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JP7251542B2 - 塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形体および積層体 - Google Patents

塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形体および積層体 Download PDF

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JP7251542B2 JP2020507459A JP2020507459A JP7251542B2 JP 7251542 B2 JP7251542 B2 JP 7251542B2 JP 2020507459 A JP2020507459 A JP 2020507459A JP 2020507459 A JP2020507459 A JP 2020507459A JP 7251542 B2 JP7251542 B2 JP 7251542B2
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Description

本発明は、塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形体および積層体に関するものである。
塩化ビニル樹脂は、一般に、耐寒性、耐熱性、耐油性などの特性に優れているため、種々の用途に用いられている。
具体的には、例えば、自動車インスツルメントパネル等の自動車内装部品の形成には、塩化ビニル樹脂成形体からなる表皮や塩化ビニル樹脂成形体からなる表皮に発泡ポリウレタン成形体等の発泡体を裏打ちしてなる積層体などの自動車内装材が用いられている。
そして、表皮として用いられる塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、塩化ビニル樹脂と、可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形などの既知の成形方法を用いて成形することにより製造されている(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、例えば特許文献1では、所定の平均重合度の塩化ビニル樹脂100質量部に対して、所定の可塑剤を100~200質量部含む塩化ビニル樹脂組成物を用いて、耐熱老化性に優れる塩化ビニル樹脂成形体を製造することができるとの報告がされている。
国際公開第2014/091867号
ここで、発泡ポリウレタン成形体等の発泡体を裏打ちして使用される塩化ビニル樹脂成形体には、熱老化試験後であっても損失弾性率E”のピークトップ温度が低い(即ち、塑性変形成分が多くてエネルギー吸収性に優れる)ことが求められている。
しかしながら、特許文献1に記載の塩化ビニル樹脂組成物では、発泡ポリウレタン成形体と積層して用いた場合に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が十分に低い塩化ビニル樹脂成形体を形成することが困難であった。
そこで、本発明は、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体を提供することを目的とする。また、本発明は、当該塩化ビニル樹脂成形体を形成可能な塩化ビニル樹脂組成物、および、当該塩化ビニル樹脂成形体を有する積層体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、鉄酸化物とを含む塩化ビニル樹脂組成物を使用すれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、(a)塩化ビニル樹脂、(b)可塑剤、および(c)鉄酸化物を含むことを特徴とする。このように、(a)塩化ビニル樹脂、(b)可塑剤、および(c)鉄酸化物を含む塩化ビニル樹脂組成物を用いれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体を形成することができる。
なお、本発明において、塩化ビニル樹脂成形体に「発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いる」とは、塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体が隣接して積層されていれば特に限定されず、塩化ビニル樹脂成形体に発泡および硬化済みの発泡ポリウレタン成形体を積層する場合のみならず、塩化ビニル樹脂成形体上で、発泡ポリウレタン成形体の原料液(通常は、ポリオール化合物を含む液とポリイソシアネート化合物を含む液の2液の混合液)を発泡および硬化させて、塩化ビニル樹脂成形体に発泡ポリウレタン成形体を積層する場合も含まれる。
ここで、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、前記(c)鉄酸化物の含有量が、前記(a)塩化ビニル樹脂100質量部当たり0.01質量部以上0.8質量部以下であることが好ましい。塩化ビニル樹脂組成物中の(c)鉄酸化物の含有量が上記範囲内であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の引張伸びを十分確保しつつ、当該成形体に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度を更に低下させることができる。
更に、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、前記(c)鉄酸化物の平均粒子径が0.4μm以上1.2μm以下であることが好ましい。塩化ビニル樹脂組成物中の(c)鉄酸化物の平均粒子径が上記範囲内であれば、当該塩化ビニル樹脂成形体に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度を更に低くすることができる。
なお、本発明において、「鉄酸化物の平均粒子径」は、JIS Z8825:2013に準拠したレーザー回折・散乱法により、測定機器として島津製作所社製「SALD-2300」を用い、試料屈折率2.50-0.20iの条件下で測定された体積平均粒子径を指す。
また、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、前記(b)可塑剤の含有量が、前記(a)塩化ビニル樹脂100質量部当たり30質量部以上200質量部以下であることが好ましい。塩化ビニル組成物中の(b)可塑剤の含有量が上記範囲内であれば、当該塩化ビニル樹脂組成物を用いて得られる塩化ビニル樹脂成形体の引張伸びを高めると共に、当該成形体に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度を更に低下させることができる。加えて、塩化ビニル樹脂成形体の表面に可塑剤が移行して成形体表面がべた付くことを抑制することができる。
ここで、本発明の塩化ビニル樹脂組成物において、前記(b)可塑剤が、トリメリット酸エステルとピロメリット酸エステルの少なくとも一方を含むことができる。(b)可塑剤として、トリメリット酸エステルおよび/またはピロメリット酸エステルを使用した場合であっても、本発明の塩化ビニル樹脂組成物によれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が十分に低い塩化ビニル樹脂成形体を形成することができる。
更に、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、粉体成形に用いられることが好ましい。塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形に用いれば、例えば、自動車インスツルメントパネル用表皮として良好に使用し得る塩化ビニル樹脂成形体が容易に得られる。
また、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、パウダースラッシュ成形に用いられることが好ましい。塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形に用いれば、例えば、自動車インスツルメントパネル用表皮として良好に使用し得る塩化ビニル樹脂成形体が一層容易に得られる。
ここで、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上述した塩化ビニル樹脂組成物の何れかを成形してなることを特徴とする。上記塩化ビニル樹脂組成物を用いて得られる塩化ビニル樹脂成形体は、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が低い。
更に、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、自動車インスツルメントパネル表皮用として用いることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と、上述した何れかの塩化ビニル樹脂成形体とを有することを特徴とする。発泡ポリウレタン成形体および上述の塩化ビニル樹脂成形体を用いて積層体とすれば、当該積層体が、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体部分を備えることができる。
本発明によれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体を提供することができる。また、本発明は、当該塩化ビニル樹脂成形体を形成可能な塩化ビニル樹脂組成物、および、当該塩化ビニル樹脂成形体を有する積層体を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、例えば、本発明の塩化ビニル樹脂成形体を形成する際に用いることができる。また、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、当該塩化ビニル樹脂成形体を有する本発明の積層体の製造に用いることができる。そして、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、自動車インスツルメントパネルの表皮用など、自動車内装材用として好適に用いることができる。
(塩化ビニル樹脂組成物)
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、(a)塩化ビニル樹脂、(b)可塑剤、および(c)鉄酸化物を含み、任意に、その他の添加剤を更に含んでもよい。
そして、上述した本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、少なくとも、上記(a)塩化ビニル樹脂と、(b)可塑剤と、(c)鉄酸化物とを含んでいるため、当該塩化ビニル樹脂組成物を使用すれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体を形成することができる。
なお、上記成分を含む塩化ビニル樹脂組成物を用いることで、従来の塩化ビニル樹脂成形体に比して、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度を低下させることができる理由は、以下の通りであると推察される。
まず、一般に、(b)可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形体からなる表皮に、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちすると、塩化ビニル樹脂成形体中に含まれ、当該成形体の損失弾性率E”のピークトップ温度低下に寄与しうる可塑剤が、徐々に発泡ポリウレタン成形体側に移行してしまう。そして、可塑剤の移行は熱老化により加速される。しかしながら、塩化ビニル樹脂成形体に(c)鉄酸化物を配合すれば、塩化ビニル樹脂成形体中の(c)鉄酸化物が発泡ポリウレタン成形体に接触することで、塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体の接触面において発泡ポリウレタン成形体が変質し、塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体の間に、成分移行を抑制する層(遮蔽層)が形成されると推察される。そしてこの遮蔽層により、塩化ビニル樹脂成形体から発泡ポリウレタン成形体への(b)可塑剤の移行を抑制して、熱老化試験後であっても、塩化ビニル樹脂成形体の損失弾性率E”のピークトップ温度を十分に低く保持できると考えられる。
<(a)塩化ビニル樹脂>
ここで、(a)塩化ビニル樹脂としては、例えば、1種類または2種類以上の塩化ビニル樹脂粒子を含有することができ、任意に、1種類または2種類以上の塩化ビニル樹脂微粒子を更に含有することができる。中でも、(a)塩化ビニル樹脂は、少なくとも塩化ビニル樹脂粒子を含有することが好ましく、塩化ビニル樹脂粒子および塩化ビニル樹脂微粒子を含有することがより好ましい。
そして、(a)塩化ビニル樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法など、従来から知られているいずれの製造法によっても製造し得る。
なお、本明細書において、「樹脂粒子」とは、粒子径が30μm以上の粒子を指し、「樹脂微粒子」とは、粒子径が30μm未満の粒子を指す。
また、(a)塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル単量体単位からなる単独重合体の他、塩化ビニル単量体単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する塩化ビニル系共重合体が挙げられる。そして、塩化ビニル系共重合体を構成し得る、塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体(共単量体)の具体例としては、例えば、国際公開第2016/098344号に記載のものを使用することができる。また、これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
<<塩化ビニル樹脂粒子>>
塩化ビニル樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂粒子は、通常、マトリックス樹脂(基材)として機能する。なお、塩化ビニル樹脂粒子は、懸濁重合法により製造することが好ましい。
[平均重合度]
そして、塩化ビニル樹脂粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度は、800以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2900以下であることが更に好ましく、2800以下であることが特に好ましい。塩化ビニル樹脂粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が800以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の物理的強度を十分確保しつつ、例えば、引張伸びを良好にできる。そして、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が低く、且つ引張伸びが良好な塩化ビニル樹脂成形体は、例えば、エアバッグが膨張、展開した際に、破片が飛散することなく設計通りに割れる、良好な延性を有する自動車インスツルメントパネルの表皮などの自動車内装材として好適に用いることができる。一方、塩化ビニル樹脂粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が5000以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物の溶融性を向上させ、当該組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の表面平滑性を向上できる。
なお、本発明において「平均重合度」は、JIS K6720-2に準拠して測定することができる。
[平均粒子径]
また、塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径は、通常30μm以上であり、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、130μm以上であることが更に好ましく、145μm以上であることが特に好ましく、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径が30μm以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を向上させることができる。一方、塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径が500μm以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物の溶融性を高めると共に、当該組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の表面平滑性を向上させることができる。
なお、本発明において、「塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径」は、JIS Z8825:2013に準拠したレーザー回折・散乱法により、測定機器として島津製作所社製「SALD-2300」を用い、試料屈折率1.70-0.20iの条件下で測定された体積平均粒子径を指す。
[含有割合]
そして、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%とすることができ、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合が70質量%以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の物理的強度を十分確保しつつ、引張伸びを良好にできる。一方、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合が95質量%以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を向上させることができる。
<<塩化ビニル樹脂微粒子>>
塩化ビニル樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂微粒子は、通常、ダスティング剤(粉体流動性改良剤)として機能する。なお、塩化ビニル樹脂微粒子は、乳化重合法により製造することが好ましい。
[平均重合度]
そして、塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度は、500以上が好ましく、700以上がより好ましく、800以上であることが更に好ましく、3000以下が好ましく、2500以下がより好ましく、2100以下であることが更に好ましい。ダスティング剤としての塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が500以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が向上すると共に、当該組成物を用いて得られる成形体の引張伸びを良好にすることができる。一方、塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が3000以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物の溶融性が高まり、当該組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の表面平滑性を向上させることができる。
[平均粒子径]
また、塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径は、通常30μm未満であり、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2.0μm以下であることが更に好ましく、1.8μm以下であることが特に好ましく、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることが更に好ましく、1.7μm以上であることが特に好ましい。塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径が0.1μm以上であれば、例えばダスティング剤としてのサイズを過度に小さくすることなく、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を向上させることができる。一方、塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径が30μm未満であれば、塩化ビニル樹脂組成物の溶融性が高まり、当該組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の表面平滑性を向上させることができる。
なお、本発明において、「塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径」は、JIS Z8825:2013に準拠したレーザー回折・散乱法により、測定機器として島津製作所社製「SALD-2300」を用い、試料屈折率1.60-0.00iの条件下で測定された体積平均粒子径を指す。
[含有割合]
そして、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合が5質量%以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を向上させることができる。一方、(a)塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合が30質量%以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の物理的強度を高めることができる。
<(b)可塑剤>
(b)可塑剤は、塩化ビニル樹脂組成物から形成される塩化ビニル樹脂成形体に、柔軟性等を付与しうる成分である。
<<種類>>
ここで、(b)可塑剤の具体例としては、以下の一次可塑剤及び二次可塑剤などが挙げられる。
いわゆる一次可塑剤としては、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリ-n-プロピル、トリメリット酸トリ-n-ブチル、トリメリット酸トリ-n-ペンチル、トリメリット酸トリ-n-ヘキシル、トリメリット酸トリ-n-ヘプチル、トリメリット酸トリ-n-オクチル、トリメリット酸トリ-n-ノニル、トリメリット酸トリ-n-デシル、トリメリット酸トリ-n-ウンデシル、トリメリット酸トリ-n-ドデシル、トリメリット酸トリ-n-トリデシル、トリメリット酸トリ-n-テトラデシル、トリメリット酸トリ-n-ペンタデシル、トリメリット酸トリ-n-ヘキサデシル、トリメリット酸トリ-n-ヘプタデシル、トリメリット酸トリ-n-ステアリル、トリメリット酸トリ-n-アルキルエステル(ここで、トリメリット酸トリ-n-アルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は一分子中で互いに異なっていても良い。)などの、エステルを構成するアルキル基が直鎖状である直鎖状トリメリット酸エステル〔なお、これらのトリメリット酸エステルは、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。〕;
トリメリット酸トリ-i-プロピル、トリメリット酸トリ-i-ブチル、トリメリット酸トリ-i-ペンチル、トリメリット酸トリ-i-ヘキシル、トリメリット酸トリ-i-ヘプチル、トリメリット酸トリ-i-オクチル、トリメリット酸トリ-(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ-i-ノニル、トリメリット酸トリ-i-デシル、トリメリット酸トリ-i-ウンデシル、トリメリット酸トリ-i-ドデシル、トリメリット酸トリ-i-トリデシル、トリメリット酸トリ-i-テトラデシル、トリメリット酸トリ-i-ペンタデシル、トリメリット酸トリ-i-ヘキサデシル、トリメリット酸トリ-i-ヘプタデシル、トリメリット酸トリ-i-オクタデシル、トリメリット酸トリアルキルエステル(ここで、トリメリット酸トリアルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は一分子中で互いに異なっていても良い。)などの、エステルを構成するアルキル基が分岐状である分岐状トリメリット酸エステル〔なお、これらのトリメリット酸エステルは、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。〕;
ピロメリット酸テトラメチル、ピロメリット酸テトラエチル、ピロメリット酸テトラ-n-プロピル、ピロメリット酸テトラ-n-ブチル、ピロメリット酸テトラ-n-ペンチル、ピロメリット酸テトラ-n-ヘキシル、ピロメリット酸テトラ-n-ヘプチル、ピロメリット酸テトラ-n-オクチル、ピロメリット酸テトラ-n-ノニル、ピロメリット酸テトラ-n-デシル、ピロメリット酸テトラ-n-ウンデシル、ピロメリット酸テトラ-n-ドデシル、ピロメリット酸テトラ-n-トリデシル、ピロメリット酸テトラ-n-テトラデシル、ピロメリット酸テトラ-n-ペンタデシル、ピロメリット酸テトラ-n-ヘキサデシル、ピロメリット酸テトラ-n-ヘプタデシル、ピロメリット酸テトラ-n-ステアリル、ピロメリット酸テトラ-n-アルキルエステル(ここで、ピロメリット酸テトラ-n-アルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は一分子中で互いに異なっていても良い。)などの、エステルを構成するアルキル基が直鎖状である直鎖状ピロメリット酸エステル〔なお、これらのピロメリット酸エステルは、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。〕;
ピロメリット酸テトラ-i-プロピル、ピロメリット酸テトラ-i-ブチル、ピロメリット酸テトラ-i-ペンチル、ピロメリット酸テトラ-i-ヘキシル、ピロメリット酸テトラ-i-ヘプチル、ピロメリット酸テトラ-i-オクチル、ピロメリット酸テトラ-(2-エチルヘキシル)、ピロメリット酸テトラ-i-ノニル、ピロメリット酸テトラ-i-デシル、ピロメリット酸テトラ-i-ウンデシル、ピロメリット酸テトラ-i-ドデシル、ピロメリット酸テトラ-i-トリデシル、ピロメリット酸テトラ-i-テトラデシル、ピロメリット酸テトラ-i-ペンタデシル、ピロメリット酸テトラ-i-ヘキサデシル、ピロメリット酸テトラ-i-ヘプタデシル、ピロメリット酸テトラ-i-オクタデシル、ピロメリット酸テトラアルキルエステル(ここで、ピロメリット酸テトラアルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は一分子中で互いに異なっていても良い。)などの、エステルを構成するアルキル基が分岐状である分岐状ピロメリット酸エステル〔なお、これらのピロメリット酸エステルは、単一化合物からなるものであっても、混合物であってもよい。〕;
ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレートなどのフタル酸誘導体;
ジメチルイソフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのイソフタル酸誘導体;
ジ-(2-エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ-n-オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸誘導体;
ジ-n-ブチルアジペート、ジ(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸誘導体;
ジ-(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ-n-ヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体;
ジ-n-ブチルセバケート、ジ-(2-エチルヘキシル)セバケート、ジイソデシルセバケート、ジ-(2-ブチルオクチル)セバケートなどのセバシン酸誘導体;
ジ-n-ブチルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ-(2-エチルヘキシル)マレエートなどのマレイン酸誘導体;
ジ-n-ブチルフマレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フマレートなどのフマル酸誘導体;
トリエチルシトレート、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ-(2-エチルヘキシル)シトレートなどのクエン酸誘導体;
モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ-(2-エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸誘導体;
ブチルオレエート、グリセリルモノオレエート、ジエチレングリコールモノオレエートなどのオレイン酸誘導体;
メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸誘導体;
n-ブチルステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸誘導体(但し、12-ヒドロキシステアリン酸エステルを除く);
ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸誘導体;
トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェートなどのリン酸誘導体;
ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ-(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール誘導体;
グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン誘導体;
エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどのエポキシ誘導体;
アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどのポリエステル系可塑剤;
などが挙げられる。
また、いわゆる二次可塑剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;塩素化パラフィン、トリエチレングリコールジカプリレートなどのグリコールの脂肪酸エステル、ブチルエポキシステアレート、フェニルオレエート、ジヒドロアビエチン酸メチルなどが挙げられる。
上述した可塑剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
そして、上述した可塑剤の中でも、塩化ビニル樹脂組成物および塩化ビニル樹脂成形体を容易かつ良好に得られる観点からは、(b)可塑剤としては、少なくとも一次可塑剤を用いることが好ましく、一次可塑剤および二次可塑剤を併用することがより好ましい。具体的には、(b)可塑剤としては、トリメリット酸エステルおよび/またはピロメリット酸エステルを用いることが好ましく、少なくともトリメリット酸エステルを用いることがより好ましく、トリメリット酸エステルとエポキシ化大豆油とを併用することが更に好ましい。
<<含有量>>
そして、(b)可塑剤の含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部当たり、30質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましく、80質量部以上であることが更に好ましく、130質量部以上であることが一層好ましく、200質量部以下であることが好ましく、160質量部以下であることがより好ましく、140質量部以下であることが更に好ましい。(b)可塑剤の含有量が30質量部以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の引張伸びを高めると共に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度を一層低下させることができる。一方、(b)可塑剤の含有量が200質量部以下であれば、塩化ビニル樹脂成形体の表面に可塑剤が移行して成形体表面がべた付くことを抑制することができる。
<(c)鉄酸化物>
(c)鉄酸化物は、塩化ビニル樹脂組成物から形成される塩化ビニル樹脂成形体の、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度を低下させうる成分である。
<<種類>>
ここで、(c)鉄酸化物としては、特に限定されないが、酸化鉄(II)(FeO)、四酸化三鉄(Fe)、酸化鉄(III)(Fe)等が挙げられる。これらの鉄酸化物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。そして、塩化ビニル樹脂成形体の熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度を更に低くする観点から、(c)鉄酸化物としては、酸化鉄(III)(Fe)を用いることが好ましく、α-酸化鉄(III)(α-Fe)を用いることがより好ましい。
<<平均粒子径>>
また、(c)鉄酸化物の平均粒子径は、0.4μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、0.55μm以上であることが更に好ましく、1.2μm以下であることが好ましく、1.1μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることが更に好ましく、0.9μm以下であることが更に好ましい。(c)鉄酸化物の平均粒子径が上記範囲内であれば、上述した遮蔽層が効率よく形成されるためと推察されるが、塩化ビニル樹脂成形体の熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度を更に低くすることができる。
<<含有量>>
そして、(c)鉄酸化物の含有量は、(a)塩化ビニル樹脂100質量部当たり、0.01質量部以上であることが好ましく、0.02質量部以上であることがより好ましく、0.03質量部以上であることが更に好ましく、0.05質量部以上であることが一層好ましく、0.08質量部以上であることが特に好ましく、0.8質量部以下であることが好ましく、0.7質量部以下であることがより好ましく、0.6質量部以下であることが更に好ましく、0.5質量部以下であることが特に好ましい。(c)鉄酸化物の含有量が0.01質量部以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度を更に低くすることができる。一方、(c)鉄酸化物の含有量が0.8質量部以下であれば、塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成した塩化ビニル樹脂成形体の引張伸びを十分確保することができる。
<添加剤>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上述した成分以外に、各種添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、過塩素酸処理ハイドロタルサイト、ゼオライト、β-ジケトン、脂肪酸金属塩などの安定剤;離型剤;上記塩化ビニル樹脂微粒子以外のその他のダスティング剤;耐衝撃性改良剤;過塩素酸処理ハイドロタルサイト以外の過塩素酸化合物(過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等);酸化防止剤;防カビ剤;難燃剤;帯電防止剤;充填剤;光安定剤;発泡剤;成形加工性調節剤(シリコーンオイル等);着色剤が挙げられる。
このような添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、国際公開第2016/098344号に記載のものを使用することができる。
<塩化ビニル樹脂組成物の調製方法>
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、上述した成分を混合して調製することができる。
ここで、上記(a)塩化ビニル樹脂と、(b)可塑剤と、(c)鉄酸化物と、必要に応じて更に配合される添加剤との混合方法としては、特に限定されることなく、例えば、塩化ビニル樹脂微粒子を含むダスティング剤を除く成分をドライブレンドにより混合し、その後、ダスティング剤を添加、混合する方法が挙げられる。ここで、ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。また、ドライブレンド時の温度は、特に制限されることなく、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましい。
<塩化ビニル樹脂組成物の用途>
そして、得られた塩化ビニル樹脂組成物は、粉体成形に好適に用いることができ、パウダースラッシュ成形により好適に用いることができる。
(塩化ビニル樹脂成形体)
本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上述した塩化ビニル樹脂組成物を、任意の方法で成形することにより得られることを特徴とする。そして、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上述した塩化ビニル樹脂組成物の何れかを用いて形成され、少なくとも、(a)塩化ビニル樹脂と、(b)可塑剤と、(c)鉄酸化物を含んでいるため、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合であっても、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が十分低い。従って、本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、自動車内装材、特に、自動車インスツルメントパネルの表皮として好適に用いることができる。
<塩化ビニル樹脂成形体の形成方法>
ここで、パウダースラッシュ成形により塩化ビニル樹脂成形体を形成する場合、パウダースラッシュ成形時の金型温度は、特に制限されることなく、200℃以上とすることが好ましく、220℃以上とすることがより好ましく、300℃以下とすることが好ましく、280℃以下とすることがより好ましい。
そして、塩化ビニル樹脂成形体を製造する際には、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、上記温度範囲の金型に本発明の塩化ビニル樹脂組成物を振りかけて、5秒以上30秒以下の間放置した後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とし、更に、任意の温度下、30秒以上3分以下の間放置する。その後、金型を10℃以上60℃以下に冷却し、得られた本発明の塩化ビニル樹脂成形体を金型から脱型する。そして、金型の形状をかたどったシート状の成形体を得る。
(積層体)
本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と、上述した塩化ビニル樹脂成形体の何れかとを有する。なお、塩化ビニル樹脂成形体は、通常、積層体の一方の表面を構成する。
そして、本発明の積層体は、例えば、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を用いて形成され、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体を有しているため、自動車インスツルメントパネル等の自動車内装材として好適に用いることができる。
ここで、発泡ポリウレタン成形体と塩化ビニル樹脂成形体との積層方法は、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、(1)発泡ポリウレタン成形体と、塩化ビニル樹脂成形体とを別途準備した後に、熱融着、熱接着、または、公知の接着剤などを用いることにより貼り合わせる方法;(2)塩化ビニル樹脂成形体上で発泡ポリウレタン成形体の原料となるイソシアネート類とポリオール類などとを反応させて重合を行うと共に、公知の方法によりポリウレタンの発泡を行うことにより、塩化ビニル樹脂成形体上に発泡ポリウレタン成形体を直接形成する方法;などが挙げられる。中でも、工程が簡素である点、および、種々の形状の積層体を得る場合においても塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体とを強固に接着し易い点から、後者の方法(2)が好適である。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、塩化ビニル樹脂成形体の加熱(熱老化試験)後における損失弾性率E”のピークトップ温度、塩化ビニル樹脂成形体の初期および加熱(熱老化試験)後における引張応力および引張伸び(常温および低温)、並びに、加熱(熱老化試験)による、塩化ビニル樹脂成形体の光沢変化は、下記の方法で評価した。
<加熱試験後の損失弾性率E”のピークトップ温度>
発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされた積層体を試料とした。当該試料をオーブンに入れ、温度130℃の環境下で600時間加熱を行った。次に、加熱後の積層体から発泡ポリウレタン成形体を剥離して、塩化ビニル樹脂成形シートのみを準備した。
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを、幅10mm×長さ40mmの寸法で打ち抜くことにより測定試料とした。そして、JIS K7244-4に準拠して、周波数10Hz、昇温速度2℃/分、測定温度-90℃~+100℃の範囲で、当該測定試料についての損失弾性率E”のピークトップ温度(℃)を測定した。損失弾性率E”のピークトップ温度が低いほど、加熱(熱老化試験)後における塩化ビニル樹脂成形体の、低温での粘性が優れている。
<引張応力および引張伸び>
塩化ビニル樹脂成形体の引張応力および引張伸びは、以下の通り、常温(23℃)および低温(-20℃)のそれぞれの条件おいて、初期(未加熱)および加熱(熱老化試験)後の引張応力および引張破断伸びを測定することで評価した。
<<常温での引張応力および引張伸び>>
[初期]
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを、JIS K6251に記載の1号ダンベルで打ち抜き、JIS K7113に準拠して、引張速度200mm/分で、23℃の常温下における引張応力および引張破断伸び(%)を測定した。引張破断伸びの値が大きいほど、初期(未加熱)の塩化ビニル樹脂成形体の引張伸びが良好である。
[加熱(熱老化試験)後]
発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされた積層体を試料とした。当該試料をオーブンに入れ、温度130℃の環境下で600時間、加熱を行った。次に、加熱後の積層体から発泡ポリウレタン成形体を剥離して、塩化ビニル樹脂成形シートのみを準備した。そして、上記初期の場合と同様の条件にて、600時間加熱後の塩化ビニル樹脂成形シートの引張応力および引張破断伸び(%)を測定した。引張破断伸びの値が大きいほど、加熱(熱老化試験)後における塩化ビニル樹脂成形体の引張伸びが良好である。
<<低温での引張応力および引張伸び>>
[初期]
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを、JIS K6251に記載の1号ダンベルで打ち抜き、JIS K7113に準拠して、引張速度200mm/分で、-20℃の低温下における引張応力および引張破断伸び(%)を測定した。引張破断伸びの値が大きいほど、初期(未加熱)の塩化ビニル樹脂成形体の低温での引張伸びが良好である。
[加熱(熱老化試験)後]
発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされた積層体を試料とした。当該試料をオーブンに入れ、温度130℃の環境下で600時間、加熱を行った。次に、加熱後の積層体から発泡ポリウレタン成形体を剥離して、塩化ビニル樹脂成形シートのみを準備した。そして、上記初期の場合と同様の条件にて、600時間加熱後の塩化ビニル樹脂成形シートの引張応力および引張破断伸び(%)を測定した。引張破断伸びの値が大きいほど、加熱(熱老化試験)後における塩化ビニル樹脂成形体の引張伸びが良好である。
<光沢変化>
発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされた積層体を7cm×14cmの寸法に切り出して試験片とした。
ギヤーオーブン中に、130℃の条件で試験片を600時間放置して、放置前後の表皮の光沢度の変化量(Δグロス)を求めた。
具体的には、表皮の光沢度の変化量(Δグロス)は、試験片の表皮側の光沢度(入射角60°)をグロスメータ(東京電色社製、製品名「グロスメータGP-60」)で測定し、放置前の光沢度と放置後の光沢度との差であるΔグロス(放置後の光沢度-放置前の光沢度)を求めた。Δグロスがゼロに近いほど、光沢度の安定性に優れる。
(実施例1)
<塩化ビニル樹脂組成物の調製>
表1に示す配合成分のうち、可塑剤(トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、およびエポキシ化大豆油)と、ダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子とを除く成分をヘンシェルミキサーに入れて混合した。そして、混合物の温度が80℃に上昇した時点で上記可塑剤を全て添加し、更に昇温することにより、ドライアップ(可塑剤が、塩化ビニル樹脂である塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態をいう。)させた。その後、ドライアップさせた混合物が温度70℃以下に冷却された時点でダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子を添加し、塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
<塩化ビニル樹脂成形体の形成>
上述で得られた塩化ビニル樹脂組成物を、温度250℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、8秒~20秒程度の任意の時間放置して溶融させた後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とした。その後、当該塩化ビニル樹脂組成物を振りかけたシボ付き金型を、温度200℃に設定したオーブン内に静置し、静置から60秒経過した時点で当該シボ付き金型を冷却水で冷却した。金型温度が40℃まで冷却された時点で、塩化ビニル樹脂成形体としての、145mm×175mm×1mmの塩化ビニル樹脂成形シートを金型から脱型した。
そして、得られた塩化ビニル樹脂成形シートについて、上述の方法に従って、常温および低温での引張応力および引張伸び(初期)を評価した。結果を表1に示す。
<積層体の形成>
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを、200mm×300mm×10mmの金型の中に、シボ付き面を下にして敷いた。
別途、プロピレングリコールのPO(プロピレンオキサイド)・EO(エチレンオキサイド)ブロック付加物(水酸基価28、末端EO単位の含有量=10%、内部EO単位の含有量4%)を50部、グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価21、末端EO単位の含有量=14%)を50部、水を2.5部、トリエチレンジアミンのエチレングリコール溶液(東ソー社製、商品名「TEDA-L33」)を0.2部、トリエタノールアミンを1.2部、トリエチルアミンを0.5部、および整泡剤(信越化学工業製、商品名「F-122」)を0.5部混合して、ポリオール混合物を得た。また、得られたポリオール混合物とポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)とを、インデックスが98になる比率で混合した混合液を調製した。そして、調製した混合液を、上述の通り金型内に敷かれた塩化ビニル樹脂成形シートの上に注いだ。その後、348mm×255mm×10mmのアルミニウム板で上記金型に蓋をして、金型を密閉した。金型を密閉してから5分間放置することにより、表皮としての塩化ビニル樹脂成形シート(厚さ:1mm)に、発泡ポリウレタン成形体(厚み:9mm、密度:0.18g/cm)が裏打ちされた積層体が、金型内で形成された。
そして、形成された積層体を金型から取り出し、積層体における塩化ビニル樹脂シートについて、上述の方法に従って、加熱(熱老化試験)後における損失弾性率E”のピークトップ温度、常温および低温での引張応力および引張伸び(加熱(熱老化試験)後)、並びに、加熱(熱老化試験)による光沢変化を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2~4)
塩化ビニル樹脂組成物の調製時に、鉄酸化物の量および/または平均粒子径を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形シートおよび積層体を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
塩化ビニル樹脂組成物の調製時に、鉄酸化物を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形シートおよび積層体を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0007251542000001
1)大洋塩ビ社製、製品名「TH-2800」(懸濁重合法、平均重合度:2800、平均粒子径:145μm)
2)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST PQLTX」(乳化重合法、平均重合度:800、平均粒子径:1.8μm)
3)東ソー社製、製品名「リューロンペースト(登録商標)761」(乳化重合法、平均重合度:2100、平均粒子径:1.7μm)
4)花王社製、製品名「トリメックスN-08」
5)ADEKA社製、製品名「アデカサイザー UL-80」
6)ADEKA社製、製品名「アデカサイザー O-130S」
7)JFEケミカル社製、製品名「中純度酸化鉄JC-DS」(平均粒子径:0.70~0.90μm)
8)JFEケミカル社製、製品名「中純度酸化鉄JC-W」(平均粒子径:0.55~0.75μm)
9)協和化学工業社製、製品名「アルカマイザー5」
10)水澤化学工業社製、製品名「MIZUKALIZER DS」
11)昭和電工社製、製品名「カレンズDK-1」
12)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ 522A」
13)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ LA-72」
14)堺化学工業社、製品名「SAKAI SZ2000」
15)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ LS-12」
16)信越シリコーン社製、製品名「KF-9701」(シラノール両末端変性シリコーンオイル)
17)大日精化社製、製品名「DA PX 1720(A)ブラック」
表1より、(a)塩化ビニル樹脂、(b)可塑剤、および(c)鉄酸化物を含む塩化ビニル樹脂組成物を用いた実施例1~4は、(a)塩化ビニル樹脂および(b)可塑剤を含むが、(c)鉄酸化物を含まない塩化ビニル樹脂組成物を用いた比較例1に比して、塩化ビニル樹脂成形体を発泡ポリウレタン成形体と積層して用いた場合に、塩化ビニル樹脂成形体の熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度を低下させうることが分かる。
本発明によれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、熱老化試験後における損失弾性率E”のピークトップ温度が低い塩化ビニル樹脂成形体を提供することができる。また、本発明は、当該塩化ビニル樹脂成形体を形成可能な塩化ビニル樹脂組成物、および、当該塩化ビニル樹脂成形体を有する積層体を提供することができる。

Claims (8)

  1. (a)塩化ビニル樹脂、(b)可塑剤、および(c)鉄酸化物を含
    前記(c)鉄酸化物の平均粒子径が0.4μm以上1.2μm以下であり、
    前記(b)可塑剤の含有量が、前記(a)塩化ビニル樹脂100質量部当たり30質量部以上200質量部以下である、塩化ビニル樹脂組成物(但し、炭酸リチウムを含むものを除く)。
  2. 前記(c)鉄酸化物の含有量が、前記(a)塩化ビニル樹脂100質量部当たり0.01質量部以上0.8質量部以下である、請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
  3. 前記(b)可塑剤が、トリメリット酸エステルとピロメリット酸エステルの少なくとも一方を含む、請求項1または2に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
  4. 粉体成形に用いられる、請求項1~の何れかに記載の塩化ビニル樹脂組成物。
  5. パウダースラッシュ成形に用いられる、請求項に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
  6. 請求項1~の何れかに記載の塩化ビニル樹脂組成物を成形してなる、塩化ビニル樹脂成形体。
  7. 自動車インスツルメントパネル表皮用である、請求項に記載の塩化ビニル樹脂成形体。
  8. 発泡ポリウレタン成形体と、請求項またはに記載の塩化ビニル樹脂成形体とを有する、積層体。
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