適である。
<その他の任意成分>
本実施形態に係る眼科組成物は、本発明による効果をより一層高めるために、さらに緩衝剤を含有することが好ましい。これにより、本発明の効果をより一層顕著に発揮できる。緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤等があげられる。これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸またはその塩(ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸またはその塩(リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸またはその塩(炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸またはその塩(クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。酢酸緩衝剤としては、酢酸またはその塩(酢酸アルカリ金属塩、酢酸アルカリ土類金属塩等)があげられる。また、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤または酢酸緩衝剤として、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩または酢酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸またはその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸またはその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸またはその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸またはその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸またはその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等)等が例示できる。これらの緩衝剤のなかでも、ホウ酸緩衝剤(例えば、ホウ酸とホウ砂の組合せ等)、リン酸緩衝剤(例えば、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムの組合せ等)が好ましく、ホウ酸緩衝剤がさらに好ましい。
上記緩衝剤を含有する場合、その含有量は、緩衝剤の種類、他の含有成分の種類および含有量等に応じて適宜設定される。緩衝剤の含有量としては、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、緩衝剤の総含有量が、0.01~10w/v%であることが好ましく、0.05~5w/v%であることがより好ましく、0.1~3w/v%であることがさらに好ましく、0.5~2w/v%であることが特に好ましい。
本実施形態に係る眼科組成物には、本発明による効果をより一層高める観点から、さらに多価アルコールを含有させてもよい。多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール(400、4000、6000等)、プロピレングリコール、グリセリン等があげられる。多価アルコールとして、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。そして、多価アルコールとして、市販のものを用いることもできる。多価アルコールは、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態に係る眼科組成物に用いることのできる、多価アルコールの含有量は、特に限定されず、多価アルコールの種類、他の配合成分の種類および含有量、眼科組成物の用途および製剤形態等に応じて適宜設定される。多価アルコールの含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、眼科組成物の総量を基準として、多価アルコールの総含有量が、0.01~5w/v%であることが好ましく、0.05~2w/v%であることがより好ましく、0.1~1w/v%であることがさらに好ましく、0.1~0.5w/v%であることが特に好ましい。
なお、本実施形態に係る眼科組成物のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されない。眼科組成物のpHとしては、例えば、4.0~9.5であることが好ましく、5.0~9.0であることがより好ましく、5.5~8.5であることがさらに好ましい。
また、本実施形態に係る眼科組成物の浸透圧比については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。眼科組成物の浸透圧比としては、例えば、0.5~5.0であることが好ましく、0.6~3.0であることがより好ましく、0.7~2.0であることがさらに好ましく、0.9~1.55であることが特に好ましい。浸透圧の調整は、無機塩、多価アルコール、糖アルコールまたは糖等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
本実施形態に係る眼科組成物の粘度については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター:1°34'×R24)で測定した25℃における粘度が、例えば、1~1000mPa・sであることが好ましく、1~100mPa・sであることがより好ましく、1~50mPa・sであることがさらに好ましい。
また、本実施形態に係る眼科組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分または生理活性成分を適当量含有していてもよい。このような成分は、特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造販売承認基準2012年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会監修)に記載された各種医薬における有効成分を例示することができる。具体的には、眼科用薬において用いられる成分として、以下の成分があげられる。
抗ヒスタミン剤:例えば、イプロヘプチン、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、塩酸オロパタジン、塩酸レボカバスチン等。
抗アレルギー剤:例えば、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、ペミロラストカリウム、アシタザノラスト等。
ステロイド剤:例えば、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド等。
充血除去剤:例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピン等。
消炎剤:例えば、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、プラノプロフェン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、リゾチーム、甘草等。
収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
ビタミン類:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール等。
局所麻酔剤:例えば、リドカイン等。
その他:例えば、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム等。
また、本実施形態に係る眼科組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途または製剤形態に応じて、常法にしたがい、様々な添加物を適宜選択し、1種または2種以上を併用して適当量含有していてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2016(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分としてつぎの添加物があげられる。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン、ブドウ糖等。
糖アルコール:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
安定化剤:例えば、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等。
陰イオン界面活性剤:例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸等。
(B)成分以外の防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩化亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール等。
pH調節剤:例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸、リン酸、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム等。
油類:例えば、ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、オリーブ油等の植物油、スクワラン等の動物油、流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油等。
本実施形態に係る眼科組成物は、上記(A)~(C)成分と、必要に応じて他の任意成分とを、所望の含有量となるように担体に添加することにより調製される。上記担体としては医薬上、薬理学的に(製薬上)または生理学的に許容される水を使用すればよく、このような水として、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される。
そして、例えば、精製水で、これらの成分を溶解または懸濁させ、所定のpHおよび浸透圧比に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することにより、本実施形態に係る眼科組成物を調製することができる。
本実施形態に係る眼科組成物は、眼科組成物の総量に対して、水の含有量が85w/v%以上であり、90w/v%以上であることが好ましく、92w/v%以上であることがより好ましく、94w/v%以上であることがさらに好ましく、95w/v%以上であることが特に好ましい。
本実施形態に係る眼科組成物は、目的に応じて種々の製剤形態をとることができる。製剤形態として、例えば、液剤、ゲル剤、半固形剤(軟膏等)等があげられる。本実施形態に係る眼科組成物は、液剤であることが好ましい。
本実施形態に係る眼科組成物は、任意の容器に収容して提供される。本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドおよびこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したものがあげられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。また、本実施形態に係る眼科組成物を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。好ましくは透明容器である。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器および有色透明容器の双方が含まれる。本実施形態に係る眼科組成物は、例えば、有色透明のプラスチック製容器等に、繰り返し使用可能なマルチドーズの形態で収容して使用できる。また、別の態様として、ユニットドーズの形態で収容して使用することもできる。
そして、本実施形態に係る眼科組成物は、医薬品または医薬部外品の製剤として使用でき、いわゆる点眼剤(ただし、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む)の他に、洗眼剤(ただし、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む)、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤、コンタクトレンズ用消毒・洗浄・保存液<マルチパーパスソリューション>)等]、コンタクトレンズ装着液およびコンタクトレンズ装用中の点眼剤の両方の用途に用いられる、コンタクトレンズ装着点眼液等が含まれる。本発明の好適な一例として、点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ装着点眼液があげられ、特に好適な例として点眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ装着点眼液があげられる。なお、コンタクトレンズ用組成物として用いる場合には、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ(イオン性および非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズおよび非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを包含する)を含むあらゆるコンタクトレンズに適用可能である。
また、本実施形態において、裸眼時、コンタクトレンズ装用時を問わず、眼部において瞬目時等に発生する摩擦を低減させることができるが、コンタクトレンズ装用中においては、コンタクトレンズと結膜との間、コンタクトレンズと角膜の間等に摩擦が生じることから、摩擦低減効果がより一層顕著に奏される。よって、眼科組成物はコンタクトレンズ用であることが好ましく、なかでもソフトコンタクトレンズ用であることが、とりわけ好ましい。ソフトコンタクトレンズのなかでも、表面に色や模様がプリント等の方法で施されたカラーコンタクトレンズは、カラーコンタクトレンズ以外のコンタクトレンズに比べて、コンタクトレンズ表面の摩擦が大きいことから、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物であることが特に好ましい。また、一般的にその他のソフトコンタクトレンズに比べて硬度が高い傾向にあるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、摩擦により眼球表面へ与える影響が大きいことから、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物であることが特に好ましい。
(I)摩擦低減作用
そして、本実施形態に係る眼科組成物とすることにより、眼部における摩擦の低減効果が期待できる。
(II)細胞賦活化作用
一般に、コンタクトを装着することによる涙液の流動性の低下や、加齢等による涙液の質の低下等により、眼部が貧栄養の状態に晒されることから、角膜の細胞生存割合が低下する可能性があるが、本実施形態に係る眼科組成物を用いると、角膜細胞の生存割合が顕著に上昇(角膜細胞が賦活化)するようになる。
(III)低酸素暴露後の酸化ストレス耐性作用
また、一般に、コンタクトを装着して眼部が低酸素状態になり、その後コンタクトレンズを外した際や、睡眠からの覚醒時には、過剰量の酸素の影響により、角結膜上において酸化ストレスが発生し、炎症、角膜障害等が生じる傾向があるが、本実施形態に係る眼科組成物を用いると、低酸素暴露後の酸化ストレスによって生じる炎症、角膜障害を低減させることができる。
炎症が生じると、IL-6が放出されることから、IL-6遺伝子の発現量を計測することにより、低酸素暴露後の酸化ストレスによる炎症の程度を測定することができる。
また、ムチンは涙液や眼表面の恒常性維持に重要であるが、酸化ストレスによって角膜表面のムチン発現が減少することが報告されている。ムチン発現に関わる遺伝子であるMUC1の発現量を指標として、低酸素暴露後の酸化ストレスによって生じる角膜障害を評価することができる。
一方、低酸素暴露後の酸化ストレスによる角膜に対するダメージの発生に伴い、種々の抗酸化因子が分泌され、酸化ストレスを低減させる。GSTp-1(抗酸化因子の発現に関する遺伝子の1つ)、HMOX-1(抗酸化因子の発現に関する遺伝子の1つ)等の抗酸化因子に起因する遺伝子を計測することにより、低酸素暴露後における酸化ストレスに対する耐性を測定することができる。
(IV)なお、本実施形態に係る眼科組成物としては、上記作用をより好ましく発現させる観点から、プラノプロフェンまたはその塩と、抗アレルギー剤、抗炎症剤および水溶性ビタミンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含有する配合の組み合わせを、本実施形態に係る眼科組成物から除くことが好ましく、さらにプラノプロフェンまたはその塩を含まない眼科組成物であることが好ましく、特にプラノプロフェンを含まないことが好ましい。
また、上記作用をより好ましく発現させる観点から、本実施形態に係る眼科組成物を点眼剤として用いる場合には、両性界面活性剤を、特に、下記一般式(6)で示される両性界面活性剤を、本実施形態に係る眼科組成物から除くことが好ましい。
Figure 0007251923000002
上記一般式(6)中、R1はRまたは(CH2n-NHC(O)Rであり、ここで、Rはヒドロキシルによって場合により置換されていてよいC8~C16アルキルであり、nは2、3または4であり、R2およびR3は各々独立に、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルから選ばれ、そしてR4はヒドロキシルによって場合により置換されていてよいC2~C8アルキレンである。
本実施形態に係る眼科組成物は、瞬目時やコンタクトレンズ装用時の、該眼科組成物と接触する対象部分(結膜[眼瞼縁の結膜:lid wiper]を含む)、角膜、コンタクトレンズ(表面[装用時に外界に接する面]、裏面[装用時に眼球に接する面]およびエッジ部分を含む)等における、摩擦抵抗が低減されて滑らかになるため、眼部における不快感、瞬目時に目がこすれる感じ、瞬目がしにくい感じ、目の異物感(ゴロゴロする感じ等)、コンタクトレンズが貼り付く感じ等が軽減され、コンタクトレンズ使用時においても、長時間にわたって良好な使用感が得られるという効果を奏する。さらに、コンタクトレンズ装用時においては、コンタクトレンズと結膜、コンタクトレンズと角膜の間において発生する摩擦を軽減することから、コンタクトレンズによって結膜や角膜が受ける損傷を低減させることができる。
したがって、本発明の一実施形態として、K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)と、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを含有する眼科組成物からなる、摩擦の低減剤(好ましくは、コンタクトレンズ装用中の摩擦の低減剤)が提供される。
さらに、本発明の一実施形態として、眼科組成物に、K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)と、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを含有させ、眼科組成物に摩擦の低減作用(好ましくは、コンタクトレンズ装用中の摩擦の低減作用)を付与する方法が提供される。
さらにまた、本発明の一実施形態として、コンタクトレンズ装用中の摩擦の低減方法であって、K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)と、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを含有する眼科組成物をコンタクトレンズに適用するステップを含む方法が提供される。なお、当該方法において、眼科組成物のコンタクトレンズへの適用は、コンタクトレンズ装用中であってもよく、コンタクトレンズ装着時であってもよい。
本発明の(A)~(C)成分の少なくとも1種は、有効成分として含有されていてもよい。
以下に、実施例および試験例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
後記の表1~19における各成分量の単位は、全て「w/v%」である。また、表1~7、15~19における「適量」は、所定のpHを得る量を示す。
〔試験例1:摩擦評価(1)〕
ソフトコンタクトレンズ(製品名:プロクリアワンデー(オマフィルコンA(omafilconA))、米国食品医薬品局(FDA)基準によるソフトコンタクトレンズ分類:グループII、クーパービジョン社製)1枚を、リン酸緩衝生理食塩水(塩化ナトリウム:0.83w/v%、リン酸水素ナトリウム12水和物:0.5993w/v%、リン酸二水素ナトリウム2水和物:0.0528w/v%)ですすぎ、表面に付着した余分な液を拭き取った後に、下記の表1に示す処方の各製剤中に10秒間浸漬させた。その後、摩擦感テスター(Tribomaster TL201Ts、トリニティラボ社製)の接触子にソフトコンタクトレンズを接着させた。一方、生理食塩水に1時間浸漬した人工皮革を摩擦感テスターの移動テーブルに張り付け、人工皮革上に生理食塩水4mLを、接触子が移動しうる全面に充分に行き渡るように広げた。つぎに測定ユニットに20gの錘を装着した。ソフトコンタクトレンズを接着させた接触子を、測定ユニットに取り付け、1秒あたり100回、20秒間測定を行った。測定開始後5~20秒の測定結果から得られた摩擦係数の平均値を算出し、その製剤の摩擦係数(μk)とした。
下記の式(7)に従い、対応する比較例(比較例1-1(基準))の摩擦係数を1とした場合の、他の処方例、すなわち、比較例1-2~1-7および実施例1-1、1-2の摩擦係数の割合を算出した。その結果を、下記の表1および2に併せて示す。
〔式〕
摩擦係数割合=各処方例における摩擦係数/対応する比較例の摩擦係数 …(7)
Figure 0007251923000003
Figure 0007251923000004
上記表1および2の結果からわかるように、ポリビニルピロリドンK90、塩酸ポリヘキサニド、コンドロイチン硫酸ナトリウムまたはヒアルロン酸ナトリウムを単独で含有する比較例1-1、1-2、1-3、1-5と比較して、ポリビニルピロリドンK90、塩酸ポリヘキサニド、および、コンドロイチン硫酸ナトリウムまたはヒアルロン酸ナトリウムを含有した実施例1-1、1-2は、意外なことに、摩擦係数割合が大きく低下しており、摩擦低減作用が顕著に向上することが確認された。一方、ポリビニルピロリドンK90の代わりにポリビニルピロリドンK25を用いた比較例1-4、1-7は、顕著な摩擦低減作用を示さなかった。
〔試験例2:摩擦評価(2)〕
処方例として、下記表3~5に示す処方を用いたこと、対応する比較例を比較例2-1としたこと以外は、試験例1と同じ方法で、対応する比較例(比較例2-1(基準))の摩擦係数を1とした場合の、他の処方例の摩擦係数の割合を求めた。その結果を下記表3~5に併せて示す。
Figure 0007251923000005
Figure 0007251923000006
Figure 0007251923000007
上記表3~5の結果からわかるように、ポリビニルピロリドンK90、塩酸ポリヘキサニド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906を含有している場合(実施例2-1)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906の代わりに、コンドロイチン硫酸ナトリウムまたはヒアルロン酸ナトリウムを含有し、ポリビニルピロリドンK90の濃度を変えた場合(実施例2-2~2-5)、ポリビニルピロリドンK90、塩酸ポリヘキサニド、アミノエチルスルホン酸を含有している場合(実施例2-6)、塩酸ポリヘキサニドの代わりに、グルコン酸クロルヘキシジンまたはトロメタモールを含有する場合(実施例2-7~2-10)のいずれの場合においても、比較例2-1と比較して、摩擦係数割合が大きく低下しており、摩擦低減作用が顕著に向上することが確認された。
〔試験例3:摩擦評価(3)〕
処方例として、下記表6に示す処方を用いたこと、対応する比較例を、比較例3-1としたこと以外は、試験例1と同じ方法で、対応する比較例(比較例3-1(基準))の摩擦係数を1とした場合の、他の処方例の摩擦係数の割合を求めた。その結果を下記表6に併せて示す。
Figure 0007251923000008
上記表6の結果からわかるように、ポリビニルピロリドンK90、塩酸ポリヘキサニド、コンドロイチン硫酸ナトリウム以外に、さらにポリオキシエチレンヒマシ油10、ステアリン酸ポリオキシル40、l-メントール、ポロクサマー407等を含有している場合(実施例3-1~3-3)においても、比較例3-1と比較して、摩擦係数割合が大きく低下しており、摩擦低減作用が顕著に向上することが確認された。
〔試験例4:摩擦評価(4)〕
処方例として、下記表7に示す処方を用いたこと、対応する比較例を比較例4-1としたこと以外は、試験例1と同じ方法で、対応する比較例(比較例4-1(基準))の摩擦係数を1とした場合の、他の処方例の摩擦係数の割合を求めた。その結果を下記表7に併せて示す。
Figure 0007251923000009
上記表7の結果からわかるように、ポリビニルピロリドンK90、塩酸ポリヘキサニド、ヒアルロン酸ナトリウム0.1w/v%を含有している場合(実施例4-1)、塩酸ポリヘキサニドの代わりにグルコン酸クロルヘキシジンを含有している場合(実施例4-2)のいずれの場合においても、比較例4-1と比較して、摩擦係数割合が大きく低下しており、摩擦低減作用が顕著に奏されることが確認された。
〔試験例5:細胞賦活化作用に対する評価(1)〕
下記表8および9に記載の処方に従い、各試験液(眼科組成物)を調製した。
96ウェルプレートに、不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)を2×104個/ウェルとなるように播種し、コンフルエントになるまで培養を行った。培地を除去した後に、各試験液を、100μLずつ添加し、37℃で24時間インキュベートした。同時に、各試験液に替えて、Bufferのみのものを準備し、コントロールとした。その後、Cell-counting kit-8を用いて、コントロールに対する各試験液の細胞生存率(%)を求めた。次いで、下記式(8)を用いて、対応する比較例(比較例5-1(基準))の細胞生存率を1とした場合の、他の処方例、すなわち、比較例5-2、5-3、実施例5-1、5-2の各試験液の細胞生存割合を算出した。その結果を下記表8および9に併せて示す。
〔式〕
細胞生存割合=各試験液の細胞生存率/対応する比較例の細胞生存率 …(8)
Figure 0007251923000010
Figure 0007251923000011
上記表8および9の結果からわかるように、塩酸ポリヘキサニド、ヒアルロン酸ナトリウムを単独で配合した比較例5-2、5-3の試験液では、比較例5-1の試験液と比較して、細胞生存割合の上昇がほとんど見られなかった。これに対し、ポリビニルピロリドンK90にさらに、塩酸ポリヘキサニド、ヒアルロン酸ナトリウムまたはアミノエチルスルホン酸を配合した実施例5-1、5-2の試験液では、細胞生存割合が顕著に上昇することが確認された。
以上の結果より、本発明の眼科組成物を使用することで、細胞生存割合が顕著に上昇することから、貧栄養の状態に晒された場合においても細胞生存割合の低下が軽減されており、すなわち、角膜細胞が賦活化されていることが確認された。
〔試験例6:細胞賦活化作用に対する評価(2)〕
試験液を、下記表10および11に記載のものに変更したこと、対応する比較例として、比較例6-1(基準)を用いたこと以外は、試験例5と同様の方法で、各処方における細胞生存割合を算出した。
Figure 0007251923000012
Figure 0007251923000013
上記表10および11の結果からわかるように、ヒアルロン酸ナトリウムを単独で配合した比較例6-2の試験液では、比較例6-1の試験液と比較して、細胞生存割合の上昇がほとんど見られなかった。これに対し、ポリビニルピロリドンK90に、さらに塩酸ポリヘキサニド、ヒアルロン酸ナトリウムを配合した実施例6-1の試験液では、細胞生存割合が顕著に上昇することが確認された。また、ポリビニルピロリドンK90に、さらに塩酸ポリヘキサニド、アミノエチルスルホン酸を配合した実施例6-2の試験液では、細胞生存割合が顕著に上昇することが確認された。
〔試験例7:低酸素暴露後の酸化ストレスへの耐性評価(1)〕
下記表12および13に記載の処方に従い、各試験液(眼科組成物)を調製した。
6ウェルプレートに、不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)を播種し、DMEM/F12培地(DMEM/F12培地470mLに対し、Antibiotic-antimycotic 100× 5mL、DMSO 2.5mL、EGF 0.5mL、Insulin 0.6mLおよびFBS 25mLを添加したもの)中コンフルエントになるまで培養を行った。各試験液を各ウェルに2mLずつ添加し、アネロパック・ケンキ(三菱ガス化学社製)を使用した低酸素条件下で、37℃で6時間インキュベートを行った。その後、QIAshredder & RNase Mini Kit(QIAGEN社製)を使用して細胞よりRNAを抽出し、SuperScript II(Life technologies社製)を使用してcRNAに逆転写した後、ABI QuantStudio RealTime PCR(Thermo Fisher社製)にて、q-PCRを行い、リアルタイムPCR法における立ち上がりサイクル数(Ct)値を計測した。対応する比較例に対する、IL-6遺伝子の相対的発現比を、下記式(9)を用いて求めた。内部標準として、18S遺伝子(House Keeping遺伝子)を用いた。下記に示す(A)~(C)成分を含有しない対象例(ブランク)のIL-6遺伝子発現量を1として、他の処方例のIL-6遺伝子の発現比を算出した。結果を下記表12および13に併せて示す。
比較例7-1と実施例7-1における対応する比較例は、対象例である。
Figure 0007251923000014
Figure 0007251923000015
Figure 0007251923000016
上記表12および13の結果からわかるように、ポリビニルピロリドンK90を単独で含有させた比較例7-1の試験液では、IL-6遺伝子の発現比が増加し、炎症反応が高く出る可能性があることが確認された。さらに、塩酸ポリヘキサニド、およびコンドロイチン硫酸ナトリウムを配合した実施例7-1、塩酸ポリヘキサニド、ヒアルロン酸ナトリウムを配合した実施例7-2では、比較例7-1の試験液と比較してIL-6遺伝子の発現比が減少し、炎症反応が抑えられる傾向があることが確認された。
また、実施例7-2の試験液では、さらにMUC1換算値、GSTp-1換算値について、顕著に上昇する傾向が確認された(対象例を1としたときの換算値は、MUC1:1.23、GSTp-1:1.13)。MUC1は、ムチンの発現、GSTp-1は抗酸化因子の発現に関与する遺伝子の一つであり、これらの換算値が上昇することは、低酸素時における角膜に対するダメージが軽減し、酸化ストレス発生時に角膜の保護に働く遺伝子の産生促進につながると考えられる。
以上の結果より、低酸素条件下に晒された場合においても、本実施形態に係る眼科組成物を使用することで、低酸素暴露により発生する酸化ストレス時に生じる炎症の軽減作用、角膜の保護に働く遺伝子の産生促進作用を有することが確認された。よって、本実施形態に係る眼科組成物は、低酸素暴露によって引き起こされる角膜障害の治療または予防に有用であることが確認された。
〔試験例8:低酸素後の酸化ストレスへの耐性評価(2)〕
6ウェルプレートの代わりに12ウェルプレートを用いたこと、処方例を下記表14のものを用いた以外は、試験例7と同様の手順で実施した。対応する比較例は、比較例8-1(基準)とした。結果を下記表14に併せて示す。
Figure 0007251923000017
上記表14の結果からわかるように、ポリビニルピロリドンK90と、塩酸ポリヘキサニド、アスパラギン酸カリウムを含む実施例8-1は、比較例8-1の試験液と比較してIL-6遺伝子の発現比が減少し、炎症反応が抑えられる傾向があることが確認された。 また、実施例8-1の試験液では、さらにMUC1換算値、HMOX-1換算値について、顕著に向上する傾向が確認された(比較例8-1を1としたときの換算値は、MUC1:3.22、HMOX-1:2.74)。
以上の結果より、処方例を変えた場合においても、本実施形態に係る眼科組成物を使用することで、低酸素暴露により発生する酸化ストレス時に生じる炎症、角膜障害の軽減作用、角膜の保護に働く遺伝子の産生促進作用を有することが確認された。よって、本実施形態に係る眼科組成物は、低酸素暴露によって引き起こされる角膜障害の治療または予防に有用であることが確認された。
〔試験例9:使用感試験〕
下記表15に記載の処方に従い、各水性組成物(コンタクトレンズ装着点眼液)を調製し、これを被験液とした。各被験液は、13mL容量のポリエチレンテレフタレート製点眼容器に13mL充填した。充填後、容器にポリエチレン製ノズルを装着した。
普段からソフトコンタクトレンズを装用している、健常者4名を被験者とし、右目に実施例9-1を、左目に比較例9-1を、直接コンタクトレンズの凹面(内側、角膜と接触する面)に片方のレンズにつき1滴ずつ滴下した後に、コンタクトレンズを装着した。
コンタクトレンズを装用してから8時間後に、0~100のメモリを付した10cmの直線を用いた「VAS法(Visual Analog Scale)」で目の諸症状(瞬目時のこする感じ、瞬目のしにくさ、目の異物感、コンタクトレンズが貼り付く感じ、目の乾き、目の疲れ、目のかすみ)に対する改善効果を評価した。スコアが低いほど、それらの症状が感じられず、目の状態として好ましいことを示している。
別日に、同じ被験者が、右目に比較例9-1、左目に実施例9-1を、滴下したこと以外は、上記と同様の方法で評価を行った。
各被験液を使用した場合のスコアを全て平均し、各被験液の平均VASスコア値とした。
各被験液のスコアを用いて、比較例9-1に対する実施例9-1の、各項目におけるスコア低下率(%)を、症状改善率(%)として、下記式(10)を用いて算出した。その結果を下記表15に併せて示す。
〔式〕
症状改善率(スコア低下率)(%)={(比較例9-1の被験液の平均VASスコア値-実施例9-1の被験液の平均VASスコア値)/比較例1の被験液の平均VASスコア値}×100 …(10)
Figure 0007251923000018
上記表15の結果からわかるように、ポリビニルピロリドンK90、塩酸ポリヘキサニド、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合することにより、眼部における摩擦が低減され、瞬目時のこすれる感じ、瞬目のしにくさ、目の異物感、コンタクトレンズが貼り付く感じが、改善されることが確認された。
加えて、ポリビニルピロリドンK90、塩酸ポリヘキサニド、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合することにより、目のかわき、目の疲れ、目のかすみが改善されることが確認された。
<製剤例>
下記表16~19に記載の処方で、常法により点眼剤(製剤例1~9)、コンタクトレンズ(CL)用点眼剤(製剤例10~23)、コンタクトレンズ装着点眼液(製剤例24~26)を調製する。
表16~19における各成分量の単位は、全て「w/v%」である。
Figure 0007251923000019
Figure 0007251923000020
Figure 0007251923000021
Figure 0007251923000022
また、上記製剤例1~26をポリエチレンテレフタレート(PET)製の容器に収容し、ポリエチレン(PE)製のノズルを装着した(製剤例1’~26’)。
また、同様にして、上記製剤例1~26のそれぞれ全く同じ組成の製剤を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の容器に収容し、ポリブチレンテレフタレート(PBT)製のノズルを装着した(製剤例1”~26”)。
本発明は、瞬目時やコンタクトレンズ装用時の眼部における摩擦低減用の眼科組成物として、広く利用することができる。

Claims (2)

  1. K値が40以上であるポリビニルピロリドン(A)と、ビグアニド系殺菌剤およびトロメタモールからなる群より選択される少なくとも1種(B)と、アミノ酸類からなる群より選択される少なくとも1種(C)とを含有し、前記(C)成分がコンドロイチン硫酸又はその塩である眼科組成物からなる、摩擦の低減剤(但し、ポリビニル系水溶性高分子化合物と、ムコ多糖類、ポリリン酸及びポリリン酸塩から選ばれる化合物とを含有する、コンタクトレンズ洗浄用組成物を除く。)。
  2. 前記摩擦が、コンタクトレンズ装用中の摩擦である、請求項に記載の摩擦の低減剤。
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