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JP7250280B2 - 植生土嚢 - Google Patents

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Description

本発明は、法面保護工事において法面下端部に配置される植生土嚢に関する。
山土を削ったり盛土をすることにより形成される法面の浸食や崩壊を防止するため、法面を緑化する植生(厚層)基材吹付工法等の法面保護工事が環境保護の観点から実施される。その際、法面を安定させるため、土砂を充填した土嚢袋を法面下端部に配置する。
例えば、特許文献1には、表面が植物の発芽、生育に障害を来たさない目合を有するネツトで裏面が天然繊維もしくは化学繊維で出来た透水性シートで形成された袋体の表面内面に植生帯を装着した植生土のう袋が開示されている。
実開昭62-122549号公報
従来より土嚢袋には経済性の観点から化学繊維が多く使われているが、化学繊維を使った土嚢袋は紫外線やアルカリ材料等により劣化する。土嚢袋の劣化が進行すると、土嚢袋が破れて土嚢袋内の充填材が流出する。耐紫外線対応の繊維を使用した土嚢袋もあるが、経済性や外観面において難点がある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、土嚢袋が劣化して破れた際に、土嚢袋内の充填材が流出することのない植生土嚢を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る植生土嚢は、一般廃棄物を原料とする溶融スラグと、有機質主体の基盤材と、接合剤と、肥料と、種子とが混合された状態で樹脂系の化学繊維からなる土嚢袋に充填されていることを特徴としている。
ここで、有機質主体の基盤材は、バーク堆肥、ピートモス、繊維質改良土等である。
樹脂系の化学繊維は紫外線や充填材のアルカリ成分によって劣化する。その結果、樹脂系の化学繊維からなる土嚢袋はいずれ破袋する。しかし、充填材に溶融スラグを混合することにより、土嚢袋破袋時期までに土嚢袋内で種子が発芽し、根・茎・葉が生長する。これにより、充填材と根・茎が土嚢袋内で一体化する状態となり、土嚢袋破袋時における充填材の流出を防止することができる。
また、植生土嚢内の種子と植生基材吹付工法で使用する種子とを同じ種類とすることで、土留土嚢施工領域と吹付領域を一体化することができる。
さらにまた、充填材に溶融スラグを混合することにより、植生土嚢としての透水性と保水性を確保すると共に、充填材中にできる空隙により根・茎・葉の生長を促進することができる。
また、本発明に係る植生土嚢では、前記土嚢袋に充填される充填材における前記溶融スラグの質量比が30質量%以上50質量%以下であることを好適とする。
溶融スラグの質量比が30質量%未満の場合、土嚢袋破袋までの期間が長くなり、植物生長期間との間にズレが生じると共に、透水性が低下するので植物生育に悪影響がでる。一方、溶融スラグの質量比が50質量%を超えると、充填した溶融スラグの安定性を確保するため接合剤の割合を高くする必要があり費用面で高価となることに加えて、透水性が高くなる(即ち、保水性が低位化する)ことより植物生育に悪影響がでる。
本発明に係る植生土嚢では、充填材に溶融スラグを混合することにより、土嚢袋破袋時期までに土嚢袋内で種子が発芽し、根・茎・葉が生長するので、充填材と根・茎が土嚢袋内で一体化し、土嚢袋破袋時における充填材の流出を防止することができる。
植生基材吹付工法によって形成された法面の側断面図である。 本発明の一実施の形態に係る植生土嚢に含まれる溶融スラグの製造に使用するガス化溶融炉の模式図である。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、本明細書及び図面において実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1に植生基材吹付工法によって形成された法面30の側断面を示す。植生基材吹付工法の手順は以下の通りである。
(1)法面30の除草、浮石除去等を行って法面30を清掃する。
(2)法面30に網状の植生ネット32等を敷設し、主アンカーピン33及び補助アンカーピン34を法面30に打設して網状の植生ネット32等を法面30に固定する。網状の植生ネット32等には、網目50mm以上の菱形金網などが使用される。主アンカーピン33は径:16mm、長さ:400mm程度とし、1m当たり0.3本程度打設する。補助アンカーピン34が径9mm、長さ:200mmとし、1m当たり1.5本程度打設する。
(3)法面30の下端部に沿って植生土嚢35を配置する。
(4)吹付機(図示省略)を用いて植生基材31を法面30に吹き付ける。吹付厚さは3cm~10cm程度とする。
本発明の一実施の形態に係る植生土嚢は、一般廃棄物を原料とする溶融スラグと、有機質主体の基盤材と、接合剤と、肥料と、種子とを混合して樹脂系の化学繊維からなる土嚢袋に充填したものである。
植生基材吹付工法で使用した土嚢は、施工完了から一定期間経過後に撤去するのが通例であるが、本実施の形態に係る植生土嚢は撤去せず、そのまま継続使用することを前提としている。
有機質主体の基盤材はバーク堆肥、ピートモス、繊維質改良土等、接合剤はセメント、高分子系樹脂等、肥料は窒素・リン・カリウムを含む暖効性肥料や化成肥料、種子は夏芝・メドハギ等のハギ類、ヤマハギ等のマメ類、ヨモギ等のキク類、シャブやヤマザクラ等の草木類である。
樹脂系の化学繊維としてはポリエチレンやポリエステルなど、紫外線やアルカリによって劣化するものを想定している。
土嚢袋に充填される充填材における溶融スラグの質量比は30質量%以上50質量%以下とする。具体的な質量比は土嚢袋が破袋するまでの期間によって調整する。
溶融スラグは一般廃棄物溶融処理設備で製造される。
上記設備で製造された溶融スラグは、可溶性けい酸濃度が25%以上、アルカリ分が30%以上であり、植物の根や茎の生長を促進することができる。また、施工後の圧密性確保の観点から、溶融スラグの設計CBR値は20%以上であることが好ましい。
溶融スラグの使用量は、吹付厚さ3cm~5cm、吹付面積1000m当たり100kg~500kgとする。
図2に溶融スラグの製造に使用するガス化溶融炉10を示す。ガス化溶融炉10はシャフト炉式ガス化溶融炉である。炉本体は、円筒状のシャフト部11、シャフト部11の下端から下方に向けて縮径する逆円錐部12、及び炉底部13から構成されている。
シャフト部11の頂部には、一般廃棄物及び副原料(コークス、石灰石又はけい砂)を投入するための投入口20が設けられ、投入口20の側方には、炉内で発生した排ガスを排出するための排出口21が設けられている。
一方、炉底部13の側壁には、炉内で生成された溶融物を排出するための出湯口18が設けられている。
また、シャフト部11の側壁下端部と炉底部13の側壁には、炉内に空気を供給するための送風口15、14が設けられている。送風機16により送風される空気が送風口15、14から炉内に供給される。なお、炉底部13の側壁に設けられている送風口14から炉内に供給される空気は、酸素発生装置17により酸素富化空気とされる。
次に、上記構成を有するガス化溶融炉10を用いて溶融スラグを製造する方法について説明する。
投入口20から炉内に、一般廃棄物とコークスと石灰石又はけい砂とを投入する。ガス化溶融炉10に投入するコークスの量は一般廃棄物投入量1ton当たり20kg~70kg、石灰石又はけい砂の投入量は一般廃棄物投入量1ton当たり15kg~70kgとする。なお、一般廃棄物は、産業廃棄物以外の廃棄物であって、自治体が処理する指定産業廃棄物を含む。
ガス化溶融炉10内は、上部から乾燥・予熱帯A(300℃~400℃)、熱分解ガス化帯B(300℃~1000℃)、燃焼帯C(1000℃~1700℃)、溶融帯D(1700℃~1800℃)に区分される。
[溶融処理]
投入口20から炉内に投入された一般廃棄物は、乾燥・予熱帯Aで熱せられ、一般廃棄物に含まれる水分が、炉下部より上昇する燃焼分解ガスにより蒸発する。乾燥した一般廃棄物は次第に降下し、熱分解ガス化帯Bにおいて可燃分がガス化され、排出口21から排出される。
一般廃棄物中の灰分はコークスと共に燃焼帯Cを通過して溶融帯Dまで降下する。溶融帯Dまで降下したコークスは、送風口14から吹き込まれた酸素富化空気により1700℃~1800℃で高温燃焼し、炉底部13にコークスベッド層(火格子)を形成することにより、還元雰囲気の形成と灰分の安定溶融を実現する。灰分中の低沸点重金属類(鉛など)は揮発して溶融飛灰となり、排ガスと共に排出口21から排出される。
[排ガス処理]
排出口21から排出された排ガスは、必要に応じてサイクロン(図示省略)に導入され、排ガス中の可燃性ダストがサイクロンで捕集される。捕集された可燃性ダストは、送風口14からガス化溶融炉10内に吹き込まれる。一方、サイクロンから排出された排ガスは、燃焼室(図示省略)へ導入され完全燃焼された後、ボイラ(図示省略)で熱回収され、最終的に煙突(図示省略)から大気中へ放出される。
[水砕処理]
灰分が溶融した溶融物は、石灰石の塩基度調整作用により十分に流動性を高めた状態で出湯口18から排出され、樋19を介して水砕装置22に投入される。
水砕装置22は、ガス化溶融炉10から排出された溶融物を冷却して凝固させる冷却水を貯留するケーシング23と、ガス化溶融炉10から排出された溶融物に水を噴射して溶融物を細かく分散させる噴射ノズル24と、ケーシング23内に設置されたスクレーパ式のコンベア25とを備えている。噴射水によって細かく分散された溶融物は、ケーシング23内で冷却凝固して溶融スラグと鉄や銅などメタルとなり、コンベア25によりケーシング23から搬出され、磁選機26へ搬送される。
[メタル分離処理]
磁選機26により溶融スラグからメタルが分離除去され、有害物質を殆ど含まない溶融スラグとなる。
[破砕処理・摩砕処理]
溶融物を水で急速破砕することにより生成される溶融スラグは、粒度分布が不均一で、表面が針状や角状になっているものが含まれている。そのため、破砕装置(図示省略)又は摩砕装置(図示省略)を用いて破砕処理又は摩砕処理を行い、粒度調整を行うと共に、溶融スラグの表面を平滑化させる。破砕処理又は摩砕処理による粒度調整は、溶融スラグの粒径が5mm以下となるように処理条件を設定する。
溶融スラグを摩砕処理もしくは破砕処理することによって溶融スラグの設計CBR値は20%以上となる。
なお、上記方法により製造された溶融スラグに含まれる有害物質の含有量及び溶出量は、土壌汚染対策法の環境基準値に比べて一桁レベルが小さいことが確認されている。
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
10:ガス化溶融炉、11:シャフト部、12:逆円錐部、13:炉底部、14、15:送風口、16:送風機、17:酸素発生装置、18:出湯口、19:樋、20:投入口、21:排出口、22:水砕装置、23:ケーシング、24:噴射ノズル、25:コンベア、26:磁選機、30:法面、31:植生基材、32:網状の植生ネット、33:主アンカーピン、34:補助アンカーピン、35:植生土嚢、A:乾燥・予熱帯、B:熱分解ガス化帯、C:燃焼帯、D:溶融帯

Claims (2)

  1. 一般廃棄物を原料とする溶融スラグと、有機質主体の基盤材と、接合剤と、肥料と、種子とが混合された状態で樹脂系の化学繊維からなる土嚢袋に充填されていることを特徴とする植生土嚢。
  2. 請求項1記載の植生土嚢において、前記土嚢袋に充填される充填材における前記溶融スラグの質量比が30質量%以上50質量%以下であることを特徴とする植生土嚢。
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